JP4001205B2 - ハウスみかんの栽培方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、極早期に収穫・出荷する極早生みかん及び早生温州みかんを栽培するためのハウスみかんの栽培方法に係り、特に、ハウス内の地温および気温を制御して、前年の加温時期に出芽した予備枝及び果梗枝を翌年の結果母枝として利用することによって、収穫期を早めて希少価値を付加しうるハウスみかんの栽培方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、極早生みかん及び早生温州みかんを極早期に収穫・出荷するハウスみかんの栽培方法は、換気装置、散水装置、加温装置を備え、その内部気温を制御するための気温制御設備と、土壌に潅水をするための潅水設備と、を設けたハウスを使用するものであり、6月上旬に収穫・出荷した後に、みかん樹に剪定、施肥、潅水を行っていた。この剪定は、果梗枝を残し、前年の加温時に発芽した予備枝を切り落とすか、もしくは予備枝の先を1/3ほど切り落として、花が付かないようにして発芽させ、結果母枝となすというものである。そして、前記剪定後の前記果梗枝に夏芽が付き、これが成長して結果母枝となり、続く暑い時期に生殖成長する。続いて、秋冷を経て10月中旬〜11月上旬に、ハウス内の気温制御設備の加温装置を作動させてハウス内温度が昼間30度C以下、夜間24度C程度となるように加温を開始し、この結果、発芽、出蕾、開花、結実し、6月上旬〜中旬に成熟して収穫、出荷する、というものである(非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】
白石雅也著 「ミカンのハウス栽培」 社団法人農村漁村文化協会発行 1990年5月20日第4印刷発行 第18〜第20ページの記載および第18〜第19ページ第2図。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の極早期栽培方法は、具体的には図3(栽培工程図)に示すように、収穫後にみかん樹に剪定を行い(ステップ201)、その後ここに付いた夏芽が成長した結果母枝から新たに発芽させるもので、花芽を作るのに時間がかかり、早期に加温装置を作動させて前記発芽スタートすることができず、例えば、前記加温装置の作動は11月中旬(ステップ202)になってしまい、結果的に収穫(ステップ203)の時期も遅くなるという問題があった。そして、夏場の暑い時期に作業を行わなければならないので、労働条件がわるいという問題もあった。なお、収穫後に前記剪定を行うと、その後の発芽とともに花が付くが、この花からみかんを栽培すると、その年の12月〜翌年の1月ごろに出荷をするもの、すなわち路地ものと同じになって収益率が低くなってしまう。
【0005】
本発明は上記問題を解消することを課題とし、該課題を解決したハウスみかんの栽培方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、みかん樹根部周囲の地中を任意温度に冷却するための地中冷却設備と、換気装置、散水装置及び加温装置を備え、内部気温を制御するための気温制御設備と、土壌に潅水をするための潅水設備とを備えたハウスを利用するハウスみかんの栽培方法であって、春における収穫後あるいは収穫最中から、前記地中冷却設備を作動させて、みかん樹根部周囲の地温を10度C〜14度Cに120日〜150日間維持した後に、前記地中冷却設備を停止するとともに、潅水設備を作動させ、その後、夜間の外気温が22度C以下になった時期に気温制御設備を作動させて、夜間の内部温度を17度C〜25度Cに、また昼間の内部温度を25度C〜30度Cに維持することによって、発芽、出蕾、開花、結実、成熟させて、春の収穫に至ることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、地温制御設備を作動させる際に、ハウス内の地面に遮光・保冷用シートを設置することを特徴とするものである。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の構成に加えて、地温制御設備を停止した後の、外気温が22度Cより高い期間、ベンジルアミノプリン液剤をハウス内のみかん樹に散布することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を極早生温州みかんの栽培に適用した好適な実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。ここにおいて、図1はハウスの概略図、図2は栽培工程フロー図である。
