JP4043556B2 - 多金属を含む炭化水素転化触媒複合物及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒が特定濃度の3種又はそれ以上の金属の組み合わせによって特徴づけられる新規な2機能を有する触媒複合物、及び炭化水素転化法におけるその触媒の使用法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水素化−脱水素化機能とクラッキング機能の両方を持っている触媒は、広い範囲での炭化水素転化反応を促進するために、多くの用途、特に石油及び石油化学工業において広く用いられている。このクラッキング機能は、VIII族(IUPAC8−10)金属などの重金属成分の担体又はキャリアとして一般的に用いられているタイプの多孔性、吸着性、耐火性酸化物タイプの酸性活性物質に関係しており、主に水素化−脱水素化機能に関与している。結合形状又は元素形状において別の金属はクラッキング機能と水素化機能のいずれか1つ又は両方に影響を及ぼす場合がある。
【0003】
他の側面において、本発明は新規な触媒の使用から生ずる改良されたプロセスである。これらの2機能触媒は、水素付加、脱水素、水素化分解、異性化、脱硫化、環化、アルキル化、重合、クラッキング及び水素化異性化など、多様な炭化水素転化を促進するために用いられる。ひとつの特定の側面において、改良された改質プロセスはガソリン及び芳香族製品に対する感度を増大させるために本発明の触媒を用いる。
【0004】
触媒による改質には多数の競合的プロセス又は反応順序が関与している。これらはシクロヘキサンから芳香族への脱水素化、アルキルシクロペンタンから芳香族への脱水素異性化、非環式炭化水素から芳香族への脱水素環化、パラフィンからガソリンの範囲外の沸点を有する軽質物への水素化クラッキング、アルキルベンゼンの脱アルキル化及びパラフィンの異性化などがある。軽パラフィン・ガスを製造する水素化クラッキングなど、改質中に生ずるいくつかの反応は、ガソリンの沸点範囲の製造物の生成に有害な影響を与える。従って触媒の改質におけるプロセスの改善は、与えられたオクタン価でガソリン画分の高い収量をもたらすこれらの反応を促進する方向を目標としている。
【0005】
2機能性触媒は最初にその特定の機能を効率的に実行し、そしてそれらを一定の時間実行するという両方の目的のための性能を示すことが非常に重要である。特定の炭化水素反応環境で特定触媒が意図された機能をいかに良好に行なうかを測定するためにこの技術分野で用いられるパラメータは、活性、選択性、そして安定性である。改質環境においては、これらのパラメータが以下のように定義される:
【0006】
(1)活性とは、特定の苛酷なレベルで炭化水素反応物を製品に転化するその触媒の能力の尺度であり、その苛酷なレベルとは、温度、圧力、接触時間及び水素の分圧などの反応条件の組み合わせで表される。活性は、特定の過酷さレベルで与えられた原料から得られるペンタン及びより重い(“C5+”)製品のオクタン価で示されるか、あるいは逆に、与えられたオクタン価を達成するために要求される温度として示される。
【0007】
(2)選択性とは、特定の活性レベルでの任意の供給原料からの石油化学芳香族又はC5+ガソリン製品の収率を指している。
【0008】
(3)安定性とは、単位時間当りの活性又は選択性の変化率、あるいは処理される供給原料の変化率を指している。接触改質装置は通常は比較的一定した製品オクタン価をもたらすように運転されるから、活性安定性は、任意のC5+製品オクタン価を達成するための時間又は原料の単位当りの作動温度の変化率として測定され、温度の変化率が低い場合は活性安定性が優れていることを示している。選択性安定性は、時間又は原料の単位当りのC5+生成物の減少率又は芳香族炭化水素生成率として測定される。
【0009】
改質用触媒の性能を改善する作業プログラムは、ガソリン改質の必要性によって促進されており、更に、次いで車両からの有害な排出物を減少するための鉛アンチノック添加剤を除去する広範囲での必要性によって促進されている。接触改質などのようなガソリン高級化プロセスは、これらの変化を求める必要性を満たすために、高い効率性で、しかも非常に柔軟に運転されなければならない。触媒の選択性は、これらのニーズを満たすためにガソリン成分を調整しつつ、更に価値の低い製品をつくりだすというロスを回避するために、ますます重要になってきている。従ってこの領域に従事する者が直面する主要な問題は、触媒活性及び安定性を有効に維持しつつ、より選択性のある触媒を開発することである。
【0010】
この技術分野ではナフサ原料の接触改質のために多様な多金属触媒が教示されている。これらのほとんどは、白金族金属、レニュウム及びIVA族(IUPAC14)金属の選択を内容としている。
【0011】
US-A-3915845は、白金族金属に対し元素比で0.1〜1.25である白金族金属、IVA族金属、ハロゲン及びランタニドを含んでいる触媒による炭化水素の転化を開示している。好ましいランタニド類としては、ランタニウム、セリウム、及び特にネオジミウムなどがある。US-A-4039477は、耐火性金属酸化物、白金族金属、スズ、及びイットリウム、トリウム、ウラニウム、プラセオジウム、セリウム、ランタニウム、ネオジウム、サマリウム、ジスプロシウム、及びガドリニウムから選ばれる少なくとも1つの金属の炭化水素の接触水素化処理のための触媒を開示しており、白金に対する後者の金属を比較的に低比率にした場合に好ましい結果が観察されている。US-A-5254518は、VIII族の貴金属、IVB族の酸化物、及びアモルファス・シリカ−アルミナを含み、その上に希土類酸化物、好ましくはNdあるいはYが沈積された触媒を教示している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、炭化水素転化における選択性をより改善した新規な触媒を提供することである。それに付随して、本発明の目的は、ガソリン又は芳香族炭化水素の生成に関してより改善された選択性を有する改質プロセスを提供することである。
