JP4067750B2 - 光利用熱電子発電方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光利用熱電子発電方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱電子発電は、熱エネルギーから電気エネルギーへの直接変換法の一つであり、金属面が加熱されると電子が放出される熱電子放出現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方式である。
【0003】
かかる熱電子発電器は以下のような利点を有している。まず、小型化が可能であり、可動部がない静止器であるために静粛性に優れ、保守が容易である。また、機械的なエネルギーを介さずに電気エネルギーに変換されるために発電効率が高い。
【0004】
これらのことから、太陽光等を利用した分散型発電等への応用に適していると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱電子発電器は未だ実用化には至っていない。熱電子発電器は一般に高温で動作するため、高温動作による陰極の寿命、あるいはその安定性が問題となるからである。また、陰極から放出される電子は電極間空間に空間電荷としてとどまるが、両電極間に生ずる空間電荷効果が大きいと十分な電流が取り出せない。空間電荷効果を低減するためには電極間の距離を極端に短くするか、発電器内にセシウムを封入し、セシウムイオンを生成して空間電荷を中和することが考えられる。
【0006】
これまでにも熱電子発電器に磁界を印加して出力電流特性の検討を行ったもの、Xeランプを光源として光照射することで、出力電流の増大現象が起こることを明らかにした研究等がある。
【0007】
熱電子発電器内に封入されているセシウムは560〜660nmの波長域にセシウム分子の吸収帯が存在しており、この付近の光を照射するのが有効であると思われる。そこで、本発明は、単色性が良く、発振波長が可変である色素レーザ光を用い、熱電子発電器に光照射を行ったときの出力電流の波長依存性、及び光照射による出力電流の増大効果を利用した低温動作熱電子発電器の基礎的な実験を行った。
【0008】
一方、従来からの太陽電池は太陽光波長のうちのごく一部しか活用されておらず、結果として、発電効率は10%程度と低い。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、強力な光である太陽光波長を十分に活用して、発電効率の向上を図り得る光利用熱電子発電方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕光利用熱電子発電方法において、強力な光をレンズを使って集光し、前記強力な光の長波長域でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱するとともに、短波長域光を前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、該アルカリ金属原子を励起・電離させて放電を起こさせ、前記エミッタ電極近傍の負の空間電荷を中和させ、エミッタ電流を増大させることを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の光利用熱電子発電方法において、前記強力な光として太陽光を用いることを特徴とする。
【0012】
〕上記〔1〕記載の光利用熱電子発電方法において、前記アルカリ金属原子としてセシウム原子を用いることを特徴とする。
【0013】
〕光利用熱電子発電装置において、電気炉内に配置される低圧セシウム封入型熱電子発電管と、レンズを使って強力な光を集光し、該強力な光の長波長域でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱する手段と、短波長域光を前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、該アルカリ金属原子を励起・電離させて放電を起こさせ、前記エミッタ電極近傍の負の空間電荷を中和させる手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔〕記載の光利用熱電子発電装置において、前記レンズはフレネルレンズであることを特徴とする。
【0015】
〕上記〔〕又は〔〕記載の光利用熱電子発電装置において、前記強力な光は太陽光であることを特徴とする。
【0016】
〕上記〔〕又は〔〕記載の光利用熱電子発電装置において、前記アルカリ金属原子はセシウム原子であることを特徴とする。
【0017】
〕光利用熱電子発電方法において、強力な光をレンズを使って集光し、前記強力な光でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱するとともに、前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、空間電荷中和度αを10-2以下となし、エミッタからの熱電子放出電流を10-3A/cm2 となし、エミッタ仕事関数φE を2.2eVとすることにより、光照射によって電極間空間に放電を誘起し、高効率で大出力を得られる点火モード動作を行うことを特徴とする。
【0018】
〕上記〔〕記載の光利用熱電子発電方法において、前記光照射は太陽光照射であることを特徴とする。
【0019】
10〕上記〔〕記載の光利用熱電子発電方法において、前記光照射は太陽光照射であり、フレネルレンズを使って集光し、電力と温水を得ることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置について説明する。
【0022】
図1は本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の模式図である。
【0023】
この図において、1は電気炉、2はその電気炉1に設けられるフレネルレンズからなる第1の光照射用窓、3はその電気炉1に設けられる第2の光照射用窓、4は低圧セシウム封入型熱電子発電管(熱電子発電器)、5は熱電子発電器4内に配置されるコレクタ、6はエミッタ、7はそのエミッタ6に配置されるヒータ、8はセシウム溜め、9はヒータ7に接続されるヒータ加熱用電源、10はダイオード、11はコレクタ5とエミッタ6間に接続される直流可変電源、12は外部抵抗、21は太陽光、31はエキシマレーザ、32は色素レーザである。
【0024】
そこで、熱電子発電器4はパイレックスガラス製であり、直径約50mm、長さ約140mmで、二方向に光照射用の窓が設けられている。高温に加熱されるエミッタ6から熱電子放出が起こり、放出される電子をコレクタ5で捕集し出力電流を得る。エミッタ6は直径約15mmの円筒形のニッケル製で渦巻状ヒータにより加熱される傍熱型の構造である。コレクタ5は直径約40mmのステンレス製であり、エミッタ6に光を照射できるように中心が約15mmのモリブデンメッシュ(メッシュ線径0.1mmφ、20mesh/inch)でできており、この部分の光の透過率は約85%である。またエミッタ6とコレクタ5の電極間隔は、電極間にレーザ光を照射することを考え約15mmとした。なお、熱電子発電器4内にはセシウム溜め8があり、セシウムが封入されている。
【0025】
このような光利用熱電子発電装置は、熱電子発電器4、光源である色素レーザ32(Lambda Physic社製、LPD3002A)、色素レーザ32をポンピングするためのエキシマレーザ31(Lambda Physic社製、LPX205i)、及び測定用の外部回路で構成される。色素レーザ32のレーザ媒質はローダミン640をメタノール溶解したもので、発振波長615〜660nm、半値幅33nsである。ポンピング用のエキシマレーザ31のレーザ媒質はXeClで、発振波長308nm、半値幅30ns、最大エネルギー約500mJである。熱電子発電器4は電気炉1内に設置され、炉温度を調節することにより、熱電子発電器4内のセシウム蒸気圧を制御する。炉温度は、熱電子発電器4下部にあるセシウム溜め8の近くに置いたクロメル−アルメル熱電対で測定した。エミッタ6の温度測定は光高温計(Chino社製パイロスタMODEL IR−U)を用いた。エミッタ6は、ヒータ加熱用電源9からのダイオード10による60Hz半波整流電流を用いて加熱し、表面温度を変化させる。半波整流電流を用いているのは、加熱電流で生じる電界が放出される電子に影響を与え、出力電流が減少することやノイズの影響を避けるためである。したがって、ここでの測定は全て、ヒータ加熱用の半波整流電流休止間に行った。
【0026】
光照射実験を行う前に、エミッタ6とコレクタ5の両電極間に三角波電圧を印加し、印加電圧が0Vの時の熱電子発電器4の出力電流を短絡電流値として求めた。三角波電圧はヒータ加熱用の60Hz半波整流電流の休止している半サイクル間に印加した。図2にエミッタ温度に対する短絡電流特性を示す。これは、エミッタ温度の増加によりセシウムの接触電離が盛んに起こり空間電荷が中和されるためと考えられる。今回実験した範囲内では、光照射を行う前の短絡電流はせいぜい0.6A/m2 程度の小さなものであった。
【0027】
光照射実験の際には、ヒータ加熱用の60Hz半波整流電流が休止している半サイクル間に単発で光を照射する。レーザ光は二枚のレンズを用いてビーム径約10mmの平行ビームにした。実験用の光源はパルス発振を用いたので、その出力電流は時間とともに変化する。従って三角波電圧源を用い短絡電流値を簡単に求めることは困難であるため、熱電子発電器4の出力電流の目安としてエミッタ6とコレクタ5の電極間に予め2Vの直流バイアスをコレクタ5側が正電位となるように印加し、外部抵抗12の電圧降下から出力電流を測定した。
