JP3977416B6 - Mn遺伝子およびmn蛋白質 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は医学遺伝子学の一般的領域に属し、生化学工学および免疫化学の分野に属する。より詳細には、本発明は新規な遺伝子であるMN遺伝子(該遺伝子はMN蛋白質をコードする細胞性遺伝子である)の同定に関する。本発明者らは、MN蛋白質が腫瘍形成に関与していることを発見した。
発明の背景
ザバダら、国際公開番号WO93/18152(1993年9月16日刊行)には、MN遺伝子およびMNタンパク質を発見するに至った、MaTuの生物学的および分子学的性質の発見が記述されている。本発明者らは、MaTuが2つのコンポーネント、すなわち、外因性の輸送コンポーネントMX、および内因性の細胞性コンポーネントMNからなることを発見した。MNコンポーネントは細胞性遺伝子として発見され、既知のDNA配列とは相同性(ホモロジー)がほとんどない。MN遺伝子は試験した全ての脊椎動物の染色体DNA内に存在することが見出されており、該遺伝子の発現は腫瘍形成性に強く関与していることが明らかになっている。
外因性MaTu−MX伝播性媒介物は、残存してHeLa細胞に感染するリンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)であると同定された。本発明者等は、HeLa細胞中でのMN発現が細胞密度で積極的に制御されており、また発現レベルは持続的なLCMVへの感染によって増加されることを見いだした。
以下には、MN遺伝子のクローニングと配列決定およびMNタンパク質の組換え生産物が記述されている。MN cDNAの全長の配列(配列番号1)、それから推定されるアミノ酸配列(配列番号2)、MNに対する全長ゲノム配列(配列番号5)(推定プロモーター配列(配列番号27)を含む)が供与された。11のエキソン(配列番号28−38)および10のイントロン(配列番号39−48)がMN遺伝子に含まれている。また、MN遺伝子の内部の1.4キロベースの領域(配列番号49)がここに記述されているが、これは典型的なCpG−リッチアイランドで、複数の転写因子AP2及びSp1に対する推定結合サイトを含んでいる。
タンパク質/ポリペプチドに対して調製された抗体もまた記述されている。MN蛋白質/ポリペプチドは、本発明に従い、MN特異的抗体を検出する血清学的分析に使用することができる。さらに、そのようなMN蛋白質/ポリペプチドおよび/またはMN抗原と反応する抗体は、本発明に従い、MN抗原を検出および/または定量する免疫学的検定(イムノアッセイ)に使用することができる。このような分析は、腫瘍性および/または前腫瘍性の疾患の診断および/または予後に利用される。
発明の概要
本発明は、該MN遺伝子、その断片およびそれに関係するcDNAに関し、これらは、たとえば次のように有用である。1)生化学工学によりMN蛋白質/ポリペプチドを産生。2)被検材料の細胞内のMN遺伝子の存在を確認するための核酸プローブの調製。3)適切なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの調製。これは、たとえば、PCRに基づく分析や核酸プローブの産生などに使用する。4)MN蛋白質およびポリペプチド、ならびにそれらと相同あるいはほぼ相同なポリペプチドの同定。5)各種の組織および細胞系(好ましくはヒト)に存在するMN遺伝子から転写されたさまざまなmRNAの同定。6)MN遺伝子の突然変異の同定。本発明はさらに、MN遺伝子またはその断片、あるいは関連するcDNAまたはその断片からなる、精製単離されたDNAに関する。
このように、本発明は一面ではMNタンパク質またはポリペプチドをコードしている単離された核酸配列であって、当該核酸配列に対応する当該ヌクレオチド配列は、以下の群から選択される:
(a)配列番号1;
(b)厳しい条件下で配列番号1もしくはその相補体とハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(c)配列番号1もしくは(b)のヌクレオチド配列とは、遺伝暗号の縮重によるコドン配列において異なるヌクレオチド配列。さらに、そのような核酸配列は、遺伝暗号の縮重が無く、厳しい条件下で配列番号1もしくはその複合体とハイブリダイズするヌクレオチド配列から選択される。
さらに、そのような、MNタンパク質やポリペプチドをコードしている単離された核酸は、図3(A−F)に示されているゲノム配列、すなわち配列番号5、のMN核酸を、それ自身またはその相補体と厳しい条件下でハイブリダイズする配列、または配列番号5もしくはその相補体と厳しい条件下でハイブリダイズし、遺伝暗号の縮重がない配列と同様に含む。配列番号1および5の分解派生体もまた本発明の範疇に入る。
さらに、本発明は、上記のMNタンパク質またはポリペプチドをコードしている単離された核酸の断片である核酸プローブであって、好ましくは、前記核酸プローブは少なくとも29のヌクレオチドから成り、より好ましくは少なくとも50のヌクレオチドから成り、さらに好ましくは少なくとも100のヌクレオチドから成り、さらにより好ましくは少なくとも150のヌクレオチドから成るものに関する。
さらには、本発明は以下の群から選択される少なくとも27のヌクレオチドを含む単離された核酸に関する:
(a)配列番号1、5および27−49および配列番号1、5および27−49に相補的なもの;
(b)配列番号1、5および27−49および配列番号1、5および27−49と相補的なものそれぞれの、いずれか1つまたはそれ以上と標準的である厳しさの条件でハイブリダイズするヌクレオチド配列;および
(c)(a)および(b)のヌクレオチド配列と、遺伝暗号の縮重により異なるヌクレオチド配列。本発明はまた、遺伝暗号の縮重がないが(a)および(b)の核酸と厳しい条件下でハイブリダイズする核酸にも関する。さらには、本発明は(b)および(c)の核酸であって、配列番号5の非コード領域、もしくは、例えばMN核酸配列を同定する核酸プローブとして機能するような配列等のその相補体と、部分的にまたは全体的にハイブリダイズするものにも関する。従来の技術を、(b)および(c)もしくは配列番号5の断片の核酸がMN核酸配列を同定するために有用であるかを決定するために用いることが可能であり、例えば、BentonおよびDavis、Science、196:180(1977)およびFuscoe et al.,Genomics、5:100(1989)に概略が示されている。一般に、そのような核酸は好ましくは、少なくとも29のヌクレオチドから成り、より好ましくは少なくとも50のヌクレオチドから成り、さらに好ましくは少なくとも100のヌクレオチドから成る。実証用かつ好ましい核酸配列プローブは、配列番号55のものである(RNase防護アッセイにおいて有用な470bpのプローブ)。
本発明の試験キットは、腫瘍性および/または前腫瘍性の病気の診断/予後に有用な本発明の核酸プローブを含んでも良い。好ましい試験キットは、MN遺伝子もしくはMN遺伝子のmRNA産物に対する前記プローブのハイブリダイゼーションの検出もしくは測定のための手段、例えば視覚化手段を含んでも良い。
本発明の単離された核酸の断片は、MN遺伝子の区分を増幅するためのPCRプライマーとして用いることができ、MN遺伝子の変異を同定するために有用である。典型的には、前記PCRプライマーはオリゴヌクレオチドであり、好ましくは少なくとも16ヌクレオチド、しかし、かなり長くても良い。例示的なプライマーは約16ヌクレオチドから約50ヌクレオチド、好ましくは約19ヌクレオチドから約45ヌクレオチドである。
さらに、本発明はこのようなPCRプライマーの、単離されたMN遺伝子および/またはその断片中の変異を検出する方法において使用することに関する。例えば、そのような方法は、1つのMN遺伝子の1つまたはそれ以上の断片をPCRにより増幅し、前記1つまたはそれ以上の断片のいずれかが変異を含んでいるか否かを、例えば、同様に増幅された正常であることが知られているMN遺伝子の対応する断片のサイズと、増幅された断片のサイズとを、PCR一本鎖立体形状アッセイまたは変性グラジエントゲル電気泳動アッセイにより比較するなどして決定する。
本発明はまた、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)12301 Parklawn Drive in Rockville,Maryland 20852(USA)にATCC番号HB11128として寄託してあるハイブリドーマ、VU−M75によって生産されるM75と命名されたモノクローナル抗体によって、および/またはATCCにATCC番号HB11647として寄託されているハイブリドーマMN12.2.2によって生産されるMN12と命名されたモノクローナル抗体によって特異的に結合されるMNタンパク質またはポリペプチドをコードしている核酸に関する。
本発明はさらに、少なくとも16のヌクレオチド、好ましくは少なくとも29のヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも50のヌクレオチドを含み、前記ヌクレオチドは以下の群から選択される:
(a)アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、Rockville、Maryland、米国に、それぞれATCC番号97199、97200、および97198として寄託されているプラスミドA4a、XE1およびXE3に含まれるMN核酸配列;
(b)(a)のMN核酸と厳しい条件下でハイブリダイズする核酸;および
(c)(a)または(b)の核酸と遺伝暗号の縮重によるコドン配列において異なる核酸。そのような単離された核酸は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーであり得る。
本発明はさらに、ベクター内で発現制御配列に操作可能に連結された、MNタンパク質、MN融合タンパク質またはMNポリペプチドをコードしている単離された核酸;それらを移入もしくはそれらにより形質転換された、原核又は真核の単細胞宿主;およびMNタンパク質、MN融合タンパク質およびMNポリペプチドを組換えにより生産する方法であって、単細胞宿主を、発現制御配列に操作可能に連結された前記核酸により形質転換移入もしくはそれを移入し、前記形質転換もしくは移入単細胞宿主を前記MNタンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドが発現されるように培養し、前記MNタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチドを抽出し、単離することからなる方法に関する。
