JP4070918B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動源から入力される駆動力を車輪へ伝達する駆動力伝達機構内に発生する力を抑制して、駆動力伝達機構の耐久性の悪化を回避するようにした車両制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術としては、例えば特開平9−136637号公報に示されているように、エンジンの駆動トルクを左右後輪のみに伝達して車両を高速2輪駆動状態に設定したり、同駆動トルクを左右後輪及び左右前輪に伝達して車両を高速4輪駆動状態又は低速4輪駆動状態に設定したりすることが可能な車両において、前記車両の設定状態、駆動力伝達機構内に組込まれたデフロック機構の状態などにより、アンチロックブレーキシステムの作動の適否を制御して車輪の回転状態を制御するようにしたものはある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術においては、車両の駆動状態と制動力付与との関係は示されているものの、エンジンから各車輪への駆動力伝達系に大きな力が発生した場合に同駆動力伝達系の一部の耐久性が悪化することがあるが、そのような問題に関しては言及されていない。例えば、各車輪に大きな駆動トルクが伝達される低速4輪駆動状態で車輪の回転が急激に停止制御された場合には、車輪への駆動力伝達経路に急激かつ大きな力が発生して、同伝達機構内の一部(例えば、フロントデファレンシャル)の耐久性が悪化することがある。また、雪の積もった上り坂などで、低速4輪駆動状態にある車輪がスリップして空転すると、車両が後退するために運転者はブレーキペダルを急激に踏み込み操作することがあり、このようなブレーキ操作は前記急激かつ大きな力を駆動力伝達系に発生させる。
【0004】
【発明の概略】
本発明は、上記問題に対処するために、駆動力伝達系内に急激かつ大きな力が発生することを回避して、同駆動力伝達系の一部の耐久性の悪化を回避するようにした車両制御装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の構成上の特徴は、駆動源から入力される駆動力を車輪へ伝達する駆動力伝達機構と、ブレーキペダルの踏み込み操作時に車輪への制動力付与による車輪のロックを回避制御するアンチロックブレーキ制御装置とを備えた車両において、車輪の空転によるスリップ状態の検出時にブレーキペダルの踏み込み操作開始を検出することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力が発生することを検知する検知手段と、前記アンチロックブレーキ制御装置が非作動状態にあるとき、前記検知手段により駆動力伝達機構内におけるブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力の発生が検知されたことの条件成立時に、ブレーキペダルの踏み込み操作によって車輪に付与される制動力を低減することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作によって発生される力を低減する低減手段とを備えたことにある。
さらに、前記低減手段は、前記検知手段により駆動力伝達機構内におけるブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力の発生が検知されたことの条件に加えて、車両が低速4輪駆動状態にあることの条件成立時に、ブレーキペダルの踏み込み操作によって車輪に付与される制動力を低減することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作によって発生される力を低減するように構成してもよい。
【0006】
この場合、前記駆動源とは、車両走行のための動力源となるもので、例えばエンジン、電気自動車の電動モータ、エンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッドシステムなどがある。また、前記駆動力伝達機構とは、例えばディファレンシャル、トランスミッション、プロペラシャフト、アクスルなどである。また、前記所定の力とは、例えば前記駆動力伝達機構に作用することが好ましくない程度の力であって、予め実験により求められることが望ましいが、前記駆動力伝達機構の構造に基づいて理論的に求めた値でもよい。
【0007】
上記のように構成した本発明においては、車輪が空転のためにスリップしている状態でブレーキペダルの踏み込み操作を開始したことにより駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力が発生する場合、検知手段がこれを検知し、低減手段がこの検知に応答して、アンチロックブレーキ制御装置が非作動状態にあることを条件に、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作によって発生される力を低減するので、駆動力伝達機構の耐久性の悪化を回避できる。例えば、雪の積もった上り坂などで、低速4輪駆動状態にある車輪がスリップして空転すると、車両が後退するために運転者はブレーキペダルを踏み込み操作することがある。この場合、車輪に大きな拘束力が付与されて、駆動力伝達機構内に急激かつ大きな力が発生することになるが、この大きな力が低減手段により低減されるので、駆動力伝達機構内に発生する大きな力による駆動力伝達機構の耐久性の悪化を回避できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明すると、図1は、同実施形態に係る車両の全体を概略的に示している。この車両は、高速2輪駆動状態、高速4輪駆動状態又は低速4輪駆動状態に選択的に設定可能な駆動装置10と、ブレーキペダルBPの踏み込み操作に応じた各輪FW1,FW2,RW1,RW2への制動力を制御可能な制動装置20とを備えている。
