JP4002977B2 - Ffag加速器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加速器に関し、特に、固定磁場強収束型加速器いわゆるFFAG加速器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
円形加速器においては、粒子を高エネルギーまで加速しようとすると、それに伴い軌道半径は大きくなる。サイクロトロンの場合、粒子の周回周期が粒子の運動量によらないという等時性の条件を満たすため半径方向の磁石サイズが増大し、電磁石の重量は磁極半径の2乗ないし3乗に比例して重くなる。そのため加速器の小型化が困難となる。一方、シンクロトロンでは軌道半径を一定に保ちながら加速するため、電磁石は軌道部分にあればよく電磁石が小型になる。軌道半径を保つためシンクロトロンでは加速と共に磁場が変化する交流電磁石を用いる。交流電磁石を用いるためシンクロトロンでは加速の繰り返しに上限があり、ビーム強度をあげるのは一般に難しくなる。
【0003】
近年、FFAG(Fixed-Field Alternating Gradient)方式が加速器科学の分野で脚光を浴びている。FFAG方式の加速器は固定磁場且つ強収束な加速器で、シンクロトロンとサイクロトロンの長所を兼ね備えた加速器である。FFAG加速器はサイクロトロンと同様に固定磁場を用いる。そのため、シンクロトロンにくらべ加速の繰り返しを数十倍まで上げることが可能であり、直流に近い大強度ビームが得られる。またFFAGでは半径方向に磁場勾配を持つため、加速による軌道の変化幅を小さくできる。よってサイクロトロンに比べ電磁石が小型になる。これらの特徴からFFAG加速器は、小型で高エネルギーかつ大強度ビーム加速器として、近年注目が集まっている。その他、加速時間が短いためミューオンなど短寿命な粒子の加速器として有望視されている。
【0004】
FFAG加速器は2種類に大別される。一つはラジアルセクター型といわれるもので、その概略図は図1に示してある。FFAGやシンクロトロンでは電磁石が周期的に並べられているが、この電磁石の配列(ラティス)の基本単位をセルという。例えば図1では正の電磁石1(F磁極)と正負の電磁石間の磁石のない空間2、負の電磁石3(D磁極)ならびに電磁石のない空間2が1セルである。電磁石のない空間2(ドリフト空間)を“O”と呼ぶとすると、図1の例ではFODOがラティスの基本セルとなり、合計8セルである。
【0005】
なお、図1において、4は粒子を加速するための加速空洞であり、5はビーム出射のためのキッカー電磁石である。また、6及び7は、それぞれ入射ビーム及び出射ビームである。ラジアルセクター型FFAG加速器では磁場勾配の符号が等しく磁場の符号が異なる電磁石1、3(正および負の電磁石)を交互に並べることで強い収束力を得ている。よって中心軌道(加速器の設計軌道として選ばれた閉軌道)が図2に示したように交互に内外に曲げられ大きく蛇行する。FFAG加速器では加速と共に粒子軌道が変化するため入射時と出射時のビーム軌道は異なる。図2において、21及び22は、それぞれ入射時及び出射時のビーム軌道を示しており、Δrは両者の半径方向の軌道差(excursion)を示している。
【0006】
ラジアルセクター型FFAG加速器で用いられる電磁石の磁場分布は正負両方の磁石共に、
Figure 0004002977
の形を持ち、Bの符号が交互に変わる。ここでrは軌道半径で、kはfield indexである。このFFAG加速器で用いられる電磁石の断面図の一例を図3に示した。
【0007】
図3において、31は鉄心、32はコイル、33は磁極間隙である。粒子軌道は加速と共に磁場Bの弱い方(L)から強い方(H)へ変位する。すなわち、入射時のビーム軌道21は、磁場の弱い方(L)を通り、出射時のビーム軌道22は、磁場の強い方(H)を通る。
【0008】
このようなラジアルセクター型のFFAG加速器の技術によれば、FFAG加速器におけるビーム軌道保持用磁場の形状が正・逆交番磁場であることに注目し、集束磁石で発生させたフラックスを、リターンヨークを介さずに直接、発散磁石に戻す磁気回路とすることにより、リターンヨークを省略してビームの入射、取り出しを容易にするとともに、磁石の小型化を可能にするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
