JP4027289B2 - 含浸剤の性能管理システム - Google Patents
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Description
この含浸処理を、以下に簡単に説明する。この処理には、硬化性のモノマーを主成分とする含浸剤が用いられる。この含浸剤中に、上記巣穴や細孔を持った含浸対象物を浸し、その巣穴や細孔内に含浸剤を充填する。そして、含浸対象物の表面を洗浄して、表面に付着した余分な含浸剤を除いてから、巣穴や細孔中の含浸剤を硬化させて含浸処理を終了する。
このように、一度使用した含浸剤を再利用するシステムを図10に示す。
まず、図10の含浸タンク1に含浸剤を満たし、その中に巣穴や細孔を有する含浸対象物を投入する。この工程では、巣穴や細孔に含浸剤が入り込みやすいように、減圧したり加圧したりすることがある。
一方、上記洗浄タンク2の洗浄液には、含浸対象物から洗い落とされた余分な含浸剤が混ざっている。そこで、上記洗浄液を分離タンク3に移して、含浸剤と洗浄水とに分離する。このシステムで使用する含浸剤を、洗浄水と異なる密度のものにして、両者の密度差によって洗浄液から含浸剤を分離するようにする。例えば洗浄水より密度の低いモノマーを使用した場合、洗浄水と分離した分離タンク3の上澄み層を回収タンク4に回収する。この回収タンク4に回収された含浸剤が、回収含浸剤となる。
そして、真空処理を行った後、含浸対象物が浸かるだけの含浸剤を貯蔵タンク5から供給し、次の真空処理の際には、含浸タンク1から上記貯蔵タンク5へ含浸剤を戻すようにする。
なお、図10において、細線の矢印は、含浸対象物の移動を示し、太線の矢印は液体の移動を示している。
これに対して、水への溶解度が低いモノマーは、金属に対する密着性、硬化後の硬化物の耐久性が、水への溶解度が高いモノマーよりも劣るが、洗浄水に溶解しないため、洗浄水との分離が容易であるという特長を備えている。
また、水への溶解度が高いモノマーの含有率が、予想以上に低下した場合には、性能が低下した含浸剤を使ってしまう危険性もあった。
なお、上記含浸剤の性能とは、巣穴や細孔を封孔する能力、つまり封孔性と、封孔後に要求される環境下での封孔持続性、つまり耐久性のことである。
なお、上記コンピュータシステムが、測定装置から入力された密度と、水分量とに基づいて含浸剤の密度を特定する方法としては、予め、記憶させておいた演算式によって演算する方法や、テーブルを記憶させておいて、そのテーブル値を用いる方法が含まれる。
従来は、水への溶解度の高いモノマーの減少によって、含浸剤の性能が低下したことを確実に、その場で、検出することが難しかったために、水への溶解度の高いモノマーの減少により、どれだけ性能が低下しているのか分からなかった。しかし、この発明によれば、密度や、水への溶解度が高いモノマーの減少量から、含浸剤の性能変化を検出することができ、しかも、減少したモノマーを補充することによって、含浸剤の性能を長期にわたって保つことができるようになる。
また、第3の発明によれば、含浸剤中のモノマー密度を、より正確に特定することができるようになる。密度を正確に特定できれば、モノマー比率も正確に特定でき、水への溶解度が高いモノマーを補充すべきかどうかの判断も正確にできるとともに、補充モノマー量も正確に特定することができる。
図1は、この発明の含浸剤の性能管理システムを備えた含浸処理工程を示した図である。このシステムは、図10に表した従来の含浸処理システムと同様に、鋳物などの含浸対象物を投入して含浸剤を含浸させる含浸タンク1と、含浸対象物表面の余分な含浸剤を洗浄する洗浄タンク2と、洗浄液から含浸剤を分離するための分離タンク3と、回収含浸剤を貯蔵する回収タンク4と、含浸対象物を含浸させる含浸タンク1と、この含浸タンク1との間で含浸剤が行き来する貯蔵タンク5と、新品の含浸剤を貯蔵した新品含浸剤タンク6とを備えている。
なお、図中、太線の矢印は、液体流路と液体の流れの方向を示し、細線は含浸対象物の流れ、点線の矢印は、信号配線と信号の流れを示している。
そして、この密度計S1が、設定時間毎に含浸剤を供給するポンプP1とともに、この発明の測定装置を構成し、自動的に密度を測定するようにしている。
そして、供給された含浸剤の密度および水分量を測定した測定装置7は、それぞれの測定結果をコンピュータCへ出力し、コンピュータCでは、上記測定装置7から入力された密度と、水分量とに基づいて、上記ポンプP2や警報機9へ制御信号を出力する。
この実施例のシステムは、含浸剤を入れた含浸タンク1内に、鋳物などの含浸対象物を投入して、含浸処理を行う。一方、洗浄液から回収した含浸剤を、回収タンク4を介して、貯蔵タンク5へ戻して含浸タンク1で再使用するものである。そして、含浸タンク1には、次々と新しい含浸対象物が投入され、連続的に処理を行う。
