JP3986187B2 - 変位計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複数のリンクを屈曲自在に接続した変位計を地上および地中またはそれらに設置した構造物に安定かつ合理的に取付けられ、地盤や構造物等の変位を正確かつ精密に計測し、測定精度の信頼性を向上できるとともに、変位計の設置スペースのコンパクト化と、その設置作業およびメンテナンスを簡易かつ迅速に行なえるようにした変位計に関する
【0002】
【従来の技術】
例えば、地盤の変状を長いスパンに亘って計測でき、しかもこれを従来の傾斜計よりも安価に提供できる変位計を、出願人は特願平10−222335号として既に提案している。
この変位計は、両端部に芯部材をビス止めした中空円筒状の中継筒と、前記芯部材に水平または垂直方向にピン止めした中空のセンサーフレームとからなり、該フレームの内部に長尺のバネ板を水平または垂直方向に変位可能に設け、該バネ板の変位を内蔵した歪ゲージを介して出力するようにしている。
【0003】
そして、上記変位計を介し例えば線路の地盤の変状を計測する場合は、軌道に設定した二つの不動点の間に支持部材を取付け、該支持部材の中空円筒部に前記複数の変位計を接続して挿入していた。
【0004】
しかし、この従来の変位計の取付け法は、支持部材の中空円筒部に変位計を緊密に挿入しているため、変位計の取付けおよび取出しが煩雑で手間が掛かるとともに、上記取付け時にバネ板を内蔵した筒体が微かに捩れて円周方向に移動し、かつこの移動量が隣接の変位計に累積する結果、地盤の水平および垂直変位を正確に計測することが困難になり、計測の信頼性が得られなくなる等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、複数のリンクを屈曲自在に接続した変位計を地上および地中またはそれらに設置した構造物に安定かつ合理的に取付けられ、地盤や構造物等の変位を正確かつ精密に計測し、測定精度の信頼性を向上できるとともに、変位計の設置スペースのコンパクト化と、その設置作業およびそのメンテナンスを簡易かつ迅速に行なえるようにした変位計を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、被計測対象に取り付け可能な外枠と、該外枠の内面に係合可能な一対の緩衝部材を外周面に装着し、該緩衝部材を介して外枠の内側に付勢される支持枠と、該支持枠の両側に配置する一対のセンサーフレームと、該一対のセンサーフレームは互いに直交方向へ折曲または回動可能で、それらの内部に変位検出部材を同動可能に収容した変位計において、前記外枠と支持枠を大小の矩形管で構成し、その内外の各辺を対向配置するとともに、前記一対の緩衝部材を支持枠の相直交する二辺に配置し、該一対の緩衝部材を外枠の相直交する二辺の内面に係合可能に配置するとともに、前記支持枠の相直交する他の二辺に一対の係合部材を配置し、該一対の係合部材を外枠の相直交する他の二辺の内面の定位置に係合可能に配置し、前記一対の係合部材を介して前記一対のセンサーフレームを互いに直交方向へ折曲または回動可能にし、外枠と支持枠の内外の各辺の位置を正確かつ安定して位置決め可能にするとともに、支持枠を相直交する二方向に付勢し、支持枠と一対のセンサーフレームの捩れを防止し、外枠と支持枠を正確に設置し得るようにし、かつそれらのセンタリングを増進させる一方、支持枠および一対のセンサーフレームを外枠の内側の定位置で安定して支持し、かつ一対の係合部材を支点として、一対のセンサーフレームを互いに直交方向へ折曲または回動を可能にし、それらの変位を正確かつ精密に形成させ、被計測対象の変状を正確かつ精密に計測し得るようにしている。
請求項2の発明は、緩衝部材を略く字形状に形成し、該緩衝部材の端部を前記外枠の天井側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置して、緩衝部材の付勢力を向上するとともに、外枠に対する係合部を二箇所設けて支持枠に安定した付勢力を作用させ、また各緩衝部材を外枠の相直交する二辺に係合させて、支持枠に対する付勢力を相直交する二方向から作用させ、更に重力による付勢力の低下を回避して、確実かつ安定した付勢力を作用させるようにしている。