更に具体的には、本発明はハロゲン化アルミナ上に白金、スズ及びユーロピウムを含む触媒が、炭化水素改質反応においてクラッキングに対してより好ましい芳香族化比率を示すという発見に基づくものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の幅広い実施の形態は、耐火性無機酸化物、IVA族(IUPAC14)金属、白金族金属、及びランタニド系金属を含む触媒である。ランタニド金属の白金族金属に対する原子比率は少なくとも1.3であり、より好ましくは1.5若しくはそれ以上であり、最も好ましくは2〜5の範囲である。最も好ましい触媒はハロゲン、特に塩素を含んでいる。好ましい実施形態において、耐火性無機酸化物はアルミナであり、白金族金属は白金であり、そしてIVA族(IUPAC14)金属はスズであり、白金族金属は白金であり、及びランタニド系金属はユーロピウム及びイッテルビウムのうちの少なくとも1つから選択される。非常に好ましい触媒は、アルミナ担体上にスズ、白金及び基本的にはEuOの形態のユーロピウムを含んでいる。
【0014】
別の側面において、本発明は本触媒を用いる炭化水素原料の転化プロセスに関係している。好ましくは炭化水素の転化はガソリン及び/又は芳香族の収量を増大するために本発明の触媒を用いたナフサ原料の接触改質である。その転化はより好ましくは芳香族の収量を増大するための脱水素環化を含んでいる。最適には、そのナフサ原料は接触改質装置内でベンゼン、トルエン及びキシレンの1つ又はそれ以上をつくりだすC6〜C8の範囲の炭化水素を含む。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの幅広い実施の形態は耐火性無機酸化物担体、周期表のIVA族(IUPAC14)の少なくとも1つの金属[Cotton and Wilkinson,Advanced Inorganic Chemistry,John Wiley & Son(Fifth Edition,1988)参照]、白金族金属、及びランタニド系金属を含む触媒である。
【0016】
本発明において通常用いられる耐火性担体は、多孔性、吸着性、25〜500m2/gの表面積の大きな担体である。多孔性キャリア物質は、組成においても均一であり、炭化水素転化プロセスにおいて用いられる条件下で比較的耐火性がなければならない。『組成が均一』という用語は、担体が積層化されておらず、その組成に特有な種類の濃度勾配を有せず、組成において完全に均質であることを意味している。従って担体が2つ又はそれ以上の耐火性物質の混合物である場合、これらの物質の相対量は一定であり、担体全体にわたり均一である。以下のような2機能性炭化水素転化触媒において従来用いられているキャリア物質は、本発明の範囲内に含められることが意図されている。
【0017】
(1)アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、クロミア、酸化亜鉛、トリア、ボリア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、クロミア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニアなどの耐火性無機酸化物。
(2)セラミック、磁器、ボーキサイト
(3)シリカ又はシリカ・ゲル、シリコン・カーバイト、例えばアタプルガス(attapulgus)粘土、ケイ藻土、フィラー土、カオリン、又はケイ藻土など天然性あるいは合成された粘土及びシリケート(この場合、酸で処理されているかどうかは問題ではない)
【0018】
(4)水素の形式か、又は最も好ましい場合、陽イオン交換部位を占める1つ又はそれ以上のアルカリ金属を有する非酸性の形式のいずれかのX−ゼオライト、Y−ゼオライト、モルデナイト、β−ゼオライト、Ω−ゼオライト、又はL−ゼオライトなどの結晶性ゼオライト・アルミノシリケート
(5)アルミノホスフェート又はシリコ−アルミノ−ホスフェートなどの非ゼオライト分子ふるい;及び
(6)これらのグループのひとつ又は複数からのひとつ又は複数のものの組み合わせ。
【0019】
好ましくは、この耐火性担体は1つ又は複数の無機酸化物でできており、本発明での使用に好ましい耐火性酸化物はアルミナである。適切なアルミナ材はガンマ−、エータ−、及びテータ−アルミナとして知られている結晶性アルミナで、最良の結果をもたらすのはガンマ−、又はエータ−アルミナである。好ましい耐火性無機酸化物は0.3〜1.0g/ccの見かけかさ密度を有しており、さらに平均孔直径が20〜300オングストローム、孔体積が0.1〜1cc/g、そして表面積が100〜500m2/gの表面積特性を有している。
【0020】
アルミナが好ましい耐火性無機酸化物であることを考えれば、特に好ましいアルミナはUS-A-3852190及びUS-A-4012313で、US-A-2892858に述べられているようなチーグラー高級アルコール合成反応からの副産物として特徴づけられているものが知られている。説明を簡単にするために、こうしたアルミナを以下では『チーグラー・アルミナ』と呼ぶことにする。チーグラー・アルミナは現在、Vista Chemical社から“Catapal”という名称で、またCondea Chemie GmbHから“Pural”という商標で販売されている。この材料は高度に多孔性のシュードベーマイトで、高温で焼成すると、高度に多孔性のガンマ−アルミナをつくることが知られている。
【0021】
そのアルミナ・パウダーを球、棒、ピル、ペレット、タブレット、粒、押出し成型物などとして知られているいずれかの望ましい型あるいはタイプのキャリア材料に、触媒材料成型技術に従事しているものには良く知られている方法を用いて加工することができる。
【0022】
本触媒担体の好ましい形状は球である。アルミナ球は、この技術分野で教示されている技術のいずれか、そして好ましくアルミニウム金属を塩化水素酸と反応させてアルミナ・ヒドロゾルを形成するステップと、その結果できるヒドロゾルを適切なゲル化剤と結合させるステップと、そしてその結果できる混合物を昇温状態に維持されているオイル・バス内に浸すステップとで構成された公知の油滴法によって継続的に製造することができる。混合物の油滴はそれらが安定してヒドロゾル球を形成するまでオイル・バス内に保持される。これらの球をその後継続的にオイル・バスから取り出して、一般的にはオイル及びアンモニア溶液内での特定の熟成及び乾燥処理にかけてその物理的性状を更に改善する。その結果できる熟成ゲル化した粒子を洗浄して150〜205℃の範囲の比較的低い温度で乾燥し、450〜700℃の温度で1〜20時間焼成処理を施す。この処理はアルミナ・ヒドロゲルを対応する結晶性ガンマ−アルミナに転化させる。本明細書に引例として組み入れられているUS-A-2620314は更に詳細について述べている。
