JP4005029B2 - 皮膚から汗を採取する方法、汗中のグルコースを検出する方法および装置 - Google Patents
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Description
本発明は、皮膚から汗を採取する方法、採取した汗中のグルコースを検出する方法および装置に関する。
近年、糖尿病の患者数が増加の一途を辿っている。この糖尿病の診断は、血糖値を測定することにより一般的に行われているが、採血を要し、その分析にも時間を要することから、簡便な方法であるとは言い難い。
これに対し、近年、尿糖値測定による糖尿病診断が実用化されるようになってきた。この尿糖値の測定は、苦痛を伴う採血を行う必要がなく、排尿により得られた尿を用いるという簡便性のために、今後利用者が増大していくものと思われる。
例えば、導電性ダイヤモンドにニッケル等の触媒金属を担持させた電極を用いて、グルコースを直接的に定量分析する方法が知られている(例えば、特開2002−310977号公報(特許文献1))。
また、グルコースをグルコースオキシダーゼに接触させて過酸化水素を生成させ、この過酸化水素を、イリジウム等の触媒金属を担持させたダイヤモンド電極を用いて電気化学的に検出することにより、グルコースの定量分析を行う方法も知られている(特開2003−121410号公報(特許文献2)参照)。
指を収容する大きさを有する、非通水性材料製の指キャップを用意し、
該指キャップにサンプリング液を入れ、
該溶液が入った指キャップに指を挿入して保持し、該指に発生する汗をサンプリング液に溶出させ、そして、
前記指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得ること
を含んでなるものである。
上記方法に従い、汗が溶出されたサンプリング液を得た後、
前記汗を含有するサンプリング液中のグルコースを検出すること
を含んでなるものである。
本発明の方法における汗の採取は、指の皮膚から行われる。汗の採取に供する指の本数は一本で十分であるが、これに限らず複数本であってもよい。本発明の方法にあっては、この汗の採取のために指キャップを用いる。この指キャップは、指を収容する大きさを有する、非通水性材料製のキャップ状の容器である。指キャップには、使用時に、サンプリング液が適量注入される。そして、被検者は指を指キャップに挿入して一定時間保持するだけで、指に発生する汗をサンプリング液中に溶出させることができる。被検者が指キャップに指を保持する時間は、0.5〜30分、好ましくは3〜10分、より好ましくは4〜6分程度の短時間で十分であり、被検者の時間的および身体的負担は極めて軽いと言える。その後、指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得る。こうして採取されたサンプリング液には、汗中のグルコース濃度を測定するのに十分な量のグルコースが溶存する。したがって、このサンプリング液を用いて、必要に応じて乾燥および測定用溶媒の添加等の前処理を行うことにより、採取した汗中のグルコース量を測定することが可能となる。
本発明の方法に用いる指キャップは、指を収容する大きさを有する、非通水性材料製のキャップ状の容器である。指キャップが収容可能な指の本数は限定されないが、一本とするのが汗の採取を簡単に行えるので好ましい。図1に指キャップの一例を示す。図1に示されるように指キャップ1は、指が通過可能なリング状の挿入口2と、挿入口2から筒状に延在して、その一端が閉じられた筒状部3とから構成されてなる。
指キャップを披検者の指の形に適合した形状に形成する方法の例としては、石膏を用いて披検者の指の型を採取し、得られた石膏型を用いて指キャップを作製することが挙げられる。あるいは、一般的な指の大きさまたはおよび形状に対応する指キャップを予め複数種類用意しておき、被検者の指の大きさおよび形状に応じて、適合する種類の指キャップを適宜選択して使用してもよい。
本発明の方法に用いるサンプリング液は、汗を液中に抽出し分散させることができる液体であれば限定されないが、水および/またはアルコールを含んでなるものが汗中の成分(例えばグルコース)を安全かつ効率よく採取できる点から好ましい。
上記の通り、本発明の汗の採取方法より採取されたサンプリング液は、汗中のグルコースの検出および定量測定に適している。したがって、得られたサンプリング液を用いて、公知の方法に従い、グルコースの検出および定量を行うことができる。特に、汗中のグルコース濃度と、血糖値との間には相関関係があることが知られていることから、汗中のグルコース濃度を知ることができれば、血糖値を推定し、糖尿病診断に利用することができる。
