JP4053578B2 - 衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の乗員足元周辺に敷設される衝撃吸収性自動車用フロアスペーサに関する。更に詳しくは、床面の平坦性の確保、踏み込みへたりの低減及び車内外で発生する衝撃に対する乗員の保護を目的とした衝撃吸収性自動車用フロアスペーサに関する。
近年、自動車の居住性向上とプラットホームの共通化に対応できる部材として発泡ポリスチレン等の硬質発泡プラスチック製フロアスペーサが採用されるケースが増えている。これは、これらの硬質発泡プラスチックが、単位体積あたりの重量が非常に軽量であり、金型成形が可能で付形性に優れ、更には、単位体積あたりのコストが安価である等の特長をもつことによる。
一方、自動車内外で発生する衝撃に対する衝撃吸収材、例えば、ドア内部に配置されるエネルギ吸収材として、衝撃を受けて変形する歪み量が大きくなっても応力上昇が少ない特長を持つ発泡ウレタンが採用されている。また、自動車の衝突安全性の更なる向上を目的に、車体構造改善や、衝突時に乗員に負荷を与える部材へ衝撃吸収性能を付加することが求められている。
しかしながら、フロアスペーサに関しては、居住性と安全向上のための技術は完成されたものでなく、次のような課題が残っている。すなわち、発泡ポリスチレン成形品では、踏み抜き荷重に対するへたりが大きく、衝撃圧縮に対する応力上昇も大きい。また、発泡ウレタンでは、ウレタンが熱硬化性プラスチックであることからリサイクル出来ないことや、吸水率が高いことによる特性変化を生じるなどの課題がある。
本発明は、上記事情にかんがみなされたもので、より軽量な部材で、居住性と衝撃安全性を向上できるばかりでなく、リサイクルにも適した衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの提供を目的とする。
上記目的を達成するため本発明は、硬質発泡体からなり、自動車の床面に敷設されるフロアスペーサであって、このフロアスペーサは、平坦部とこの平坦部の前方にせり出した傾斜部を備え、かつ、前記自動車の室内側に肉厚部を形成し、前記床面側にハニカム構造又はスリット構造を形成し、前記ハニカム構造又はスリット構造のリブの形状を根元から先端に向かって先細りとなるように形成してある。
また、本発明は、前記ハニカム構造又はスリット構造の高さを前記フロアスペーサの肉厚の50%以上とすることが好ましい。また、本発明は、前記フロアスペーサの肉厚に対し、前記ハニカム及びスリットのリブの幅が20%以下であることが好ましい。
更に、本発明は、前記ハニカム構造又はスリット構造を形成した部分の前記床面との接触面積が10%以上60%以下とすることが好ましい。また、本発明は、前記硬質発泡体が、発泡性熱可塑性樹脂粒子を所定の密度に一次発泡した後、金型に充填してスチーム等の加熱によって成形し、密度を30kg/m3以上200kg/m3以下の発泡成形品とした構成とすることが好ましい。
本発明になる衝撃吸収性自動車用フロアスペーサは、より軽量な部材で、居住性と衝撃安全性を向上できるばかりでなく、リサイクルに適している。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの一実施形態を示す。この衝撃吸収性自動車用フロアスペーサは、フロアスペーサが自動車の床面に位置する平坦部1と、自動車の床面前方の傾斜床面に位置する傾斜部2を有しており、この傾斜部2は、平坦部1の前方斜め上方に傾斜した状態でせり出した構成としてある。
また、フロアスペーサの平坦部1と傾斜部2は、自動車の室内側に位置する側に肉厚部11と21をそれぞれ有し、自動車の床面と傾斜床面に対向する側にハニカム構造、スリット構造及び/又は突起構造からなる衝撃吸収部12,22をそれぞれ設けた構成としてある。
衝撃吸収部12,21におけるハニカム構造は図2に、スリット構造は図3に、突起構造は図4にそれぞれ示すようになっており、これらハニカム構造、スリット構造及び突起構造を単独又は組み合わせることによって機能を果たす。
平坦部1及び傾斜部2の肉厚に対するハニカム及びスリットのリブ又は突起の幅は20%以下が好ましい。衝撃が加わると、例えば、図5に示したように衝撃吸収部12,21は変形するがこのときハニカム、スリット又は突起の幅が20%以下であれば圧縮応力が低くなり、衝撃が加わった際に変形しやすく、十分な衝撃吸収性能を発揮できる。
また、本実施形態においては、フロアスペーサの平坦部1及び傾斜部2の肉厚に対する、室内側に位置する肉厚部11,21の肉厚が50%以下となるようにすることが好ましい。平坦部1及び傾斜部2に衝撃が加わった際、衝撃吸収部12,22が図5に示すように変形することで高い衝撃吸収性能を発揮することから、室内側に位置する肉厚部11,21の肉厚が50%以下であれば、変形する部位が厚く、衝撃吸収性能が高くなるからである。