【0023】
キャリア材の別の形状は、好ましくはそのアルミナを水及び適切なHClなどのペレット化剤と押出し成型粘性物が形成されるまで混合することによってつくられる円筒型押出し成型物である。その粘性物を形成するのに加えられる水の量は、通常は、500℃の加熱減量(LOI)が45〜65重量%で十分であり、55重量%の値が望ましい。また、酸添加量は、通常、混合で用いられた場合の無揮発性アルミナ・パウダーを2〜7重量%とするのに十分であり、3〜4重量%の値が望ましい。その結果つくられる粘性物を適切なサイズの型を通じて押出し加工することによって押出し成型粒子をつくる。これらの粒子を260〜427℃の温度で0.1〜5時間乾燥して押出し成型物粒子をつくる。耐火性無機酸化物は基本的には見かけかさ密度が0.6〜1g/ccで表面積が150〜280m2/g(好ましくは孔体積が0.3〜0.8cc/gで185〜235m2/g)である純粋なチーグラー・アルミナで構成されていることが望ましい。
【0024】
IVA族(IUPAC14)金属成分は本発明による触媒の不可欠の成分である。IVA族(IUPAC14)金属のうちで、ゲルマニウム及びスズが好ましく、スズが特に好ましい。この成分は元素金属、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物などの化学的化合物、あるいは多孔性キャリア金属及び/又は触媒性複合物の他の成分との物理的あるいは化学的結合体として存在していてもよい。好ましくは、IVA族(IUPAC14)金属のかなりの部分は最終的な触媒では元素金属上に酸化状態で存在している。IVA族(IUPAC14)金属成分は最適には、元素ベースで計算して0.01〜5重量%の金属を含んだ最終触媒性複合物をもたらす量で用いられ、最良の結果は0.1〜2重量%金属のレベルで得られる。
【0025】
このIVA族(IUPAC14)金属成分は多孔性キャリア物質との共沈降、キャリア物質とのイオン交換、又は調製のいずれかの段階でのキャリア物質の含浸など、均一の分散状態を達成するのに適したいずれかの方法で触媒に組み入れられる。IVA族(IUPAC14)金属成分を触媒複合物に組み入れるためのひとつの方法はその金属を多孔性キャリア物質に含浸させて、分散させるための可溶性で分解可能なIVA族(IUPAC14)金属成分の化合物を利用することを前提としている。このIVA族(IUPAC14)金属成分は、他の成分がそのキャリア物質に加えられる前、同時、又は後のいずれの時点で含浸させることができる。従って、IVA族(IUPAC14)金属成分はキャリア物質を臭化第一スズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化第二スズ五水和物、又は酸化ゲルマニウム、ゲルマニウム・テトラエトキシド、四塩化ゲルマニウム、又は窒化鉛、塩化鉛、その他の同様の化合物など適切な金属塩又は可溶性化合物などと混ぜ合わせることによってそのキャリア物質に添加される。金属成分と少なくとも副次的な量の好ましいハロゲン化物の両方を単一のステップで簡単に取りこめるので、塩化第二鉄、四塩化ゲルマニウム、又は塩化鉛などのIVA族(IUPAC14)金属塩化化合物の利用が特に好ましい。上に述べたような特に好ましいアルミナ・コロイド化ステップ中に塩化水素と結合されると、本発明によるIVA族(IUPAC14)金属成分の均一な分散が得られる。別の実施の形態では、塩化トリメチルスズ及び二塩化ジメチルスズなどの有機性金属化合物が無機性酸化物結合材のコロイド化中に、そして最も好ましくは塩化水素あるいは硝酸を用いてのアルミナのコロイド化中に触媒に組み込まれる。
【0026】
上記触媒のもう1つの不可欠の成分は白金族成分である。この成分は白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、又はそれらの混合物などで構成されており、白金が最も好ましい。この白金族金属は最終的な触媒複合物内にその複合物の他の1つの、又は複数の成分との化学的結合物の状態で酸化物、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物などの化合物として存在していてよい。この成分のほとんどすべてが元素状態で存在しておりキャリア物質内に均一に分散している場合に最良の結果が得られる。この成分はその最終的な触媒複合物内に触媒としての効果を発揮するいかなる量で存在していてもよく、この白金族金属は元素ベースで換算して最終的な触媒複合物の0.01〜2重量%を構成する。その触媒が0.05〜1重量%の白金を含んでいる場合に優れた結果が得られる。
【0027】
この白金族金属は共沈降、イオン交換、あるいは含浸などいずれの適切な方法ででも多孔性キャリア物質に組み込まれてよい。その触媒を調製する好ましい方法はキャリア物質に比較的均一な状態で含浸させるために可溶性で、分解可能な白金族金属の化合物の利用を含んでいる。例えば、その成分を、後者を塩化白金又はクロロイリジック又はクロロパラジック酸の水溶液と混ぜ合わせることによって担体に加えてよい。
【0028】
白金族金属の他の水溶性化合物又は錯体を含浸溶液中に用いてもよく、それらにはアンモニウム・塩化白金酸塩、ブロモプラチニック酸、三塩化白金、四塩化白金水和物、白金・ジクロロカルボニル・ジクロライド、ジニトロジアミド白金、ナトリウム・テトラニトロプラチネート(II)、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、ジアミンパラジウム(II)水酸化物、テトラミンパラジウム(II)塩化物、エキサミンロジウム塩化物、ロジウム・カルボニルクロライド、ロジウム・トリクロライド水和物、硝酸ロジウム、ナトリウム・ヘキサクロロローデイト(III)、ナトリウム・ヘキサクロロローデイト(III)、イリジウム・トリブロマイド、イリジウム・ジクロライド、イリジウム・テトラクロライド、ナトリウム・ヘキサニトロイリデート(III)、カリウム又はナトリウム・クロロイリデート、カリウム・ロジウム・オキサレートなどが含まれる。