【0015】
駆動装置10は、駆動源であるエンジン11からトランスミッション12を介して伝達された駆動力を左右後輪RW1,RW2又は左右前輪FW1,FW2側に選択的に伝達するトランスファ13を備えている。トランスファ13は、デフロック機構を内蔵しており、エンジン11及びトランスミッション12からの駆動トルクを高速ギヤ比でリヤデファレンシャル14にのみ伝達する高速2輪駆動状態と、高速ギヤ比でリヤデファレンシャル14及びフロントデファレンシャル15にそれぞれ伝達するとともに前輪FW1,FW2と後輪RW1,RW2との差動を阻止する高速4輪駆動状態と、低速ギヤ比でリヤデファレンシャル14及びフロントデファレンシャル15にそれぞれ伝達するとともに前輪FW1,FW2と後輪RW1,RW2との差動を阻止する低速4輪駆動状態とを選択的に切換え可能としている。これらの切換えは、運転者によって操作される図示しないトランスファ切換えレバーに機械的に連動して行われる。
【0016】
リヤデファレンシャル14は、トランスファ13からの駆動トルクを左右後輪RW1,RW2に分配する。フロントデファレンシャル15は、トランスファ13からの駆動トルクを左右前輪FW1,FW2に分配する。また、リヤデファレンシャル14は、フリー状態とロック状態とを図示しない切換えレバーにより切換え可能なデフロック機構を内蔵しており、同デフロック機構がフリー状態にあれば左右後輪RW1,RW2間の差動を許容し、同デフロック機構がロック状態にあれば左右後輪RW1,RW2間の差動を禁止する。
【0017】
制動装置20は、ブレーキペダルBPの踏み込み操作に応答して、同操作力に応じた圧力のブレーキ油をホイールシリンダ21〜24に供給するマスタシリンダ25を備えている。ホイールシリンダ21〜24は、供給されるブレーキ油の圧力に応じた制動力を各車輪FW1,FW2,RW1,RW2に付与する。ホイールシリンダ21〜24とマスタシリンダ25との間には油圧回路装置30が介装されており、同装置30は電気制御装置60により制御されてホイールシリンダ21〜24へのブレーキ油圧を調整可能にしている。
【0018】
油圧回路装置30は、図2に示すように、マスタシリンダ25の第1ポート25aとホイールシリンダ21,22との間に介装された電磁バルブ31,32と、マスタシリンダ25の第2ポート25bとホイールシリンダ23,24との間に介装された電磁バルブ33,34とを備えている。電磁バルブ31〜34は、非通電時にそれぞれ図示連通状態にあり、通電時に図示状態から切換えられて非連通状態になる。これらの電磁バルブ31〜34の各入出力ポート間には、同電磁バルブ31〜34が非連通状態にあっても、ブレーキペダルBPの踏み込み解除時にはホイールシリンダ21〜24内のブレーキ油をマスタシリンダ25側へ戻すためのチェックバルブ35〜38がそれぞれ接続されている。
【0019】
電磁バルブ31〜34とホイールシリンダ21〜24との各接続点には電磁バルブ41〜44の各入力ポートがそれぞれ接続され、電磁バルブ41,42の各出力ポートはリザーバ45に接続され、また電磁バルブ43,44の各出力ポートはリザーバ46に接続されている。電磁バルブ41〜44は、非通電時にそれぞれ図示非連通状態にあり、通電時に図示状態から連通状態に切換えられてホイールシリンダ21〜24内のブレーキ油のリザーバ45,46への排出を許容する。なお、リザーバ45,46内のブレーキ油はチェックバルブ47,48を介して油圧ポンプ51,52によりそれぞれ汲み上げられるようになっている。前記汲み上げられたブレーキ油は、チェックバルブ53,54と、脈動防止用のダンパ55a,56a及びオリフィス55b,56bとをそれぞれ介してマスタシリンダ25に戻されるようになっている。油圧ポンプ51,52は、電動モータ57によってそれぞれ駆動されるようになっている。
【0020】
電気制御装置60は、アンチロックブレーキ制御システム(ABS)用の制御装置61と、制動力抑制システム用の制御装置62とを備えている。両制御装置61,62は、プログラム処理により油圧回路装置30を制御するためのマイクロコンピュータ、同コンピュータからの指示により油圧回路装置30内の電磁バルブ31〜34,41〜44及び電動モータ57を駆動するためのドライブ回路などからそれぞれなる。
【0021】
制御装置61は、図示しない公知のプログラムの実行により油圧回路装置30を制御して、ブレーキペダルBPの踏み込み操作時に各車輪FW1,FW2,RW1,RW2がロックしないように、各ホイールシリンダ21〜24へのブレーキ油の給排を制御する。制御装置62は、図3,4のフローチャートにより示されたプログラムの実行により、ブレーキペダルBPの踏み込み操作時に各車輪FW1,FW2,RW1,RW2に過大な制動力が付与されないように、各ホイールシリンダ21〜24に対するブレーキ油の供給を制御する。制御装置62は、制御装置61により演算されたデータの一部を用いるが、両制御装置61,62は独立して機能する。この場合、制御装置61,62は、共通のマイクロコンピュータ、ドライブ回路などを用いてもよいが、独立したマイクロコンピュータ、ドライブ回路などを用いてもよい。
【0022】
この電気制御装置60(制御装置61,62)には、車輪速センサ71〜74、前後加速度センサ75、低速4輪駆動状態検出スイッチ76、デフロック検出スイッチ77及びブレーキスイッチ78からの各検出信号が入力されるようになっている。車輪速センサ71〜74は、各車輪FW1,FW2,RW1,RW2の回転速度(車輪速)V1,V2,V3,V4をそれぞれ検出する。前後加速度センサ75は車体に組み付けられて、車体の前後加速度Gxを検出する。低速4輪駆動状態検出スイッチ76及びデフロック検出スイッチ77は、共にトランスファ13に組み付けられて、同トランスファ13が低速4輪駆動状態及び同トランスファ13内のデフロック機構がロック状態にあることをそれぞれ検出する。ブレーキスイッチ78は、ブレーキペダルBPの踏み込み時にオンするとともに踏み込み解除時にオフするもので、ブレーキペダルBPの踏み込み操作の有無を検出する。
