JP4070887B2 - 膜厚測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体基板や、液晶パネル用のガラス基板などの基板上に形成された薄膜の膜厚を測定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造工程においては、基板上に薄膜が形成される場合が多い。例えば、基板上にパターンを形成する際にはフォトレジスト膜が形成され、また、MIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を形成する際には絶縁膜が形成される。
【0003】
基板上に形成された薄膜の膜厚は、通常、光学的手法を用いて測定される。すなわち、薄膜が形成された基板上に光を照射し、基板において反射した光の強度から反射率を求めることによって膜厚が決定される。なお、このような測定を行う装置では、光源として白熱電球や水銀ランプ、タングステンランプなどが採用され、また、反射光の強度の測定には、回折格子と受光素子とを組み合わせた分光計が採用されている。
【0004】
上記の測定においては、予め、光源から射出された基準となる光の強度が測定される。反射率は、薄膜が形成された基板について測定された反射光の強度と、基準となる光の強度との比から求められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、光源から射出される光の強度は、時間とともに常に変動している。したがって、基準となる光の強度を測定した時点と、薄膜が形成された基板からの反射光の強度を測定した時点とでは、光源から射出される光の強度は異なっている。光源から射出される光の強度の時間的な変動が無視できない場合には、反射率を精度よく求めることができず、膜厚を正確に決定できないという問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、光源から射出される光の強度の時間的な変動に依らず、薄膜の膜厚を正確に測定することができる技術を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の装置は、基板上に形成された薄膜の膜厚を測定するための膜厚測定装置であって、前記薄膜の膜厚を測定するのに適した光を射出する光源部と、前記光源部から射出された光を、前記基板を照射する第1の光と、前記基板を照射しない第2の光とに分離する光分離部と、前記基板を照射する前記第1の光のうち、前記基板からの反射光を測定するための第1の受光部と、前記第1の受光部における測定と同時に、前記第2の光を測定するための第2の受光部と、前記第1の受光部によって測定された第1の測定値を、前記第2の測定によって測定された第2の測定値を用いて補正することによって求められる前記第1の光の反射率の実測値と、前記薄膜の複数の膜厚値から予測される反射率の予測値とから、前記薄膜の膜厚を決定する膜厚決定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この膜厚測定装置では、第1の光のうち基板から反射される光を測定すると同時に、光源から射出される第2の光を測定することができる。したがって、光源から射出される光の時間的な変動が無視できない場合にも、第1の測定値と第2の測定値とから求められる反射率の実測値と、複数の薄膜の膜厚値に応じた反射率の予測値とを用いて、薄膜の膜厚を正確に測定することができる。
【0009】
上記の膜厚測定装置において、前記光源部は、ほぼ単色の光を射出する半導体発光素子を含むようにしてもよい。
【0010】
光源部として半導体発光素子を用いる場合には、白熱電球や水銀ランプなどを用いた場合に比べ、その点灯時から安定した光を射出することができる。したがって、光源部として半導体発光素子を用いて、光源部から射出される光の変動をできるだけ小さくすれば、より正確に膜厚を測定することが可能となる。
【0011】
また、上記の膜厚測定装置において、前記半導体発光素子は、異なる複数の光を射出する発光ダイオードを含むようにしてもよい。
【0012】
このように、光源部として異なる複数の光を射出する発光ダイオードを用いれば、複数の波長について反射率の実測値を求めることができるので、より正確に膜厚を測定することが可能となる。
【0013】
【発明の他の態様】
この発明は、以下のような他の態様も含んでいる。第1の態様は、上記の発明の各部の機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0014】
