JP4007553B2 - 鋳造成形品の成形不良孔検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳造成形品に形成される流路が詰まったり狭窄されていないかを検査する鋳造成形品の成形不良孔検査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のシリンダブロックやシリンダヘッド等の鋳造成形品内部には冷却水を通す流路(ウオータージャケット)が複雑に張り巡らされている。この流路は鋳型内に中子を配置させることにより得られるが、鋳造成形時の熱や溶湯流により、中子が折れたり崩れたりして流路が詰まったり狭窄されたりすると、冷却水が流れなくなったり、流れが悪くなって冷却不良を生じさせ、オーバーヒート等エンジン故障の原因となる恐れがあるため、鋳造成形後、全ての流路を全製品検査しなければならなかった。しかも、シリンダやプラグ穴を囲むように形成される流路のように湾曲したり途中に段差が形成される複雑な流路は成形不良により詰まりや狭窄が発生しやすかった。
【0003】
このため複雑に曲がりくねっている流路は、人手により針金等を通して流路の良否を判断したり、光を流路の始端開口から照射して通過してくる反射光を見て良否を判断することが行われているが、複雑に曲がりくねった流路に針金を通すのは極めて難しいうえに、流路内面は鋳物砂により粗面となっているため、曲がりくねった流路では光はほとんど反射しないため検査光は減衰して終端開口まで光は到達しなかった。また例え、光が終端開口に到達しても減衰が激しく閉塞度を検出することは極めて難しかった。
【0004】
そこで、始端開口から流路内にエアを供給して終端開口におけるエア圧力やエア流量をセンサで検出する装置もある(例えば、特許文献1、2参照)。しかし検査すべき流路だけにエア圧を供給することは不可能なうえ、流路はそれほど長くないので両端に圧力差は大きくとれないことから、膨大なエア量を必要とした。しかも、エア圧力やエア流量も他の流路からエアが漏れ出るため、分岐点では1/1000以下に減衰して良否を判断できるレベルになく、いずれも実用化は極めて難しいものであった。さらに風速により検査を行なうものがある(特許文献3参照)。また超音波により検査を行なうものがある(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−105203号公報
【特許文献2】
特開平6−281548号公報
【特許文献3】
特開2001−116663号公報
【特許文献4】
特開2000−338090号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、複雑な流路内の閉塞度を検査することができる鋳造成形品の成形不良孔検査方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成するため本発明は、鋳造成形品内部に形成される一つまたは複数の流路の外部連通開口に設けた複数の投光器より放出されるパルス光を、別の外部連通開口に設けた一つの導光部材の一端で受光したうえこの導光部材の他端に設けた受光器に導光し、該受光器で検出された受光出力を閾値と比較して良否判定を行なう鋳造成形品の成形不良孔検査方法であって、前記した導光部材として、主軸部の一端が、表面を磨りガラスと同様の粗表面とする略円錐形の全方向性受光面に形成されているものを用いたことを特徴とする鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項1の発明とし、請求項1の発明において、導光部材の材質が透明ガラスまたは透明樹脂である鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項2の発明とし、導光部材が導光性ファイバー束である鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項3の発明とし、請求項1から3の発明において、導光部材のうち全方向性受光面を除く主軸部の軸径を、受光器に面する他端側が他の部分に比べて小径としてある鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項4の発明とし、請求項1から4の発明において、投光器が発光ダイオードよりなる鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項5の発明とし、請求項1から5の発明において、複数の投光器がパルス分配回路により重ならないタイミングでパルス光を放出するものである鋳造成形品の成形不良孔検査方法を請求項6の発明とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、シリンダヘッドの流路の検査を行う本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
