しかしながら、上記構成の火災感知器を小型化しようとする場合、径方向を短くすることになり、それにより発光素子と受光素子との距離が短くなり、十分な検煙領域を確保することが困難であった。これに対し、特公昭57−22157号公報に開示されている煙感知器は、発光素子と受光素子の光軸が高さ方向にほぼ90度をなす構造をとっている。この構造により、高さ方向、つまり感知器の厚さをある程度犠牲にしながら、径方向の小型化が可能となる。しかし、このような構造によって径方向の小型化を図る場合でも、検煙領域をなるべく多く確保することが求められる。
一方、感知器を小型化することにより、発光素子から、発光素子が収納されている暗箱の壁部等までの距離は必然的に短くなり、発光素子からの光が壁部等で反射して生じる反射光が十分に減衰しない。このような反射光は、ノイズ光として受光素子により受光されてしまい、S/N比が低下するといった問題が生じる。さらに、安定した性能を得るため、暗箱の組み付けにおいて、感知器各部の正確な位置決めを行わねばならない。しかし、感知器を小型化すると、暗箱の組み付けに関して、従来の火災感知器でよく使われているネジ止めなどの方法は余計なスペースを使うことが多く、場所的な制約から望ましくない。
この発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、小型化しても十分な検煙領域を確保できる火災感知器を提供し、また、小型化しても高いS/N比で火災を感知できる火災感知器を提供することを目的としている。さらに、小型化しても、余計なスペースを使わないで暗箱を正確に組み付けることができる火災感知器を提供することを目的としている。
以下の記載中、括弧により実施の形態に対応する構成を一例として示す。実施の形態と同一の用語を使用している場合には、符号のみ記す。上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、暗箱と、発光素子(18)と受光素子(52)とを備え、前記暗箱内に流入してきた煙により前記発光素子から発せられた光が散乱されたときの散乱光を、前記受光素子が受光することにより火災を感知する火災感知器(1)において、前記暗箱の壁部は、所定の大きさの円を基本形とし、かつ、前記円が内接する正方形の角部の形状に沿って一部が突出した形状に形成され、前記発光素子は、前記暗箱の前記突出した形状の部分に配置され、前記受光素子は、その光軸が前記円を含む平面に対してほぼ垂直であって当該円の中心を通るように、暗箱外に設置されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、発光素子と受光素子の光軸が縦方向に交差するように配置しているので、横方向において小型化できる。しかも、発光素子を突出した部分に配置したことから、たとえば、円形の暗箱を利用して縦方向に発光素子と受光素子を配置するような場合に比べて、受光素子の光軸に対して、発光素子の距離を確保することができ、その分、検煙領域を広く確保できる。したがって、小型で、広い検煙領域を有する火災感知器となる。
また、請求項1に記載の発明は、前記受光素子の光軸が前記円のほぼ中心を通る構成となっている。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の火災感知器において、前記発光素子は、その光軸が、前記円を含む平面に対してほぼ平行で、かつ、前記受光素子の光軸と前記暗箱内でほぼ直交するように、配置されていることを特徴とする。
請求項1または2記載の火災感知器において、前記発光素子と前記受光素子が接続されている回路基板を前記暗箱の裏側に設け、前記受光素子は前記回路基板上に面実装されている構成としても良い。
その場合、受光素子が面実装されることから、実装工程が簡単になり、しかも、回路基板の収容効率が向上する。
上述の回路基板は、前記暗箱の裏面に対して所定の間隔を空けて設けられており、前記暗箱の裏面と前記回路基板の間には、前記所定の間隔とほぼ等しい高さを有し、前記受光素子を囲む包囲部材(ノイズ光遮断部30、ノイズ光遮断壁31)が設けられている構成としても良い。
その場合、暗箱の裏面と回路基板の間には、前記所定の間隔とほぼ等しい高さを有し、受光素子を囲む包囲部材が設けられていることから、必要に応じて暗箱に形成される各種孔などから暗箱裏側に入る光や回路基板上の発光素子以外の光源からの光などによるノイズ光が、前記受光素子によって受光されることはなく、S/N比が向上し、高い検出精度が得られる。ここで、包囲部材の具体的な形状は特に限定されないが、たとえば、受光素子を囲むように円筒形状でもよいし、断面矩形状の枠でもよい。また、包囲部材は二重、三重に設けられていてもよい。