第2の態様は、コンピュータに上記の発明の各部の機能を実現させるコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様である。こうした態様では、プログラムをネットワーク上のサーバなどに置き、通信経路を介して、必要なプログラムをコンピュータにダウンロードし、これを実行することで、上記の装置を実現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
A.第1実施例:
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例としての膜厚測定装置の構成を示す説明図である。この膜厚測定装置は、半導体ウェハWに形成された絶縁膜の膜厚を測定するための装置であり、測定光学系を配置するための筐体100と、信号処理部200と、駆動系コントロール部300とを備えている。
【0016】
筐体100は、その底部に水平面内で移動可能なXYステージ110を備えている。ウェハWは、XYステージ110上に載置される。筐体100の上面には、その中央付近に光源部120が設けられている。図中、光源部120の左側には、第1の受光部130が、支持柱132とブラケット134とを介して筐体100に取り付けられている。光源部120の右側には、第2の受光部140が、支持柱142とブラケット144とを介して筐体100に取り付けられている。また、筐体100には、光源部120から射出された光を2つの受光部130,140に導くためのハーフミラー150と、2つの集光レンズ160,170とが設けられている。第1の集光レンズ160は、筐体100の側壁に設けられた支持柱162とブラケット164とを介して筐体100に取り付けられている。第2の集光レンズ170は、筐体100の上面に設けられた支持柱172とブラケット174とを介して筐体100に取り付けられている。同様に、ハーフミラー150も図示しない支持柱、ブラケットによって筐体100に取り付けられている。
【0017】
光源部120から一定の角度で射出された光は、その一部がハーフミラー150を透過し、他の一部はハーフミラー150で反射する。ハーフミラー150を透過した一部の光は、集光レンズ160を通過してウェハWを照射する。ウェハW上で反射された光束は、集光レンズ160を通過した後、ハーフミラー150で反射され、第1の受光部130に到達する。一方、光源部120から射出され、ハーフミラー150で反射した他の一部の光は、第2の集光レンズ170を通過して第2の受光部140に到達する。
【0018】
上記の説明から分かるように、第1の受光部130は、ウェハWから反射された光の強度を測定する。第2の受光部140は、光源部120から射出された光の強度を測定する。このような構成を採用することにより、第1の受光部130においてウェハWからの反射光の強度を測定すると同時に、第2の受光部140は、光源部120からの光の強度を測定することができる。したがって、第1の受光部130で測定された光の強度Im1を、第2の受光部140で測定された光の強度Im2を用いて補正すれば、ウェハW上で反射する光の反射率を正確に求めることができる。
【0019】
また、このようにすれば、光源部120から射出される光の強度が、時間的に変動する場合であっても、時間的な変動に応じた光の強度を第2の受光部140において測定することができるので、第1の受光部130において測定されるウェハWからの反射光の強度をうまく補正することができる。これにより、光源部120から射出される光の強度に影響されることなく、精度の高い反射率を求めることができる。
【0020】
なお、光源部120としては、射出される光の強度の時間的な変動が少ないものを用いることが好ましい。本実施例においては、光源部120として、光の強度の時間的な変動が少ない発光ダイオード(LED)を用いている。ところで、ウェハW上で反射される光の強度は波長に依存するので、通常の膜厚測定では、分光器を用いて反射光のスペクトルを測定している。一方、発光ダイオードは、ほぼ単色の光を射出するので、反射光の波長は既知であり、その強度を測定できればよく、分光器を用いる必要はない。そこで、本実施例では、2つの受光部130,140として、フォトダイオード(PD)が用いられている。
【0021】
信号処理部200(図1)は、図示しないメインメモリとCPUと入力装置と表示装置とを備えたコンピュータであり、そのメインメモリには、膜厚決定部210としての機能を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。信号処理部200には、ウェハWで反射される光の分光反射率の予測値Rcを格納するハードディスク装置220が電気的に接続されている。また、信号処理部200には、2つの受光部130,140が電気的に接続されている。
