JP3991702B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吹出空気の温度制御特性の確保と吹出風量増加とを両立させるエアミックス方式の車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置においては冷風と温風との風量割合を調整して車室内への吹出空気の温度を調整するエアミックス方式のものが代表的である。図6は従来装置の要部を示しており、ヒータユニットのケース21内に板状のエアミックスドア25を回転軸25aにより回転可能に内蔵している。そして、ケース21のうち、エアミックスドア25の軸方向の一方の側面部21eに入口開口部24を開口し、エアミックスドア上流側からの送風空気をこの入口開口部24を通過してケース内部のエアミックスドア25の回転作動空間31に流入させるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車室内への吹出空気の全量がこの入口開口部24を通過して流れるので、この入口開口部24の開口面積により車室内への吹出風量が大きく左右されることになる。この入口開口部24は通常、図6に示すように、エアミックスドア25の回転作動空間31の全範囲に対応する扇形状に設定されるが、この扇形状のドア回転作動空間31に対応する入口開口部24の開口面積だけでは、車室内への吹出風量が不足する場合が生じる。
【0004】
また、図7に示すように、エアミックスドア25の回転作動空間31の範囲内に吹出空気の温度制御特性の改善を目的としてガイド壁32(図7斜線部)を設定する場合があり、この場合はガイド壁32が入口開口部24の開口面積を縮小して、室内への吹出風量を減少させるという問題が生じる。
【0005】
そこで、従来では車室内への吹出風量を増加させる対策として、(1)エアミックスドア25の先端部を図6の2点鎖線▲1▼の位置まで外方側へ延長し、これに伴って、入口開口部24の開口面積も2点鎖線▲2▼の位置まで外方側へ拡大することが考えられるが、この対策はエアミックスドア25自身の大型化によりドア操作力が増大するという不具合が生じる。
【0006】
また、別の対策として、図8に示すように、エアミックスドア25の先端部外方側に入口開口部24の拡大部24bを設けて、入口開口部24の開口面積だけをエアミックスドア25の先端部外方側へ拡大することが考えられるが、この図8の対策および図6の対策のいずれも、図7の斜線部に示すガイド壁32を持たないので、本発明者の実験検討によると、車室内への吹出空気温度の制御特性が悪化することが判明した。
【0007】
すなわち、ガイド壁32は上流側のクーラユニット部からヒータユニットのケース21内に流入する冷風流れの調整作用を発揮するのであるが、ガイド壁32がないと、車両幅方向(図6、8の紙面垂直方向)の左右の吹出口への冷風流れの割合がアンバランスとなり、左右の吹出口間での温度差が拡大するという不具合が生じる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、車室内への吹出空気の必要吹出風量と、車室内への吹出空気の良好な温度制御特性とを両立することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れるケース(21)内に、板状のエアミックスドア(25)を回転軸(25a)により回転可能に配置し、ケース(21)のうち、エアミックスドア(25)の軸方向の一方の側面部(21e)に入口開口部(24)を開口し、エアミックスドア(25)上流側の空気を入口開口部(24)を通過してケース(21)内のエアミックスドア(25)の回転作動空間(31)に流入させるようになっており、回転作動空間(31)に流入した空気をエアミックスドア(25)の操作位置変化により加熱用熱交換器(22)と冷風バイパス通路(27)とに振り分けるようになっており、回転作動空間(31)のうち、エアミックスドア(25)の最大冷房側の所定範囲のみに、入口開口部(24)の開口面積をエアミックスドア(25)の先端部より外方側へ拡大する拡大部(24a)を形成し、一方、回転作動空間(31)のうち、エアミックスドア(25)の最大暖房側の所定範囲に、入口開口部(24)の開口面積をエアミックスドア(25)の先端部より内方側へ縮小するガイド壁(32)を形成し、