またその場合、包囲部材が暗箱に一体成形されていれば、遮光性はより一層上がり、益々高いS/N比が得られる。
さらに、上述の回路基板の前記暗箱側の面が黒くてもよく、これにより、回路基板そのものからの反射光等を極力避けることができ、これによってもS/N比が向上する。
また、また、暗箱に、前記発光素子からのリードを前記回路基板に接続するためのリード孔(23b)が設けられていても良い。
請求項1または2記載の火災感知器を天井面に設置する場合、暗箱内部の受光素子に相対する面が上を向くように設置されるが、請求項3に記載の発明のように、前記暗箱内部の前記受光素子に相対する面が滑らかに形成されていれば、エッジ等が形成される構造物が存在する場合に比べ、発光素子からの光の反射光の影響を、比較的軽減することができ、この点においても、S/N比が向上する。
また、請求項1〜3のいずれかに記載の火災感知器において、請求項4に記載の発明のように、前記受光素子の前方には、前記散乱光以外の光を遮るように、前遮光部材(遮光環状部26)が設けられ、前記前遮光部材の内側には、前記受光素子側に向かうように形成された段が設けられていても良い。
請求項4に記載の発明によれば、前遮光部材によって、目的とする散乱光以外の光、特に暗箱壁部を形成するラビリンス部の内側の角部や端部による反射光が遮られるので、S/N比を向上させることができる。
ここで、前遮光部材の形状は特に限定されないが、円筒状や枠状が挙げられる。
さらに、請求項4に記載の発明は、前記前遮光部材の内側には、前記受光素子側に向かうように形成された段(段26a)が設けられていることを特徴とする。
これにより、前遮光部材の縁部で生じる回折光等を、受光素子側に向かうように形成された一段低い段で反射させて、受光素子により受光されないように方向を変えることができることから、より一層高いS/N比が得られる。
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の火災感知器において、前記暗箱には、前記受光素子が散乱光を受光できるように、受光穴(27)が形成され、前記前遮光部材は前記暗箱内の前記受光穴の周囲に設けられ、前記暗箱を形成する前記前遮光部材の周囲の面には、前記前遮光部材に向かって山型になるように、傾斜(23e)が形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、暗箱内に流入してきた煙は、前遮光部材に向かいつつ山型に形成された傾斜に沿って受光素子の前方に誘導されるので、受光素子の受光範囲に煙が集まりやすくなり、検出感度が向上する。
なお、請求項4又は5に記載の火災感知器にあっては、前記前遮光部材が前記暗箱に一体成形されている構成としても良い。その場合、組み立てが容易になる。
また、請求項1から5のいずれか一項に記載の火災感知器にあっては、前記発光素子から検煙領域までの間に、光を遮る複数の遮光板(第1の遮光板25、第2の遮光板20)が設けられ、前記複数の遮光板のうちの一つの遮光板(第2の遮光板20)は、前記発光素子から発せられた光が前記受光素子の監視エリアとなる上記暗箱内面に当らないようにして設けられ、前記複数の遮光板のうちの別の一つの遮光板(第1の遮光板25)は、前記発光素子から発せられ、前記一つの遮光板の端部により反射される光が前記受光素子に入ることがないように設けられている構成としても良い。
上記構成によれば、2つの遮光板を利用して、受光素子に向かう各種ノイズ光、たとえば、火災感知器内部の壁部からの反射光や、発光素子側にしぼりを設けた場合に発生する反射光・回折光等が受光素子によって受光されないよう阻止することができ、高いS/N比を有する火災感知器となる。ここで、発光素子と受光素子の位置関係や光軸の交差角度は特に限定されない。
また、上記構成において、前記一つの遮光板と前記別の一つの遮光板の内少なくとも一方の遮光板(25、20)には、その端部に、前記受光素子の方に向かうような段(下段25b)を設けても良い。
その場合、前記一つの遮光板と前記別の一つの遮光板の内少なくとも一方の遮光板の発光素子の光軸側の端部において回折光等が生じても、受光素子寄りの一段低い段で反射してしまい、受光素子に向かわないようにできることから、より一層高いS/N比が得られる。
また、前記2つの遮光板は、前記受光素子の受光範囲外に設けても良い。
その場合、2つの遮光板が受光素子の受光範囲外であれば、2つの遮光板によって検煙領域が狭められることもないし、また、2つの遮光板からの反射光や回折光なども受光素子によって入りにくくなる。