もう一つはスパイラルセクター型と呼ばれるFFAG加速器であり、その概略図を図4に示した。この加速器は、図4に示すように中心軌道と小さな角をなす螺旋型構造の磁石41を持つ。この型のFFAGでは正の磁場のみ用いられる。強い収束力は交互に並ぶ磁場の山と谷により得ている。なお、図4において、44は加速空洞であり、45はキッカー電磁石である。また、46及び47は、それぞれ入射ビーム及び出射ビームである。
【0010】
FFAG加速器の原理は1952年に大河千弘氏により提唱されたが(大河千弘、1953年度日本物理学会予稿集)、最近まで実用化には至ってなかった。その原因は大口径で高加速勾配かつ広帯域の高周波加速空胴の製作や、式(1)で表されるような磁場勾配を持つ電磁石の設計が当時の技術では困難であったためである。しかしながら、最近の超高透磁率磁性体の開発や、三次元磁場計算コードの発展によりFFAG加速器の実用化が可能となってきた。その一例として、平成12年に高エネルギー加速器研究機構において建設された陽子加速用POP(Proof of Principle)FFAGや、同研究機構で平成14年から建設を行っている150MeV陽子加速用FFAGなどがある。
【0011】
FFAG加速器では加速と共に粒子軌道が変化する。そのため入射時と出射時の半径方向の軌道差Δr(excursion)は電磁石や真空チェンバーのサイズを決め、更には加速器全体のサイズ及び建設費を大きく左右する(図2参照)。加速器の小型化のためには軌道差Δrをなるべく小さくする必要がある。FFAG加速器で用いられる電磁石は式(1)で表される磁場勾配を持つことから、軌道差Δrは次のように表すことができる。
【0012】
Figure 0004002977
ここでrinjは入射時の軌道半径で、BinjとBextはそれぞれ入射時及び出射時でのセクター電磁石の磁束密度である。磁束密度には(Bext/Binj)>1の関係があることから、k値を大きく取れれば軌道差Δrを小さくすることができる。
【0013】
加速器の小型化のためにはk値を出来る限り大きくしたいが、適当な値でないとベータトロン振動が不安定となり、ビームが安定に加速されない。ここでベータトロン振動とは中心軌道から外れた粒子が中心軌道のまわりに行う振動のことである。設定できるk値はセル数に強く依存している。つまりセル数を決定すると選べるk値の範囲は必然的に決まり、その範囲以外ではベータトロン振動が不安定となりビームが安定に加速されない。一般にk値を上げるためには、セル数も同時に増やさなければならない。しかしながら、セル数を増加させるとビーム入出射に必要なドリフト空間を確保するため加速器の周長を増やさざるを得ない。よって結果的にk値を上げても加速器のサイズは小さくならず、FFAG加速器の小型化の限界が見えていた。
【0014】
一方、強収束の原理の発見により今日のシンクロトロンは大幅な小型化が可能となった。強収束シンクロトロンでは異なるn値(field index)を持つ偏向電磁石を交互に配列することで強い収束力を得ている。ここでFFAGのfield index(k値)と区別するため、強収束シンクロトロンのfield indexをn値と書く。強収束シンクロトロンの簡単な例としてグラディエント電磁石のFセクターとDセクターを交互に並べたラティスを考える。
【0015】
FDの単位セルがNセルある加速器を考え、n値を、
Fセクター(0<s<πR/N):n=n1
Dセクター(πR/N<s<2πR/N):n=−n2
とおき(n1>0, n2>0)、ρ=R=(一定)とする。ベータトロン振動の安定領域は単位セルのマトリクスの対角成分の和(トレース)を求め、その絶対値が1以下であるという条件から得ることが出来る。
【0016】
この例では水平成分のマトリクスのトレースは、
Figure 0004002977
と書け、ここで
Figure 0004002977
である。また垂直成分に関しては、
Figure 0004002977
であり、ここで
Figure 0004002977
である。ベータトロン振動の安定領域は、
Figure 0004002977
から得られ、これをプロットすると図5のようになる。
【0017】