含浸剤として使用可能なモノマーの種類は上記のものに限らず、例えば、図2の表に示すように、密度や水への溶解度が様々なモノマーがある。つまり、これらのモノマーの中から、水への溶解度が異なるモノマーを選択して、それらを混合して用いることができる。もちろん、図2以外のモノマーを使用することもできる。
そして、上記コンピュータCは、図4に示すようなモノマー比率と密度との対応テーブルを記憶している。
そして、コンピュータCには、上記二種のモノマーを混合した含浸剤の密度と、上記対応テーブルあるいは相関式とに基づいて、含浸剤中のモノマーの比率を特定する機能を設定しておく。
例えば、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートモノマーとステアリルメタクリレートモノマーを主成分とするこの実施例の含浸剤の場合には、上記使用可能基準値ρ1=0.937(g/cm3)、補充基準値ρ2=0.940(g/cm3)、限界水分量W1=5.0(重量%)とする。
なお、以下の説明でのリサイクル稼動時間とは、上記回収タンク4に貯蔵した回収含浸剤を含浸タンク1へ戻して再使用しながらの含浸処理を行った稼動時間のことである。また、稼動3ヶ月とか6ヶ月というのは、1日あたりの稼動時間を16時間として換算したものである。
含浸処理手順は、従来例と同じなのでその説明は省略する。
含浸処理が連続的に行われている状態において、上記ポンプP1が30分間隔で、貯蔵タンク5の含浸剤を測定装置7へ供給する。測定装置7は、測定結果をコンピュータCへ出力する。コンピュータCは、入力された測定水分量の値を、予め記憶している限界水分量W1と対比する。そして、コンピュータCは、測定水分量が上記水分量W1を超えていると判断した場合には、警報器8へ、警報を発生させるための制御信号を出力する。
上記限界水分量W1が、この発明の水分量における予め設定した設定値である。
また、コンピュータCが、上記警報機9へ対して出力する制御信号が、この発明の警告信号に当たる。
すなわち、水分は硬化しないため、水分を含んだ含浸剤を加熱して硬化させる際に、水分が蒸発してしまって、硬化した硬化物中に亀裂などが発生してしまうことがある。
また、含浸剤に含まれる水分を封じ込めたまま硬化させてしまった場合、その含浸処理した製品が使用中に加熱されると、硬化物中の水分が蒸発して封孔部分の再漏れが発生してしまうことがある。
このようなことが起これば、含浸処理した製品に欠陥が発生したことになる。
しかし、この実施例では、上記のような欠陥が発生し始める限界水分量W1を設定して、限界水分量W1を超えた場合には、警報を発するようにしている。そのため、水分量が多いことにより欠陥を発生させる危険性が高い含浸剤を、知らずに使ってしまうことを防止できる。
このとき、モノマータンク8から貯蔵タンク5へ補充されるモノマー量は、コンピュータCが、入力された測定密度値に応じて決定する。コンピュータCは、測定密度値を、新品含浸剤の密度0.943(g/cm3)に戻すための必要量を、密度とモノマー比の対応テーブルや、予め記憶している演算式によって算出するようにする。
これに対し、水への溶解度が高いモノマーの補充を行わないでリサイクル稼動を行った(従来技術)結果は、図5のグラフBに示すように、含浸剤の密度が減少し続けた。
(含浸封孔性試験)
アルミニウム合金製の、円盤状のテストピース60個ずつに対して、新品含浸剤、本発明の技術を採用したリサイクル稼動6ヶ月後の含浸剤「リサイクル品R1」、従来技術のリサイクル稼動3ヶ月後の含浸剤「リサイクル品R2」、従来技術のリサイクル稼動6ヶ月後の含浸剤「リサイクル品R3」、これら4種類の含浸剤を用いて含浸処理を行った。含浸処理後のテストピースを空気圧0.5(MPa)で水没させ、漏れが発生するかどうかを検査した。その試験結果を図6に示す。
なお、上記テストピースは、含浸処理前の初期洩れ量は1〜60(ml/min)のものを使用した。
また、含浸剤の密度は、リサイクル品R1は新品含浸剤と同じであるが、リサイクル品R2は0.925、R3は0.915と、密度が低くなり、密度が低くなるに従って、不良率も高くなっていることが分かる。
耐久性試験Iとして、熱耐久性試験1、冷熱耐久性試験、モーターオイル耐久性試験1の3種の耐久性試験を行った。
これらの試験では、上記含浸封孔性試験に用いたのと同様の4種の含浸剤を用いて、上記含浸封孔性試験で用いたのと同様のテストピースに含浸処理を行い、その中から封孔性試験に合格したテストピースを、各耐久性試験用に選択した。そして、これらのテストピースに対して、各耐久性試験を行った。
熱耐久性試験1は、上記テストピースを、140℃のオーブン中に約400時間密閉放置し、放置後の気密性試験を行った。
冷熱耐久性試験では、−30℃に保った恒温槽と、150℃に保った恒温槽に交互に60分間ずつ放置することを250回繰り返した後に、気密性試験を行った。
これらの耐久性試験結果を、図7に示す。