また、上記2つの遮光板を前記暗箱に一体成形する構成としても良い。
その場合、2つの遮光板が暗箱に一体成形されているので、暗箱を組み立てれば2つの遮光板は所望の位置に決められるので、製造が容易になる。ここで、受光素子は発光素子とともに暗箱内に設けられていてもよいし、暗箱に穴を形成しその穴を通じて散乱光を受光できるように暗箱外に設けられていてもよい。
また、請求項1から5のいずれか一項に記載の火災感知器にあっては、暗箱は、所定の大きさの円を基本形とし、かつ、前記円の周外にその少なくとも一部が突出した変形部を有する形状に形成された壁部(ラビリンス部17)と、この壁部を上下方向から挟む蓋部(16)とプレート(23)とからなり、前記プレートと前記蓋部は前記壁部より大きな形状に形成され、前記プレートと前記蓋部のそれぞれの所定部を前記変形部に合わせた状態で、前記プレートと前記蓋部が固定されるように支持する支持部材(支柱21、21)が、前記壁部外に設けられている構成としても良い。
その場合、壁部外のスペースを利用して、支持部材によってプレートと蓋部を固定することで、暗箱全体が固定される。
またその場合、上述の蓋部とプレートの所定部を壁部の変形部に合わせて組み付けると、蓋部とプレートには壁部によって占められていない部位が生じる。この部位を利用して、前記支持部材が、前記プレートと前記蓋部の前記変形部に対応しない部分同士を固定するように構成してもよい。
そのようにすることで、プレートと蓋部の固定のためにわざわざスペースを確保することなく、十分な太さの支持部材を形成することができ、プレートと蓋部が容易に外れることがないよう、強固に勘合させることができる。さらに言えば、支持部材を角に配設すれば、支持部材そのものによって煙孔から流入した煙が他の煙孔から流出することを防ぎ、ラビリンス部への煙の流入をスムーズにするので、高い流入特性を得ることができる。
また、前記プレートの裏側には回路基板(50)が設けられ、前記回路基板には、表示灯用に第2の発光素子(LED53)が面実装され、前記第2の発光素子に対向する位置には、前記第2の発光素子から発光された光を外部に導く、棒状のレンズ(24)が設けられている構成としても良い。
その場合、棒状のレンズを用いることにより、表示灯用の第2の発光素子は面実装でよいので、表示灯用の光源を実装する工程が簡単なものとなり、しかも、回路基板の収容効率が高くなる。
また、上述のレンズが、少なくとも、前記蓋部と前記プレートを貫いていてもよい。
その場合、レンズが前記支持部材と同様に機能するので、蓋部とプレートを介して暗箱全体がより一層強固に固定される。ここで、レンズは、暗箱がさらに筐体で被われているような場合、この筐体を貫くように構成してもよい。
また、請求項1から5のいずれか記載の火災感知器において、少なくとも前記暗箱を収容する筐体が上部ケース(2)と下部ケース(ベース3)とからなり、前記上部ケースと前記下部ケースのうちの一方には、これら2つのケース同士を固定する固定バネ(6)が取り付けられており、前記上部ケースと前記下部ケースのうちの他方には、前記固定バネを係止するバネ溝(8)が設けられている構成としても良い。
その場合、固定バネをバネ溝に填めることで、上部ケースと下部ケースとを容易にしっかりと固定できる。
また、請求項1から5のいずれか記載の火災感知器において、暗箱内部に虫が入らないように帯状の金属薄板からなる防虫網(12)を備え、前記防虫網は、前記金属薄板の両側縁部(12a)の所定の幅を除いた部分を、長さ方向に沿ってエッチングすることにより形成される構成としても良い。
その場合、防虫網の両側縁部の所定の幅のエリアはエッチング処理されないで残ることから、曲げ強度が高い防虫網となる。したがって、いびつな形状に容易に曲げることができ、どのような形状の火災感知器にも適用できる。
請求項1〜5に記載の発明によれば、発光素子と受光素子の光軸が縦方向に直交するように配置しているので、横方向において小型化できる。しかも、発光素子を暗箱壁部の突出した部分に配置したことから、たとえば、前記筐体に内接する大きさの円形の暗箱を利用して縦方向に発光素子と受光素子を配置するような場合、従来のものに比べて、受光素子の光軸に対して、発光素子の距離を確保することができ、その分、検煙領域を広く確保できる。したがって、小型で、広い検煙領域を有する火災感知器となる。
請求項3に記載の発明によれば、前記暗箱内部の前記受光素子に相対する面が滑らかに形成されていれば、発光素子からの光の反射光等の影響を、比較的軽減することができ、この点においても、S/N比が向上する。