MN融合タンパク質をコードしている組換え核酸が、MNタンパク質またはMNポリペプチドおよび非MNタンパク質またはポリペプチドから実質的になるものとしてクレームされており、そこにおいて、MNタンパク質またはポリペプチドをコードしている核酸部分のヌクレオチド配列は、以下の群より選択される:
(a)配列番号1;
(b)配列番号1もしくはその相補体と厳しい条件下でハイブリダイズする核酸配列;および
(c)配列番号1および(b)のヌクレオチド配列の縮重派生体;
そこにおいて前記MNタンパク質またはポリペプチドをコードしている核酸配列は少なくとも29のヌクレオチドを含んでいる。
前記非MNタンパク質またはポリペプチドは、好ましくはヒトにとって非免疫原性であるのが良く、ヒト体液中の抗体と特に反応性ではないのがよい。このようなDNA配列の例は、ベータガラクトシダーゼのアルファペプチドコード領域、およびグルタチオンS−トランスフェラーゼをコードしている配列もしくはその断片である。しかしながら、いくつかの例においては、血清学的に反応性、免疫原性および/または抗原性である非MNタンパク質またはポリペプチドが、MN抗原の融合パートナーとして好適である。さらにクレームされているのは、実質的に純粋で自然には生じない組換え融合タンパク質/ポリペプチドである。例としては、以下に記述されるGEX−3X−MN、MN−FcおよびMN−PAが挙げられる。
HeLa細胞系および腫瘍形成性HeLa細胞と線維芽細胞とのハイブリッド(H/F−T)細胞系においては、MN蛋白質は「双子(twin)」蛋白質p54/58Nとして表現される。該蛋白質は、グリコシル化され、ジスルフィド結合しているオリゴマーの形をとっている。還元性ゲルを用いた電気泳動によって測定すると、MN蛋白質は約40kdから約70kdの範囲の分子量を有しており、好ましくは約45kdから約65kdの範囲、より好ましくは約48kdから約58kdの範囲の分子量を有しているのがよい。非還元性のゲルにおいては、オリゴマー型のMN蛋白質は約145kdから約160kdの範囲の分子量を有しており、好ましくは約150kdから約155kdの範囲、より好ましくは約152kdから約154kdの範囲の分子量を有しているのがよい。本発明における好ましいMN蛋白質の推定アミノ酸配列は図1(A−C)(配列番号2)に示す。
他の個々のMNタンパク質またはポリペプチドは、図1(A−C)中に最初の37個のアミノ酸(配列番号6)として示されている推定MNシグナルペプチド、好ましい抗原エピトープ(配列番号10−16)および、図1(A−C)においてアミノ酸38−135(配列番号50)、136−391(配列番号51)、414−433(配列番号52)および434−459(配列番号53)として示されるMNタンパク質のドメイン群により例示される。
MN遺伝子とMN蛋白質およびそれらにコードされた実質的に相補性のMN遺伝子とMN蛋白質の発見により、MN蛋白質の発現が腫瘍形成性と関連していることが見いだされた。この発見の結果、癌および前癌状態の診断/予後の方法が確立された。脊椎動物、好ましくはホ乳類、より好ましくはヒト由来の、組織区分、油状物、細胞と組織抽出物を含んだ患者の試料中からMN抗原を検出および/または定量することにより、腫瘍性疾患の発症や存在を同定するための方法や材料が提供される。そのようなMN抗原は体液中からも検出される。
MN蛋白質およびMN遺伝子は、癌の診断/予後における腫瘍形成の分子メカニズムの解明の研究に利用されており、また、癌の免疫療法に応用され得る。本発明は、広範な腫瘍性および/または前腫瘍性疾患の検出に有効である。腫瘍性疾患の例としては、乳腺、膀胱、卵巣、子宮、子宮頚管、子宮内膜、偏平細胞および腺偏平癌などの腫瘍;頭および首の癌;神経芽細胞腫および網膜芽腫などの中胚葉性腫瘍;骨肉腫およびユーイング肉腫(Ewing′s sarcoma)などの肉腫;およびメラノーマが挙げられる。特に興味深いものとしては、頭および首の癌、卵巣、子宮頚管、膣、子宮内膜および陰門の癌を含む婦人科の癌;胃、結腸および食道の癌などの胃腸系の癌;膀胱および腎臓の癌などの尿路系の癌;皮膚癌;肝臓癌;前立腺癌;肺癌および乳癌がある。中でも特に興味があるのは、婦人科の癌;乳癌;尿路系の癌、ことに膀胱癌;肺癌;および肝臓癌である。さらにとりわけ興味が強いのは、婦人科の癌および乳癌である。婦人科の癌の中で特に関心があるのは子宮頚管、子宮内膜および卵巣の癌であるが、子宮頚管偏平細胞腫瘍、腺偏平細胞腫瘍、腺腫などを含む婦人科の癌と同様に、後形体子宮頚管組織やコンジロームなどの婦人科の前癌状態も非常に興味深い。
本発明はさらに、MN遺伝子、その断片あるいは関連するcDNAを生化学的に処理することに関する。たとえば、該遺伝子またはその断片、あるいは関連するcDNAは適切な発現ベクター中に、発現制御配列に操作可能に連結された状態で組込まれ、好ましくは単細胞の宿主細胞がそのような発現ベクターに形質転換されること、または移入されること可能で、MN蛋白質/ポリペプチド、好ましくはMN蛋白質がその中で発現する。そのような組換え蛋白質あるいはポリペプチドは、グリコシル化されているかまたはいないかであるが、好ましくはグリコシル化されているのがよく、ほぼ純粋の状態に精製され得る。本発明はさらに、合成的にあるいはその他の生物的手法で調製されたMN蛋白質/ポリペプチドにも関する。
該MN蛋白質/ポリペプチドは、患者の試料中のMN抗原を検出する分析、あるいはMN特異的抗体を調べる血清学的アッセイに用いることができる。本発明のMN蛋白質/ポリペプチドは、血清学的に活性で、免疫原性があり、および/または抗原性がある。該MN蛋白質/ポリペプチドは、さらに、MN特異的抗体(ポリクローナルおよび/またはモノクローナル)を産生させたり、T細胞免疫応答を起こす免疫原として用いることもできる。
さらに本発明は、MN特異的抗体に関するものであり、該抗体は診断/予後に用いられ、また、治療に用いることもできる。好適な本発明の例は、以下のように、図1(A−C)中に示されているMNタンパク質のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるエピトープと反応性を有するMN特異的抗体である:AA62からAA67(配列番号10);AA55からAA60(配列番号11);AA127からAA147(配列番号12);AA36からAA51(配列番号13);AA68からAA91(配列番号14);AA279からAA291(配列番号15);AA435からAA450(配列番号16)。より好適なものは配列番号10、11および12で示されるエピトープと反応しうる抗体である。さらに好適なものは、配列番号10および11で示されるエピトープと反応しうる抗体であり、例えば、Mab M75およびMN12それぞれである。もっとも好適なものは、配列番号10で示されるエピトープと反応しうるモノクローナル抗体である。
また本発明の好適なものには、組換えによって生産された、例えばGEX−3X−MN、MN 20−19、MN−FcおよびMN−PA等のMNタンパク質に対して調製された抗体がある。また好適なものは、バキュロウイルス感染Sf9細胞中で発現されたMN 20−19等のグリコシル化されたMNタンパク質に対して調製されたMN特異的抗体がある。
典型的なMN特異的抗体であるモノクローナル抗体M75(Mab M75)を産生するハイブリドーマは、ATCC番号HB 11128として、上記のようにATCCに寄託された。このM75抗体は、MN蛋白質を発見、同定するために用いられたものであるが、新鮮、凍結、ホルマリン、アルコール、アセトンその他で固定された、および/またはパラフィン固定され脱パラフィン化された組織サンプルから、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイおよび免疫組織化学的方法により、MN抗原を簡単に検出するために用いることができる。他の代表的なMN−特異的抗体Mab MN12は、ハイブリドーマMN12.2.2によって分泌されるが、このハイブリドーマMN12.2.2はATCCにHB11647という名の下に寄託されている。
MN特異的抗体は次のような用途に用いられる。たとえば、免疫蛍光顕微鏡や免疫組織化学染色による実験室での解析、例えば臨床サンプル等の中のMN抗原の検出および/または定量のための免疫測定法の構成分の一つとして;MN抗原を検出するイムノブロット法のプローブとして;細胞内のMN蛋白質および/またはポリペプチドの局在を示す金コロイドビーズを用いた免疫電子顕微鏡法において;およびMN遺伝子、その断片あるいは関連するcDNAをクローニングする遺伝子工学などである。そのようなMN特異的抗体は、たとえばインビトロ(in vitro)での組織片を用いた診断および/または予後用のキットの構成材料として用いられる。そのような抗体はまた、たとえば、適切な放射活性同位体を用いて抗体を適切にラベルし、インビボ(in vivo)での抗体の局在の転移をシンチグラフィーで追跡することにより、インビボ(in vivo)での診断/予後に用いることができる。さらに、そのような抗体は、毒性因子および/または細胞増殖抑制因子をそれらに結合させて、あるいはさせずに、インビボ(in vivo)療法として癌患者の加療に使用することもできる。また、そのような抗体は、腫瘍性および/または前腫瘍性疾患の存在を検出するためにインビボ(in vivo)で用いることができる。さらに、そのような抗体はMN蛋白質およびポリペプチドのアフィニティー精製に使用することができる。
本発明は、また、腫瘍性疾患および/または前腫瘍性疾患の治療方法に関し、該方法は、MN遺伝子から転写されたmRNAと実質的に相補的であるアンチセンス核酸配列を投与することにより、MN遺伝子の発現を抑制することからなる。前記アンチセンス核酸配列は、そのようなmRNAと厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするものである。アンチセンス核酸配列は、図1(A−C)に示すように、MN cDNAの5’末端において実質上相補的なものであることが好ましい。このアンチセンス核酸配列とは、オリゴヌクレオチドであることが好ましい。
本発明はまた、実質的に純粋な一つもしくはそれ以上のMN蛋白質および/またはポリペプチドを免疫原量として十分に含むワクチンに関する。MN蛋白質および/またはポリペプチドは生理学的に許容性で非毒性の基剤に分散し、MN蛋白質の発現と関係している腫瘍性疾患に対して、脊椎動物、好ましくはホ乳類、より好ましくはヒトに十分な免疫効果を上げる量を使用する。該蛋白質は、組換え、合成あるいは他の生化学的手法によりつくられる。該ワクチンの特徴的な使用法として、再発および/または転移の阻止がある。たとえば、MN関与性腫瘍を外科的に切除した患者に腫瘍の再発を防ぐために該ワクチンを投与することができる。