【0010】
図1に示すように、極早生温州みかん栽培用のハウス1は、地温検知器(図示せず)からの地温情報をもとにオンオフして地温を制御するようになした地中冷却設備2と、換気装置(図示せず)、散水装置3及び加温装置4を備え、内部気温を制御するための気温制御設備5と、土壌に水を供給するための潅水設備6とを備えてなる。
【0011】
図1に示すように、地中冷却設備2は、ハウス1内の地中に、深さ約15〜20cm、間隔20〜25cmで、冷却水を流通するための通水パイプ7aを埋設する。この通水パイプ7aは、前記冷却水を冷却するためのチラー7bと、前記冷却水を循環させるための駆動モータ7cとに連結してある。また、前記地中冷却設備2を作動させた際は、ハウス1内の地面に遮光・保冷用シート(図示せず)を敷設して、地中冷却作用を補助する。また、前記チラー7bは、温度設定機能を有し、冷却水の温度を任意に設定可能である。
【0012】
上記気温制御設備5の換気装置(図示せず)は、天井部分を巻き取って開放するように構成し、また、散水装置3は、天井の内側に配置したスプリンクラー3aに連繋し、これによってみかん樹aに散水し気化熱を奪うことでみかん樹自体を冷房するものである。
【0013】
次に上記ハウス1を用いてみかん栽培を行うための栽培工程を図2によって詳細に説明する。
【0014】
(栽培工程1)
春(3月中旬〜5月上旬)に行われる収穫の後、あるいは収穫の最中から、地中冷却設備2を作動させ(ステップ101)て、ハウス1内の地温を10度C〜14度Cとなし、これを120日〜150日間維持する。
【0015】
前記収穫後は、みかん樹に余分な栄養を消費させないために施肥や潅水を行わない。また、上記期間のうち梅雨あけまでは、雨水をいれないために天井を開放しない。
【0016】
(栽培工程2)
ハウス1内の前記地温(10度C〜14度C)を120日〜150日間維持した後は、前記地中冷却設備2を停止し、ただちに潅水設備6を作動させて地面に給水する(ステップ102)。また、必要であれば施肥も行う。
【0017】
前記地温を120日〜150日間維持するのは、前年の予備枝(結果母枝)及び果梗枝(前記収穫した枝)の、暑い時期の発芽、出蕾を抑えておくためである。そして、この冷却期間には、花芽の分化が盛んに起こり、後述する加温後に多くの花がつくことになる。なお、前記地温は、好適には10度C〜14度Cであるが、最適には約13度Cであり、10度Cより低くすると、みかん樹根部に悪影響を与え、また、14度Cを越えると、発芽、出蕾してしまう。さらに、地温を前記約13度Cとするにはチラーで冷却する冷却水の水温を約6度Cにすればよい。
【0018】
(栽培工程3)
前記水補給を行った後は、ベンジルアミノプリン液剤(以下BA剤という)を散布し、夜間の外気温が22度C以下になった時期に、気温制御設備5の加温装置4や散水装置3を適宜作動させて、夜間のハウス内気温を17度C〜25度C、昼間のハウス内気温を25度C〜30度Cとする(ステップ103)。また必要ならば、このBA剤の散布前後に窒素分の多い葉面散布剤を散布する。
【0019】
上記のように加温装置4を用いたハウス1内気温制御を開始すると、これまで地温を下げることによって、発芽、出蕾が抑えられていた結果母枝(前年の予備枝及び果梗枝)が一斉に発芽、出蕾する。また、この加温装置4は、地中冷却設備2による地中冷却と潅水設備6による給水とを終えた後に直ちに作動させてもよいが、外気温がまだ高い時期(8月下旬〜9月上旬)なので、上記のBA剤の散布を行えば、加温と同等の効果があるうえ、前記一斉の発芽、出蕾を促し、かつ、地中冷却と給水の終了後の前記発芽、出蕾を1週間程度早めることが可能である。なお、この加温装置4は、夜間や昼間の気温が下がり過ぎないようにするために使用するもので、前述の地中冷却設備2を駆動しているときに使用することはない。また、前記ハウス内気温は、上記の夜間17度C〜25度C、昼間25度C〜30度Cの範囲から外れると、みかん樹の生理的成長が狂いみかんの成熟に悪影響を与える。さらに、加温前の地中冷却期間においては、新芽が少ないので発根もなく、地中からの養分の吸収が悪い状態であるため、みかんの味はよいが、収穫量は減少する。そのため、前述のように、葉面散布剤を散布して、新葉を増加させ養分の吸収を高める。
