本発明による光ディスク媒体の記録面1には、図1Aに示すように、トラックグルーブ2がスパイラル状に形成されている。図1Bは、トラックグルーブ2の一部を拡大して示している。図1Bにおいては、不図示のディスク中心が下方に存在し、ディスク径方向が矢印aで示されている。矢印bは、ディスク上に形成される記録/再生光のビームスポットがディスクの回転に伴って移動する方向を示している。本明細書では、矢印aに平行な向きを「ディスク径(ラジアル)方向」と呼び、矢印bに平行な方向を「トラック方向」と呼ぶことにする。
ディスク上に形成される光ビームスポットを固定した座標系では、光ビームに照射されるディスク部分(「ディスク照射部」)は、矢印bとは反対の方向に移動する。
ここで、図1Bに示すようなX−Y座標を考えることにする。本発明の光ディスクでは、トラックグルーブの側面2a、2bのY座標位置がX座標の増加に伴って周期的に変化している。このようなグルーブ側面2a、2bの周期的な位置変位をトラックグルーブ2の「ウォブル」または「ウォブリング」と称する。矢印a方向の変位は「ディスク外周側変位」と称し、矢印aの反対方向への変位は「ディスク内周側変位」と称する。また、図中、ウォブルの1周期は「T」で示されている。ウォブル周波数は、ウォブルの1周期Tに反比例し、ディスク上における光ビームスポットの線速度に比例する。
図示されている例におけるトラックグルーブ2の幅はトラック方向(矢印b)に沿って一様である。このため、トラックグルーブ2の側面2a、2bの位置がディスク径方向(矢印a)に変位する量は、トラックグルーブ2の中心(破線)がディスク径方向に変位する量に等しい。このため、以下においては、トラックグルーブにおける側面位置のディスク径方向変位を「トラックグルーブの変位」または「トラックグルーブのウォブル」と簡略的に表現することにする。ただし、本発明は、トラックグルーブ2の中心とトラックグルーブ2の側面2a、2bとがディスク径方向に同じだけウォブルする場合に限定されない。トラックグルーブ2の幅がトラック方向に沿って変化しても良いし、トラックグルーブ2の中心がウォブルせず、トラックグルーブの側面のみがウォブルしていてもよい。
本発明では、トラックグルーブ2のウォブリング構造が複数種類の変位パターンの組み合わせによって規定されている。すなわち、トラックグルーブ2の平面形状は、図1Bに示すような単なる正弦波形のみからなるのではなく、正弦波形とは異なる形状部分を少なくとも一部に有している。このようなウォブルドグルーブの基本構成は、本出願人による特許出願(特願2000−6593号、特願2000−187259号、および特願2000−319009号)の明細書に開示されている。
図1Bのトラックグルーブ2について、グルーブ中心のY座標をX座標の関数f0(x)で示すと、f0(x)は、例えば、定数・sin(2πx/T)で表される。
以下、図2(a)および(b)を参照しながら、本発明で採用するウォブルパターンの構成を詳細に説明する。
図2(a)は、トラックグルーブ2のウォブルパターンを構成する4種類の基本要素を示している。図2(a)には、滑らかな正弦波形部位100および101、ディスク外周向き変位を急峻にした矩形部位102、ならびに、ディスク内周向き変位を急峻にした矩形部位103が示されている。これらの要素部分の組み合わせによって、図2(b)に示すような、4種類のウォブルパターン104〜107が形成される。
ウォブルパターン104は矩形部位のない正弦波である。このパターンを「基本波形」と称することとする。本明細書において、「正弦波」とは、完全なサインカーブに限定されず、滑らかな蛇行を広く含むものとする。
ウォブルパターン105は、正弦波形による変位よりも急激にディスク外周側に変位する部分を有している。このような部分を「外周向き変位矩形部」と称することにする。
実際の光ディスクでは、トラックグルーブのディスク径方向変位をトラック方向に対して垂直に実現することは困難であるため、完全な矩形が形成されるわけではない。従って、実際の光ディスクにおける矩形部のエッジ形状は、正弦波部位に対して相対的に急峻に変位していれば良く、完全な矩形である必要はない。図2(b)からもわかるように、正弦波部位では、最内周側から最外周側への変位がウォブル周期の1/2の時間で完了する。矩形部位では、同様の変位がウォブル周期の例えば1/4以下で完了するようにすれば、これらの形状差を充分に検知することが可能である。
なお、ウォブルパターン106は、内周向き変位矩形で特徴付けられ、ウォブルパターン107は、「内周向き変位矩形」プラス「外周向き変位矩形」で特徴付けられる。
ウォブルパターン104は、基本波形のみによって構成されているため、その周波数成分は、ウォブル周期Tの逆数に比例する「基本周波数」によって規定される。これに対して、他のウォブルパターン105から107の周波数成分は、基本周波数成分以外に、高周波成分を有している。高周波成分は、ウォブルパターンの矩形部分における急激な変位によって発生する。
ウォブルパターン105〜107について、図1Bの座標系を採用し、トラック中心のY座標をX座標の関数で示すと、これらの関数をフーリエ級数で展開することができる。展開されたフーリエ級数には、sin(2πx/T)よりも振動周期の短いsin関数の項(高調波成分)が含まれることになる。しかしながら、いずれのウォブルパターンも基本波形成分を有している。本明細書では、基本波形の周波数を「ウォブル周波数」と称する。上記4種類のウォブルパターンは、共通のウォブル周波数を有している。
本発明では、ウォブル周波数を変調することによってトラックグルーブ2にアドレス情報を書き込む代わりに、前述の複数種類のウォブルパターンを組み合わせることによって、アドレス情報を含む種々の情報をトラックグルーブに記録させることができる。具体的には、トラックグルーブの所定区間毎に上記4種類のウォブルパターン104〜107のいずれかを割り当てることにより、例えば「B」、「S」、「0」、および「1」などの4つの符号を記録しておくことが可能である。ここで、「B」はブロック情報を示し、「S」は同期情報を示すものとする。「0」および「1」は、それらの組み合わせによってアドレス番号やその誤り検出符号などを表現する。
次に、図3Aおよび図3Bを参照しながら、本発明による光ディスクからトラックグルーブのウォブルによって記録された情報を再生する方法の基本を説明する。
まず、図3Aおよび図3Bを参照する。
図3Aは、再生装置の主要部を示す図であり、図3Bは、トラックグルーブと再生信号との関係を示す図である。
