図1から図18は本発明を筒内噴射式内燃機関に適用した場合の第1実施例を示しており、まず初めに図1から図10を参照してこの筒内噴射式内燃機関の基本的な作動について説明する。
図1から図5を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固締されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4間に形成された燃焼室、6aは第1吸気弁、6bは第2吸気弁、7aは第1吸気ポート、7bは第2吸気ポート、8は一対の排気弁、9は一対の排気ポートを夫々示す。図3に示されるように第1吸気ポート7aはヘリカル型吸気ポートからなり、第2吸気ポート7bはほぼまっすぐに延びるストレートポートからなる。更に図3に示されるようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火栓10が配置され、第1吸気弁6aおよび第2吸気弁6b間のシンリダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。一方、図4および図5に示されるようにピストン3の頂面上にはキャビティ3aが形成される。このキャビティ3aは燃料噴射弁11の下方から点火栓10の下方まで延びるほぼ円形の輪郭形状を有する浅皿部12と、浅皿部12の中央部に形成された半球形状とをなす深皿部13からなる。また、点火栓10下方の浅皿部12と深皿部13との接続部にほぼ球形状をなす凹部14が形成される。
図1から図3に示されるように各気筒の第1吸気ポート7aおよび第2吸気ポート7bは夫々各吸気枝管15内に形成された第1吸気通路15aおよび第2吸気通路15bを介してサージタンク16内に連結され、各第2吸気通路15b内には夫々吸気制御弁17が配置される。これらの吸気制御弁17は共通のシャフト18を介して例えばステップモータからなるアクチュエータ19に連結される。このステップモータ19は電子制御ユニット30の出力信号に基いて制御される。サージタンク16は吸気ダクト20を介してエアクリーナ21に連結され、吸気ダクト20内には例えばステップモータ22によって駆動されるスロットル弁23が配置される。このステップモータ22も電子制御ユニット30の出力信号に基いて制御される。
一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド24に連結され、この排気マニホルド24は排気管25を介してNOx 吸収剤26を内蔵したケーシング27に連結される。排気マニホルド24とサージタンク16とは再循環排気ガス(以下EGRガスという)通路28を介して互いに連結され、このEGRガス通路28内にはEGRガス量を制御するEGR弁29が配置される。このEGR弁29は電子制御ユニット30の出力信号に基いて制御される。EGR弁29が閉弁せしめられているときには空気のみが吸気ポート7a,7bを介して燃焼室5内に供給され、EGR弁29が開弁せしめられると空気およびEGRガスが吸気ポート7a,7bを介して燃焼室5内に供給される。
電子制御ユニット30はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス31を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)32、ROM(リードオンリメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧はAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。上死点センサ42は例えば1番気筒が吸気上死点に達したときに出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート35に入力される。クランク角センサ43は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート35に入力される。CPU34では上死点センサ42の出力パルスとクランク角センサ43の出力パルスから現在のクランク角が計算され、クランク角センサ43の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して各燃料噴射弁11および各ステップモータ19,22に接続される。
図1から図5に示す実施例では燃料噴射弁11が燃料に旋回力を与えつつ噴射するスワール弁からなり、この燃料噴射弁11からは図3および図4においてFで示されるように燃料が円錐状に噴射される。図6はこの燃料噴射弁11からの燃料噴射量と燃料噴射時期とを示しており、図7は図6と同じ燃料噴射量に加えてスロットル弁23の開度と、EGR弁29の開度と、燃焼室5内における平均空燃比A/Fを示している。なお、図6および図7においてLはアクセルペダル40の踏込み量を示している。図6からわかるようにアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さい機関低負荷運転時には圧縮行程末期に噴射量Q2 だけ燃料噴射が行われる。一方、アクセルペダル40の踏込み量LがL1 とL2 の間の機関中負荷運転時には吸気行程中に噴射量Q1 だけ燃料噴射が行われ、圧縮行程末期に噴射量Q2 だけ燃料が噴射される。即ち、機関中負荷運転時には吸気行程と圧縮行程末期の2回に分けて燃料噴射が行われる。また、アルセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも大きい機関高負荷運転時には吸気行程中に噴射量Q1 だけ燃料が噴射される。なお、図6においてθS1およびθE1は吸気行程中に行われる燃料噴射Q1 の噴射開始時期と噴射完了時期を夫々示しており、θS2とθE2は圧縮行程末期に行われる燃料噴射Q2 の噴射開始時期と噴射完了時期を夫々示している。
一方、図7に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも小さい機関低中負荷運転時にはスロットル弁23の開度はかなり小さく、またこのときスロットル弁23の開度はアクセルペダル40の踏込み量Lが小さくなるほど小さくなる。一方、アルセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも大きくなるとスロットル弁23の開度は急速に大きくなって全開する。また、アクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも小さい機関低中負荷運転時にはEGR弁29の開度はかなり大きく、アクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも大きくなるとEGR弁29の開度は急速に小さくなって全開する。燃焼室5内における平均空燃比は高負荷運転領域(L>L2 )の或る時点L0 においてリーンからリッチに切換わる。即ち、アクセルペダル40の踏込み量LがL0 よりも小さい範囲では平均空燃比A/Fはリーンとなり、またこのときアクセルペダル40の踏込み量Lが小さくなるほど平均空燃比A/Fはリーンとなる。一方、アクセルペダル40の踏込み量LがL0 よりも大きくなると平均空燃比A/Fはリッチとなる。
図8は吸気制御弁17の開度とアクセルペダル40の踏込み量Lとの関係を示している。図8に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さい機関低負荷運転時には吸気制御弁17は全閉状態に保持されており、アクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも大きくなると吸気制御弁17はアクセルペダル40の踏込み量Lが大きくなるにつれて開弁せしめられる。吸気制御弁17が全閉せしめられると吸入空気はヘリカル状をなす第1吸気ポート7aを介して旋回しつつ燃焼室5内に流入し、斯くして燃焼室5内には図3において矢印Sで示すような強力な旋回流が発生せしめられる。一方、吸気制御弁17が開弁すると第2吸気ポート7bからも吸入空気が燃焼室5内に流入する。
次に図9および図10を参照しつつ燃焼方法について説明する。なお、図9は機関低負荷運転時における燃焼方法を示しており、図10は機関中負荷運転時における燃焼方法を示している。
図6に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さい機関負荷運転時には圧縮行程末期に燃料が噴射される。このとき噴射燃料Fは図9(A)および(B)に示されるように深皿部13の周壁面に衝突する。このときの噴射量Q2 は図6に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量Lが大きくなるにつれて増大する。深皿部13の周壁面に衝突した燃料は旋回流Sによって気化せしめられつつ拡散され、それによって図9(C)に示されるように凹部14および深皿部13内に、即ちキャビティ3a内に可燃混合気Gが形成される。このとき凹部14および深皿部13以外の燃焼室5内は空気とEGRガスで満たされている。次いで混合気Gが点火栓10によって着火せしめられる。
一方、図6においてアクセルペダル40の踏込み量LがL1 とL2 の間である機関中負荷運転時には吸気行程中に第1回目の燃料噴射Q1 が行われ、次いで圧縮行程末期に第2回目の燃料噴射Q2 が行われる。即ち、まず初めに図10(A)に示されるように吸気行程初期にキャビティ3a内に向けて燃料噴射Fが行われ、この噴射燃料によって燃焼室5内全体に希薄混合気が形成される。次いで図10(B)に示されるように圧縮行程末期にキャビティ3a内に向けて燃料噴射Fが行われ、図10(C)に示されるようにこの噴射燃料によって凹部14および深皿部13内には火種となる可燃混合気Gが形成される。この可燃混合気Gは点火栓10によって着火せしめられ、この着火火炎によって燃焼室5内全体の希薄混合気が燃焼せしめられる。この場合、圧縮行程末期に噴射される燃料は火種を作れば十分であるので図6に示されるように機関中負荷運転時にはアクセルペダル40の踏込み量Lにかかわらず圧縮行程末期の燃料噴射量Q2 は一定に維持される。これに対して吸気行程初期の燃料噴射量Q1 はアクセルペダル40の踏込み量Lが大きくなるにつれて増大する。
図6においてアクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも大きい機関高負荷運転時には吸気行程初期に一回だけ燃料が噴射され、それによって燃焼室15内に均一混合気が形成される。このとき吸気行程初期の燃料噴射量は図6に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量Lが大きくなるにつれて増大する。
以上が図1に示す筒内噴射式内燃機関の基本的な燃焼方法である。次にこの筒内噴射式内燃機関に適した排気ガスの浄化方法について説明する。
まず初めに図11を参照するとこの図11は燃焼室5から排出される排気ガス中の代表的な成分の濃度と燃焼室5内における平均空燃比A/Fとの関係を概略的に示している。図11からわかるように燃焼室5から排出される排気ガス中の未燃HC,COの濃度は燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリッチになるほど増大し、燃焼室5から排出される排気ガス中の酸素O2 の濃度は燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンになるほど増大する。
一方、図1に示すケーシング27内に収容されているNOx 吸収剤26は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少くとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されている。機関吸気通路、燃焼室5およびNOx 吸収剤26上流の排気通路内に供給された全空気量と全燃料(炭化水素)量の比をNOx 吸収剤26への流入排気ガスの空燃比と称するこのNOx 吸収剤26は流入排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOx を吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOx を放出するNOx の吸放出作用を行う。なお、NOx 吸収剤26上流の排気通路内に燃料(炭化水素)或いは空気が供給されない場合には流入排気ガスの空燃比は燃焼室5内における平均空燃比A/Fに一致し、従ってこの場合にはNOx 吸収剤26は燃焼室5内における平均空燃比A/FがリーンのときにはNOx を吸収し、燃焼室5内のガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOx を放出することになる。
上述のNOx 吸収剤26を機関排気通路内に配置すればこのNOx 吸収剤26は実際にNOx の吸放出作用を行うがこの吸放出作用の詳細なメカニズムについては明らかでない部分もある。しかしながらこの吸放出作用は図12に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。次にこのメカニズムについて担体上に白金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類、希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
即ち、燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンであり、従って流入排気ガスがリーンであるときには流入排気ガス中の酸素濃度が高くなり、このとき図12(A)に示されるようにこれら酸素O2 がO2 - 又はO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 - 又はO2-と反応し、NO2 となる(2NO+O2 →2NO2 )。次いで生成されたNO2 の一部は白金Pt上で酸化されつつ吸収剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら図12(A)に示されるように硝酸イオンNO3 - の形で吸収剤内に拡散する。このようにしてNOx がNOx 吸収剤26内に吸収される。
流入排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2 が生成され、吸収剤のNOx 吸収能力が飽和しない限りNO2 が吸収剤内に吸収されて硝酸イオンNO3 - が生成される。これに対して流入排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2 の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 - →NO2 )に進み、斯くして吸収剤内の硝酸イオンNO3 - がNO2 の形で吸収剤から放出される。即ち、流入排気ガス中の酸素濃度が低下するとNOx 吸収剤26からNOx が放出されることになる。図11からわかるように流入排気ガスのリーンの度合が低くなれば流入排気ガス中の酸素濃度が低下し、従って流入排気ガスのリーンの度合を低くすればたとえ流入排気ガスの空燃比がリーンであってもNOx 吸収剤26からNOx が放出されることになる。
