JP4069759B2 - 平板型燃料電池セルスタック及び平板型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平板型燃料電池セルスタック及び平板型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルのセルスタックを収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。
【0003】
燃料電池セルは固体電解質を酸素側電極、燃料側電極で挟持して構成され、酸素側電極に酸素含有ガスを供給し、燃料側電極に水素を含むガス、もしくは水素に変化しうるガスを供給することで、固体電解質を挟んで対峙する両電極に電位差が発生し、発電するものである。
【0004】
これらの燃料電池は燃料電池セル当たりの発電量が小さいため、複数の燃料電池セルを電気的に接続して構成されている。
【0005】
図2は、従来の平板型燃料電池を示すもので、この平板型燃料電池では、外部からのガスを複数の燃料電池セル1に導入するための給気側ガス配管3が給気側マニホールド5に接続され、給気側マニホールド5には、複数の平板型燃料電池セル1間に配置されたセパレータ6の給気側マニホールド5側に形成されたガス導入口7にそれぞれガスを導く給気側ガス室9が形成されている。
【0006】
セパレータ6の他方の端部には、ガスを排出するガス排出口11が形成されており、排気されたガスを燃料電池外に排出するための排気側マニホールド13と排気側ガス配管15が配置されている。排気側マニホールド13には排気ガスを集めるための排気側ガス室17が形成されている。また、平板型燃料電池セル1間に配置されたセパレータ6には、ガス導入口7からガス排出口11に連通するガス流路19aが形成されている。また、セパレータ6のガス流路19aと直交する方向には、他のガスを平板型燃料電池セル1に供給するガス流路19bが形成されている。
【0007】
平板型燃料電池では、平板型燃料電池セル1は一般に矩形板状の形状を有しており、図2に示した給気側マニホールド5と排気側マニホールド13は平板型燃料電池セル1に燃料ガスを供給し、排気するためのもので、ガス流れが燃料ガスと直交する方向に、酸素含有ガスを供給、排気するための給気側マニホールド(図示せず)と排気側マニホールド(図示せず)を有している。
【0008】
また、燃料側電極1a、固体電解質1b及び酸素側電極1cを積層して構成される平板型燃料電池1はセパレータ6と交互に積層されている。また、平板型燃料電池セル1の周辺は、ガスケット21でシールされている。
【0009】
平板型燃料電池セルスタックの構造は、図3に示すように、燃料側電極1a、固体電解質1b、酸素側電極1cから構成される平板型燃料電池セル1と、平板型燃料電池セル1に接する両面にガス流路19a、19bが形成されたセパレータ6とが交互に積層されて構成される。このセパレータ6の燃料側電極1aと接する側のガス流路19bには燃料ガスが供給され、酸素側電極1cと接する側のガス流路19aには酸素含有ガスが供給され、発電が行われる。
【0010】
このような平板型燃料電池では、図2に示す給気側マニホールド5に、酸素含有ガスを供給し、給気側ガス室9を通じて、セパレータ6の一方の端部に形成されたガス導入口7にガスを導き、セパレータ6の酸素側電極1cと接する面に形成されたガス流路19aを通過させる。ガス流路19aを通過したガスは、セパレータ6の他方端部に形成されたガス排出口11から、排気側マニホールド13に形成された排気側ガス室17に導かれ、排気側ガス配管15を経由して、燃料電池外へと排気される。
【0011】
同時に、燃料ガスを他方の給気側マニホールド(図示せず)に供給し、セパレータ6の燃料側電極と接する面に形成されたガス流路19bを通過させる。ガス流路19bを通過した燃料ガスは排気側マニホールド(図示せず)に形成された排気側ガス室(図示せず)に導かれ、排気側ガス管(図示せず)を経由して、燃料電池外へと排気される。
【0012】
燃料ガスと酸素含有ガスは、上記の経路を辿り、平板型燃料電池セル1へ供給され、排出される。このとき、平板型燃料電池セル1の燃料側電極1aに供給された燃料ガスと、酸素側電極1cに供給された酸素含有ガスとが電気化学反応を起こし、発電を行う。
【0013】
このような平板型燃料電池セル1では、図3に示すように燃料側電極1a、固体電解質1b、酸素側電極1cのうちいずれかを厚くし、構造体としての強度を確保し、支持体の機能を付与している。これらのうち、固体電解質1bは、厚くなると平板型燃料電池セル1の発電性能が低下するため、一般的には燃料側電極1aあるいは、酸素側電極1cに支持体としての機能を持たせている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