請求項4又は5記載の発明によれば、前遮光部材によって、目的とする散乱光以外の光、特に暗箱壁部を形成するラビリンス部内側の角部や端部による反射光が遮られるので、S/N比を向上させることができる。
さらに、これらの発明によれば、前遮光部材の縁部で生じる回折光等を、受光素子側に向かうように形成された一段低い段で反射させて、受光素子により受光されないように方向を変えることができることから、より一層高いS/N比が得られる。
請求項5記載の発明によれば、暗箱内に流入してきた煙は、前遮光部材に向かいつつ山型に形成された傾斜に沿って受光素子の前方に誘導されるので、受光素子の受光範囲に煙が集まりやすくなり、検出感度が向上する。
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の火災感知器1の外観を示すもので、図1で示すように、火災感知器1の筐体は、上部ケース2とベース3とから構成される。この火災感知器1は、発光素子から発せられた光が火災により発生する煙により散乱されると、そのときの散乱光が受光素子により受光され、火災を感知するものである。火災感知器1は、図1(a)で図示した面を、床面に向けた状態で天井面に設置されるが、この実施の形態では、火災感知器を設置した際に、床面に近い方を上、天井面側を下として、説明する。
まず、上部ケース2の内部に収納される本体10について説明する。図2(a)〜(c)は、火災感知器1の内部を示すもので、(d)は火災感知器1の上からの平面図である。図2(a)〜(c)は(d)に示す各部の断面図であり、(a)はA−A線に、(b)はB−B線に、(c)はC−C線に、それぞれ沿った断面図である。なお、図2(a)〜(c)は、ベース3が外された状態である。図3は本体10の分解斜視図であり、本体10は、煙流入部11、防虫網12、発光部13、検出部14、基板受け部15とから構成される。
煙流入部11は、蓋部16とラビリンス部17とからなり、黒色の樹脂によりその表面は滑らかに形成されている。蓋部16は、略正方形状の平板であって、裏面の中央部16aは平坦にして滑らかに形成されている。蓋部16の3つの角には、後述の支柱21、21が嵌合する孔部16b、16b、レンズ24が貫通するレンズ孔部16cが形成されている。また、蓋部16の裏面には、発光素子18のしぼり19の一方を構成する平板状のしぼり部材19aと第2の遮光板20が立設されている。これらしぼり部材19aと第2の遮蔽板20については後述する。ラビリンス部17は、図4に示すように、断面略Z字状のZ部材17a、17a…、発光素子18の発光側以外の部分を囲む素子後部壁17bとが、互いに隙間のある状態で立設されてなる。ラビリンス部17の外周の形状は、正方形状の蓋部16に内接した円を基本形とした形状であって、一部が、蓋部16の角部に沿うように変形しており、一方に突出した略洋なし型の断面形状であり、中央部は空間となっている。このラビリンス部17には、外部の煙は流入可能でありながら、外部からの光は入りこむことはできない。
上記ラビリンス部17の周りは、虫よけのための防虫網12により包囲されている。この防虫網12は、金属の薄板にエッチング処理により微細な穴を網目状に多数形成してなるものである。本実施の形態における防虫網12は、図3あるいは図5(a)で示すように、縁部は所定の幅分エッチング処理せず未処理部12a、12aとして残してあり、この未処理部12a、12aの幅は、図5(b)で示す従来の火災感知器で用いられていた防虫網100の未処理部100a、100aより広くなっている。
発光部13は、上下方向から見ると正方形状のプレート23上に、発光素子18、支柱21、21、レンズ用支柱22等が設けられている。発光部13は、全体としては、黒色の樹脂より形成される。本実施の形態では、すでに述べた蓋部16、ラビリンス部17およびプレート23により暗箱が構成される。発光素子18は、煙検出用の光源であり、そのリード線18a、18aが回路基板50の接続穴51に通されて、回路基板50に電気的に接続されるようになっている。この発光素子18は、その光軸が暗箱をほぼ水平に横切るように、素子ホルダ28に支持されたまま、前記素子後部壁17b内に収められる。発光素子18の前には、前述のしぼり部材19aと対をなすしぼり部材19bが設けられ、さらに、しぼり部材19bの前には、第1の遮光板25が設けられている。これらしぼり部材19a、19b、第1の遮光板25の具体的な構造等については後述する。