【0023】
上記のように構成した実施形態の動作を説明する。まず、車両の走行について簡単に説明しておくと、運転者は、図示しないトランスファ切換えレバーを操作することにより、トランスファ13を高速2輪駆動状態、高速4輪駆動状態及び低速4輪駆動状態のいずれかに選択的に設定することができる。これにより、運転者は、路面状況などにより、高速2輪駆動状態、高速4輪駆動状態及び低速4輪駆動状態のいずれかの駆動状態で車両を走行させることができる。特に、本件は、路面状態が悪いオフロード、雪道などの滑り易い路面の走行に適する低速4輪駆動状態における車両走行に関係し、この状態では、低速ではあるが、高駆動トルクがトランスファ13、リヤデファレンシャル14、フロントデファレンシャル15などの駆動力伝達系を介して左右後輪RW1,RW2及び左右前輪FW1,FW2に伝達される。
【0024】
次に、車両の制動動作についても簡単に説明しておく。車両が通常の路面(滑り易くない路面)を走行中に、運転者がブレーキペダルBPを踏み込み操作すると、電磁バルブ31〜34,41〜44は図2の状態にあるので、マスタシリンダ25は、この踏み込み操作力に応じた圧力のブレーキ油を電磁バルブ31〜34を介してホイールシリンダ21〜24にそれぞれ供給する。これにより、各車輪FW1,FW2,RW1,RW2には、前記ブレーキペダルBPの踏み込み操作力に応じた制動力が付与され、車両は制動される。
【0025】
一方、車両が濡れた路面、雪道などの滑り易い路面を走行している際に、運転者が急激にブレーキペダルBPを踏み込み操作すると、各車輪FW1,FW2,RW1,RW2は前記制動力によりロックしてしまうので、この場合には、アンチロックブレーキシステム用の制御装置61が作動して油圧回路装置30を制御することにより、前記各車輪FW1,FW2,RW1,RW2のロック状態を回避する。制御装置61は、図示しないプログラムの実行により、車輪速センサ71〜74からの各車輪速V1〜V4及び前後加速度センサ75からの前後加速度Gxに基づいて車体速度Vsoを計算し、各車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちで車体速度Vsoよりも所定値以上小さい各車輪速V1〜V4の車輪がロックしそうであると判定して、同車輪に対応したホイールシリンダ内のブレーキ油圧を減少させたり、保持したりする。
【0026】
このことを具体的に説明すると、車輪速V1が車体速度Vsoよりも所定値以上小さくなった場合、制御装置61は左前輪FW1がロックしそうであると判定して、電磁バルブ31を通電制御する。これにより、電磁バルブ31は図示状態から非連通状態に切換えられて、ブレーキペダルBPの踏み込み操作と無関係に、マスタシリンダ25からホイールシリンダ21へのブレーキ油の供給を禁止する。
【0027】
また、制御装置61は、状況に応じて電磁バルブ41を通電又は非通電制御する。電磁バルブ41が通電制御されると、同バルブ41は図示状態から連通状態に切換えられて、ホイールシリンダ21内のブレーキ油を電磁バルブ41を介してリザーバ45に排出する。これにより、ホイールシリンダ21内のブレーキ油圧が低下し、左前輪FW1に対する制動力が低減されるので、左前輪FW1のロックが回避される。電磁バルブ41が非通電制御されれば、同バルブ41は図示非連通状態に保たれるので、ホイールシリンダ21内のブレーキ油圧は保持される。リザーバ45内のブレーキ油は、電動モータ57を作動させることにより油圧ポンプ51によってチェックバルブ47を介して汲み上げられ、チェックバルブ53を介してマスタシリンダ25に戻される。また、ブレーキペダルBPの踏み込み操作が解除されれば、ホイールシリンダ21内のブレーキ油はチェックバルブ35を介してマスタシリンダ25に戻される。なお、右前輪FW2及び左右後輪RW1,RW2に関しても同様に制御される。
【0028】
次に、本発明に直接関係する制動力抑制動作について説明する。制動力抑制制御システム用の制御装置62は、所定の短時間毎に図3の制動力抑制プログラム及び図4のパルス発生プログラムを繰り返し実行する。制動力抑制プログラムの実行は、ステップ100にて開始され、制御装置62は、ステップ102にて制動力抑制許可条件が成立するか否かを判定する。この判定は、下記表1に示すように、▲1▼〜▲7▼の全ての条件が成立する場合にのみ「YES」と判定してプログラムをステップ104以降に進め、それ以外の場合にはプログラムをステップ118以降に進める。
【0029】
【表1】
【0030】
この判定条件は、実質的には、「アンチロックブレーキシステム(ABS)が作動可能な状態にあること(第1条件)」、「アンチロックブレーキシステム(ABS)が油圧回路30を制御中でないこと(第2条件)」、「車両が低速4輪駆動状態にあること(第3条件)」、かつ「車両がほぼ停止状態にあること(第4条件)」を判定するものである。
【0031】
第1条件は、前記表1中の「▲1▼車輪速センサ71〜74が異常でないこと」、「▲2▼前後加速度センサ75が異常でないこと」、及び「▲3▼アンチロックブレーキシステム(ABS)用の電源リレーがオンされていること」の判定に対応するもので、制御装置61が図示しないプログラムの実行により車輪速センサ71〜74、前後加速度センサ75及び前記電源リレーからの各検出信号に基づいて前記▲1▼〜▲3▼を判定し、同判定したデータを制御装置62から制御装置61に入力することにより判定される。第2条件は、前記表1中の「▲4▼アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61が油圧回路装置50を制御中でないこと」の判定に対応するもので、制御装置62が制御装置61による油圧回路装置50の制御中の有無を表すデータを同制御装置61から入力して、同入力したデータに基づいて判定される。