拡大部(24a)は、ケース(21)をエアミックスドア(25)の先端部より外方側へ所定寸法(L1)だけ突出することにより矩形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、入口開口部(24)の開口面積だけを拡大部(24a)によりエアミックスドア(25)の先端部より外方側へ拡大するので、この開口面積の拡大により車室内吹出空気の吹出風量を増加して、ドア操作力の増大なしで空調能力を増加できる。
【0011】
しかも、拡大部(24a)をエアミックスドア(25)の最大冷房側の所定範囲のみに形成し、かつ、ガイド壁(32)をエアミックスドア(25)の最大暖房側の所定範囲に形成するという組み合わせ構成を備えることにより、車室内への吹出空気の温度制御特性を良好に設定できる。
【0012】
すなわち、ケース側面部(21e)に配置した入口開口部(24)から空気(冷風)が流入する際に、エアミックスドア(25)が最大冷房側に操作されていると、ガイド壁(32)を形成していない場合には、入口開口部(24)からの空気が冷風バイパス通路(27)のうち空気流れの奥側(入口開口部(24)と反対側)に偏って多量に流れ込み、ケース幅方向での左右の吹出温度差が拡大するが、請求項1においては、入口開口部(24)からの空気が冷風バイパス通路(27)のうち空気流れの奥側に流れ込むことをガイド壁(32)により抑制して、ケース幅方向での左右の吹出温度差を僅少にできる。
【0013】
更に、最大冷房側の拡大部(24a)と最大暖房側のガイド壁(32)とを組み合わせることにより、後述するようにエアミックスドア(25)の操作位置変化(回転角度変化)に対して吹出空気温度を比例的に変化させるリニア性も良好に発揮できる。
【0014】
以上により、車室内への吹出空気の必要吹出風量の確保と、車室内への吹出空気の良好な温度制御特性とを両立できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、拡大部(24a)は、エアミックスドア(25)の全回転角度のうち最大冷房側の略50%の範囲に形成し、ガイド壁(32)はエアミックスドア(25)の全回転角度のうち最大暖房側の略50%の範囲に形成することを特徴とする。
【0016】
本発明者の実験検討によると、必要吹出風量の確保と、車室内への吹出空気の良好な温度制御特性とをバランスよく両立させるためには、アミックスドア(25)の全回転角度に対して、拡大部(24a)を最大冷房側の略50%の範囲にまた、ガイド壁(32)を最大暖房側の略50%の範囲にそれぞれ形成することが好ましい。
【0017】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2において、具体的には、エアミックスドア(25)の軸方向は車両幅方向に向いており、一方の側面部(21e)は車両幅方向の左右両側の側面部の一方であり、入口開口部(24)からケース(21)内の回転作動空間(31)に車両幅方向から空気が流入するようになっている。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態による右ハンドル車への車両搭載状態を示す概略配置図であり、図2は図1においてヒータ右側ケースを取り外した状態のA矢視図である。なお、図1、2の上下、左右、前後の各矢印は車両搭載状態での方向を示す。
【0020】
車両用空調装置における室内ユニットは、図1に示すごとく、送風機クーラユニット10と、ヒータユニット20の2つに大別されている。送風機クーラユニット10は車室内前部の計器盤内側において助手席側、すなわち、右ハンドル車であれば左側部位に配置され、ヒータユニット20は車室内前部の計器盤内側において車両幅方向の略中央部に配置される。
【0021】
送風機クーラユニット10は、外気(車室外空気)と内気(車室内空気)とを切替導入する内外気切替箱11を上方側に配置し、そして、内外気切替箱11の下方側に送風機部12を配置している。更に、送風機クーラユニット10において、送風機部12の右側部位(車両幅方向の中央部寄り部位)にクーラユニット部13を配置している。
【0022】
本例では、送風機部12とクーラユニット部13のケースを、樹脂により一体成形した上ケース14と下ケース15とにより構成している。上ケース14と下ケース15は分割線16にて上下方向で2分割され、ねじ等の締結手段を用いた複数箇所の締結部17にて一体に締結される。
【0023】
送風機部12は周知のように内外気切替箱11を通して吸入した空気を送風する遠心式送風ファン18、この送風ファン18を回転駆動するモータ18a、この送風ファン18を収容する樹脂製のスクロールケーシング14a、15a等から構成されている。スクロールケーシング14a、15aは上ケース14と下ケース15に一体成形されている。