一方、このとき燃焼室3内における平均空燃比A/Fがリッチにされて流入排気ガスの空燃比がリッチになると図11に示されるように機関からは多量の未燃HC,COが排出され、これら未燃HC,COは白金Pt上の酸素O2 - 又はO2-と反応して酸化せしめられる。また、流入排気ガスの空燃比がリッチになると流入排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するために吸収剤からNO2 が放出され、このNO2 は図12(B)に示されるように未燃HC,COと反応して還元せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2 が存在しなくなると吸収剤から次から次へとNO2 が放出される。従って流入排気ガスの空燃比をリッチにすると短時間のうちにNOx 吸収剤26からNOx が放出されることになる。
即ち、流入排気ガスの空燃比をリッチにするとまず始めに未燃HC,COが白金Pt上のO2 - 又はO2-とただちに反応して酸化せしめられ、次いで白金Pt上のO2 - 又はO2-が消費されてもまだ未燃HC,COが残っていればこの未燃HC,COによって吸収剤から放出されたNOx および機関から排出されたNOx が還元せしめられる。従って流入排気ガスの空燃比をリッチにすれば短時間のうちにNOx 吸収剤26に吸収されているNOx が放出され、しかもこの放出されたNOx が還元されるために大気中にNOx が排出されるのを阻止することができることになる。また、NOx 吸収剤26は還元触媒の機能を有しているので流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にしてもNOx 吸収剤26から放出されたNOx が還元せしめられる。しかしながら流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にした場合にはNOx 吸収剤26からNOx が徐々にしか放出されないためにNOx 吸収剤26に吸収されている全NOx を放出させるには若干長い時間を要する。
上述したように燃焼室5内における平均空燃比A/FがリーンであるときにはNOx がNOx 吸収剤26に吸収される。しかしながらNOx 吸収剤26のNOx 吸収能力には限度があり、NOx 吸収剤26のNOx 吸収能力が飽和すればNOx 吸収剤26はもはやNOx を吸収しえなくなる。従ってNOx 吸収剤26のNOx 吸収能力が飽和する前にNOx 吸収剤26からNOx を放出させる必要があり、そのためにはNOx 吸収剤26にどの程度のNOx が吸収されているかを推定する必要がある。そこで次にこのNOx 吸収量の推定方法について説明する。
燃焼室5内の平均空燃比A/Fがリーンであるときには機関負荷が高くなるほど単位時間当り機関から排出されるNOx 量が増大するために単位時間当りNOx 吸収剤26に吸収されるNOx 量が増大し、また機関回転数が高くなるほど単位時間当り機関から排出されるNOx 量が増大するために単位時間当りNOx 吸収剤26に吸収されるNOx が増大する。従って単位時間当りNOx 吸収剤26に吸収されるNOx 量は機関負荷と機関回転数の関数となる。この場合、機関負荷はアクセルペダル40の踏込み量Lでもって代表することができるので単位時間当りNOx 吸収剤26に吸収されるNOx 量はアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数となる。従って図1に示す実施例では単位時間当りNOx 吸収剤26に吸収されるNOx 量Aをアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nの関数として予め実験により求め、このNOx 量AがLおよびNの関数として図14(A)に示すマップの形で予めROM33内に記憶されている。
一方、燃焼室5内における平均空燃比A/Fが理論空燃比又はリッチになるとNOx 吸収剤26からNOx が放出されるがこのときのNOx 放出量は主に排気ガス量と平均空燃比の影響を受ける。即ち、排気ガス量が増大するほど単位時間当りNOx 吸収剤26から放出されるNOx 量が増大し、平均空燃比がリッチとなるほど単位時間当りNOx 吸収剤26から放出されるNOx 量が増大する。この場合、排気ガス量、即ち吸入空気量はアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数となり、平均空燃比A/Fもアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数となる。従って単位時間当りNOx 吸収剤26から放出されるNOx 量Dはアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数となり、このNOx 量DはLおよびNの関数として図14(B)に示すマップの形で予めROM33内に記憶されている。
上述したように燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンのときには単位時間当りのNOx 吸収量がAで表わされ燃焼室5内における平均空燃比A/Fが理論空燃比又はリッチのときには単位時間当りのNOx 放出量がDで表わされるのでNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOXは次式を用いて算出できることになる。
ΣNOX=ΣNOX+A−D
図13はこのNOx 量ΣNOXと燃焼室5内における平均空燃比A/Fとの関係を示している。図7からわかるように機関負荷LがL0 よりも低いときには燃焼室5内における平均空燃比A/Fはリーンとなっており、このときにはNOx がNOx 吸収剤26に吸収されるので図13に示されるようにNOx 量ΣNOXが増大する。一方、図7に示されるように機関負荷LがL0 よりも高くなると燃焼室5内における平均空燃比A/FがリッチとなるためにNOx 吸収剤26からNOx が放出される。従って図13においてXで示されるように機関負荷LがL0 よりも高くなって平均空燃比A/FがリッチになるとNOx 量ΣNOXが減少する。
一方、平均空燃比A/Fが継続的にリーンにされてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えると図13においてYで示されるように燃焼室5内における平均空燃比A/Fが強制的にリッチとされる。平均空燃比A/FがリッチにされるとNOx 吸収剤26から急速にNOx が放出され、斯くして図13に示されるようにNOx 量ΣNOXが急速に減少する。次いでNOx 量ΣNOXが下限値MINまで低下すると平均空燃比A/Fはリッチからリーンに戻される。
ところで例えば図9に示されるように燃焼室5内に形成される混合気を成層化して燃焼室5内の一部の限られた領域、即ちキャビティ3a内に着火可能な混合気を形成するようにした場合にはこのような成層作用が行われているときにNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく燃焼室5内の平均空燃比をリーンからリッチに切換えるために圧縮行程の噴射量を単に増量すると燃焼室5内の一部の限られた領域内、即ちキャビティ3a内に形成される混合気が過濃になってしまう。その結果、キャビティ3a内の混合気を点火栓10により良好に着火できなくなるために失火してしまうという問題を生じることになる。
また、一般的に云って燃焼室5内における平均空燃比A/Fがリーンからリッチに切換えられると機関出力トルクが急激に増大するためにショックが発生する。ことろがこのようなショックは運転者に不快感を与えるためにこのようなショックの発生を阻止しなければならない。そこで本発明による実施例ではキャビティ3a内に形成される可燃混合気が過濃になるのを阻止し、併せて上述の如きショックが発生しないように平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えるようにしており、次にこのことについて図15および図16を参照しつつ説明する。
図15において破線は図7に示す通常運転時における燃料噴射量Q、スロットル弁23の開度および燃焼室5内における平均空燃比A/Fを示している。まず初めに機関負荷LがL1 よりも低い機関低負荷運転時においてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるために平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換える場合について説明する。機関低負荷運転時には機関負荷Lが予め定められた下限負荷Lmin 以下ではたとえΣNOX>MAX(図13)になっても平均空燃比A/Fのリーンからリッチへの切換え作用は行わず、機関負荷Lが下限負荷Lmin 以上のときにΣNOX>MAXになれば平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えるようにしている。即ち機関負荷LがLmin <L<L1 のときにΣNOX>MAXになると図16に示されるようにNOx 放出フラグがセットされ、燃焼室5内の平均空燃比A/Fがリーンからリッチに切換えられる。図15で云うとこのとき平均空燃比A/Fは破線で示されるリーンから実線で示されるリッチに切換えられる。
このときの平均空燃比A/Fのリーンからリッチへの切換作用は図15および図16に示すように圧縮行程噴射Q2 に加えて吸気行程噴射Q1 を追加し、図15に示されるように圧縮行程噴射量Q2 を破線で示す通常運転時に比べて減少させると共に圧縮行程噴射量Q2 と吸気行程噴射量Q1 との和を破線で示される通常運転時の噴射量に比べて増大させることによって行われる。従ってこの場合、吸気行程噴射量Q1 を破線を境にして噴射量部分Qaと噴射量部分Qbとに分けたとすると圧縮行程噴射量Q2 と噴射量部分Qaとの和が破線で示される通常運転時の噴射量Qに等しくなり、噴射量部分Qbは供給燃料の増大分となる。
ところでこの場合、圧縮行程噴射Q2 による燃料と噴射量部分Qaの燃料とによってキャビティ3a内に混合気が形成され、噴射量部分Qbの燃料がキャビティ3a以外の領域に分散せしめられればキャビティ3a内に形成される混合気の空燃比は通常運転時と同じになる。即ち、総噴射量が増量されてもキャビティ3a内に形成される混合気は過濃になることはなく、斯くして失火を生ずることなくキャビティ3a内に形成された混合気は点火栓10によって良好に着火せしめられることになる。
一方、この場合、圧縮行程噴射Q2 による燃料と噴射部分Qaの燃料とを燃焼させ、噴射量部分Qbの燃料を燃焼させないようにすれば燃焼せしめられる燃料量は破線で示される通常運転時の燃料量と同じになるために機関の出力トルクは変化せず、噴射量部分Qbの燃料は単に平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切り換えるだけに使用される。そこで本発明による実施例では圧縮行程噴射Q2 による燃料と噴射量部分Qaの燃料とにより燃焼させるべき可燃混合気を形成し、供給燃料の増大分である噴射量部分Qbの燃料により不可燃混合気を形成して失火の発生を阻止するのはもとより機関の出力トルクが変化するのを阻止しつつ平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるようにしている。
即ち、吸気行程噴射Q1 が行われるとこの噴射燃料は燃焼室5内全体に分散されるがこの吸気行程噴射量Q1 は火炎が伝播しえない希薄混合気を形成しうる量とされる。しかしながらこのような希薄混合気であっても圧縮行程噴射Q2 により形成される可燃混合気G(図9(C)参照)内に混入すれば燃焼せしめられる。この場合、圧縮行程噴射Q2 により形成される可燃混合気Gはキャビティ3a内のほぼ全体を占めるので噴射量部分Qaの燃焼がキャビティ3a内のほぼ全体を占めるように吸気行程噴射量Q1 を定めれば燃焼せしめられる燃料量は通常運転時と同じとなり、斯くして平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えても失火を生ずることがなく、しかも機関の出力トルクは変化しないことになる。
次にこのことについて具体的数値(現実の数値ではない)を用いて説明すると例えば通常運転時における平均空燃比が17のリーンであり、このとき空気量が17(g)であり、燃料量が1(g)であったとする。平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えたときにキャビティ3a内の可燃混合気の55%を圧縮行程噴射Q2 により形成し、残りの45%を吸気行程噴射Q1 により形成したとすると圧縮行程噴射量Q2 は0.55(g)となり、吸気行程噴射量Q1 の噴射量部分Qaは0.45(g)となる。一方、燃焼室5の全容積に対するキャビティ3aの容積を65%とすると全吸気行程噴射量(Qa+Qb)は0.45(g)/0.65≒0.7(g)となる。従って吸気行程噴射Q1 により形成される希薄混合気の空燃比は17(g)/0.7(g)≒24.3となり、不可燃混合気となる。一方、燃焼室5内における平均空燃比A/Fは17(g)/〔0.55(g)+0.7(g)〕=13.6となり、リッチとなる。またこのときキャビティ3a内に形成される可燃混合気に含まれる燃料は1(g)であって通常運転時と変らない。
このように吸気行程噴射量Q1 および圧縮行程噴射量Q2 を適切に設定するとキャビティ3a内に形成される混合気の空燃比を変化させず、しかも燃焼せしめられる燃料量を変化させずに平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えることができる。なお、図15に示すこれら吸気行程噴射量Q1 (Qa+Qb)および圧縮行程噴射量Q2 はアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nの関数の形で予めROM33内に記憶されている。
次に機関負荷LがL1 よりも大きくL0 よりも低いときにNOx 吸収剤26からNOx を放出させるために平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換える場合について説明する。このときには図15において実線で示されるようにスロットル弁23が予め定められた開度だけ閉弁せしめられる。スロットル弁23が閉弁せしめられると燃焼室5内に供給される空気量が減少するために燃焼室5内における平均空燃比A/Fが小さくなる。このとき平均空燃比A/Fが図15において実線で示す予め定められたリッチ空燃比となるようにスロットル弁23は閉弁せしめられ、このスロットル23の閉弁量はアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nの関数の形で予めROM33内に記憶されている。