この図5で斜線部が安定領域である。図5からn値とセル数Nの2乗の比(n/N2)がある領域だけ、ベータトロン振動の安定領域が存在することがわかる。つまりn値を大きく取るためには、セル数Nも同時に大きくする必要がある。式(3)及び(4)には周期関数であるサイン及びコサインが含まれるため、安定領域はn1/N2およびn2/N2のさらに大きな値に対しても無数に存在する。この第2以降の安定領域を動作点として用いることで高いn値が得られるが、通常のシンクロトロンのビーム光学設計では最初に現れる安定領域が動作領域として選ばれる(例えば、非特許文献1参照)。
【0018】
その理由は、第2の安定領域を動作点として選ぶことでベータトロン振動の振動数は大きくなるが、一般にベータトロン振動の振幅が大きくなり、その結果ビームサイズが大きくなる。ビームサイズが大きいと電磁石の口径を大きくする必要があるので、電磁石は大きくなる。よってシンクロトロンでは第2以降の安定領域を動作点として選ぶ大きな利点はないためである。
【0019】
【特許文献1】
特開2003−142299号公報
【非特許文献1】
亀井亨、木原元央著「加速器科学」丸善株式会社、平成9年10月25日、p.94〜95
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、FFAG加速器ではk値を高くするのみでは、セル数も同時に増やさないとベータトロン振動が不安定となりビームを安定に加速することができないという課題があった。この課題に対し、本発明は、セル数を増やすことなくビームを安定に加速することが可能であり、従って更なる小型化が可能となるFFAG加速器の適切な高いk値の範囲を特定し、さらにそのk値を実現する運転条件をも提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、B=B0(r/r0kで表される磁場分布を持つセル数Nの電磁石を用いたFFAG加速器において、上記k値が原点(k=0)に近い第1の安定領域よりも高い第2又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域を動作点とするFFAG加速器が提供される。
【0022】
本発明によれば、上記FFAG加速器において、単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進みを180度超えさせて運転するのが好ましい。
【0023】
本発明によれば、上記k値に対してセル数Nを、k/N2>0.5の関係を満たす領域に設定するのが好ましい。
【0024】
本発明によれば、上記電磁石は、ラジアルセクター型電磁石であってもよい。
【0025】
本発明によれば、上記ラジアルセクター型電磁石は、FODOの配列をもつものであってもよい。また、FODO以外の他の配列、例えばFODOFO、DOFODO等をもつものであってもよい。
【0026】
本発明によれば、第2又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域を動作点とするので、その安定領域に含まれるセル数Nとk値との組み合わせを適当に設定することにより、セル数を増やすことなく、高いk値を持つFFAG加速器の設計が可能である。すなわち、本発明によりこれまで限界と思われていたk値より遙かに高いk値をもつFFAG加速器の設計が可能となる。高いk値に設定できることから軌道差Δrが短くなり、加速器全体の大幅な小型化が可能となる。更には加速器全体の建設費の縮小にもつながる。
【0027】
【発明の実施の形態】
FFAG方式の加速器ではfield indexが正の値で、逆向きの磁場を持つセクター電磁石を交互に並べることで強い収束力を得ている。ここでは図2のように加速器内側に偏向するセクター電磁石をF磁極、外側に偏向する電磁石をD磁極と呼ぶこととする。F磁極のマトリクスは以下のように表すことができる。
【0028】
水平成分:
Figure 0004002977
垂直成分:
Figure 0004002977
で、kFはF磁極のfield indexである。
【0029】
また、同様にD磁極は以下のように表すことができる。
水平成分:
Figure 0004002977
垂直成分:
Figure 0004002977
で、kD(>1)はD磁極のfield indexである。
【0030】
ここで、上述した強集束シンクロトロンのグラディエント電磁石のマトリクスと比較すると、FFAGのマトリクスはF磁極:kF→n2、D磁極:kD→n1という置き換えをしたことに等しい。よって、FFAG加速器でもグラディエント電磁石を用いた強収束シンクロトロンと同様な安定領域が現れることが期待される。つまり従来の技術の欄で示したFDを単位セルとする強収束シンクロトロン同様、第1の安定領域の他に更にk/N2の値が更に高い領域で第2以降の安定領域が存在することが予想される。