本発明の測定装置1はパルス光を放出する複数の投光器10と、流路Rを通過してきたパルス光を受光する全方向性受光面21を一端に有する一つの導光部材20と、導光部材20により他端まで導光された通過光を検出する一つの受光器30とよりなり、複数の投光器10と一つの導光部材20は鋳造成形品の内部に形成される流路Rのそれぞれ別の外部連通開口に設けられる。
【0009】
前記投光器10は図3に示されるように、パルス発振器11とパルス分配回路12と増幅器13と発光ダイオード14とよりなるものである。パルス分配回路12により発光ダイオード14にパルス信号を加えることにより瞬間的なピーク出力を高めたパルス光を放出することができるので、消費電力が小さく小出力の発光ダイオード14でも高輝度発光が可能となるので、鋳造成形品の粗面で形成されている流路Rを通過させることによるパルス光の減衰にも耐えることができるうえに小型であるため鋳造成形品の流路Rの小さな外部連通開口に配置させることができる。
【0010】
また流路Rの測定距離が長くパルス光の減衰が大きくなって光出力が不足する場合は複数の発光ダイオード14を並べて発光させることにより出力不足を補うことができる。さらに発光ダイオード14の発光色は有色光でもよいが赤外色光を用いれば外乱光に影響を受け難くなる。また発光ダイオード14は図6に示されるように指向性を持つものとしているが、特性上指向性にばらつきがある場合は指向性の鋭いものより鈍いものを用いたほうが検出精度は向上する。さらに発光ダイオード14のパルスの持続時間を短くすればするほどピーク出力は高くなるが、極短のパルスを発生させる投光器10にすると回路設計が難しく高価なものとなるから流路長に応じて持続時間を設定するようにすることが好ましい。さらに発光ダイオード14はパルス光の放出方向側を開口させた保護管内に収納して検査中不注意により破損されることがないようにしている。
【0011】
パルス発振器11は1〜100KHz周期の矩形パルスを発生させるもので、パルス幅は周期の数分の1としている。パルス分配回路12は四つの投光器10の発光ダイオード14に重ならないタイミングで順次パルスを分配するものである。
【0012】
また受光器30は図3に示されるように、受光素子31と増幅器32とアナログスイッチ33と比較器34と表示器35とからなるものであり、該受光器30は導光部材20の他端に設けられるものである。アナログスイッチ33は受光器30が受けた受光出力を投光器10のタイミングで分配するものである。比較器34は検出された受光出力が図7に示されるように、閾値を越えるか越えないかにより流路Rの良否判定を行うものである。また表示器35は閉塞された流路Rや閾値以下の流路Rをランプ表示するためのものである。さらに増幅器32とアナログスイッチ33と比較器34と表示器35は投光器10の発光ダイオード14と同数設けられて1対1の対応がされている。これは受光素子31は一つであるが投光器10の増幅器13と受光器30のアナログスイッチ33は同期的に結合されることにより1対1の対応付けが行なわれる。
【0013】
また、導光部材20は一端が全方向性受光面21となる略円錐形で、表面を磨りガラス表面と同様の粗表面とした断面形状が円型または角型の透明ガラス、透明プラスチック、導光性ファイバー束等よりなるもので、透明ガラス、透明プラスチック、導光性ファイバーの外周面は反射面として導光時に、受光したパルス光が外部に漏れで減衰することがないようしている。また全方向性受光面21を磨りガラス表面と同様の粗表面とすることにより、光は反射せずに吸収されやすくなって僅かな光でも確実に受光できるようこととなる。さらに一端を略円錐形の全方向性受光面21とすることにより導光部材20の全方位から入射されるパルス光を確実に受光できるものとしている。また透明ガラス、透明プラスチックよりなる導光部材20は図4(a)、(b)に示されるように、一端の全方向性受光面21を除く主軸部のうち、受光器30側となる他端の軸径を他の部分の軸径より小径とすることにより、入射光を集中させて輝度を高めることができるので受光器30による検出を確実にすることができる。また、受光器30側となる他端の軸径を小さくできるので面積の小さな受光面を有する受光器30を用いることができ安価なものとすることができる。