【0032】
第3条件は、前記表1中の「▲5▼車両が低速4輪駆動状態にあること」、かつ「▲6▼トランスファ13内のデフロックがロック状態にあること」の判定に対応するもので、制御装置62が低速4輪駆動状態検出スイッチ76及びデフロック検出スイッチ77から検出信号を入力して、同入力した検出信号に基づいて判定される。第4条件は、前記表1中の「▲7▼車体速度Vsoが小さな所定車速ΔVso(例えば、10〜20Km/h)未満であること」の判定に対応するもので、制御装置61が図示しないプログラムの実行により車輪速センサ71〜74及び前後加速度センサ75からの検出信号に基づいて車体速度Vsoを計算し、前記計算した車体速度Vsoを制御装置61から制御装置62に入力することにより判定される。
【0033】
前記ステップ102にて、「NO」すなわち制動力抑制許可条件が成立しないと判定されると、プログラムをステップ118,120に進めて、ステップ122にてこの制動力抑制プログラムの実行を終了する。ステップ118においては作動フラグOPFを”0”に保っておき、ステップ120においては電磁バルブ31,32を非通電状態に保つ。作動フラグOPFは、”0”により制御装置62が制動力抑制制御中でないことを表し、”1”により制御装置62が制動力抑制制御中であることを表す。なお、前記ステップ118の処理により電磁バルブ31,32が非通電状態に制御されていても、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61により電磁バルブ31,32を通電制御することは可能である。
【0034】
一方、前記ステップ102にて、「YES」すなわち制動力抑制許可条件が成立していると判定されると、プログラムをステップ104に進めて、同ステップ104にて作動フラグOPFが”0”であるか否かを判定する。作動フラグOPFが”0”であれば、ステップ104にて「YES」と判定してプログラムをステップ106以降に進める。作動フラグOPFが”1”であれば、ステップ104にて「NO」と判定してプログラムをステップ116以降に進める。
【0035】
ステップ106においては、制動力抑制制御の開始条件が成立するか否かを判定する。この判定は、下記表2に示すように、▲1▼▲4▼の条件が共に成立し、かつ▲2▼又は▲3▼の条件が成立する場合にのみ「YES」と判定してプログラムをステップ108以降に進め、それ以外の場合にはプログラムをステップ122に進め、同ステップ122にてこの制動力抑制プログラムの実行が終了される。
【0036】
【表2】
【0037】
前記表2中の「▲1▼アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61が油圧回路装置50を制御中でない」は、前記ステップ102の▲4▼の場合と同様に判定される。前記表2中の「▲2▼第1スリップ状態にある」及び「▲3▼第2スリップ状態にある」は、第1スリップフラグSLF1及び第2スリップフラグSLF2がそれぞれ”1”であるか否かにより判定される。これらの第1スリップフラグSLF1及び第2スリップフラグSLF2の設定については後述する。前記表2中の「▲4▼ブレーキスイッチ78がオフからオンに変化した」は、ブレーキペダルBPの踏み込み操作開始を検出するもので、制御装置62がブレーキスイッチ78から検出信号を入力して、同入力した検出信号に基づいて判定される。
【0038】
次に、前記第1スリップフラグSLF1の設定動作について説明すると、制御装置62は、下記表3の判定条件が成立したとき、すなわち表3中の▲1▼▲2▼が成立し、かつ▲3▼▲4▼が共に設立し又は▲5▼が成立したとき、第1スリップフラグSLF1を”1”に設定する。一方、この第1スリップフラグSLF1は下記表4の▲1▼が成立したとき”0”にクリアされる。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
前記表3中の「▲1▼最大車輪速Vwmaxが車体速度Vsoよりも大きい(Vwmax>Vso)」は、車輪速センサ71〜74から入力した車輪速V1,V2,V3,V4のうちの最大値を取出して同最大値を最大車輪速Vwmaxとして設定するとともに、前述した場合と同様に車体速度Vsoをアンチロックブレーキシステム用の制御装置61から入力して、最大車輪速Vwmaxと車体速度Vsoとを比較することにより判定される。これにより、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちの少なくとも一輪は路面上にてスリップ状態にあることが判定される。
【0042】
前記表3中の「2(丸2).最小車輪速Vwminが極めて小さな所定の車輪速Vr1(例えば、0.8〜1.7km/h)よりも大きい(Vwmin>Vr1)」は、前記車輪速センサ71〜74から入力した車輪速V1,V2,V3,V4のうちの最小値を取出して同最小値を最小車輪速Vwminとして設定して、この最小車輪速Vwminと、前記車輪速V r1とを比較することにより判定される。このことは、全ての車輪速センサ71〜74が車輪速値を出力していることを意味し、これにより、車輪速センサ71〜74に異常が発生していないことが判定される。
【0043】