【0028】
また、この実験では、エミッタ6とコレクタ5の電極間空間に光照射を行う時を空間照射、コレクタ5を通過させ、エミッタ電極に光照射を行うときを電極照射と呼ぶことにする。出力電流波形の一例を図3に示す。
【0029】
図3中のカーソルXは光照射前の出力電流で、カーソルOは光照射後のピーク出力電流である。これらの波形の実験条件は共通で、セシウム蒸気圧は2.8Pa、エミッタ温度は870Kであり、図3(a)は空間照射、図3(b)は電極照射の例である。両者を比較すると、図3(a)に示す空間照射の方が遅く立ち上がり、図3(b)に示す電極照射では鋭く立ち上がった後、ゆっくり立ち上がっていることが分かる。図3(b)に示す電極照射ではエミッタに光照射されるため光電子放出が起こり、立ち上がりの鋭いものとなると考えられる。
【0030】
(照射光の波長による出力電流特性)
照射光の波長に対する熱電子発電器の出力電流密度特性を図4に示す。光照射はエミッタとコレクタの電極間空間に照射する空間照射時のものである。光照射を行ったときの熱電子発電器の出力電流は照射光の波長により、著しく変化している。そして波長618nm付近と630nm付近を中心に、幅広い波長領域で比較的大きな出力電流が得られている。波長640nm以降の領域ではあまり大きな出力電流は得られていない。しかし時折、鋭いピークがいくつか現れている。特に出力電流の大きくなる領域ではセシウムの遷移に共鳴した波長であり、光電離が活発に起こる。このために電極間に存在する空間電荷が効率よく中和され、出力電流の増大効果が顕著になると考えられる。波長618nmと630nm付近の幅広い二つのピークはセシウムの分子遷移、そして以後、数度現れる波長域の非常に狭い鋭いピークは、セシウムの原子遷移によるものと思われる。
【0031】
電極照射のときも波長に対する出力電流特性は、図4と同様の傾向を示した。そしてセシウム蒸気圧、エミッタ温度を変化させたときも同様の結果が得られた。
【0032】
熱電子発電の実際の応用を考えると、例えば太陽光のように波長域の広い光源を用いるときは、分子遷移のピークのように幅広く大きな出力電流が得られる波長域の光を照射して動作させるのが有効であろう。以後の実験では、セシウムの分子遷移によるもののうち、大きな出力電流が得られた627nmの波長を選択した。
【0033】
なお、エミッタとコレクタの間隔は、約15mmで照射光のビーム径は約10mmであり、照射光の位置を移動させると熱電子発電器の出力電流も変化し、最適な照射位置が存在していることが実験より明らかとなった。
【0034】
従って、電極間空間において熱電子発電器出力電流の最大となるような位置で実験を行った。その位置は、エミッタからレーザビームの中心までが約5mmの所であった。
(照射光のビーム径に対する出力電流特性)
電極間隔と照射光のビーム径を比較すると照射光のビーム径の方が小さいため、ビーム径を変化させたときの出力電流密度の測定を行った。その結果を図5に示す。照射光のビーム断面積を大きくすると、出力電流も大きくなっていく。つまりビーム径を小さくしてレーザエネルギー密度を大きくすることにより、同じレーザエネルギーならば両極間の広い範囲に光照射を行い空間電荷を中和させた方が、効果的に出力電流が増大すると言える。また、レーザエネルギーの高いときの方がビーム径に対する出力電流の依存性は大きい。しかし、何れの場合でもビーム径が狭いほど出力電流の増加の割合は大きく、ビーム径が広くなるにつれ飽和傾向を示した。
【0035】
(光照射による熱電子発電器の出力電流の改善)
空間照射時のエミッタ温度に対する出力電流密度特性を図6に示す。
【0036】
セシウム蒸気圧1.8Pa以上の時、出力電流はエミッタ温度の上昇とともに大きくなっていき、ピークを迎えてから減少していく。エミッタ温度が高くなると熱電子放出は盛んになり、熱電子発電器の出力電流は増加していく。しかしエミッタ温度がある値以上になると、エミッタ表面のセシウムの吸着量が減り、陰極の仕事関数はニッケルの値に近づき大きな値になる。したがって、電子が放出され難くなり、出力電流にピークが現れるようになる。なお、セシウム蒸気圧は高くなるほど、出力電流のピークはエミッタ温度の高い方へシフトしている。蒸気圧が高いときは、電極表面に吸着するセシウムの層が厚くなっている。
【0037】
したがって、吸着しているセシウムを蒸発させるのに、より高いエミッタ温度を必要とするためと考えられる。
【0038】
エミッタ温度940K、セシウム蒸気圧9.9Paの時、エミッタの仕事関数を文献〔J.M.Houston,H.F.Webster:“Thermonic Energy Conversion”,Advance in Electronics Vol.XVII,Academic Press Inc.New York(1962)〕による値1.69eVと仮定したときのリチャードソン・ダッシュマンの式による放出電子流は、1kA/m2 となり、出力電流は放出電流の5%程度と小さく、まだ、空間電荷が十分中和されているとは言えない。
【0039】
電極照射時のエミッタ温度に対する出力電流特性を図7に示す。
【0040】
実験条件は空間照射のときと同じである。セシウム蒸気圧2.8Pa以下の時は、電極照射の出力電流は空間照射の約半分ほどの値となっている。光照射をエミッタに行うことで電極の加熱効果が起こり、吸着しているセシウムが蒸発して減少する。このため電極の仕事関数は大きくなり、電子が放出され難くなるので出力電流は小さくなる。しかし、セシウム蒸気圧が9.9Paのように高いときでは、電極照射の出力電流は空間照射のものと同程度の値が得られた。これは蒸気圧が高くなると、電極表面に吸着するセシウム層も厚くなるためであると考えられる。このように今回実験した範囲内では、電極方向に光を照射することより、電極間空間に照射した方が大きな出力電流を得ることができた。
【0041】
次に、光照射の効果を見るために、光照射前と光照射後の出力電流の比を図8と図9に表す。いずれの実験条件でも増加率に極大値が現れる。その値は数百倍にも達しており、光照射によりエミッタ温度900K付近の出力電流が著しく改善されている。この時、光照射前の出力電流密度は0.1A/m2 程度と小さく、リチャードソン・ダッシュマンの式による放出電子流の0.03%にすぎない。電極の寿命を考慮すると増加率の極大付近で動作させるのが有効であると考えられる。
【0042】
空間照射時のレーザエネルギーに対する出力電流密度特性を図10に示す。
【0043】
レーザエネルギーを大きくしていくと出力電流も大きくなっていく。しかし、エミッタ温度の低いときでは、レーザエネルギーの値を大きくしても出力電流はあまり変化せず、飽和傾向を示す。エミッタ温度が低いときは放出される熱電子そのものの量が少なく、空間電荷を十分中和するイオンが生成されれば、レーザエネルギーが増加しても出力電流は増加しない。逆にエミッタ温度が高温になると放出される電子の量が多く、レーザエネルギーが高くなると生成されるセシウムイオンの量も多くなり、出力電流は増加する。エミッタ温度が高いとき、レーザエネルギーに対し出力電流密度はまだ飽和していないので、空間電荷を中和するのに十分なエネルギーの光照射により一桁以上大きな出力電流が得られると期待できる。
【0044】
電極照射時のレーザエネルギー出力電流特性を図11に表す。この時の出力電流も、空間照射のときと同様の傾向を示しており、エミッタ温度が低いときは飽和傾向を示し、エミッタ温度が高いときは、レーザエネルギーにより出力電流が増加する。
(出力電流波形の評価)
エミッタ温度に対する出力電流波形のピーク時間の特性を図12に表す。
【0045】
エミッタ温度が低温領域のときほど、出力電流は遅く立ち上がっている。そしてエミッタ温度が高温になるにつれ、出力電流は速く立ち上がるようになりエミッタ温度850K以上の領域では、ピーク時間はほぼ一定値に近づいている。
【0046】
エミッタ温度が低温時では放出電子の初速度は小さく、そしてエミッタ温度の上昇につれ初速度も大きくなる。従ってエミッタ温度が高くなるとピーク時間は速くなるものと思われる。また、空間照射と電極照射のピーク時間を比較してみると、電極照射の方が出力電流の立ち上がりが速くなっている。
【0047】
エミッタ温度に対する出力電流波形の半値幅を図13に示す。エミッタ温度の低い領域では、特に半値幅も広くなっており、温度の上昇に伴って半値幅は狭くなる。エミッタ温度が高くなると多くの電子放出が起こる。そして、放出された電子とセシウムイオンとの再結合が起こり、セシウムイオンの消滅は速くなる。
【0048】
従って、出力電流波形の半値幅も狭くなると考えられる。空間照射と電極照射の半値幅を比較すると、電極照射の方が狭い。電極照射ではエミッタの加熱効果による熱電子放出、または光電子放出現象のために、多くの電子が放出され、セシウムイオンの消滅する時間がさらに速まるためであると思われる。
【0049】
上記したように、熱電子発電器に光照射を行うと、光電離によるセシウムイオンの生成により、出力電流の増大効果が起こる。このためエミッタ温度は比較的低温領域でも大きな出力電流が得られる。その時出力電流は照射する光の波長に大きく依存する。特に、セシウムの分子遷移によるものと思われる広い波長域での増大効果、そしてセシウムの原子遷移によるものと思われる非常に狭い波長域での増大効果の起こることが明らかになった。
【0050】
ここで得られた出力電流密度は、45A/m2 と十分大きな値とはいえない。しかし、レーザエネルギーに対し出力電流には飽和していない。即ち、空間電荷を十分中和するほどイオンが生成されていない。光照射により高い出力電流のレベルまで空間電荷を中和することが出来るならば、熱電子発電器の動作温度を低温化させる一つの有力な方法となることが期待できる。