上述した平板型燃料電池セル1を作製する方法としては、燃料極1aと固体電解質1bとを同時焼成により形成することが知られている。この同時焼成法は、非常に簡単なプロセスで製造工程数も少なく、平板型燃料電池セル1の製造時の歩留まり向上、コスト低減に有利である。
【0015】
【特許文献1】
特開2002−343376号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、支持体として用いる酸素側電極1cあるいは燃料側電極1aと、固体電解質1bの熱膨張係数は異なっているため、支持体として用いる酸素側電極1cあるいは燃料側電極1aがあまり厚くなると、焼成時や、発電に伴う加熱や冷却時に固体電解質1bと支持体として用いる電極の熱膨張差に起因して、固体電解質1bと支持体として用いる電極の界面にクラックが発生するなどして、平板型燃料電池セル1の発電性能が低下したり、平板型燃料電池セル1が破壊するなどの問題があった。
【0017】
そのため、このような平板型燃料電池1では発電性能は高いものの、信頼性が低く、実用化が困難であるという問題があった。
【0018】
本発明は、平板型燃料電池セルの各部材間の接続信頼性が高く、信頼性の高い平板型燃料電池セルスタック及び平板型燃料電池を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の平板型燃料電池セルスタックは、Ni及び/又はNiOをNi換算で支持体全量中42体積%以上と、希土類元素酸化物を支持体全量中48体積%以上とを含有し、熱膨張係数が9.74×10 −6 /℃〜10.39×10−6/℃である板状の支持体に、燃料側電極、固体電解質及び酸素側電極を順次、形成してなる平板型燃料電池セルと、導電性材料からなるセパレータとを交互に積層してなることを特徴とする。
【0020】
このような平板型燃料電池セルスタックでは、燃料側電極を厚くし、支持体としての機能を付与することに代え、導電性の多孔質な支持体を用いることで、燃料側電極を厚くする必要がなくなる。
【0021】
また、支持体をNi及び/又はNiOをNi換算で支持体全量中42体積%以上と、希土類元素酸化物を支持体全量中48体積%以上とを含有して構成することで、特に同時焼結を行う場合に問題となる燃料側電極や固体電解質への元素の拡散に伴う悪影響を最小限にすることができるため、平板型燃料電池セルスタックの性能低下を防止できる。また、支持体の導電材料としてNi及び/又はNiOを用いているため、安価であり、また、還元雰囲気中でも安定な金属として存在することができため、平板型燃料電池セルスタックの長期信頼性を高めることができる。
【0022】
また、本発明の平板型燃料電池セルスタックは、支持体の希土類元素が、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd及びPrから選ばれた1種以上からなることを特徴とする。
【0023】
上記の希土類元素酸化物は、熱膨張係数がYSZ(Y2O3を固溶したZrO2)よりも低く、支持体材料として用いることで支持体の熱膨張率を電解質の熱膨張率に合わせることができるため、支持体と燃料側電極、燃料側電極と固体電解質の界面に発生する応力を小さくすることができ、これらの界面のクラックの発生を抑制でき、平板型燃料電池セルスタックの信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の平板型燃料電池セルスタックは、支持体の希土類元素酸化物がY2O3及び/又はYb2O3であることを特徴とする。希土類元素酸化物の中でも、Y2O3、Yb2O3は比較的安価で、供給も安定している。また、希土類元素酸化物の中でも熱膨張係数が比較的低いため、支持体のNi及び/又はNiOの量を増加させることが可能となり、支持体の導電性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の平板型燃料電池は、上記した平板型燃料電池セルスタックを収納容器内に収納してなることを特徴とする。このような平板型燃料電池では、発電性能に優れるとともに信頼性の高い平板型燃料電池を提供できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の平板型燃料電池セルスタックは、図1に示すように、多孔質なガス透過性の導電性支持体33aに、多孔質な燃料側電極33b、緻密な固体電解質33c、多孔質な酸素側電極33dを順次積層してなる平板型燃料電池セル33と、セパレータ35とを交互に積層して構成される。