本発明に従うイムノアッセイは、MN蛋白質/ポリペプチドおよび/またはMN特異的抗体からなる試験キットとして具体化される。そのような試験キットは、固相状態であるが、それに限定されるわけではなく、液相状態であってもよく、非増幅あるいはアビジン/ビオチン法などを用いて増幅した状態で、免疫組織化学的アッセイ、ELISA法、粒子アッセイ、放射測定あるいは蛍光測定アッセイなどに基づくものであってもよい。
略語表
本明細書内で使用する略語は以下の通りである。
AA−アミノ酸
ATCC−アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)
bp−塩基対
BLV−ウシ白血病ウイルス
BSA−ウシ血清アルブミン
BRL−ベセダ・リサーチ・ラボラトリーズ(Bethesda Research Laboratories)
CA−炭酸脱水素酵素
CAT−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ
Ci−キュリー
cm−センチメーター
CMV−サイトメガロウイルス
cpm−カウント/分
C-末端−カルボキシル末端
℃−摂氏
DEAE−ジエチルアミノエチル
DMEM−ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco modified Eagle medium)
EDTA−エチレンジアミン四酢酸
EIA−酵素免疫測定法、エンザイムイムノアッセイ
ELISA−酵素免疫吸着測定法
F−線維芽細胞
FCS−ウシ胎児血清
FITC−フルオレセインイソチオシアネート
GEX−3X−MN−融合タンパク質 MNグルタチオンSトランスフェラーゼ
H−HeLa細胞
HEF−ヒト胚線維芽細胞
HeLa K−標準型HeLa細胞
HeLa S−スタンブリッジ(Stanbridge)変異HeLa細胞 D98/AH.2
H/F−T−ハイブリッドHeLa線維芽細胞(腫瘍原性)、HeLa細胞D98/AH.2由来
H/F−N−ハイブリッドHeLa線維芽細胞(非腫瘍原性)、HeLa細胞D98/AH.2由来
HRP−西洋ワサビ(ホースラディッシュ)ペルオキシダーゼ
Inr−イニシエーター
IPTG−イソプロピル−β−D−チオガラクト−ピラノサイド
kb−キロベース
kbp−キロベースペア
kd−キロダルトン
LCMV−リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス
LTR−長期間反復
M−モル
mA−ミリアンペア
MAb−モノクローナル抗体
ME−メルカプトエタノール
MEM−最少必須培地
min.−分
mg−ミリグラム
ml−ミリリットル
mM−ミリモル
MMC−マイトマイシンC
MLV−ネズミ白血病ウイルス
N−規定濃度
NEG−陰性
ng−ナノグラム
nt−ヌクレオチド
N-末端−アミノ末端
ODN−オリゴデオキシヌクレオチド
ORF−オープンリーディングフレーム
PA−プロテインA
PBS−リン酸緩衝生理食塩水
PCR−ポリメラーゼ連鎖反応
PEST−プロリン(proline)、グルタミン酸(glutamic acid)、生理食塩水(serine)、スレオニン(threonine)の頭文字の組合せ
pI−等電点
PMA−フォーボル12ミリステート13アセテート
POS−陽性
Py−ピリミジン
RIA−ラジオイムノアッセイ
RIP−放射性免疫沈降法
RIPA−放射性免疫沈降測定法
RNP−RNase防護アッセイ
SDRE−血清量反応要素
SDS−ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−PAGE−ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SINE−短期interspersed反復配列
SSDS−合成スプライス供与サイト
SP−RIA−固相ラジオイムノアッセイ
SSPE−NaCl(0.18M)、リン酸ナトリウム(0.01M)、EDTA(0.001M)
TBE−トリス−ホウ酸/EDTA電気泳動バッファー
TCA−トリクロロ酢酸
TC培地−組織培養培地
TMB−テトラメチルベンジジン
Tris−トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
μCi−マイクロキュリー
μg−マイクログラム
μl−マイクロリットル
μM−マイクロモル
VSV−水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)
X−MLV−異種マウス白血病ウイルス
細胞系(セルライン)
HeLa K−標準型HeLa細胞,異数倍数性、上皮様の細胞系、ヒト子宮頚管腺腫より単離され(ゲイ(Gey)ら、Cancer Res., 12:264(1952)、ジョーンズ(Jones)ら、Obstet. Gynecol., 38:945-949(1971)参照)、B.コリシュ教授(Korych)(チャールズ大学(Charles University)医学微生物学および免疫学研究所(Institute of Medical Microbiology and Immunology)、チェコスロバキア、プラハ)より入手。
HeLa D98/AH.2(またはHeLa S)−変異HeLaクローンであり、ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシルトランスフェラーゼ欠損(HGPRT-)、エリック J.スタンブリッジ(Eric J. Stanbridge)(カリフォルニア大学医学部微生物学科(Department of Microbiology, College of Medicine, University of California)、米国、カリフォルニア州、アーヴァン)より供与され、スタンブリッジ(Stanbridge)らにより報告されている(Science, 215:252-259(1982年1月15日号))。ハイブリッド細胞H/F−Nの親株も同じくE.J.スタンブリッジ(Stanbridge)から入手。
NIH−3T3−マウス線維芽細胞系、アーロンソン(Aaronson)により報告されている(Science, 237:178(1987))。
XC−ラット横紋筋肉腫由来の細胞であり、ラウス肉腫(Rous sarcoma)ウイルスによって誘導された誘導ラット肉腫(スヴォボダ(Svoboda),J.、国立癌センター研究所モノグラフ第17巻(Natl. Cancer Center Institute Monograph No.17)より「鳥類腫瘍ウイルスに関する国際学会(International Conference on Avian Tumor Viruses)」(J.W.ベアード(Beard)編)、pp.277-298(1964年)。ジャン スヴォボダ(Svoboda)(チェコスロバキア科学アカデミー分子遺伝学研究所(Institute of Molecular Genetics, Czechoslovak Academy of Sciences)、チェコスロバキア、プラハ)より供与。
CGL1−H/F−Nハイブリッド細胞(HeLa D98/AH.2起源)
CGL2−H/F−Nハイブリッド細胞(HeLa D98/AH.2起源)
CGL3−H/F−Tハイブリッド細胞(HeLa D98/AH.2起源)
CGL4−H/F−Tハイブリッド細胞(HeLa D98/Ah.2起源)
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列記号
本明細書では、以下の記号をヌクレオチドを表す記号として使用する。
Figure 0003977416
主要アミノ酸は20個あり、それらのおのおのは3個の隣接するヌクレオチド(三つ組(トリプレット)コードまたはコドン)の異なる組合せによって特定されており、さらに、特徴的な蛋白質を形成するために特定の順番で結合される。本明細書においては、アミノ酸を表記するために、たとえば図1(A−C)に示すような3文字記号を使用する。それらを以下に示す。
Figure 0003977416
【図面の簡単な説明】
図1(A−C)は、以下に示すように単離されたMNの全長のcDNAクローンのヌクレオチド配列(配列番号1)を提供する。図1(A−C)はまた、該cDNAにコードされている予測アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
図2は、幼ラットをXC腫瘍について、融合タンパク質MNグルタチオンSトランスフェラーゼ(GEX−3X−MN)(IMグループ)に対して調製された血清を用いて免疫化した結果と、幼ラットを対照ラット血清(Cグループ)で免疫化した結果を示している。グラフの各々の点は、1匹のラット由来の腫瘍の重量を示す。実施例2はこれらの実験を詳細に説明する。
図3(A−F)は、10,898bpのMNの完全ゲノム配列(配列番号5)を供するものである:2654A;2739C;2645G;2859T。11のエキソンは大文字で示してある。
図4は全長MNcDNAの制限酵素地図である。オープンリーディングフレームは塗りつぶされていないボックスで示されている。制限酵素地図の下の太線は、2つのオーバーラップしているcDNAクローンの大きさと位置を示している。水平方向の矢印は、5’末端RACEに用いられたプライマーR1(配列番号7)およびプライマーR2(配列番号8)の位置を示す。関連する制限酵素サイトはBamHI(B)、EcoRV(V)、EcoRI(E)、PstI(Ps)、PvuII(Pv)である。
図5は、ヒトMN遺伝子のマップである。番号を付されたボックスは、エキソンを示す。LTRと命名されたボックスは、HERV−K LTRに対するホモロジー領域を示す。空のボックスはAlu関連配列である。
図6はヒトMN遺伝子の推定プロモーターのヌクレオチド配列である。該ヌクレオチドは、RNase防護アッセイに従った転写開始サイトから番号を付されている。潜在的制御因子を上線で示した。転写開始サイトをアスタリスク(RNase防護)およびドット(RACE)にて示す。第1のエキソンの配列はアスタリスクの下から始まっている。
図7は、MNゲノムクローンの、それらの転写開始サイトに関する位置に基づいた配置の模式図である。Bd3を除く全てのゲノム断片は、HeLa細胞から派生したラムダFIX IIIゲノムライブラリーより単離した。クローンBd3は、ヒト胎児脳ライブラリーより単離した。
発明の詳細な説明
ここに示すMN遺伝子は、11のエキソンと10のイントロンから構成されている。ここに記述するのは、MNcDNAとゲノム配列の配列決定、およびMNタンパク質の遺伝子工学、例えばGEX−3X−MN、MN−PA、MN−FcおよびMN 20−19タンパク質である。該MNタンパク質はアフィニティークロマトグラフィーにより簡便に精製可能である。
MNはHeLa細胞中でツインタンパク質p54/58Nとして現れる。p54/58Nと反応性を有するモノクローナル抗体(MAb M75)を用いたイムノブロットにより、54kdおよび58kdのバンドが明らかとなった。これらの2つのバンドは、グリコシル化のパターンもしくはプロセシングの様式の1つの型に対応しているのかも知れない。ここでは、ツインタンパク質とはp54/58Nをさす。