【0029】
白金族金属成分と少なくとも副次的な量の好ましいハロゲン化成分を単一のステップで容易に取り込めるので、塩化白金、クロロイリジック、又はクロロパラジック酸などの白金、イリジウム、ロジウム、又はパラジウム塩化化合物の利用が望ましい。塩化水素又はそれと同様の酸も、通常、ハロゲン成分の取り込みを更に促進すると同時に金属成分をキャリア物質全体に均一に分散させるために含浸溶液に加えられる。更に、一般的には貴重な白金族金属を洗い流してしまう危険性を少なくするので、焼成した後にキャリア物質に含浸させるのが望ましい。
【0030】
通常、白金族金属成分は触媒中に均一に分散される。白金族金属成分が均一に分散されているかどうかは、通常、走査透過電子顕微鏡(STEM)によって金属濃度を全体的な触媒金属含有率と比較することによって判定される。別の実施の形態で、1つ、又は複数の白金族金属成分が、本明細書に引例として組み込まれるUS-A-4677094に述べられているような表層成分として存在していてもよい。『表層』とは粒子の表面に隣接した触媒粒子のことで、表層金属の濃度は表面から触媒粒子の中心に進むにつれて小さくなる。
【0031】
ランタニド系金属は本発明による触媒のもうひとつの不可欠な成分である。ランタニド系金属にはランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イテルビウム、そしてルテチウムが含まれる。望ましい元素は安定した+2イオンを形成できるもの、つまり、Sm,Eu及びYbであり(CRC Handbook of Chemistry and Physics, 75版、1994−1995,CRC Press Inc.)、イッテルビウムとユーロピウムが好ましく、ユーロピウムが特に好ましい。ランタニド成分は通常は触媒複合物内に元素金属など触媒的に利用可能な形態、つまり、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、アルミネートなどの化合物、あるいはその触媒中の他のひとつ、又は複数の成分との科学的な結合形態で存在している。
【0032】
本発明の限定を意図する訳ではないが、ランタニド成分が、酸化物、酸ハロゲン化物、又はハロゲン化物やそれらの混合物など、そのランタニド構成部分のすべてが元素金属上で酸化状態であるような形状でその複合物内に存在している場合が最良の結果が得られると考えられており、本発明による触媒複合物の調製において用いられることが好ましい以下において述べるような酸化及び還元ステップはそうした目標を達成するために設計されたものである。特に好適な実施の形態において、調製ステップ及び条件はSmO,EuO、及び/又はYbOなど大部分で安定した+2イオンを形成する(つまり、そのランタニドの50%以上)好ましいランタニドの形をもたらすように選定される。最も好ましくは、80%以上がそのランタニドの元素ベース上に+2酸化物、例えば好ましいユーロピウムとしてはEuOなどの形態で存在している。その触媒の最終的な還元は現場で改質装置内で行われるのであるから、本発明による触媒はそうした酸化物部分を製造された状態、あるいは改質プロセスで使用される直前の状態のいずれか、あるいはその両方の状態で含んでいてもよい。
【0033】
ランタニド金属成分は触媒的に有効であればどのような量で触媒に組み込んでもよく、触媒内に元素ベースで0.05〜5重量%のランタニドが含まれている時に良好な結果がもたらされる。最良の結果は、通常、元素ベースで計算して、0.2〜2重量%のランタニドが含まれている場合に達成される。この触媒の白金族金属に対するランタニドの好ましい原子比率は少なくとも1.3:1であり、好ましくは1.5:1、そして好ましくは2:1から5:1の範囲である。
【0034】
ランタニド成分は触媒複合物内に、共沈降、共ゲル化、あるいは多孔性キャリア物質との共押出し成型、ゲル化されたキャリア物質とのイオン交換、あるいはそれが焼成、乾燥されるプロセスの前・後、あるいはそのプロセス中にその多孔性キャリア物質に含浸させるなどのいずれかの適切な公知の方法で組み込ませる。用いられる組み込み方法は本発明の基本的な特徴とはみなされないので、触媒複合物に金属成分を取り込むためのすべての従来の方法は本発明の範囲において利用可能である。用いられる方法がキャリア物質内にランタニド構成成分の比較的均一な分散をもたらすことが好ましいが、不均一なランタニドの分散をもたらす方法も本発明の範囲内にある。
【0035】
ランタニド成分を触媒性複合物に組み込むためのひとつの好ましい方法は、好ましいキャリア物質、アルミナの調製過程でランタニド成分を対応する含水酸化物又は酸ハロゲン化物の形態で共ゲル化又は共沈降させるステップを含んでいる。この方法は通常、三塩化ランタニド、酸化ランタニドなどの適切なゾル可溶性ないしゾル分散性ランタニド化合物をアルミナ・ヒドロゾルに加えて、その後、そのランタニド含有ヒドロゾルを適切なゲル化剤と結合させ、その結果できる混合物を、上に詳細に説明したようにオイル・バスなどに滴下するステップを含む。また別の方法として、ランタニド成分をゲル化剤に加えることもできる。その結果できるゲル化されたキャリア物質を乾燥、焼成した後、アルミナと酸化ランタニド又は酸ハロゲン化ランタニドのしっかりした結合体が得られる。
【0036】
ランタニド成分を触媒性複合物内に組み込むひとつの好ましい方法は、可溶性で分解性のあるランタニド化合物を溶液で用いて多成分キャリア物質に含浸させるステップを含んでいる。通常、この含浸ステップで用いられる溶剤は望ましいランタニド化合物を解かして、それがキャリア物質などに悪影響を及ぼさずにキャリア物質全体に均等に分散するまでそれを保持できることを前提に選ばれる。適切な溶剤としてはアルコール類、エーテル類、酸などであり、水性、及び酸性溶液が好ましい。したがって、ランタニド成分はそのキャリアを窒化物、塩化物、ふっ化物、有機アルキル、水酸化物、酸化物など、適切なランタニド塩、錯体、又は化合物と混ぜ合わせることによってキャリア物質に加えてもよい。含浸溶液内で用いるための適切な酸は、塩酸、硝酸などの無機酸、オキサリック酸、マロニック酸、クエン酸などの強酸性有機酸である。ランタニド成分は白金族金属成分の前、同時、あるいは後のいずれにキャリアに含浸させてもよい。