【0024】
スクロールケーシング14a、15aの空気出口側は送風機部12の右側部位(車両幅方向の中央部寄り部位)に向いており、そして、スクロールケーシング14a、15aの空気出口側の右側部位にクーラ上ケース部14bとクーラ下ケース部15bが上ケース14と下ケース15の一部として一体成形されている。
【0025】
このクーラ上ケース部14bとクーラ下ケース部15bの内部に、送風機部12の送風空気を冷却する冷却用熱交換器19が配置される。ここで、冷却用熱交換器19は、車両エンジン(図示せず)にて駆動される圧縮機により冷媒が循環する冷凍サイクルの蒸発器により構成される。
【0026】
また、ヒータユニット20は樹脂製のケース21を有しており、このケース21は分割線21aにて図1に示すように左右に2分割された左ケース21bと右ケース21cとにより構成され、この左右の両ケース21b、21cは金属ばねクリップ、ねじ等の締結手段を用いた複数箇所の締結部21dにて一体に締結される。
【0027】
図2に示すようにケース21の内部において、底面側で、且つ、車両前方側の部位に加熱用熱交換器22が略水平に配置されている。この加熱用熱交換器22は車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱するものである。加熱用熱交換器22を通過した温風は、温風通路23を矢印aのように加熱用熱交換器22の下方側から車両後方側へ流れ、そして、車両後方側を上方へと上昇する。
【0028】
一方、ケース21において、加熱用熱交換器22の上方側で、且つ、クーラユニット部13側の左側の側面部21e(図1)に、ヒータユニット20の入口開口部24が開口している。この入口開口部24のうち最も車両後方側の部位にエアミックスドア25の回転軸25aが配置してある。この回転軸25aは車両幅方向(図2の紙面垂直方向)に延びるように配置され、この回転軸25aの軸方向の左右両端部はケース21の左右の側面部に設けられた軸受穴26に回転可能に支持される。
【0029】
エアミックスドア25は板状のドアであり、樹脂にて回転軸25aと一体成形される。回転軸25aの一端部はケース21の外部にてリンク機構等を介して温度調整機構に連結されて、この温度調整機構から回転軸25aに加えられる回転操作力にて回転軸25aと板状のエアミックスドア25が一体に回転する。
【0030】
エアミックスドア25は図2の実線で示す最大暖房位置(ドア開度=100%)と図2の破線で示す最大冷房位置(ドア開度=0%)との間で回転する。より具体的に説明すると、ケース21の内部には、入口開口部24の上方側に冷風バイパス通路27が配置され、この冷風バイパス通路27の周縁部に沿ってエアミックスドア25の最大暖房位置を規定するシール面28がケース21に一体成形されている。
【0031】
また、入口開口部24の下方側に加熱用熱交換器22の入口通風路29が配置され、この入口通風路29の周縁部に沿ってエアミックスドア25の最大冷房位置を規定するシール面30がケース21に一体成形されている。これにより、エアミックスドア25が最大暖房側のシール面28と最大冷房側のシール面30との間で回転するようになっている。従って、最大暖房側のシール面28と最大冷房側のシール面30との間に、回転軸25aを中心としてエアミックスドア25が回転する扇状の回転作動空間31が形成される。
【0032】
ここで、この扇状の回転作動空間31に対するヒータユニット20の入口開口部24の開口形状を図3により詳細に述べると、エアミックスドア25の先端部の外方側に入口開口部24の開口面積を拡大する矩形状の拡大部24aを設けている。この拡大部24aは、回転作動空間31に対してエアミックスドア25の先端部から更に外方側へ所定寸法L1だけ突出し、かつ、エアミックスドア25の最大冷房側の所定範囲θ1にわたって形成してある。
【0033】
一方、回転作動空間31のうち、エアミックスドア25の最大暖房側の所定範囲θ2においてエアミックスドア25の先端側領域にガイド壁32が形成してある。このガイド壁32は、ケース21のうちクーラユニット20側の左側の側面部21eにおいて、入口開口部24の開口面積をエアミックスドア25の先端部より内方側へ縮小するように形成された壁面であって、このガイド壁32はエアミックスドア25の最大暖房位置に近接するにつれてドア内方側へ拡大する三角状の形状で回転作動空間31の側面を覆うように形成される。このガイド壁32は、エアミックスドア25が最大暖房側のシール面28から開離して冷風バイパス通路27を開口したときに、入口開口部24から回転作動空間31を通過して冷風バイパス通路27に流入する冷風量を調整する作用を果たすものである。