【0007】
請求項3の発明は、係合部材をコ字形断面の屈曲片で構成し、該屈曲片の端縁を前記外枠の底部側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置して、係合部材の強度を向上するとともに、外枠に対する安定した係合作用を得られるとともに、外枠の相直交する二位置で支持枠ないし一対のセンサーフレームを支持し、かつその際重力作用を利用して安定した係合を図り、前記緩衝部材の付勢力に対抗させさせるようにしている。
請求項4の発明は、各緩衝部材の両端部に前記外枠の各内面を走行可能なロ−ラを設け、前記屈曲片の両端縁に外枠の内面を走行可能なロ−ラを設けて、外枠に対する変位計の出し入れを容易かつ速やかに行え、それらのメンテナンスを容易に行えるとともに、その際、各ロ−ラが外枠内面の四辺を移動することで、変位計の捩りを防止し正確かつ安定して設置し得るようにしている。
請求項5の発明は、緩衝部材を支持枠の軸方向に配置し、前記緩衝部材の長さ方向の略中心に前記屈曲片ないしロ−ラを配置して、緩衝部材による安定した付勢力を得られるとともに、緩衝部材の長さ方向の略中心で係合することにより、変位計をシ−ソ−状に支持して、該ロ−ラを支点として一対のセンサ−フレ−ムを互いに直交方向に折曲しまたは回動させるようにしている。
【0008】
請求項6の発明は、係合部材の内側をケ−ブル収納部とし、信号ケ−ブルの外枠内での配線の合理化と保護を図るようにしている。
請求項7の発明は、外枠の外周面の一辺に敷板を一体的に取り付け、前記敷板を被計測対象に直接設置して固定し、外枠と敷板を一体化し、敷板で感知した被計測対象の変状を外枠に確実に伝えるとともに、敷板を介して変位計を安定して設置し、かつ被計測対象の変状を平坦面で広域かつ確実に感知し、設置の簡便化と変状計測の精度向上を図るようにしている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を線路を支持する道床ないし路盤の変位計測に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図6において1は路盤を構成する地山で、その上部に砕石、砂利等で形成した道床2が設けられ、該道床2上に枕木3を介してレール4が敷設されている。
図中、5は枕木3上に設けたレール固定金具である。
【0019】
前記何れか一方のレール4に近接する道床2上の一定区間に、敷板6がレール4に沿って配置され、該板6が路盤1や道床2と一体的な固定部材、実施形態では長尺なアンカーボルト7を介して固定されている。
前記アンカーボルト7は道床2を貫いて路盤1に打ち込まれ、敷板6を安定かつ強固に保持するとともに、敷板6と路盤1ないし道床2とを同動可能にしている。図中、8はアンカーボルト7の上端部にねじ込んだナットである。
【0020】
前記敷板6上に、該板5と略同長の外枠9が溶接等で一体的に固定され、敷板6を介し外枠9と前記路盤1ないし道床2とが同動可能に取付けられている。
外枠9は矩形断面のステンレス鋼管で構成され、その軸方向の剛性は路盤1ないし道床2等の被計測対象の剛性以下に設定され、被計測対象の垂直または水平若しくはこれらの複合変位を変位計10に忠実に伝え、かつ当該変位の減衰および増幅を防止している。
この場合、上記剛性を得るために外枠9を合成樹脂材等の適宜部材で構成したり、外枠9にスリットを設けて剛性を調整することも可能である。
【0021】
前記外枠9の内部に前記変位計10が抜き差し可能に収容され、該変位計10は複数のリンクを屈曲可能に連結して構成されている。
すなわち、変位計10はリンクを構成する支持装置11と、矩形のアルミニウム管製の中継枠12と、内部に変位検出部材である板バネ13を収容した中空円筒状のセンサーフレーム14a,14bとからなり、支持装置11の両側にセンサーフレーム14a,14bを連結し、該フレーム14a,14bの一端部に中継枠12を連結している。
【0022】
前記中継枠12はアルミニウム製の矩形管で構成され、その長さは被計測対象に要求される計測精度によって選択的に決定される。
すなわち、被計測対象の単位長さ当たりの変位計10による計測精度は、設置するセンサーフレーム14a,14bの個数に比例し、前記センサーフレーム14a,14bを高密度に配置することで達成される。