【0037】
キャリア内にランタニドを均一に分散させるのとは別に、表層ランタニド金属をいずれかの適切な方法で触媒粒子に組み込んで、金属含有率が粒子の表面から中心に向けて徐々に減少するようにしてもよい。好ましくは、金属は担体内にそのキャリアと接触すると分解して、その金属を粒子の表面、あるいはその近くで放出する化合物として含浸される。本発明を限定しないその他の手段には、そのキャリアと錯体を形成する、あるいはその粒子の内部に浸透する金属の化合物の使用が含まれる。その一例はカルボキシリック酸やアミノ基、チオール基、ホスホル基、あるいは酸化物担体と強く結合できる金属化合物などのぎざぎざ状のリガンドである。また、ランタニドをスプレイ含浸で触媒内に組み込んでもよい。
【0038】
最も好ましくは、触媒は単独又は組み合わせで触媒改良材として機能し、活性、選択性、あるいは安定性を改善するその他の成分やその混合物を含んでいる。知られている触媒改良材としては、レニウム、インジウム、コバルト、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、クロム、ビスマス、アンチモニー、亜鉛、カドミウム、及び銅などがある。触媒的に有効な量のこれらの成分をキャリア物質の調製中又はその後にそのキャリア物質に、あるいは他の成分の組み込み前・後、又はその最中に触媒性複合物に加えてもよい。
【0039】
脱水素化、脱水素環化、又は水素化反応などを含む本発明の炭化水素転化の実施形態において特に有益な触媒のオプション成分はアルカリ、又はアルカリ土類金属成分である。より正確には、このオプション成分はアルカリ金属−−セシウム、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、及びリチウム−−の化合物、あるいはアルカリ土類金属−−カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びマグネシウム−−の化合物で構成されるグループから選ばれる。一般的には、この成分が元素ベースで計算して、複合物の0.01〜5重量%を構成している場合に、これらの実施の形態で良好な結果が得られる。このオプションのアルカリ又はアルカリ土類成分は公知のいずれの方法で複合物に組み込んでもよいが、適切な水溶性、分解性化合物の水溶液による含浸が好ましい。
【0040】
前にも述べたように、この触媒の調製においては少なくともひとつの酸化ステップを用いることが必要である。この酸化ステップを行わせるために用いられる条件はその触媒性複合物内の金属性成分のほとんどすべてをその対応する酸化物形態に転化するように選ばれる。この酸化ステップは通常370〜600℃の温度範囲で行われる。通常空気を含む酸素雰囲気が用いられる。通常、酸化ステップは0.5〜10時間以上の期間で実行され、その正確な時間は金属成分のほとんどすべてをその対応する酸化物に転化するのに必要な時間である。この時間は、もちろん、用いられる酸化温度と用いられる雰囲気の酸素濃度によって変わる。
【0041】
酸化ステップに加えて、触媒の調製においてハロゲン調整ステップを加えてもよい。前にも述べたように、ハロゲン調整ステップは2機能にも役立つ。第一に、ハロゲン調整ステップはIVA族(IUPAC14)金属及びその他の金属成分の均一な分散に役立つ可能性がある。更に、ハロゲン調整ステップは望ましいレベルのハロゲンを最終的な触媒性複合物に組み込むのに役立つ。このハロゲン調整ステップは空気又は酸素雰囲気内でハロゲン又はハロゲン含有化合物を用いる。触媒複合物への組み込みのための好ましいハロゲンは塩素を含んでいるから、ハロゲン調整ステップ中に用いられる好ましいハロゲン又はハロゲン含有化合物は塩素、HCl、又はこれらの化合物の前駆体である。
【0042】
このハロゲン調整ステップの実行にあたっては、触媒性複合物が370〜600℃の温度範囲で空気あるいは酸素雰囲気中でハロゲン又はハロゲン含有化合物と接触させられる。更に、この調節に役立たせるために、この接触ステップ中に水を存在させるようにするのが望ましい。特に、触媒のハロゲン成分が塩素を含んでいる場合は、水:HClのモル比を5:1から100:1の範囲に設定するのが好ましい。ハロゲン化ステップの継続時間は通常0.5〜5時間、あるいは以上である。条件が似ているので、ハロゲン調整ステップは酸化ステップ中に行われてもよい。また、ハロゲン調整ステップは本発明による触媒を調製するために用いられる特定の方法の必要性に合わせて、酸化ステップの前、あるいは後に行われてもよい。用いられる具体的なハロゲン調整ステップには関係なく、最終触媒のハロゲン含有量はハロゲンが、元素ベースで、最終的な複合物の0.1〜10重量%を占めるようにするのに十分な量とすべきである。
【0043】
この触媒の調製においては、還元ステップを用いることも必要である。この還元ステップは白金族金属成分のほとんどすべてを対応する元素金属状態に還元し、そして、この成分を耐火性無機酸化物全体に比較的均一に、そして細かく分散させるように設計されている。この還元ステップは基本的には水を含まない環境で行われることが望ましい。好ましくは、還元性ガスは基本的には純粋で、乾燥した水素(つまり、20体積ppm以下の水)である。しかしながら、CO、窒素などの他の還元性ガスを用いてもよい。通常、還元性ガスは315〜650℃の還元温度、0.5〜10時間以上の時間を含む白金族金属成分のほとんどすべてを元素金属状態に還元するのに有効な条件の下で酸化触媒性複合物に接触させられる。還元ステップは触媒複合物を炭化水素転化ゾーンに負荷する前に行ってもよいし、現場で炭化水素転化プロセス・スタート−アップ手順の一部として実行してもよい。しかしながら、後者の手順が用いられた場合は、その炭化水素転化プラントを基本的に水のない状態にまで予め乾燥するように注意すると同時に、基本的に水のない水素含有還元ガスを用いる必要がある。