図3Bに模式的に示すトラックグルーブ200に対して、再生用レーザビーム201のスポットを矢印方向に走査する。レーザビーム201は光ディスクから反射され、反射光202が形成される。反射光202は、図3Aに示す再生装置のディテクタ203、204で受け取られる。ディテクタ203、204は、ディスク半径方向に対応した方向に分割されており、それぞれ、受け取った光の強度に応じた電圧を出力する。ディテクタ203、204に対する反射光202の照射位置(受光位置)がディテクタ203とディテクタ204との間にある分割位置に対していずれかの側にシフトすると、ディテクタ203の出力とディテクタ204の出力との間に差異が発生する(差動プッシュプル検出)。ディテクタ203、204の出力は差動回路205に入力され、差動回路205において引き算が実行される。その結果、グルーブ200のウォブル形状に応じた信号(ウォブル信号)206が得られる。ウォブル信号206は、ハイパスフィルタ(HPF)207に入力され、ハイパスフィルタ(HPF)207で微分される。その結果、ウォブル信号206に含まれていた滑らかな基本成分は減衰し、急峻な傾斜を持った矩形部分に対応したパルス成分をもつパルス信号208が得られる。図3Bからわかるように、パルス信号208における各パルスの極性は、グルーブ200における急峻な変位の方向に依存している。このため、パルス信号208から、グルーブ200の持つウォブルパターンを識別することが可能である。
次に、図3Cを参照する。図3Cは、図3Bに示すウォブル信号206からパルス信号208とクロック信号209とを生成する回路の構成例を示している。
図3Cの構成例では、ウォブル信号206は、第1のバンドパスフィルタBPF1および第2のバンドパスフィルタBPF2に入力される。そして、第1のバンドパスフィルタBPF1および第2のバンドパスフィルタBPF2は、それぞれ、パルス信号208およびクロック信号209を生成している。
トラックのウォブル周波数をfw(Hz)とすると、第1のバンドパスフィルタBPF1は、4fw〜6fw(例えば5fw)の周波数でゲイン(透過率)がピークとなる特性をもつフィルタから形成される。このようなフィルタによれば、低周波からピーク周波数までは例えば20dB/decでゲインが上昇し、ピーク周波数よりも周波数が高い領域では急激(例えば60dB/dec)にゲインが低下することが好ましい。第1のバンドパスフィルタBPF1は、トラックのウォブルが矩形的に変化する部分を示すパルス信号208をウォブル信号206から適切に生成することができる。
一方、第2のバンドパスフィルタBPF2は、所定の周数数帯域(例えばウォブル周波数fwを中心に含む、0.5fw〜1.5fwの帯域)でゲインが高く、それ以外の周波数ではゲインが小さいフィルタリング特性を有している。このような第2のバンドパスフィルタBPF2は、トラックのウォブル周波数に対応した周波数を持つ正弦波信号をクロック信号209として生成することができる。
以下、本発明による光ディスク媒体の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態に係る光ディスクの記録面1にも、図1Aに示すようなスパイラル状トラックグルーブ2が形成されている。
図4は、本実施形態におけるトラックグルーブ2の形状を示している。トラックグルーブ2は、複数のブロックに分かれており、ブロックとブロックとの間には、位置決めマークとして機能するブロックマーク(識別マーク)210が設けられている。本実施形態におけるブロックマーク210は、トラックグルーブ2を寸断することにより形成されている。
トラックグルーブ2は、複数の単位区間22、23を含んでおり、所定数の単位区間22、23によって各ブロックが形成される。各単位区間には、複数のウォブルパターンから選択された任意のウォブルパターンが割り当てられ得る。図4の例では、単位区間22には図2(b)のウォブルパターン106が割り当てられ、単位区間23にはウォブルパターン105が割り当てられている。
ウォブルパターン105およびウォブルパターン106は、それぞれ、1ビットの情報要素(”0”または”1”)を担っている。この1ビットの情報要素を本明細書では「副情報」と称することにする。トラックグルーブの各単位区間におけるウォブルパターンの種類を検知すれば、その単位区間に割り当てられた副情報の内容を再生することができる。そして、複数ビットの副情報から種々の情報を再生することが可能になる。
ウォブルパターンにおける波形の違いは、前述したように、差動プッシュプル検出で得られる再生信号の立ち上がり/立下りの傾斜の差となって表れる。従って、例えば単位区間22のウォブルパターンが図2Aのウォブルパターン105およびウォブルパターン106のいずれであるかを容易に識別できる。前述のように再生信号を微分することによって上記検出を行うと、ノイズ成分が増加する。このため、SN比の低い高密度光ディスク媒体に適用する場合、検出エラーが生じる可能性がある。このような検出エラーを発生させないようにするため、本実施形態では、以下に説明する技術を採用している。
ユーザによっディスクに書き込まれるべき情報(以下、「記録情報」と称する。)は、複数のブロックに分けられ、トラックグループに沿って記録層に書き込まれる。記録情報の書き込みは、ブロックマーク210を起点にしてトラックグルーブ2に沿って伸びる所定長(例えば64キロバイト長)のブロックを単位として行われる。このようなブロックは、情報処理上の単位であり、例えばECCブロックなどを意味する。ブロックはN個(Nは自然数)のサブブロック(単位区間部分)を含んでいる。ブロックが64キロバイトで、サブブロックが2キロバイトであるとき、1つのブロックに含まるサブブロックの個数Nは32となる。
本実施形態では、トラックグルーブ上で各サブブロックの情報が書き込まれるべき領域は、トラックグルーブの単位区間22、23に対応している。
単位区間22、23のそれぞれに1ビットの副情報0または1を記録しているため、各ブロックにはN=32(ビット)の副情報群が割り当てられる。本実施形態では、この32ビットの副情報群によって、当該ブロックのアドレスを表記する。
例えば、各単位区間の長さを2418バイト(=2048バイト+パリティ)とし、1ウォブル周期を11.625バイトに相当する長さに設定した場合、各単位区間には208周期分のウォブルパターンが含まれることになる。その結果、図3Bおよび図3Cに示すウォブル信号206をウォブルの208周期分(208波数)の期間にわたって検知し、ウォブルパターンの種類を識別すればよい。このため、信号再生時にノイズによって多少の検出エラーが発生したとしても、副情報を正確に判別することができる。
より具体的には、例えば、差動プッシュプル信号の微分波形(パルス信号208)をその立ち上がり、立ち下がり毎にサンプルホールドする。そして、立ち上がりの回数および立ち下りの回数をそれぞれ積算した値を比較するようにすれば、ノイズ成分がキャンセルされるため、副情報成分を高い精度で抽出することができる。