【0051】
太陽光等を利用した分散型発電を考えるとき、単に太陽光を熱エネルギーに変換するだけでなく、積極的に光エネルギーの一部をセシウムイオン生成のために利用するような装置とすることにより、熱電子発電器の動作温度を低温化させ、その動作寿命を格段に延ばすことが可能である。
【0052】
なお、上記実施例では、強力な光として、太陽光を挙げたが、強力な光源があれば、この熱電子発電器の熱源に利用できる。具体的には、太陽光、溶鉱炉等からの放射光、核融合装置内の放射光、原子炉の燃料の発光等がこれに相当する。
【0053】
化石燃料の燃焼熱でエミッタを加熱し、発電効率改善のための補助放電に光電離・励起を利用することもできる。すなわち、熱源に化石燃料の燃焼熱を、補助放電に光電離を用いた高効率発電にも本発電器を応用できる。この場合も、コジェネレーションが可能である。
【0054】
また、本発明は、太陽エネルギーを熱源とする家庭用コジェネレーションシステムとして利用できる。これと同じ方式で、農業用コジェネレーションシステムにも応用できる。宇宙で利用すれば、太陽エネルギーの密度が高く、紫外光成分も大きいので、発電量は著増する。宇宙船の動力用電源にも利用できる。
【0055】
更に、製鉄用溶鉱炉などの大型炉の廃熱を用いて発電することができる。
【0056】
核融合が実現した段階で、発生エネルギーを電気に変換しなければならない。その場合にも、本発明は有効である。
【0057】
上記したように、太陽電池と太陽熱温水器の2つの機能を併せ持つ装置であるため、太陽エネルギーを熱源とするコジェネレーションシステムが構築される。これは同時に太陽エネルギーの高効率利用を意味する。
【0058】
太陽電池と比べて、製造コストは著しく低く(数分の1以下)、家庭用の装置として普及し易い条件を持っている。また、故障が少なく装置の維持が容易である。
【0059】
光エネルギーは電極の支持を簡略化できるので、電極からの熱伝導損失を抑えることができ、高効率発電を可能とする。
【0060】
温水を取り出す代わりに、熱電素子を使えば、発電力はさらに高められる。
【0061】
次に、本発明の他の実施例の光利用熱電子発電方法について説明する。
【0062】
セシウム雰囲気中の高温タングステン表面から放出される熱電子放出電流密度は、セシウム蒸気温度Tcs が500K付近の場合には、1400K以下のエミッタ温度TE で極大値を持つ。セシウム原子は極めて低い励起電圧と電離電圧を持つため、太陽光によりセシウムを励起および電離させることができる。これらの現象を利用して、太陽光のみまたは他の熱源との併用により、低いエミッタ温度TE で動作する新しいタイプの熱電子発電器(TEC)を開発できる。
【0063】
本発明では、低いエミッタ温度TE で動作する熱電子発電器の出力特性改善の観点から、太陽光と類似した広い放射スペクトルを持つキセノンランプ光の照射効果を調べた。
【0064】
この結果、以下の三つの条件を満たす場合に、熱電子発電器出力特性は光照射により大幅に改善されることが明らかになった。
【0065】
すなわち、
(1)空間電荷中和度α<10-2とする。
【0066】
(2)熱電子放出電流密度Je >10-3A/cm3 とする。
【0067】
(3)エミッタ仕事関数φE >2.2eVとする。
【0068】
これらの条件は、熱電子発電器の電極間空間に大きな負の空間電位が形成されることを意味する。光照射によって電極間の電位の谷に生成された電子はコレクタ前面の電子シースで加速され、セシウム原子を電離する。これにより、光照射により点火モードへの遷移を加速したり、熱電子発電器の出力電流を増加させることができる。
【0069】
以下、この実施例を詳細に説明する。
【0070】
熱電子発電器は可動部を持たなくても、熱を電気に直接変換することができる。また、熱電子発電器は高い仕事関数を持つ高温のエミッタと低い仕事関数を持つ低温のコレクタから構成され、出力特性を改善するためにセシウムガスが封入されている。多くの場合、熱電子発電器は小型のシステムであり、メンテナンス上の問題がない。
【0071】
熱から電気へのエネルギー変換は、高温エミッタからの熱電子放出によって行われる。熱エネルギーにより励起された金属(エミッタ)内の電子は、金属表面から飛び出し、冷却された電極(コレクタ)により捕集される。外部抵抗がエミッタとコレクター間につながれていれば、抵抗を介して電流が流れる。実用上は、熱電子発電器の出力電流密度は、10〜50A/cm2 でなければならない。これが満たされる時、熱電子発電器は、騒音や機械的な振動の無い、小型で高効率な発電器として利用される途が開ける。高い出力電流密度を取り出すためには、エミッタ前面の電子集積を抑制する必要があるので、エミッタとコレクタの間隔は0.1mm以下とされている。また、熱電子発電器を高出力の得られる点火モードで動作するために、エミッタ温度TE は2000K、セシウム温度は500〜600Kに維持される。
【0072】
熱電子発電器の最も将来性のある用途は、地上用と宇宙用に分けられる。前者としては、火力発電の前段階に組み込んだトッピング、工場のコジェネレーションシステム、太陽エネルギー発電あるいは化石燃料の燃焼熱を利用する家庭用コジェネレーションシステムなどを挙げることができる。
【0073】
後者は原子力エネルギーを熱源として、宇宙船や探査衛星の電源に用いられる〔文献:M.Kando:J.Plasma & Fusion Res.70(1994)1045〔in Japanese〕。旧ソ連は「TOPAZ」と命名された熱電子発電原子炉を完成させたが、この出力は6kWである。1987年及び1988年には、TOPAZを人工衛星コスモスに搭載し、宇宙での試運転に成功している〔文献:N.S.Razor:IEEE Trans.Plasma Sci.19(1991)1191〕。一方、オランダのWolff等〔文献:L.R.Wolff,W.B.Veltkamp and V.I.Yarigin.Proc.2nd Intersoc.Conf.Nuclear Power Engineering in Space,Phys.of Thermionic Energy Converter,PTI Sukhumi,Georgia,U.S.A.,1991,p72〕は、TECTEMと呼ばれる燃焼熱で加熱される熱電子発電器を開発した。家庭での利用を想定して、TECTEMは0.5kWの電気出力と、10kWに相当する温水を供給できる。この場合、エネルギーの総合変換効率は80%に達する。TECTEM開発の主要な問題点は、エミッタの高温加熱システムの確立であった。発電効率は7%と予測されるが、これにはDCからACへの変換に伴う損失も考慮されている。
【0074】
多くの場合、熱電子発電器は非点火モードと比較して大きな出力が得られる点火モードで動作される〔文献:R.H.Bullis,L.K.Hansen,C.Warner,J.M.Houston,M.F.Koskinen and N.S.Razor.J.Appl.Phys.38(1967)3425〕。これは電極間で生成されたセシウムイオンがエミッタ近傍の負の空間電荷を総和するからである。しかしながら、通常、点火モード動作は非点火モードより高いエミッタ温度と高いセシウム圧力が必要になる。それゆえ、点火モード動作に利用できる熱源が制限されるので、特別に工夫されたエミッタ加熱システムが必要になる。
【0075】
本発明の実施例では、低いエミッタ温度TE で動作する熱電子発電器を実現することであり、これによって、従来の点火モード動作の熱電子発電器に比べてメンテナンスや熱電子発電器製造が簡便化される上に、種々の熱源や電極材料が利用できるなど、多くの優れた利点が得られる。良く知られているように、セシウムの付着した耐熱性金属、例えばタングステン、モリブテン、タンタルなどでは、それらの温度とセシウム温度によってその仕事関数が変化する〔文献:N.S.Razor and C.Warner;J.Appl.Phys.35(1964)2589〕。
【0076】
例えば、タングステンの実質的な仕事関数は、その温度が1400K以下の時、タングステン表面にセシウムの薄膜が形成される結果、仕事関数は4.5eVから1.7eVに低下する。それ故、セシウム蒸気圧が高い場合には1400K程度の低いタングステン温度でも、多量の熱電子放出が生じる。しかしながら、多量の電子が電極間空間に蓄積されるので、熱電子発電器の出力電流は低いレベルに留まる。この問題は、補助放電により高密度のプラズマを維持できれば、解決することができる。
【0077】
熱電子発電器内のセシウム原子は電離電圧が3.89ev、励起準位は1.4eVと低いため、太陽光によってセシウムが励起および電離されて、原子状または分子状のイオンを作ることができる。本実施例では太陽光と類似したスペクトルを有するキセノンショートアークランプを用いて入射光窓を通してプラズマおよびエミッタを照射し、出力特性の改善効果を調べた。この結果、光照射によって短絡電流の増加ならびに非点火モードから点火モードへの遷移の加速が見出された。ここで観察された現象は、キセノンランプの照射により生成された原子状および分子状イオンに起因すると思われる。
【0078】
ここで得られた結果は、新たな発想に基づく熱電子発電器の開発につながると考えられる。すなわち、太陽エネルギーを高効率で電力と温水の生成に利用するか、もしくは、これを補助放電の発生に利用して低温のエミッタ温度TE で動作する熱電子発電器の出力特性の改善に役立てることである。本願発明者らは〔文献:A.Ogino,W.Zheng and M.Kando;Trans.IEE.Jpn.A119(1999)1120〔in Japanese〕で、可視光より長波長の光でエミッタを加熱し、これよりも短波長の光でセシウム原子の励起と電離を行う熱電子発電器を製作し、キセノンランプからの放射光を電気に直接変換できたことを報告している。この実験結果は、光照射型熱電子発電器では照射光でセシウムイオンが生成されているため、出力特性が改善されることを示唆している。