なお、スロットル弁23が閉弁せしめられるとポンピング損失が増大するために機関の出力トルクが低下する。そこで本発明による実施例ではこのとき機関の出力トルクが低下しないように吸気行程噴射量Q1 がQcだけ(図15において破線よりも上方の部分だけ)増大せしめられる。なお、この吸気行程噴射Q1 の増量分Qcはアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nの関数の形で予めROM33内に記憶されている。なお、このとき圧縮行程噴射量Q2 は火種を形成するのに最適な燃料量となっているので圧縮行程噴射量Q2 を増量せずに吸気行程噴射量Q1 を増量するようにしている。
次に図17および図18を参照しつつ燃料噴射の制御ルーチンについて説明する。なお、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図17および図18を参照するとまず初めにステップ100においてNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOXが許容値MAXよりも大きいか否かが判別される。ΣNOX≦MAXのときにはステップ101に進んでNOx 放出フラグがセットされているか否かが判別される。通常はNOx 放出フラグはリセットされているのでステップ102に進む。ステップ102ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から吸気行程噴射量Q1 および圧縮行程噴射量Q2 が算出され、次いでステップ103ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から噴射時期が算出され、次いでステップ104ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図7に示す関係からスロットル弁23の開度が算出される。
次いでステップ105ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図7に示す関係からEGR弁29の開度が算出され、次いでステップ106ではアクセルペダル40の踏込み量Lに基いて予めROM33内に記憶されている図8に示す関係から吸気制御弁17の開度が算出される。次いでステップ107ではアクセルペダル40の踏込み量LがL0 (図7)よりも低いか否かが判別される。L<L0 のときにはステップ108に進んで図14(A)に示すマップからNOx 放出量Aが算出される。次いでステップ109ではNOx 放出量Dが零とされ、次いでステップ112に進む。一方、ステップ107においてL≧L0 であると判別されたときにはステップ110に進んで図14(B)に示すマップからNOx 放出量Dが算出される。次いでステップ111ではNOx 吸収量Aが零とされ、次いでステップ112に進む。
ステップ112ではNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOX(=ΣNOX+A−D)が算出される。次いでステップ113ではΣNOXが負になったか否かが判別され、ΣNOX<0になったときにはステップ114に進んでΣNOXが零とされる。次いでステップ115ではΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別され、ΣNOX<MINになったときにはステップ116に進んでNOx 放出フラグがリセットされる。
一方、ステップ100においてΣNOX>MAXになったと判別されたときにはステップ117に進んでNOx 放出フラグがセットされる。NOx 放出フラグがセットされるとステップ101からステップ118に進んで機関負荷Lが下限負荷Lmin よりも低いか否かが判別される。L<Lmin のときにはステップ102に進む。従ってこのときにはΣNOX>MAXであったとしても燃焼室5内の平均空燃比A/Fはリーンに維持される。
これに対してL≧Lmin のときにはステップ119に進んでアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図15に示す関係から吸気行程噴射量Q1 および圧縮行程噴射量Q2 が計算され、次いでステップ120ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている関係から噴射時期が算出され、次いでステップ121ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図15に示す関係からスロットル弁23の開度が算出される。
次いでステップ122ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている関係からEGR弁29の開度が算出され、次いでステップ123ではアクセルペダル40の踏込み量Lに基いて予めROM33内に記憶されている図8に示す関係から吸気制御弁17の開度が算出される。このときには燃焼室5内における平均空燃比はリッチとされ、NOx 吸収剤26からNOx が放出される。
前述したようにアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さい機関低負荷運転時には圧縮行程末期にのみ燃料が噴射される。このときにはキャビティ3a内にのみ混合気が形成され、キャビティ3a以外の領域は実質的に空気およびEGRガスで満たされるので成層度合が極めて高い強成層状態となる。
一方、アクセルペダル40の踏込み量LがL1 とL2 との間である機関中負荷運転時には吸気行程噴射により燃焼室5内に全体に希薄混合気が形成され、圧縮行程噴射によってこの希薄混合気よりも濃い混合気がキャビティ3a内に形成される。従ってこのときには機関低負荷運転時における強成層状態よりも成層の度合が低い弱成層状態となる。
また、アクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも大きい機関高負荷運転時には吸気行程噴射のみが行われ、従ってこのとき燃焼室5内には均一混合気が形成される。
ところでこれまで述べてきた実施例では機関低負荷運転時において、即ち強成層状態においてNOx 吸収剤26からNOx を放出すべきときには失火が発生することなく、しかも出力トルクが変動しないように強成層状態を維持しつつ平均空燃比A/Fをリーンからリッチに切換えるようにしている。
これに対して次に述べる実施例では強成層状態においてNOx 吸収剤26からNOx を放出しなければならなくなったときには強成層状態から弱成層状態又は均一混合気状態に切換え、弱成層状態又は均一混合気状態において吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fを理論空燃比又はリッチにしてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるようにしている。このように吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fを理論空燃比又はリッチにすると強成層時と比べてキャビティ3a内に形成される混合気の空燃比はさほど変化せず、斯くして失火が発生するのを阻止することができる。
また、次に述べる実施例ではNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fを理論空燃比又はリッチにしたときに全噴射燃料を燃焼室5内で燃焼せしめるようにしており、従ってNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fが理論空燃比又はリッチにされたときに機関の出力トルクが増大することになる。この出力トルクの増大は燃焼室5内に供給される吸入空気量を低下させることによって抑制され、それでも出力トルクが増大する場合には例えば点火時期を遅角させることによって出力トルクが増大しないようにされる。
次に図19および図20を参照しつつ燃料噴射を制御するための基本的なルーチンについてまず初めに説明する。
図19はNOx 放出フラグを制御するためのルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。図19を参照するとまず初めにステップ120においてNOx 量ΣNOXが図13に示される許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになったときにはステップ121に進んでNOx 放出フラグがセットされる。
図20は噴射制御を行うためのルーチンを示しており、このルーチンは例えば一定時間毎の割込みによって実行される。
図20を参照するとまず初めにステップ130においてNOx 放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx 放出フラグがセットされていないときにはステップ131に進んでアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から吸気行程噴射量Q1 および圧縮行程噴射量Q2 が算出される。次いでステップ132ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から噴射時期が算出され、次いでステップ133ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図7に示す関係からスロットル弁23の開度が算出され、次いでステップ134ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている関係からEGR弁29の開度が算出され、次いでステップ135ではアクセルペダル40の踏込み量Lに基いて予めROM33内に記憶されている図8に示す関係から吸気制御弁17の開度が算出される。
次いでステップ136ではアクセルペダル40の踏込み量LがL0 (図7)よりも低いか否かが判別される。L<L0 のときにはステップ137に進んで図14(A)に示すマップからNOx 放出量Aが算出される。次いでステップ138ではNOx 放出量Dが零とされ、次いでステップ141に進む。一方、ステップ136においてL≧L0 であると判別されたときにはステップ139に進んで図14(B)に示すマップからNOx 放出量Dが算出される。次いでステップ140ではNOx 吸収量Aが零とされ、次いでステップ141に進む。ステップ141ではNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOX(=ΣNOX+A−D)が算出される。次いでステップ142ではΣNOXが負になったか否かが判別され、ΣNOX<0になったときにはステップ143に進んでΣNOXが零とされる。
一方、ステップ130においてNOx 放出フラグがセットされたと判断されたときにはステップ144に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さいか否かが判別される。L<L1 のときにはステップ146に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理Iが行われる。これに対してL≧L1 のときにはステップ145に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも小さいか否かが判別される。L<L2 のときにはステップ147に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理IIが行われ、L≧L2 のときにはステップ148に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理III が行われる。
即ち、リッチ処理Iは機関低負荷運転時において、即ち強成層状態においてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるためのリッチ処理を示しており、リッチ処理IIは機関中負荷運転時において、即ち弱成層状態においてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるためのリッチ処理を示しており、リッチ処理III は機関高負荷運転時において、即ち均一混合気状態においてNOx 吸収剤26からNOx を放出させるためのリッチ処理を示している。そこで次にこれらリッチ処理I,II,III について順に説明する。
図21はリッチ処理Iの一実施例のタイムチャートを示している。図21に示されるようにNOx 放出フラグがセットされる前の機関低負荷運転状態、即ち強成層運転状態では吸気行程噴射は行われておらず、圧縮行程噴射のみが行われて燃焼室5内の平均空燃比A/Fはリーンとなっている。またこのときスロットル弁23およびEGR弁29は開弁せしめられている。
次いでNOx 吸収剤26からNOx を放出すべくNOx 放出フラグがセットされるとEGR弁29が全閉せしめられ、このとき燃焼室5内の平均空燃比A/Fが極度にリーンとならないようにスロットル弁23も機関の運転状態に定まる設定開度まで閉弁せしめられる。スロットル弁23が設定開度まで閉弁せしめられると機関の出力トルクが低下しないように圧縮行程噴射量が若干増大せしめられる。
次いでNOx 放出フラグがセットされてからt1 時間経過すると圧縮行程噴射が停止され、吸気行程噴射が開始される。即ち、強成層状態から均一混合気状態に切換えられる。このとき噴射量は変化せず、従って燃焼室5内の平均空燃比A/Fも変化しない。なお、このときには燃料噴射量が少なく、このように少量の燃料を均一混合気状態で燃焼させる場合に多量のEGRガスが供給されると失火する危険性が大となる。そこでこの実施例では図21に示されるように均一混合気燃焼に移行する前にEGR弁29を全閉するようにしている。なお、この場合EGR弁29は必ずしも全閉する必要がなく、EGR弁29の開度を或る程度減少させるだけで十分な場合もある。
次いでNOx 放出フラグがセットされた後t2 時間経過すると燃焼室5内の平均空燃比A/Fをリッチにすべく吸気行程噴射量が増量せしめられ、スロットル弁23が機関の運転状態により定まる設定開度まで更に閉弁せしめられる。このときスロットル弁23を閉弁するのは燃焼室5内に供給される吸入空気量を減少させ、できるだけ少ない燃料でもって平均空燃比A/Fをリッチにするためと、平均空燃比A/Fをリッチにしたときにできるだけ機関の出力トルクが増大しないようにするためである。このとき機関の出力トルクの増大が大きくなってショックが発生する場合には平均空燃比A/Fをリッチにすると同時に点火時期を遅らせる等の手段を講ずる必要がある。
平均空燃比A/FがリッチにされるとNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が開始される。次いでNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が完了すると今度は逆の順序を経て再び強成層状態に戻る。即ち、NOx の放出作用が完了すると吸気行程噴射量が減量せしめられると共にスロットル弁23が開弁せしめられる。次いでNOx の放出作用が完了してからt1 時間経過すると吸気行程噴射が停止されて圧縮行程噴射が開始され、NOx の放出作用が完了してからt2 時間経過するとスロットル弁23およびEGR弁29が開弁せしめられると共にNOx 放出フラグがリセットされる。