なお、図4のブロックマーク210は、トラックグルーブ2を寸断して設けられているため、ブロックマーク210上の記録層に情報を上書きすると多少の問題が発生しえる。すなわち、グルーブの有無によって反射光量が大きく変化するため、ブロックマーク210の存在が再生信号に対する外乱として作用する。そこで、本実施形態では、ブロックマーク210を含む所定長の領域21にVFO(Variable Frequency Oscillator)記録領域21を割り当てている。VFO記録領域21とは、単一周波数信号VFOが記録される領域であり、VFOは、記録情報の再生に必要なPLLを引き込ませるための信号である。VFO信号であれば、多少の外乱変動があっても局所的なジッタが発生するだけであり、エラーが生じることはない。また、VFO信号は単一周波数で繰り返される信号であるため、ブロックマークによる外乱を分離することも可能である。VFO記録領域21に記録される信号は、単一周波数に限らずとも、ブロックマーク210による信号と周波数分離可能な十分狭いスペクトル帯域の特定パターンの信号であればよい。
(実施形態2)
図5を参照しながら、実施形態1における光ディスク媒体のアドレスを再生する機能を持った光ディスク再生装置を説明する。
この再生装置の光ヘッド331から出たレーザビームは、光ディスク1を照射し、光ディスク1のトラックグルーブ上に光スポットを形成する。光ディスク1の回転に伴って光スポットがトラックグルーブ上を移動するように駆動系の制御が行われる。
光ヘッド331は、光ディスク1によって反射されたレーザビームを受け取り、電気信号を生成する。光ヘッド331から出力された電気信号は、再生信号処理回路332に入力され、再生信号処理回路332において演算される。再生信号処理回路332は、光ヘッド331から得た信号に基づいて、全加算信号とウォブル信号(ブッシュプル信号)とを生成し、出力する。
ウォブル信号はウォブルPLL回路333に入力される。ウォブルPLL回路333は、ウォブル信号からクロック信号を生成し、タイミング発生回路335に送出する。クロック信号の周波数は、ウォブル周波数を逓倍した大きさを持つ。なお、ウォブルPLL回路333が位相同期していない状態では、精度は劣るものの基準クロックを用いてタイミングを生成することもできる。
再生信号処理回路332から出力された全加算信号は、ブロックマーク検出回路334に入力される。ブロックマーク検出回路334は、全加算信号からブロックマーク210の位置を検出する。実施形態1の光ディスクでは、ブロックマーク210が形成されている部分からの反射レーザ光強度が他の部分よりも高くなる。このため、ブロックマーク検出回路334は、全加算信号が所定のレベルを超えたとき、ブロックマーク検出信号を生成し、タイミング発生回路335に送出する。
タイミング発生回路335は、上記のブロックマーク検出信号およびクロック信号に基づいて、ブロック先頭位置からのクロック数をカウントする。このカウントにより、ウォブル信号の立ち上がりタイミング、立ち下がりタイミング、副情報の区切りのタイミング、および、ブロックの区切りタイミングを決定することができる。
第1の形状計数回路336は、ウォブル信号の立ちあがり時におけるウォブル信号の傾きが所定値UTH以上になる回数を単位区間毎にカウントする。具体的には、プッシュプル信号の傾きが、ウォブル信号の立ちあがり時において、所定値UTH以上であれば、計数値C1を1だけ増加し、UTH未満であれば、計数値C1を変化させずにそのまま保持する。ウォブル信号の立ちあがり時は、タイミング発生回路335の出力信号によって規定される。
第2の形状計数回路337は、ウォブル信号の立ち下がり時におけるウォブル信号の傾きが所定値DTH以下になる回数を単位区間毎にカウントする。具体的には、プッシュプル信号の傾きが、ウォブル信号の立ち下がり時において、所定値DTH以下であれば、計数値C2を1だけ増加し、DTHを超えれば、計数値C2を変化させずにそのまま保持する。ウォブル信号の立ち下がり時は、タイミング発生回路335の出力信号によって規定される。
副情報検出回路338は、タイミング発生回路335が生成した副情報の区切りタイミング信号に基づいて、第1の形状計数回路336の計数値C1と第2の形状計数回路337の計数値C2を比較する。ある単位区間について、C1≧C2が成立すれば、当該単位区間における副情報として”1”を出力し、C1<C2が成立すれば、当該単位区間における副情報として”0”を出力する。言い換えると、単位区間毎に多数決判別でウォブル信号の種類を決定している。
誤り訂正回路339は、1ブロック内に含まれる複数の単位区間に割り当てられた副情報群に対して誤り訂正を施し、アドレス情報を再生する。
上記の各回路は、独立した別々の回路として構成されている必要はなく、ある回路要素が複数の回路に共通して用いられていてもよい。また、予めメモリに記録されたプログラムに従って動作が制御されるディジタルシグナルプロセッサによって回路の機能が実行させるようにしてもよい。このことは、以下に述べる各実施形態についても当てはまる。
(実施形態3)
図6を参照しながら、本発明による光ディスク再生装置の他の実施形態を説明する。本実施形態における光ディスク再生装置は、実施形態2における光ディスク再生装置と比較して、イレージャ検出回路340を備えている点で異なる。また、誤り訂正回路339の機能も異なっている。これらの点以外では、本実施形態の装置は実施形態2の装置と同様であるので、両実施形態に共通する構成については説明を繰り返さないこととする。
イレージャ検出回路340は、各単位区間について、第1の形状計数回路336が出力する計数値C1と、第2の形状計数回路337が出力する計数値C2とを比較する。そして、所定値Eに対して、−E<C1−C2<+Eの関係が成立したとき、副情報の判別があいまいであるとしてイレージャフラグ”1”を出力する。一方、−E<C1−C2<+Eの関係が成立しないとき、イレージャフラグ”0”を出力する。
誤り訂正回路339は、イレージャフラグが”1”のとき、副情報を消去し、強制的に誤り訂正を施す。
本実施形態では、このようにイレージャフラグによって誤りビットを消去するため、誤り訂正符号の訂正可能ビット数が2倍になる。
なお、イレージャフラグとしては、C1−C2≦−Eのとき”0”、−E<C1−C2<+Eのとき”X”、+E≦C1−C2のとき”1”を出力するようにしてもよい。この場合、イレージャフラグが”X”であれば、強制的にエラー訂正を施すようにしても良い。
以上のように本実施形態の光ディスク再生装置によれば、第1の形状計数値と第2の形状計数値の差が小さく副情報の判定があいまいな場合、誤り訂正の過程でそのビットを消去することによって、誤り訂正能力を向上させ、より信頼性の高いアドレス再生が可能になる。