このようにして得られた被検溶液中のグルコース濃度を基に、被検溶液中のグルコースの絶対量を算出することができる。そして、この被検溶液中のグルコース絶対量と、先に算出された指キャップ中に溶出された発汗量とを用いて、汗中のグルコース濃度を算出することができる。
本発明の好ましい態様によれば、被検溶液中のグルコース濃度の測定は、グルコースオキシダーゼと、フェリシアンイオンと、導電性ダイヤモンド電極とを用いて、グルコースの存在に起因する電流を検出することにより行うことができる。すなわち、この方法にあっては、まずグルコースにグルコースオキシダーゼを作用させて過酸化水素を生成させる。そして、生成した過酸化水素をフェリシアンイオンに作用させて、フェロシアンイオンに還元させる。そして、ダイヤモンド電極がフェロシアンイオンを電気化学的に特異的に酸化し、対電極との間に電流を発生するとの性質を利用して、被検溶液中のフェロシアンイオンを検出する。すなわち、反応系において以下の化学反応が起こり、その結果、電流が発生する。
グルコース + H2O + O2 → グルコラクトン + H2O2
(グルコースオキシダーゼ)
2[Fe(CN)6]3− + H2O2
→ 2[Fe(CN)6]4− + O2 + 2H+
[Fe(CN)6]4− → [Fe(CN)6]3− + e−
このように、グルコースの定量は電流を検出することにより行われるため、測定時間は短くかつ簡便である。したがって、本発明による方法は短時間の内に容易にグルコースを検出し、その濃度を知ることが出来る点で極めて有利である。
ダイヤモンドは本来優れた絶縁体である。しかしながら、3族や5族の不純物を添加することによって、半導体〜金属様の導電性を示すようになる。本発明にあっては、半導体〜金属様の導電性を示すダイヤモンドを電極として使用する。
指キャップの作製を以下の通り行った。まず、汗の採取対象である指を油粘土で覆い、指の型を採取した。得られた型に石膏を流し込み、1日間放置した後、石膏を取り外した。次いで、石膏に熱収縮チューブを被せ、ヒートガンで熱を加え、収縮チューブを収縮させた。そして、チューブ内の石膏を全て除去して、熱収縮したチューブを指キャップとして得た。
50体積%エタノール水溶液に1,3−ブチレングリコールを添加して、10体積%の1,3−ブチレングリコール水溶液をサンプリング液として調製した。このサンプリング液約0.7mlを例1で作製した指キャップに注入した。指キャップに被検者の左手の中指を挿入して、そのまま5分間保持しながら、指から放出される汗をサンプリング液中に溶出させた。このとき、同時に、局所発汗量連続記録装置(Kenz Perspiro 210、スズケン社製)に接続されたプローブに右手の中指を載置し、単位面積当たりの発汗量を5分間測定した。
次いで、指キャップから左手中指を抜くとともに、右手中指をプローブから外した。このとき、左手中指に付着したサンプリング液ができるだけ指キャップ内に回収されるように留意した。こうして、皮膚からの汗が溶出されたサンプリング液を得た。
例2で得られたサンプリング液を用いて、被検者の汗中のグルコース濃度を以下のようにして測定した。まず、サンプリング液を広口容器に入れ、乾燥台の上に置いた。ドライヤーの送風口を広口容器に向けて乾燥を開始し、完全に水が除去されるまで乾燥を行い、乾燥試料を得た。
次いで、この広口容器に、0.3Mの水酸化ナトリウム水溶液および0.5Mの1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)メタノール溶液を添加し、70℃で1時間半反応させた後、室温まで冷却させた。冷却された溶液に1N塩酸を添加して中和した後、ドライヤーを用いて上記同様にして乾燥させた。こうして得られた乾燥試料に蒸留水およびクロロホルムを添加し攪拌した後、上層である水層100μlを採取した。この水層をドライヤーを用いて上記同様にして乾燥させた。得られた乾燥試料に溶離液30μlを添加して、被検溶液を得た。こうして得られた被検溶液を液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、グルコース誘導体に起因するピーク面積を読み取り、そのピーク面積と予め作成しておいたグルコースの検量線とを比較することにより、グルコース濃度を算出した。液体クロマトグラフィーに使用した装置および測定条件は以下の通りである。
検出器:Diode array detector 350RS、大塚電子株式会社製