【0044】
オプションとして、触媒複合物を予めスルフィド化するステップに処してもよい。オプションとしての硫黄成分はいずれの公知の方法で触媒中に組み込んでもよい。
【0045】
本発明による触媒は炭化水素転化触媒としての特別の利用可能性を有している。転化されるべき炭化水素は40〜300℃の範囲の温度、大気圧〜200気圧(101.3kPa〜20.26mPa)の圧力、及び0.1〜100hr~1の液体時間当り空間速度を含む炭化水素転化条件で触媒と接触させられる。触媒は特にガソリン範囲の原料の接触改質のための特に適しており、また、脱水素環化、脂肪や芳香族のアイソマー化、脱水素化、ハイドロクラッキング、脱アルキル化、アルキル化、トランスアルキル化、オリゴマー化、そしてその他の炭化水素転化などのために用いることができる。
【0046】
好ましい接触改質の実施の形態は、炭化水素原料及び水素を多量に含んだガスを予め加熱して、通常2〜5のリアクターを連続的に含んでいる改質ゾーンに充填される。適切な加熱手段がそれぞれのリアクターにおける吸熱総量を補うためにリアクター間に設けられる。反応物は各リアクター内で昇流、降流、又は放射状フローのいずれで触媒と接触させてもよく、放射状フローが好ましい。触媒は固定床システム、又は好ましくは触媒再生が継続的に行われる流動床システムに入れられる。非活性化された触媒を再活性化させる別の方式もこの分野の当業者には知られており、触媒を再生するために装置全体の作動を停止する半再生オペレーション、個別のリアクターがシステムから分離され、他のリアクターが作動している間に再生、再活性化されるスイング・リアクター・オペレーションなどがある。流動床システムと組み合わされた好ましい連続触媒再生は、US-A-3647680,US-A-3652231,US-A-3692496及びUS-A-4832291に開示されており、これらはすべて本明細書に引例として組み合わされている。
【0047】
改質ゾーンからの流出液は、冷却手段を通じて通常0〜65℃の温度に維持されている分離ゾーンに送られ、そこで、水素を多量に含んでいるガスが一般的には『不安定化リフォーメート』と呼ばれる液体流から分離される。その結果生じる水素流は、適切な圧縮手段を通じて、改質ゾーンに戻すことができる。分離ゾーンからの液体相は通常は引き出され、ブタン濃度を調節するために分留システム内で処理され、それによってその処理を通じてつくられるリフォーメートの処理フロー全体を通じての揮発性を調節する。
【0048】
本発明の改質プロセスで用いられる操作条件には100kPa〜7MPa(abs)の範囲で指定される圧力が含まれている。低圧力、つまり350〜2500kPa(abs)の圧力で特に良好な結果が得られる。改質温度は315〜600℃の範囲であり、好ましくは425〜565℃の範囲である。改質技術に通じた当業者にはよく知られているように、この広い範囲で温度を最初に指定する場合、主に、充填原料及び触媒の特性を考えて、製品としてのリフォーメートの望ましいオクタン価を基準として行われる。通常、一定のオクタン価製品を提供するために、不可避的に起きる非活性化を補償するために作動中、温度が徐々に上げられる。改質ゾーンに入る炭化水素原料の1モル当り1〜20モルの水素をもたらすのに十分な量の水素が提供され、炭化水素原料1モル当り2〜10モルの水素が用いられる場合に良好な結果が得られる。同様に、改質時に用いられる液体時間当り空間速度(LHSV)は0.1〜10hr~1の範囲で選定され、1〜5hr~1の範囲の値が好ましい。
【0049】
この改質システムに充填される炭化水素原料は好ましくはガソリン範囲で沸騰するナフテン及びパラフィンで構成されるナフサ原料である。好ましい原料は主にナフテンとパラフィンで構成されるナフサであるが、多くの場合、芳香族も含まれている。好ましいタイプのものとしては、ストレイト−ラン・ガソリン、天然ガソリン、合成ガソリンなどである。別の実施の形態として、熱分解又は接触分解ガソリン、部分的に改質されたナフサ、あるいは脱水素化されたナフサを充填しても効果的である場合が多い。ストイレイト−ラン及びクラッキングされたガソリン範囲のナフサを混合したものも好適に使うことができる。ガソリン範囲のナフサ充填原料はASTM D−86初留点が40〜80℃の範囲、そして終点が160〜220℃の範囲のフル−ボイリング・ガソリン(full-boiling gasoline)であってもよく、あるいは、通常は一般的に重質ナフサと呼ばれる高沸点画分であるその特定の画分−−例えば100〜200℃の範囲で沸騰するナフサであってもよい。改質が一種類、又は複数の種類のベンゼン、トルエン、及びキシレンの生産のために行われるのであれば、沸騰範囲は主に、そして基本的には60〜150℃であってよい。いくつかの例では、抽出装置から回収された純粋な炭化水素あるいは炭化水素の混合物−−例えば、芳香物抽出あるいは直鎖パラフィン類からの、芳香族に転化されるべきラフィネートを充填しても好適である。
【0050】
基本的に水がない環境で本発明を用いるのが原則的には望ましい。改質ゾーンにおいてこうした条件を実現するために不可欠なのは、そのゾーンに負荷される原料及び水素ストリーム内に存在している水分のレベルの制御である。供給原料内の水分の重量で表した場合に、いずれかの供給源から転化ゾーンに入り込む水の総量が50ppm、好ましくは20ppm以下に抑えられた場合に最良の結果が得られる。通常、これは供給原料及び水素ストリーム内に存在する水分を注意深く制御することによって達成される。供給原料は、例えばナトリウムやカルシウム、結晶性アルミノシリケート、シリカ・ゲル、活性化アルミナ、分子ふるい、無水硫酸カルシウム、大表面積(high surface area)ナトリウム、及びその他の同様の吸着剤など水分に対する高い選択性を有する通常の固体吸着剤など、当業者に知られている乾燥手段によって乾燥させることができる。同様に、供給原料の水分含有率は分画カラムあるいは同様の装置で適切なストリッピング操作を行うことによって調整することができる。いくつかの例では、供給原料からほとんど完全に水分を除去するために吸着剤による乾燥と蒸留乾燥の組み合わせを用いることができる。好ましくは、供給原料はH2O当量で20ppm以下に相当するレベルにまで乾燥される。