【0030】
このセパレータ35の支持体33a側と、酸素側電極33d側に形成される面には、それぞれ燃料ガス流路37aと酸素含有ガス流路37bとが形成されている。燃料ガス流路37aの片方の端部には、燃料ガスを燃料電池セル33に導入するための燃料ガス導入口38が形成されており、他方の端部には燃料ガス排出口(図示せず)が形成されている。また、酸素含有ガス流路37bの片方の端部には酸素含有ガス導入口(図示せず)が形成されており、他方の端部には酸素含有ガス排出口39が形成されている。
【0031】
この燃料ガス導入口38から燃料ガス流路37aに導入された燃料ガスは支持体33a表面から、支持体33a内部に拡散し、さらに、燃料側電極33bに到達する。また、酸素含有ガス導入口から酸素含有ガス流路37bに導入された酸素含有ガスは酸素側電極33dに供給される。このように固体電解質33cを介して対向する燃料側電極33bと酸素側電極33dに供給された燃料ガスと酸素含有ガスとが電気化学反応を起こし発電する。余剰の燃料ガスと酸素含有ガスはそれぞれ燃料ガス排出口(図示せず)と酸素含有ガス排出口39から排出される。
【0032】
平板型燃料電池は、このような平板型燃料電池セルスタックを収納容器内に収納して構成される。
【0033】
そして、本発明の平板型燃料電池セル33の支持体33aは、Ni及び/又はNiO(以下、Niを鉄族金属、NiOを鉄族金属の酸化物ということがある)をNi換算で支持体全量中42体積%以上と、希土類元素酸化物を支持体全量中48体積%以上とを含有し、熱膨張係数が9.74×10 −6 /℃〜10.39×10−6/℃である。例えば、支持体33aをNiと、希土類元素酸化物の中でも熱膨張係数の低いY2O3とから形成することで、支持体33aに高い導電性を付与することができるとともに、支持体33aの熱膨張係数を、例えば、YSZからなる固体電解質33cに近づけることができるため、発電に伴う加熱や冷却に起因し、発生する熱応力を小さくすることができ、固体電解質33cよりも熱膨張係数が大きな燃料側電極33bを厚くし、支持体としての機能を持たせていた従来の燃料電池セル1よりも、高い信頼性が得られる。
【0034】
支持体33aに用いる希土類元素は、例えば、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm及びPrから選ばれた1種以上の元素を含む希土類元素酸化物を用いることが望ましい。これらの希土類元素酸化物はYSZよりも熱膨張係数が小さいため、支持体33aの熱膨張係数を固体電解質33cに近づけることができるとともに、従来のNiとYSZからなる燃料側電極33bよりも支持体33a中のNiの量を増やすことができるため、支持体33aの電気伝導度を従来の燃料側電極33bよりも高くすることができ、これにより、燃料電池セル33の信頼性を向上できることに加え、平板型燃料電池セル33の性能を高くすることができる。
【0035】
また、上記の希土類元素酸化物は、焼成時や発電中における鉄族金属やその酸化物との固溶、反応をほとんど生じない。
【0036】
また、支持体33aを構成している鉄族金属あるいはその酸化物および上記の希土類元素酸化物はいずれも拡散しにくい。従って、支持体33aと燃料側電極33b及び固体電解質33cとを同時焼成した場合にも、例えば、希土類元素の固体電解質33cへの拡散が有効に抑制され、固体電解質33cのイオン伝導度等への悪影響を回避することができる。また、仮に、希土類元素が同時焼成時に拡散したとしても、固体電解質33cは、そもそもY2O3やYb2O3等の希土類元素酸化物が固溶したZrO2等から構成されており、希土類元素の固体電解質33cへの拡散の影響は最小限に抑制できる。
【0037】
なお、これらの希土類元素酸化物に加え、他の希土類元素酸化物を含んでいても、希土類元素酸化物としての熱膨張係数がYSZよりも小さくなる範囲であれば、何ら支障がない。
【0038】
また、希土類元素酸化物の熱膨張係数がYSZよりも小さい範囲であれば、希土類元素酸化物として複数の希土類元素を含有する精製途中の安価な複合希土類元素酸化物原料などを用いてもよい。これらの希土類元素酸化物の中で、比較的安価であり、また、供給も安定しているため、Y2O3、Yb2O3を用いることが最も望ましい。
【0039】