【0079】
エミッタからコレクタへの電子流束は電極間空間に蓄積された熱電子によって強く乱される。熱電子発電器研究の重点は、この負の空間電荷を緩和することである。負の空間電荷を減少する方法として、二つの方法がある。一つは二つの電極間隔を極めて狭くすることで、真空型熱電子発電器の場合では10μm以下とされる。真空型熱電子発電器は常に空間電荷制限領域で動作されるため、出力電流は熱電子放出電流を超えることがない。高エミッタ温度TE と極小電極間隔を必要とするこのタイプの熱電子発電器では、エミッタから蒸発する材料がコレクタをコーティングしたり電極の熱膨張による短絡などの問題が生じる。
【0080】
もう一つの方法は、熱電子発電器中に正のセシウムイオンを導入して、負の空間電荷を中和する手法である。この種の熱電子発電器は、セシウムイオンの生成方法によって、さらに二つに分けられる。セシウム原子の電離電圧はエミッタ電極材料(例えば、タングステンやモリブテン)の仕事関数よりもずっと小さい。このため、高温のエミッタ表面上でセシウム原子はその最外郭の軌道を回る電子を失い、電極間空間に放出される。このようなイオン生成機構は、「表面電離」と呼ばれるが、これは非点火モードにおいて負の空間電荷を平衡するために良く利用される方法である。非点火モード熱電子発電器の動作原理から判るように、セシウムイオンが空間電荷を完全に中和する条件が満たされ、エミッタからの熱電子がセシウム原子と衝突を行わずにコレクタに到達できる場合、非点火モード動作の熱電子発電器の出力電流は、エミッタからの熱電子放出電流に等しくなる。下記に定義されるように、空間電荷中和度αは熱電子に対する電位障壁の目安となる値である。α<1の場合、エミッタ前面には負の空間電位が発生するので、コレクタに向かう電子の流れが大幅に阻止される。
【0081】
空間電荷中和度αは下記の式で表示される。
【0082】
【数1】
Figure 0004067750
ここで、neEとniEはエミッタ前面の電子とイオンの密度、mとMは電子とセシウム原子の質量である。また、Γe とΓi はエミッタからの熱電子とイオンの流速であり、次のRichardson−DushmanおよびLangmuir−Sahaの式で与えられる。
【0083】
【数2】
Figure 0004067750
【0084】
【数3】
Figure 0004067750
ここで、kとhはBoltzmannとPlanckの定数、TE とTcS はエミッタとセシウム蒸気温度、φE はエミッタの仕事関数、Vi はセシウム原子の電離電圧、PcS はセシウム蒸気圧である。
【0085】
非点火モードでは、電極間のすべての電子とイオンはエミッタで作られる。Poissonの方程式によると、電極間の空間電位分布はエミッタ前面のneEとniEにより決められる。例えば、niE≧neEの場合には空間電位はエミッタの電位に対して正になる。
【0086】
図14は上記式(1)、(2)および(3)を用いて計算した空間電荷中和度αのエミッタ温度TE およびセシム蒸気温度TcS への依存性を示す。
【0087】
この図から明らかなように、実用レベルの10A/cm2 の出力電流密度を得るためには、α≧1を満足し、同時に、上記式(2)で与えられる熱電子電流密度を高くしなければならないので、TE >2000KおよびTcS >550Kの条件を満足する必要がある。このTE とTcS の温度における電子の平均自由行程λe は0.017mmであるので、無衝突の条件を満足するためには、電極の間隔dをλe より小さくしなければならない。
【0088】
以上の理由から、高温のTE とTcS で動作する熱電子発電器では、高出力電流密度を得るために、電極の間隔を狭くしなければならない。これは熱電子発電器製造の観点から実現が困難であるように思われる。
【0089】
しかし、最近になって、KucherovとNikolaev〔文献:R.Ya.Kucherov and Yu.V.Nikolaev;Proc.29th Intersoc.Energy Conversion Engineering Conf.,U.S.A,1994,p.490〕は、セラミックロールの熱膨張により3μmの微少電極間隔を確保し、高温のTE とTcs でも動作可能な高出力電流の得られる新型の熱電子発電器を開発した。この熱電子発電器では、非点火モード動作で、効率20%出力密度10w/cm2 が得られている。
【0090】
セシウム原子は多段階または累積電離によって電離される。すなわち、一つセシウム原子は、例え電子のエネルギーがセシウム電離電圧により小さい場合でも、電子と何度も衝突を繰り返すことにより電離される。
【0091】
このようなセシウム原子が励起状態を経由して電離に至る多段階電離は、負の空間電荷の中和に大きく貢献する。このような電極間の体積電離は、点火モードで動作する熱電子発電器の空間電荷を中和する上で非常に重要である。通常、体積電離により生成されたプラズマの密度は、十分に高いので、負の空間電荷を緩和することができる。結局、点火モードが発生すると電離損失のために出力電圧は減少するものの、出力電流は顕著に増加する。KucherovとNikolaevが開発した無衝突、非点火モード動作の熱電子発電器に比べて点火モード動作の熱電子発電器の動作条件はずっと穏やかなために、今日の熱電子発電器研究は点火モードに関するものが主になっている。α≦1と電子−セシウム原子の衝突を保証するために、典型的な電極の間隔dとエミッタ温度TE の値はそれぞれ0.1から1.00mm、1400Kから1800Kである。
【0092】
本実施例では、実用化が期待できる新しいアイデアに基づく熱電子発電器の開発を行っている。セシウム原子特有の低励起電圧および電離電圧に着眼して、太陽光を電極間プラズマおよびエミッタに照射することにより、セシウム原子を励起させる。熱電子発電器への光照射によって、以下に指摘する幾つかの効果が期待される。すなわち、エミッタからの光電子放出、セシウム原子および分子の光励起と光電離、エミッタおよびセシウムガスの加熱が挙げられる。今回の実験では、現象の複雑さを避けるために、光照射時間は3秒内に厳しく制限した。このため、熱電子発電器内で生じる効果は光励起と光電離のみに限定されると考えられる。なぜならば、エミッタと熱電子発電器容器の熱容量は大きいので、それらの温度上昇は50s以上を要するためである。光照射実験のため、電極間隔の大きい熱電子発電器を製作した。熱電子発電器の光照射では幾つかの利点が期待され、これらは以下のようにまとめられる。
【0093】
(1)一般に、セシウムガス雰囲気中では、エミッタ温度TE が1400K以下でエミッタからの熱電子放出電流密度は最大になるが、エミッタ表面での電離により生成されるセシウムイオンは少ない。これは空間電荷の中和が十分行われれば、低エミッタ温度TE 、高セシウム蒸気温度TcS 動作でも、熱電子発電器から大きな出力電流が得られることを意味する。
【0094】
(2)原子状および分子状のセシウムイオンの前駆体であるセシウム励起原子CS * が、太陽光の照射によって、熱電子発電器内に数多く生成される。
【0095】
(3)CS * の相互の衝突により自発的に生成されるセシウム分子イオンは、空間電荷を効率よく中和する。これは低エミッタ温度TE 動作の熱電子発電器にとって重要である。なぜならば、低エミッタ温度TE 動作の熱電子発電器では、表面電離により生成されるセシウム原子は、熱電子より極めて少ないからである。
【0096】
(4)光照射により生成される多量のCS * は、非点火モードから点火モードへの遷移を促進させる。
【0097】
(セシウムの原子および分子過程)
低エミッタ温度TE 低セシウム蒸気温度TcS 動作の熱電子発電器は熱源の多様化とメンテナンスの容易さなどの点で幾つかの利点が考えられるが、出力および効率が低いレベルに留まり、実用化するのが困難な状況にある。しかしながら、太陽光照射により点火モードが実現し、高効率で高出力が得られれば、以上のような欠点は解消される。幸い、熱電子発電器中には、仕事関数と電離電圧が低いセシウム蒸気が封入されている。このセシウム蒸気は、熱電子発電器の動作に関して二つの効果を持つ、つまり、一つは高温のエミッタ面上で表面電離により生成されるセシウムイオンが負の空間電荷を中和することであり、他の一つは、コレクタ表面を薄いセシウム薄膜で覆うことによりコレクタの仕事関数φcを下げることである。しかしながら、この実施例では、セシウム封入の三つ目の効果、すなわち、太陽光照射により誘起される補助放電の点火モードへの遷移効果を提案する。周知のように、太陽光はUVから遠赤外域までの広いスペクトル分布を持ち、一方セシウム原子はあらゆる元素中で最低の電離電圧3.89eVと励起電圧1.4eVを持つ。このため、太陽光照射によりセシウム原子を電離および励起させることができ、この結果、熱電子発電器の出力特性を顕著に改善することが期待される。
【0098】
ここでは、参考としてセシウムの原子および分子過程について簡単に触れる。
【0099】
(セシウム原子の電離および励起)
基底準位にあるセシウム原子は、電子との衝突または光子の吸収によって、ΔE0 のエネルギーを吸収して励起される。これらの過程〔文献:K.J.Nygarrad;IEEE J.Quantum Electron.9(1973)1020.及び文献H.L.Witting and E.P.Gyftopoulos;J.Appl.Phys.36(1965)1328〕は以下のように記述される。