ポンプ:LC-9A、島津製作所製
カラム:CAPCELL PAK C18 2.0mm i.d.×150mm、SHISEIDO
溶離液:アセトニトリル/0.1Mリン酸緩衝液(pH7)=18/82
流量:0.200ml/min
検出波長:245nm
サンプル注入量:10μl
公知の方法に従い、導電性n型シリコン(111)面上に、ホウ素を高濃度(10,000ppm、B/C比)で導入したダイヤモンド薄膜を、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて形成した。こうして、導電性ダイヤモンド電極を得た。得られたダイヤモンド薄膜の抵抗は10−3Ωcmであった。シリコン基板の裏面に、銀ペーストを用いて銅線を固着した。
まず、下記成分を含んでなるリン酸緩衝溶液(PBS溶液)を調製した。
塩化ナトリウム 1.37×10−1M
塩化カリウム 2.68×10−3M
リン酸一水素ナトリウム無水物 9.58×10−3M
リン酸二水素カリウム無水物 1.47×10−3M
これらの各被検溶液に、作用電極として例1で調製したダイヤモンド電極を浸け、また対電極として白金電極を浸け、さらに参照電極としてAg/AgCl電極を浸けて、図5に示されるような電気化学測定用セルを構成した。図6に示される測定装置として、ポテンシオスタット/ガルバノスタット(Princeton Applied Research社製、PG580)を用意して、各電極を接続した。
電解液:PBS
被検溶液体積:4ml
初期電位:0V
初期電位時間:5秒間
掃引電位1:0.1V
掃引電位2:1V
パルス高さ:0.2V
周波数:15Hz
スキャンインクリメント:0.002V
ポイント数:241
例5で調製したPBS溶液に、フェリシアン化カリウムを加えて、20μMフェリシアン化カリウムPBS溶液を得た。この溶液4mlにグルコースオキシダーゼ50μgを添加し、さらにグルコースを5nmol添加して被検溶液を得た。同様にして、添加するグルコース量を10nmol、25nmolとした被検溶液、およびグルコースを添加しない被検溶液も調製した。こうして得られた各被検溶液におけるフェリシアン化カリウムおよびグルコースの濃度は、例5で調製された各被検溶液におけるフェリシアン化カリウムおよびグルコースの濃度の100分の1である。
この各被検溶液について、例5と同様にして、ノーマルパルスボルタンメトリー測定を行った。測定結果は図10に示される通りであった。得られたピーク電気量と、グルコースの濃度から、図11に示される検量線が得られた。図11に示されるように、グルコース濃度に比例して、ピーク電気量も推移した。
Claims (21)
- 皮膚から汗を採取する方法であって、
指を収容する大きさと、被検者の指の形に適合した形状とを有し、なおかつ被検者の指における指先から第一関節までの範囲を少なくとも覆う、非通水性材料製の指キャップを用意し、
該指キャップにサンプリング液を入れ、
該溶液が入った指キャップに指を挿入して保持し、該指に発生する汗をサンプリング液に溶出させ、そして、
前記指を前記指キャップから抜き出し、汗が溶出されたサンプリング液を得ること
を含んでなる、方法。 - 前記サンプリング液が水および/またはアルコールを含んでなる、請求項1に記載の方法。
- 前記サンプリング液が水およびアルコールを含んでなり、該サンプリング液におけるアルコールの濃度が0.1〜80体積%である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルコールが、エタノール、ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピルアルコール、ポリエチレングリコール、ブチルアルコール、ジプロピレングリコール、および1,3−ブチレングリコールから選択される少なくとも一種である、請求項2または3に記載の方法。
- 前記指の指キャップへの保持が0.5〜30分間行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記指キャップが樹脂またはゴム製である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 汗中のグルコース濃度を測定するために用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 皮膚から汗を採取して汗中のグルコースを検出する方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載される方法に従い、汗が溶出されたサンプリング液を得た後、