【0031】
そこで、線形光学近似の計算によりFFAG加速器のベータトロン振動の第2の安定領域の存在を示す。取りあえずは図6に示すようなFDを単位セルとする簡単なラティスを考える。
【0032】
1周の全セル数をNとし、k値を、
Fセクター(0<s<πR/N):k=kF
Dセクター(πR/N<s<2πR/N):k=kD
とおき(kF>1、 kD>1)、ρF=ρD=R=(一定)とする。
【0033】
水平成分の単位セルの行列Muは、
Figure 0004002977
である。
【0034】
整理して対角成分の和(トレース)から、
Figure 0004002977
が得られる。ここでμHは水平成分のベータトロン振動の位相の進み(phase advance)である。また、
Figure 0004002977
とおいた。
【0035】
同様に垂直成分について計算すると、
Figure 0004002977
で、
Figure 0004002977
である。同様にμVは垂直成分のベータトロン振動の位相の進みである。
【0036】
ベータトロン振動の安定領域は、
Figure 0004002977
を同時に満たすときである。この条件からベータトロン振動の安定領域は図7のようになる。第1の安定領域Aの他、第2の安定領域Bが見られる。この他にもk/N2が更に大きいところで無数の安定領域が存在する。
【0037】
ベータトロン振動は周期関数であるため、その位相により特徴づけられる。一般に第1の安定領域では単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進み(phase advance)は180度以下となる。しかしながら、第2以降の領域での単位セルあたりの位相の進みは180度を超える。従って、この単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進みが180度を超える領域を動作点として運転することで前記k値が得られる。前述の通り、通常のシンクロトロンではこの第2以降の安定領域は動作点として用いられないが、FFAG加速器の場合にはセル数Nを上げずにk値が上げられることによる利点が非常に大きい。それは式(2)からわかるように、k値が上げられることにより軌道差Δrが短くなるため、これまで実現が不可能と思われてきた加速器の大幅な小型化が可能となるためである。
【0038】
上記第2以降の安定領域の存在を示す一例として、ラジアルセクター型FFAG加速器を例に取り考える。ラティスの構成はFODOとする。加速粒子は126+で、その核子あたりのエネルギーが100(MeV/u)から400(MeV/u)まで加速される。このFFAG加速器に関して線形光学近似による計算を行い、ベータトロン振動の安定領域を探索する。まずセル数Nを固定して、k値を1から200まで変化させる。それぞれのセル数Nとk値の組み合わせに関してFODOの見込み角及びFDの曲げ角を全ての組み合わせについて閉軌道を計算し、そのラティスに関してベータトロン振動が安定か否か計算する。この計算により、各N及びkの組み合わせでビーム光学的安定解が幾つ見つかったかがわかる。以上の計算をN=8,10,...,18、k=1,2,...,200の組み合わせで行った結果を図8に示す。
【0039】
図8の横軸はk値で、縦軸は見つかった安定解の数である。ヒストグラムはN=8、点線ヒストグラムはN=10、一点鎖線ヒストグラムはN=12、丸印はN=14、×印はN=16、ダイアモンド印はN=18の結果を示す。図8に示したように、k値が低い領域(k<25)では従来から知られていた安定領域が見られるが、その他、本発明で明らかになった高いk値の領域で(k>25)で2番目以降の安定領域が存在することがわかる。特徴的なのは、その途中のk値では安定解がないことである。このように、セル数Nをそのままに高いk値の領域で安定解が数多く存在することがわかる。この第2以降の安定領域を動作点として選ぶことで、高いk値を得ることが出来る。その結果、加速器の大幅な小型化が可能となる。
【0040】