さらに、プレート23の中央には、受光穴27を有する遮光環状部26が形成されている。図2に示すように、この受光穴27の内部に受光素子52が臨む。この遮光環状部26は、図3で示すように平面視環状であり、図2に示すように内側に向かって一段低い段26aが形成されている。なお、遮光環状部26は、第1の遮光板25と一体成形されている。また、この遮光環状部26の周りは、遮光環状部26に向かって山型に徐々に高くなるように傾斜部23eが形成されている。
支柱21、21は、プレート23上に固定された板状の柱で、その先端が前記孔部16b、16bに填め込まれるようになっている。レンズ用支柱22は、プレート23上に立設され、プレート23を貫通する貫通孔60を有するように略円筒形に形成されている。この貫通孔60の中に、図2(b)に示すように、棒状のレンズ24が収められる。レンズ用支柱22に収められたレンズ24の下面は、プレート23から突出し、回路基板50のLED53の上方に位置するようになる。
図6には、プレート23の裏面23dを示す。図6中、符号23bは前記リード線18a、18aが通されるリード孔、30はノイズ光遮断部、31はノイズ光遮断壁である。ノイズ光遮断部30は、前記受光穴27と連通する、円筒状に形成された部材であり、受光素子52がその内部に収められるようになる。ノイズ光遮断壁31は、ノイズ光遮断部30を囲むようにして、裏面23dに対してノイズ光遮断部30とほぼ同じ高さに形成された壁体である。回路基板50を、受光素子52がノイズ光遮断部30内に収められるように裏面23dに重ねると、ノイズ光遮断部30とノイズ光遮断壁31の上縁部全体が、回路基板50に接するようになっている。したがって、受光素子52は、ノイズ光遮断部30とノイズ光遮断壁31の両方によって2重に遮光される。なお、ノイズ光遮断壁31内に形成されている円柱状の突起32は、回路基板52の丸穴50aに填め込まれ、回路基板50の横方向の位置決めを行うものである。また、裏面23d上には、回路基板50を固定するためのフック34、34、位置決めのためのピン33,33が形成されている。
検出部14は、火災感知器1の火災検出を行うもので、回路基板50とその上に実装された各部品よりなる。回路基板50表面の中央には、受光素子52が面実装されている。この受光素子52は、前記受光穴27から入ってくる光を受光するものである。受光素子52を面実装したことにより、受光素子52に入る電気的なノイズを軽減することができる。回路基板50の1つの角には、LED(発光ダイオード)53が面実装されている。このLED53の上方には、レンズ24の下面がLED53に相対している。このレンズ24は樹脂成形してなるものである。この火災感知器1では、作動中、LED53が発光し、その光がレンズ24により上方に導かれる。レンズ24の上端部は、上部ケース2のレンズ穴5に填め込まれることから、レンズ24の上端部が光ることで、火災感知器1が作動中であることが外部から確認されるようになっている。さらに、回路基板50の下面から下方に向かって、剛直なピン状の接続ピン56が4本設けられており、回路基板50は、これら4つの接続ピン56を介して、外部と電気的に接続されるようになっている。なお、図3では、各接続ピン56の頭部のみ示している。
回路基板50の受光素子が実装された表面の多くの部分(図3中点々を付している部分)は、塗料あるいはレジストにより、黒く塗られている。なお、回路基板50上には、プレート裏面23dのピン33、33が填め込まれるピン穴55、55と、フック34、34が填め込まれるフック穴54、54が形成されている。
上記の煙流入部11とプレート23は、プレート23と蓋部16を向かい合わせて、支柱21、21を蓋部16の孔部16b、16bに、レンズ24をレンズ孔部16cにはめ合わせることによって、一体に組み立てられる。このとき、前記素子後部壁17b内に発光素子18が収められるとともに、しぼり部材19a、19bが上下に対向し、しぼり19(図7参照)が形成され、第1の遮光板25と第2の遮光板20も所定の位置関係になる。この状態のプレート23の裏面23dに対して回路基板50を重ね、突起32、ピン33、33、フック34、34を利用し固定する。これにより、発光素子18、受光素子52、第1の遮光板25、第2の遮光板20等が所定の位置関係を有した状態で組み立てられる。
次に、第1の遮光板25、第2の遮光板20の具体的な構造と、発光素子18と受光素子52をも含めた光学的な関係について説明する。図4に示すように、発光素子18は、煙流入部11内部において、その光軸が暗箱をほぼ水平に横切るように、突出した部分に配置される。一方、受光素子52は、図2(c)に示すように、前記暗箱外の回路基板50上に実装され、その光軸が、発光素子18の光軸と煙流入部11内でほぼ直交するように設けられている。