図22は図21に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。図22を参照するとまず初めにステップ150においてNOx の放出が完了したことを示す放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。リッチ処理Iが開始された直後は放出完了フラグはセットされていないのでステップ151に進み、平均空燃比A/Fをリッチにするまでの前処理が行われる。図21に示される実施例ではこの前処理は、NOx 放出フラグがセットされたときに、即ちリッチ処理Iが開始されたときにスロットル弁23およびEGR弁29を閉弁する処理と、リッチ処理Iが開始されてからt1 時間経過後に圧縮行程噴射から吸気行程噴射に切換える処理と、リッチ処理Iが開始されてからt2 時間経過後にスロットル弁23を閉弁する処理からなる。
次いでステップ152ではこの前処理が完了したか否かが判別される。前処理が完了するとステップ153に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理が行われる。この実施例では吸気行程噴射量を増量することによってリッチ処理が行われる。次いでステップ154ではNOx 放出作用中におけるNOx 放出量D′が算出される。このNOx 放出量D′はアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nの関数として図23に示すようなマップの形で予めROM33内に記憶されている。次いでステップ155ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算され、次いでステップ156ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになったときにはNOx の放出作用が完了したと判断してステップ157に進み、放出完了フラグがセットされる。次いでステップ158に進む。なお、一旦放出完了フラグがセットされるとその後はステップ150からステップ158にジャンプする。
ステップ158ではNOx の放出作用が完了してから強成層状態に戻されるまでの後処理が行われる。図21に示される実施例ではこの後処理は、NOx の放出作用が完了したときに吸気行程噴射量を減少させ、スロットル弁23を開弁させる処理と、NOx の放出作用が完了した後t1 時間経過後に吸気行程噴射から圧縮行程噴射に切換える処理と、NOx 放出作用が完了した後t2 時間経過後にスロットル弁23およびEGR弁29を開弁させる処理からなる。ステップ159ではこの後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ160に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図24は強成層状態において行われるリッチ処理Iの別の実施例を示している。この実施例ではNOx 放出フラグがセットされるとスロットル弁23が少し閉弁せしめられ、EGR弁29が半分程度閉弁せしめられる。次いでNOx 放出フラグがセットされてからt1 時間経過すると圧縮行程噴射量が減少せしめられ、吸気行程噴射が開始される。即ち、このときには吸気行程噴射と圧縮行程噴射との2回の噴射が行われ、従って弱成層状態となる。次いでNOx 放出フラグがセットされてからt2 時間経過すると圧縮行程噴射が停止され、吸気行程噴射のみとなるので均一混合気状態となる。また、このときスロットル弁23は再び少し閉弁せしめられる。
次いでNOx 放出フラグがセットされてからt3 時間経過するとEGR弁29が全閉せしめられると共にスロットル弁23が更に少し閉弁せしめられる。更にこのとき吸気行程噴射量が増量せしめられて平均空燃比A/Fがリッチとされ、斯くしてNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が開始される。
一方、NOx の放出作用が完了すると逆の順序でもって強成層状態に戻る。即ち、NOx の放出作用が完了すると吸気行程噴射量が減量され、スロットル弁23およびEGR弁29が開弁せしめられる。次いでNOx の放出作用が完了してからt1 時間経過すると吸気行程噴射量が減量され、圧縮行程噴射が開始されて弱成層状態となる。このときスロットル弁23が更に開弁せしめられる。次いでNOx の放出作用が完了してからt2 時間経過すると吸気行程噴射が停止されて強成層状態となり、次いでNOx の放出作用が完了してからt3 時間経過するとスロットル弁23およびEGR弁29が更に開弁せしめられると共にNOx 放出フラグがリセットされる。
この実施例ではNOx の放出作用を開始するときには強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態とされ、NOx の放出作用が完了したときには均一混合気状態から弱成層状態を経て強成層状態とされる。このように強成層状態と均一混合気状態との切換えの際に弱成層状態を介在させることによって燃焼の形態が徐々に変化し、それによって切換えの際に失火が生じるのを阻止することができる。
図25は図24に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。図25を参照するとまず初めにステップ170において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければステップ171に進み、放出完了フラグがセットされていればステップ178にジャンプする。ステップ171ではNOx 放出フラグがセットされてから平均空燃比A/Fがリッチとされるまでの前処理が行われる。次いでステップ172では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ173に進んで吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。
次いでステップ174では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ175ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ176ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ177に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ178ではNOx の放出完了から強成層状態に戻るまでの後処理が行われる。次いでステップ179では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ180に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図26および図27はリッチ処理Iの更に別のールチンを示している。前述したように失火を生ずることなく滑らかに強成層状態から均一混合気状態に移行するには間に弱成層状態を介在させることが好ましい。しかしながら燃料噴射量が少ないときに弱成層状態にすると燃焼室5内全体に広がった希薄混合気が極度にリーンとなり、これら希薄混合気を燃焼させることができないという危険性がある。そこでこの実施例では燃料噴射量が少ないときに強成層状態から均一混合気状態に移行させるときには弱成層状態を経ることなく強成層状態から均一混合気状態に直接移行させるようにしている。なお、図26においてXで示される枠内の各ステップ191,192,193は前処理を示しており、Yで示される各ステップ200,201,202は後処理を示している。
即ち、図26および図27を参照するとまず初めにステップ190において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければ前処理Xのステップ191に進み、放出完了フラグがセットされていれば後処理Yのステップ200にジャンプする。ステップ191では燃料噴射量Qが予め定められた設定値Q0 よりも大きいか否かが判別される。Q>Q0 のときにはステップ192に進んで図24に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態に移行する前処理が行われる。これに対してQ≦Q0 のときにはステップ193に進んで図21に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経ることなく均一混合気状態に直接移行する前処理が行われる。
次いでステップ194では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ195に進んで吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ196では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ197ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ198ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ199に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ200に進む。
ステップ200では燃料噴射量Qが予め定められた設定値Q0 よりも大きいか否かが判別される。Q>Q0 のときにはステップ201に進んで図24に示される後処理、即ち均一混合気状態から弱成層状態を経て強成層状態に移行する後処理が行われる。これに対してQ≦Q0 のときにはステップ202に進んで図21に示される後処理、即ち均一混合気状態から弱成層状態を経ることなく強成層状態に直接移行する後処理が行われる。次いでステップ203では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ204に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図28は強成層状態において行われるリッチ処理Iの更に別の実施例を示している。この実施例ではNOx 放出フラグがセットされるとスロットル弁23が少し閉弁せしめられ、EGR弁29が全閉せしめられる。次いでNOx 放出フラグがセットされてからt1 時間経過すると圧縮行程噴射量が減少せしめられ、吸気行程噴射が開始される。即ち、このときには吸気行程噴射と圧縮行程噴射との2回の噴射が行われ、従って弱成層状態となる。このときスロットル弁23が少し閉弁せしめられる。次いでNOx 放出フラグがセットされてからt2 時間経過すると圧縮行程噴射が停止され、吸気行程噴射のみとなるので均一混合気状態となる。また、このときスロットル弁23は再び少し閉弁せしめられる。
次いでNOx 放出フラグがセットされてからt3 時間経過するとスロットル弁23が更に少し閉弁せしめられると共に吸気行程噴射量が増量せしめられて平均空燃比A/Fがリッチとされ、斯くしてNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が開始される。
一方、NOx の放出作用が完了すると吸気行程噴射量が減量される。次いでNOx の放出作用が完了してからt4 時間経過すると吸気行程噴射が停止されて強成層状態となり、このときスロットル弁23が開弁せしめられる。次いでNOx の放出作用が完了してからt5 時間経過するとスロットル弁23およびEGR弁29が開弁せしめられると共にNOx 放出フラグがリセットされる。
この実施例ではNOx の放出作用を開始するときには強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態とされ、NOx の放出作用が完了したときには均一混合気状態から弱成層状態を経ることなく直接強成層状態とされる。なお、この実施例においても強成層状態から均一混合気状態に移行するときの前処理においては燃料噴射量に応じて弱成層状態を経るか否かが判別される。
図29および図30は図28に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。なお、Xで示される枠内は前処理を表わしている。図29および図30を参照するとまず初めにステップ210において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければ前処理Xのステップ211に進み、放出完了フラグがセットされていればステップ220にジャンプする。ステップ211では燃料噴射量Qが予め定められた設定値Q0 よりも大きいか否かが判別される。Q>Q0 のときにはステップ212に進んで図24に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態に移行する前処理が行われる。これに対してQ≦Q0 のときにはステップ213に進んで図21に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経ることなく均一混合気状態に直接移行する前処理が行われる。
次いでステップ214では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ215に進んで吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ216では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ217ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ218ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ219に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ220ではNOx の放出完了から強成層状態に戻るまでの後処理が行われる。次いでステップ221では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ222に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図31および図32は強成層状態において行われるリッチ処理Iの更に別の実施例を示している。この実施例ではNOx 吸収剤26からNOx を放出すべきときには追加の燃料を膨張行程又は排気行程において燃焼室5内に噴射するようにしている。図31はこのように追加の燃料を膨張行程又は圧縮行程に供給するようにした場合を示しており、この場合追加の燃料は図31の区間Z内において燃料噴射弁11から供給される。膨張行程および排気行程においては燃焼室5内の既燃ガスの温度はかなり高く、従ってこの既燃ガス内に追加の燃料を噴射すると炭化水素が小さな分子に分解すると共に一部の炭化水素はラジカルとなり、斯くして燃料は活性化されてNOx に対する強い反応性を有することになる。従ってNOx 吸収剤26からは良好にNOx が放出され、放出したNOx は良好に還元されることになる。なお、NOx に対する反応性を高めるには既燃ガスの温度が高いときに追加の燃料を噴射することが好ましく、従って追加の燃料噴射は図31に示されるように膨張行程において行うことが好ましい。
