JP4051966B2 - 水圧転写装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性多層フィルムを水槽内の水面に浮かべて流しつつ膨潤させ、テレビ受像機等の家庭用電気機器等の外装筐体にオーバーレイする水圧転写装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水溶性多層フィルムを水槽にはった水の水面に浮かべて膨潤させ、その水溶性多層フィルムに活性剤を塗布した後、被転写物の被転写面を水溶性多層フィルムに上方から押し付けることにより、水溶性多層フィルムを被転写物にオーバーレイする水圧転写装置は、一般に、水溶性多層フィルムを水面に浮かべた後、その水溶性多層フィルム上に活性剤を均一に塗布して反応性を高めることにより、水溶性多層フィルムはシート状から粒子状に変り、その粒子状になった水溶性多層フィルムが上方から押し付けられた被転写物の被転写面に被着するものであるが、全ての粒子が被転写物の被転写面に被着するものではなく、一部は残渣として水中に残るため、その水中の活性剤等の残渣を除く必要があり、水溶性多層フィルムを浮かべる水を流し、循環させることで、水の清浄化を図っている。しかし、その時、水槽内を流れる水流は水流に平行な側壁および底面等の抵抗を受けて、水流の側壁および底面に近い部分は中央部分より流れが悪くなり、水流が不均一な分布となり、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルムは一様に下流側に流れず、部分によって流れが異なるため、表面に皺が生じるという問題があった。
【0003】
その問題を解決する方法として、上記のように、水流が不均一な分布となる水流のみによって水溶性多層フィルムを移動させるのではなく、水槽の両側面に設置したチェーンコンベア間に棒材を橋渡しにして、その棒材に水溶性多層フィルムの前後を接触させ、その他の大部分を水流の表面に浮かべつつ、チェーンコンベアを水流方向に動作させ、棒材の動きの助けを得ることにより、水溶性多層フィルムの全面にわたって均一に水流に沿って移動させようとする方法と、水槽の両側面に設置したチェーンコンベアにチャック機構を設け、水溶性多層フィルムの左右をクランプし、その他の大部分を水流の表面に浮かべつつ、チェーンコンベアを水流方向に動作させ、チャック機構の動きの助けを得ることにより、水溶性多層フィルムの全面にわたって均一に水流に沿って移動させようとする方法とが考えられていた。
【0004】
しかしながら、上記の方法は棒材やチャック機構の助けを借りて水溶性多層フィルムを移動させる方法であるため、水溶性多層フィルムは棒材やチャック機構に固定されており、水溶性多層フィルムはその膨潤に伴う寸法拡大に対応できず、また、水流の表面の速度に変化が生じた場合、棒材やチャック機構の移動速度との間に差が生じることがあり、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルムに依然として皺や破れが発生するという問題が残るものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、家庭用電気機器等の外装筐体に水溶性多層フィルムをオーバーレイする水圧転写において、外装筐体の高品位な意匠外観を確保するためには、水溶性多層フィルムに描かれた模様を目的の位置にオーバーレイできることや、水溶性多層フィルムに皺や破れがないことが要求される。
【0006】
しかるに、前記のように、従来の水圧転写装置によると、水槽にはった水の表面に浮かべて流す水溶性多層フィルムに皺や破れが発生するという問題があり、水溶性多層フィルムをオーバーレイする外装筐体に高品位な意匠外観を確保することができないものであった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するもので、水溶性多層フィルムを水槽にはった水の表面に浮かべて流す場合、水溶性多層フィルムに皺や破れが発生しない水圧転写装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、水溶性多層フィルムを水面に浮かべて流しつつ膨潤させるフィルム膨潤領域とその下流側の領域であって水溶性多層フィルムを被転写物に転写させるフィルム転写領域とよりなる水槽と、前記水槽の両側壁に第1のベルトコンベア、前記水槽の底面に第2のベルトコンベアを設け、前記第1のベルトコンベアの表面は前記水槽の壁に沿って平行に位置し、前記第2のベルトコンベアの表面は前記水槽の底面に沿って平行に位置し、第1と第2のモータにより動作させることで水流と同速度で動く水圧転写装置であり、水溶性多層フィルムは何物にも固定せず水面に浮かべて下流方向に流すものであり、しかも、水溶性多層フィルムを浮かべた水流の表面の速度はフィルム膨潤領域やフィルム転写領域において一定に保持でき、水溶性多層フィルムに皺や破れが発生することがなくなるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、水溶性多層フィルムを水面に浮かべて流しつつ膨潤させるフィルム膨潤領域とその下流側の領域であって水溶性多層フィルムを被転写物に転写させるフィルム転写領域とよりなる水槽と、前記水槽の両側壁に第1のベルトコンベア、前記水槽の底面に第2のベルトコンベアを設け、前記第1のベルトコンベアの表面は前記水槽の壁に沿って平行に位置し、前記第2のベルトコンベアの表面は前記水槽の底面に沿って平行に位置し、第1と第2のモータにより動作させることで水流と同速度で動く水圧転写装置であり、水槽の水流に平行な側壁および底面に水流と同速度で動くベルトコンベアを設けることにより、水槽の水流の側壁および底面に近い部分と中央部分の水流が均一になるという作用を有する。