前記表3中の「▲3▼αアップ選択中である」は、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61から制御装置62に入力したαアップ選択中を表すデータにより判定されるものである。このαアップ選択とは、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61内にて車体速度Vsoを計算する際に、車輪速V1,V2,V3,V4の増加が車体速度Vsoではあり得ないほど大きいために、車体速度Vsoの増加比率を車輪速V1,V2,V3,V4の増加比率よりも小さく設定している状態を示している。これによっても、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちの少なくとも一輪は路面上にてスリップ状態にあることが判定される。また、前記表3中の「▲4▼最大車輪速Vwmaxと最小車輪速Vwminとの差Vwmax−Vwminが所定の車輪速Vr2(例えば、5〜15km/h)よりも大きい(Vwmax−Vwmin>Vr2)」は、前記のようにして計算した最大車輪速Vwmax及び最小車輪速Vwminに基づいて判定するもので、これも、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちのいずれかがスリップ状態にあることを示している。
【0044】
前記表3中の「▲5▼最大車輪速Vwmaxと車体速度Vsoとの差Vwmax−Vsoが所定値Vr3(例えば、5〜15km/h)よりも大きい(Vwmax−Vso>Vr3)」は、前記のようにして計算した最大車輪速Vwmax及び制御装置61から入力した車体速度Vsoに基づいて判定するもので、これも、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちのいずれかがスリップ状態にあることを示している。
【0045】
このような表3の判定条件によって車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちのいずれかがスリップ状態にあることが判定されると、第1スリップフラグSLF1が”1”に設定される。
【0046】
前記表4中の「▲1▼最大車輪速Vwmaxが車体速度Vsoに所定値Vr4(例えば、1〜3km/h)を加算した値Vso+Vr4以下である(Vwmax≦Vso+Vr4)」は、前記のようにして計算した最大車輪速Vwmax及び制御装置61から入力した車体速度Vsoに基づいて判定するもので、これにより車輪FW1,FW2,RW1,RW2のスリップ状態が解除されたことが判定される。このような表4の判定条件によって車輪FW1,FW2,RW1,RW2のスリップ状態の解除が判定されると、第1スリップフラグSLF1が”0”に戻される。
【0047】
また、第2スリップフラグSLF2は、下記表5の▲1▼〜▲3▼の全ての条件が成立すると”1”に設定され、下記表6の▲1▼〜▲3▼のうちのいずれかの条件が成立すると”0”にクリアされる。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
前記表5中の「▲1▼車体速度Vsoが所定値Vr5(例えば、25〜35km/h)よりも小さい(Vso<Vr5)」は、前記と同じ車体速度Vsoに基づいて判定される。前記表5中の「▲2▼前後加速度Gxの絶対値|Gx|が所定値Go(例えば、0.3〜0.7G)よりも小さい(|Gx|<Go)」は、前後加速度センサ75から入力した前後加速度Gxに基づいて判定される。
【0051】
前記表5中の「▲3▼中間車輪速Vwmedlが車体速度Vso以上である(Vwmedl≧Vso)」は、車輪速センサ71〜74から入力した車輪速V1,V2,V3,V4のうちの最小値の次に小さな値を取出して同取出した値を中間車輪速Vwmedlとして設定するとともに、この中間車輪速Vwmedlと、前記と同じ車体速度Vsoとの比較に基づいて判定される。そして、これらの▲1▼〜▲3▼の条件により、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のうちのいずれかがスリップ状態にあることが判定さると、第2スリップフラグSLF2が”1”に設定される。
【0052】
前記表6中の「▲1▼最大車輪速Vwmaxが車体速度Vsoに所定値Vr6(例えば、1〜3km/h)を加算した値Vso+Vr6以下である(Vwmax≦Vso+Vr6)」は、前記の表4の解除条件と同じである。前記表6中の「▲2▼車体速度Vsoが所定値Vr5(例えば、25〜35km/h)以上である(Vso≧Vr5)」は、前記と同じ車体速度Vsoに基づいて判定される。前記表6中の「▲2▼前後加速度Gxの絶対値|Gx|が所定値Go(例えば、0.3〜0.7G)以上である(|Gx|≧Go)」も、前後加速度センサ75から入力した前後加速度Gxに基づいて判定される。これらの▲2▼▲3▼の条件は、前記表5の条件▲1▼▲2▼を逆にしたもので、これらにより、車輪FW1,FW2,RW1,RW2のスリップ状態の解除が判定される。このような表6の判定条件によって車輪FW1,FW2,RW1,RW2のスリップ状態の解除が判定されると、第2スリップフラグSLF2が”0”に戻される。
【0053】
ふたたび、図3の判定処理の説明に戻ると、前記のように第1スリップフラグSLF1又は第2スリップフラグSLF2が”1”であることを含む表2の開始条件が成立すると、ステップ106にて「YES」と判定して、ステップ108〜114の処理後、ステップ122にてこの制動力抑制プログラムの実行を終了する。ステップ108においては作動フラグOPFを”1”に設定し、ステップ110においては状態フラグSTFを”0”に設定し、ステップ112にてカウント値CNTを「0」に初期設定し、ステップ114にてパルスカウント値PCNTを「0」に初期設定する。なお、状態フラグSTFは電気制御装置60から油圧回路装置30に出力されるパルス列の状態を表しており、カウント値CNTは前記各状態の継続時間を決定するためのものであり、パルスカウント値PCNTは前記パルス列のパルス数を決定するためのものである。
【0054】
前記のようにして作動フラグOPFが”1”に設定されると、制動力抑制許可条件が成立している限り、ステップ104にて「NO」と判定してプログラムをステップ116に進める。
【0055】