【0022】
膜厚決定部210は、2つの受光部130,140において測定された光の強度に基づいて、反射率の実測値Rmを求める。膜厚決定部210は、反射率の実測値Rmと、分光反射率の予測値Rcとを比較して、予測値Rcと実測値Rmとの一致度から膜厚を決定する。
【0023】
さらに、信号処理部200には、筐体100のXYステージ110を駆動するための駆動系コントロール部300が電気的に接続されている。したがって、駆動系コントロール部300によってXYステージ110を制御することにより、ウェハW上の任意の位置を測定位置として決定することができる。
【0024】
なお、上述の膜厚決定部210の機能を実現するコンピュータプログラムは、フレキシブルディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。コンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータが読み取って直接実行するようにしてもよい。
【0025】
この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。また、オペレーションシステムが不要でアプリケーションプログラム単独でハードウェア装置を動作させるような場合には、そのハードウェア装置自体がコンピュータに相当する。ハードウェア装置は、CPU等のマイクロプロセッサと、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取るための手段とを少なくとも備えている。コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各手段の機能を実現させるプログラムコードを含んでいる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0026】
なお、この発明における「記録媒体」としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0027】
図2は、反射率の分光特性の予測値Rc(λ)の一例を示すグラフである。反射率の分光特性の予測値Rc(λ)は、基板および薄膜の光学定数、薄膜の膜厚から求められる。図2のグラフには、半導体基板上に酸化膜が形成されたウェハWについて、膜厚dがそれぞれ10nm,5nmである場合の反射率の分光特性の予測値Rc(λ)が示されている。図2に示す反射率Rは、ウェハWからの反射光の強度を、酸化膜が形成されていない半導体基板から反射された光の強度が100%となるように調整されている。すなわち、酸化膜が形成されていない半導体基板から反射された光の強度が、反射率を求める際の基準となっている。このときの反射率の分光特性Rc(λ)は、以下の式(1)で表される。
【0028】
Rc(λ)=IWO(λ)/ISO(λ) ・・・(1)
【0029】
ここで、IWO(λ)は、ウェハWからの反射光のうち波長λの光の強度を示しており、ISO(λ)は、酸化膜が形成されていない半導体基板から反射された光のうち波長λの光の強度を示している。
【0030】
図2のグラフから分かるように、酸化膜の光学的厚みが光の波長に対して非常に小さい(波長の約1/10以下)場合には、反射率Rの100%からの差は小さい。例えば、酸化膜の膜厚dが10nmの場合には、波長400〜500nmの光に対して反射率Rは約97〜98%となっており、酸化膜が形成されていない半導体基板から反射された場合の反射率(図2においては100%)との差は約2〜3%である。
【0031】
このように、酸化膜の光学的厚みが光の波長に対して非常に小さく、反射率の差があまり表れない場合にも、本実施例の膜厚測定装置(図1)を用いれば、膜厚を決定することができる。すなわち、この膜厚測定装置では、第1の受光部130においてウェハWからの反射光の強度を測定するのと同時に、第2の受光部140において光源部120から射出される光の強度を測定するので、膜厚に応じた反射率の差がわずかである場合にも、精度よく反射率を求めることができる。
【0032】
この膜厚測定装置では、第1の受光部130で測定されたウェハWからの反射光の強度Im1は、第2の受光部140で測定された光源部120から射出された光の強度Im2を用いて補正される。すなわち、光源部120から射出された光の強度が反射率を求める際の基準となる。このときの反射率Rm(λ)は、以下の式(2)で表される。
【0033】
Rm(λ)=k(λ)×Im1(λ)/Im2(λ) ・・・(2)
【0034】