平坦部1及び傾斜部2におけるハニカム及びスリットのリブ又は突起の形状をフロアスペーサの肉厚方向に対して、連続的又は段階的に変化させ、物理的に圧縮応力を変化させることでより高い衝撃吸収性能を発揮させる構成としてある。図5には、リブが根元から先端に向かって先細りとなる形状例を示してある。
本実施形態に使用される硬質発泡体は、硬質発泡プラスチック、例えば、リサイクルが可能な無架橋の熱可塑性樹脂とされ、発泡性樹脂粒子を所定の密度に一次発泡した後、金型に充填し、スチーム等の加熱により成形される発泡成形品が好ましい。このような硬質発泡プラスチックとしては、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡ポリオレフィン等があるが、経済性と優れた成形品物性から発泡ポリスチレン系プラスチックが好ましい。発泡ポリスチレン系プラスチックには、耐薬品性を向上させたスチレン/アクリロニトリル樹脂、耐熱性を向上させたスチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレン樹脂等の発泡体等がある。
図6の表は、硬質発泡プラスチックの一例であるスチレン/アクリロニトリル樹脂発泡体(日立化成工業(株)製 ハイビーズGR)の静的圧縮試験における圧縮応力と圧縮歪みとの関係を示す。この表から圧縮歪みが10%のとき、圧縮圧力が0.3MPa以上となる密度は33kg/m3以上であることが判る。
想定される耐圧荷重とフロアスペーサの構造によって、必要な強度と密度が異なるが、硬質発泡プラスチック素材ベースでの密度は、衝撃吸収性能と耐踏み込みへたり性の両立及び軽量性の観点から30kg/m3以上200kg/m3以下とすることが好ましい。
フロアスペーサの平坦部1及び傾斜部2における床面及び傾斜床面との接触面積は、必要とされる圧縮強度の値と硬質発泡プラスチックの密度が決まれば、図6に示すような硬質発泡プラスチックの圧縮応力と圧縮ひずみの関係を示す図より求めた圧縮応力の値から簡単な計算により決定できる。例えば、必要とされる10%圧縮強度が0.15MPaで硬質発泡プラスチックの密度を33kg/m3とする。この場合、密度33kg/m3における10%圧縮強度の値は、図6より0.30MPaであることから、求める接触面積は、0.15/0.30×100=50%となる。
本実施形態における衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの接触面積はこのように決定される。
実際に敷設した際の衝撃吸収部12,22の床面への接触面積は、衝撃吸収性能と軽量性を両立させるために、ハニカム構造、スリット構造及び/又は突起構造を形成されている部分において10%以上60%以下となるようにしてある。接触面積が10%未満では要求される硬質発泡プラスチックの密度が高く、衝撃吸収性能は満足できても軽量性を満足できなくなる可能性があり、また、60%を超えると軽量性は満足できるが圧縮強度が低く、所望の衝撃吸収性能が発揮されなくなる可能性がある。
ここで、硬質発泡プラスチックの密度は、フロアスペーサの平坦部1及び傾斜部2にかかる荷重を求め、これに耐え得る圧縮強度を示す密度を、例えば、図6に示すような圧縮応力と圧縮歪みの関係を示す図から求めることにより、容易に決定される。例えば、平坦部1及び傾斜部2に置かれる靴のかかと(面積5×3=15cm2)に、荷重30kgがかかった場合、フロアスペーサに必要な圧縮強度は、30/15=2kg/cm2≒0.2MPaとなる。
平坦部1及び傾斜部2の衝撃吸収部12,22はハニカム構造、スリット構造又は突起構造であることから、必要な圧縮強度は、床面及び傾斜床面に対する接触面積の比率で除したものとなる。例えば、接触面積が60%であり、荷重が前述のように0.2MPaである場合、平坦部1及び傾斜部2に必要な強度は、0.2MPa/0.6=0.33MPaとなる。
本実施形態の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサは、底部及び前部から加わる衝撃から乗員を守ることを目的とする場合、その外観は図1及び図7(a)に示したような形状となり、底部、前部及び側部から加わる衝撃から乗員を守ることを目的とする場合は、図7(b)に示したように、側面に発泡プラスチックがせり出した形状となる。衝撃吸収部におけるハニカム、スリット及び突起物の形状には特に制限はない。通常ハニカム構造は、正6角形の蜂の巣状を意味するが、本実施形態においては、nが3以上のn角形、円形又は楕円形でもよい。
本実施形態の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサは、硬質発泡プラスチック自体が有する緩衝性とハニカム等の構造による効果が相乗的に働き、高い衝撃吸収性能を発揮する。