なお、この追加の燃料は燃焼せしめられたとしても出力の発生には寄与せず、従って追加の燃料を供給することによって機関の出力トルクが変動することはない。
図32に示されるようにこの実施例ではNOx 放出フラグがセットされるとスロットル弁23が閉弁せしめられ、EGR弁29が全閉せしめられる。次いでNOx 放出フラグがセットされてからt1 時間経過すると圧縮行程噴射量はそのままに維持され、追加の燃料が膨張行程に噴射されてNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が開始される。なお、このとき吸気行程噴射は行われない。
一方、NOx の放出作用が完了すると逆の順序でもって強成層状態に戻る。即ち、NOx の放出作用が完了すると膨張行程における追加の燃料噴射が停止され、次いでNOx の放出作用が完了してからt1 時間経過するとスロットル弁23およびEGR弁29が開弁せしめられると共にNOx 放出フラグがリセットされる。
図33は図32に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。図33を参照するとまず初めにステップ230において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければステップ231に進み、放出完了フラグがセットされていればステップ238にジャンプする。ステップ231ではNOx 放出フラグがセットされてから追加の燃料が供給されるまでの前処理が行われる。次いでステップ232では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ233に進んで追加の燃料が供給される。
次いでステップ234では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ236ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ236ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ237に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ238ではNOx の放出完了から強成層状態に戻るまでの後処理が行われる。次いでステップ239では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ240に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了がリセットされる。
図34はリッチ処理IIの一実施例のタイムチャートを示している。図21に示されるようにNOx 放出フラグがセットされる前の機関中負荷運転時には吸気行程噴射と圧縮行程噴射の2回の噴射が行われる。即ち、このときは弱成層状態となっており、燃焼室5内の平均空燃比A/Fはリーンとなっている。NOx 放出フラグがセットされると弱成層状態のままで吸気行程噴射量が増量されることによって燃焼室5内の平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が行われる。NOx の放出作用が完了すると吸気行程噴射量が減量される。
図35は図34に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理IIのルーチンを示している。図35を参照するとまず初めにステップ250において吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ251では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ252ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ253ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ254に進んで吸気行程噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ255においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図36は弱成層状態において行われるリッチ処理IIの別の実施例を示している。この実施例ではNOx 放出フラグがセットされると圧縮行程噴射が停止され、吸気行程噴射量が増量される。即ち、NOx 放出フラグがセットされると弱成層状態から均一混合気状態に切換えられて燃焼室5内の平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が開始される。NOx の放出作用が完了すると均一混合気状態から弱成層状態に戻される。
図37は図36に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理IIのルーチンを示している。図37を参照するとまず初めにステップ260において吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ261では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ262ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ263ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ264に進んで吸気行程噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ265においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図38は弱成層状態において行われるリッチ処理IIの更に別の実施例を示している。この実施例ではNOx 吸収剤26からNOx を放出すべきときに燃料噴射量Qに応じて弱成層状態でリッチ化するのか、或いは均一混合気状態でリッチ化するのかが選択される。なお、図38に示すルーチンにおいてZにより示される枠内はリッチ処理を示している。
図38を参照するとまず初めにステップ270において燃料噴射量Qが予め定められた設定値Qi よりも大きいか否かが判別される。Q>Qiのときにはステップ271に進んで均一混合気状態によるリッチ化が行われる。即ち、NOx 放出フラグがセットされると図36に示されるように圧縮行程噴射が停止され、吸気行程噴射量が増量される。これに対してQ≦Qiのときにはステップ272に進んで弱成層状態においてリッチ化が行われる。即ち、NOx 放出フラグがセットされると図34に示されるように圧縮行程噴射を行いつつ吸気行程噴射量が増量される。
次いでステップ273では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ274ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ275ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ276に進んで吸気行程噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ277においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図39はリッチ処理III の一実施例のタイムチャートを示している。図39に示されるようにNOx 放出フラグがセットされる前の機関高負荷運転時には吸気行程噴射のみが行われていて均一混合気燃焼が行われており、NOx 放出フラグがセットされると吸気行程噴射量が増量されて平均空燃比A/Fがリッチとされる。
図40は図39に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理III のルーチンを示している。図40を参照するとまず初めにステップ280において吸気行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ281では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ282ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ283ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ284に進んで吸気行程噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ285においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図41から図48に更に別の実施例を示す。この実施例では図41に示されるように吸気制御弁17下流の第2吸気ポート7b内に向けて燃料の噴射するための燃料噴射弁50、いわゆるポート噴射弁50が設けられ、吸気行程中に燃焼室5内に供給されるべき燃料がポート噴射弁50から供給される。即ち、この実施例では通常運転時には図42に示されるようにL>L1 である機関低負荷運転時であれば圧縮行程噴射Q2 のみが行われ、L1 ≦L≦L2 である機関中負荷運転時であれば圧縮行程噴射Q2 に加えてポート噴射弁50からのポート噴射Q1 が行われ、L>L2 である機関高負荷運転時であればポート噴射Q1 のみが行われる。
従ってこの実施例においてもこれまで述べた実施例と同様に機関低負荷運転時には強成層状態となり、機関中負荷運転時には弱成層状態となり、機関高負荷運転時には均一混合気状態になる。なお、この実施例においても燃料噴射制御については図20に示される噴射制御ルーチンが用いられ、以下図20に示されるリッチ処理I、リッチ処理IIおよびリッチ処理III について順に説明する。
図43は強成層状態において行われるリッチ処理Iを示している。図43に示されるように機関低負荷運転時においてNOx 放出フラグがセットされていないときには圧縮行程噴射のみが行われている。次いでNOx 放出フラグがセットされると圧縮行程噴射が停止され、燃料噴射弁11から燃焼室5内に吸気行程噴射が行われる。また、このときにはポート噴射弁50からのポート噴射は行われない。従ってこのときには燃料噴射弁11からの吸気行程噴射によって燃焼室5内には平均空燃比A/Fがリッチである均一混合気が形成され、それによってNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が行われる。
機関低負荷運転時にはポート噴射が行われておらず、このときNOx の放出作用を行うべくポート噴射を開始すると噴射開始直後に噴射燃料が第2吸気ポート7bの内壁面上に付着するためにただちに平均空燃比A/Fがリッチにならない。即ち、NOx の放出作用に応答遅れを生ずることになる。従ってポート噴射が行われていないときにNOx 吸収剤26からNOx を放出すべきときには燃料噴射弁11からの噴射燃料を増量することによって平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。これに対してポート噴射が行われているときにはポート噴射量を増量しても応答遅れを生ずることがないのでポート噴射が行われているときにNOx 吸収剤26からNOx を放出させるときにはポート噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。
図44は図43に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。図44を参照するとまず初めにステップ290において吸気行程噴射を開始することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ291では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ292ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ293ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ294に進んで吸気行程噴射が停止され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ295においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図45は弱成層状態において行われるリッチ処理IIを示している。図45に示されるように機関中負荷運転時においてNOx 放出フラグがセットされる前は圧縮行程噴射に加えてポート噴射が行われている。NOx 放出フラグがセットされると圧縮行程噴射はひき続き行われ、ポート噴射量が増量せしめられることにより平均空燃比A/FがリッチとされてNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が行われる。
図46は図45に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理IIのルーチンを示している。図46を参照するとまず初めにステップ300においてポート噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ301では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ302ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ303ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ304に進んでポート噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ305においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図47は均一混合気状態において行われるリッチ処理III を示している。図47に示されるように機関高負荷運転時においてNOx 放出フラグがセットされる前はポート噴射のみが行われており、従ってこのとき均一混合気燃料が行われている。NOx 放出フラグがセットされるとポート噴射量が増量されて平均空燃比A/Fがリッチとされる。