【0014】
また図9に示される実験装置を用いて得られた開口率と通過光の受光出力との関係は図10のグラフに示されるように閉塞度を明確に判別できるものであった。この実験は角パイプの始端に投光器10を配設し、角パイプの終端に受光器30を配設しておき、角パイプの中間に設けた遮蔽板を出没させた際、受光器30で受光される受光出力を測定したものである。実験では閉塞度は明確に判別できるが実際の鋳造成形品では図8に示されるように、製品1、2、3、4間で流路寸法に若干のばらつきがあるので、良品判定された多数の製品の流路寸法を測定して平均値を求めておくことにより検出精度を向上させることができる。
【0015】
このように構成されたものは、検査台に横向きにシリンダヘッドHを載置したうえ、図1に示されるように、シリンダヘッドHに測定装置1の四つの投光器10と一つの導光部材20とを検査すべき一定距離を隔てた流路Rの各外部連通開口に位置決め配置する。次いで、パルス発振器11より発振されるパルス出力をパルス分配器12により放出タイミングが重ならないように各投光器10の発光ダイオード14を増幅する各増幅器13に順次入力する。これにより四つの発光ダイオード14は異なるタイミングでパルス光を放出することとなる。
【0016】
このようにして投光器10から放出されたパルス光は図1に示されるように流路Rを進むこととなる。パルス光は流路Rが非直線の場合は反射を繰り返しながら進み、直線の場合は直進することとなる。そして通過光は導光部材20の円錐形で、表面が磨りガラス表面と同様の粗表面とされた全方向性受光面21に到達することとなる。また、前記した全方向性受光面21は円錐形をしているため略全方位からくる僅かな通過光をも受光するから、流路Rが閉塞されていなければ閉塞度に応じた輝度の通過光を受光することとなる。そして全方向性受光面21の磨りガラス表面と同様の粗表面で受光された導光部材20の他端に導光され、次いで、導光部材20の主軸部の他端に設けられた受光器30により通過光は検出されることとなる。
【0017】
また他の発光ダイオード14からのパルス光はそれぞれが重ならないタイミングで流路Rに順次放出され、流路Rが閉塞していない限り導光部材20の全方向性受光面21により受光され受光器30により通過光は検出されることとなる。各投光器10からのパルス光は一つの受光器30により検出されることとなるが、受光器30のアナログスイッチ33は投光器10の増幅器13と同期的に結合されているので、導光部材20の全方向性受光面21に受光された通過光は各流路R毎の受光出力として交じり合うことなく1対1の対応で検出されることとなる。
【0018】
そして受光器30により検出された受光出力は流路Rの狭窄あるいは閉塞による流路Rの閉塞度に応じて変化することとなるから、蓄積したデータから導き出されて設定された許容レベルの受光出力を閾値とし、該設定した閾値を越えた場合は流路Rに閉塞や許容レベルを超える狭窄がないものとし、流路Rは異常なしの良品と判定する。
【0019】
なお、前記好ましい実施の形態では、導光部材20は硬質の透明ガラスか透明プラスチックとしているが、フレキシブルな導光性ファイバーを用いれば受光器30を被検査体から離れた位置に配置することができるので、受光器30が損傷したり汚損したりすることを防げるので長期耐用が可能となる。しかも導光性ファイバーよりなる導光部材20は硬質のものより衝撃に強いので破損することがなく長期耐用できランニングコストを下げることができる。また前記好ましい実施の形態では、発光ダイオード14を用いた投光器10としているが、レーザを用いた投光器10としてもよいことは勿論であり、レーザ光を極短パルスとすることによりピーク出力を高められることは発光ダイオード14と同様である。
【0020】
【発明の効果】
本発明は前記説明によって明らかなように、鋳造成形品内部に形成される一つまたは複数の流路の外部連通開口に設けた複数の投光器より放出されるパルス光を、別の外部連通開口に設けた一つの導光部材の一端の全方向性受光面で受光したうえこの導光部材の他端に設けた受光器に導光し、該受光器で検出された受光出力を閾値と比較して良否判定を行なうことにより、流路が粗面で光の減衰が大きく従来では検出が不可能な光による流路の閉塞度を検出することができることとなる。しかも、表面を磨りガラスと同様の粗表面とする略円錐形の全方向性受光面で受光するので、僅かな光でも確実に受光できて通過光の未検出を防ぐことができるうえに一つの導光部材で複数箇所の流路の閉塞度を検出することができる。また投光器からパルス光を放出することにより流路毎の受光データを明確に識別できることとなり高い検出精度を得ることができる。