【0023】
この場合、センサーフレーム14a,14bや支持装置11の長さを、前記条件に応じて調節することは、困難であり合理性を失するため、中継枠12の長さを計測条件および計測環境によって調整している。
したがって、非常に高い計測精度の要請に際しては、究極的には中継枠12の採用が省略され、支持装置11とセンサーフレーム14a,14bのみの構成になる。
【0024】
前記中継枠12の両端部に継手15a,15bの一端がビス17を介して接続され、該継手15a,15bの他端部にピン18,19を介して、センサ−フレ−ム14a,14bの一端部を回動可能に連結している。
前記継手15a,15bは実質的に同一に構成され、これらを互いに90°位相をずらせて配置している。
したがって、センサ−フレ−ム14aはピン18の軸方向と直交方向、つまり水平方向へ動可能に枢着され、センサ−フレ−ム14bはピン19の軸方向と直交方向、つまり垂直方向へ動可能に枢着されている。
【0025】
前記センサーフレーム14a,14bの他端部に、ビス17を介して継手16a,16bの一端が接続され、該継手16a,16bの他端部に中継枠12の一端がビス17を介して接続されている。
前記継手16a,16bは実質的に同一に構成され、それらの一端部に平坦な当接面20が軸方向に沿って形成され、該当接面20の位相を互いに90゜ずらせて配置され、これらの当接面20に前記板バネ13の自由端部が当接可能に配置されている。
【0026】
実施形態では、当接面20をセンサーフレーム14a,14bの中心線Lよりも板バネ13の弾性変位方向と反対方向へ偏位して配置し、該当接面20に板バネ13の自由端部を常時当接させ、該板バネ13による微かな変位を検出可能にしている。
【0027】
そして、前記板バネ13の基端部の両側に、変位変換手段である一対の歪ゲージ(図示略)が取付けられ、該ゲージによって板バネ13の歪量をセンサーフレーム14a,14bの水平および垂直変位に変換可能にしている。
このようにして、以下、センサーフレーム14a,14b、支持装置11、中継枠12を前記順序で同様に連結している。
【0028】
この場合、支持装置11の両端部に必ず異種のセンサーフレーム14a,14bを配置する必要はなく、被計測対象の変位に応じて選択する。
例えば、被計測対象の水平方向の変位のみを計測する場合は、同種のセンサフレーム14bのみを用い、被計測対象の垂直方向の変位のみを計測する場合は、同種のセンサーフレーム14aのみを用いる。
【0029】
一方、前記支持装置11は、支持枠37と、緩衝部材である板バネ22と、ケーブル収納部23とから構成されている。このうち、支持枠37は前記中継枠12と同形断面の管材で構成され、板バネ22は略く字形状に形成され、その長さは支持枠37よりも若干長尺に形成されていて、その中央部を支持枠37の中央部に、ボルト24またはビスを介して固定している。
【0030】
板バネ22の両端部は支持枠37の外側に突出し、該両端部にブラケット25を介して、可動手段であるローラ26を回転自在に支持し、これらのローラ26を前記板バネ22の弾性を介して、外枠9の内面に係合可能に付勢している。
【0031】
前記ケ−ブル収納部23は略コ字形断面に形成され、これをボルトまたはビスを介して支持枠37の中央部に固定し、その内側に前記歪ゲ−ジおよび変位量変換手段に接続する複数のケ−ブル27が収容されている。
また、各ケ−ブル収納部23の係合部材である相対する屈曲片28の先端部に、可動手段であるロ−ラ29が回転自在に支持され、該ロ−ラ29が前記板バネ22の弾性を介して、外枠9の内面に係合可能に付勢されている。
【0032】
このように構成した変位計を組み付ける場合は、中継枠12と、選択したセンサーフレーム14a,14bと、支持装置11とを計測条件に応じて所定数準備する。
すなわち、変位計10の設置長さと、要求される計測精度によって、設置スペースに配置するセンサーフレーム14a,14bの設置密度ないし設置数を求め、これに応じて中継枠12の長さを決定し、当該長さに中継枠材を裁断する。
【0033】