MNタンパク質の発現は、腫瘍性の病気の診断/予後に見られる。MNツインタンパク質p54/58Nは、HeLa細胞およびスタンブリッジ腫瘍性(H/F−T)ハイブリッド細胞[(Stanbridge et al.,Somatic Cell Genet.7:699−712(1981);およびStanbridge et al.,Science,215:252−259(1982))では発現されるが、繊維芽細胞または非腫瘍性(H/F−N)ハイブリッド細胞中では発現されない[Stanbridge et al.,前出]。以前の、ザバダら、WO93/18152、前述において報告された研究では、MNタンパク質はヒト卵巣、子宮内膜および子宮頸部腫瘍において、およびウシ腫瘍(乳頭)において見いだされるが、正常な卵巣、子宮内膜、子宮または胎盤組織では見られない。本実施例1はMN遺伝子の発現の更なる研究を詳述し、そこにおいてMN抗原は、免疫組織化学的染色によって検出されているが、特に、子宮頸部、膀胱、頭および頸部、および腎臓細胞を含む数多くのガンの腫瘍細胞中に広く分布していることが判明した。さらに、実施例1の免疫組織化学染色実験により、実験が行われた正常組織のうち、正常胃組織のみが、決まって、広くMNの存在を示すことが明らかとなった。さらにここで、MN抗原は、異型型および/または悪性を示している組織標本中の形態的には正常に見える領域においてもしばしば存在することが示された。
MN遺伝子――クローニングおよび塩基配列決定
図1(A−C)は、以下に記述するように単離された、全長のMNcDNAクローンのヌクレオチド配列(配列番号1)を供する。図3(A−F)は、完全MNゲノム配列(配列番号5)を供する。図6は、推定MNプロモーターのヌクレオチド配列(配列番号27)を示す。
遺伝暗号の縮重から、一つのコドンが一つ以上のアミノ酸をコードしており(たとえば、TTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTGはいずれもロイシン(leu)というアミノ酸をコードしている)、また、たとえば、配列番号1および5に示すように、一つのコドンが他のコドンと入れ替わるヌクレオチド配列の多様性により、本発明と実質的に同等な蛋白質およびポリペプチドが産生される。MN cDNAのヌクレオチド配列および相補的な核酸配列に関するそのような変形もすべて本発明の範ちゅうに含まれる。
さらに、本明細書に記述し、図1(A−C)、図3(A−F)、および6に示しているヌクレオチド配列は、単離され、本明細書で説明しているcDNAヌクレオチド配列のうち、はっきりした構造のみを表したものである。わずかに変更されたヌクレオチド配列が見つかることもあろうし、また、たとえば、同様のエピトープを有する等の、実質的に同等なMN蛋白質およびポリペプチドをコードするように当該分野で知られた技術により変形することも可能である。そしてそのような蛋白質/ポリペプチドは本発明の目的に適合する。MN蛋白質/ポリペプチドと相同あるいはほぼ相同な蛋白質/ポリペプチドをコードする合成核酸配列のように、同等なコドンを有するDNAおよびRNAは、例示的配列(配列番号1、5、27)と厳しい条件下でハイブリダイズする核酸配列と同様に、本発明の範ちゅうに含まれる。遺伝暗号の縮重がなければ、これらの核酸配列はやはり前記cDNAヌクレオチド配列にハイブリダイズする。本明細書で説明しているように、核酸配列が修飾されたり変形される結果、MN配列およびその断片と実質的に同等の配列が作り出される。
部分cDNAクローン
ザバダ等、前出において、1397bpの長さの部分MN cDNAクローンの単離が記述されている。LMCV感染HeLa細胞からλgt11によるcDNAライブラリーを調製し、M75とアルカリフォスファターゼを縮合したヤギ抗マウス抗体とを組み合わせたイムノスクリーニングにライブラリーをかけた。
1個のポジティブクローンを取り出し、pBlusecript KS(ストラタジーン(Stratagen)社)のNotI部位に組み込んでサブクローニングを行い、pBlusecript-MNを作った。
Erase-a-BaseTMキット(プロメガ(Promega)社、米国、ウィスコンシン州、マディソン)を使用して、方向が反対で重なる2個の欠失を作り、T7シークエンス用キット(ファルマシア(Pharmacia)社、米国、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)を用いてジデオキシ法により配列を決定した。配列はcDNAクローンの一部を表しており、インサートの長さは1397bpであった。配列は、大きな1290bpのオープンリーディングフレームおよびポリAシグナル(AATAAA)を含む107bpの3’非翻訳領域からなっている。しかしながら、オープンリーディングフレーム(ORF)中の最初のATGコドンを取り巻いている配列は、翻訳開始サイトの定義とは一致しなかった。さらに、MNクローンの大きさと対応するmRNAのそれとをノーザンブロットにより比較すると、このcDNAは、その配列の5’末端から約100bpが欠損していることがわかった。
全長cDNAクローン
オリジナルのcDNAライブラリーから全長のクローンを単離する試みは失敗した。それ故、本発明者等は、cDNA末端の高速増幅(RACE)を、オリジナルcDNAクローンの5’領域から派生したMN特異的プライマー、R1およびR2(配列番号7および8)を用いて行った。RACE産物は、pBluescript中に挿入され、組換えプラスミドの集団全体をMN特異的プライマーODN1(配列番号3)とともに配列決定した。この過程において、図1(A−C)に示される(配列番号1)、ちょうどMNcDNAの5’末端での信頼できる配列が得られた。
特に、RACEは5’RACE System(GIBCO BRL;Gaithersburg、MD(USA))を用いて以下のように行った。1μgのmRNA(上記と同じ)が、MN特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドR1
Figure 0003977416
(配列番号7)によって開始される最初の鎖のcDNA合成のテンプレートとして用いられた。最初の鎖の生産物を酢酸アンモニウムの存在下で2回沈殿し、ホモポリマー性Cテールをその3’末端にTdTにより取り付けた。テールを付与されたcDNAを続いて、重ねあわせたプライマー、R2
Figure 0003977416
(配列番号8)および、ホモポリマー性テールとアニールするアンカープライマー
Figure 0003977416
(配列番号9)とを用いてPCRによって増幅した。増幅された生産物をBamHIおよびSalI制限酵素により切断し、pBluescriptIIKSプラスミド中にクローン化した。形質転換の後、プラスミドDNAを形質転換細胞集団の全てから精製し、MN特異的プライマーODN1
Figure 0003977416
(配列番号3)を用いた配列決定のテンプレートとして用いた。
RACE分析の結果に基づいて、全長MN cDNA配列は、位置12から始まる、翻訳開始について提唱されている規則(Kozak、J.Cell.Biol.,108:229−241(1989))と良く一致しているATGコドン(GCGCATGG)を有する単一のORFを含むことが観察された。ATリッチの3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル(AATAAA)をcDNAの末端の10bp前方で有していた。驚くべきことには、同じcDNAライブラリーから得られた付加的な4つのクローンと同様に、オリジナルのクローン由来の配列は、いかなるポリAテールも見られなかった。さらに、ポリAテールのすぐ下流に、mRNA不安定性に寄与すると考えられている(Shaw and Kamen、Cell、46:659−667(1986))1つのATTTAモチーフが発見された。この事実は、MN mRNAの特異的分解によってポリAテールが消失している可能性を提起している。
ゲノムクローン
MN制御を調べるために、MNゲノムクローンを単離した。1つのゲノムクローン(Bd3)を、胎児脳由来のヒトコスミドライブラリーより両方のMN cDNAをプローブとして、及びcDNAの5’末端から派生したMN特異的プライマー、ODN1
(配列番号3、前出)
およびODN2
Figure 0003977416
(配列番号4)を用いて単離した。配列分析により、このゲノムクローンが、MN転写開始サイトの上流域をカバーし、MN cDNA中に位置しているBamHI制限サイトで終わっていることが判明した。他のMNゲノムクローンも同様に単離した。
完全MNゲノム領域を同定するために、HeLa細胞染色体DNAからラムダFIX IIベクター(Stratagene)中にヒトゲノムライブラリーを調製し、以下に記述されるようにMN cDNAを用いたプラークハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。いくつかの個別のMN組換えファージを同定し、単離し、制限マッピングおよびハイブリダイゼーションで特徴づけた。全体のMNゲノム領域をカバーしている、4つのオーバーラップしている組換体を選択し、消化し、pBluescript中にサブクローン化した。このサブクローンを続いて2方向に重ねて欠失させ、配列決定した。DNA配列をコンパイルし、DNASISソフトウェア パッケージを用いてコンピュータ解析した。
図7は転写開始サイトに従ったMNゲノムクローンの配列の模式図である。A4aクローンおよびXE1およびXE3サブクローンはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)12301 Parklawn Drive、Rockville、MD 20852(USA)に、1995年6月6日に、それぞれATCC寄託番号97199、97200および97198として寄託された。
完全MNゲノム領域のエキソン−イントロン構造
オーバーラップしているクローンの完全配列は、10,898bp(配列番号5)を含む。図5は、ヒトMN遺伝子の構成を表し、全ての11のエキソンを2つの上流および6つのイントロン性Alu反復要素を示している。全てのエキソンは小さく、27から191bpの範囲にあるが、第1の415bpのエキソンは例外である。イントロンのサイズは89から1400bpの範囲にある。
以下の表1は、AG−GTモチーフ(Mount、Nucleic Acids Res.10:459−472(1982))を含むコンセンサス・スプライス配列に従っているスプライス供与配列およびスプライス受容配列を列挙している。
Figure 0003977416
