JP4064111B2 - 超音波圧接方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波圧接方法、詳しくは、アルミニウム板と鋼板との超音波圧接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポット溶接などの抵抗溶接は、鋼板の溶接においては広範囲に用いられているが、アルミニウム板においては、アルミニウムの物性上から種々の問題点があり、その適用においては、鋼板の場合に比べ、緻密な配慮が払われなければならない。
【0003】
アルミニウム板と鋼板とを直接にスポット溶接すると、溶接界面に脆弱な合金相が形成され、信頼性の高い健全な継ぎ手部を得ることができない。そのため、アルミニウム板と鋼板とをスポット溶接する必要のある場合には、両金属からなるトランジションピースを介して溶接施工する手法が行われている。しかしながら、トランジションピースを使用する方法は、溶接作業上、工数がかかるとともに、溶接部材の構成、構造が制約されるなどの難点が多い。
【0004】
アルミニウム材の接合方法として超音波圧接方法が推奨され、超音波スポット圧接をアルミニウム板と鋼板との接合に適用した例もあるが、この場合にも、接合界面に金属間化合物が認められ、引張せん断試験において、引張せん断強度は比較的高いが、ナゲット(溶着部)で剥離状に破断したことが報告されており、静的荷重、動的荷重を含む種々の荷重に対して十分な強度を有する信頼性のある継ぎ手を形成するには問題が残されている(軽金属溶接、Vol.18(1980)、No.5、233〜235頁)。
【0005】
アルミニウム板と鋼板との圧接について、発明者らは、上記の超音波圧接に再度着目し、圧接条件について多角的に実験、検討を加えた結果、超音波圧接装置によりアルミニウム板のみを溶融させ、鋼板を溶融させることなく加熱して接合した場合に強固な接合部が形成されることを知見した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、超音波を利用して、アルミニウム板と鋼板とを直接接合することにより、アルミニウム板と鋼板との間に健全且つ信頼性のある強固な継手を得ることができる超音波圧接方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1による超音波圧接方法は、アルミニウム板と鋼板とを接合する方法であって、超音波圧接装置の音極と反射極との間に、重ね合わせたアルミニウム板と鋼板を、アルミニウム板が反射極側に鋼板が音極側になるよう配置し、重ね合わせたアルミニウム板および鋼板の接触部を加圧した状態で、該接触部に超音波を与えることにより、アルミニウム板の溶融点以上で鋼板の溶融点未満の温度に加熱し、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする。
【0008】
請求項2による超音波接合方法は、アルミニウム板と鋼板とを接合する方法であって、超音波圧接装置の音極と反射極との間に、重ね合わせたアルミニウム板と鋼板を、アルミニウム板が反射極側に鋼板が音極側になるよう配置し、重ね合わせたアルミニウム板および鋼板の接触部を加圧した状態で、該接触部に超音波を与えることにより、アルミニウム板の溶融点以上で鋼板のA1変態点以下の温度に加熱し、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする。
【0009】
請求項2による超音波接合方法はまた、前記接触部に形成されるナゲットの鋼板側に変態組織の無い接合部を形成して、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする。ことを特徴とする。
【0010】
請求項3による超音波接合方法は、請求項1または2において、反射極のアルミニウム板が配置される部位は、中央部が低く周縁部が高い凹状に形成され、中央部にはアルミニウム板が接触せず、アルミニウム板と接触する周縁部の加圧力を大きくしてアルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする。
【0011】