(実施形態4)
図7を参照しながら、本発明による光ディスク媒体のアドレス再生方法を説明する。
図7の上部には、ウォブル形状351が模式的に示されている。ウォブル形状351の左部分は立ち下がり変位が急峻であり、右部分は立ち上がり変位が急峻である。
プッシュプル信号に現れたウォブル信号352は、ノイズや波形歪みによって品質が劣化している。
2値化信号353は、ウォブル信号352を0レベルでスライスした信号である。微分信号354は、ウォブル信号352を微分した信号である。微分信号354は、ウォブル形状の傾斜に関する情報を有している。変位点における傾斜を検出している部分以外でもノイズや波形歪みによってピーキングが現れている。
簡単化のため、ウォブル信号のある任意の第1部分355と第2部分356について説明する。
ウォブル信号の第1部分355において、2値化信号353の立ち上がりエッジにおける微分信号354のサンプリング値357の絶対値と、立ち下がりエッジにおける微分信号354のサンプリング値358の絶対値とを比較する。サンプリング値358の絶対値の方が大きいため、第1部分355が含まれるウォブル信号は、立ち上がり変位よりも立ち下がり変位が急峻なウォブルパターンを有していると決定できる。
同様に、ウォブル信号の第2部分356において、2値化信号353の立ち上がりエッジにおける微分信号354のサンプリング値359の絶対値と、立ち下がりエッジにおける微分信号354のサンプリング値360絶対値とを比較する。サンプリング値359の絶対値の方が大きいため、第2部分356が含まれるウォブル信号は、立ち下がり変位よりも立ち上がり変位が急峻なウォブルパターンを有していると決定できる。
このような識別をウォブル周期毎に行い、識別結果を積算することにより、副情報単位内での多数決判別を実行することができる。
このように本発明のアドレス再生方法は、ウォブル信号を2値化した信号のエッジタイミングにおいてのみ微分信号をサンプリングし、サンプル値を比較する。その結果、ウォブル形状の変位点における傾きを検出し、ノイズや波形歪み等の外乱があっても信頼性の高い検出ができる。
(実施形態5)
図8を参照しながら、本発明の光ディスクからアドレスを再生できる他の光ディスク再生装置を説明する。
本実施形態の再生装置と、図5の再生装置との相違点は、本実施形態の装置がウォブル形状検出回路361を備えている点にある。ウォブル形状検出回路361は、1ウォブル周期毎に、ウォブル形状の立ち上がり変位が急峻な第1の形状であるか、立ち下がり変位が急峻な第2の形状であるかを識別し、副情報検出回路338にウォブル形状情報を出力する。副情報検出回路338は、ウォブル形状回路361から得たウォブル形状情報に基づいて、形状検出数の多い形状を決定する。そして、着目する副情報単位に割りあてられた副情報を識別し、出力する。
副情報検出回路338は、受け取ったウォブル形状情報に基づいて、第1の形状の検知を示す信号を受け取った回数を得るためのカウンタと、第2の形状の検知を示す信号を受け取った回数を得るためのカウンタとを備えていても良い。両形状についてのカウント数を比較することにより、多数決判別が実行できる。また、アップダウンカウンタによって、第1の形状を検知したときは値を1だけ増加させ、第2の形状を検知したときは値を1だけ減少させるようにしてしてもよい。この場合、単位区間の終了時点におけるアップダウンカウンタの符号で副情報を表現することができる。
次に、図9を参照してウォブル形状検出回路361の動作を詳細に説明する。
ウォブル形状検出回路361は、プッシュプル信号(ウォブル信号)を受け取り、不必要なノイズ成分を低減するBPF(バンドパスフィルタ)362を有している。このBPF362は、ウォブル信号の基本波周波数成分と、ウォブルの傾き情報を有する高調波周波数成分とを通過させれば良い。ウォブル信号の基本周波数をfwとすると、線速度の変化マージンを考慮し、1/2fw〜5fwの帯域を持つバンドパスフィルタを用いることが好ましい。
BPF362の出力は、傾き検出回路363と2値化回路365に入力される。
傾き検出回路363は、ウォブル信号の傾きを検出する。この「傾き」の検出は、ウォブル信号を微分することによって行われ得る。微分に代えて、傾き情報を有する高調波成分のみを抽出するHPF(ハイパスフィルタ)を用いても良い。傾き検出回路363の出力は、立ち上がり値取得回路366と反転回路364とに送られる。
反転回路364は、傾き検出回路363の出力を0レベルに対して反転し、立ち下がり値取得回路367に出力する。
2値化回路365は、ウォブル信号の立ち上がりゼロクロスタイミングと、立ち下がりゼロクロスタイミングとを検出する。立ち上がりゼロクロスタイミングは、ウォブル信号が”L”レベルから”H”レベルに変位するタイミングであり、立ち下がりゼロクロスタイミングは、”H”レベルから”L”レベルに変位するタイミングである。
立ち上がり値取得回路366は、2値化回路365が検出した立ち上がりゼロクロスタイミングにおける傾き検出回路363の出力した傾きをサンプルホールドする。同様に、立ち下がり値取得回路367は、2値化回路365が検出した立ち下がりゼロクロスタイミングにおける反転回路364が出力した傾き(傾き値の反転)をサンプルホールドする。
ここで、立ち上がり値取得回路366がサンプリングする値は、立ち上がりにおける傾きであることから、正の値である。また、立ち下がり値取得回路367がサンプリングする値は、立ち下がりにおける傾きを反転した値であることから、正の値である。つまり、立ち上がり値取得回路366ならびに立ち下がり値取得回路367がサンプリングする値は、それぞれ傾きの絶対値に相当する。
比較回路369は、立ち上がり値取得回路366がサンプルホールドしている立ち上がりタイミングにおける傾きの絶対値と、立ち下がり値取得回路367がサンプルホールドしている立ち下がりタイミングにおける傾きの絶対値を、ウォブルの立ち下がりゼロクロスタイミングから遅延回路368で所定時間遅延したタイミングにおいて比較し、立ち上がり値取得回路366の値が大きければ第1の形状、そうでなければ第2の形状として、ウォブル形状情報を出力する。つまり、ウォブル信号の傾き情報が最も確実な(微分値が最大、最小となる)立ち上がりゼロクロスタイミングにおける傾き、ならびに、立ち上がりゼロクロスタイミングにおける傾きだけを比較することにより、確実なウォブル形状の検出を行っている。
なお、本実施形態では、同一の信号を2値化回路365と傾き検出回路363の両方に入力しているが、本発明はこれに限定されない。ウォブル信号のゼロクロスタイミングをより高精度に検出するため、LPF(ローパスフィルタ)を介してBPF362の出力を2値化回路365に入力してもよい。また、BPF362として、2種類のBPFを備え、異なる特性を持つBPFを傾き検出回路363と2値化回路365に割り当てるようにしてもよい。この場合、各BPFを通過したウォブル信号の位相を一致させるため、別途、遅延補正回路を更に有することが望ましい。