また、支持枠37は中継枠12と同一の管材を共用し、これを所定長さに切断し、該支持枠37の隣接する一対の外周面に、ロ−ラ26,29を外向きにして板バネ22をボルト止めまたはネジ止めする。
また、支持枠37の他の隣接する一対の外周面にケ−ブル収納部23をボルト止めまたはネジ止めし、また外枠9を計測長相当に管材を切断して構成し、該枠9の外周面に敷板6を溶接等で一体に取付ける。
【0034】
そこで、これらの構成部材を用いて変位計10を道床2上に設置する場合は、レール4に沿う道床2上に二つの不動点を設定し、この不動点は工事や地下構造物による影響を回避して設定され、該不動点の間を変位計10の設置スペースとする。
【0035】
そして、前記設置スペースに外枠9と一体の敷板6を配置し、これをアンカーボルト7およびナット8を介して道床2および路盤1に固定する。
この場合、設置スペースは特別平坦に整地する必要がないから、この種の設置を容易に行なえる。
こうして、外枠9を道床2上に設置したところで、変位計10を順次組み立て、これを順次外枠9の一端から挿入する。
【0036】
変位計10を組み立てる場合は、支持枠37の両端部に一対の継手15a,15bをビス止めし、該継手15b,16aにセンサ−フレーム14a,14bをピン止めし、該フレーム14a,14bの他端部に継手16a,16bを介して中継枠12を支持枠37と同相に連結し、以降、前記順序で各構成部材を継ぎ足し、これらを順次伸長する。
【0037】
例えば支持枠37の一端に継手15aをビス止めし、該継手15aの他端部にピン18を介して、センサ−フレーム14aの一端を回動可能に連結し、該フレーム14aの他端に継手16aをビス止めする。
そして、前記継手15aの内側に、予め歪ゲージ(図示略)を取付けた板バネ13の基端部を組み込み、板バネ13の自由端部を継手16aの当接部20に当接させて取付ける。
【0038】
そして、ケーブル27の一部をケーブル収納部23内に収容したところで、例えば前記支持装置11とセンサ−フレーム14aのアセンブリを、支持枠37を先頭に外枠9内に押し込む。
【0039】
このようにすると、前方のローラ26が外枠9内に進入し、該ローラ26を取付けた板バネ22が自身の弾性に抗して外枠9の内側へ変位し、支持枠37の進入を促す。
前記ローラ26の進入後、ローラ29を介してケーブル収納部23が外枠9内に進入し、次いで後方のローラ26が外枠9内に進入して、支持枠37が外枠9内に押し込まれる。
【0040】
この状況は図3および図5並びに図6のようで、支持枠37が相直交配置した二つの板バネ22の弾性によって、水平かつ下向きに付勢され、これに各ケーブル収納部23が水平または下向きに押圧され、各一対のローラ29が外枠9の内面に係合する。
【0041】
この結果、板バネ22とケーブル収納部23が定位置を保持し、かつ支持枠37が外枠9の略中央位置で外枠9と同軸に位置する。
この場合、支持装置11の位置を変えて外枠9に挿入することも可能であるが、図示のように一方の板バネ22を支持枠37の上端に配置すれば、板バネ22の重量が自身の弾性に付加し、ケーブル収納部23に対する付勢力が増強されるから、それらの定着が増進される。
【0042】
こうして、支持枠37を更に押し込むと、前記ローラ26,29が外枠9内面を転動して、センサ−フレーム14aが容易かつ速やかに外枠9内に挿入される
【0043】
そして、センサ−フレーム14aの後部側の継手16aが、外枠9の一端から外側へ若干突出する位置へ移動したところで、前記押し込みを停止し、前記継手16aの後部に中継枠12の一端部をビス止めし、該筒12の他端部に継手16bをビス止めする。
【0044】
この後、前記継手16bにセンサーフレーム14bの前端部をネジ止め、該フレーム14bの後端部をピン19を介して回動可能に連結し、これら継手15b,16bの間に歪ゲージ(図示略)を取付けた板バネ13を組み付ける。この場合、板バネ13は先行の板バネ13と直交して配置する。
この後、ケーブル27の一部をケーブル収納部23内に収容し、中継枠12とセンサ−フレーム14bのアセンブリを外枠9内に押し込む。
【0045】
そして、センサ−フレーム14bの後部が、外枠9の一端から外側へ若干突出する位置へ移動したところで、前記アセンブリの押し込みを停止し、センサ−フレーム14bの後部に継手15baをビス止めし、該継手15bに支持枠37を連結し支持装置11を接続する。
