JP3994020B2 - インフレータブル構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレータブル構造物に関し、特に、折り畳まれた状態で所定の収納部に収納され、宇宙空間または地上で膨張展開可能なインフレータブル構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の航空宇宙関連技術の発達に伴い、大型アンテナ、サンシールド、集光鏡などの大型構造物を宇宙空間で構築するミッションが遂行されている。この種大型構造物は、通常、地上で小さく折り畳まれた状態でロケットの収納部に収納され、打ち上げられた後に宇宙空間で膨張展開させるものであるため、種々の展開方式が採用されている。
【0003】
従来の展開方式としては、複数の立体トラスをアクチュエータによって展開する、いわゆる「展開トラス機構」が採用されている。しかし、この展開トラス機構は、トラス部材が自在に折り畳めない上に、これらトラス部材を接続するための各種機構が必要となって構造が複雑となる。このため、構造物全体の重量が大きくなり、製造コストも嵩むわりには展開機構の信頼性が低いという問題があった。
【0004】
そこで、所定の複合材で折畳可能な袋体を構成し、宇宙空間でこの袋体を内部圧力によって風船のように膨張展開させるインフレータブル構造物が提案され、実用化されつつある。従来、このインフレータブル構造物の袋体は、熱硬化(または熱可塑)性樹脂製の複合材で構成される成形層と、この成形層の内側および外側を被覆するフィルム層とから構成されていた。そして、宇宙空間でこの袋体を膨張展開させた後に、成形層を加熱して硬化させて、所望の立体形状の構造物を得ていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このインフレータブル構造物には、袋体を展開させるためのガス供給機構が設けられている。従来のガス供給機構は、図9に示すようにボンベ200、バルブ300および配管400から構成されている。そして、ボンベ200に蓄えられたガスを、バルブ300で供給量を制御しながら配管400を介して袋体100内部に供給することにより、袋体100全体を一度に展開させていた。
【0006】
しかし、ガス供給機構によって袋体全体を一度に展開させる従来の展開方式を採用すると、以下のような問題が発生するおそれがある。
【0007】
すなわち、展開前の袋体100(図10(a)参照)の内部にガスを供給した結果、袋体100の一部が所定の収納部500の内壁510に接触し(図10(b)参照)、袋体100の一部が破損するおそれがある。また、袋体100の折畳方法や収納形態によっては、袋体100の全部または一部が所定の収納部500から出ず、袋体100の展開が妨げられるおそれがある(図10(c)参照)。そして、これらのような問題はインフレータブル構造物の大型化に伴って顕著になることが考えられる。
【0008】
また、ガス供給機構によって袋体全体を一度に展開させる間や、展開した袋体の成形層を加熱して硬化させるまでの間に、ミッションを終了した人工衛星やロケットなどの廃棄物(スペースデブリ)や隕石などが、袋体に衝突する場合がある。このような事態が発生すると、展開に用いたガスが袋体から漏出して、インフレータブル構造物全体が機能不全に陥ってしまうという問題が考えられる。かかる問題は、将来のインフレータブル構造物の大型化(全長数km)を著しく妨げる可能性がある。
【0009】
また、従来のガス供給機構(図9参照)は、ボンベ200やバルブ300を備えるため、小型化に限界がある。このため、インフレータブル構造物を超軽量小型衛星に適用する場合には、袋体に対してガス供給機構の重量や体積が相対的に大きくなり、インフレータブル構造物の軽量化、小型化を阻害することとなっていた。
【0010】
本発明の課題は、展開時における袋体の破損を未然に防止して確実に展開状態を実現することができ、かつ、軽量化・小型化が可能なインフレータブル構造物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、内外のフィルム層間に繊維強化樹脂製の硬化成形層が設けられてなる折畳可能な袋体と、前記袋体を膨張展開させる展開手段と、を有するインフレータブル構造物において、前記袋体は、その内部が複数の閉鎖部に区画されてなるとともに、区画された各閉鎖部を展開させる展開手段と、前記展開手段を各々独立に制御する制御手段と、を備え、例えば図5および図6に示すように、前記閉鎖部は、その内部に前記展開手段を備えるとともに、前記展開手段によって展開する展開部を有し、前記展開手段は、前記展開部に供給される気体を充填した気体充填部と、前記展開部と前記気体充填部との間に設けられた熱可塑性樹脂製のシール部と、前記シール部を加熱溶融する加熱手段と、を備えるとともに、前記加熱手段により前記シール部を加熱して溶融させて形成した貫通孔を介して、前記気体充填部に充填された気体を前記展開部に供給して展開させることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、袋体の内部が複数の閉鎖部に区画されてなり、これら区画された閉鎖部を、制御手段の制御によって展開手段で各々独立に展開させることができる。