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、フィルム膨潤領域の水深よりも深くしたフィルム転写領域の下流側に、フィルム膨潤領域の水槽の幅と深さを含む流入口と、内部を複数の部屋に仕切る仕切板と、前記各部屋に水槽の深さに応じて面積が異なる排水口とよりなる排水制御箱を設けた請求項1に記載の水圧転写装置であり、排水制御箱を設けることにより、水の位置エネルギーに応じて水流速度が変るために生じる排水速度の増加を打ち消し、排水制御箱の各部屋の排水量をほぼ一定とし、フィルム転写領域の下層に生じる複雑な水流の影響が水流の表面に現われないようにするという作用を有する。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における水圧転写装置の一部側断面図、図2は図1のA−A線における一部側断面図、図3は図1のB−B線における一部側断面図であり、1は長さ2000mmのフィルム膨潤領域2と長さ800mmの活性剤塗布とフィルム転写の領域3よりなる直方体の水槽、4は前記水槽1中に貯蔵された水の中において、フィルム膨潤領域2と活性剤塗布とフィルム転写の領域3の全領域にわたって水槽1の両側壁に沿って垂直に間隔1000mmでそれぞれ設けられ、水流の流れる方向に水流と同速度で移動するベルトコンベア、5は前記ベルトコンベア4を駆動するため、水槽1の両側壁に沿って間隔1000mmで垂直にそれぞれ設けられ、モータ6に取り付けられた垂直駆動軸、7は前記水槽1中に貯蔵された水の中において、フィルム膨潤領域2の水面から200mmの深さの位置に、水槽1の底面にある土台8に沿って水平に設けられ、水流の流れる方向に水流と同速度で移動するベルトコンベア、9は前記ベルトコンベア7を駆動するため、モータ10に取り付けられた垂直軸11と歯車機構で連結し、水平回転に変換された水平駆動軸、12は前記水槽1中に貯蔵された水の中において、前記ベルトコンベア4の位置に対応する水流の下流に、前記ベルトコンベア4の幅1000mm以上の幅1100mmと、水面から前記ベルトコンベア7の水深200mmの高さ200mmを有する流入口と、内部を4部屋13、14、15、16に等分割する水流に平行な3枚の仕切板17と、前記各部屋13、14、15、16内の下流側に設け、その水深が深くなるほど小さな面積の排水口18、19、20、21とを有する排水制御箱、22は水槽1の最下流の排水口23から最上流の給水口24へ循環ポンプ25を介して接続されたパイプ、26は水槽1の上流側のフィルム膨潤領域2から水面上に浮かべられ、水流に沿って下流側の活性剤塗布とフィルム転写の領域3に流される水溶性多層フィルムであり、水槽1内の水流は、水槽1の両側壁に水流の流れる方向に水流と同速度で移動するベルトコンベア4およびフィルム膨潤領域2の底面に水流と同速度で移動するベルトコンベア7により、水槽1の側壁および底面に近い部分の水流が側壁および底面から受ける抵抗が緩和され、水流の断面の全範囲にわたって均一な流れを得ることができ、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルム26は一様に下流側に流れることになり、表面に皺が生じるということがなくなる。
【0014】
なお、活性剤塗布とフィルム転写の領域3は、上流側のフィルム膨潤領域2にある土台8がなく、水深が深くなっていて、被転写物を水中に挿入して水溶性多層フィルム26を転写する場合、作業が容易にできるように、深くなっているが、上流側から水平に流れてきた水流は、水深が急に深くなっている活性剤塗布とフィルム転写の領域3で下方に流れ落ちることになり、そこに複雑な流れが発生し、その複雑な流れがその部分の水流の表面、従って、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルム26の流れに複雑な影響を与え、水溶性多層フィルム26の表面に皺が生じることになる。
【0015】
上記問題を解決するのが排水制御箱12であり、水面からの深さに応じて位置エネルギーが変るために生じる水流速度の変化を、ベルトコンベア4の位置に対応する水流の下流に設けた排水制御箱12の各部屋13、14、15、16の面積の異なる排水口18、19、20、21で各部屋13、14、15、16の排水量をほぼ一定とすることにより打ち消し、ベルトコンベア4の位置に対応する水流を全ての深さにおいて同量の滑らかな水流とし、その下層において発生している複雑な水流の影響が水流の表面にまで達しないようにして、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルム26を滑らかに下流側に流すようにしている。
【0016】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2における水圧転写装置の一部側断面図、図5は本発明の実施の形態2における水圧転写装置の上面図であり、実施の形態1の水圧転写装置と異なるところは、基本的には実施の形態1における水槽の両側壁に沿って設けたベルトコンベア4と、水流の下流に設けた排水制御箱12をなくして、水槽の水面から特定の深さのところに水平に設けられ、水流の流れる方向に水流と同速度で移動するベルトコンベアだけを設けた点である。