【0100】
Cs(62 1/2 )+ΔE0 →Cs* (62 3/2,1/2 ) …(4)
ここで、J=3/2に対してはΔE0 =1.38eV、J=1/2ではΔE0 =1.45eVであり、それらのエネルギーに相当する光の波長は、それぞれ894.4nmと852.1nmである。上記式(4)のCs* は、それら相互の衝突を通してセシウム励起分子Cs* 2 になる。Cs* 2 は更に以下の過程を通して自発的に電離する〔文献:F.G.Baksht,G.A.Dyuzhev,A.M.Martsinovskiy,B.Ya.Moyzhes,G.Ye.Pikus,E.B.Sonin and V.G.Yur’yev;Thermionic Conberter and Low−Temperature Plasma,Eng.ed by L.K.Hansen(National Technical Information Service/U.S.Department of Energy.Springfield,Virginia,1978)Chap.5,p.140、文献:M.D.Gibbons;Proc.Thermionic Conversion Specialist Conf.,Gatlinburg,Tenn.,U.S.A.,Oct 1963,p.103、文献:J.Yamada and T.Okuda;J.Phys.Soc.Jpn.35(1973)881〕。
【0101】
Cs* (62 3/2,1/2 )+Cs* (62 3/2,1/2 )→Cs* 2 …(5)
Cs* 2 →Cs+ 2 +e …(6)
上記式(5)と式(6)で表示される過程では、付加エネルギーを必要としないことを指摘しておきたい。それ故、多量のCs* の生成がある場合には、多くのセシウム分子イオンの存在が考えられる。
【0102】
セシウム原子イオンは以下の過程〔文献:K.J.Nygarrad;IEEE J.Quantum Electron.9(1973)1020、文献:D.H.Pollock and A.O.Jenen;J.Appl.Phys.36(1965)3184〕で生成される。
【0103】
Cs* (62 3/2,1/2 )+ΔE1 →Cs+ +e …(7)
Cs* (62 1/2 )+ΔE2 →Cs+ +e …(8)
ここで、ΔE1 =2.5eV、ΔE2 =3.89eVであり、それぞれ、波長500nm、318nmの光子が有するエネルギーに相当する。太陽光は、セシウム原子を励起および電離するに必要な波長をすべてカバーしている。それ故、太陽光照射により、低エミッタ温度TE 、セシウム蒸気温度Tcs 動作の熱電子発電器から優れた効果を引き出すことが期待される。
【0104】
上記式(7)により与えられる光電離の断面積σは7×10-18 cm2 であり〔文献:N.D.Morgulis,Yu.P.Korchevoi and A.M.Prezhonskii;Zh.Eksp.& Teor.Fiz.53(1967)417,Translation;Sov.Phys−JETP26(1968)279〕、上記式(8)の断面積より100倍大きい。これらのデータから、点火モード動作熱電子発電器内のプラズマでは、セシウムが主として多段階電離で生成されていることが理解される。すなわち、1.4eV程度のエネルギーを有する電子が上記式(4)の過程を通してCs* を生成し、さらにCs* が上記式(7)の過程で電離する。
【0105】
(熱電子発電器照射用光源)
セシウム原子は、可視光の波長範囲である300nmから900nmまでスペクトルを有する光源を照射することによって、励起または電離される。ほとんどの光源はこの範囲をカバーしている。ここでは、キセノンショートアークランプと太陽光のスペクトルを比較して述べる。
【0106】
図15は地表面における太陽光とキセノンショートアークランプのスペクトル分布をセシウム原子の光電離断面積とともに示している。両光源とも上述の過程を実現するのに必要なスペクトルと十分な光強度を持っていることが判る。キセノンランプ放射光のスペクトルは太陽光と完全には一致していないが、(特に800nmから1100nmの波長領域ではそうであるが)、太陽光の模擬光として利用できる。
【0107】
エミッタ温度TE が高くなると、エミッタから熱放射があり、熱電子発電器の出力特性に影響を与えることが考えられる。この効果を考察するために、図15に2000Kの黒体の放射スペクトルを示している。この短波長成分は、セシウム原子を励起できるので、点火モード動作の熱電子発電器の出力特性への効果を無視することはできないと考えられる。
【0108】
次に、この実施例の光利用熱電子発電装置について説明する。
【0109】
図16は本発明の他の実施例を示す光利用熱電子発電装置の模式図である。
【0110】
この図において、40は熱電子発電器、41はキセノンランプの照射光、42はコレクタ、43はエミッタ、44は渦巻き状タングステン線、45は熱放射反射器の支持棒である(本願発明者による発表文献:Y.Shibahara and M.Kando;Proc.4th.Int.Symp.Functionally Graded Materials,Tsukuba,Japan,1996(Elsevier Science,Amsterdam,1996)p.673、文献:M.Kando,H.Furukawa,M.Ichikawa and S.Yokoi;Proc.29th.Intersoc.Energy Conversion Engineering Conf.,U.S.A.,1994,p.1067が類似したものとして挙げられる)。
【0111】
図16に示すように、電極間のセシウム蒸気が効率良くキセノンランプの照射光41を受けるように、直径38mm長さ20mmのSUS304製円筒状コレクタ42を使用する。エミッタ43は直径18mmの渦巻き状タングステン線44で60Hzの半波整流電流により直接加熱される。エミッタ43とコレクタ42の最近接エッジの距離は10mmである。熱電子発電器40にはセシウムが満たされ、セシウム蒸気温度TcS は、熱電子発電器40を電気炉の中に入れ、電気炉の温度を調整することにより制御する。熱電子発電器40はパイレックスガラス製で、光の透過率は波長350nmから2000nmの波長範囲で0.9である。エミッタ温度TE は、熱電対と放射温度計で測定され、熱電対で測定される熱電子発電器容器温度をセシウム蒸気温度TcS に等しいと仮定した。
【0112】
セシウム原子の光励起・電離に必要な光波長は、近赤外線領域(励起890nm)から紫外線領域(直接電離318nm)にわたっている。このような光の波長成分はすべて太陽光に含まれている。太陽光を利用して熱電子発電器の出力特性改善ができれば、地上用熱電子発電器〔文献;K.J.Nygarrad;IEEE J.Quantum Electron.9(1973)1020.文献;H.L.Witting and E.P.Gyflopoulos;J.Appl.Phys.36(1965)1328、文献;F.G.Baksht,G.A.Dyuzhev,A.M.Martsinovskiy,B.Ya.Moyzhes,G.Ye.Pikus,E.B.Sonin and V.G.Yur’yev;Thermionic Converter and Low−Temperatu re Plasma,Eng.ed by L.K.Hansen(National Technical Information Service/U.S.Department of Energy.Springfield,Virginia,1978)Chap.5,p.140〕の普及が期待できる。
【0113】
図15に示すように、太陽光と類似したスペクトルをもつオゾンレスキセノンランプ(XD5000/H−OL、東芝ライテック社製)を用いた。ランプの電気入力は1kWから4.5kWまで可変であるが、本実施例では4.5kW一定で使用する。電気入力のおよそ50%は熱損失として失われ、残りの50%が放射光となるが、そのスペクトル分布は380nm以下の紫外光、380nm〜780nmの可視光、780nm以上の赤外光に分けられる。
【0114】
それぞれの強度比率は3%、11%、36%であり、電気入力には依存しない。ランプからの放射光は350nmから2000nmの波長範囲で透過率〔文献;J.Yamada and T.Okuda;J.Phys.Soc.Jpn.35(1973)881〕が0.9の三枚の光学レンズ(01 LPX 145、BK−7A、Melles Griot Company)によって集光されて熱電子発電器に照射される。ランプハウスは、ランプの放射光がハウス内部の放物面鏡で反射され平行光線となる構造を持っている。それ故、ランプの全放射光の僅か15%程度が、ランプハウスに一番近いレンズを通過する。また、光学レンズとパイレックスガラスの透過率は350nm以下の波長に対して著しく低下するので、紫外光の大部分は熱電子発電器に到達する途中で完全に吸収されていると考えられる。
【0115】
以上をまとめると、熱電子発電器に入射する光はほぼ可視光と赤外光とから構成されていて、電気入力が4.5kWの時、熱電子発電器内への入射光パワーは200W程度である。
【0116】
次に、照射光によるエミッタ加熱について考察する。
【0117】
タングステンの放射率は約0.2であるので、エミッタが吸収するパワーは入射光の20%である。すなわち、エミッタ加熱に使われる入射光のパワーは40W程度で、残りの160Wは熱電子発電器容器の壁の加熱やセシウム原子の励起と電離などに消費される。キセノンランプへの電気入力が4.5kWのときに一分間光を照射すると、エミッタ温度TE で1500Kから1545Kに上昇した。エミッタの仕事関数φE はエミッタ温度に強く依存し、熱電子発電器出力特性もエミッタ温度TE の変化に応じた変化を強いられる。この効果を避けるために、本実施例では光照射時間を厳密に3秒以内に制限した。