ここで、Im1(λ)は、第1の受光部130で測定されたウェハWからの反射光の強度を示しており、Im2(λ)は、第1の受光部130においてIm1(λ)が測定されるのと同時に、第2の受光部140で測定されたハーフミラー150において反射した光の強度を示している。また、k(λ)は、光の波長λに依存する所定の関数である。
【0035】
本実施例の膜厚測定装置(図1)においては、関数k(λ)として、予め第1および第2の受光部130,140において、酸化膜が形成されていない半導体基板について測定される次の式(3)で表される値が用いられる。
【0036】
【0037】
ここで、Im10(λ)は、第1の受光部130で測定される酸化膜が形成されていない半導体基板からの反射光の強度を示しており、Im20(λ)は、第1の受光部130においてIm10(λ)が測定されるのと同時に、第2の受光部140で測定された光の強度を示している。
【0038】
このように決定される関数k(λ)を用いれば、式(2)から得られる反射率の実測値Rm(λ)と、図2の予測値Rc(λ)とを直接比較することができる。
【0039】
関数k(λ)は、本実施例においては、上記のように酸化膜が形成されていない半導体基板について予め測定を行うことによって求められるが、計算によってもおおよそ見積もることができる。すなわち、ハーフミラー150の反射率、透過率、および酸化膜が形成されていない半導体基板の反射率が既知であれば、式(3)のIm10(λ),Im20(λ)の値を見積もることができるので、関数k(λ)を求めることが可能である。ただし、本実施例のように、関数k(λ)を酸化膜が形成されていない半導体基板について測定を行うことによって求める場合には、より正確に反射率を求めることができるという利点がある。
【0040】
上記のように得られる分光特性の実測値Rm(λ)を用いれば、図1の光源部120から射出された光が、ほぼ単色の光とみなせる場合にも、その波長に対する反射率から膜厚を決定することができる。例えば、光源部120が、中心波長470nmのほぼ単色の光を射出するLEDである場合に、その反射率の実測値Rm(470nm)としてほぼ98%の値が得られた場合には、図2の反射率の分光特性の予測値Rc(λ)に従って、膜厚を10nmと決定することができる。
【0041】
このように、本実施例の膜厚測定装置を用いれば、基板上の薄膜の光学的厚みが、光の波長に対してかなり小さい場合にも、反射率の実測値Rmを精度よく求めることができる。これにより、膜厚dを正確に決定することが可能となる。
【0042】
なお、本実施例においては、光源部120としてほぼ単色とみなせるLEDを用いているが、波長の異なる複数のLEDを組み合わせて用いてもよい。この場合には、波長の異なる複数のLEDが1パッケージに収められているものを使用することができる。こうすれば、複数の異なる波長の光についてそれぞれ反射率の実測値Rmが得られるので、これらの複数の実測値Rmを用いてより正確な膜厚を決定することができる。
【0043】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図である。この膜厚測定装置は、図1の装置とほぼ同様の構成を有するので、詳細な説明は省略する。なお、図3に示す膜厚測定装置では、図1の測定光学系を位置決めするための筐体100の図示は省略されている。
【0044】
本実施例の装置では、図1の集光レンズ170が備えられていない。したがって、この装置では、光源部120から射出された光束のうちハーフミラー150で反射された光が、集光されずに第2の受光部140に向かう。このとき、ハーフミラー150で反射された光は、第2の受光部140が設けられた位置では、その受光領域より大きな径を有する光束となっている。したがって、受光部140には、ハーフミラー150で反射された光束の一部のみが入射する。
【0045】
この場合にも、第2の受光部140は、光源部120から射出される光の強度の時間的な変動を捉えることができるので、第1の受光部130においてウェハWからの反射光を測定すると同時に、第2の受光部140において光源部120からの光を測定することができる。したがって、第1実施例において説明したように、第1の受光部130で測定された光の強度を、第2の受光部140で測定された光の強度で補正すれば、ウェハW上で反射する光の反射率を求めて膜厚を決定することができる。
【0046】
C.第3実施例:
図4は、本発明の第3実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図である。この膜厚測定装置は、図1,図3の装置とほぼ同様の構成を有するので、詳細な説明は省略する。なお、図4では、図1の測定光学系を位置決めするための筐体100の図示は省略されている。