従って、袋体全体を一度に展開させていた従来の展開方式を採用した場合の種々の問題を、一挙に解決することができる。
【0013】
具体的には、袋体の展開時に、袋体の一部が所定の収納部に接触したりして破損しても、その部分の破損のみに止めておくことができ、残りの部分で展開させることができる。また、袋体の一端側から順次展開させることにより、袋体の全部または一部が所定の収納部から出ず展開が妨げられるのを防ぐことができ、完全な展開状態を実現することができる。さらに、袋体の区画された閉鎖部毎に展開硬化させることができるので、例えば、展開硬化させた閉鎖部にスペースデブリや隕石などが衝突した場合でも、インフレータブル構造物全体が機能不全に陥ることがない。
【0015】
請求項1記載の発明によれば、閉鎖部の内部に展開手段が設けられており、この展開手段は、加熱手段でのシール部の加熱溶融により形成された貫通孔を介して、気体充填部に充填された気体を展開部に供給して展開させるものであるため、ボンベやバルブを備える従来の展開手段(ガス供給機構)と比較すると、格段の軽量化・小型化が可能となる。従って、インフレータブル構造物自体の軽量化・小型化を実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
本実施の形態に係るインフレータブル構造物1は、図1に示すように、宇宙空間で構築される大型平面アンテナ60の円環として、または、大型のサンシールド70の骨格として使用されるものである。インフレータブル構造物1は、環状体や筒状体へと展開可能な袋体10と、この袋体10に所定のガスを供給して展開させる展開手段と、この展開手段を制御する制御手段と、を備える。
【0018】
まず、袋体10の構成について説明する。図2は、展開させた状態の袋体10の断面図(図1のII−II部分の断面図)である。図2に示すように、この袋体10は、繊維状の熱可塑性樹脂と強化繊維とを織り合わせて構成した硬化成形層11と、この硬化成形層11を包むようにその外側に設けられた外側フィルム層12と、硬化成形層11に囲まれてその内側に設けられた内側フィルム層13とから構成される。
【0019】
硬化成形層11は、後述する展開手段による袋体10の展開後に加熱され、硬化成形される層であって、展開後のインフレータブル構造物1の形状を保持する機能を果たす。
【0020】
硬化成形層11は、繊維状の熱可塑性樹脂と強化繊維とを織り合わせてなる織物(以下、「熱可塑型織物」という)1枚で、または、この熱可塑型織物を複数枚積層して構成される。繊維状の熱可塑性樹脂の径は数μm程度とし、これらを数千本束にしたものを使用する。このように熱可塑性樹脂を繊維状にすると、繊維径が小さいために繊維状の熱可塑性樹脂1本1本がきわめて高い柔軟性を有する。また、繊維状の熱可塑性樹脂同士が接着または密着していないため、これらを束ねても高い柔軟性を維持することができる。
【0021】
繊維状の熱可塑性樹脂の種類としては、ポリアミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリプロピレン、ポリエーテルイミドなどを挙げることができ、本実施の形態では、繊維状の熱可塑性樹脂として、「TEXXES」(商品名:日東紡績(株)製)を使用している。また、強化繊維の種類としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、各種金属繊維などを挙げることができる。
【0022】
硬化成形層11は、平面状とされたものの端部同士を10mm程度重ねて繋ぎ合わせて袋体10の一部とする。硬化成形層11の端部同士を繋ぐ手段としては、耐熱性に優れるポリイミドフィルムテープによる接着や、ハンダゴテ等による融着などを挙げることができる。
【0023】
硬化成形層11は、前記したように熱可塑型織物を複数枚積層して構成した場合でも、収納性が低下することがない。すなわち、繊維状の熱可塑性樹脂自体が、前記したように高い柔軟性を有することに加え、熱可塑型織物を複数枚積層してもこれら熱可塑型織物同士が接着または密着し難いため、折り曲げの際に繊維間ですべり、高い柔軟性を維持することができる。