以後、順次変位計10を組み足し、これを外枠1内に挿入する。
【0046】
こうして、変位計10を外枠9と略同長組み足したところで、上記組み付けを終了し、外枠9の両端部を閉塞するとともに、不動点に位置する変位計10の両端部、実施形態では支持枠37の少なくとも一方を軸方向に無拘束状態に設置し、当該部の挙動の自由度を維持させる。
実施形態では、支持枠37は一対の板バネ22の弾性によって、水平および垂直方向の挙動が許容されるから、前記設置状態を満足する。
【0047】
このように変位計10の設置に際し、変位計10を順次組み足して外枠9に組み込んでいるから、所定長さに組み付け終えた長尺な変位計10を一時に外枠9に挿入する方法に比べ、変位計10の取り扱いが至便になり、また支持装置11や中継枠12、センサーフレーム14a.14bを外枠9内の定位置に正確に位置付けられ、しかも作業スペースがコンパクトになる。
【0048】
この取付け状況は図4および図6のようで、支持装置11の両側にセンサーフレーム14a,14bが配置され、これらセンサーフレーム14a,14bの他端部に中継枠12,12が配置され、中継枠12と支持枠37および外枠9が互いに同相に配置され、かつ各支持枠37の板バネ22とケーブル収納部23とが同相に配置されている。
また、変位計10が外枠9の略中央に同軸状に配置され、当該位置を板バネ22,22を介して保持している。
【0049】
したがって、センサーフレーム14a,14bは、その間に配置した支持装置11によって、前記押し込み時や自重の撓みによる位置ずれや捩れを阻止され、該フレーム14a,14b内の板バネ13を正確に垂直または水平に位置付け、または同相に位置付け、それらの正確な変位の検出を可能にする。
【0050】
こうして設置した外枠9および変位計10は、小形でレール4から所定距離離間しているから、電車等の走行に支障を来さない。
また、変位計10は外枠9に収納されているから、雨水や塵埃の侵入を防止され、良好な使用状態を得られる。
【0051】
このような変位計10において、路盤1が上下若しくは左右またはこれらの複合方向に変動すると、道床2が同様に変動し、この変動がアンカーボルト7および道床5を介して敷板6に伝達され、該板6が同様に変位して、敷板6上の外枠9がこれに同動する。
【0052】
このため、外枠9が上記変動に従って変位し、該枠9に係合する支持装置11を介して、その一側のセンサ−フレ−ム14bがピン19を中心に垂直方向へ回動し、他側のセンサ−フレ−ム14aがピン18を中心に水平方向へ回動し、これらセンサ−フレ−ム14a,14b内部の板バネ13がこれに同動して弾性変位し、該バネ13の基端部に前記弾性変位相当の歪が形成される。
【0053】
前記歪み量は歪ゲージ(図示略)によって検出され、これが板バネ13の回動角度ないし弾性変位に変換されて出力される。
また、前記センサーフレーム14a,14bの回動変位は他端に接続した中継枠12,12を介して軸方向へ伝達され、変位を中継する作用をなす。
【0054】
したがって、各センサーフレーム14a,14b内の板バネ13の変位を、水平および垂直変位に分けて配置順に刻々とコンピュータに入力し、前記変位を累積処理すれば、路盤1ないし道床2の変状をリアルタイムで監視し得る。
この場合、センサーフレーム14a,14b内の板バネ13は、前述のように支持装置11によって垂直または水平に位置し、対応する垂直または水平変位を正確に検出するから、計測の正確性と信頼性が向上する。
【0055】
また、各支持装置11周辺の外枠9の変位は、一対のローラ26を介して板バネ22の弾性に一部を吸収され、換言すれば緩衝されて、支持枠37が上下または左右方向に緩やかに変位する。
すなわち、板バネ22は外枠9の急激かつ過渡的な変位を緩和しまたは捨象し、外枠9と変位計10との変位の同調を促し、外枠9と変位計10との同期変位を図って、路盤1ないし道床2の変状の忠実かつ正確な計測を促す。
【0056】
一方、外枠9の変位は、板バネ22の一対のローラ26を介して、対応するケーブル収納部23のローラ29で実質的に一点支持されているから、外枠9の微かな変位に支持枠37が敏感かつ速やかに揺動し、これを隣接するセンサーフレーム14a,14bに伝えて、外枠9の変位を敏感かつ速やかに計測する。