ステップ116においては、制動力抑制制御の終了条件が成立するか否かを判定する。下記表7に示す▲1▼〜▲3▼のいずれかの条件が成立しない限り、ステップ116にて「NO」と判定してプログラムをステップ122にてこの制動力抑制プログラムの実行を終了する。
【0056】
【表7】
【0057】
前記表7の「▲1▼制動力抑制許可条件不成立」は、上記表1の制動力抑制許可条件が成立しない場合を判定するものである。前記表7の「▲2▼アンチロックブレーキシステム(ABS)制御中」は、上述の場合と同様にして、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61が油圧回路装置50を制御中であることを判定するものである。前記表7の「▲2▼ブレーキスイッチ78のオフ」は、ブレーキペダルBPの踏み込み解除によるブレーキスイッチ78のオンからオフへの切換えを判定するものである。そして、前記終了条件が不成立である間、ステップ116にて「NO」と判定され続けて、ステップ118,120の処理は実行されない。
【0058】
このように作動フラグOPFが”1”に設定され、かつ終了条件が不成立である状態では、制御装置62は、図5に示すようなパルス列信号を油圧回路装置30の電磁バルブ31,32に供給して同バルブ31,32を所定のパルス数だけ間欠的に通電制御する。次に、このパルス列信号の発生について説明する。
【0059】
前記作動フラグOPFが”1”に設定された状態で、図4のパルス発生プログラムが実行されると、ステップ200における同プログラムの実行開始後、ステップ202にて「YES」と判定して、プログラムをステップ204以降に進める。
【0060】
ステップ204においては、状態フラグSTFを判定する。この場合、状態フラグSTFは「0」に設定されているので、ステップ204の判定処理により、プログラムをステップ206以降に進める。ステップ206においてはカウント値CNTに「1」を加算し、ステップ208にて前記加算されたカウント値CNTが所定時間T0(例えば、15〜25ms)に対応した所定カウント値CNT0以上であるか否かを判定する。このパルス発生プログラムは所定の短時間毎に繰り返し実行されて、カウント値CNTは前記実行毎に「1」ずつ増加するが、カウント値CNTが値CNT0に達するまで、ステップ208にて「NO」と判定し続け、ステップ242にてこのパルス発生プログラムの実行を終了する。なお、この状態では、制動力抑制制御装置62から油圧発生回路へは図5のT0で示す期間のようにローレベルのパルス列信号が出力され続ける。
【0061】
そして、前記作動フラグOPFが”1”に設定されてから所定時間T0が経過すると、カウントCNTは所定カウント値CTN0に達するので、ステップ208にて「YES」と判定して、制御装置62はステップ210にて図5に示すようにローレベルのパルス列信号をハイレベルに切換えて出力する。前記ステップ210の処理後、ステップ212にて状態フラグSTFを”1”に設定し、ステップ214にてカウント値CNTを「0」に初期設定した後、ステップ242にてこのパルス発生プログラムの実行を終了する。
【0062】
そして、次にパルス発生プログラムが実行されると、状態フラグSTFは”1”に設定されているので、ステップ204の判定処理により、プログラムはステップ216以降に進められる。この場合も、前記ステップ206,208と同様なステップ216,218の処理により、カウント値CNTが図5に示すような所定時間T1(例えば、10〜15ms)に対応した所定カウント値CNT1に達するまで、ステップ220〜230の処理を実行しない。したがって、前記パルス列信号はハイレベルに保たれる。
【0063】
前記パルス列信号のハイレベルへの切換えから所定時間T1が経過すると、カウント値CNTが所定カウント値CNT1に達し、ステップ218にて「YES」と判定し、ステップ220にて図5に示すようにハイレベルのパルス列信号をローレベルに切換えて出力する。前記ステップ220の処理後、ステップ222にて状態フラグSTFを”2”に変更し、ステップ224にてカウント値CNTを再度「0」に初期設定した後、プログラムをステップ226以降に進める。
【0064】
ステップ226においてはパルスカウント値PCNTに「1」を加算し、ステップ228にてパルスカウント値PCNTが所定パルス数PNO(例えば、8〜12パルス)以上であるか否かを判定する。このパルスカウント値PCNTが所定パルス数PNOに達するまでは、ステップ228にて「NO」と判定して、ステップ242にてこのパルス発生プログラムの実行を終了する。
【0065】
そして、次にパルス発生プログラムが実行されると、状態フラグSTFは”2”に設定されているので、ステップ204の判定処理により、プログラムはステップ232以降に進められる。この場合も、前記ステップ206,208と同様なステップ232,234の処理により、カウント値CNTが図5に示すような所定時間T2(例えば3〜7ms)に対応した所定カウント値CNT2に達するまで、ステップ236〜240の処理を実行しない。したがって、前記パルス列信号はローレベルに保たれる。
【0066】
前記パルス列信号のローレベルへの切換えから所定時間T2が経過すると、カウント値CNTが所定カウント値CNT2に達し、ステップ234にて「YES」と判定し、ステップ236にて図5に示すようにローレベルのパルス列信号をハイレベルに切換えて出力する。前記ステップ236の処理後、ステップ238にて状態フラグSTFを”1”に変更し、ステップ240にてカウント値CNTを再度「0」に初期設定した後、ステップ242にてこのパルス発生プログラムの実行を終了する。
【0067】