ところで、全体として小型の火災感知器とすると、一般的に発光素子からの光による暗箱内部での反射光が十分に減衰しないため、ノイズ光が増加し、S/N比が低くなる。上記のように、発光素子と受光素子をそれらの光軸同士が鉛直方向に直交するような構造とした場合に、暗箱内で生じる各種ノイズ光を図7(a)に例示した。図7(a)では、発光素子200から発せられた光は、しぼり部材202、203の間に形成される円形のしぼり207を通って暗箱内に広がる。しぼり207を設けることで発光素子200の中心から発せられる比較的強い光(一点破線)のみを通すようにしているが、周囲に漏れる弱い光(たとえば、G)を防ぎきることはできず、受光素子201の監視エリア(K)内である暗箱の天井面に当たってしまい、受光されてノイズとなる。また、しぼり部材202の端部Aからの反射光(C)や、しぼり部材203の端部Bからの回折光(D)が、受光素子201に受光されてしまいノイズとなることもある。
しかし、本発明の火災感知器1では、図7(b)に示すような構造により、上記ノイズが生じないよう構成となっている。なお、図7(b)では、遮光環状部26については、簡略化している。火災感知器1では、しぼり19の前に、略平板状の第1の遮光板25と第2の遮光板20のそれぞれが、発光素子18の光軸を挟むように、発光素子18と検煙領域との間に所定の間隔を置いて配設されている。第1の遮光板25は前記光軸を挟んで受光素子52側にあり、光軸に沿った方向においても第2の遮光板20より受光素子52に近い位置に設けられている。また、第1の遮光板25の上端部には、受光素子側に向かって段が形成され、上段25a、下段25bとなっている。ここで、第1の遮光板25および第2の遮光板20のエッジは、いずれも、受光素子52の視野角の境界(直線L)から外れたところに位置する。この場合、受光素子52側から見ると、第2の遮光板20の端部Cが第1の遮光板25の背後に隠れるようになっている。また、第1の遮光板25はプレート23に、第2の遮光板20は蓋部16に、それぞれ一体成形されている。
このような構造をとることにより、たとえば、発光素子18から発せられる前記のような弱い光の照射範囲は、第2の遮光板20の端部Gにより規定されているので、図7(a)とは異なり、受光素子52の監視エリアIに当たることなく、ノイズにはならない。また、発光素子18からの前記弱い光が受光素子52に向かった場合、第1の遮光板25において遮光され、受光素子52には受光されない。さらに、端部Gにおける反射光が下方に向かった場合、第1の遮光板25で遮光され、受光素子52には向かわない。さらに、第1の遮光板25の上段25aで生じる回折光は、下段25bで遮光され、受光素子52により受光されない。すなわち、図7(b)のような構成により、天井面における反射光も、第2の遮光板20から受光素子52に向かう光も、さらに第1遮光板25から受光素子52に向かう光のいずれも、結局は、受光素子52に受光される範囲から外れてしまうのである。上記のように、この発明においては、発光素子18および受光素子52の両光軸を含む暗箱の垂直方向に対しては、しぼり19の存在はそれほど重要ではない。
基板受け部15は、回路基板50を収める箱体である。この基板受け部15には前記接続ピン56…が差し込まれる接続ピン穴15aが4つ形成され、下面からはベース3に固定するための突出部15bが形成されている(図2参照)。
次に、筐体となる上部ケース2とベース3について説明する。上部ケース2は、下方が開放された箱体であり、内部に前記本体10を収納するものである。図1に示すように、4つの側面の上部には、煙が流入するための煙孔4、4、4が3つずつ形成されている。この煙孔4、4、4からは、暗箱を被う防虫網12と蓋部16が覗いている。また、上面には、レンズ柱24が臨むレンズ穴5が設けられている。また、上部ケース2の上面には、後述する固定バネ6の脱落を防止するために、互いに平行する2列の凸部7,7間に形成されるバネ溝8が設けられている。この上部ケース2は、ネジ9によって、上部ケース2内の基板受け部15と固定されるようになっている。
ベース3は、基板受け部15を介して、本体10を支持するものである。ベース3には基板受け部15の突出部15aを填め込むことができる図示しないベース穴と、基板受け部15の接続ピン穴15b、15b、15b、15bから突出する4つの接続ピン56が嵌入できるピン嵌入部(図示せず)が形成されている。さらに、ベース3の側面には、外部回路と接続するための外部用端子3a、3a…が設けられている。また、ベース3には、上部ケース2に固定される際に用いる固定バネ6が取り付けられている。固定バネ6は取付部6a、6aを軸にして回転可能となっている。