EMBLデータライブラリーにおけるMN遺伝子に関連した配列の検索では、6つの完全および2つの部分Alu型反復配列がAlu配列と69.8%から91%の範囲で(Jurka and Milosavljevic、J.Mol.Evol.32:105−121(1991))ホモロジーを有していたことを除けば、いかなる特定のホモロジーも明らかにはならなかった。以下の、5’隣接領域の特徴付けの下でもまた、5’末端近傍のゲノム領域の222bpの配列が、HERV−K LTR領域と非常に相同性が高いことが示された。
MN遺伝子転写開始サイトのマッピング
以前のMN遺伝子のRACE(上述)による転写開始サイトの位置づけの試みにおいては、得られたものは、第1のORFの開始コドンから12bp上流の開始サイトに配列が位置された主要PCR断片であった。この結果は、恐らく、最も短いmRNAの優先的な増幅により得られたものであろう。故に、本発明者等は、RNase防護アッセイ(RNP)を、MN遺伝子の5’末端の詳細なマッピングのために用いた。プローブは統一して標識された470bpのヌクレオチドコピーRNA(nt−205から+265)(配列番号55)であり、これはMN発現HeLaおよびCGL3細胞由来の総RNAとハイブリダイズし、シークエンスゲル上で分析された。この分析によりMN遺伝子転写は複数のサイトで開始し、最も長いMN転写の5’末端は、以前にRACEにより特徴づけられたものより30nt長いものであった。
MN遺伝子の転写終結サイトのマッピング
RNase防護アッセイを、MN cDNAの3’末端を検証するために行った。これは、本発明者等の以前の発見である、cDNAはポリAシグナルを含んでいるにも拘わらずポリAテールを欠失しており、このポリAテールはMN mRNAの3’非翻訳領域の不安定モチーフの存在による、MN mRNAの推定される分解によって欠失されるということに関して重要である。関心の持たれている領域をカバーしているゲノムクローンXE3を用いた、MN mRNAのRNP分析は、予測断片の3’末端がMN cDNAの最後の塩基(ゲノム配列の位置10,752)に相当していることから、我々のMN cDNA配列決定からのデータを確認した。このサイトは、ゲノム配列中に、転写終結およびポリアデニル化に必要である第2のシグナルの存在の要求(McLauchlan et al.,Nucleic Acids Res.,13:1347(1985))にも一致している。モチーフTGTGTTAGT(nt10,759−10767)は、コンセンサス配列およびポリAシグナルの22bp下流域以内の位置の両方に一致している。
5’隣接領域の特徴付け
ヒト胎児脳コスミドライブラリーから単離されたBd3は、MN遺伝子の転写開始領域の3.5kb上流領域をカバーしていることが明らかとなった。それは重要なコード領域を含んではいない。2つのAlu反復が位置−2587から−2296(配列番号56)および−1138から−877(配列番号57)に位置している(RNPによって決定された転写開始に関して)。5’末端近傍の配列は、ヒト外因性レトロウイルスHERV−Kの長期間反復U3領域(Ono、M.,J.Virol,58:937−944(1986))と極めて相同性が高い(91.4%)。このLTR様断片は222bpの長さで、その3’末端にAリッチテールを有している。最も可能性が考えられるのは、それは、HERV−Kから派生したSINE(short interspersed repeated sequence)型非ウイルスレトロポゾン(Ono et al.,Nucleic Acids Res.,15:8725−8373(1987))を表していることである。この断片中には制御因子に相当する配列がないが、これはU3の3’部分、およびLTRの全体のRおよびU5領域がBd3ゲノムクローンに存在しないため、およびグリココルチコイド反応性要素がエンハンサーコア配列と同様にその5’ボーダーを超えているからである。
しかしながら、2つの角質細胞(keratinocyte)依存性のエンハンサーが、LTR様断片の下流配列中に位置−3010および−2814において同定された。これらの要素は、ヒト乳頭腫ウイルスのE6−E7腫瘍遺伝子の転写制御に関与しており、それらの組織特異性の原因であると考えられている。(Cripe et al.,EMBO J.,6:3745−3753(1987))。
転写開始の5’のDNAのヌクレオチド配列分析により、認識可能なTATAボックスは、第1のエキソンから期待される距離には見いだされないことが判明した(図6)。しかしながら、転写因子の潜在性結合サイトの存在は、この領域はMN遺伝子に対するプロモーターを含みうることを示唆している。いくつかの転写因子AP1およびAP2に関するコンセンサス配列が、p53結合サイトを含む他の制御因子(Locker and Buzard,J.,DNA Sequencing and Mapping,1:3−11(1990);Imagawa et al.,Cell,51:251−260(1987);El Deiry et al.,Nat.Genet.,1:44−49(1992))と同様に存在する。推定プロモーター領域は59.3%のC+Gを含有しているが、それは、ハウスキーピング遺伝子のTATA無しプロモーターに典型的なCpGアイランド(Bird,Nature,321:209−213(1986))には帰属されない。他のクラスのTATAボックスを欠いている遺伝子は、イニシエーター(Inr)要素をプロモーターとして利用している。これらの遺伝子の多くは常時活性であるのではないが、それらは分化または発生の間にかなり制御されている。InrはPyPyPyCAPyPyPyPyPy(配列番号23)というコンセンサス配列を有しており、転写開始サイトを包囲している(Smale and Baltimore,Cell,57:103−113(1989))。MN推定プロモーター中には2つのこのような配列があったが、それらは転写開始とはオーバーラップしていない(図6)。
MN遺伝子の中程に興味深い領域が発見された。この領域は長さ約1.4kb(ゲノム配列のnt4,600−6,000;配列番号49)であり、第1のイントロンの3’部分から第5のエキソンの終わりまでにわたっている。この領域は典型的なCpGリッチアイランドの特徴を有しており、62.8%のC+G含量および82のCpG:131GpCジヌクレオチドを有している。さらに、転写因子AP2およびSp1(Locker and Buzard,前出;Briggs et al.,Science,234:47−52(1986))に対する複数の推定結合サイトをこの領域の中央に集中して有している。特に、長さ131bpの第3のイントロンは3つのSp1および3つのAP2コンセンサス配列を含んでいる。このデータはこの領域がMN遺伝子発現の制御に潜在的に関与していることを示唆している。しかしながら、この領域の機能は、推定5’MNプロモーター中に発見された他の制御要素と同様に、決定されるべく残されたままである。
推定アミノ酸配列
図1(A−C)に示されるMN cDNAのORFは、459アミノ酸で計算上の分子量49.7kdを有するタンパク質をコードする容量を有している。MNタンパク質のpIは約4である。アミノ酸分析で評価されたように、MNタンパク質の1次構造は4つの別々の領域に分割することができる。最初の37アミノ酸(AA)の疎水性領域はシグナルペプチドに相当する。成熟タンパク質は377AAのN末端部分、20AAの疎水性膜内外区分および25AAのC末端領域を有している。この他には、MNタンパク質は、以下のような5のドメインを有していると見ることができる:(1)シグナルペプチド(アミノ酸(AA)1−37;配列番号6);(2)コラーゲンα1鎖相同領域(AA38−135;配列番号50);(3)炭酸脱水素ドメイン(AA136−391;配列番号51);(4)膜貫通領域(AA414−433;配列番号52);および(5)細胞内C末端(AA434−459;配列番号53)。(AA番号は図1(A−C)に併せている。)
MNタンパク質の1次構造のより詳細な観察は、いくつかのコンセンサス配列の存在を示す。1つの潜在的なN−グリコシル化サイトが図1(A−C)の位置346に発見された。この特徴は、予測膜貫通領域とともに、MNがプラズマメンブレンに局在化されたN−グリコシル化タンパク質であると示された結果と一致している。cDNAから予測されたMNタンパク質はまた、7つの、Suzuki,J.Mol.Biol.,207:61−84(1989)により遺伝子制御タンパク質中に頻繁に見られるモチーフとして定義されたS/TPXX配列要素(配列番号25および26)(1つはシグナルペプチド中)を有する。しかしながら、それらのうちの2つのみが提案されたコンセンサスアミノ酸からなっている。
実験により、Zn荷電キレートセファロースを用いた吸着クロマトグラフィーによって示されるように、MNタンパク質は亜鉛カチオンに結合可能であることが判明した。HeLa細胞からMab M75によりイムノプレシピテーションされたMNタンパク質は、弱いCAの分解活性を有することが明らかとなった。このMNのCA様ドメインは、小さい可溶性ドメインのための結合サイトとして働く構造上の性質を有する。このように、MNタンパク質はいくつかのシグナル変換を仲介することができる。
LCMV感染HeLa細胞由来のMNタンパク質は、DNAセルロース吸着クロマトグラフィーを用いることにより固定化されたサケ精子二本鎖DNAと結合することが示された。結合活性には、結合バッファー中に亜鉛カチオンが存在することと還元剤が不在であることの両方が要求される。
配列の類似性
MNcDNA配列のコンピューター解析を、DNASISおよびPOSID(ファルマシア・ソフトウェア・パッケージ)を用いて行った。GenBank、EMBL、タンパク質同定資源(Protein Identification Resource)およびSWISS−PROTデータベースを、すべての生じうる配列類似性について検索された。さらに、MNとのタンパク質共有配列類似性の検索も、MIPSデータバンクにおいて、FastAプログラム(Pearson and Lipman,PNAS(USA),85:2444(1988))を用いて行った。
MN遺伝子はヒトゲノムから派生した明らかに新規な配列であることが判明した。アミノ酸配列類似性の検索により、最も高い配列同一性のレベルとして(256AAの38.9%または170AAオーバーラップの44%)、図1(A−C)のMNタンパク質中心部分(AA136−391(配列番号51))もしくは221−390(配列番号54)と炭酸脱水素酵素(CA)との間の類似性が判明した。しかしながら、cDNA MN配列と、異なるCAアイソザイムをコードしているcDNA配列との間の、全体に亘ってのホモロジーは、48−50%の範囲にあり、当業者にとっては低いものである。故に、MN cDNA配列は、何れのCA cDNAとも近い関係にはない。