請求項4による超音波接合方法は、請求項において、前記周縁部の表面および/または音極において鋼板と接触する部位の表面が凹凸状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明においては、図1に概略を示すように、超音波圧接装置の音極1と反射極(アンビル)2との間に、重ね合わせたアルミニウム板と鋼板(母材)Mを配置し、母材Mの接触面を加圧力Pで加圧した状態で、音極1に超音波振動を与えて接触部Cを圧接する。
【0013】
すなわち、超音波発振器3からの電気的エネルギーを、振動子4で機械的振動エネルギーに変換し、この振動エネルギーをチップ5に伝え、被溶接材Mの接触部Cに振動振幅ξを与える。これによって、接触面ですべりが生じ、塑性流動と摩擦熱により接触部Cの温度が上昇する。
【0014】
本発明においては、この場合、超音波の周波数、出力、押込量、圧接時間などの圧接条件を調整することにより、接触部Cをアルミニウム板の溶融点以上で鋼板の溶融点未満の温度、さらに好ましくは、アルミニウム板の溶融点以上で鋼板のA1変態点以下の温度に加熱し、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする。
【0015】
鋼板のA1変態点とは、オーステナイト(γ固溶体)がフェライト(α固溶体)とセメンタイト(Fe3 C)からなる層状組織のパーライトに共析変態する温度である。接触部をA1変態点より高い温度に加熱した場合にも、接合部は比較的高い引張剪断強さを有するが、破断はアルミニウム板と鋼板との接合界面で生じるため、動的な応力やねじれ荷重に対しては信頼性の面で問題がある。
【0016】
アルミニウム板と鋼板との接触部を、アルミニウムの溶融点以上、鋼板のA1変態点以下の特定温度範囲に加熱して圧接した場合には、接合された継手は引張特性に優れたものとなり、接合界面に金属間化合物を生じることなく、アルミニウム母材側で破断が生じる健全な接合部が形成される。
【0017】
本発明の好ましい実施態様としては、超音波の周波数を10〜30kHzに設定し、音極1側(超音波入力側)に鋼板Sが配設され、アンビル2側(反射極側)にアルミニウム板Aが配設されるよう母材Mをセットし、接合時の接触部の温度をアルミニウムの溶融点以上、鋼板のA1変態点以下にして、スポット溶接のように加圧力Pで圧接すると、ナゲットの形成により接合部が得られる。
【0018】
この場合、図2に示すように、アンビル(反射極)2のアルミニウム板Aと接触する部位6を、中央部7が低く周縁部8が高い凹状に形成し、周縁部8の加圧力を大きくしてアルミニウム板Aと鋼板Sとを接合することにより、さらに強固な結合を達成することができる。音極1の鋼板Sと接触する部位の形状は任意の形状で良い。
【0019】
アンビル(反射極)2の形状を上記のような凹状とすることにより信頼性の高い継ぎ手が得られる理由は、超音波圧接工程の最終段階でなされると考えられる圧接時にナゲットの外周部の圧力が高くなり、圧接時の圧力がナゲットの外周部に集中して強固な圧接が行われるとともに、僅かに形成される金属間化合物や防錆鋼板の亜鉛メッキに含まれるZnなどが、接合に大きく寄与するナゲットの外周部から排除されることなどによるものと考えられる。
【0020】
また、凹状のアンビル(反射極)を使用した場合には、超音波圧接工程中、アンビルとアルミニウム板Aとの固着の問題が避けられ、アルミニウム板Aの溶融部がアルミニウム板Aを貫通するように形成された場合であっても、アルミニウム板Aがアンビルと強く固着するのを防止することが可能とある。
【0021】
なお、凹状のアンビル(反射極)がアルミニウム板Aと接触する周縁部8の表面、および/または音極1において鋼板Sと接触する部位の表面は、スリップによるエネルギ損失を防ぐために、クロスハッチ模様など、凹凸状に形成するのが好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。なお、これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