そして本体10を上部ケース2で被い、ネジ9で上部ケースと基板受け部15を固定する。この状態で、ベース3の前記ベース穴に基板受け部15の突出部15aを填め込みながら、接続ピン56…を前記ピン嵌入部に嵌入させる。最後に、固定バネ6を上部ケース2の前記バネ溝8に掛けると、上部ケース2とベース3が内部の本体10ごと固定される。また、上記のように本体10をベース3に固定することによって、回路基板50の接続ピン56…とベース3の外部用端子3a、3a…が電気的に接続されるようになっている。
以上の火災感知器1によれば、発光素子18を暗箱壁部の突出した部分に配置したことにより、単なる円形の暗箱を利用して鉛直方向に発光素子と受光素子を配置するような場合に比べて、受光素子の光軸に対して、発光素子の距離を確保することができ、その分、検煙領域が広く確保できる。つまり、火災感知器1は、発光素子と受光素子の光軸が鉛直方向に直交するように配置された小型の円形火災感知器を想定した場合、この火災感知器により形成される円を納めることのできる正方形の角部に、発光素子が配置された突出部分を位置させれば、ほとんど大きさを変えずにより広い検煙領域を確保できるということになる。したがって、小型でありながら、広い検煙領域を有する火災感知器となる。
また、本発明の火災感知器を小型にした場合、反射光が減衰しないことによるノイズが懸念されるが、火災感知器1では、発光素子18の前方に、第2の遮光板20、そのさらに前に上部に段差を有する第1の遮光板25を設けたことにより、天井面における反射光も、第2の遮光板から受光素子に向かう光も、さらに第1の遮光板から回折し受光素子に向かう光のいずれも、結局は、受光素子52に受光される範囲から外れてしまい、ノイズ光とはならない。したがって、小型な火災感知器であっても、高いS/N比を有することになる。しかも、第1の遮光板25、第2の遮光板20はいずれも一体成形により形成されていることから、組み立て時に、蓋部16とプレートとを固定すればそれにより、第1の遮光板25、第2の遮光板20が所望の位置に決められるので、組み立てが容易になる。
また、従来、受光素子が暗箱外に設置される火災感知器では、受光素子に散乱光を受光させるための穴が設けられるが、この穴を通してノイズ光が入ってしまい、これによってS/N比が低下することがあった。また、発光素子と受光素子の光軸が直交する場合、受光素子の近傍には検出できないエリアが生じ、暗箱内に煙が侵入しても検出せず、失報を引き起こす可能性があった。しかし、火災感知器1では、プレート23に単に受光のための穴を形成したのではなく、受光穴27を囲むように遮光環状部26を設けたのでラビリンス部17の内側の角部や端部による反射光等のノイズ光が、受光素子52にはいりにくい。また、遮光環状部26に段26aを形成したので、遮光環状部26の外側のエッジで発生する回折光をこの段26aで反射させて、受光素子52側に向かわないようにできる。よって、S/N比を向上させることができる。また、傾斜部23eにより、反射光を軽減することが可能であるとともに、煙流入部11内に流入した煙を受光素子52の上方の検煙領域に誘導することができるので(天井に設置した場合下方に煙を誘導)、検出感度が向上する。
また、上記火災感知器のように、暗箱の外に受光素子および回路基板が設けられ、発光素子18のリード線18aを回路基板50に接続するためにリード孔23bを設けている構造であると、リード孔23bからプレートの裏面側に漏れる光がノイズ光となってしまう可能性がある。しかし、火災感知器1では、プレート裏面23dにノイズ光遮断部30、ノイズ光遮断壁31が設けられ、それらの上縁部全体が回路基板50の面に接するようになっていることから、受光素子52は2重に囲まれて遮光され、ノイズ光を受けないようになっている。したがって、この点においても、S/N比が向上し、高い検出精度が得られる。しかも、これらノイズ光遮断部30、ノイズ光遮断壁31は、プレート23と一体成形されることから、遮光性はより一層高いものとなる。また、ノイズ光遮断部30、ノイズ光遮断壁31の上縁部全体が回路基板50の面に接するということは、組み立て時において、回路基板50のプレート23に対する高さ方向が位置決めされることになり、組み立てが容易になる。
加えて、火災感知器1は、プレート23が黒色の樹脂からなり、また、回路基板50の表面が黒色であることから、受光素子52の周辺は完全に暗室となり、これによっても、S/N比が向上する。