図48は図47に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理III のルーチンを示している。図48を参照するとまず初めにステップ310においてポート噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ311では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ312ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ313ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ314に進んでポート噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ315においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図49から図56はポート噴射を行うようにした場合の更に別の実施例を示している。図49に示されるようにこの実施例においても機関低負荷時の通常運転時には圧縮行程噴射Q2 のみが行われる。一方、この実施例では機関中負荷運転時にL1 <L<Lm であれば燃料噴射弁11による吸気行程噴射Q1 と圧縮行程噴射Q2 とが行われ、Lm <L<L2 であれば燃料噴射弁11による噴射Q1 ,Q2 に加えてポート噴射弁50からのポート噴射も行われる。また、機関高負荷運転時に燃料噴射弁11とポート噴射弁50の双方から燃料が噴射される。
図50は機関低負荷運転時に行われるリッチ処理Iを示している。図50に示されるようにNOx 放出フラグがセットされると強成層状態がそのまま続行され、追加の燃料が膨張行程中に噴射されることによってNOx 吸収剤26からNOx が放出される。
図51は図50に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iのルーチンを示している。図51を参照するとまず初めにステップ320において追加の燃料を膨張行程時に噴射することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ321では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ322ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ323ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ324に進んで追加の燃料噴射が停止され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ325においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図52は図49においてL1 <L<Lm である機関中負荷運転時を示している。この場合、NOx 放出フラグがセットされていないときには燃料噴射弁11からの燃料噴射によって弱成層状態とされており、NOx 放出フラグがセットされると追加の燃料を膨張行程に噴射することによってNOx 吸収剤26からNOx が放出される。一方、図53は図49においてLm <L<L2 である機関中負荷運転時を示している。この場合、NOx 放出フラグがセットされていないときには燃料噴射弁11およびポート噴射弁50からの噴射燃料によって弱成層状態とされており、NOx 放出フラグがセットされるとポート噴射量が増量せしめられる。
図54は図52および図53に示すNOx 放出制御を選択的に実行するためのリッチ処理IIのルーチンを示している。なお、図54においてZで示される枠内はリッチ処理を示している。図54を参照するとまず初めにステップ330においてアクセルペダル40の踏込み量Lが設定値Lm (図49)よりも大きいか否かが判別される。L>Lm のときにはステップ331に進んで図53に示されるようにポート噴射量を増量することによってリッチ化が行われる。これに対してL≦Lm のときにはステップ332に進んで図52に示されるように追加の燃料を膨張行程時に噴射することによってリッチ化が行われる。
次いでステップ333では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ334ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ335ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ336に進んで空燃比のリッチ化が停止され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ337においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図55は機関高負荷運転時におけるリッチ処理III を示している。図55に示されるようにNOx 放出フラグがセットされる前には燃料噴射弁11およびポート噴射弁50の双方から燃料が噴射されて均一混合気が燃焼せしめられており、NOx 放出フラグがセットされるとポート噴射量を増量することによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。
図56は図55に示すNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理III のルーチンを示している。図56を参照するとまず初めにステップ340においてポート噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ341では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ342ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ343ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ344に進んでポート噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ345においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図57から図63に別の実施例を示す。この実施例においては機関本体1に自動変速機60が取付けられており、この自動変速機60には車速を検出するための車速センサ61と、自動変速機60がニュートラル位置にあることを検出するニュートラル位置センサ62が取付けられる。図58は自動変速機60のトルクコンバータ63を示しており、このトルクコンバータ63内にロックアップ機構64が設けられている。即ち、トルクコンバータ63は機関クランクシャフトに連結されてクランクシャフトと共に回転するポンプカバー65と、ポンプカバー65により支承されたポンプインペラ66と、自動変速機60の入力軸67に取付けられたタービンランナ68と、ステータ69とを具備し、クランクシャフトの回転運動がポンプカバー65、ポンプインペラ66およびタービンランナ68を介して入力軸67に伝達される。
一方、ロックアップ機構64は入力軸67に対してその軸線方向に移動可能に取付けられかつ入力軸67と共に回転するロックアップクラッチ板69を具備する。通常は、即ちロックアップオフ時には入力軸67内のオイル通路を介してロックアップクラッチ板69とポンプカバー65間の部屋70内に加圧オイルが供給され、次いでこの部屋70から流出した加圧オイルはポンプインペラ66およびタービンランナ68の周りの部屋71内に送り込まれた後、入力軸67内のオイル通路を介して排出される。このときロックアップクラッチ板69両側の部屋70,71間の圧力差はほとんど生じないためにロックアップクラッチ64は図58(B)に示されるようにポンプカバー65から離れており、従ってこのときにはクランクシャフトの回転力はポンプカバー65、ポンプインペラ66およびタービンランナ68を介して入力軸67に伝達される。
一方、ロックアップをオンすべきときには入力軸67内のオイル通路を介して部屋71内に加圧オイルが供給され、部屋70内のオイルは入力軸67内のオイル通路を介して排出される。このとき部屋71内の圧力が部屋70内の圧力よりも高くなり、斯くして図58(A)に示されるようにロックアップクラッチ69がポンプカバー65上に圧接されてクランクシャフトと入力軸67とが同速度で回転する直結状態となる。部屋70,71内へのオイル供給制御、即ちロックアップ機構64のオン・オフ制御は自動変速機60内に設けられた制御弁によって制御され、この制御弁は電子制御ユニット30の出力信号に基いて制御される。
この実施例においても燃料噴射制御は図20に示すルーチンにより行われ、従って機関低負荷運転時には強成層状態とされる。ところで機関の出力トルクが変動した場合、機関負荷が低いときほど出力トルクの変動率としては大きく表われ、従って機関の出力トルクが変動した場合には機関低負荷運転時において特にショックを発生しやすくなる。従ってNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fをリッチにしたときに機関の出力トルクが変動したとするとこの機関出力トルクの変動は機関低負荷運転時に最もショックとなって表われやすいことになる。
ところで図58(A)に示されるようにロックアップクラッチ69がオンとなって直結状態にあるときに機関出力トルクが変動するとこの変動が直接自動変速機60に伝達されるために大きなショックが発生する。これに対して図58(B)に示されるようにロックアップクラッチ69がオフになっているときに機関出力トルクが変動するとこのときには機関出力トルクの変動がコンバータ63において吸収されるためにほとんどショックが発生しなくなる。従ってショックの発生という面からみるとロックアップクラッチ69がオフのときには機関出力トルクが変動してもかまわないがロックアップクラッチ69がオンのときには機関の出力トルクが変動しないようにすることが好ましい。
そこでこの実施例では機関低負荷運転時にNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fをリッチにする場合、ロックアップクラッチ69がオフとなっていれば図59に示されるように強成層状態から均一混合気状態に移行させて平均空燃比A/Fをリッチにし、ロックアップクラッチ69がオンになっていれば図60に示されるように追加の燃料を膨張行程時に噴射することによって平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。なお、図59に示される制御方法は既に説明した図24に示される制御方法と同じであり、図60に示される制御方法は既に説明した図32に示される制御方法と同じであるので図59および図60に示される制御方法については説明を省略する。
図61はNOx 放出フラグの制御ルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図61を参照するとまず初めにステップ350においてNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOXが許容値MAXよりも大きくなったか否かが判別される。ΣNOX>MAXのときにはステップ351に進んでNOx 放出フラグがセットされる。次いでステップ352ではアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さいか否か、即ち機関低負荷運転時か否かが判別される。L<L1 のときにはステップ353に進んでロックアップクラッチ69がオンであるか否かが判別される。ロックアップクラッチ69がオンのときにはステップ354に進んでフラグXがセットされ、ロックアップクラッチ69がオフのときにはステップ355に進んでフラグXがリセットされる。
図62および図63はリッチ処理Iを示している。なお、図62および図63においてXで示される枠内は前処理を表わしており、Yで示される枠内は後処理を示している。
図62および図63を参照するとまず初めにステップ360において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければ前処理Xのステップ361に進み、放出完了フラグがセットされていれば後処理Yのステップ370にジャンプする。ステップ361ではフラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがセットされているときにはステップ362に進んで図60に示される前処理、即ち膨張行程噴射に移行する前処理が行われる。これに対してフラグXがセットされていないときにはステップ363に進んで図59に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態に移行する前処理が行われる。
次いでステップ364では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ365に進んで膨張行程噴射を行うことにより、或いは吸気行程噴射を行うことにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ366では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ367ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ368ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ369に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ370に進む。
ステップ370ではフラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがセットされているときにはステップ371に進んで図60に示される後処理、即ち膨張行程噴射完了後、強成層状態に移行する後処理が行われる。これに対してフラグXがセットされていないときにはステップ372に進んで図59に示される後処理、即ち均一混合気状態から弱成層状態を経て強成層状態に移行する後処理が行われる。次いでステップ373では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ374に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図64から図66に更に別の実施例を示す。この実施例においても燃料噴射制御は図20に示すルーチンにより行われ、従って機関低負荷運転時には強成層状態とされる。ところで前述したように機関の出力トルクが変動した場合、機関負荷が低いときほど出力トルクの変動率としては大きく表われる。従ってNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fをリッチにしたときに機関の出力トルクが変動したとするとこの機関出力トルクの変動は機関アイドリング運転時に最もショックとなって表われやすいことになる。