この支持体33aのNi量は42体積%以上とすることが、支持体33aの電気伝導度を高くできる点で重要である。また、支持体33aのNi量は52体積%以下とすることが望ましく、この場合には、発電時の熱による支持体33aの変形を防止することができる。さらに、Ni量を上記の範囲とすることで、支持体33aの熱膨張係数を固体電解質33cに近づけることができる。なお、この支持体33aにおいて、鉄族金属及び希土類元素酸化物は、それぞれがほとんど反応せず、単独の形態で存在している。
【0040】
なお、支持体33aは厚さを500μm以上とすることで支持体33aとしての機能を十分発揮でき、さらに1000μm以上とすることでハンドリング性も向上する。
【0041】
支持体33aと固体電解質33cとの間に形成される燃料側電極33bは、例えば、NiとYSZから構成されており、この燃料側電極33bの厚みは1〜30μmであることが望ましい。燃料側電極33bの厚みを1μm以上とすることで、燃料側電極33bとしての3層界面が十分に形成される。また、燃料側電極33bの厚みを30μm以下とすることで固体電解質33cとの熱膨張差による界面剥離を防止できる。
【0042】
燃料側電極33bの支持体33aと逆の面には、Y2O3などが固溶したZrO2などの固体電解質33cが設けられる。
【0043】
また、固体電解質33cの燃料側電極33bと逆の面に設けられた酸素側電極33dは、遷移金属ペロブスカイト型酸化物のランタン−マンガン系酸化物、ランタン−鉄系酸化物、ランタン−コバルト系酸化物または、それらの複合酸化物の少なくとも一種の多孔質の導電性セラミックスから構成されている。酸素側電極33dは、800℃程度の中温域での電気伝導性が高いという点から(La,Sr)(Fe,Co)O3が望ましい。酸素側電極33dの厚さは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
【0044】
以上のような平板型燃料電池セル33の製法について説明する。先ず、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prから選ばれた1種以上の元素を含む希土類元素酸化物と、Ni及び/又はNiO粉末とを混合し、この混合粉末に、有機バインダーと、溶媒とを混合し、スラリーを作製し、ドクターブレード法にてシート状の支持体成形体を作製する。
【0045】
次に、この支持体成形体を所定の厚みになるまで複数積層する。なお、積層の必要がない場合には、この限りでない。
【0046】
次に、希土類元素が固溶したZrO2粉末と有機バインダーと溶媒とを混合した固体電解質材料を用いてシート状の固体電解質成形体を作製する。
【0047】
次に、Ni及び/又はNiO粉末と、希土類元素が固溶したZrO2粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合し、作製した燃料側電極となるスラリーを、前記固体電解質成形体の一方側に塗布し、固体電解質成形体の一方側の面に燃料側電極成形体を形成する。
【0048】
導電性支持体成形体に、前記シート状の固体電解質成形体と燃料側電極成形体の積層体を、燃料側電極成形体が導電性支持体成形体に当接するように積層し、乾燥する。なお、このとき脱脂を行ってもよい。
【0049】
次に、これらの成形体の積層体を1400〜1550℃の温度範囲で焼成し、積層体を得る。
【0050】
次に、遷移金属ペロブスカイト型酸化物粉末と、有機バインダーと溶媒とを混合し、スラリーを作製し、ドクターブレード法にてシート状の酸素側電極成形体を作製する。
【0051】
次に、前記積層体の固体電解質33cの燃料側電極33b、支持体33aが形成されていない側の面に、前記酸素側電極成形体を積層し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、本発明の平板型燃料電池セル33を作製できる。
【0052】
なお、平板型燃料電池セル33は、酸素含有雰囲気での焼成により、支持体33a、燃料側電極33bのNi成分がNiOとなっているため、その後、支持体33a側から還元性の燃料ガスを流し、NiOを800〜1000℃で還元処理する。また、この還元処理は発電時に行ってもよい。
【0053】
このように作製した平板型燃料電池セル33と、両面にガス流路37a、37bが形成された導電性材料からなるセパレータ35とを、交互に積層することで平板型燃料電池セルスタックを作製できる。なお、積層された端側の平板型燃料電池33の外側には平板型燃料電池セル33側にのみガス流路37a、37bが形成されたセパレータ35が配置される。
【0054】
また、平板型燃料電池セル33の外周にはガスシールのためにガスケット(図示せず)が設けられる。
【0055】
平板型燃料電池は、以上説明した平板型燃料電池セルスタックを収納容器内に収納し、ガス流路37a、37bに燃料ガス、酸素含有ガスをそれぞれ供給するマニホールドを形成して構成される。