また、火災感知器1は上下方向から見ると正方形状であり、かつ、煙流入部11のラビリンス部17を前記のような洋なし型に形成したことから、ラビリンス部17の周りの3つの角部を利用し、この3カ所にプレート23と蓋部16とを互いに固定する支柱21、21、およびレンズ用支柱22を配設し、暗箱を組み立てるようにしている。つまり、プレート23と蓋部16の固定のためにわざわざスペースを確保することなく、十分な太さの支柱21等を形成することができ、プレート23と蓋部16が容易に外れることがないよう、強固に勘合させることができる。さらに言えば、支柱21、21、レンズ用支柱22は、角に配設され、支柱そのものによって煙孔4から流入した煙が他の煙孔4から流出することを防ぎ、ラビリンス部17への煙の流入をスムーズにするので、高い流入特性を得ることができる。なお、本発明では、プレートに孔部を設け、蓋部に支柱を設けるようにしてもよい。
また、従来の火災感知器では、S/N比の向上のため、受光素子に相対する暗箱裏面の監視エリアに何らかの構造物を配置し、反射光を低減させるよう工夫していた。しかし、これらの構造物を置くと、発光素子と受光素子との位置関係によって、その端部が反射面となって、かえって反射光が増加し、S/N比の低下を招いたり、誤報の原因となってしまうことがあった。しかし、本実施の形態では、煙流入部11の蓋部16裏面の中央部16aを滑らか(平面でも球面でも形状は問わない)にしたことにより、反射光の影響を軽減することができ、この点においても、S/N比が向上する。
ところで、従来、火災感知器の表示灯は、リード線が付いたLEDを利用することが多かった。このようなLEDでは、リード線に絶縁チューブを装着したり、また、構造的にLED周りに隙間が生じることもあり、その隙間に虫や埃が侵入し、誤報の原因になったりした。しかし、本発明の火災感知器1の表示灯は、棒状のレンズ24を利用し、LED53を面実装した。よって、LEDを実装するための工程が簡略化され基板の収容効率が高くなる。また、LEDを設けるための隙間など生じないことから、感知器の信頼性が高くなる。なお、このレンズ24は、図2(c)に示すように、上部ケース2、蓋部16、プレート23を貫いているために、これらの組み立てや位置決めが容易になる。
上記で示したように、本実施の形態のラビリンス部17は図4で示したように略洋なし型の特殊な形状である。図5(b)に示すような従来の防虫網を、そのままこのような形状のラビリンス部に填め込もうとすると、曲げ強度が低いため、防虫網がゆがんだり取り付けにくいといった事態が生じ得る。しかし、本実施の形態では、図5(a)に示すように、防虫網12について、エッチング処理幅を狭くし、未処理部12a、12aの幅を太くしたことで、曲げ強度が向上したことから、ゆがんだりせずに容易に曲げることができ、特殊な形状のラビリンス部17の周りにも填めやすい。
さらに、火災感知器1では、ベース3の固定バネ6を上部ケース3上のバネ溝8に掛けて固定している。従来、火災感知器1のような立方体状の火災感知器において、固定バネ6で全体を固定することは知られてはいたものの、固定バネを係止する構成はなかったので、固定バネが外れ、ベースから本体が脱落する可能性があった。しかし、火災感知器1では、固定バネ6がバネ溝8において係止されているので、固定バネ6は容易に外れることはない。したがって、ベース3から上部ケース2や本体10が脱落してしまうことはなくなる。
なお、本発明は上記実施の形態に限らず、たとえば、ラビリンス部をプレート側に設けてもよい。また、発光素子が設けられる部分の暗箱の形状は、上記の略なし型のように円形からなだらかに突出するものに限らず、円形の暗箱に矩形状あるいは枠状に突出するような形状に形成してもよい。さらに、上記では、第1の遮光板25に段が設けられていたが、第2の遮光板20に段が設けられていてもよいし、あるいは、両方に設けられていてもよい。第2の遮光板20の端部に段が設けられていれば、第2の遮光板20端部からの回折光が検煙領域の天井部に当たることを防ぐことができる。さらに、本発明においては、受光素子を暗箱の中心に配置した。すなわち、中心に配置することにより、暗箱の内壁から一番離れた位置に受光素子があるので、内壁からの反射光の影響を最も少なくすることができ、ひいては、S/N比の向上に寄与する。さらに、ここで発光素子の光軸が受光素子の光軸と交差する位置に発光素子を配置することにより、広い検煙領域を確保でき、かつ、S/N比を向上させた火災感知器が提供される。