厳しい条件のもとでは、少なくとも80−90%のホモロジーを有する非常に近く関連した配列のみがハイブリダイズする。図1(A−C)に示されているMN cDNAの配列と、対応するヒト炭酸脱水素酵素II(CAII)のcDNAとの比較により、これらの2つの配列の間には、50またはそれ以上のヌクレオチドを有するCAIIのcDNA配列の区画と、厳しいハイブリダイゼーション条件の下でMN cDNAとハイブリダイズするために十分に長い類似性の範囲が無く、その逆も無いことが判明した。
MNタンパク質のN末端部分(AA38−135;配列番号50)は、細胞外マトリックスの重要な構成物であるヒトコラーゲンアルファ1鎖と27−30%の同一性を示した。
MN蛋白質および/またはポリペプチド
本明細書で用いている「MN蛋白質および/またはポリペプチド」(MN蛋白質/ポリペプチド)とは、MN遺伝子あるいはその断片によりコードされている蛋白質および/またはポリペプチドを意味している。本発明の好ましいMN蛋白質の例は、推定アミノ酸配列が図1(A−C)に示されているものである。好ましいMN蛋白質/ポリペプチドは、図1(A−C)に示すMN蛋白質と実質的に相同性を有する蛋白質/ポリペプチドである。
例えば、そのような実質的に相同性を有するMNタンパク質/ポリペプチドとは、本発明のMN特異的抗体、好ましくはMab M75、MN12、MN9およびMN7またはそれらの相同体である。
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によるアミノ酸の共有結合鎖のことであり、本明細書では、50あるいはそれ以下のアミノ酸から構成されるものと考えている。本明細書における「蛋白質」とは、50より多くのアミノ酸から構成されるポリペプチドと定義される。
MNタンパク質はいくつかの興味深い性質を示す:細胞膜局在性、HeLa細胞中での細胞密度依存性発現、HeLa−繊維芽体性細胞ハイブリッド中での腫瘍性表現型との関連、および他の組織中のいくつかのヒト腫瘍中での発現である。ここに示されるように、例えば、実施例1においては、MNタンパク質は腫瘍組織区分には直接見られるが、正常組織の対応する部分には一般に見られない(以下の実施例1に正常胃組織中での例外が記されている)。MNはまた、形態は正常に見えるが異型および/または悪性を示している組織標本においてもまた時々発現される。一緒にすると、これらの特徴は、細胞拡散の制御、分化および/または形質転換におけるMNの可能性の高い関与を示している。
インビボ(in vivo)の腫瘍細胞から産生される蛋白質/ポリペプチドの配列が形質転換された細胞培養内の腫瘍細胞から産生される蛋白質/ポリペプチドのものと異なることがある。すなわち、MN蛋白質/ポリペプチドが、アミノ酸置換、伸張、欠損、削除およびそれらの組合せ(これらに限定されるわけではないが)のようなアミノ酸配列変化を有していても、それらはすべて本発明の範ちゅうに属する。体液中に残存する蛋白質は蛋白質分解などの分解処理を受けることがある。すなわち、血清などの体液中にはかなりの削除が行われたMN蛋白質およびMNポリペプチドが見いだされる。本明細書で使用している「MN抗原」とは、MN蛋白質/ポリペプチドを包含している。
さらに、MN蛋白質およびポリペプチドのアミノ酸配列は、遺伝子工学によって変化させることもできる。1個またはそれ以上のアミノ酸を削除したり置換することができる。そのようなアミノ酸の変化も、生物学的活性に有意の変化をもたらさず、MN変異体同様、本発明の範囲に含まれる蛋白質やポリペプチドを生じさせることができる。
本発明のMN蛋白質およびポリペプチドは、本発明の方法にしたがって、さまざまな手段で調製できる。たとえば、組換え、合成、あるいはその他の生物学的手法、すなわち、長い蛋白質およびポリペプチドを酵素および/または化学的に解裂する等の方法が挙げられる。MN蛋白質を調製する好ましい方法は組換え法である。組換えによるMN蛋白質の産生のために特に好ましい方法は、融合蛋白質GEX−3X−MN、MN 20−19、MN−FcおよびMN−PAに関して以下に記述する方法である。
MN蛋白質およびポリペプチドの組換え産生
図1(A−C)に示すMN蛋白質またはその断片を調製する代表的な方法は、適切なMN cDNA断片を以下に例示したような適切な発現ベクターに挿入することである。ザバダ等、WO93/18152(前出)には、部分cDNA(前述)をpGEX−3X(ファルマシア)中で用いた融合タンパク質GEX−3X−MNの生産が記載されている。非グリコシル化GEX−3X−MN(MN融合タンパク質MNグルタチオンSトランスフェラーゼ)XL1−Blue由来。以下に記述されているのは、昆虫細胞で発現されたMNタンパク質および発現プラスミドpEt−22b(Novagen Inc.;Madison,WI(USA))を用いてE.coliで発現された非グリコシル化MNタンパク質の両方である。
バキュロウイルス発現システム
組換えバキュロウイルス発現ベクターを、いくつかの型の昆虫細胞に感染させるために開発した。例えば、特に組換えバキュロウイルスが開発された:Aedes aegypti、Autographa californica、Bombyx mor、Drosphila melanogaster、Heliothis zea、Spodoptera frugiperda、およびTrichoplusia ni(PCT刊行番号WO89/046699;Wright,Nature,321:718(1986);Fraser et al.,In Vitro Cell Dev.Biol.,25:225(1989))。外因性DNAを昆虫細胞中に導入する方法は当業者に良く知られている。DNA移入およびウイルス感染の手順は、通常、形質転換される昆虫の属によって変化する。例えば、Autographa(Carstens et al.,Virology,101:311(1980));Spodoptera(Kang,”Baculovirus Vectors for Expression of Foreign Genes”in:Advances in Virus Research,35(1988));およびHeliothis(virescens)(PCT刊行番号WO88/02030)を参照されたい。
本明細書に記載しているように、単離されたMN DNAのクローニングには、広範な種類の宿主−クローニングベクターの組合せを用いることができる。たとえば、有用なクローニング媒体としては次のようなものを挙げることができる。染色体DNA、非染色体DNA、合成のDNAであって、たとえば、pBR322等の各種の既知のバクテリアプラスミド、その他の大腸菌(E. Coli)プラスミドおよびそれらの誘導体、ならびに広い宿主範囲のプラスミド、たとえば、RP4やファージDNA(たとえば、NB989等のλファージの多数の誘導体)、ファージDNAの発現をコントロールする配列を有する修飾プラスミド等のプラスミドとファージDNAの組合せから作られたベクターなど。
宿主として有用な細胞は真核性でも原核性でもよく、次のようなものが例示される。バクテリア宿主、たとえば、大腸菌(E. Coli)とその他のバクテリア株、酵母およびその他の菌類等、動物または植物の培養細胞等の動物あるいは植物宿主、昆虫細胞およびその他の宿主。もちろん、全ての宿主が同じ効果を有するわけではない。本明細書に記載されている原則を考慮しながら本発明の範囲から逸脱しないように、当業者によって宿主−クローニング媒体の組合せの選択がなされる。
以下は代表的な本発明によるMNタンパク質の遺伝子工学の実施例である。記述は例示のためであり、本発明をいかなる意味でも限定するものではない。
MN 20−19タンパク質の発現
1つの代表的な、組換えによって生産された本発明のMNタンパク質はMN 20−19タンパク質であるが、バキュロウイルス感染Sf9細胞(Spodoptera frugiperda細胞;Clontech;Palo Alto CA(USA)中で発現された場合はグリコシル化されている。MN 20−19タンパク質は、配列番号6(図1(A−C))の推定シグナルペプチド(AA1−37)を欠失しており、メチオニン(Met)を発現のために末端に有しており、Leu−Glu−His−His−His−His−His−His(配列番号22)を精製のためにC末端に付加されている。
GEX−3X−MN融合タンパク質のMNコード配列部分を他の発現システム中へ挿入するために、PCR用のプライマーのセットを設計した。プライマーはコード配列のそれぞれの端に制限サイトを、同時にフレーム中の開始および停止コドンを供与するために構築された。プライマーの配列を、制限酵素分解サイトと発現ランドマークを指示し、以下に示す。
(配列番号17)
Figure 0003977416
(配列番号18)
Figure 0003977416
配列番号17および18プライマーを、GEX−3X−MNベクター中のMNコード配列を標準PCR技術を用いて増幅するために用いた。その結果得られたPCR産物(MN 20−19と名付けられた)を、0.5%アガロース/1X TBEゲルを用いて電気泳動し;1.3kbのバンドを切り出し、DNAをGene Clean II キットを製造者の指示に従って使用して回収した。
MN 20−19およびプラスミドpET−22bを制限酵素NdeIおよびXhoIで分解し、適当なバンドを上記のようにアガロースゲル電気泳動により回収した。単離された断片は、ベクター:インサートの比を1:4としてエタノールで共沈殿させた。再懸濁したあと、断片をT4DNAリガーゼを用いてライゲーションさせた。その結果生じた生成物をコンピーテントNovablue E.coli細胞(Novagen,Inc.)を形質転換するために用いた。その結果得られたアンピシリン耐性コロニーからのプラスミド ミニプレップ(Magic Minipreps;Promega)を、正確なインサートの存在を制限マッピングによりスクリーニングを行った。遺伝子断片pET−22bプラスミドへのNdeIおよびXhoIサイトを用いた挿入により、アフィニティー単離に用いることができるヒスチジンテールを付加した。
バキュロウイルス発現システムへの挿入用のMN 20−19を調製するため、MN 20−19遺伝子断片をpET−22bから制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびPvuIを用いて切り出した。バキュロウイルスシャトルベクターpBacPAK8(Clontech)をXbaIおよびPacIで切断した。所望の断片(MN 20−19は1.3kb、pBacPAK8は5.5kb)をアガロースゲル電気泳動で単離し、Gene Clean IIを用いて回収し、インサート:ベクターの比を2.4:1で共沈殿した。