このように、本実施形態における光ディスク再生装置によれば、副情報を有するウォブル信号のゼロクロスタイミングにおいて、ウォブル信号の傾きをサンプルホールドし、そのホールド値を比較する。こうすることにより、ウォブル形状の識別を確実に行うことができ、ノイズ等による副情報の誤検出を低減することができる。
(実施形態6)
図10は、ブロックマーク210がVFO記録領域21の略中央に配置されている構成を示している。なお、図10の例では、VFO記録領域21に矩形波形のウォブルが形成されているが、本発明は、このような態様に限定されない。
ここでは、図11Aおよび図11Bを参照しながら、信号をVFO記録領域21に記録する方法について説明する。図11Aおよび図11Bでは、簡単化のため、トラックグルーブ2に形成されているウォブルの記載を省略している。
図11Aは、トラックグルーブ2上に1ブロック相当の信号を記録する場合を示している。1ブロック単位の記録信号は、データ(DATA)202とVFO201、203とを含んでいる。
各ブロックの記録はVFO201から開始する。本実施形態におけるVFO201は、VFO記録領域21内に記録され、VFO201の記録開始位置はブロックマーク210の手前である。VFO201を記録した後、1ブロック分のDATA202が記録され、最後にVFO203が記録される。VFO203は、VFO記録領域31内に記録され、VFO203の記録終了位置はブロックマーク310の後方である。すなわち、本実施形態では、記録予定領域の先頭に位置するブロックマークの手前から情報の記録を開始し、前記領域の後尾に位置するブロックマークを通過した後に情報の記録を終了する。
ブロックマーク210の中央からデータの記録を開始した場合、ブロックマーク210が存在する部分で記録膜の劣化が顕著に発生する。本実施形態におけるブロックマーク210は、トラックグルーブ2を寸断して設けられたものであるため、ブロックマーク210が存在する部分でトラックグルーブ上に段差が形成されている。このような段差が存在する部分に情報を記録するとき、記録膜に情報を記録するとき、記録膜に高いエネルギを持つレーザビームを照射することより、照射部分に高い熱エネルギを与える必要がある。レーザビームの照射領域の前後には大きな温度勾配が発生する。このような温度勾配は記録膜に応力を発生させる。応力発生部分に上述の段差が存在すると、記録膜などに小さな亀裂が発生するおそれがある。記録膜などに小さな亀裂が発生すると、記録を繰り返すうちに亀裂が拡大し、最終的には膜破損に至る可能性がある。
本実施形態では、このような膜破損を防ぐため、記録の開始/終了位置をブロックマーク210、310が存在しない領域においている。
VFOは、データ再生のための準備を整えるためのダミー信号である。VFO信号を再生している間に、データスライスレベルを再生信号の中心にフィードバック制御し、さらにクロック抽出のためPLLをロックさせる。データを忠実に再生するためには、再生データ信号の二値化とクロッキングを正確に行う必要がある。もし、VFO信号期間が短すぎると、PLLが十分ロックしない状態でデータの再生を開始するため、ブロック先頭のデータにエラーが発生することがある。このため、VFOは、ブロックマークの手前より記録し、十分長い領域を確保することが好ましい。
なお、先行するブロックに既にデータが記録されている場合、図11Bに示すように、これから記録するブロックのVFOが、先行ブロックのVFOに対して上書きされる場合がある。このような場合、既に記録されているVFO信号の一部が消される。また、既存のVFOと上書きされたVFOとの間で位相が同期していない可能性もある。このため、先行するブロックのVFOを用いて、これから次のブロックのPLLをロックさせること好ましくない。
以上、VFOの記録開始位置について述べたが、記録膜劣化について、データの記録終了位置についても同様に成り立つ。ただし、記録終了位置は、ブロックマーク310の手前よりも後が好ましい。記録終了位置をブロックマーク310の手前にすると、当該ブロックと後続するブロックとの間に間隙が形成される場合がある。この間隙は、高パワーの光が照射されず、マークが形成されない領域である。段差と同様、こうした間隙も膜の劣化に寄与することが懸念される。従って、先に記録されたブロックの後尾のVFOと、後に記録するブロックの先頭のVFOとは、オーバーラップすることが好ましい。VFOのオーバーラップは、図11Aに示すように、VFO記録開始位置をブロックマーク210の手前に設定するとともに、VFOの記録終了位置をブロックマーク310の後に設定することで達成される。
ブロックマークの位置とVFO記録開始位置/終了位置との間隔は、記録に用いるレーザ光のビームスポットの10倍程度以上に設定することがすることが望ましい。ビームスポット径はレーザ光の波長をNA値で割った大きさを持つため、波長650nmのレーザ光を出射するNA0.65の光学ヘッドを用いた場合、ディスク上におけるビームスポット径は1μm(=波長/NA)となる。この場合、ブロックマークから10um以上離れた位置を記録開始点または終了点とすることが好ましい。ただし、ビームスポットの10倍という基準は、記録膜の特性(特に熱伝導率)によって修正され得る。
なお、ブロックマーク210の手前から記録を開始するとき、当該ブロックマークは未だ検出されていない。このため、正確にブロックマークの手前から記録を開始するには、何らかの方法でブロックマークの位置を予測または推定する必要がある。例えば、先行するブロックのブロックマークを検出した後、前述のクロック信号からクロック数をカウントし、所定のクロック数に達したときに、次のブロックのVFOを記録し始めるようにすればよい。
(実施形態7)
図12を参照しながら、本実施形態における光ディスク媒体を説明する。前述の実施形態では、ブロックマーク210をVFO記録領域21の略中央に設けたが、本実施形態では、図12に示すように、ブロックマーク211をVFO記録領域21の中央より先行ブロック側に形成している。このような構成にしたことにより、先頭のVFOをより長く確保することができる。
(実施形態8)
図13、図14A、および図14Bを参照しながら、本実施形態における光ディスク媒体を説明する。
本実施形態のブロックマーク210は、サブマーク210aおよびサブマーク210bから構成されている。こうした構成により、記録時のタイミングがとりやすくなる。すなわち、2つのマークが形成されているため、ブロック先頭部分におけるマーク210bが検出された後、マーク210aが検出される前に記録を開始するようにできる。また、記録の終了は、次のブロックの先頭部分に位置する2番目のマーク210aが検出された後に行うことができる。