【0017】
すなわち、図4と図5において、27は長さ2000mmのフィルム膨潤領域28と長さ800mmの活性剤塗布とフィルム転写の領域29よりなる全長4000mm、幅1000mm、深さ90mmの直方体の水槽、30は前記水槽27中に貯蔵された水の中において、フィルム膨潤領域28に、水面から30mmの底面にある土台31に沿って水平に設けられ、水流の流れる方向に水流と同速度で移動する幅1000mmのベルトコンベア、32は前記ベルトコンベア30を駆動するため、モータ33に取り付けられた垂直軸34と歯車機構で連結し、水平回転に変換された水平駆動軸、35は水槽27の下流の壁36を乗り越えた水流を溜める水溜め37に設けられた排水口38から最上流の給水口39へ循環ポンプ40を介して接続されたパイプであり、循環ポンプ40により30リットル/分の水を循環させ、水槽27内の水流を1m/分で下流方向に流し、モータ33の回転数の調整によりベルトコンベア30を水流と同一速度の1m/分で下流方向に移動させる。
【0018】
上記のように、水流の流れる方向に水流と同速度で移動するベルトコンベア30をフィルム膨潤領域28の水面から30mmという浅い底面に水平に設けることにより、水流の表面に近い部分の水流を全ての深さにおいて滑らかな水流とし、その下層において複雑な水流が発生しても、その影響が水流の表面にまで達しないようにして、水流の表面に浮かべた水溶性多層フィルムを滑らかに下流側に流すようにしている。
【0019】
また、水流は全範囲で等速の1m/分で下流方向に移動し、かつ、水流の平均速度が1m/分という低い値に設定することにより、水流が水槽27の側壁から抵抗を受けにくくなり、結局、水槽27の両側壁および底面から水流が受ける抵抗の影響が打ち消され、ベルトコンベア30により1m/分で流れる底面の水流により水流表面の全範囲にわたり一定の流速の滑らかな水流を得ることができる。
【0020】
上記構成の水圧転写装置により、幅900mmの水溶性多層フィルムを水槽27のフィルム膨潤領域28に浮かべて流した結果、水溶性多層フィルムは1m/分の速度で水槽27の側壁に片寄ることなく流すことができた。
【0021】
一方、ベルトコンベア30をフィルム膨潤領域28の水面から50mm以上の深い底面に設けた場合は、水流表面の流れは水槽27の側壁から50mm以上中央寄りの範囲で流速の傾斜が見られた。
【0022】
また、ベルトコンベア30をフィルム膨潤領域28の水面から20mm以下の浅い底面に設けた場合は、水溶性多層フィルムの伸びが小さい状態であった。
【0023】
なお、ベルトコンベア30をフィルム膨潤領域28の範囲に設けた例で説明したが、活性剤塗布とフィルム転写の領域29を含む全範囲にわたって長いベルトコンベアを設ければ、全領域にわたって安定して水流表面の幅方向の速度差をなくすることができることは申すまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明の水圧転写装置によれば、水槽の両側壁および底面に水流と同速度で動くベルトコンベアを設けることにより、水槽の水流の両側壁および底面に近い部分と中央部分の水流が均一になることから、水溶性多層フィルムを水槽にはった水の表面に浮かべて流す場合、水流の表面の速度はフィルム膨潤領域やフィルム転写領域において一定に保持でき、水溶性多層フィルムに皺や破れが発生することがなくなるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における水圧転写装置の一部側断面図
【図2】図1のA−A線における一部側断面図
【図3】図1のB−B線における一部側断面図
【図4】本発明の実施の形態2における水圧転写装置の一部側断面図
【図5】本発明の実施の形態2における水圧転写装置の上面図
【符号の説明】
1,27 水槽
2,28 フィルム膨潤領域
3,29 活性剤塗布とフィルム転写の領域
4,7,30 ベルトコンベア
5 垂直駆動軸
6,10,33 モータ
8,31 土台
9,32 水平駆動軸
11,34 垂直軸
12 排水制御箱
13,14,15,16 部屋
17 仕切板
18,19,20,21,23,38 排水口
22,35 パイプ
24,39 給水口
25,40 循環ポンプ
26 水溶性多層フィルム
36 壁
37 水溜め

Claims (2)

  1. 水溶性多層フィルムを水面に浮かべて流しつつ膨潤させるフィルム膨潤領域とその下流側の領域であって水溶性多層フィルムを被転写物に転写させるフィルム転写領域とよりなる水槽と、
    前記水槽の両側壁に第1のベルトコンベア、前記水槽の底面に第2のベルトコンベアを設け、前記第1のベルトコンベアの表面は前記水槽の壁に沿って平行に位置し、前記第2のベルトコンベアの表面は前記水槽の底面に沿って平行に位置し、第1と第2のモータにより動作させることで水流と同速度で動く水圧転写装置。
  2. フィルム膨潤領域の水深よりも深くしたフィルム転写領域の下流側に、
    フィルム膨潤領域の水槽の幅と深さを含む流入口と、内部を複数の部屋に仕切る仕切板と、前記各部屋に水槽の深さに応じて面積が異なる排水口とよりなる排水制御箱を設けた請求項1に記載の水圧転写装置。
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