次に、FFAG加速器のビーム光学について説明する。ラジアルセクター型FFAG加速器については、図9のような簡素化されたドリフトスペース、収束磁石、発散磁石のそれぞれの構成要素を自由に配置し、線形近似による各要素の行列を使って、簡単な解析を行うことが可能である。各要素の行列を求めるためには、以下に従いビームの閉軌道を計算する必要がある。
【0041】
図9のようにドリフトスペース、収束磁石、発散磁石の見込み角をそれぞれ、ΘL、ΘF、ΘDとし、ビーム軌道がそれぞれの境界で交差する点の中心からの距離をr1及びr2とし、r1及びr2でビーム軌道が境界面となす角をφ1及びφ2とする。ここで、φ1及びφ2は中心から外方向を正と置いた。又、収束及び発散磁石の曲率半径をそれぞれρF及びρD、収束及び発散磁石の曲げ角をそれぞれθF及びθDとすれば、以下のような関係式が導かれる。
【0042】
・収束(F)磁石について:
1及びr2でのエッジ角をそれぞれε1及びε2とする。
ε1=φ1
ε2=θF−φ1−ΘF
φ2=−ε2
Figure 0004002977
Figure 0004002977
【0043】
ここで、ある一つのF磁石の曲率半径ρ0を基準にすれば、式(11)及び(12)は、
Figure 0004002977
Figure 0004002977
【0044】
・発散(D)磁石について:
1及びr2でのエッジ角をそれぞれε1及びε2とする。
ε1=−φ1
ε2=θD+φ1+ΘD
φ2=ε2
Figure 0004002977
Figure 0004002977
【0045】
同様に、ある一つのF磁石の曲率半径ρ0を基準にすれば、式(15)及び(16)は、
Figure 0004002977
Figure 0004002977
【0046】
・ドリフトスペースについて:
φ2=ΘL+φ1
ある一つのF磁石の曲率半径ρ0を基準にして、
Figure 0004002977
Figure 0004002977
【0047】
従って、F磁石、D磁石、ドリフトスペースの配置順序が決まれば、それぞれに1,2,...,nの要素番号(1セクターで要素数はn)をつけ、
Figure 0004002977
(iはi番目の要素)の境界条件を課すことで、1セクター終了時点で
Figure 0004002977
となるような
Figure 0004002977
を求めればよい。
【0048】
一方、スパイラルセクター型FFAGも上述のラジアルセクター型FFAGと同様の方法で求めることができる。この場合、F及びD磁石のスパイラル角をそれぞれξF及びξDと置けば、上述で定義されたr1及びr2側でのエッジ角をそれぞれ、
Figure 0004002977
と置き換え、エッジ行列に代入すればよい。ここで、MはF又はD磁石を表し、σF=1、σD=−1である。
【0049】
以上のような一般化された方式を使って、F及びD磁石の配置や順序を自由に設定することで、より複雑な構成も検討することができる。
【0050】
次に、線形光学近似による軌道計算について説明する。閉軌道が求まったところで、線形光学近似による軌道計算を行う。F磁石の行列は、上述したF磁石の行列の両端にエッジ収束の行列を掛け合わせることで求められる。
【0051】
水平成分:
Figure 0004002977
Figure 0004002977
垂直成分:
Figure 0004002977
Figure 0004002977
ここでε1、ε2はそれぞれF磁石の入り口及び出口でのエッジ角である。
【0052】
同様にD磁石の行列は、
水平成分:
Figure 0004002977
Figure 0004002977
垂直成分:
Figure 0004002977
Figure 0004002977
である。ここでε3、ε4はそれぞれF磁石の入り口及び出口でのエッジ角である。
【0053】
次にドリフト空間の行列は水平・垂直成分共に、
Figure 0004002977
と書ける。ここでsはドリフト空間内でのビームの軌道長である。
【0054】
上記行列を適当に組み合わせることでFFAG加速器の軌道計算を行うことができる。例えばFODOのラティスでは、1セルの行列は、
Figure 0004002977
を計算することにより求めることができる。
【0055】
ベータトロン振動の安定条件はM1cellのトレースから以下のように求めることができる。
Figure 0004002977
FODOの他(例えばFODOFO、DOFODO等)、全てのラティスに関しても上記閉軌道の計算や、行列の組み合わせを変えることで計算が可能である。