【0051】
炭化水素転化ゾーンに入る水素ストリームの水分含有率を10〜20体積ppm以下の維持することが望ましい。水素ストリームの水分含有率がこの範囲以上である場合、上記の課題はその水素ストリームを従来の乾燥条件の箇所で述べたような乾燥剤に接触させることによって簡単に達成される。
【0052】
本発明は基本的には硫黄が存在しない環境で用いることが望ましい。改質反応ゾーンに充填されるナフサ原料を処理するためにはいずれの公知の手段を用いても構わない。例えば、その原料に吸着プロセス、触媒性プロセス、又はそれらの組み合わせを行っても構わない。吸着プロセスの場合、分子ふるい、大表面積シリカ−アルミナ、炭素分子ふるい、結晶性アルミノシリケート、活性炭素、ニッケルや銅などの物質を含む大表面積金属含有複合物などを用いることができる。これらの基本的にはすべての硫黄、窒素、及び水分発生汚染物質を除去すると同時に、そこに含まれている可能性のあるすべてのオレフィン類を飽和させるために水素化精製、水素化処理、水素化脱硫処理などの従来の触媒による前処理で処理しておくことが望ましい。触媒によるプロセスでは、周期表のVI−B族(6)、II−B族(12)、及びVIII族(IUPAC8−10)で構成されるグループから選択される金属を含有する耐火性無機酸化物担体を含む従来の硫黄還元触媒組成物を用いても構わない。
【0053】
本発明のひとつの実施の形態では接触脱水素環化条件の下でナフサ原料を転化するプロセスを含んでいる。特に、好ましいナフサ原料はC6〜C8非芳香族炭化水素を含んでいる。脱水素環化条件には100kPa〜4MPa(abs)の範囲の圧力が含まれ、好ましい圧力範囲は200kPa〜1.5MPaであり、更に350〜650℃の温度と、0.1〜10hr~1の範囲の液体時間空間速度が含まれている。好ましくは、水素は希釈剤として用いられる。水素が存在している場合は、それは原料炭化水素の1モル当り0.2〜10モルの範囲の量で循環される。
【0054】
別の脱水素化プロセスのナフサ原料は、脱水素化プロセスの目的がパラフィンを芳香族に転化することであるから、高い割合のパラフィン類を含んでいることが好ましい。C6〜C8芳香族の価値が高いので、ナフサ原料がC6〜C8パラフィン類で構成されていることが好ましい。しかしながら、こうした基準にも係らず、ナフサ原料がC6〜C8パラフィンの他にナフテン、芳香族、及びオレフィン類を含んでいてもよい。
【0055】
【実施例】
比較例1
本発明による触媒と比較する目的で、アルミナ上に白金及びスズを担持させた先行技術による球状触媒を従来技術で調製した。スズをアルミナ・ゾルに通常の技術で組み込み、そのスズ含有アルミナ・ゾルを油滴して1.6mmサイズの球をつくり、それらの球に10%LOIの乾燥度まで蒸気をかけ、650℃の温度で焼成した。次にこの球状担体にHCl内で塩化白金酸を含浸させ、最終触媒中のPtの含有率を0.38重量%とした。含浸された触媒を乾燥して空気中に2M HClで525℃の温度でオキシクロリネート化し、565℃で純粋な水素で還元した。
このものを触媒Xと名付けコントロールとした。その組成は重量%で以下の通りであった。
白 金 0.38
ス ズ 0.3
【0056】
比較例2
アルミナ上に白金、イッテルビウム及びスズを担持させた球状触媒を、本発明の特徴を実証するために調製した。スズをアルミナ・ゾルに通常の技術で組み込み、そのスズ含有アルミナ・ゾルを油滴して1.6mmサイズの球をつくり、それらの球に10%LOIの乾燥度まで蒸気をかけ、650℃の温度で焼成した。次に、この球状担体に3.5%の硝酸に硝酸イッテルビウムを含浸させ、1:1の溶液と担体との比率で最終触媒中の1.1%のYbをつくった。その結果できた複合物に(10%LOI)乾燥度まで蒸気をかけ、3%の蒸気で650℃の温度で焼成した。その結果できた焼成複合物にHCl内で塩化白金酸を含浸させ、最終触媒中のPtの含有率を0.38重量%とした。含浸された触媒を乾燥して空気中2M HClで525℃の温度でオキシクロリネート化し、565℃で純粋な水素で還元した。
【0057】
この最終的なYb−含有触媒を触媒Aとし、その組成は重量%でおおよそ以下の通りであった。
イッテルビウム 1.1
白 金 0.38
ス ズ 0.3
ランタン、サマリウム及びジスプロシウムを含む別の触媒を、イッテルビウム含有触媒の場合と同様の方法で調製した。最終触媒のランタニド含有率は以下の通りであり、各触媒が触媒Aとほぼ同様のスズ及び白金含有率を有していた。
触 媒 B 0.9重量%La
触 媒 C 1.0重量%Sm
触 媒 D 1.1重量%Dy
【0058】
比較例3
本発明と先行技術との触媒の改質プロセスにおける芳香族の選択性を比較するためにパイロット−プラント・テストが行われた。この試験は、3hr-1の液体時間当り空間速度、0.8MPa(abs)の圧力、及び水素/炭化水素のモル比を8として、触媒上でナフサを改質させることによって行われた。502℃、512℃、522℃、及び532℃の温度でのデータ・ポイントを得るために、温度を変えて一定の範囲の転化反応についての調査が行われた。比較試験に使われたナフサは、以下の特性を有するパラフィン系中間成分原油から誘導された水素処理された石油誘導ナフサであった。
比 重 0.737
蒸留、ASTM D−86、℃
初 留 点 87
10 % 97
50 % 116
90 % 140
終 点 159
重量% パラフィン 60
ナフテン 27
芳香族炭化水素 13
【0059】
この結果を触媒A,B,C,D及びXに関して、芳香族とC5+の収率の比較として図1に示した。芳香族の収率は(ベンゼン+トルエン+C8芳香族+C9+芳香族)の重量%収率として定義されている。高級芳香族の収量は通常触媒による改質の主要目的であるから、C5+の収量と比較しての高級芳香族の収量の比率が高いことは選択性の高さを示している。本発明の触媒A,B,C,及びDは、同じC5+の収量に対して、高い芳香族の収量が2〜3%程度高いことを示している。
【0060】
比較例4