【0118】
図17は本発明にかかる光利用熱電子発電器の出力特性の測定回路である。
【0119】
この図において、40は熱電子発電器(図16参照)、50は電気炉、51はオゾンレスキセノンランプ、52は光学レンズ、53はエミッタ加熱用電源、54は遅延パルス発生回路、55は三角波発振器、56は電力増幅器、57は負荷抵抗、58は直流増幅器、59はサンプリング・ホールディング回路である。
【0120】
このように、出力特性の測定回路は、遅延パルス発生回路54、サンプリング・ホールディング回路59、三角波発振器55および負荷抵抗57によって構成される。
【0121】
そこで、熱電子発電器40のエミッタをヒータ電流で加熱すると、エミッタの両端に5.6V程度の電圧が発生する。この電圧はエミッタからコレクタに流れる電子流を擾乱する。熱電子発電器40内の電子とイオンはエミッタと熱平衡状態になっているので、電子の温度Te とイオンの温度Ti はエミッタ温度TE に等しいと近似できる。エミッタ加熱電流により発生するエミッタ両端の電圧は、電子とイオンの温度より遙に高いので、熱電子発電器内の荷電粒子の運動はこの電圧によって大きな影響を受ける。この擾乱を避けるために、エミッタの加熱には60Hzの半波整流電流を用い、熱電子発電器出力特性の測定は加熱電流休止時に行わなければならない。
【0122】
加熱電流により生じるエミッタ両端の電圧がコレクタに対して正の場合、発電器の出力電流はこの電圧により大幅に抑制される。図17の測定回路を使えば加熱電流休止時の出力特性を測定できる。
【0123】
図18は本発明にかかる熱電子発電器出力特性測定のタイミングチャートであり、図18(a)には60Hz半波加熱電流波形、図18(b)には遅延パルス、図18(c)にはサンプリング・ホールディング前の1Hz三角波、図18(d)にはサンプリング・ホールディング後の1Hz三角波、 図18(e)にはサンプリング・ホールディング前の出力電流、図18(f)にはサンプリング・ホールディング後の出力電流をそれぞれ示している。
【0124】
このように、図18には、サンプリングとホールディング回路の前後の信号が、60Hzの半波加熱電流およびサンプリングパルスとともに示されている。幅0.12msのパルスを60Hz半波電流停止直後の5ms後に発生させる。サンプリング・ホールディング回路59は、サンプリングパルスが発生した瞬間の三角波電圧と負荷抵抗57の電圧値を記録し、次のパルスが到達するまでそれらの信号を維持する。したがって、三角波の電圧波形と負荷抵抗57の電圧はサンプリングホールディング回路59によって、図18に示すように修正される。実験では、三角波電圧の周波数と振幅をそれぞれ1Hz、3Vとした。サンプリング・ホールディング回路からの信号はデジタルオシロスコープで記録された後、パソコンでデータ処理を行う。
【0125】
(熱電子発電器の動作条件)
実験で測定される熱電子発電器出力特性の理解を容易にするために、まず初めに熱電子発電器動作条件を述べる。エミッタ温度TE は加熱電流IH によって制御される。上記のようにIH を大きくすると、エミッタの両端に大きな電圧が発生し、最悪の場合、エミッタ両端に局部的な放電が発生する。本装置では放電を起こさずにエミッタ温度を1600K程度まで加熱できる。セシウム蒸気温度TcS は電気炉50により制御されるが、熱電子発電器容器のパイレックスガラスは500K以上になると、セシウムを吸収して白化する性質がある。このため、セシウム蒸気温度TcS は500K以下に制限される。セシウム圧力と電子の平均自由行程λe はセシウム蒸気温度に依存し、その関係を図19に示す。この図19から分かるように、本実験の大部分は、電子セシウム原子間衝突が多く生じる条件で行われていることが分かる。
【0126】
(照射光のない場合の熱電子発電器出力特性)
図20に、TcS =400Kにおける出力特性をエミッタ温度TE の関数として示す。出力電流密度J0 はエミッタ温度TE の増加と共に徐々に増加することがわかる。TE =1600Kの場合、出力電圧V0 が−1から−2Vの付近でJ0 は急激に増加し、同時にヒステリシス曲線を描くようになる。曲線上の矢印はヒステリシスの変化の方向を示す。J0 の急激な増加は点火モード動作の始まり、すなわち電極間での放電の始まりを意味している。このようなヒステリシスは点火モード動作時にしばしば現れる。エミッタを高温に加熱すると多量の熱電子が放出され、両電極間のある電圧VD (以下点火開始電圧と呼ぶ)で多段階または累積電離の発生条件が満たされ、放電が始まる。
【0127】
一度点火開始電圧VD で点火が始まると、体積電離により両電極間に多数の電子やイオンが生成されるので、その後たとえ両電極間での電子の加速電解が減少したとしても放電はしばらくの間維持されることになる。それ故、点火消滅電圧VE は点火開始電圧VD より高くなる。
【0128】
図21はセシウム蒸気温度TcS をパラメータとして測定したTE =1280Kにおける出力特性図である。出力電流J0 はTcS =430Kの時に最大となることが分かる。これは定性的には、空間電荷中和度αによって説明できる。
【0129】
図22は、測定された短絡電流密度JS のセシウム蒸気温度TcS 依存性を、式(1)(2)および(3)を用いて計算された空間電荷中和度αとエミッタからの熱電子放出電流密度Je とともに示す。短絡電流密度JS は出力電圧V0 =0Vの時のJ0 であり、Je はRichardson−Dushmannの式で計算される。エミッタ仕事関数φE は、TE が一定の時、TcS が高くなるとともに低下するので、Je は増加しαは減少する。
【0130】
一方、TE =1280K、TcS =430Kの測定値を除けば、TE =1200KおよびTE =1280Kのいずれの場合においても、JS はTcS の上昇と共に減少する傾向が読み取れる。また、TcS が高温の時には、JS はJe よりも遙に小さいことがわかる。
【0131】
この結果から、α<1の場合、JS はJe の増加よりは、むしろエミッタ近傍の負の空間電位障壁によって制限されていることがわかる。TE =1280Kの時、TcS =415Kにおいてα=1となるため、JS の値はTcS <415KではJe に近くなるはずである。1≧α>0.1の場合には、負の空間電位障壁によるJS の抑制効果はそれほど顕著でなく、JS はTcS の上昇と共に徐々に増大することができる。このため、TcS =430Kの時、JS は最大となる。α<0.1の場合には、負の空間電位障壁による抑制効果はTcS の上昇に伴うJe の増大効果に比べてより支配的となり、JS はTcS の増加とともに減少する。図22では、TE =1200Kと1280Kの場合でTcS =400Kの時に、JS はJe よりも大きくなっていることに注意する必要がある。これは、セシウム蒸気温度の測定誤差によるものと考えられる。すなわち、セシウム蒸気温度として、熱電対により測定された熱電子発電器容器の壁温度を用いたためである。
【0132】
しかしながら、実際にはエミッタ近傍に非常に高い温度領域が存在する。それ故、セシウム蒸気温度の測定値は実際の温度より30K程度低くなっていても不自然ではない。熱電子発電器の実験結果を考察する際には、実験データのこのような面にも十分配慮する必要がある。その理由は、熱電子放出電流Je と空間電荷中和度αはいずれもTcS に強く依存するからである。
【0133】
以上を要約すると、TE が低いほど仕事関数φE が低くなるので、熱電子放出電流密度Je は表面電離で生成されるセシウムイオン電流密度よりも高くなる。このため、低TE ではエミッタ前面でセシウムイオンよりも電子が過剰になって負の空間電位が生成され、熱電子電流はこの負の空間電位によりエミッタに引き戻される。しかし、TE が上昇すると電子の蓄積が緩和されるために、J0 またはJS を増大させることができる。
【0134】
(非点火モード動作の出力特性に及ぼす光照射効果)
図23の実線は、TaylorとLangmuir〔文献:J.B.Taylor and I.Langmuir;Phys.Rev.44(1933)423〕により測定されたJe のTE とTcS への依存性である。図23ではJe と比較するため、TcS が400Kおよび450KにおけるJS の測定値を丸と三角の記号で表し、●と▲は光照射のない場合の、○と△は光照射を行った場合の測定値である。また、図中の二つの□は、TcS =400Kおよび450Kにおいてα=1となるエミッタ温度を示している。これらの□を通る縦軸に平行な一点鎖線によって領域が二分されているが、一点鎖線の右側の低TE 領域では対応する。TcS に対してはα<1,その左側ではα>1である。α<1の領域ではJS が光照射により数倍程度増加していることが分かる。
【0135】
しかしながら、一点鎖線の左側の領域でα>1の領域ではその増加量は減少している。これらの現象は、光照射により光電離が生じて負の空間電荷が中和された結果であると考えられる。要約すると、α<1の条件では、光照射は出力電流JS の増加に有効であると言える。
【0136】
(光照射により誘起される点火モードへの遷移)