ところで機関アイドリング運転時にショックが発生すると云っても自動変速機60(図57)がニュートラル位置にあるときにはほとんどショックが発生しない。そこでこの実施例では機関アイドリング運転時にNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fをリッチにする場合、始動変速機60がニュートラル位置にあれば図59に示されるように強成層状態から均一混合気状態に移行させて平均空燃比A/Fをリッチにし、自動変速機60がニュートラル位置になければ図60に示されるように追加の燃料を膨張行程時に噴射することによって平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。
図64はNOx 放出フラグの制御ルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図64を参照するとまず初めにステップ380においてNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOXが許容値MAXよりも大きくなったか否かが判別される。ΣNOX>MAXのときにはステップ381に進んでNOx 放出フラグがセットされる。次いでステップ382ではアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さいか否か、即ち機関低負荷運転時か否かが判別される。L<L1 のときにはステップ383に進んで機関アンドリング運転時であるか否かが判別される。機関アイドリング運転時でないときにはステップ586に進んでフラグXがリセットされる。これに対して機関アイドリング運転時にはステップ384に進む。
ステップ384ではニュートラル位置センサ62(図57)の出力信号に基いて自動変速機60がニュートラル位置にあるか否かが判別される。自動変速機60がニュートラル位置にないときにはステップ385に進んでフラグXがセットされ、ニュートラル位置にあるときにはステップ386に進んでフラグXがリセットされる。
図65および図66はリッチ処理Iを示している。なお、図65および図66に示されるルーチンは図62および図63に示されるルーチンと同じである。
即ち、図65および図66を参照するとまず初めにステップ390において放出完了フラグがセットされているか否かが判別される。放出完了フラグがセットされていなければ前処理Xのステップ391に進み、放出完了フラグがセットされていれば後処理Yのステップ400にジャンプする。ステップ391ではフラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがセットされているときにはステップ392に進んで図60に示される前処理、即ち膨張行程噴射に移行する前処理が行われる。これに対してフラグXがセットされていないときにはステップ393に進んで図59に示される前処理、即ち強成層状態から弱成層状態を経て均一混合気状態に移行する前処理が行われる。
次いでステップ394では前処理が完了したか否かが判別され、前処理が完了したときにはステップ395に進んで膨張行程噴射を行うことにより、或いは吸気行程噴射を行うことにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ396では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ397ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ398ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ399に進んで放出完了フラグがセットされ、次いでステップ400に進む。
ステップ400ではフラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがセットされているときにはステップ401に進んで図60に示される後処理、即ち膨張行程噴射完了後、強成層状態に移行する後処理が行われる。これに対してフラグXがセットされていないときにはステップ402に進んで図59に示される後処理、即ち均一混合気状態から弱成層状態を経て強成層状態に移行する後処理が行われる。次いでステップ403では後処理が完了したか否かが判別され、後処理が完了したときにはステップ404に進んでNOx 放出フラグおよび放出完了フラグがリセットされる。
図67は図13と同様なNOx 放出制御のタイムチャートを示している。図67においてY1 で示されるようにこれまで述べた実施例ではΣNOx >MAXになったときにNOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。この場合、どのような機関運転状態のときにΣNOx >MAXになるかはわからず、従ってどのような機関運転状態のときに平均空燃比A/Fがリッチにされるかはわからない。
ところで機関高負荷運転時には燃料噴射量が多く、従ってこのとき平均空燃比A/Fをリッチにするためには増量すべき燃料を多量に必要とする。これに対して機関低負荷運転時には燃料噴射量が少ないので少量の燃料を増量するだけで平均空燃比A/Fをリッチにしうる。従ってNOx 吸収剤26からのNOx 放出のために必要とされる増量すべき燃料量は機関負荷が低いときほど少量となり、斯くして燃料消費量を向上させるためには機関低負荷運転時にNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用を行われることが好ましいことになる。
そこでこれから述べる実施例では図67に示されるようにNOx 量ΣNOXに対して許容値MAXと下限値MINとの中間値である中間判定値MIDを設定し、NOx 量ΣNOXが許容値MAXには達していないが中間判定値MIDを越えている場合において機関低負荷運転が行われたときには図67においてY2 で示されるようにNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用を行わせるようにしている。このようにすると機関低負荷運転時においてNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる機会が増大し、斯くして燃料消費量を低減することができることになる。
図68は中間判定値MIDを用いた場合の実施例を示している。なお、この実施例において燃料噴射の制御のためには図20に示されるルーチンが用いられる。
図68を参照するとまず初めにステップ410においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになるとステップ413に進んでNOx 放出フラグがセットされる。従ってこのときには図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。一方、ステップ410においてΣNOX≦MAXであると判別されたときにはステップ411に進んでNOx 量ΣNOXが中間判定値MIDよりも大きいか否かが判別される。このときΣNOX>MIDであったとするとステップ412に進む。
ステップ412では車速センサ61(図57)の出力信号に基いて車両が停止中であるか否かが判別される。このとき車両が停止中であればステップ413に進んでNOx 放出フラグがセットされ、斯くして図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。車両が停止しているときには通常アイドリング運転が行われており、このときNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われるので燃料消費量を低減することができることになる。
図69は中間判定値MIDを用いた別の実施例を示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御のためには図20に示されるルーチンが用いられる。
図69を参照するとまず初めにステップ420においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになるとステップ424に進んでNOx 放出フラグがセットされる。従ってこのときには図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。一方、ステップ420においてΣNOX≦MAXであると判別されたときにはステップ421に進んでNOx 量ΣNOXが中間判定値MIDよりも大きいか否かが判別される。このときΣNOX>MIDであったとするとステップ422に進む。
ステップ422では車速センサ61(図57)の出力信号に基いて車両が停止中であるか否かが判別される。このとき車両が停止中であればステップ423に進んでニュートラル位置センサ62(図57)の出力信号に基いて自動変速機60がニュートラル位置にあるか否かが判別される。このとき自動変速機60がニュートラル位置にあればステップ423に進んでNOx 放出フラグがセットされ、斯くして図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。車両が停止しているときには通常アイドリング運転が行われており、このときNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われるので燃料消費量を低減することができる。また、この実施例では自動変速機60がニュートラル位置にあるときに平均空燃比A/Fがリッチにされるのでショックが発生するのを阻止することができる。
図70は中間判定値MIDを用いた更に別の実施例を示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御のためには図20に示されるルーチンが用いられる。
図70を参照するとまず初めにステップ430においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになるとステップ434に進んでNOx 放出フラグがセットされる。従ってこのときには図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。一方、ステップ430においてΣNOX≦MAXであると判別されたときにはステップ431に進んでNOx 量ΣNOXが中間判定値MIDよりも大きいか否かが判別される。このときΣNOX>MIDであったとするとステップ432に進む。
ステップ432では負荷センサ41の出力信号および機関回転数から減速運転中であるか否かが判別される。このとき減速運転中であればステップ433に進んでロックアップクラッチ69(図58)がオフであるか否かが判別される。ロックアップクラッチ69がオフのときにはステップ434に進んでNOx 放出フラグがセットされ、斯くして図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。車両減速時には燃料噴射量が少なく、このときNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われるので燃料消費量を低減することができる。また、この実施例ではロックアップクラッチ69がオフのときに平均空燃比A/Fがリッチにされるのでショックが発生するのを阻止することができる。
図71は中間判定値MIDを用いた更に別の実施例を示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御のためには図20に示されるルーチンが用いられる。
図71を参照するとまず初めにステップ440においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになるとステップ445に進んでNOx 放出フラグがセットされる。従ってこのときには図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。一方、ステップ440においてΣNOX≦MAXであると判別されたときにはステップ441に進んでNOx 量ΣNOXが中間判定値MIDよりも大きいか否かが判別される。このときΣNOX>MIDであったとするとステップ442に進む。
ステップ442では負荷センサ41の出力信号および機関回転数から減速運転中であるか否かが判別される。このとき減速運転中であればステップ443に進んでロックアップクラッチ69(図58)がオフであるか否かが判別される。ロックアップクラッチ69がオフのときにはステップ444に進んで機関回転数NEが予め定められた設定回転数NE0 よりも低いか否かが判別される。このときNE<NE0 であればステップ445に進んでNOx 放出フラグがセットされ、斯くして図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。車両減速時には燃料噴射量が少なく、しかもNE<NE0 のときには燃料噴射量が更に少なくなる。このようにこの実施例では燃料噴射量が極めて少ないときにNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われるので燃料消費量を低減することができる。また、この実施例ではロックアップクラッチ69がオフのときに平均空燃比A/Fがリッチにされるのでショックが発生するのを阻止することができる。
図72は中間判定値MIDを用いた更に別の実施例を示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御のためには図20に示されるルーチンが用いられる。
図72を参照するとまず初めにステップ450においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXを越えたか否かが判別される。ΣNOX>MAXになるとステップ453に進んでNOx 放出フラグがセットされる。従ってこのときには図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされ、NOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。一方、ステップ450においてΣNOX≦MAXであると判別されたときにはステップ451に進んでNOx 量ΣNOXが中間判定値MIDよりも大きいか否かが判別される。このときΣNOX>MIDであったとするとステップ452に進む。
ステップ452では負荷センサ41の出力信号および機関回転数から減速運転中であって燃料噴射が停止されておりかつエンジンブレーキ作用が行われるようにロックアップクラッチ69がオンになっているか否かが判別される。減速運転時であって燃料噴射が停止されておりかつロックアップクラッチ69がオンのときにはステップ453に進んでNOx 放出フラグがセットされ、斯くして図20に示すルーチンによって平均空燃比A/Fがリッチとされる。車両減速時には吸入空気量が少なく、従ってこのときには少量の燃料を噴射するだけで平均空燃比A/Fをリッチにすることができる。このようにこの実施例では少量の燃料を噴射するだけでNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われるので燃料消費量を低減することができることになる。