【0034】
ここで、入口開口部24の形状の具体的設計例を述べると、エアミックスドア25の全長寸法L3は例えば、150mm程度で、エアミックスドア25の全回転作動角θは56°程度である。そして、エアミックスドア25の全回転作動角θに対して拡大部24aの形成範囲θ1とガイド壁32の形成範囲θ2は互いに略50%ずつであり、ほぼ同等である。拡大部24aの突出寸法L1は例えば、20mm程度で、拡大部24aの幅寸法L2は例えば、65mm程度である。
【0035】
エアミックスドア25が図2の実線で示す最大暖房位置と破線で示す最大冷房位置との中間位置に操作されると、入口開口部24から回転作動空間31に流入する冷風は、エアミックスドア25により冷風バイパス通路27を通過する冷風流れbと加熱用熱交換器22の入口通風路29を通過する冷風流れcとに振り分けられ、後者の冷風流れcは加熱用熱交換器22で加熱され、温風aとなる。一方、前者の冷風流れbは空気混合部33にて温風aと混合され、所望温度の空気となる。
【0036】
ケース21の上面部において車両前方側の部位にデフロスタ開口部34が開口し、このデフロスタ開口部34よりも車両後方側の部位にフェイス開口部35が開口し、ケース21の上部で車両後方側の面にフット開口部36が開口している。デフロスタ開口部34は車両窓ガラス内面に空調風を吹き出すためのものであり、フェイス開口部35は乗員の顔部側へ空調風を吹き出すためのものである。
【0037】
フット開口部36には下方へ垂下するフット吹出通路37が接続され、このフット吹出通路37の下部の左右両側に乗員の足元側へ空調風を吹き出すフット吹出口38が開口している。
【0038】
ケース21の上面部の下側には、デフロスタ開口部34、フェイス開口部35およびフット開口部36を切替開閉する吹出モードドア39が設けてある。この吹出モードドア39は半円筒状のドア本体39aを回転軸39bによりケース21に回転可能に支持し、半円筒状のドア本体39aの外周面の回転変位により各開口部34〜36を切替開閉する周知のロータリドア構造になっている。
【0039】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。送風機クーラユニット10のモータ18aに通電して遠心式送風ファン18を回転駆動すると、内外気切替箱11から内気または外気が吸入され、この吸入空気は更に送風ファン18により送風されてスクロールケーシング14a、15a内を通過してクーラ上ケース部14bとクーラ下ケース部15bの内部に流入する。
【0040】
そして、送風空気はこのクーラケース部14b、15b内の冷却用熱交換器19により冷却され冷風となる。この冷風は、ヒータユニット20のケース21の左側の側面部21eに開口する入口開口部24からエアミックスドア25の回転作動空間31に流入する。
【0041】
ここで、この入口開口部24からの流入冷風は、エアミックスドア25の操作位置(ドア回転角度)により冷風バイパス通路27を通過する冷風流れbと加熱用熱交換器22の入口通風路29に流入する冷風流れcとに振り分けられる。後者の冷風流れcは加熱用熱交換器22で加熱され、温風aとなる。前者の冷風流れbは空気混合部33にて温風aと混合され、所望温度の空気となる。すなわち、エアミックスドア25の操作位置(ドア回転角度)を実線で示す最大暖房位置と破線で示す最大冷房位置との間で調整することにより、温風aと冷風bとの風量割合を調整し、空気混合部33付近で混合される空気の温度、すなわち、車室内への吹出温度を所望の温度に調整できる。
【0042】
そして、吹出モードドア39の半円筒状ドア本体39aを回転操作して、デフロスタ開口部34とフェイス開口部35とフット開口部36の開閉を選択することにより、空気混合部33で混合された空調空気を所定の1つの開口部または複数の開口部から車室内へ吹き出すことができる。具体的には、周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモードを選択して、所望温度の空調空気を車室内の所定部位へ吹き出すことができる。
【0043】
次に、本実施形態の作用効果を説明すると、(1)入口開口部24に、エアミックスドア25の先端部より外方側へ拡大する拡大部24aを設けて、入口開口部24の開口面積のみを拡大しているから、エアミックスドア25の操作力の増大なしで、車室内への吹出風量を増加できる。