【0024】
外側フィルム層12は、硬化成形層11の外側を被覆して保護するという機能を果たす。この外側フィルム層12は、宇宙空間の過酷な温度環境や硬化成形層11を加熱する際の高温に耐え得る高い耐熱性と、袋体10を膨張展開させた際に内側から加えられる圧力に耐え得る高い耐圧性とを有する材料で作製される。このような特性を有する材料としては、FEP(フルオロエチレンプロピレン)やポリイミドなどを挙げることができる。
【0025】
外側フィルム層12は、硬化成形層11と同様に、平面状とされたものの端部同士を10mm程度重ねて繋ぎ合わせて、硬化成形層11の外側に配置されて袋体10の一部とされる。外側フィルム層12の端部同士を繋ぐ手段としては、熱融着、強化繊維による縫い合わせ、耐熱性に優れたテープによる接着などを挙げることができる。なお、この外側フィルム層12に、熱可塑性樹脂が流出しない程度の微小な孔を複数個設けて、通気性を確保しておく。
【0026】
内側フィルム層13は、硬化成形層11の内側に設けられるものであり、気密性を有し、内側から加えられる圧力を硬化成形層11に伝えて膨張展開させるという機能を果たす。この内側フィルム層13は、硬化成形層11を加熱成形する際の高温に耐え得る高い耐熱性を有する材料で作製される。このような特性を有する材料としては、FEP(フルオロエチレンプロピレン)やポリイミドなどを挙げることができる。
【0027】
内側フィルム層13は、硬化成形層11および外側フィルム層12と同様に、平面状とされたものの端部同士を10mm程度重ねて繋ぎ合わせて、硬化成形層11の内側に配置されて袋体10の一部とされる。内側フィルム層13の端部同士を繋ぐ手段としては、高い気密性を達成することのできる熱融着が好ましい。
【0028】
内側フィルム層13、硬化成形層11および外側フィルム層12は、内側からこの順に配置されて袋体10を構成する。ここで、規制のない状態で膨張させた際の内側フィルム層13の(円形)断面の直径を、外側フィルム層12の(円形)断面の直径よりも若干大きくしておく。また、袋体10が筒状体の場合には、規制のない状態で膨張させた際の内側フィルム層13の筒状体長さ方向の長さを、外側フィルム層12の長さよりも若干長くしておく。このように内側フィルム層13と外側フィルム層12との断面の直径および長さに寸法差を設けることによって、内側から加えられる圧力を硬化成形層11に充分に伝達することができる。
【0029】
また、硬化成形層11と外側フィルム層12との間には、(図示していない)フィルム状のヒータが設けられている。折り畳まれた状態の袋体10を、後述する展開手段によって展開させ、断面円形の環状体または筒状体とした後に、このフィルム状のヒータによって硬化成形層11を加熱して硬化させることができる。
【0030】
この際には、フィルム状のヒータによって硬化成形層11の熱可塑型織物内の熱可塑性樹脂を溶融させて強化繊維の間に浸透させることができ、この状態から自然冷却させ、熱可塑性樹脂を強化繊維の間に浸透した状態で固化させることができる。この結果、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂が強化繊維によって補強されて、きわめて強度および剛性に優れた構造物が構築されることとなる。
【0031】
本実施の形態においては、図3に示すように、袋体10が複数の閉鎖部10a、10b、10c、・・・に区画されている。そして、区画された各閉鎖部を、展開手段によって各々独立に展開させることができる。以下、この展開手段について説明する。
【0032】
展開手段は、不活性ガスが充填されたボンベ20a(20b、20c、・・・)と、このボンベ20a(20b、20c、・・・)から閉鎖部10a(10b、10c、・・・)の内部へ供給される不活性ガスの流量や圧力を調節するバルブ30a(30b、30c、・・・)と、不活性ガスの流路となる配管40a(40b、40c、・・・)と、から構成される。
【0033】
ボンベ20a(20b、20c、・・・)から閉鎖部10a(10b、10c、・・・)の内部へと供給する不活性ガスの圧力は、硬化成形層11を構成する熱可塑性樹脂の種類や、熱可塑型織物の織り方などに応じて、最適な値を試験によって適宜設定する。例えば、10kPa〜20kPaを目安として設定することができる。
【0034】
展開手段のバルブ30a、30b、30c、・・・の開度は、図示していない制御手段によって、各々独立して制御される。すなわち、不活性ガスの流量、圧力、開かれる順番等は、制御手段によるバルブ30a、30b、30c、・・・の開度制御によって、各々適切な値に調節されることとなる。