図73から図77に中間判定値MIDを用いた更に別の実施例を示す。この実施例ではΣNOX>MIDになるとMIDフラグがセットされ、図73に示されるようにMIDフラグがセットされているときに機関の運転状態が弱成層状態の中負荷運転から強成層状態とすべき低負荷運転に変化したときには暫らくの間、弱成層状態を継続させ、この間に吸気行程噴射量を増量させて平均空燃比A/Fがリッチにされる。次いでNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用が完了した後に平均空燃比A/Fがリッチからリーンに切換えられると共に弱成層状態から強成層状態に移行せしめられる。
即ち、この実施例ではMIDフラグがセットされているときに弱成層状態とすべき運転状態から強成層状態とすべき運転状態に変化したときには弱成層状態から強成層状態への移行を遅らせ、この間にNOx 吸収剤26からのNOx の放出作用を行わせるようにしている。このようにこの実施例においても機関負荷が低下したときに平均空燃比A/Fをリッチにするようにしているので燃料消費量を低減することができる。また、機関負荷が低負荷になって弱成層状態から強成層状態に移行した後に平均空燃比A/Fをリッチにするようにした場合には強成層状態から再び弱成層状態に戻された後に平均空燃比A/Fがリッチにされる。従って成層状態が頻繁に変化せしめられるために燃焼が不安定となり、トルク変動が生じる危険性がある。そこでこの実施例では機関負荷が低下したときには成層状態を変化させずにNOx の放出作用を行い、このNOx の放出作用が完了した後に成層状態を変化させるようにしている。
一方、この実施例では図74に示されるように機関低負荷運転時にMIDフラグがセットされてもこのときには平均空燃比A/Fのリッチ化を行わず、MIDフラグがセットされた後に機関負荷が低負荷運転から中負荷運転に移行したときにただちに弱成層状態において平均空燃比A/Fをリッチにするようにしている。この場合にも成層状態が頻繁に切換えられるのが阻止され、また比較的機関負荷の低いときにNOx の放出作用が行われる。
図75はフラグを制御するためのルーチンを示しており、このルーチンは一定時間毎の割込みによって実行される。
図75を参照するとまず初めにステップ460においてNOx 量ΣNOXが許容値MAXよりも大きくなったか否かが判別される。ΣNOX≦MAXのときにはステップ462にジャンプし、ΣNOX>MAXになるとステップ461に進んでNOx 放出フラグがセットされた後にステップ462に進む。ステップ462ではNOx 量ΣNOXが中間設定値MIDよりも多くなったか否かが判別され、ΣNOX>MIDになったときにはステップ463に進んでMIDフラグがセットされる。
図76および図77は燃料噴射の制御ルーチンを示しており、このルーチンは例えば一定時間毎の割込みによって実行される。
図76および図77を参照するとまず初めにステップ470においてNOx 放出フラグがセットされているか否かが判別される。NOx 放出フラグがセットされていないときにはステップ471に進んで実行フラグがセットされているか否かが判別される。この実行フラグはMIDフラグがセットされているときに機関負荷が中高負荷から低負荷に変化したとき、或いは低負荷から中高負荷に変化したときにセットされる。実行フラグがセットされていないときにはステップ472に進んでMIDフラグがセットされているか否かが判別される。MIDフラグがセットされていないときにはステップ475に進む。
ステップ475ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から吸気行程噴射量Q1 および圧縮行程噴射量Q2 が算出される。次いでステップ476ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図6に示す関係から噴射時期が算出され、次いでステップ477ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている図7に示す関係からスロットル弁23の開度が算出され、次いでステップ478ではアクセルペダル40の踏込み量Lおよび機関回転数Nに基いて予めROM33内に記憶されている関係からEGR弁29の開度が算出され、次いでステップ479ではアクセルペダル40の踏込み量Lに基いて予めROM33内に記憶されている図8に示す関係から吸気制御弁17の開度が算出される。
次いでステップ480ではアクセルペダル40の踏込み量LがL0 (図7)よりも低いか否かが判別される。L<L0 のときにはステップ481に進んで図14(A)に示すマップからNOx 放出量Aが算出される。次いでステップ482ではNOx 放出量Dが零とされ、次いでステップ485に進む。一方、ステップ480においてL≧L0 であると判別されたときにはステップ483に進んで図14(B)に示すマップからNOx 放出量Dが算出される。次いでステップ484ではNOx 吸収量Aが零とされ、次いでステップ485に進む。ステップ485ではNOx 吸収剤26に吸収されていると推定されるNOx 量ΣNOX(=ΣNOX+A−D)が算出される。次いでステップ486ではΣNOXが負になったか否かが判別され、ΣNOX<0になったときにはステップ487に進んでΣNOXが零とされる。
一方、ステップ472においてMIDフラグがセットされていると判断されたときにはステップ473に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL1 以下になったか否か、即ち機関負荷が中高負荷から低負荷に変化したか否かが判別される。L<L1 に変化したときでなければステップ474に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL1 以上になったか否か、即ち機関負荷が低負荷から中高負荷に変化したか否かが判別される。L>L1 に変化したときでなければステップ475に進む。
一方、MIDフラグがセットされた後、ステップ473においてアクセルペダル40の踏込み量LがL1 以下になった、即ち機関負荷が中高負荷から低負荷に変化したと判別されたときにはステップ488に進んで実行フラグがセットされ、次いでステップ489に進む。なお、一旦実行フラグがセットされると471からステップ489にジャンプする。ステップ489では吸気行程噴射と圧縮行程噴射が行われる弱成層状態とされ、図73に示されるようにこの弱成層状態において吸気行程噴射量が増量されることによって平均空燃比A/Fがリッチにされる。
次いでステップ490では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ491ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ492ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ493に進んでMIDフラグおよび実行フラグがリセットされる。これらフラグがリセットされると通常の強成層状態に移行せしめられる。
一方、MIDフラグがセットされた後にステップ474においてアクセルペダル40の踏込み量LがL1 以上になった、即ち機関負荷が低負荷から中高負荷に変化したと判別されたときにはステップ488に進んで実行フラグがセットされ、次いでステップ489に進む。ステップ489ではこのとき中負荷運転時であれば図74に示されるように吸気行程噴射と圧縮行程噴射が行われる弱成層状態とされ、この弱成層状態において吸気行程噴射量が増量されることによって平均空燃比A/Fがリッチにされる。一方、このとき高負荷運転時であれば均一混合気状態において平均空燃比A/Fがリッチとされる。
次いでステップ489,490,491を経てステップ492に進み、ΣNOX<MINになるとステップ493に進んでMIDフラグおよび実行フラグがリセットされる。これらフラグがリセットされると通常の弱成層状態又は均一混合気状態に戻される。
一方、ステップ470においてNOx 放出フラグがセットされたと判断されたときにはステップ494に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL1 よりも小さいか否かが判別される。L<L1 のときにはステップ496に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理Iが行われる。これに対してL≧L1 のときにはステップ495に進んでアクセルペダル40の踏込み量LがL2 よりも小さいか否かが判別される。L<L2 のときにはステップ497に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理IIが行われ、L≧L2 のときにはステップ498に進んで平均空燃比A/Fをリッチにするリッチ処理III が行われる。
図78から図81に更に別の実施例を示す。この実施例では図78および図79に示されるように点火栓10側方のシリンダヘッド4の内壁面中央部に空気噴射弁80が配置されている。NOx 吸収剤26からNOx を放出すべく平均空燃比A/Fがリッチにされたときにこの空気噴射弁80からはJで示されるように点火栓10周りの燃焼室5内に空気が噴射される。図78および図79に示す実施例ではこの空気噴射弁80からの空気の噴射作用は圧縮行程末期に行われる。
このように点火栓10の周りに空気が噴射されると点火栓10周りの混合気中の酸素濃度が高くなり、斯くして点火栓10の周りにたとえ過濃な混合気が形成されたとしても失火を生ずることなく良好な着火を確保することができる。
図80はこのような空気噴射弁80を用いた場合の機関低負荷運転時におけるNOx 放出制御の一例を示している。図80に示されるようにこの例においてはNOx 放出フラグがセットされる前は圧縮行程噴射のみが行われており、NOx 放出フラグがセットされても圧縮行程噴射のみが行われる。ただし、NOx 放出フラグがセットされると圧縮噴射量が増量せしめられると共に空気噴射弁80からの空気噴射が行われる。このとき圧縮噴射量の増量によって平均空燃比A/Fはリッチとなるが空気噴射弁80から噴射された空気によって点火栓10の周りには最適な空燃比の混合気が形成される。
図81は図80に示されるNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iを示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御ルーチンとして図20に示されるルーチンが使用される。図81を参照するとまず初めにステップ500において圧縮行程末期に空気噴射弁80を開弁する処理が行われる。次いでステップ501では圧縮行程噴射量を増量することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ502では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ503ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ504ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ505に進んで圧縮行程噴射量が減量され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ506では空気噴射弁80が閉弁状態に保持される。次いでステップ507においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図82および図83は吸気制御弁17(図3)を制御するようにした場合のリッチ処理を示している。図1から図5に示される実施例では機関低負荷運転時には吸気制御弁17が閉弁せしめられており、このとき燃焼室5内には旋回流S(図3)が発生せしめられる。圧縮行程時に噴射される燃料はこの旋回流によって予め定められた限られた領域内に集められ、この限られた領域内に集められた燃料が点火栓10によって着火せしめられる。
このように機関低負荷運転時に良好な着火が得られる強成層状態を作り出すには旋回流を発生させることが必要となることがあるが均一混合気状態にするためにはこのような旋回流は特に発生させる必要はない。そこで図82に示される実施例では平均空燃比A/Fをリッチにするときには吸気制御弁17を開弁せしめるようにしている。即ち、機関低負荷運転時におけるリッチ処理を表わしている図82に示されるようにNOx 放出フラグがセットされる前は圧縮行程噴射のみが行われており、このとき吸気制御弁17は閉弁している。これに対してNOx 放出フラグがセットされると圧縮行程噴射が停止せしめられると共に吸気行程噴射が開始され、このとき吸気制御弁17が開弁せしめられる。このときには平均空燃比A/Fがリッチである均一混合気が形成されてNOx 吸収剤26からのNOx 放出作用が行われる。
図83は図82に示されるNOx 放出制御を実行するためのリッチ処理Iを示している。なお、この実施例においても燃料噴射の制御ルーチンとして図20に示されるルーチンが使用される。図83を参照するとまず初めにステップ510で吸気制御弁17が全開せしめられる。次いでステップ511では圧縮行程噴射を停止し、吸気行程噴射を開始することにより平均空燃比A/Fがリッチとされる。次いでステップ512では図23からNOx 放出量D′が算出され、次いでステップ513ではNOx 量ΣNOXからNOx 放出量D′が減算される。次いでステップ514ではNOx 量ΣNOXが下限値MINよりも小さくなったか否かが判別される。ΣNOX<MINになるとステップ515に進んで吸気行程噴射が停止されると共に圧縮行程噴射が開始され、平均空燃比A/Fがリッチからリーンとなる。次いでステップ516では吸気制御弁17が全閉せしめられる。次いでステップ517においてNOx 放出フラグがリセットされる。
図84は燃焼室5内には燃料噴射弁を有しておらず、燃料噴射弁11が吸気枝管15に取付けられている内燃機関を示しており、本発明はこのような内燃機関にも適用することができる。このようないわゆるポート噴射式内燃機関では従来より種々の方法により混合気を成層化するようにしており、機関低負荷運転時に混合気を成層化するようにした内燃機関には全て本発明を適用することができる。例えば機関低負荷運転時に成層化するようにした内燃機関ではNOx 放出のために平均空燃比をリーンからリッチに切換えたときには成層化の度合が弱められるか、或いは均一混合気とされる。
また燃焼室5内に旋回流を発生させることにより成層化するようにした内燃機関ではNOx 放出のために平均空燃比をリーンからリッチに切換えたときには旋回流を弱めるか、或いは旋回流の発生を停止することにより成層化の度合が弱められるか、或いは均一混合気とされる。