また、導光部材が導光性ファイバー束よりなるものとすることにより、透明ガラスや透明樹脂より衝撃に強いものとすることができるうえに被検査体への装着が容易となる。しかも導光性ファイバー束を延長すれば受光器を被検査体から離すことができるから検査中に誤って受光器を破損することがなく長期耐用できランニングコストを低減できることとなり、導光部材のうち全方向性受光面を除く主軸部の軸径を、受光器に面する他端側が他の部分に比べて小径としてあることにより、通過光が集中し輝度が高くなるので検出精度を向上させることができる。このため受光器を小型で検出能力が低いものを用いることができるので安価なものとなる。さらに、投光器が発光ダイオードよりなるものとすることにより、レーザ等と比較して極めて安価な装置とすることができ、複数の投光器がパルス分配回路により重ならないタイミングでパルス光を放出するものとすることにより、ピーク出力を高めパルス光を高輝度とすることができるうえに、複数の流路を続けて検査することができる等種々の利点を有するものである。
従って、本発明は従来の問題点を解消した鋳造品の成形不良孔検査方法として業界の発展に寄与するところ極めて大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい実施の形態の一部切欠平面図である。
【図2】 本発明の好ましい実施の形態の図1におけるA−A断面図である。
【図3】 本発明の好ましい実施の形態のブロック回路図である。
【図4】 本発明の好ましい実施の形態に用いられる導光部材である。
(a)正面図
(b)側面図
【図5】 本発明の好ましい実施の形態に用いられる他の導光部材である。
(a)正面図。
(b)側面図。
【図6】 本発明の好ましい実施の形態に用いられる投光器の投光範囲を示す平面図である。
【図7】 受光器により検出された受光出力を示すグラフである。
【図8】 流路の閉塞レベルにおける出力電圧のばらつきを示すグラフである。
【図9】 狭窄できる角パイプを用いてパルス光の受光出力の測定実験を行なった装置の原理説明図である。
【図10】 実験による開口率と受光出力の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 投光器
12 パルス分配回路
14 発光ダイオード
20 導光部材
21 全方向性受光面
30 受光器
Claims (6)
- 鋳造成形品内部に形成される一つまたは複数の流路の外部連通開口に設けた複数の投光器より放出されるパルス光を、別の外部連通開口に設けた一つの導光部材の一端で受光したうえこの導光部材の他端に設けた受光器に導光し、該受光器で検出された受光出力を閾値と比較して良否判定を行なう鋳造成形品の成形不良孔検査方法であって、前記した導光部材として、主軸部の一端が、表面を磨りガラスと同様の粗表面とする略円錐形の全方向性受光面に形成されているものを用いたことを特徴とする鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
- 導光部材の材質が透明ガラスまたは透明樹脂である請求項1に記載の鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
- 導光部材が導光性ファイバー束である請求項1に記載の鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
- 導光部材のうち全方向性受光面を除く主軸部の軸径を、受光器に面する他端側が他の部分に比べて小径としてある請求項1から3のいずれかに記載の鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
- 投光器が発光ダイオードよりなるものである請求項1から4のいずれかに記載の鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
- 複数の投光器がパルス分配回路により重ならないタイミングでパルス光を放出するものである請求項1から5のいずれかに記載の鋳造成形品の成形不良孔検査方法。
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