【0035】
次に、本実施の形態に係るインフレータブル構造物1の展開動作を、図4を用いて説明する。
【0036】
まず、インフレータブル構造物1は、折り畳まれて所定の収納部50に収納された状態で、宇宙空間に打ち上げられる。本実施の形態においては、図4(a)に示すように、各閉鎖部の繋ぎ目で折り畳むようにしている。宇宙空間において所定の展開時期が到来したら、制御手段によって、閉鎖部10aを展開させる展開手段のバルブ30aの開度を制御して、閉鎖部10aを展開させる。次いで、制御手段によって、閉鎖部10bを展開させる展開手段のバルブ30bの開度を制御して、閉鎖部10bを展開させる(図4(b)参照)。
【0037】
以下同様に、制御手段および展開手段によって閉鎖部10c、閉鎖部10d、・・・を順次展開させ(図4(c)参照)、最終的に所定の形状(環状体または筒状体)とする。その後、フィルム状のヒータによって硬化成形層11を加熱して硬化させて、所定の構造物の一部(宇宙空間で構築される大型平面アンテナ60の円環、または、大型のサンシールド70の骨格)とする。
【0038】
本実施の形態に係るインフレータブル構造物1においては、袋体10が複数の閉鎖部10a、10b、10c、・・・に区画されており、これら区画された閉鎖部10a、10b、10c、・・・を、制御手段および展開手段(ボンベ、バルブおよび配管)によって各々独立に展開させることができる。従って、袋体10全体を一度に展開させていた従来の展開方式を採用した場合の種々の問題を、一挙に解決することができる。
【0039】
具体的には、袋体10の展開時に、袋体10の一部が収納部50の内壁に接触したりして破損するのを防ぐことができる。また、袋体10の全部または一部が収納部50から出ず展開が妨げられるのを防ぐことができる。さらに、袋体10の区画された閉鎖部10a、10b、10c、・・・を独立に展開硬化させることができるので、展開硬化させた何れかの閉鎖部にスペースデブリや隕石などが衝突した場合でも、インフレータブル構造物1全体が機能不全に陥ることがない。
【0040】
[第2の実施の形態]
本実施の形態に係るインフレータブル構造物1Aは、第1の実施の形態に係るインフレータブル構造物1において、展開手段の構成を変更したものである。
【0041】
まず、本実施の形態に係るインフレータブル構造物1Aの展開手段の構成を、図5を用いて説明する。本実施の形態においては、袋体の閉鎖部10A(10B)内に、展開手段20A(20B)が設けられている。そして、閉鎖部10A(10B)のうち展開手段20A(20B)を除く部分は、展開手段20A(20B)によって展開する展開部14A(14B)とされている。展開手段20Aと20Bとは同一の構成を有するので、以下、展開手段20Aについてのみ説明する。
【0042】
展開手段20Aは、展開部14Aに供給される不活性ガスを充填したガス充填カプセル(気体充填部)21Aと、このガス充填カプセル21Aと展開部14Aとの間に設けられた熱可塑性樹脂製のシール部22Aと、このシール部22Aを加熱して溶融させる電熱線(加熱手段)23Aと、を備える。
【0043】
気体充填部であるガス充填カプセル21Aには、展開部14Aに供給される不活性ガスが充填されている。ガス充填カプセル21Aは、充填された不活性ガスの圧力に耐え得る強度を有する材料、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軽量で高強度のCFRPなどで、あらかじめ製作される。また、ガス充填カプセル21Aの形状は、閉鎖部10A内の損傷を防ぐ目的で、曲面を有する形状とするのが好ましい。本実施の形態では、両端を半球状に形成している(図5参照)。
【0044】
ガス充填カプセル21A内に充填される不活性ガスの圧力(内圧)は、展開部14Aの展開に要する圧力と、展開部14Aに対するガス充填カプセル21Aの体積比を勘案して、適宜設定することができる。本実施の形態においては、展開部14Aの展開に要する圧力が10kPaであり、展開部14Aに対するガス充填カプセル21Aの体積比が1/10であるので、ガス充填カプセル21A内の不活性ガスの圧力(内圧)を100kPaに設定している。ガス充填カプセル21A内への不活性ガスの充填作業は、大気中で容易に行うことができ、内圧の設定も容易である。
【0045】