【0056】
次に位相の進みについて説明する。強収束シンクロトロン(及びFFAG加速器)におけるベータトロン振動はヒル(Hill)の方程式に従うことが知られている。
y"+g(s)y=0
ここでy"はyのs(軌道に沿った長さ)による微分を表す。g(s)はラティスによって決まる関数である。
【0057】
ヒルの方程式の一般解は、
Figure 0004002977
と書ける。式からベータトロン振動は関数√β(s)及びφ(s)によってそれぞれ振幅変調、位相変調された正弦波である。φ(s)は一周進むと2πだけ進む関数で、1セルあたりの長さをLとすると、
φ(s+L)−φ(s)=μ
である。ここで、μはベータトロン振動の位相の進みである。
【0058】
【発明の効果】
本発明により示されたFFAG加速器は上記のような第2以降の安定領域を動作点として用いるため、セル数をそのままにk値を高く設定できる。セル数を増やす必要がないため、粒子軌道の周長を増やさなくともビーム入出射に必要なドリフト空間が確保できる。また高いk値であることから軌道差Δrが非常に短くなり、その結果、主電磁石や真空チェンバー等の大幅な小型化が可能となる。また周長も短くなり、セクター電磁石も小型になるため加速器施設全体の建設費も大幅に縮小できる。また、単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進みを180度超えさせて運転することで、前記のセル数をそのままにk値を高く設定した状態を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラジアルセクター型FFAG加速器の概略図である。
【図2】ラジアルセクター型FFAG加速器におけるビーム軌道変化の様子を示す図である。
【図3】ラジアルセクター型FFAG加速器で用いられる磁石の断面図である。
【図4】スパイラルセクター型FFAG加速器の概略図である。
【図5】FDを単位セルとする強集束シンクロトロンに関するベータトロン振動の第1の安定領域を示す図である。
【図6】本発明に係るFFAG加速器におけるFDを単位セルとする磁石の配列を示す概略図である。
【図7】本発明に係るFFAG加速器におけるベータトロン振動の安定領域を示すグラフである。
【図8】本発明に係るFFAG加速器におけるセル数とk値と安定解の数の関係を示した図である。
【図9】本発明に係るFFAG加速器の簡素化された基本構成要素を示す図であり、(a)、(b)及び(c)はそれぞれドリフトスペース、集束磁石及び発散磁石を示す。
【符号の説明】
1 正の電磁石
2 磁石のない空間
3 負の電磁石
4 加速空洞
5 キッカー電磁石
6 入射ビーム
7 出射ビーム
21 入射時ビーム軌道
22 出射時ビーム軌道
31 鉄心
32 コイル
33 磁極間隙
B 磁場
H 磁場の強い領域
L 磁場の弱い領域
41 磁石
44 加速空洞
45 キッカー電磁石
46 入射ビーム
47 出射ビーム
A 第1の安定領域
B 第2の安定領域

Claims (5)

  1. B=B0(r/r0k (ここで、B及びB 0 はそれぞれ軌道半径r及びr 0 における磁束密度を表し、kは field index を表す)で表される磁場分布を持つセル数Nの電磁石を用いたFFAG加速器において、上記k値が原点(k=0)に近い第1の安定領域よりも高い第2又はそれ以降のベータトロン振動の安定領域を動作点とするFFAG加速器。
  2. 単位セルあたりのベータトロン振動の位相の進みを180度超えさせて運転することを特徴とする請求項1に記載のFFAG加速器。
  3. 上記k値に対してセル数Nを、k/N2>0.5の関係を満たす領域に設定することを特徴とする請求項1に記載のFFAG加速器。
  4. 上記電磁石は、ラジアルセクター型電磁石であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のFFAG加速器。
  5. 上記ラジアルセクター型電磁石は、FODO(ここで、F及びDはそれぞれ加速器の内側に偏向するセクター電磁石の磁極及び加速器の外側に偏向するセクター電磁石の磁極を表し、Oは電磁石のない空間を表す)の配列をもつことを特徴とする請求項4に記載のFFAG加速器。
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