ナフサ原料の改質に関して、触媒Cと触媒Xの選択性及び活性を比較するためにパイロット・プラント・テストが行われた。比較試験に用いられたナフサは比較例3で用いたものと同じであった。各試験は、3hr-1の液体時間当り空間速度、0.8MPa(abs)の圧力、及び水素/炭化水素のモル比8で構成される改質条件に基づいて行われた。いくつかのデータ・ポントを得るために、それぞれ502℃、512℃、522℃及び532℃で温度を変えて転化範囲についての調査を行った。各温度での(パラフィン+ナフテン)の転化は、触媒Xに関しては2〜4%高いが、C5+製品の収量としての選択性は触媒Cの方が転化範囲全体でより高かった。選択性と転化の関係を図2に示す。
【0061】
実施例1
本発明の特徴を確認するために、アルミナ上の白金、ユーロピウム及びスズを担持した球状触媒を調製した。比較例2で述べたように、先行技術による球状アルミナ担体にスズを組み込んだ。次いで球状担体を3.5%の硝酸内で硝酸ユーロピウムで含浸して、溶液:担体の比を1:1にして、最終触媒に3つの異なるレベルのEuを生成した。その結果できる複合物を(10%LOI)の乾燥度まで蒸気をかけ、3%の蒸気で650℃の温度で焼成した。その結果できる焼成された複合物にHCl内で塩化白金酸を含浸させ、最終触媒中のPtを0.38重量%とした。含浸された触媒を乾燥して、空気中2M HClで525℃の温度でオキシクロリネート化し、565℃で純粋な水素を用いて還元した。この最終的なEu含有触媒を触媒E,F及びGとし、重量%で以下の組成を有していた。
触 媒 E F G
ユーロピウム 0.30 0.51 1.1
白 金 0.37 0.37 0.38
ス ズ 0.3 0.3 0.3
【0062】
実施例2
還元に従うEuOの存在を判定するために、触媒Gを従来の触媒Xとの比較でテストをした。空気中で5モル%のH2を用いて、室温から600℃の範囲で1分当り10℃の速度で徐々に増大させながら、温度をプログラムした還元手順を行った。触媒Gの場合の水素の消費量は触媒Xの場合を33μモル/グラムだけ上回り、Eu+3からEu+2の場合90%以上還元できることが示された。
【0063】
実施例3
ナフサ原料の改質に関して、触媒Xと触媒E,F及びGの選択性及び活性を比較するためにパイロット−プラント・テストが行われた。比較試験に用いられたナフサは、比較例3で用いたものと同じであった。それぞれの試験は、3hr-1の液体時間当り空間速度、0.8MPa(abs)の圧力、及び水素/炭化水素のモル比8で構成される改質条件に基づいて行われた。いくつかのデータ・ポンントを得るために、502℃、512℃、522℃、及び532℃で温度を変えて転化が行われた。(パラフィン+ナフテン)の転化、C5+製品の収量、芳香族の収量との比較を重量%で以下に示す。
【0064】
【0065】
図3は上記の値から導かれた芳香族の収量とC5+の収量の関係を示しており、本発明の触媒の場合に同じC5+の収量に対して芳香族の収量が高いことが示された。
活性と選択性との関係が上記の値から導き出され、図4に示されている。活性は各温度での基準触媒Xからの転化の減少率(%)として計算され、各触媒の場合のEu/Ptの原子比として示した。選択性は、通常の範囲のC5+の収量での触媒による芳香族の収量の範囲を測定して、C5+収量で割ることによって、つまり、C5+収量の%として示される芳香族炭化水素収量の平均的増加率として、図3から導かれた。図4で後者を図示する際、図3の別の触媒と触媒Gとの重複部分が少しだけなので、触媒Gの場合の高いEu/Pt比率への線の延長部分は細い線で示してある。
【0066】
図4は、Eu/Ptの比が1と2の間の範囲で増大する場合、触媒のユーロピウム含有が増えるにつれて転化が急激に低下することを示しており、その勾配は比が2以上の場合更に高くなっている。一方、Eu/Ptの比に対する選択性の関係はより直線的である。Eu/Ptの比の選択は選択性と活性の相対的重要度に依存しているが、その比率が非常に高くなると、選択性に関しては利点があるものの、活性度に関しては著しい不利がある。
【0067】
【発明の効果】
本発明の触媒複合物は、従来の触媒に比較して、炭化水素改質プロセスにおいて、好ましいガソリン又は芳香族炭化水素を著しく高い選択性で改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及び先行技術の触媒を使用してナフサ原料を処理する場合のクラッキングと芳香族収量の比較を示している。
【図2】ナフサ原料を処理する場合の先行技術と本発明の触媒の改質選択性の比較を示している。
【図3】Euを含んでいない基準触媒との比較で、3種類のEuを含有する触媒の場合の、C5+及び芳香族収量の比較を示している。
【図4】Eu含有量の関数としてのEu含有触媒の相対活性及び選択性を示している。
Claims (8)
- IVA族(IUPA14)金属成分を元素ベースで0.01〜5重量%、白金族金属成分を元素ベースで0.01〜2重量%及びユーロピウムの50%以上がEuOとして存在するユーロピウム金属成分を元素ベースで0.05〜5重量%を含む耐火性無機酸化物担体の組み合わせで構成される炭化水素転化のための触媒複合物。
- 耐火性無機酸化物がアルミナを含む請求項1の炭化水素転化のための触媒複合物。
- 白金族金属成分が白金成分を含む請求項1又は2の炭化水素転化のための触媒複合物。
- IVA族(IUPAC14)金属成分がスズ成分を含む請求項1〜3のいずれか1項の炭化水素転化のための触媒複合物。
- 白金族金属に対するユーロピウムの元素比率が少なくとも1.3である請求項1〜4のいずれか1項の炭化水素転化のための触媒複合物。
- 更にハロゲン成分を含む請求項1〜5のいずれか1項の炭化水素転化のための触媒複合物。
- ハロゲン成分が塩素成分である請求項6の炭化水素転化のための触媒複合物。
- 原料を425〜565℃の温度、350〜2500kPa(ga)の圧力、1〜5hr-1の液体時間当り空間速度、及び炭化水素原料に対して2〜10のモル比の水素を含む改質条件下で原料を請求項1〜7のいずれかで定義される炭化水素転化のための触媒複合物と接触させるナフサ原料を接触改質するためのプロセス。
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