【0047】
図4に示す装置では、図1,図3に示すハーフミラー150に代えて、両面ミラー152が備えられている。両面ミラー152は、光源部120から射出された光束の右側半分のみを反射する位置に設置されている。このとき、両面ミラー152で反射された光は、集光レンズ182を通過した後、第2の受光部140に入射する。一方、光源部120から射出された光束の左側半分は、集光レンズ180の左半分の領域を通過した後、ウェハWに到達する。ウェハWで反射した光は、集光レンズ180の右側半分の領域を通過した後、両面ミラー152で反射される。両面ミラー152で反射された光は、第1の受光部130に入射する。
【0048】
本実施例においても、第1の受光部130においてウェハWからの反射光の強度を測定すると同時に、第2の受光部140において光源部120からの光の強度を測定することができる。したがって、第1の受光部130で測定された光の強度を、第2の受光部140で測定された光の強度で補正することができるので、ウェハW上で反射する光の反射率を正確に求めることができる。
【0049】
また、本実施例の構成を用いれば、第1の受光部130に入射するウェハWからの反射光の強度を大きくすることができる。すなわち、本実施例においては、ウェハWからの反射光が、両面ミラー152によってほとんどすべて反射されるので、第1の受光部130において測定される光の強度は、ハーフミラーによって反射される場合に比べ、ほぼ2倍の強度となる。こうすれば、さらに精度よく反射率を測定して、正確な膜厚を決定することが可能となる。
【0050】
D.第4実施例:
図5は、本発明の第4実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図である。なお、図5では、図1の測定光学系を位置決めするための筐体100の図示は省略されている。本実施例の膜厚測定装置では、光源部120から射出された光を分離するために、偏光ビームスプリッタ400を用いている。
【0051】
光源部120から射出されたp偏光とs偏光とを含む光束は、集光レンズ184によって平行光とされた後、偏光ビームスプリッタ400に入射する。偏光ビームスプリッタ400に入射した光は、2つのプリズムの界面に形成された偏光分離膜402によってp偏光とs偏光とに分離される。s偏光は、偏光分離膜402で反射された後、集光レンズ185を通過して第2の受光部140に到達する。一方、p偏光は、偏光分離膜402を透過した後、集光レンズを通過してλ/4板420に入射する。λ/4板420は、入射した直線偏光を円偏光に変換する機能を有している。したがって、λ/4板420に入射したp偏光は、円偏光に変換されて、ウェハWに到達する。ウェハWを反射した光はさらにλ/4板420を通過することによりs偏光に変換される。このs偏光は、集光レンズ186を通過した後、偏光ビームスプリッタ400の偏光分離膜402によって反射される。反射されたs偏光は、集光レンズ187を通過した後、第1の受光部130に到達する。
【0052】
図5に示すように、図1,図3に示すハーフミラー150、あるいは図4に示す両面ミラー152に代えて偏光ビームスプリッタ400を用いた場合にも、第1の受光部130において、光源部120から射出された一部の光のウェハWからの反射光を測定すると同時に、第2の受光部140において光源部120からの光の一部を測定することができる。
【0053】
また、本実施例の構成を用いれば、第3実施例と同様に、第1の受光部130において測定される光の強度を大きくすることができる。すなわち、本実施例においては、ウェハWで反射された光がλ/4板420によってs偏光に変換される。変換されたs偏光は偏光ビームスプリッタ400の偏光分離膜402によってほとんどすべて反射されるので、第1の受光部130において測定される光の強度は、ハーフミラーによって反射される場合に比べ、ほぼ2倍の強度となる。これにより、反射率を精度よく測定することができるので、より正確な膜厚を決定することが可能となる。
【0054】
以上、説明したように、上記実施例においては、2つの受光部130,140を用いて、ウェハWから反射された光を測定すると同時に、光源部120から射出された光の一部を測定しているので、光源部120から射出される光の強度が時間的に変動する場合にも、ウェハWから反射される光の反射率の実測値Rmを精度よく求めることができる。したがって、反射率の実測値Rmと予測値Rcとから、ウェハWに形成された薄膜の膜厚を正確に決定することが可能となる。