そして、次にパルス発生プログラムが実行されると、状態フラグSTFは”1”に設定されているので、ステップ204の判定処理により、プログラムは再度ステップ216以降に進められる。そして、ステップ216〜220の処理によりパルス列信号を所定時間T1だけハイレベルに保ち、その後にローレベルに切換える。そして、前述のステップ222,224,232〜236の処理により前記ローレベルのパルス列信号をハイレベルに切換える。このようなステップ216〜224,232〜240の処理により、ハイレベルとローレベルとを繰り返すパルス列信号が形成される。
【0068】
そして、このパルス列信号のパルス数が所定パルス数PNOになると、ステップ゜226の処理により「1」ずつ増加するパルスカウント値PCNTが所定パルス数PNOに達し、ステップ228にて「YES」と判定して、ステップ230にて作動フラグOPFを”0”に戻して、ステップ242にてこのパルス発生プログラムの実行を終了する。このように作動フラグOPFが”0”に戻された後には、このパルス発生プログラムが実行されても、ステップ202にて「NO」と判定されるので、新たに作動フラグOPFが”1”に設定されるまではパルス列信号はローレベルに保たれる。
【0069】
このようにして形成されたパルス列信号は、前述のように油圧回路装置30の電磁バルブ31,32に供給される。この場合、前記パルス列信号は、ローレベル時に電磁バルブ31,32を非通電状態に保ち、ハイレベル時に電磁バルブ31,32を通電制御する。これにより、電磁バルブ31,32は、間欠的に連通状態と非連通状態とに繰り返し切換えられる。
【0070】
一方、この状態では、前記ステップ106の開始判定の条件の一つであるようにブレーキペダルBPは踏み込み操作されている(上記表2参照)。したがって、マスタシリンダ25は、ブレーキペダルBPの踏み込み操作に応じた圧力でブレーキ油を吐出しており、また前記パルス列信号も初期の所定時間T0の間はローレベルに保たれていて、電磁バルブ31,32は非連通状態に維持されているので、図5に示すように、ブレーキペダルBPの踏み込み操作から所定時間T0の間、各ホイールシリンダ21〜24内のブレーキ油圧はブレーキペダルBPの踏み込み操作に応じて連続的に上昇する。
【0071】
そして、前記所定時間T0の経過後、パルス列信号がハイレベルとローレベルを繰り返しはじめると、電磁バルブ31,32は同パルス列信号に応じて断続的に通電及び非通電制御される。したがって、電磁バルブ31,32は断続的に非連通状態及び連通状態に切換え制御されるので、図5に示すようにホイールシリンダ21,22内のブレーキ油圧は階段状に増加する。その結果、ホイールシリンダ21,22によって付与される左右前輪FW1,FW2の制動力が抑制制御される。
【0072】
そして、前記のように所定パルス数PNOのパルス信号が電磁バルブ31,32に付与された後には、作動フラグOPFは”0”に戻されるので、制御装置62は、図3のステップ104にて「YES」と判定してプログラムをステップ106以降に進めるようになる。
【0073】
このように、車両が低速4輪駆動状態に設定されているとともに各車輪FW1,FW2,RW1,RW2のいずれかがスリップ状態にある状態で、ブレーキペダルBPが踏み込み操作されると、制御装置62は、図3及び図4のプログラムの実行により、車輪速V1,V2,V3,V4が急激に減少する状況すなわち駆動力伝達機構内に大きな力が発生することを検出し、同検出に応答して左右前輪FW1,FW2に対する制動力を低減する。例えば、雪の積もった上り坂などで、低速4輪駆動状態にある車両がスタックされて車輪FW1,FW2,RW1,RW2がスリップして空転している状態では、車両が坂道に沿って後退するために運転者はブレーキペダルを踏み込み操作することがあるが、この場合、左右車輪FW1,FW2に対する制動力が低減される。その結果、車両が低速4輪駆動状態にあって、車輪FW1,FW2,RW1,RW2には低速ではあるが大きな駆動トルクが伝達されている状況下で、ブレーキペダルBPが急激に踏み込み操作されても、左右前輪FW1,FW2の駆動力伝達系に急激かつ大きな力が発生することを避けることができ、フロントデファレンシャル16などの左右前輪FW1,FW2の駆動力伝達系の一部の耐久性の悪化を回避できる。なお、本実施形態に係る車両にあっては、左右後輪RW1,RW2の駆動力伝達系は左右前輪FW1,FW2の駆動力伝達系に比べて強固に設計されているため、左右後輪RW1,RW2の駆動力伝達系が前記理由により耐久性の悪化を生じることはない。
【0074】
一方、上述のように作動フラグOPFが”1”に設定されている状態でも、前述の終了条件(表7)が成立すると、ステップ116にて「YES」と判定してプログラムをステップ118以降に進める。ステップ118においては作動フラグOPFを”0”に戻し、ステップ120にて制御装置62から出力されるパルス列信号をローレベルに維持、すなわち電磁バルブ31,32を非通電状態に制御して、ステップ122にてこの制動力抑制プログラムの実行を終了する。
【0075】
なお、上述したように制御装置62によって電磁バルブ31,32が非通電状態に制御されていても、アンチロックブレーキシステム(ABS)により電磁バルブ31,32を通電制御することは可能である。そして、本実施形態においては、ステップ102の制動力抑制許可条件及びステップ106の開始条件として表1▲4▼及び表2▲1▼に記載した「アンチロックブレーキシステム(ABS)が油圧回路装置30を制御中でないこと」を採用するとともに、ステップ116の終了条件として表7▲2▼に記載した「アンチロックブレーキシステム(ABS)が油圧回路装置30を制御中であること」を採用しているので、制御装置62による制動力抑制機能に対して制御装置61のアンチロックブレーキ機能が優先する。したがって、アンチロックブレーキシステム(ABS)に本発明に係る制動力抑制機能を付加しても、同アンチロックブレーキシステム(ABS)の機能が損なわれることはない。しかも、制動力抑制機能を実現するためにアンチロックブレーキシステム(ABS)用の油圧回路装置30を共用するようにしたので、同制動力抑制機能の付加のために大きなコストアップを余儀なくされることもない。