このようにすれば、先行ブロックのブロックマークの検出時点からクロックをカウントする必要がなく、精度よく記録開始位置を定めることができる。
なお、膜の劣化を避けるために、マーク210aとマーク210bとの間隔を充分に広く設定することが好ましい。具体的には、記録開始位置とマーク210aまたはマーク210bとの間隔をビームスポットの約10倍以上にするため、マーク210aとマーク210bとの間隔は、ビームスポットの約20倍以上に設定することが好ましい。光ディスク上におけるビームスポットが1μmである場合、上記の間隔は20μm以上に設定することが望ましい。
(実施形態9)
図15を参照しながら、本実施形態における光ディスクを説明する。前述の実施形態では、いずれも、トラックグルーブ2を寸断して作ったブロックマーク210を形成している。このようなトラックグルーブが寸断された部分は、グルーブが形成されていないため、平坦であり、「ミラーマーク」と呼ばれる。ミラーマークは、再生光を高い反射率で反射するため、検出が容易である。しかし、本実施形態では、ミラーマークによるブロックマークを採用せず、他の形態のブロックマーク218を用いている。 以下、ブロックマーク218を詳細に説明する。
本実施形態では、図15に示すように、トラックグルーブのウォブルの位相をVFO記録領域21内において反転させ、この位相の反転が生じている部分をブロックマーク218として機能させている。
前述のように、ミラーマークによるブロックマーク210は、位置決め精度が高く、検出が容易といった利点を有しているが、SN比が低い場合、検出誤りが顕著に増えるといった問題がある。これに対し、ブロックマーク218の前後でウォブルの位相が逆転するようにトラックグルーブを形成しておけば、かりにノイズなどが原因でウォブル位相の変化点(ブロックマーク218)そのものを検出できなかった場合でも、ブロックマーク218を通り過ぎた後におけるウォブル位相を観察しておくことにより、いずれかの時点でブロックマークを通過したことを検知することができる。
(実施形態10)
図16を参照しながら、本発明による光ディスクの他の実施形態を説明する。本実施形態では、各VFO記録領域21内に2つのブロックマーク218aおよび218bを設けている。このブロックマーク218aおよび218bは、いずれも、トラックグルーブのウォブル位相を反転させることにより形成されている。
本実施形態と図15の実施形態との主要な差異は、各ブロック間に形成されたウォブル位相の反転数が奇数か偶数かの違いにある。図15に示すように、ウォブルの位相反転が各VFO記録領域21内で1回(奇数回数)生じる場合、その位相反転が生じた位置以降におけるウォブルの位相は、次のブロックマークを経過するまでの間、常に、先行ブロックにおけるウォブルの位相に対して反転した状態を維持することになる。その結果、トラックグルーブのウォブルからPLL同期でクロックを抽出しようとすると、そのままではPLL位相比較出力の極性が反転するため、PLLのスリップが発生してしまうことになる。このため、図15の例のように、ウォブルの位相反転回数が奇数であれば、ブロックマークの通過後にPLLの極性を反転させる必要がある。
これに対して、本実施形態では、一旦反転させた位相(218a)を再度反転(218b)させるため、ウォブルの位相が先行ブロックにおける位相と同一の位相に戻るため、PLL極性の反転は不要になる。
各VFO記録領域21内でのブロックマーク218a、218bの間隔は、想定されるディフェクトノイズより長くする必要がある。ただし、その間隔をPLLの応答時間より長くすると、上記スリップの発生する確率が高くなる。以上のことから、各VFO記録領域21内でのブロックマーク218a、218bの間隔は、ウォブル周波数の3〜10倍程度が適当であると考えられる。
なお、各VFO記録領域21内におけるブロックマーク218a、218bの数は2個に限定されず、偶数個であれば、本実施形態と同様の効果が得られる。ただし、限られた長さ範囲内に4個以上のブロックマーク218a、218bを形成するのは集積度の観点から望ましくない。
上記実施形態9および10では、ウォブルの位相を反転させることにより、ブロックマークを形成しているが、位相の変化を検出することができれば、ブロックマークの前後で位相がちょうど90°ずれている必要はない。ブロックマークの位置で変化するウォブル位相の好ましい範囲は、例えば45〜135°である。
(実施形態11)
次に、図17を参照しながら、本発明の実施形態11を説明する。
本実施形態と上記実施形態との差異は、ブロックマーク219の構成にある。本実施形態のブロックマーク219は、ブロック内部に位置するグルーブにおけるウォブル周波数とは異なる周波数のウォブルによって規定されている。図示されている例では、ブロックマーク219のウォブル周波数は、ブロック内部のウォブル周波数よりも高い。従って、バンドパスフィルタなどを用いて再生信号を処理することにより、局所的にウォブル周波数が異なっている信号を分離・識別すれば、ブロックマーク219の位置を高い精度で検知することができる。
本実施形態の光ディスク媒体においても、ブロックマーク219はVFO記録領域21内に形成されており、ブロックマーク219が存在する領域内にもVFOデータが書き込まれる。
ブロックマーク219のウォブル周波数は、ブロック内部におけるウォブル周波数の1.2倍以上3.0倍以下の範囲内に設定されることが好ましく、また、1.5倍以上2.0倍以下の範囲内に設定されることがさらに好ましい。ブロックマーク219のウォブル周波数がブロック内部のウォブル周波数に近すぎると、ブロックマーク219を検知することが困難になる。一方、ブロックマーク219のウォブル周波数がブロック内部のウォブル周波数に比較して高くなると、記録膜に書き込まれる情報の信号周波数に近づくため、両信号が干渉し、好ましくない。
なお、ブロック間において、ブロックマーク219以外の領域にはブロック内でのウォブル周波数と同一周波数のウォブルが形成されていることが好ましい。ブロック間におけるウォブルの形状は、ブロック内におけるウォブルの形状から異なっていることが望ましい。図17に示される例では、ブロック間のグルーブは正弦波カーブを描くように蛇行している。
(実施形態12)
次に、図18を参照しながら、本発明の実施形態12を説明する。
本実施形態では、ブロックマークとして、局所的に振幅や周波数または位相が変化する形状を用いず、正弦波カーブを描くように蛇行するグルーブ全体をブロックマークとして用いている。また、各サブブロック221、222の先頭部分に局所的に周波数が変化するウォブル228、229が設けられている。