【0020】
(栽培工程4)
前記ステップ103の後(気温制御開始後)に、ハウス1内の前記気温(夜間17度C〜25度C、昼間25度C〜30度C)を200日間前後維持すると、この期間に、前年の予備枝及び果梗枝から成長した結果母枝が一斉に発芽し、萌芽、出蕾、開花、結実し、翌年の3月下旬にみかんとして成熟する。そして、前記成熟後は適宜収穫、出荷する(ステップ104)。
【0021】
【表1】
Figure 0004001205
【0022】
表1は、気温制御設備5を適宜作動させ、加温後のハウス1内設定気温の実施例を示すもので、1〜7日は萌芽期、8〜30日は発芽及び出蕾、31〜60日は結実期、61〜131日は肥大期、151〜180日は肥大期及び着色(みかん色)初期、181〜200日は着色完了及び成熟期である。そして、上記温度制御開始後は、昼間の温度は30度Cを越えないように、天井の開放あるいはスプリンクラー7bからの散水で気化熱を奪うことにより気温を下げたり、夜間に17度Cを下回らないように加温装置4を作動させて制御する。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、適用するみかんは温州みかんとは異なるみかんであってもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、ハウス内みかん樹の、主に前年の予備枝に対して、収穫後あるいは収穫の最中に、剪定を行うことなく、地温冷却設備を作動して地温を10度C〜14度Cに冷却し、この冷却期間に、花芽の分化を盛んに起こさせ、加温後に多くの花がつくようになすとともに、一斉に発芽、出蕾させ、開花、結実、成熟させうるので、希少価値を有し高値で販売可能なみかんの極早期の収穫が可能であるうえ、出荷時期が早いため、害虫(例えば、スリップス)の被害を受けにくいほか、暑い時期の作業が少なく、労力配分が容易であり、また、遅い時期に収穫する従来のみかんよりも浮皮も少なく高品質のみかんを得られるという効果を奏する。
【0025】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、遮光・保冷用シートの設置によって、地面への直射日光を遮り、かつ、地面からの冷気の放射を防止するので、地中冷却設備の燃料消費を低減することができるという効果を奏する。
【0026】
さらに、請求項3に記載の本発明は、地中冷却設備を停止した後の、外気温が22度Cより高い期間、ベンジルアミノプリン液剤をみかん樹に散布することによって、直ちに加温装置を作動させる必要がなく、該加温装置の電気消費を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハウスの概略図。
【図2】栽培工程フロー図。
【図3】従来例の栽培工程フロー図。
【符号の説明】
a みかん樹
1 ハウス
2 地中冷却設備
3 散水装置
4 加温装置
5 気温制御設備
6 潅水設備
7a 通水パイプ
7b チラー
7c 駆動モータ

Claims (3)

  1. みかん樹根部周囲の地中を任意温度に冷却するための地中冷却設備と、換気装置、散水装置及び加温装置を備え、内部気温を制御するための気温制御設備と、土壌に潅水をするための潅水設備とを備えたハウスを利用するハウスみかんの栽培方法であって、春における収穫後あるいは収穫最中から、前記地中冷却設備を作動させて、みかん樹根部周囲の地温を10度C〜14度Cに120日〜150日間維持した後に、前記地中冷却設備を停止するとともに、潅水設備を作動させ、その後、夜間の外気温が22度C以下になった時期に気温制御設備を作動させて、夜間の内部温度を17度C〜25度Cに、また昼間の内部温度を25度C〜30度Cに維持することによって、発芽、出蕾、開花、結実、成熟させて、春の収穫に至ることを特徴とするハウスみかんの栽培方法。
  2. 地中冷却設備を作動させる際に、ハウス内の地面に遮光・保冷用シートを設置することを特徴とする請求項1に記載のハウスみかんの栽培方法。
  3. 地中冷却設備を停止した後の、外気温が22度Cより高い期間、ベンジルアミノプリン液剤をみかん樹に散布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハウスみかんの栽培方法。
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