【0057】
このようにこの実施形態は、変位計10を地上に設置し、路盤1ないし道床2の変状を正確かつ精度良く計測し得るようにしたものである。
なお、設置後、変位計10を整備点検する場合は、板バネ22の弾性に抗して外枠9の一端から変位計10を引き抜き、該当部を取出して分解すれば良く、その際ローラ26,29によって変位計10を容易かつ円滑に取り出せるから、メンテナンスに至便である。
【0058】
図7乃至図は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分には同一の符号を用いている。
このうち、図7は本発明の第2の実施形態の要部を示し、変位計10を支持装置11とセンサ−フレ−ム14a,14bとで構成し、これらを交互に連結して、中継枠12を省略している。
【0059】
すなわち、この実施形態は支持枠37を長尺に形成し、その両端部に一対の板バネ31,32の一端部を固定し、その他端部をローラ26を介して外枠9の内面に係合可能に付勢し、前記ローラ26と対応する支持枠37の外面にケーブル収納部23を配置している。
【0060】
したがって、中継枠12の省略分部品点数が低減し、構成が簡単になる。なお、センサーフレーム14a,14bの設置数を増やし計測精度を向上する場合は、支持枠32の長さを調整することで行ない、支持枠37が中継枠12の機能を兼備する。
【0061】
図8は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態は変位計10を収容した外枠9を屋外に立設した構造物33、例えばRC連続壁、山留鋼管、山留鋼矢板、ビルの壁面等に敷板6を介して上下方向または左右方向に取付け、掘削進行に伴う山留壁の変状や建築物の変状を計測するようにしている。
【0062】
この実施形態は、前記路盤1や道床2の変状の計測に比べ、外枠9をボルト34やビス若しくは接着剤を介して容易に行なえる。
この場合、敷板6の代わりに後述のようなクリップを用いることも可能で、そのようにすることで外枠9の取付けが一層簡便になる。
【0063】
9は本発明の第4の実施形態を示し、変位計10を地下構造物36に設置し、該構造物36の変状を計測する例を示している。
この場合は、地山ないし路盤1を掘削して地下構造物36を表出させ、該構造物36に外枠9を固定し、該枠9内に図1乃至図6の変位計10を設置し、この後前記掘削土砂を埋め戻し、外枠9を埋め込む。
このようにすると、外枠9が地中に浸透する雨水や土圧から変位計10を保護し、該変位計10の良好な使用状態を形成する。
【0064】
図10乃至図14は本発明の応用形態を示し、前述の実施形態の構成と対応する部分には同一の符号を用いている。
このうち、図10乃至図12は本発明の第1の応用形態を示し、屋内設置型の変位計10を示している。
この変位計10は、センサ−フレ−ム14a,14bと、緩衝部材22を省略した長尺な支持枠37とを交互に連結して構成し、前述の中継枠12を省略している。
そして、この変位計10を構造物33の壁面等に設置する場合は、支持枠37の複数箇所をゴム等の柔軟な弾性部材からなるクリップ35を介して直接設置する。
【0065】
したがって、この第1の応用形態は中継枠12の省略分、部品点数が低減し構成が簡単で小形軽量になり、これを安価に製作できるとともに、設置スペ−スもコンパクトになって、設置スペ−スの確保が容易になる。
しかも、支持枠37を介し変位計10を構造物33に直接設置しているから、構造物33の変位を一層正確かつ精度良く計測し得る。
この場合、クリップ35はその柔軟な弾性ないし伸縮作用を介して、支持枠37の様々な変位を許容し、構造物33の正確な変位計測を促す。
【0066】
図13は本発明の第応用形態を示し、これは第1の応用形態の変形例であって、地山1に敷板6を介して変位計10を直接設置し、地山1の変状を正確かつ精密に計測可能にしており、その他の効果は前述の応用形態と同様である。
すなわち、この場合は地山1の設置スペ−スに中継枠12を固定した敷板6を敷設し、前記中継枠12の周面にクリップ35を装着し、その脚部を敷板6と一緒にアンカ−ボルト7を介して地山1に固定している。この場合、変位計10の上方に適当な雨水除けを設けることが望ましい。