【0056】
本発明によれば、平板型燃料電池セル33の信頼性を飛躍的に向上させることができたため、信頼性に優れ、高い発電能力を有する平板型燃料電池を容易に供給できる。
【0057】
なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記の各部材の成型法は、上記に述べた以外にも、例えば、プレス成形などの手段を用いてもよい。
【0058】
【実施例】
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.8〜1.0μmのY2O3粉末、Yb2O3粉末及びLu2O3粉末を、焼成、還元後の体積比率が表1になるように混合した。
【0059】
また、比較例として、平均粒径0.5μmのNiO粉末、平均粒径0.8〜1.0μmのYSZ粉末を、焼成、還元後の体積比率が表1になるように混合した。
【0060】
なお、表1のNiO粉末量は、Ni換算量である。例えば、試料No.1ではNiO粉末とY2O3粉末とを混合し、焼成、還元後にNi換算で54体積%、Y2O3換算で46体積%となったことを意味する。
【0061】
次に、これらの混合粉末に、ポアー剤、アクリル系樹脂などの有機バインダーと、有機溶剤とを混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で500μmのシート状の支持体成形体を作製した。この支持体成形体を4層に積層し、支持体成形体の積層体を作製した。この積層体を1000℃まで昇温し、脱脂、仮焼した。
【0062】
次に、希土類元素が固溶したZrO2粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合した固体電解質材料を用いてシート状の固体電解質成形体を作製した。
【0063】
次に、次に、0〜10モル%Y2O3を含有するZrO2(YSZ)粉末と、YとZrの有機金属塩、上記したNiO粉末と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを、Niが48体積%、YSZが52体積%となるように混合した燃料極材料スラリーを用いて、固体電解質成形体上にスクリーン印刷法により、燃料側電極成形体を形成した。
【0064】
次に、仮焼した支持体成形体に、燃料側電極成形体と固体電解質成形体の積層体を、支持体成形体と燃料側電極成形体とが当接するよう積層した。
【0065】
次に、支持体成形体、および燃料側電極成形体、固体電解質成形体を積層した積層成形体を脱脂処理し、酸素含有雰囲気中で1500℃で同時焼成した。
【0066】
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したスラリーを用いて、シート状の酸素側電極成形体を作製し、前記積層体の固体電解質33cの表面に積層し、1150℃で焼き付け、酸素側電極33dを形成し、平板型燃料電池セル33を作製した。
【0067】
なお、作製した平板型燃料電池セル33の寸法は200mm×200mmで、支持体33aの厚さは1600μm、燃料側電極33bの厚さは10μm、固体電解質の厚さは30μm、酸素側電極33dの厚さは40μmであった。
【0068】
次に、作製した平板型燃料電池33を5つ用いて、平板型燃料電池セルスタックを作製した。平板型燃料電池セル33間には導電性部材からなるセパレータ35を配置し、また、最端部に配置された片方の平板型燃料電池セル33の支持体33a側と、他方の平板型燃料電池セル33の酸素側電極33d側にもセパレータ35を配置した。
【0069】
次に、この平板型燃料電池セル33の支持体33a側から、水素ガスを流し、850℃で、支持体33a及び燃料側電極33bの還元処理を施した。
【0070】
得られた平板型燃料電池セルスタックのセパレータ35に形成されたガス流路37aに燃料ガスを流通させ、セパレータ35に形成されたガス流路37bに酸素含有ガスを流通させ、平板型燃料電池セルスタックをガスバーナーを用いて850℃まで加熱し、発電試験を行い、1時間の発電の後、室温まで冷却した。この発電試験を20回繰り返した後、発電特性の変化と、支持体33aと燃料側電極33b、固体電解質33c、酸素側電極33dの界面のクラックの有無を確認し、試験結果を表2に記載した。また、得られた支持体33aと比較例の燃料側電極1aとを、還元処理した後、25〜1000℃の温度範囲の熱膨張係数を測定し、表2に記載した。なお、固体電解質33cの熱膨張係数は10.8×10−6/℃であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示すように、比較例であるNiとYSZからなる支持体を兼ねた燃料側電極1aを用いた試料No.20〜23についてみると、支持体を兼ねた燃料側電極1aの熱膨張係数はいずれも12.0×10−6/℃を超えており、固体電解質1bの熱膨張係数10.80×10−6/℃とは大きな差がある。