このように、ウォブルの基本周波数と異なるウォブル周波数を持つ領域を各サブブロックの先頭に配置することにより、サブブロック間の境界を適確に検知することができる。前述の各実施形態では、サブブロックの位置はブロックマークからウォブルを計数することによって検知しているが、本実施形態では、各サブブロックに与えられたサブブロックマーク(228、229)を検知することにより、サブブロックの位置を認識することができる。
なお、VFO領域21内の適切な位置に、前述の各実施形態で採用したブロックマークと同様のブロックマークを形成してもよい。また、本実施形態では、各サブブロック221、222の先頭部分にウォブル周波数が局所的に異なるサブブロックマーク228、229を形成しているが、サブブロックマーク228、229の位置は各サブブロックの後端部であってもよい。また、すべてのサブブロックにサブブロックマーク228、229を設ける代わりに、奇数番目または偶数番目のサブブロックのみに設けても良い。
サブブロックマーク228、229のウォブル周波数は、前述した理由と同様の理由から、他の部分におけるウォブル周波数の1.2倍以上3.0倍以下の範囲内に設定されることが好ましく、また、1.5倍以上2.0倍以下の範囲内に設定されることがさらに好ましい。
サブブロックマーク228、229は、サブブロックの開始位置を特定するために好適に用いられるが、さらに他の情報を表現していてもよい。例えば、あるブロック内に含まれる複数のサブブロックマークを用いて、そのブロックまたは他の関連付けられたブロックのアドレスを記録していてもよいし、他の情報を記録していてもよい。複数のサブブロックマークを用いてブロックのアドレスを記録する場合、そのアドレスはブロック内のウォブルによっても記録されているため、アドレス再生の信頼度が向上するという利点がある。
サブブロックマークの組み合わせによって、複数ビットの情報を記録する場合、サブブロックマークに2値以上の識別可能な異なる形状を付与する必要がある。異なるサブブロックマークのウォブルに対して、異なる周波数を割り当てても良いし、異なる位相変調を割り当ててもよい。
次に、図19を参照しながら、本実施形態に係る光ディスク媒体からクロック信号およびアドレス情報を再生する回路の構成を説明する。
まず、トラックと直交する方向(ディスク径方向)に分割された受光素子901と差演算器371を用いることにより、グルーブのウォブルに対応した信号成分を含む電気信号を再生する。この再生信号から、ローパスフィルタ(LPF)374がウォブル信号の基本周期成分のみを抽出する。基本周期成分のみを有する信号はクロック生成回路373に与えられる。クロック生成回路373は、例えばPLL回路などから構成され、受け取った基本周期信号を所定数逓倍することにより、記録再生信号同期処理のためのクロック信号を生成する。
一方、ハイパスフィルタ(HPF)375は、再生ウォブル信号に含まれる高調波成分を選択的に通過させる。ハイパスフィルタ375の出力には、図18に示すサブブロックマーク228、229による高い周波数成分や、鋸波状ウォブルによって生成される鋸状信号の急峻エッジ成分が含まれている。
サブブロックマーク検出回路377は、サブブロックマーク228、229による所定周波数のウォブル成分を検出し、これらのマークを検出したとき、タイミング信号を発生する。サブブロックマーク検出回路377から出力されるタイミング信号は、アドレスデコーダ378に送出される。
前述のように、鋸波状ウォブルの急峻エッジの極性はアドレス情報の「1」か「0」かに応じて反転する。アドレス情報検出回路376は、ハイパスフィルタ375の出力に基づいて、この極性反転を検出し、ビットストリームをアドレスデコーダ378に送出する。ビットストリームを受け取ったアドレスデコーダ378は、サブブロックマーク検出回路377から出力されたタイミング信号に基づいて、アドレス情報を再生する。
以上の実施形態によれば、ブロックごとに信号が上書き可能な識別マークを形成し、グルーブウォブルによってアドレスを形成することにより、ブロック単位での情報の記録が容易な、高密度化に適した光ディスク媒体を提供することができる。また、この識別マークから十分離れた位置において記録開始または終了することにより、記録膜の劣化を軽減することができる。
(実施形態13)
次に、図20から図25を参照しながら、本発明の実施形態13を説明する。
本実施形態では、各サブブロックごとに局所的に位相情報を加えたサブブロックマーク238a、239aが設けられている。先の実施形態についても説明したように、サブブロックマーク238a、239aは、必ずしもサブブロックの開始位置を特定するだけのために用いられる必要はない。例えば、アドレス再生の信頼度を向上させるため、ブロック内のウォブルによって記録されているウォブル238b、239bに加え、ウォブル238b、239bと同一の情報をサブブロックマーク238a、239aに記録していてもよい。
本実施形態では、サブブロック221に形成されたサブブロックマーク238aは、位相非反転ウォブルから構成される形状を有している。この形状は、アドレス情報「1」に対応しており、同じサブブロック221に形成されているウォブル238bが表現する情報と同一である。一方、サブブロック222に形成されたサブブロックマーク239aは、位相反転ウォブルから構成される形状を有している。この形状は、アドレス情報「0」に対応しており、同じサブブロック222に形成されているウォブル239bが表現する情報と同一である。
これらのサブブロックマーク238a、239aの位相がPLLクロックに対して同相か逆相か、位相を検出することにより、補助的なアドレス情報を得ることができる。
サブブロックマーク238a、239aの位相は、例えば、図23に示すような構成を用い、ヘテロダイン検波方式によって検出することができる。
以下、図21から図25を参照しながら、位相検出方法を説明する。
まず、再生信号(例えば図19における差演算器372の出力)をSとすると、図23に示されるように、再生信号Sはバンドパスフィルタ501(BPF1)、バンドパスフィルタ511(BPF2)、および乗算器504に入力される。バンドパスフィルタ501は、再生信号Sからウォブル基本周波数を抽出し、PLL502に出力する。PLL502はキャリア信号(第1の同期信号)C1を生成し、乗算器504に出力する。
このキャリア信号C1と再生信号Sとを乗算器504を用いて乗算させれば、サブブロックマーク238a、239aに記録されている補助情報が”1”か”0”かに応じて、正または負側に変化する乗算信号を得ることができる。
図21は、サブブロックマーク238aの補助情報が”1”である場合を示し、図22は、サブブロックマーク239aの補助情報が”0”である場合を示している。図21および図22において、上記の乗算信号は、S×C1で示されている。