アルミニウム板として5083合金板(調質:O材、厚さ:1mm)、鋼板として防錆鋼板(厚さ:0.7mm)を使用し、これらの板材を、図1に示すような超音波圧接装置に、音極1側(超音波入力側)に鋼板が配設され、アンビル2側(反射極側)にアルミニウム板が配設されるようセットし、表1に示す圧接条件で接合部を形成した。なお、超音波圧接装置としては、ソノボンド(sonobond)社製MH−2025(出力2.5kW、周波数20kHz)を使用した。
【0024】
得られた継手(試験材)の接合部について、ナゲット(溶着部)の形成状態を観察し、継手について引張剪断試験、十字引張試験を行い、それぞれの引張強さを求め、破断部を観察した。その結果を表2に示す。
【0025】
表2にみられるように、本発明に従う試験材No.1〜3においては、ナゲットには、アルミニウム板側のみに溶融凝固した組織(形状:円錐台状=截頭円錐状)が認められ、鋼板側には溶融凝固した組織、変態組織はみられなかった。引張剪断強さは120MPaを越え、また十字引張強さも60MPaを越える優れた強度特性をそなえ、破断はいずれもアルミニウム板側で生じていた。
【0026】
【表1】
Figure 0004064111
【0027】
【表2】
Figure 0004064111
【0028】
比較例1
実施例1と同一のアルミニウム板および鋼板を使用し、これらの板材を、実施例1と同一の超音波圧接装置にセットし、表3に示す圧接条件で接合部を形成した。
【0029】
得られた継手(試験材)の接合部について、ナゲット(溶着部)の形成状態を観察し、継手について引張剪断試験、十字引張試験を行い、それぞれの引張強さを求め、破断部を観察した。その結果を表4および表5に示す。なお、試験材No.5〜6については、音極1側(超音波入力側)に鋼板が配設され、アンビル2側(反射極側)にアルミニウム板が配設されるようセットし、試験材No.7については、音極側にアルミニウム板が配設され、アンビル側に鋼板が配設されるようセットした。
【0030】
【表3】
┌─┬────────────┐
│試│ 圧接条件 │
│験├───┬────┬───┤
│材│出 力│圧接時間│押込量│
│ │ J │ sec │ mm │
├─┼───┼────┼───┤
│ 5│ 6100 │ 3.2 │ 0.37 │
│ 6│ 3000 │ 2.2 │ 0.35 │
│ 7│ 3400 │ 1.5 │ 0.45 │
└─┴───┴────┴───┘
【0031】
【表4】
┌─┬────────────────────────────┐
│試│ ナゲット形成状態 │
│験├────────────┬───────────────┤
│材│ Al板側 │ 鋼板側 │
├─┼────────────┼───────────────┤
│ 5│溶融凝固組織(円錐台状) │溶融凝固組織(円錐台状) │
│ 6│溶融凝固組織無し │溶融凝固組織無し、変態組織無し│
│ 7│溶融凝固組織無し │溶融凝固組織無し、変態組織無し│
└─┴────────────┴───────────────┘
【0032】
【表5】
┌─┬──────────────┬──────────────┐
│試│ 引張剪断試験 │ 十字引張試験 │
│験├───┬──────────┼───┬──────────┤
│材│強 さ│ 破断部 │強 さ│ 破断部 │
│ │ MPa │ │ MPa │ │
├─┼───┼──────────┼───┼──────────┤
│ 5│ 110 │Al板と鋼板の接合界面│ 21 │Al板と鋼板の接合界面│
│ 6│ 54 │Al板と鋼板の接合界面│ 16 │Al板と鋼板の接合界面│
│ 7│ 49 │Al板と鋼板の接合界面│ 10 │Al板と鋼板の接合界面│
└─┴───┴──────────┴───┴──────────┘
【0034】
表4〜5に示すように、試験材No.5は、圧接条件における出力が大きいため、接触部の鋼板が溶融し、接合部の強度は不十分なものとなった。試験材No.6は、圧接条件における押し込み量が大きく接触部のアルミニウム板が溶融せず、また、試験材No.7は、母材を、チップ側にアルミニウム板が配設され、アンビル側に鋼板が配設されるようセットしたため、接触部のアルミニウム板が溶融せず、いずれも接合部の強度はきわめて劣るものとなった。
【0035】
実施例2