次に、光照射によるモード遷移の促進効果について調べた。図21に示される非光照射時における非点火モードのTE =1280Kにおける出力特性は、図24に示されるように光照射により著しく変化する。すなわち、430および500Kを除くすべてのTcS において、光照射によって、VD は負に留まってはいるが、点火モードに遷移した。図25(a)および25(b)に、TE =1600Kを一定とし、TcS をパラメータとして、非光照射時に既に点火モードで動作している熱電子発電器の光照射前後における出力特性の変化を示す。図24の非点火モードの場合と相違して、光照射による出力特性の改善ならびにモード変化の加速効果はかなり限定されていることが分かる。最後にTcS を一定とし、TE を変化させて、光照射による出力特性の変化を測定した。図26(a)に示されるように、高TE で点火モード動作が確認された。図26(b)に示すように光照射による、J0 の増加および点火モードの促進効果はTE <1340Kの時に観察された。
【0137】
以上の結果をまとめると、光照射によるモード遷移あるいは出力特性の改善は、主に非点火モードで動作している場合に観測され、点火モード動作時には明瞭でない。これに対する物理的な解釈は次に述べる。
【0138】
(光照射により出力特性の改善が得られる条件)
光照射によるモード遷移および出力特性の顕著な改善について検討するために、光照射のない場合のαと熱電子放出電流Je を、前記式(1)、(2)およびRasorとWarnerにより与えられた式から算出されるφE を用いて計算し、表1〜表3にまとめて表している。
【0139】
表1:エミッタ温度TE が1280Kでのセシウム蒸気温度TcS についての熱電子放出電流密度Je 、エミッタの仕事関数φE 、および空間電荷中和度αの値を示している。
【0140】
【表1】
Figure 0004067750
なお、* は光照射なし点火、○は光照射あり点火、@は出力電流の印された増加である。
【0141】
表2:エミッタ温度TE が1600Kでのセシウム蒸気温度TcS についての熱電子放出電流密度Je 、エミッタの仕事関数φE 、および空間電荷中和度αの値を示している。
【0142】
【表2】
Figure 0004067750
なお、* は光照射なし点火、○は光照射あり点火である。
【0143】
表3:セシウム蒸気温度TcS が450Kでのエミッタ温度TE についての熱電子放出電流密度Je 、エミッタの仕事関数φE 、および空間電荷中和度αの値を示している。
【0144】
【表3】
Figure 0004067750
なお、* は光照射なし点火、○は光照射あり点火、@は出力電流の印された増加である。
【0145】
ここで、コレクタ温度Tcはセシウム蒸気温度TcS に等しいと仮定した。また、低Tcではコレクタはセシウムで完全に被膜されているので、コレクタ仕事関数φcはセシウムの仕事関数と等しく1.7evとした。
【0146】
表1−表3から分かるように、以下の条件が満足される場合に、光照射によるモード遷移が誘起される。すなわち、
(1)αが10-2以下であること。
【0147】
(2)Je が10-3A/cm2 より大きいこと。
【0148】
(3)φE が2.2eVより大きいこと。
【0149】
前述したように、αは熱電子発電器の空間電位の分布を決定する。すなわち、α>1ではエミッタ前面にイオンシースが形成され、α<1では電子シースが形成される。αが小さいほど、エミッタ近傍の負の空間電位の谷は深くなり、空間電位最小値とコレクタ電位との電位差ΔVは増大する。一端、十分に深い負の空間電位が生成されると、空間電位が最小となる付近で光照射により光電離で生成された電子はこの電位差ΔVで十分に加速されるので、点火を引き起こすことが可能になると考えられる。
【0150】
図27は本発明にかかる熱電子発電器の光照射により誘起されるモード遷移を表している。
【0151】
この図において、熱電子発電器はα<1で動作し、点線で表すような空間電位分布を有しているが、モード遷移によって実線で示される電位分布に変化する〔文献:N.S.Rasor:IEEE Trans.Plasma Sci.19(1991)1191〕。
【0152】
多くの場合、Je が大きいとαは小さくなり、電離周波数は増大する。この理由で上記条件(1)および(2)は、光照射によるモード遷移のための条件となる。一般に、点火モード動作の発生のためには、両電極間の電圧差を十分に大きくする必要がある。高TcS の場合、φE はしばしば2.0eVより小さくなるので、光照射によっても点火モードは生じない。他方、光照射を行わなくても、TE を高くすれば、φE が十分高くなって、点火モードを発生させることができる。熱電子発電器が点火モードで動作する場合には、熱電子発電器内の空間電位の最小値はエミッタ電位を下回ることがなく、ΔVは小さい値に留まる。このため、照射光による出力特性改善効果は限定されたものとなる。
【0153】
上記したように、熱電子発電器は、点火モード動作する時に高出力が得られる。しかし、大抵の場合、エミッタ温度を1600K以上に、熱電子発電器容器の壁温度を500K以上に加熱する必要がある。しかしこれらの条件を満たすことは困難である上、高TE とTcS 動作に伴って様々な問題が起こる。低TE とTcS 動作では、熱源の多様化、メンテナンスの容易さなど幾つかの利点がある。本実施例では、低TE とTcS で動作している熱電子発電器の出力特性に及ぼす太陽光照射効果を調べることである。光照射はセシウム原子を励起および電離させることができ、補助放電を誘起して非点火モードから点火モードへの促進あるいは出力電流の増大をもたらすことができる。
【0154】
実験では、光照射用熱電子発電器を用い、太陽光の代わりにキセノンショートアークランプを使用した。エミッタは60Hzの半波整流電流によって最高で1600Kまで加熱された。熱電子発電器は電気炉に入れて、最高500Kまで加熱された。実験結果から、光照射によるモード遷移は次の条件の下で実現できることが明らかにされた。
(1)α<10-2
(2)Je >10-3A/cm2
(3)φE >2.2eV
これらの条件の下では、空間電位最小値とコレクタ電位の間の差が大となり、電位の谷で光照射により生成された電子がこの大きな電位差により加速され、セシウム原子を電離する。このようにして、太陽光照射を施せば、低TE 動作熱電子発電器から十分に高い出力を得ることが期待できる。これは、本質的に太陽光が変換されることを意味する。
【0155】
結論として、低TE でTcS 動作の熱電子発電器へのキセノンランプ光照射は、点火モードを実現する上で有効である。しかし、TE とTcS の組み合わせは、光照射の優れた効果を十分に引き出すために大変重要である。これには、TE とTcS に依存するα、Je およびφE を考慮して、最適な組み合わせを探し出すことが必要である。本発明で得られた成果は、太陽光のみをエネルギー源とする新型の熱電子発電器の開発、あるいは、低TE 動作の熱電子発電器から高出力を得るための、太陽光を用いた新しい補助放電法の確立につながる。このような熱電子発電器は地上および宇宙での応用が期待でき、環境問題の解決にも貢献できる。
【0156】
上記したことから明らかなように、光照射効果を利用する熱電気発電器として、二つの形態が考えられる。
【0157】
(1)太陽光利用熱電子発電器(ソーラテック:Solar TEC)
これは、発電に必要な全ての熱源を太陽光でまかなうもので、電力と同時に温水が得られる。すなわち、エミッタと発電容器の加熱電極間空間のセシウム原子の励起と電離も、全て太陽光で行う。ただし、電気炉やレーザ、紫外光源などは不要であるが、フレネルレンズ等の集光系は必須である。
【0158】
(2)低いエミッタ温度と高めのセシウム蒸気圧で動作する熱電子発電器に、太陽光や各種ランプからの紫外光を照射して補助放電を起こし、出力を大幅に増大させる方式。いわば、光励起利用熱電子発電器(PEA−TEC:Photoexcitation−aided TEC)。
【0159】
次に、本発明の実施例を示す太陽光利用熱電子発電器用エミッタ(ソーラテック用エミッタ)について説明する。
【0160】
前述のようにこのタイプの発電器では、エミッタと発電容器の加熱も電極間空間のセシウム原子の励起と電離も、全て太陽光で行う。照射光のエネルギーが一定の場合、エミッタの表面積を小さくすることによりエミッタ温度は高くなり、電力への変換効率ηも増大する。例として、エミッタ温度が2300Kまで加熱されるとηは10数%以上に達する。
【0161】
図28は本発明の実施例を示す太陽光利用熱電子発電器用エミッタの構成図であり、図28(a)はその平面図、図28(b)は図28(a)のA−A′線断面図である。
【0162】
エミッタはできる限り小さな表面積にしてその温度を2000K以上にすることが必要となる。そこで、太陽光でエミッタを効率よく加熱するには、図28に示すように、エミッタ61を中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起62を形成し、太陽光63,64を捕捉して吸収効率を高くし、エミッタ61の表面は鏡面状にして放射損失を少なくするのが有効である。
【0163】
このような構造のエミッタについて、吸収率を計算したところ、30%から90%まで上昇した。
【0164】
また、計算に用いたものと同じ形状のエミッタの太陽光による加熱実験を行ったところその吸収率は51%であった。
【0165】
図29に示す普通の平板状のエミッタ71では吸収率は30%であるので、20%の改善が確かめられた。
【0166】
このことにより、光トラップ機能を持つエミッタが太陽光による加熱の場合に有効であることが明らかになった。
【0167】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0168】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0169】