ガス充填カプセル21Aの展開部14A側の半球状部には、貫通孔21Aaが設けられている。貫通孔21Aaは、後述する熱可塑性樹脂製のシール部22Aでシールされる。また、貫通孔21Aaは、シール部22Aが後述する電熱線23Aで加熱されて溶融することによってその一部または全部が開かれる。この結果、ガス充填カプセル21A内に充填された不活性ガスは、この開かれた貫通孔21Aaを介して、展開部14A側に供給される。すなわち、開かれた貫通孔21Aaはガス供給口としての機能を果たす。
【0046】
熱可塑性樹脂製のシール部22Aは、前記したように、ガス充填カプセル21Aの貫通孔21Aaをシールして、ガス充填カプセル21A内に充填された不活性ガスの漏れを防ぐという機能を果たす。また、このシール部22Aは、後述する電熱線23Aによって加熱されて溶融するものである。このシール部22Aの溶融により、貫通孔21Aaの一部または全部が開かれて、ガス充填カプセル21A内に充填された不活性ガスが展開部14A側へと供給されることとなる。
【0047】
シール部22Aの材料となる熱可塑性樹脂の種類は、ガス充填カプセル21A内に充填される不活性ガスの圧力(内圧)に耐え得る強度を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリアミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリプロピレン、ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。
【0048】
加熱手段である電熱線23Aは、シール部22Aを加熱して溶融させるという機能を果たすものであり、シール部22Aの一部に取り付けられる(図5参照)。電熱線23Aとしては、通電して発熱可能であればいかなるものでもよいが、ニクロム線が好適である。この電熱線23Aの発熱のタイミングや発熱温度は、図示されていない制御手段によって制御される。
【0049】
図6は、展開手段20A近傍の拡大図である。本実施の形態における袋体は、硬化成形層11A、外側フィルム層12Aおよび内側フィルム層13Aから構成されている。展開手段20Aのガス充填カプセル21Aは、図6に示すように、内側フィルム層13Aの内側に接着剤等によって固着されている。そして、このガス充填カプセル21Aによって、閉鎖部10Aと、この閉鎖部10Aに隣接する閉鎖部10Cとが区画されることとなる。なお、硬化成形層11A、外側フィルム層12Aおよび内側フィルム層13Aは、第1の実施の形態と実質的に同一であるので、説明を省略する。
【0050】
次に、本実施の形態における展開手段20Aによって閉鎖部10A(展開部14A)を展開させる手順を説明する。まず、加熱手段である電熱線23Aによってシール部22Aを加熱して溶融させることによって、貫通孔21Aaの一部または全部を開く。そして、この貫通孔21Aaを介して、気体充填部であるガス充填カプセル21Aに充填された不活性ガスを展開部14Aに供給する。この結果、展開部14Aが展開することとなる。
【0051】
このため、ボンベやバルブを備える従来のガス供給機構と比較すると、展開手段の格段の軽量化・小型化が可能となる。従って、インフレータブル構造物自体の軽量化・小型化を実現することができる。本実施の形態に係るインフレータブル構造物1Aは、軽量化・小型化が可能であるため、超小型宇宙構造物への搭載に適している。例えば、図7に示したような重量10kgで各辺50cmの直方体の超小型衛星80に設けられた太陽電池パネル81の展開部82を、本実施の形態に係るインフレータブル構造物1Aで構成することができる。
【0052】
また、以上の実施の形態においては、インフレータブル構造物1(1A)の袋体を構成する硬化成形層を、熱可塑性樹脂製の複合材(熱可塑型織物)で構成した例を示したが、熱硬化型プリプレグ(未硬化状態にある熱硬化性樹脂を所定の強化繊維に含浸させた中間基材)などの熱硬化性樹脂製の複合材で、硬化成形層を構成することもできる。
【0053】
なお、袋体全体を一度に展開させる従来の展開方式を採用したインフレータブル構造物において、図9に示すような1本の柱状体を構築した場合には、全体が展開を終了するまでに袋体にスペースデブリや隕石などが衝突すると、インフレータブル構造物全体が機能不全に陥ってしまう。これに対し、以上の実施の形態に係るインフレータブル構造物1(1A)は、閉鎖部毎に独立に展開硬化させることができるため、展開硬化させた何れかの閉鎖部にスペースデブリや隕石などが衝突した場合でも、インフレータブル構造物全体が機能不全に陥ることがないことは前記したとおりである。
【0054】