アルミニウム板として5083合金板(調質:O材、厚さ:1mm)、鋼板として防錆鋼板(厚さ:0.7mm)を使用し、これらの板材を、図1に示すような超音波圧接装置に、音極1側(超音波入力側)に鋼板が配設され、アンビル2(反射極)側にアルミニウム板が配設されるようにし、アンビル2のアルミニウム板と接触する部位を図2に示すような凹状(凹部7の直径4mm、接触する部位の直径6mm)に形成し、周縁部8の表面にクロスハッチ模様を形成したもの(実施例2A)と、アンビル2のアルミニウム板と接触する部位を凹状とせず(接触する部位の直径6mm)、接触部位の表面にクロスハッチ模様を形成したもの(実施例2B)を用いて、出力3300J、圧接時間2.0秒、押込量0.15mmの条件で接合部を形成した。なお、超音波圧接装置としては、ソノボンド(sonobond)社製MH−2025(出力2.5kW、周波数20kHz)を使用した。
【0036】
得られた継手(試験材)の接合部について、剥離試験を行ったところ、それぞれ5個の試験材において、アンビルを凹状に形成した実施例2Aでは、剥離試験で両母材(鋼板およびアルミニウム板)が大きく変形して栓抜け破断した試験材が3個、剥離試験で両母材が変形して接合界面が剥離した試験材が2個であったのに対して、アンビルを凹状に形成しない実施例2Bでは、剥離試験で両母材が大きく変形して栓抜け破断した試験材が2個、剥離試験で両母材が変形して接合界面が剥離した試験材が2個、剥離試験で母材の変形量が少なく、接合界面で剥離した試験材が1個であり、アンビルのアルミニウム板と接触する部位を凹形状としたアンビル(反射極)を使用した場合には、超音波圧接における接合強度が改善されることが認められた。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミニウム板と鋼板との間に、静的な荷重、動的な荷重を含む種々の荷重に対して十分に信頼性のある強固な継ぎ手を得ることができる超音波圧接方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波圧接方法を実施するための装置の概略図である。
【図2】本発明の超音波圧接方法を実施するために使用するアンビル側面および接触部位の平面を示す図である。
【符号の説明】
1 音極
2 アンビル(反射極)
3 超音波発振器
4 振動子
5 チップ
6 接触する部位
7 中央部(凹部)
8 周縁部
M 母材
S 鋼板
A アルミニウム板
C 接触部

Claims (4)

  1. アルミニウム板(アルミニウム合金板を含む、以下同じ)と鋼板とを接合する方法であって、超音波圧接装置の音極と反射極との間に、重ね合わせたアルミニウム板と鋼板を、アルミニウム板が反射極側に鋼板が音極側になるよう配置し、重ね合わせたアルミニウム板および鋼板の接触部を加圧した状態で、該接触部に超音波を与えることにより、アルミニウム板の溶融点以上で鋼板の溶融点未満の温度に加熱し、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする超音波圧接方法。
  2. アルミニウム板と鋼板とを接合する方法であって、超音波圧接装置の音極と反射極との間に、重ね合わせたアルミニウム板と鋼板を、アルミニウム板が反射極側に鋼板が音極側になるよう配置し、重ね合わせたアルミニウム板および鋼板の接触部を加圧した状態で、該接触部に超音波を与えることにより、アルミニウム板の溶融点以上で鋼板のA1変態点以下の温度に加熱し、前記接触部に形成されるナゲットの鋼板側に変態組織の無い接合部を形成して、アルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする超音波圧接方法。
  3. 反射極のアルミニウム板が配置される部位は、中央部が低く周縁部が高い凹状に形成され、中央部にはアルミニウム板が接触せず、アルミニウム板と接触する周縁部の加圧力を大きくしてアルミニウム板と鋼板とを接合することを特徴とする請求項1または2記載の超音波圧接方法。
  4. 前記周縁部の表面および/または音極において鋼板と接触する部位の表面が凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項記載の超音波圧接方法。
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