【0074】
これらのうち、試料No.20、21では、焼成時に固体電解質1bとの熱膨張差により支持体を兼ねた燃料側電極1aが破壊された。また、試料No.22は、焼成時の破壊は認められなかったが、20回の発電試験において、燃料側電極1a及び固体電解質1bにクラックが発生するとともに、燃料側電極1aと固体電解質1bの界面に剥離が生じ発電不能となった。また、試料No.23は、焼成後の還元処理時に固体電解質1bにクラックが発生し、燃料側電極1aと固体電解質1bの界面にも剥離が生じており、信頼性に問題があることがわかる。
【0075】
以上説明したNiとYSZからなる支持体を兼ねた燃料側電極1aを用いた比較例では、NiとYSZの比率を変化させたとしても、支持体を兼ねた燃料側電極1aと固体電解質1bの熱膨張差は小さくできず、十分な信頼性は得られなかった。
【0076】
一方、本発明の試料No.2〜7、10〜19は、支持体33aと固体電解質33cとの熱膨張差が小さくなっており、いずれも高い信頼性を示した。
【0077】
これらの試料について詳細に分析したところ、支持体33aのNi量が52体積%を超える試料No.1では、支持体33a内部に微少なクラックが確認された。
【0078】
また、支持体33aのNi量が42体積%を下回る試料No.8、9では、固体電解質33cに微少なクラックが確認された。
【0080】
また、希土類元素酸化物として、Yb2O3を用いた試料No.10、11についても、20回の発電試験の後でも発電特性は維持されており、高い信頼性を有することがわかる。
【0081】
また、希土類元素酸化物としてLu2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O 3 及びPr2O3を用いた試料No.12〜19も20回の発電試験の後でも発電特性は維持されており、高い信頼性を有することがわかる。
【0082】
なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
【発明の効果】
本発明の平板型燃料電池セルスタック及び平板型燃料電池では、Ni及び/又はNiOをNi換算で支持体全量中42体積%以上と、希土類元素酸化物を支持体全量中48体積%以上とを含有し、熱膨張係数が9.74×10 −6 /℃〜10.39×10−6/℃である支持体を用いることで、支持体と燃料側電極並びに固体電解質の界面のクラックの発生や剥離の発生を防止できるとともに、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平板型燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図2】従来の平板型燃料電池を示す断面図である。
【図3】図2の平板型燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【符号の説明】
33・・・燃料電池セル
33a・・・支持体
33b・・・燃料側電極
33c・・・固体電解質
33d・・・酸素側電極
35・・・セパレータ
Claims (4)
- Ni及び/又はNiOをNi換算で支持体全量中42体積%以上と、希土類元素酸化物を支持体全量中48体積%以上とを含有し、熱膨張係数が9.74×10 −6 /℃〜10.39×10−6/℃である板状の支持体に、燃料側電極、固体電解質及び酸素側電極を順次、形成してなる平板型燃料電池セルと、導電性材料からなるセパレータとを交互に積層してなることを特徴とする平板型燃料電池セルスタック。
- 前記支持体の希土類元素が、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd及びPrから選ばれた1種以上からなることを特徴とする請求項1記載の平板型燃料電池セルスタック。
- 前記支持体の希土類元素酸化物がY2O3及び/又はYb2O3であることを特徴とする請求項1又は2記載の平板型燃料電池セルスタック。
- 収納容器内に請求項1乃至3記載のうちいずれかに記載の平板型燃料電池セルスタックを収納してなることを特徴とする平板型燃料電池。
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