該汗を含有するサンプリング液中のグルコースを検出すること
を含んでなる、方法。 - 前記グルコースの検出が、
前記サンプリング液を乾燥させて乾燥試料とし、
該乾燥試料に測定用溶媒を添加して、被検溶液を調製し、
該被検溶液中のグルコースを検出すること
により行われる、請求項8に記載の方法。 - 前記汗の採取において前記指キャップに指を保持している間、別の指における発汗量を測定することにより、前記指キャップ中における前記指の発汗量を決定し、かつ、
前記グルコースの検出が、
前記被検溶液中のグルコース濃度を測定することにより、該被検溶液中のグルコース量を算出し、そして、
該被検溶液中のグルコース量と前記指キャップ中における前記指の発汗量とを用いて、汗中のグルコース濃度を算出する工程
をさらに含んでなる、請求項9に記載の方法。 - 前記測定用溶媒がリン酸緩衝液である、請求項9または10に記載の方法。
- 前記乾燥がドライヤーにより行われる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記乾燥が、二つの領域に仕切られた開放端を有する容器にサンプリング液を収容し、前記ドライヤーから排出される加熱空気を一方の領域に送り込み、前記サンプリング液上を通過させて、他方の領域から排出させることにより行われる、請求項12に記載の方法。
- 前記グルコース濃度の測定が、
前記被検溶液と、グルコースオキシダーゼと、フェリシアンイオンと、導電性ダイヤモンド電極とを用意し、
前記被検溶液をグルコースオキシダーゼに接触させて過酸化水素を生成させ、該過酸化水素によりフェリシアンイオンをフェロシアンイオンに還元させ、
該フェロシアンイオンを含有する被検溶液に、作用電極としての前記ダイヤモンド電極と、対電極とを接液させ、
前記ダイヤモンド電極と、前記対電極との間に、前記ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応が生じる電圧を印加し、そして、
該電圧下における電流値または電気量を測定し、得られた電流値または電気量から前記被検溶液中のグルコースの濃度を算出すること
により行われる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。 - 得られた電流値または電気量からグルコースの濃度を算出する工程が、予め作成されたグルコース濃度と電流値または電気量との検量線と、得られた電流値または電気量とを対比することにより行われる、請求項14に記載の方法。
- 前記グルコースオキシダーゼが担体に担持されてなり、該担体が反応器内に充填されてなる、請求項14または15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記被検溶液の供給が、キャリアとしての溶液を一定流速で系内を流しながら、該キャリア溶液中に前記被検溶液を注入することにより行われる、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記キャリア溶液にフェリシアンイオンを生じる塩が添加される、請求項17に記載の方法。
- 請求項1〜18のいずれか一項に記載される方法に用いられる、指を収容する大きさと、被検者の指の形に適合した形状とを有し、なおかつ被検者の指における指先から第一関節までの範囲を少なくとも覆う、非通水性材料で作製された、指キャップ。
- 請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法に記載される、被検溶液中のグルコース濃度の測定を実施するための装置であって、
グルコースオキシダーゼが担持されてなる反応器と、
前記反応器に前記被検溶液を導入する手段と、
該反応器を通過した前記被検溶液に、フェリシアンイオンの存在下、作用電極としてのダイヤモンド電極、および対電極を接触させる手段と、
前記ダイヤモンド電極と、前記対電極との間に、前記ダイヤモンド電極上でフェロシアンイオンの酸化反応が生じる電圧を印加する手段と、
該印加電圧下における電流値または電気量を測定する手段と
得られた電流値または電気量から前記被検溶液中のグルコース濃度を算出する手段と
を備えてなる、装置。 - 参照電極をさらに備え、それにより前記作用電極の該参照電極に対する電位を制御するようにされてなる、請求項20に記載の装置。
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