【0055】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
(1)上記実施例においては、光源部120としてほぼ単色の光とみなせる発光ダイオードを用いているが、光源部120としては、半導体レーザなどの他の半導体発光素子を用いてもよい。半導体レーザは、単一波長であるため、より正確な測定ができる可能性があるが、異なる複数の光を射出する発光ダイオードを用いた場合の方が安価に膜厚測定装置を構成することができるという利点がある。
【0057】
(2)上記実施例においては、光源部120としてLEDを用いているが、これに代えて波長領域の広い光源、例えば、重水素放電管やハロゲンランプ、水銀ランプなどを用いてもよい。この場合には、2つの受光部130,140として、分光計を用いればよい。あるいは、第2の受光部140への光の入射側にフィルタを設けるようにしてもよい。こうすれば、広い波長領域での反射率を連続的に測定することができるので、反射率の連続的な実測値Rmと予測値Rcとから、膜厚を決定することができる。ただし、上記実施例のように、光源部120としてLEDを用いれば、重水素放電管やハロゲンランプなどを用いた場合と比べ、光の強度の時間的な変動が少ないという利点があるとともに、安価に膜厚測定装置を構成することができるという利点がある。
【0058】
(3)上記実施例では、光源部120から射出された光がウェハWにほぼ垂直に入射する場合について説明したが、本発明は、光がウェハWに対して斜めに入射する場合にも適用可能である。この場合には、ウェハWへの光の入射角度に応じて分光反射率の予測値Rcを求めればよい。
【0059】
(4)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としての膜厚測定装置の構成を示す説明図。
【図2】反射率の分光特性の予測値Rc(λ)の一例を示すグラフ。
【図3】本発明の第2実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図。
【図4】本発明の第3実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図。
【図5】本発明の第4実施例としての膜厚測定装置の構成を示す概念図。
【符号の説明】
100…筐体
110…XYステージ
120…光源部
130,140…受光部
132,142,162,172…支持柱
134,144,164,174…ブラケット
150…ハーフミラー
152…両面ミラー
160,170…集光レンズ
180,182…集光レンズ
184,185,186,187…集光レンズ
200…信号処理部
210…膜厚決定部
220…ハードディスク装置
300…駆動系コントロール部
400…偏光ビームスプリッタ
402…偏光分離膜
W…半導体ウェハ
Claims (3)
- 基板上に既に形成された薄膜の膜厚を測定するための膜厚測定装置であって、
前記薄膜の膜厚を測定するのに適した光を射出する光源部と、
前記光源部から射出された光を、前記基板を照射する第1の光と、前記基板を照射しない第2の光とに分離する光分離部と、
前記基板を照射する前記第1の光のうち、前記基板からの反射光を測定するための第1の受光部と、
前記第1の受光部における測定と同時に、前記第2の光を測定するための第2の受光部と、
前記第1の受光部によって測定された第1の測定値を、前記第2の受光部によって測定された第2の測定値を用いて補正することによって求められる特定の反射率の実測値と、前記薄膜の複数の膜厚値から予測される前記特定の反射率の予測値とから、前記薄膜の膜厚を決定する膜厚決定部であって、前記特定の反射率は、前記薄膜が形成されていない基板からの反射光の強度を基準とする反射率である、前記膜厚決定部と、
を備え、
前記特定の反射率の実測値Rmは、k×I m1 /I m2 で表され、
前記I m1 は、前記第1の測定値であり、
前記I m2 は、前記第2の測定値であり、
前記kは、1/(I m10 /I m20 )で表され、
前記I m10 と前記I m20 とは、それぞれ、前記薄膜が形成されていない基板を測定対象としたときの前記第1の受光部の測定値と前記第2の受光部の測定値とであることを特徴とする膜厚測定装置。 - 請求項1記載の膜厚測定装置であって、
前記光源部は、ほぼ単色の光を射出する半導体発光素子を含む、膜厚測定装置。 - 請求項2記載の膜厚測定装置であって、
前記半導体発光素子は、異なる複数の光を射出する発光ダイオードを含む、膜厚測定装置。
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