図7に示すように、上記耐久性試験においても、本発明によるリサイクル品R1で含浸処理を行ったテストピースは全て合格した。これに対して、従来技術のリサイクル品R2,R3では、不合格品が発生した。
また、熱耐久性試験2として、上記4種の含浸剤で硬化物試料を作製し、その試料の耐久性試験を行った。
上記硬化物試料とは、上記各含浸剤を硬化させて作製した試料である。そして、この試験結果を示した図8において、硬化物1は新品含浸剤の硬化物試料であり、硬化物2、3、4は、それぞれリサイクル品R1、R2,R3の硬化物試料のことである。
図8に示すように、本発明のシステムで管理したリサイクル品R1の硬化物2の重量は、5(%)程度減少しているが、その変化量は、新品含浸剤の硬化物1とほとんど差がなかった。これに対して、従来技術のリサイクル品R2の硬化物3は、上記硬化物1に比べて重量の減少が大きいことが分かった。硬化物の重量が減少するということは、その含浸剤で含浸処理した場合、封孔している樹脂の重量が減少するということであって、製品の耐久性が低下する危険性があるということである。
以上のように、従来技術のリサイクル品において、その硬化物の重量が減少するという熱耐久性試験2の結果は、従来技術のリサイクル品によって不合格品が発生した上記耐久性試験Iの結果(図7参照)を裏付けるものとなった。
また、各含浸剤を用いた硬化物試料を作製して、そのモーターオイル耐久性試験2を行った。
この試験でも、硬化物試料を上記熱耐久性試験2と同様に作製し、この硬化物試料を大気圧下、140℃のモーターオイル中に約400時間浸漬放置し、その重量変化を測定した。各硬化物試料の初期重量を100として、その経時変化を図9に示している。
このモーターオイル耐久性試験2の結果も、上記耐久性試験Iのモーターオイル耐久性試験1の結果(図7参照)を裏付けるものとなった。
また、リサイクル稼動中に、含浸剤中の水への溶解度が高いモノマーの比率が大きく低下した場合や、水分量が大きくなった場合には、コンピュータCがすぐにそれを検出して、警報機9によって知らせることができるので、性能が低下した含浸剤を間違って使ってしまうこともない。
さらに、含浸処理工程を停止する信号を出力するようにしてもよい。例えば、含浸タンク1へ含浸対象物を投入するための搬送ラインを停止させる信号を出力して、性能が低下した含浸剤を使用しないようにすることもできる。
また、回収タンク4に測定装置7を接続して、回収タンク4内の回収含浸剤の密度や水分量を測定するようにしてもよい。その場合には、上記回収タンク4が、この発明の含浸剤タンクに相当する。
2 洗浄タンク
4 回収タンク
5 貯蔵タンク
7 測定装置
8 (水への溶解度が高いモノマーの)モノマータンク
9 警報機
S1 密度計
S2 水分計
P2 ポンプ
C コンピュータ
Claims (4)
- 水への溶解度が異なる2種以上のモノマーを含む回収含浸剤、または上記含浸剤による含浸対象物の洗浄液から回収した回収含浸剤を含んだ含浸剤を貯蔵した含浸剤タンクと、この含浸剤タンク内の含浸剤の密度を測定し、測定結果を出力する測定装置と、この測定装置の出力結果が入力され、かつ、その密度が、予め設定した基準を満たしているかどうかを判定する機能を備えたコンピュータシステムと、含浸剤に含まれる水への溶解度が高いモノマーを上記含浸剤タンクに補充する補充装置とを備え、上記コンピュータシステムは、上記測定装置で測定した含浸剤の密度が予め設定した補充基準を満たしているか否かを判定する機能と、上記含浸剤の密度が上記補充基準を満たしていないと判定したときに、上記含浸剤の密度が上記補充基準を満たすために必要な水への溶解度が高いモノマーの量を特定する機能と、この特定結果に基づいて上記補充装置を動作させ、水への溶解度が高いモノマーの補充量を制御する機能とを備えた含浸剤の性能管理システム。
- 上記コンピュータシステムは、測定装置から入力された密度が、予め設定した使用可能範囲からはずれたときに、警告信号を出力する機能を備えた請求項1に記載の含浸剤の性能管理システム。
- 上記含浸剤タンクの含浸剤の水分量を測定し、測定結果をコンピュータシステムへ出力する水分計を備え、コンピュータシステムは、測定装置から入力された密度と、上記水分計から入力された水分量とに基づいて、水分を除いた含浸剤の密度を特定する機能と、この特定結果を判定する機能とを備えた請求項1または2に記載の含浸剤の性能管理システム。
- 上記含浸剤タンクの含浸剤の水分量を検出して、測定結果をコンピュータシステムへ出力する水分計を備え、コンピュータシステムは、この水分計が検出した水分量が、予め設定した設定値に達したかどうかを判断する機能と、水分量が上記設定値に達したときに警告信号を発する機能とを備えた請求項1〜3のいずれか1に記載の含浸剤の性能管理システム。
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