以下に実施例を示し、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図8の表は、硬質発泡プラスチックからなりハニカム構造を有する実施例と、この実施例と同じ硬質発泡プラスチックからなりハニカム構造を有しない比較例との、それぞれの動的圧縮歪みと圧縮応力の関係を示す。比較例の場合、動的圧縮歪みの増加に伴い、圧縮応力も漸増して衝撃吸収性能が低下するのに対し、実施例の場合は、0.6MPaを示す歪み域が15%〜60%の間でほぼ一定であり、高い衝撃吸収性能を有し、乗員に対するダメージを軽減できることが判る。
(実施例の仕様)
図1に示す外観を有する衝撃吸収性自動車用フロアスペーサを、「日立化成工業(株)製 発泡性スチレン/アクリロニトリル樹脂、ハイビーズGR」を素材とした、密度67kg/m3の硬質発泡プラスチックで作製した。衝撃吸収部は図2に示すハニカム構造とした。平坦部及び傾斜部の肉厚50mm、肉厚部肉厚10mm、ハニカム高さ40mm、ハニカムのリブ幅5mmであり、敷設される床面積に対するハニカムのリブの接触面積は、36%である。すなわち、平坦部及び傾斜部の肉厚(50mm)に対する、ハニカムのリブの幅は10%、肉厚部の肉厚は20%、ハニカム構造による空隙率は51.2%である。
(実施例の特性)
実施例の効果を明確にするため、実施例と同一の発泡プラスチック及び同一の重量となる密度33kg/m3の自動車用フロアスペーサと、耐踏み込みへたり及び衝撃吸収性能を比較した。
(耐踏み込みへたり)
直径12mmのステンレス丸棒に30kgのおもりをかけて、10秒づつ10回圧縮したところ、実施例は、歪みが1%以下であったのに対し、比較例は8%沈んだ。その結果を図9に示した。
(衝撃吸収性能)
JIS−Z0235に準拠して、成形品に底面積が70cm2の4.5kgのおもりを、2.5mの高さから自由落下させて、そのときの衝撃値を測定したところ、実施例は、90Gであるのに対して、比較例は、180Gとなった。
本発明の実施形態にかかる衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの全体を示す図。 ハニカム構造の例を示す図。 スリット構造の例を示す図。 突起構造の例を示す図。 衝撃試験後におけるハニカム構造の変形例を示す図。 日立化成工業(株)製「ハイビーズGR」成形品の圧縮歪みと圧縮応力の関係を示す図。 (a)は底部及び前部からの衝撃に対して乗員保護を目的とした衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの例を示す図。(b)は床部、前部及び側部からの衝撃に対して乗員保護を目的とした衝撃吸収性自動車用フロアスペーサの例を示す図。 実施例と比較例の衝撃吸収特性測定結果を示す図。 実施例と比較例の踏み込みへたり性試験結果を示す図。
符号の説明
1 平坦部
2 傾斜部
11,21 肉厚部
21,22 衝撃吸収部
A 室内側
B 床面側

Claims (5)

  1. 硬質発泡体からなり、自動車の床面に敷設されるフロアスペーサであって、
    このフロアスペーサは、平坦部とこの平坦部の前方にせり出した傾斜部を備え、かつ、前記自動車の室内側に肉厚部を形成し、前記床面側にハニカム構造又はスリット構造を形成し、
    前記ハニカム構造又はスリット構造のリブの形状を根元から先端に向かって先細りとなるように形成させたこと
    を特徴とする衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ。
  2. 前記ハニカム構造又はスリット構造の高さを前記フロアスペーサの肉厚の50%以上としたことを特徴とする請求項1記載の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ。
  3. 前記フロアスペーサの肉厚に対し、前記ハニカム構造又はスリット構造のリブの幅が20%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ。
  4. 前記ハニカム構造又はスリット構造を形成した部分の前記床面との接触面積が10%以上60%以下であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ。
  5. 前記硬質発泡体が、発泡性熱可塑性樹脂粒子を所定の密度に一次発泡した後、金型に充填してスチーム等の加熱によって成形し、密度を30kg/m3以上200kg/m3 以下の発泡成形品としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衝撃吸収性自動車用フロアスペーサ。
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