【0044】
(2)拡大部24aをエアミックスドア25の全回転角θのうち最大冷房側の所定範囲θ1だけに形成し、そして、最大暖房側の所定範囲θ2では、入口開口部24の開口面積をエアミックスドア25の先端部より内方側へ縮小するガイド壁32をケース側面部21eに形成しているため、車室内吹出空気の温度制御特性を次のように良好に設定できる。
【0045】
図6、図8の従来例のように入口開口部24にガイド壁32を設けない場合には、上流側のクーラユニット部13から冷風が入口開口部24を通過してヒータユニット20のケース21内に車両幅方向(図5、7の紙面垂直方向)に流入する。より具体的には、右ハンドル車の場合はクーラユニット部13からの冷風がケース21内を車両左側から車両右側へと流れる。
【0046】
このため、図6、図8の従来例では冷風がケース21内において車両左側領域よりも車両右側領域に偏って多く流れる。特に、フェイスモード時には、エアミックスドア25が最大冷房位置近傍に操作され、冷風バイパス通路27の開度が全開状態近傍にあるので、入口開口部24からの冷風がそのまま冷風バイパス通路27へ向かい、冷風バイパス通路27の車両右側領域に偏って冷風が多く流れる。その結果、ヒータユニット20のフェイス開口部35を経て車室内の乗員の顔部側へ吹き出すフェイス吹出温度が車両左側(右ハンドル車の助手席側)に比較して車両右側(右ハンドル車の運転席側)の方で、大幅に低下するという不具合を生じる。
【0047】
このことを実験データに基づいて具体的に説明すると、図4は本実施形態のフェイスモード時の温度制御特性を示す実験データであり、図5は前述の図6の従来例のフェイスモード時の温度制御特性を示す実験デーである。実験条件は、加熱用熱交換器22の温水温度:88℃、加熱用熱交換器22の温水流量:10リットル/min、加熱用熱交換器22の入口空気温度:5℃、送風機モータ18aの印加電圧:8V(中間風量に相当)である。図4、図5の横軸は、最大冷房位置を0とし、最大暖房位置を12とするエアミックスドア25の操作位置である。
【0048】
図5に示すように、従来例によると、エアミックスドア25の操作位置を最大冷房位置「0」から操作位置「1」以降に移動すると、車両右側(運転席側)のフェイス吹出温度が車両左側(助手席側)のフェイス吹出温度よりも6〜8℃程度低くなり、車室内の左右吹出吹出温度差が大きくなるので、フェイスモード時の空調フィーリングを悪化させる。
【0049】
これに対し、本実施形態によると、エアミックスドア25の全回転角θのうち、最大暖房側(冷風バイパス通路27側)の所定範囲θ2では、入口開口部24の開口面積をエアミックスドア25の先端部より内方側へ縮小するガイド壁32を設けているから、フェイスモード時にエアミックスドア25が最大冷房位置近傍に操作され、冷風バイパス通路27の開度が全開状態近傍になっても、入口開口部24から冷風がそのまま冷風バイパス通路27へ流入する量をガイド壁32によって抑制できる。
【0050】
これにより、フェイスモードに冷風バイパス通路27の車両右側領域に偏って冷風が流れる度合いを緩和して、車室内左右へのフェイス吹出温度差を顕著に縮小できる。具体的には、図4に示すように、エアミックスドア25の操作位置=「1」〜「5」の最大冷房近傍の操作範囲において、車室内左右へのフェイス吹出温度差を2〜3℃程度の僅少値に縮小でき、フェイスモード時の空調フィーリングを向上できる。
【0051】
また、拡大部24aをエアミックスドア25の全回転角θのうち最大冷房側の所定範囲θ1に形成し、そして、ガイド壁32を最大暖房側の所定範囲θ2に形成しているため、エアミックスドア25の開度変化に対する吹出空気温度変化のリニア性を良好に確保できる。
【0052】
すなわち、ガイド壁32をもし最大冷房側の所定範囲に形成すると、エアミックスドア25の操作位置を最大冷房位置(ドア開度:0%)から最大暖房側へ移動させたときに、加熱用熱交換器22への流入空気(冷風)の増加割合が僅少となり、その結果、エアミックスドア25の開度増加に対する吹出空気温度の上昇割合が僅少となる。これにより、エアミックスドア25の最大冷房位置近傍における吹出空気温度変化のリニア性を悪化させる。
【0053】
また、逆に、エアミックスドア25の操作位置を最大暖房位置(ドア開度:100%)から最大冷房側へ移動させるときに、最大暖房側にガイド壁32が形成してないと、最大暖房近傍におけるエアミックスドア25の操作位置変化(ドア開度減少)により冷風バイパス通路27へ流入する空気(冷風)が急激に増加して吹出空気温度を急低下させるという現象が発生する。