【0067】
図14は本発明の第応用形態を示し、これは第2の応用形態の変形例であって、地中に敷板6を介して変位計10を直接設置し、地中の変状を正確かつ精密に計測可能にしており、その他の効果は前述の応用形態と同様である。
すなわち、この場合は地中の設置スペ−スに中継枠12を固定した敷板6を敷設し、前記中継枠12の周面にクリップ35を装着し、その脚部を敷板6と一緒にアンカ−ボルト7を介して地山1に固定している。
【0068】
この場合、上記応用形態の変形例として、アンカ−ボルト7の代わりに通常のボルト34を用い、該ボルト34を地下構造物36に取り付ければ、地下構造物36の変状を簡素な構成で正確かつ精密に計測し得る。
【0069】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明は、外枠と支持枠を大小の矩形管で構成し、その内外の各辺を対向配置するとともに、前記一対の緩衝部材を支持枠の相直交する二辺に配置し、該一対の緩衝部材を外枠の相直交する二辺の内面に係合可能に配置するとともに、前記支持枠の相直交する他の二辺に一対の係合部材を配置し、該一対の係合部材を外枠の相直交する他の二辺の内面の定位置に係合可能に配置し、前記一対の係合部材を介して前記一対のセンサーフレームを互いに直交方向へ折曲または回動可能にしたから、外枠と支持枠の内外の各辺の位置を正確かつ安定して位置決め可能にするとともに、支持枠を相直交する二方向に付勢し、支持枠と一対のセンサーフレームの捩れを防止し、外枠と支持枠を正確に設置し得るようにし、かつそれらのセンタリングを増進させる一方、支持枠および一対のセンサーフレームを外枠の内側の定位置で安定して支持し、かつ一対の係合部材を支点として、一対のセンサーフレームを互いに直交方向へ折曲または回動を可能にし、それらの変位を正確かつ精密に形成させ、被計測対象の変状を正確かつ精密に計測することができる。
請求項2の発明は、緩衝部材を略く字形状に形成し、該緩衝部材の端部を前記外枠の天井側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置したから、緩衝部材の付勢力を向上するとともに、外枠に対する係合部を二箇所設けて支持枠に安定した付勢力を作用させ、また各緩衝部材を外枠の相直交する二辺に係合させて、支持枠に対する付勢力を相直交する二方向から作用させ、更に重力による付勢力の低下を回避して、確実かつ安定した付勢力を作用させることができる。
【0070】
請求項3の発明は、係合部材をコ字形断面の屈曲片で構成し、該屈曲片の端縁を前記外枠の底部側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置したから、係合部材の強度を向上し、外枠に対する安定した係合作用を得られるとともに、外枠の相直交する二位置で支持枠ないし一対のセンサーフレームを支持し、かつその際重力作用を利用して安定した係合を図り、前記緩衝部材の付勢力に対抗させさせることができる。
請求項4の発明は、各緩衝部材の両端部に前記外枠の各内面を走行可能なロ−ラを設け、前記屈曲片の両端縁に外枠の内面を走行可能なロ−ラを設けたから、外枠に対する変位計の出し入れを容易かつ速やかに行え、それらのメンテナンスを容易に行えるとともに、その際各ロ−ラが外枠内面の四辺を移動することで、変位計の捩りを防止し正確かつ安定して設置し得る効果がある。
請求項5の発明は、緩衝部材を支持枠の軸方向に配置し、前記緩衝部材の長さ方向の略中心に前記屈曲片ないしロ−ラを配置したから、緩衝部材による安定した付勢力を得られるとともに、緩衝部材の長さ方向の略中心で係合することにより、変位計をシ−ソ−状に支持し、該ロ−ラを支点として一対のセンサ−フレ−ムを互いに直交方向に折曲しまたは回動させることができる。
【0071】
請求項6の発明は、係合部材の内側をケ−ブル収納部としたから、信号ケ−ブルの外枠内での配線の合理化と保護を図ることができる。