【0076】
なお、上記実施形態においては、車輪FW1,FW2,RW1,RW2がスリップ状態にあるとき、ブレーキペダルBPが踏み込み操作されると、左右前輪FW1,FW2のみに対する制動力を低減するようにしたが、左右後輪RW1,RW2に対する制動力も低減するようにしてもよい。この場合、制御装置62は、図4のステップ210,220,236の処理によって、生成したパルス列信号を電磁バルブ41,42にも供給して同バルブ41,42の通電及び非通電を制御するようにすればよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、車両が低速4輪駆動状態に設定されている場合にのみ、車輪に対する制動力を低減するようにしたが、車両がその他の駆動状態に設定されているときにも本発明を適用して車輪に対する制動力を低減するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、制御装置62が、図3のプログラムの実行により、車輪速センサ71〜74から入力した車輪速V1〜V4に基づいて最大車輪速Vwmax、最小車輪速Vwminなど種々の値を計算するようにしたが、アンチロックブレーキシステム(ABS)用の制御装置61でこれらの値を計算している場合には、車体速度Vsoと同様に制御装置61によって計算された値を制御装置62に入力させるようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、車輪がスリップして空転している状態でブレーキペダルが踏み込み操作された場合に、駆動力伝達機構内に急激かつ大きな力が発生し、同発生した力を車輪に付与される制動力を低減することにより緩和する例についてのみ説明した。しかしながら、本発明は、車両走行中に外力により車輪の回転がが大きな力で拘束された場合にも適用できる。例えば、車両走行中に、岩場などの悪路で車輪FW1,FW2,RW1,RW2の回転が大きな力で拘束された場合、駆動力伝達機構内に急激かつ大きな力が発生する。この場合、車輪速V1〜V4の急激な低下を検出するとともに、同車輪速V1〜V4の急激な低下の検出時に、エンジン回転数を下げたり、エンジンを停止させたりすることによってエンジンなどの駆動源から発生される駆動力を低減すればよい。これによっても、駆動力伝達機構内に発生する急激かつ大きな力を低減でき、駆動力伝達機構の耐久性悪化を回避できる。
【0080】
また、上記実施形態においては、ブレーキペダルBPの踏み込み操作及び同操作解除をブレーキスイッチ78のオン・オフにより検出するようにしたが、これに代えて、マスタシリンダ25内又はその油圧経路に油圧センサ(マスタシリンダ圧センサ)を設けて、同油圧センサにより検出されるマスタシリンダ内の油圧の変化によりブレーキペダルBPの踏み込み操作及び同操作解除を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る車両の全体概略図である。
【図2】 図1の油圧回路装置のブロック図である。
【図3】 図1の制動力抑制システムのための制御装置にて実行される制動力抑制プログラムを示すフローチャートである。
【図4】 前記制御装置にて実行されるパルス発生プログラムを示すフローチャートである。
【図5】 制動力抑制制御時におけるホイールシリンダ内のブレーキ油圧の変化を示すグラフ、及び制動力抑制のためのパルス列信号のタイムチャートである。
【符号の説明】
FW1,FW2…前輪、RW1,RW2…後輪、BR…ブレーキペダル、10…駆動装置、11…エンジン、12…トランスミッション、13…トランスファ、14,15…デファレンシャル、20…制動装置、21〜24…ホイールシリンダ、25…マスタシリンダ、30…油圧回路装置、60…電気制御装置、61…アンチロックブレーキ制御システム(ABS)用の制御装置、62…制動力抑制システム用の制御装置、71〜74…車輪速センサ、75…前後加速度センサ、76…低速4輪駆動状態検出スイッチ、77…デフロック検出スイッチ、78…ブレーキスイッチ。
Claims (2)
- 駆動源から入力される駆動力を車輪へ伝達する駆動力伝達機構と、ブレーキペダルの踏み込み操作時に車輪への制動力付与による車輪のロックを回避制御するアンチロックブレーキ制御装置とを備えた車両において、
車輪の空転によるスリップ状態の検出時にブレーキペダルの踏み込み操作開始を検出することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力が発生することを検知する検知手段と、
前記アンチロックブレーキ制御装置が非作動状態にあるとき、前記検知手段により駆動力伝達機構内におけるブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力の発生が検知されたことの条件成立時に、ブレーキペダルの踏み込み操作によって車輪に付与される制動力を低減することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作によって発生される力を低減する低減手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 前記請求項1に記載の車両制御装置において、
前記低減手段は、前記検知手段により駆動力伝達機構内におけるブレーキペダルの踏み込み操作による所定の力の発生が検知されたことの条件に加えて、車両が低速4輪駆動状態にあることの条件成立時に、ブレーキペダルの踏み込み操作によって車輪に付与される制動力を低減することにより、前記駆動力伝達機構内にブレーキペダルの踏み込み操作によって発生される力を低減するものであることを特徴とする車両制御装置。
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