【0054】
しかし、本実施形態によると、エアミックスドア25の最大冷房側には拡大部24aを設けてガイド壁32は最大暖房側に設けているから、エアミックスドア25の操作位置を最大冷房位置(開度:0%)から最大冷房側へ移動させたときに、拡大部24aの通過空気もドア操作位置の変化(ドア開度の増加)に伴って加熱用熱交換器22に流入させることができる。そのため、エアミックスドア25の開度増加に伴って加熱用熱交換器22への流入空気(冷風)を比例的に増加させることができ、エアミックスドア25の開度増加に比例して吹出空気温度を上昇させることができる。
【0055】
また、エアミックスドア25の操作位置を最大暖房位置(ドア開度:100%)から最大冷房側へ移動させるときは、エアミックスドア25の最大暖房側に設けたガイド壁32によって冷風バイパス通路27への流入空気量の急増を抑制して吹出空気温度の急低下を防止できる。これにより、エアミックスドア25の操作位置変化(ドア開度減少)に比例して吹出空気温度を低下させることができる。
【0056】
以上の結果、本実施形態によると、エアミックスドア25の最大冷房側近傍および最大暖房側近傍の双方において、エアミックスドア25の開度変化に対する吹出空気温度変化のリニア性を確保でき、良好なる温度制御特性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による車両用空調装置の室内ユニットの概略正面図である。
【図2】図1のヒータユニット部の左右分割ケースの片側を取り外した状態を示すA矢視図である。
【図3】図2の要部の拡大説明図である。
【図4】本発明の一実施形態によるフェイスモード時の吹出空気温度特性を示すグラフである。
【図5】従来技術によるフェイスモード時の吹出空気温度特性を示すグラフである。
【図6】従来技術の要部の拡大説明図である。
【図7】別の従来技術の要部の拡大説明図である。
【図8】更に別の従来技術の要部の拡大説明図である。
【符号の説明】
21…ケース、21e…側面部、22…加熱用熱交換器、24…入口開口部、
24a…拡大部、25…エアミックスドア、25a…回転軸、
27…冷風バイパス通路、31…回転作動空間、32…ガイド壁。
Claims (3)
- 車室内へ向かって空気が流れるケース(21)内に、板状のエアミックスドア(25)を回転軸(25a)により回転可能に配置し、
前記ケース(21)のうち、前記エアミックスドア(25)の軸方向の一方の側面部(21e)に入口開口部(24)を開口し、
前記エアミックスドア(25)上流側の空気を前記入口開口部(24)を通過して前記ケース(21)内の前記エアミックスドア(25)の回転作動空間(31)に流入させるようになっており、
前記回転作動空間(31)に流入した空気を前記エアミックスドア(25)の操作位置変化により加熱用熱交換器(22)と冷風バイパス通路(27)とに振り分けるようになっており、
前記回転作動空間(31)のうち、前記エアミックスドア(25)の最大冷房側の所定範囲のみに、前記入口開口部(24)の開口面積を前記エアミックスドア(25)の先端部より外方側へ拡大する拡大部(24a)を形成し、
一方、前記回転作動空間(31)のうち、前記エアミックスドア(25)の最大暖房側の所定範囲に、前記入口開口部(24)の開口面積を前記エアミックスドア(25)の先端部より内方側へ縮小するガイド壁(32)を形成し、
前記拡大部(24a)は、前記ケース(21)を前記エアミックスドア(25)の先端部より外方側へ所定寸法(L1)だけ突出することにより矩形状に形成されていることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記拡大部(24a)は、前記エアミックスドア(25)の全回転角度のうち最大冷房側の略50%の範囲に形成され、
前記ガイド壁(32)は前記エアミックスドア(25)の全回転角度のうち最大暖房側の略50%の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。 - 前記エアミックスドア(25)の軸方向は車両幅方向に向いており、前記一方の側面部(21e)は車両幅方向の左右両側の側面部の一方であり、
前記入口開口部(24)から前記ケース(21)内の前記回転作動空間(31)に車両幅方向から空気が流入するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
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