(A)太陽光波長を十分に活用して、発電効率の向上を図ることができる。
【0170】
本発明は、太陽エネルギーを熱源とする家庭、農業、宇宙での利用や、製鉄、冶金、ガラス製造等(溶鉱炉からの廃熱の利用)や、原子力発電(原子炉内の放射光と熱の利用)に適用することができる。
【0171】
また、フレネルレンズを使って集光し、太陽光の長波長域でエミッタ電極を加熱し、また短波長域光をそのエミッタ電極近傍のセシウム原子に照射し、これを励起・電離させ放電を起こさせ、前記電極近傍の負の空間電荷を中和させエミッタ電流を増大させることができる。
【0172】
その結果、照射光の高効率変換が実現でき、結果としてエネルギー変換効率を15%に引き上げることに成功した。
【0173】
更には、太陽光エネルギーの活用に際しては、上記の太陽電池活用と同時に、長波長域を温水加熱等にも同時に活用する複合エネルギーシステムを構築することができる。
【0174】
(B)太陽光利用熱電子発電器(ソーラテック:Solar TEC)を得ることができる。これは発電に必要な全ての熱源を太陽光でまかなうもので、電力と同時に温水が得られる。すなわち、エミッタと発電容器の加熱も電極間空間のセシウム原子の励起と電離も、全て太陽光で行う。ただし、電気炉やレーザ、紫外光源などは不要であるが、フネルレンズ等の集光系は必須である。
【0175】
(C)低いエミッタ温度と高めのセシウム蒸気圧で動作する熱電子発電器に、太陽光や各種ランプからの紫外光を照射して補助放電を起こし、出力を大幅に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の模式図である。
【図2】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置のエミッタ温度に対する短絡電流特性を示す図である。
【図3】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の空間照射および電極照射の出力電流波形を示す図である。
【図4】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の照射光の波長に対する出力電流特性を示す図である。
【図5】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の照射光の断面積に対する出力電流特性を示す図である。
【図6】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の空間照射時のエミッタ温度に対する出力電流特性を示す図である。
【図7】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の電極照射時のエミッタ温度に対する出力電流特性を示す図である。
【図8】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の空間照射時のエミッタ温度に対する出力電流増加率を示す図である。
【図9】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の電極照射時のエミッタ温度に対する出力電流増加率を示す図である。
【図10】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の空間照射におけるレーザエネルギーに対する出力電流密度を示す図である。
【図11】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置の電極照射におけるレーザエネルギーに対する出力電流密度を示す図である。
【図12】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置のエミッタ温度に対する出力電流ピーク時間を示す図である。
【図13】 本発明の実施例を示す光利用熱電子発電装置のエミッタ温度に対する出力電流波形の半値幅を示す図である。
【図14】 本発明の他の実施例を示す空間電荷中和度αのエミッタ温度TE およびセシウム蒸気温度TcS への依存性を示す図である。
【図15】 地表面における太陽光とキセノンショートアークランプ2000K黒体放射のスペクトル分布をセシウム原子の光電離断面積とともに示す図である。
【図16】 本発明の他の実施例を示す光利用熱電子発電装置の模式図である。
【図17】 本発明にかかる光利用熱電子発電器の出力特性の測定回路である。
【図18】 本発明にかかる熱電子発電器出力特性測定のタイミングチャートである。
【図19】 本発明にかかる熱電子発電器のセシウム圧力と電子の平均自由行程λe がセシウム蒸気温度に依存する関係を示す図である。
【図20】 本発明にかかる熱電子発電器のTcS =400Kにおける出力特性をエミッタ温度TE の関数として示す図である。
【図21】 本発明にかかる熱電子発電器のセシウム蒸気温度TcS をパラメータとして測定したTE =1280Kにおける出力特性図である。
【図22】 本発明にかかる熱電子発電器の測定された短絡電流密度JS のセシウム蒸気温度TcS 依存性を、空間電荷中和度αとエミッタからの熱電子放出電流密度Je とともに示す図である。
【図23】 TaylorとLangmuirにより測定されたJe のTE とTcS への依存性を示す図である。
【図24】 本発明にかかる熱電子発電器の出力特性図(その1)である。
【図25】 本発明にかかる熱電子発電器の出力特性図(その2)である。
【図26】 本発明にかかる熱電子発電器の出力特性図(その3)である。
【図27】 本発明にかかる熱電子発電器の光照射により誘起されるモード遷移を表す図である。
【図28】 本発明の実施例を示す太陽光利用熱電子発電器用エミッタの構成図である。
【図29】 普通の太陽光利用熱電子発電器用エミッタの構成図である。
【符号の説明】
1 電気炉
2 第1の光照射用窓
3 第2の光照射用窓
4 低圧セシウム封入型熱電子発電管(熱電子発電器)
5,42 コレクタ
6,43,61,71 エミッタ
7 ヒータ
8 セシウム溜め
9 ヒータ加熱用電源
10 ダイオード
11 直流可変電源
12 外部抵抗
21 太陽光
31 エキシマレーザ
32 色素レーザ
40 熱電子発電器
41 キセノンランプの照射光
44 渦巻き状タングステン線
45 熱放射反射器の支持棒
50 電気炉
51 オゾンレスキセノンランプ
52 光学レンズ
53 エミッタ加熱用電源
54 遅延パルス発生回路
55 三角波発振器
56 電力増幅器
57 負荷抵抗
58 直流増幅器
59 サンプリング・ホールディング回路
62 光トラップ用突起
63 太陽光

Claims (10)

  1. 強力な光をレンズを使って集光し、前記強力な光の長波長域でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱するとともに、短波長域光を前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、該アルカリ金属原子を励起・電離させて放電を起こさせ、前記エミッタ電極近傍の負の空間電荷を中和させ、エミッタ電流を増大させることを特徴とする光利用熱電子発電方法。
  2. 請求項1記載の光利用熱電子発電方法において、前記強力な光として太陽光を用いることを特徴とする光利用熱電子発電方法。
  3. 請求項1記載の光利用熱電子発電方法において、前記アルカリ金属原子としてセシウム原子を用いることを特徴とする光利用熱電子発電方法。
  4. (a)電気炉内に配置される低圧セシウム封入型熱電子発電管と、
    (b)レンズを使って強力な光を集光し、該強力な光の長波長域でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱する手段と、
    (c)短波長域光を前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、該アルカリ金属原子を励起・電離させて放電を起こさせ、前記エミッタ電極近傍の負の空間電荷を中和させる手段とを具備することを特徴とする光利用熱電子発電装置。
  5. 請求項記載の光利用熱電子発電装置において、前記レンズはフレネルレンズであることを特徴とする光利用熱電子発電装置。
  6. 請求項又は記載の光利用熱電子発電装置において、前記強力な光は太陽光であることを特徴とする光利用熱電子発電装置。
  7. 請求項又は記載の光利用熱電子発電装置において、前記アルカリ金属原子はセシウム原子であることを特徴とする光利用熱電子発電装置。
  8. (a)強力な光をレンズを使って集光し、前記強力な光でエミッタを中空状にしてその中に反射面を有する光トラップ用突起を形成した光トラップ付きエミッタ電極を加熱するとともに、前記エミッタ電極近傍のアルカリ金属原子に照射し、
    (b)空間電荷中和度αを10-2以下となし、
    (c)エミッタからの熱電子放出電流を10-3A/cm2 となし、
    (d)エミッタ仕事関数φE を2.2eVとすることにより、
    (e)光照射によって電極間空間に放電を誘起し、高効率で大出力を得られる点火モード動作を行うことを特徴とする光利用熱電子発電方法。
  9. 請求項記載の光利用熱電子発電方法において、前記光照射は太陽光照射であることを特徴とする光利用熱電子発電方法。
  10. 請求項記載の光利用熱電子発電方法において、前記光照射は太陽光照射であり、フレネルレンズを使って集光し、電力と温水を得ることを特徴とする光利用熱電子発電方法。
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