請求項7の発明は、外枠の外周面の一辺に敷板を一体的に取り付け、前記敷板を被計測対象に直接設置して固定したから、外枠と敷板を一体化し、敷板で感知した被計測対象の変状を外枠に確実に伝えるとともに、敷板を介して変位計を安定して設置し、かつ被計測対象の変状を平坦面で広域かつ確実に感知し、設置の簡便化と変状計測の精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す斜視図で、外枠内に収容した変位計を線路の近接位置に設置した状況を示している。
【図2】 図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】 図2の要部を拡大して示す断面図で、変位計の設置状況を示している。
【図4】 図1のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図5】 図4の要部を拡大して示す断面図で、支持装置を構成する支持枠と緩衝部材とケーブル収納部との組み付け状況を示している。
【図6】 本発明に適用した変位計の要部を示す断面図である。
【図7】 本発明の第2の実施形態を示す断面図で、変位計の組み付け状況の要部を示している。
【図8】 本発明の第3の実施形態を示す断面図で、屋外に立設した構造物に変位計を設置した状況を示している。
【図9】 本発明の第4の実施形態の要部を示す断面図で、変位計を地中に設置した状況を示している。
【図10】 本発明の第1の応用形態を示す平面図で、屋内設置型の変位計の組み付け状況の要部を示している。
【図11】 図10のC−C線に沿う拡大断面図である。
【図12】 図10のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図13】 本発明の第2の応用形態の要部を示す断面図で、変位計を地面に設置した状況を示している。
【図14】 本発明の第3の応用形態の要部を示す断面図で、変位計を地中に設置した状況を示している。
【符号の説明】
1 被計測対象(路盤若しくは地山)
2 被計測対象(道床)
9 外枠
10 変位計
12 中継枠
13 感知手段(板バネ)
14a,14b センサーフレーム
22 緩衝部材(板バネ)
23 ケーブル収納部
26,29 可動手段(ローラ)
33 地上構造物
35 クリップ
36 地下構造物
37 支持枠

Claims (7)

  1. 被計測対象に取り付け可能な外枠と、該外枠の内面に係合可能な一対の緩衝部材を外周面に装着し、該緩衝部材を介して外枠の内側に付勢される支持枠と、該支持枠の両側に配置する一対のセンサーフレームと、該一対のセンサーフレームは互いに直交方向へ折曲または回動可能で、それらの内部に変位検出部材を同動可能に収容した変位計において、前記外枠と支持枠を大小の矩形管で構成し、その内外の各辺を対向配置するとともに、前記一対の緩衝部材を支持枠の相直交する二辺に配置し、該一対の緩衝部材を外枠の相直交する二辺の内面に係合可能に配置するとともに、前記支持枠の相直交する他の二辺に一対の係合部材を配置し、該一対の係合部材を外枠の相直交する他の二辺の内面の定位置に係合可能に配置し、前記一対の係合部材を介して前記一対のセンサーフレームを互いに直交方向へ折曲または回動可能にしたことを特徴とする変位計。
  2. 前記緩衝部材を略く字形状に形成し、該緩衝部材の端部を前記外枠の天井側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置した請求項1記載の変位計。
  3. 前記係合部材をコ字形断面の屈曲片で構成し、該屈曲片の端縁を前記外枠の底部側水平面と隣接する垂直面とに係合可能に配置した請求項記載の変位計。
  4. 前記各緩衝部材の両端部に前記外枠の各内面を走行可能なロ−ラを設け、前記屈曲片の両端縁に外枠の内面を走行可能なロ−ラを設けた請求項2または請求項3記載の変位計。
  5. 前記緩衝部材を支持枠の軸方向に配置し、前記緩衝部材の長さ方向の略中心に前記屈曲片ないしロ−ラを配置した請求項2乃至請求項3の何れか一記載の変位計。
  6. 前記係合部材の内側をケ−ブル収納部とした請求項記載の変位計。
  7. 前記外枠の外周面の一辺に敷板を一体的に取り付け、前記敷板を被計測対象に直接設置して固定した請求項1記載の変位計。
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