T4DNAリガーゼによるライゲーションの後、DNAをコンピーテントNM522E.coli細胞(Stratagene)を形質転換するために用いた。その結果得られたアンピシリン耐性コロニー由来のプラスミド ミニプレップを、制限マッピングによる正確なインサートの挿入についてスクリーニングした。適切なコロニー由来のプラスミドDNAおよび直線化されたBacPAK6バキュロウイルスDNA(Clontech)を、Sf9細胞を標準的な技術により形質転換するために用いた。組換えによりMN 20−19配列を担持するBacPAKウイルスが得られた。これらのウイルスをSf9細胞上にプレートし、寒天を重層させた。
プラークを拾い、Sf9細胞上にプレートした。調整培地および細胞を集めた。調整培地の少量をテスト用に取り分けて保存した。細胞を1%トリトンX100を含むPBSにより抽出した。
調整培地および細胞抽出物をニトロセルロース紙上にドットブロットした。ブロットをPBS中の5%ノンファット乾燥ミルクによりブロックした。Mab M75を、ドットブロット中のMN 20−19タンパク質の検出に用いた。ウサギ抗マウスIg−HRPを結合したMab M75を検出するために用いた。ブロットはメンブレンエンハンサー(KPL;Gaithersburg,MD(USA))を含むTMB/H22で展開した。ドットブロット上での最も強い反応を生じさせた2つのクローンを拡大のために選択した。1つはMN 20−19タンパク質をHigh Five細胞(Invitrogen Corp.,San Diego,CA(USA);BTI−TN−5BI−4;Trichoplusiani卵細胞ホモジネートより派生)中で生産するために用いた。MN 20−19タンパク質を、ウイルス感染High Five細胞の調整培地から精製した。
MN 20−19タンパク質を、調整培地からイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。6.5mgのMab M75を1gのトレシル(Tresyl)活性化されたトヨパール(登録商標)(東ソー;日本(#14471))と結合させた。約150mlの調整培地をM75−トヨパールカラムに通した。カラムをPBSで洗浄し、MN 20−19タンパク質を1.5M MgClにより溶出させた。溶出タンパク質を続いてPBSに対して透析した。
FcもしくはPAで置換された膜内外領域を含むC末端部分を有する融合タンパク質
膜内外領域を含むC末端部分が、ヒトIgGのFc断片またはプロテインAによって置換されているMN融合タンパク質を構築した。このような融合タンパク質はMN結合タンパク質を同定するために有用である。そのようなMNキメラにおいては、MNのN末端部分の全体が異種タンパク質との相互作用に接触可能であり、C末端のタグがタンパク質複合体の容易な検出および精製に役立つものである。
MN蛋白質およびポリペプチドの合成および生物工学的発現
本発明のMN蛋白質およびポリペプチドは組換え法のみでなく、合成およびその他の生物学的手法によっても調製することができる。蛋白質またはポリペプチドの合成による産生は、当該分野でよく知られた方法に従って所望するアミノ酸鎖を化学的に合成していくことからなる。所望するポリペプチドまたは蛋白質を調製するためのその他の生物学的手法の例としては、所望するアミノ酸配列を含む長いMNポリペプチドまたは蛋白質を選択的に蛋白分解することが挙げられる。たとえば、長いポリペプチドまたは蛋白質を化学試薬または酵素で分解することなどである。
ペプチドの化学合成は従来技術であり、たとえば、メリフィールド(Merrifield)固相合成法(メリフィールド(Merrifield),J.,Am. Chem. Soc., 85:2149-2154(1963)、ケント(Kent)ら、「生物学および医学における合成ペプチド(Synthetic Peptides in Biology and Medicine)29ページ」、アリターロ(Alitalo)ら編、エルセヴィール科学出版(Elsevier Science Publishers)社、1985年、およびハーグ(Haug),J.D.American Biotechnology Laboratory, 5(1):40-47(1987年、1/2月号)などにより実施される。
化学的ペプチド合成の方法には、市販の保護アミノ酸を用いる自動ペプチド合成機の使用も含まれる。合成機としては、たとえばバイオサーチ(Biosearch)社(米国、カリフォルニア州、サンラファエル)の9500型および9600型、アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)社(米国、カリフォルニア州、フォスターシティー)の430型、ミリジェン(Milligen)社(ミリポア(Millipore)社の子会社、米国、マサチューセッツ州、ベッドフォード)の9050型、およびデュポン(DuPont)のRAMP(高速自動複数ペプチド合成機)(デュポンコンパス(Dupont Compass)社、米国、デラウェア州、ウィルミントン)などがある。
MN発現の制御とMNプロモーター
MNは、細胞拡散の制御および細胞内形質転換に直接関与している新規な制御タンパク質であるように見える。HeLa細胞中では、MNの発現が細胞密度により積極的に制御されている。そのレベルはLCMVへの継続的な感染により増加される。HeLa細胞と正常繊維芽細胞とのハイブリッドにおいては、MN発現は腫瘍形成性と相関している。MNは非腫瘍形成性ハイブリッド細胞(CGL1)中には存在せず、染色体11を欠いている腫瘍形成性分離個体においてのみ発現されるという事実は、MNは染色体11中の推定サプレッサーにより消極的に制御されていることを示唆している。
MNタンパク質の制御の役割を支持する証拠が、継続してMNタンパク質を発現するNIH 3T3の安定した形質導入体の創出により発見された。MN発現の必然的な結果として、NIH 3T3細胞は、形質転換された表現型に関する特徴を獲得する:変化した形態、増加した飽和密度、血清減少培地での拡散性の利点、促進されたDNA合成および固定に依存しない増殖能力である。さらに、不接合細胞集団のフロー血球計数分析により、MNタンパク質の発現がG1フェーズを通して、加速された細胞の進行、細胞の大きさの減少、不適切な条件下での増殖停止能力の欠失へとつながることが示唆された。また、MN発現細胞はDNA損傷薬マイトマイシンCへの減少した感受性を示す。
非腫瘍性ヒト細胞、CGL1細胞もまた、全長MN cDNAを移入された。同じpSG5C−MN構築物をpSV2neoプラスミドと組合せ、NIH 3T3細胞に移入するときに用いた方法で用いた。15のMN陽性クローン(SP−RIAおよびウエスタンブロットにより試験)から、3つを更なる試験用に選択した。空のプラスミドを移入したCGL1細胞から選択された、2つのMN陰性クローンを対照として加えた。最初の分析で、MN移入CGL1細胞の形態および増殖特性は劇的には変化しないが、それらの拡散率およびプレート効率は増加した。
MN cDNAおよびプロモーター
上記のように単離された、MNゲノムクローン由来のプロモーター領域をMN cDNAに連結して、CGL1ハイブリッド細胞へ移入したとき、選択の直後にMNタンパク質の発現は検出可能であった。しかしながら、続いて、それは少しずつ停止し、フィードバック制御因子の活動が示唆された。全長cDNA(プロモーターを含まない)を移入に用いた場合には、これと類似した現象は見られないので、推定制御要素はMNプロモーターを介して活動しているようである。
「アンチセンス」MN cDNA/MNプロモーター構築物をCGL3の移入に用いた。その効果は、「センス」構築物を移入したCGL1細胞とは逆であった。一方、移入CGL1細胞は、対照CGL1よりも数倍大きいコロニーを形成し、移入CGL3細胞は、対照CGL3細胞よりもずっと小さいコロニーを形成した。
これらの実験のために、MN cDNAへBamHIサイトを通して連結されているプロモーター領域の部分が、MNゲノムクローン(Bd3)のNcoI−BamHI断片で転写開始コドンから数百bp上流の領域を表しているものから派生された。ライゲーションの後、結合DNAをpBK−CMV発現ベクター(Stratagene)中に挿入した。挿入された配列で要求されている配位は、方向性クローニングによって確認され、それに続いて制限分析で証明された。移入の手順はNIH 3T3細胞の移入に用いられたものと同じであるが、pSV2neoプラスミドとの共移入は必ずしも必要ではない。なぜなら、neo選択マーカーは既にpBK−CMVベクター中に存在しているからである。
G418を含む培地中での選択の2週間後、上記のように、増殖したコロニーの数と大きさの顕著な差異が明白であった。選択とクローニングのすぐ後に、MN移入CGL1およびCGL3を、SP−RIAによってMNの発現および抑制に関してそれぞれ試験した。単離されたCGL1クローンはMN陽性であり(そのレベルは全長cDNAに関して得られたよりも低いが)、一方MNタンパク質は移入CGL3クローンにはほとんど見られなかった。しかしながら、続いての継代では、移入CGL1細胞中のMNの発現量は静止し始め、続いてブロックされ、恐らくはコントロールフィードバックメカニズムを証明している。
移入CGL3細胞の低下された拡散の結果、クローン化細胞(SP−RIAに従い、最も低いMNのレベルについて)の多数を拡大することは困難であり、それらは継代の間に消失した。しかしながら、いくつかのクローンはこの問題を克服し、再びMNを発現した。一旦これらの細胞がより高い量に達し、体内で生産されたMN mRNAが、異所性で発現されたアンチセンスmRNAの量を超えて増加されることは可能である。
形質転換および復帰
適当なベクター中にあるMN cDNAを移入した脊椎動物細胞は、顕著な形態性形質転換を示した。形質転換細胞は非常に小さく、高密度で、増殖が遅く、好塩基性細胞質および拡大されたゴルジ体を有していた。しかしながら、形質転換クローンは何度も復帰し、例えば、3−4週間以内に、細胞が高レベルのMNタンパク質を生産していたとしても、ほぼ正常の形態となる。MNタンパク質は、酵母細胞中でも生物学的に活性である;その発現のレベルに応じて、それはそれらの増殖を刺激するか遅らせ、そして形態変化を誘導する。
標準組成MLV(ネズミ白血病ウイルス)とともに感染可能な伝播性複合体(pGD−MN+MLV)を形成する、MLV派生ベクターpGD中に、全長MN cDNAを挿入した。この複合体は、脊椎動物細胞、例えば、NIH 3T3細胞およびネズミ胚繊維芽細胞BALB/c等を形質転換するが、これもまたほとんど正常な形態まで復帰する。そのような復帰は再びMNタンパク質を含み人工ウイルス複合体(pGD−MN+MLV)を生産し、それは形質転換能力を保持している。このように、MN−形質転換細胞の復帰は明らかに欠失、静止化またはMN cDNAの変異によるものではなく、サプレッサー遺伝子(群)の活性化の結果であろう。
核酸プローブおよび試験キット