図24を参照して、乗算信号S×C1が生成される様子をより詳細に説明する。図24において、位相の反転した関係にある2種類の再生信号Sが図示されている。第1の再生信号Sは実線カーブで示され、これと位相が180°異なる第2の再生信号Sは破線カーブで示されている。
図24からわかるように、キャリア信号C1は、再生信号Sと同期し、かつ、周波数が再生信号Sの周波数と等しくなるように生成されている。キャリア信号C1は、電圧ゼロのレベル(0)と、ある正電圧を示すレベル(1)との間で遷移する波形を持っている。このため、実線カーブで示される第1の再生信号Sとキャリア信号C1との積S×C1は実線で示される波形を持ち、破線カーブで示される第2の再生信号Sとキャリア信号C1との積S×C1は、破線で示される波形を持つことになる。このため、再生信号の2種類の位相に応じて、乗算信号S×C1の極性が決まる。
この乗算信号(S×C1)を図23に示す積分器505で所定期間積分すれば、図21および図22に示すように、正側または負側へ蓄積されて積分信号(ACC)となる。所定期間とは、上記サブブロックマーク238aまたは239aが形成されている区間を読み出し光で走査する期間に相当する。この期間において、ゲート信号G1が生成され、積分器505の処理を有効にする。言い換えると、ゲート信号G1の立ち上がりから積分を開始し、ゲート信号G1の立ち下がりで終了させる。
ゲート信号G1の生成は、例えば、図16で示されるようなブロックマーク(ブロックマークの種類は任意である)を起点に、順次、ウォブルをカウントし、サブブロックマークを通過するであろうタイミングで上記ゲート信号G1を発生させるようにすればよい。
ウォブル238b、239bに記録された情報も、同様な方法を用いて検出することができる。今、バンドパスフィルタ511(BPF2)が、再生信号Sにおけるウォブル基本周波数の倍の周波数を中心とした帯域を通過させるフィルタであるとすると、これに鋸波状のウォブル238b、239bに対応する再生信号Sを通した場合、図21および図22に示すように、鋸波を構成する2倍高調波信号S2が抽出される。しかも、アドレス情報が”1”か”0”かに応じて、すなわち、ウォブルの変位が立ち上がり変位か立ち下がり変位かに応じて、2倍高調波S2の位相極性が反転して検出される。以下、図25を参照しながら、この点をより詳細に説明する。
ウォブル238b、239bの持つウォブルパターンは、フーリエ級数展開することにより、基本周期で振動する波形成分と、2倍以上の周期で振動する複数の波形成分との重ね合わせによって表現されることがわかる。ウォブル238b、239bのウォブルパターンを反映した波形を有する再生信号Sは、近似的に、図25に示す基本周波数を持つ基本波形と、基本波形の周波数の2倍の周波数を持つ2倍高調波S2との重ね合わせによって表現される。従って、再生信号Sから基本波形成分を取り除き、2倍高調波S2を抽出することができる。2倍高調波S2の波形には、図25に示すように、実線カーブと破線カーブの2種類があり得る。ウォブル238b、239bのウォブルパターンに応じて、実線カーブの波形か破線カーブの波形かが決定される。
図25に示す2種類の2倍高調波S2を識別するには、図24を参照しながら説明した方法が同様に適用され得る。すなわち、2倍高調波S2と同期し、2倍高調波S2の周波数と同一の周波数を持つキャリア信号(第2の同期信号)C2を生成し、2倍高調波S2に乗算する。こうして得た乗算信号S2×2Cを所定期間積分すれば、このサブブロックに割り当てられた情報(”1”か”0”)を検知できる。
具体的には、図23に示す乗算器512および積分器513を用いて、上記の乗算および積分を行うことにより、上記2倍高調波S2の同相逆相に応じて形成されたアドレス情報(”1”か”0”)のヘテロダイン検出が可能となる。ここでの所定期間とは、鋸波状ウォブル238bまたは239bを読み出し光で走査するタイミングで生成されるゲート信号G2が供給されている期間をいう。ゲート信号G2は、ゲート信号G1と同様な方法で生成することができる。
なお、PLL502の帰還側に1/2分周器503を設けておけば、分周器503の入力側から2倍周波数のキャリア信号C2を得ることができる。
図21および図22には、上記の方法で得られた補助情報に係る蓄積値ASと、当該ブロック内の鋸波状ウォブルによって記録されているアドレス情報検出信号に係る蓄積値AMとが示されている。加算器520で蓄積値ASを蓄積値AMに加えることにより、積分信号ACCのSNを改善することができ、その結果アドレス取得率を向上させることができる。
アドレス情報(”1”または”0”)は、図21および図22に示すタイミングパルスSHで積分信号ACCをサンプルホールドし、その値を基準値(GND)と比較することによって得られる。積分信号ACCのサンプルホールドは、図23に示すサンプルホールダ521によって行うことができ、基準値(GND)との比較は、図23に示す比較器522で行うことができる。
なお、積分器505、513は、ゲート信号G1、G2がHighとなる期間を除く適当なタイミングでリセットされ、ACCはゼロレベル(初期値)に復帰させられる。
本実施形態の説明において、バンドパスフィルタによって生じる群遅延や回路遅延といったタイミング誤差は一切無視しているが、実際の装置では、このようなタイミング誤差を考慮して設計の最適化が行われる。
本実施形態においては、アドレス情報に対応したウォブル形状が、立ち上がりまたは立ち下がりの傾斜が異なる鋸波状形状を有しているが、一般に周期構造を持つ波形の「形状の違い」は、その高調波成分の振幅あるいは位相の違いに起因する。したがって、ウォブルの「形状の違い」によって情報を記載するものであれば、上記の鋸波形状に限らず、本発明の効果を得ることができる。ただし、鋸波形状は、SNが比較的良い2次高調波の位相が顕著に変化する波形であるため、ウォブル形状としては、最も好ましい形状の一つと考えられる。
本実施形態では、積分器505、513でそれぞれ積分処理を行った後に、加算器520で加算するような構成を採用しているが、積分器は、もともと累積加算器であるため、加算器520の機能を積分器のいずれかに代用させてもよい。例えば、乗算器504、512をそれぞれ電流出力としておいて、1つのコンデンサにチャージするようにしておけば、積分器505、513および加算器520の構成を機能的に実現できることになる。
本実施形態では、アドレス情報を位相検出するにあたり、乗算器504、512を用いているが、位相情報を検出できるものであれば、乗算器以外の素子を用いてもよい。例えば、PLL回路などで使用され得るEXOR回路のような論理素子を用いてアドレス情報の位相検出を行ってもよい。