さらに、以上の実施の形態に係る柱状のインフレータブル構造物1(1A)を4本使用してこれらをリンク91で接続し、図8に示すような冗長構造物90を構築することもできる。このような冗長構造物90を構築すると、仮に1本のインフレータブル構造物1(1A)にスペースデブリや隕石などが衝突した場合でも、残り3本のインフレータブル構造物1(1A)で補うことができるので、構造物の信頼性が大幅に向上することとなる。
【0055】
また、以上の実施の形態に係るインフレータブル構造物1(1A)は、宇宙空間の大型または小型の構造物の構築に採用されるものであるが、これに限らず、地上における災害時の簡易住宅の構築に採用することもできる。
【0056】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、袋体の内部が複数の閉鎖部に区画されてなり、これら区画された閉鎖部を、制御手段の制御によって展開手段で各々独立に展開させることができるので、展開時における袋体の破損を未然に防止しつつ完全な展開状態を実現することができる。また、区画された閉鎖部毎に袋体を展開硬化させることができるので、例えば、展開硬化させた閉鎖部にスペースデブリや隕石などが衝突した場合でも、インフレータブル構造物全体が機能不全に陥ることがない。
【0057】
請求項1記載の発明によれば、閉鎖部の内部に展開手段が設けられており、この展開手段は、加熱手段でのシール部の加熱溶融により形成された貫通孔を介して、気体充填部に充填された気体を展開部に供給して展開させるものであるので、展開手段の格段の軽量化・小型化を図ることができる。従って、インフレータブル構造物自体の軽量化・小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るインフレータブル構造物の使用態様を説明するための説明図である。
【図2】図1のII−II部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るインフレータブル構造物の展開手段を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るインフレータブル構造物の展開動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るインフレータブル構造物の展開手段を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るインフレータブル構造物の展開手段近傍の拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るインフレータブル構造物を超小型構造物に適用した状態を示す概念図である。
【図8】本発明に係るインフレータブル構造物を用いて冗長構造物を構築した状態を示す概念図である。
【図9】従来のインフレータブル構造物の展開手段を説明するための説明図である。
【図10】従来のインフレータブル構造物の展開動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1、1A インフレータブル構造物
10 袋体
10a〜10e 閉鎖部
10A〜10C 閉鎖部
11、11A 成形層
12、12A 外側フィルム層
13、13A 内側フィルム層
20a〜20c ボンベ
20A、20B 展開機構
21A ガス充填カプセル
21Aa 貫通孔
22A シール部
23A 電熱線
30a〜30c バルブ
40a〜40c 配管
50 収納部
60 平面アンテナ
70 サンシールド
80 超小型衛星
81 太陽電池パネル
82 展開部
90 冗長構造物
91 リンク
100 袋体
200 ボンベ
300 バルブ
400 配管
500 収納部
510 内壁
Claims (1)
- 内外のフィルム層間に繊維強化樹脂製の硬化成形層が設けられてなる折畳可能な袋体と、前記袋体を膨張展開させる展開手段と、を有するインフレータブル構造物において、
前記袋体は、
その内部が複数の閉鎖部に区画されてなるとともに、
区画された各閉鎖部を展開させる展開手段と、
前記展開手段を各々独立に制御する制御手段と、を備え、
前記閉鎖部は、
その内部に前記展開手段を備えるとともに、前記展開手段によって展開する展開部を有し、
前記展開手段は、
前記展開部に供給される気体を充填した気体充填部と、
前記展開部と前記気体充填部との間に設けられた熱可塑性樹脂製のシール部と、
前記シール部を加熱して溶融させる加熱手段と、を備えるとともに、
前記加熱手段により前記シール部を加熱して溶融させて形成した貫通孔を介して、前記気体充填部に充填された気体を前記展開部に供給して展開させることを特徴とするインフレータブル構造物。
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