本発明の核酸プローブは、図1(A−C)に示すMN cDNA配列、または、例えば図3(A−F)(配列番号5)および推定プロモーター配列(図6の配列番号27)等の他のMN遺伝子配列と、相補的もしくは実質的に相補的な配列からなる。本明細書で使用する「実質的に相補的」という語は、当該技術分野で広く理解されている意味と同じであり、それゆえ、通常のハイブリダイゼーションの状態の意味で用いる。ハイブリダイゼーションの程度は、相補性の精度に応じて変わり得る。例えば、2つの核酸は、例えば、厳しいハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズすれば、互いに実質的に相補的である。
厳しいハイブリダイゼーション条件とは、ここでは、当業者が厳しいとしている標準的なハイブリダイゼーション条件と一致する。例えば、一般に厳しい条件とは比較的低塩および/または高温条件を包含し、例えば、0.02Mから0.15MのNaClで50℃から70℃の温度等である。より厳しくない条件とは、例えば、0.15Mから0.9Mの塩で20℃から55℃までの温度等であり、ハイブリッド2重体を不安定化するホルムアミドの量をより多く添加すれば、温度を高くするのと同様に、より厳しくなる。
例としての厳しいハイブリダイゼーション条件は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,頁1.91および9.47−9.51(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor、NY;1989);Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,頁387−389(Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor、NY;1982);Tsuchiya et al.,Oral Surgery,Oral Medicine,Oral Pathology,71(6):721−725(June 1991)に記載されている。
好ましい本発明の核酸プローブは、本発明のMNタンパク質またはポリペプチドをコードしている単離された核酸の断片である。好ましくは、これらのプローブは少なくとも29、より好ましくは少なくとも50のヌクレオチドから成る。
本発明の核酸プローブは、MNのコード領域と必ずしもハイブリダイズしなくとも良い。例えば、本発明の核酸プローブは、図3(A−F)(配列番号5)に示されているゲノム配列の非コード領域と部分的にまたは全体的にハイブリダイズしても良い。従来の技術により、配列番号5もしくはそれに関連した核酸がMN核酸配列の同定に有用であるか否かを決定することができる(例えば、Benton and Davis、前出およびFuscoe et al.,前出を参照されたい)。
MN nt配列の、他の非MN nt配列とのホモロジー領域については上に示した。一般に、AluまたはLTR様領域にない、好ましくは29ベース以上、より好ましくは50ベース以上のヌクレオチド配列は、同一の方法に従って試験され、スクリーニングされ、MNヌクレオチド配列とのみ厳しい条件でハイブリダイズすることが判明する。さらに、Alu様MNゲノム配列内部の全てのホモロジーが、厳しい条件でハイブリダイゼーション信号を発するほどはAlu反復と近くはない。MN Alu様領域と標準Alu−J配列とのホモロジーのパーセントは以下の通りである:
Figure 0003977416
本発明のプローブは、MN DNAおよび/またはRNAの検出に使用でき、したがって、患者の細胞内のMN遺伝子の存在や欠如、増殖、変異、あるいは遺伝子再配列の試験に使用できる。たとえば、MN遺伝子の過剰発現は、本発明のプローブを使用したノーザンブロットおよび本発明のプローブを用いたRNase防護アッセイ分析により検出できる。増幅、転座、逆位ならびに欠失などの遺伝子変化は本発明のプローブを用いることにより検出でき、このとき、該プローブは、細胞分裂中期の染色体の広がった状態でも間期の核のいずれの状態であっても、患者の細胞由来の染色体とインサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーションする。また、本発明のプローブを用いたサザンブロットによってMN遺伝子の増幅あるいは欠失を検出することもできる。該プローブを用いた制限酵素断片長多型(RFLP)分析は、遺伝子変化、変異および欠失の検出として好ましい方法である。該プローブはまた、いろいろな組織由来のMN遺伝子から転写された各種のmRNAとハイブリダイゼーションすることにより、MN蛋白質および/またはポリペプチドならびにそれらと相同またはほぼ相同な蛋白質および/またはポリペプチドを検出するために用いられる。
このように、該プローブは診断/予後に有用である。該プローブは試験キットとして具体化でき、好ましくは、該プローブが適切なMN遺伝子またはMN mRNAターゲットとハイブリダイゼーションした時に、視覚化できる適切な手段を伴っているのがよい。そのような試験のサンプルとしては、組織標本、体液ならびに組織および細胞の抽出物が挙げられる。
PCRアッセイ
比較的大きい遺伝子の再配置を検出するために、ハイブリダイゼーション試験を行っても良い。比較的小さい遺伝子の再配置、例えば小さな欠失または増幅、または点変異を検出するためには、PCRを利用するのが好ましい。(米国特許番号4,800,159;4,683,195;4,683,202;およびSambrook et al.,14章.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,前出)
例示的なアッセイにおいては、正常およびガン化細胞由来の細胞DNAが用いられ、当該DNAは単離され、適当なPCRプライマーを用いて増幅される。PCR産物は比較され、好ましくは最初に、サイズ測定用ゲル上で、ある遺伝子の再配置を示唆するサイズの変化を検出する。もし、サイズに関して違いが見られなかった場合は、好ましくは、例えばPCR1本鎖立体配置多形態アッセイ(PCR−SSCP)もしくは変性グラジエントゲル電気泳動アッセイを用いてさらに比較することができる。(例えば、Hayashi,K.PCR Methods and Applications,1:34−38(1991);およびMeyers et al.,Methods in Enzymology,155:501(1987)を参照されたい。)
アッセイ
本発明に従う分析は、脊椎動物のサンプル、好ましくはホ乳類のサンプル、より好ましくはヒトのサンプル中のMN抗原またはMN特異的抗体の検出および/または定量である。そのようなサンプルとしては、組織標本、体液、組織抽出物および細胞抽出物が挙げられる。MN抗原は、イムノアッセイ、免疫組織学的染色、免疫電子および走査顕微鏡観察、とりわけ、免疫金沈降(immunogold)を用いる技術により検出できる。
免疫組織化学染色によりアッセイするための好ましい組織標本には、細胞油状物、生検組織または器官由来の組織学的区分、および他の組織試料の中のすり込み(imprint)調製物が含まれる。このような組織標本は、新鮮、凍結、ホルマリン、アルコール、アセトンその他で固定された、および/またはパラフィン固定され脱パラフィン化されていてもよい。生検組織試料は、例えば、吸引、かみつき、ブラシ掛け、錐、外膜繊毛、内視的、切断的、切り込み、針、経皮的打撃、および表面生検その他の生検査により切り離されたものでもよい。
好ましい子宮組織試料には、子宮油状物、円錐切除標本、子宮標本もしくは他の子宮組織試料を含む組織学的区分などが含まれる。好ましい子宮油状物を得る方法には、同じ手順での綿棒、サイトブラシ(cytobrush)技術による削りだし、その他が含まれる。より好ましくはサイトブラシか綿棒である。好ましくは、細胞油状物は顕微鏡スライド上に作成され、例えば、55%エタノールまたはアルコールベースのスプレー固定剤で固定され、風乾されている。
パパニコロウ染色された子宮油状物(Pap油状物)は本発明の方法に従って例えば、回想的研究のために検索される。好ましくは、Pap油状物は脱色され、再びMN抗原に対する標識された抗体によって染色される。古い記録である標本もまた、例えば、油状物および生検および/または腫瘍標本に合ったものは、回想的研究に用いることができる。異常子宮細胞毒性の現れの、正常の危険度よりも高い危険度を有している患者由来の好適な試料に関する、予測的研究もまた行うことができる。
例えばウエスタンブロットやラジオイムノアッセイによるMN抗原分析に好ましいサンプルは、組織および/または細胞抽出物である。しかし、MN抗原は体液、とりわけ、血液、血清、プラズマ、精液、乳汁、唾液、涙、喀痰、粘液、尿、リンパ液、サイトゾル、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、気管支肺胞洗浄液、随液からも検出できる。試験前に大量の体液からMN抗原を濃縮することが望ましい。分析に好ましい体液は、試験する癌の型にもよるが、一般的に好ましい体液は、乳汁、胸水および腹水である。
血液、プラズマ、血清、リンパ液、粘液、涙、尿、髄液および唾液などの体液サンプル中の血清学的に活性なMN蛋白質/ポリペプチドに、MN特異的抗体は結合するが、そのような抗体は血液、プラズマおよび血清、好ましくは血清に普通にみられる。MN抗原およびそれらと反応するMN特異的抗体の検出および/または定量試験の結果の相関から、患者の病状の好ましいプロファイルが示される。
本発明の分析は、診断および/または予後の両方、すなわち、診断/予後である。本明細書で使用している「診断/予後」とは、臨床的状況に依存して以下の手順のそれぞれ、または、それらの手順のいくつかが重複していることを意味する。疾病の存在の判断、疾病の特性の判断、ある疾病と他の疾病との区別、病状の帰結予想、患者の様子と症状から示される疾病からの回復の見込み、患者の病状のモニタリング、疾病の再発に関する患者のモニタリング、および/または患者に対する好ましい治療方法の決定など。本発明における診断/予後の方法はたとえば以下のような場合に有用である。腫瘍性および/または前腫瘍性疾患の存在に対する集団のスクリーニング、腫瘍性疾患の進展の危険性の判断、腫瘍性および/または前腫瘍性疾患の存在の診断、腫瘍性疾患の患者の病状のモニタリング、および/または腫瘍性疾患の経過に対する予後の判断など。例えば、MN特異的抗体による免疫染色の強度は、試験された試料中に存在する異型形成の深刻さと相関している。
本発明は、広範な種類の腫瘍性疾患の存在のスクリーニングに有用である。本発明は、たとえば、宿主から取出した直後の細胞群を使用して、悪性腫瘍あるいは前悪性腫瘍性細胞の存在の可能性を推し量るための方法および構成物を提供する。そのような分析は、腫瘍の発見、それらの増殖の計測および疾病の診断と予後に役立つ。この分析はまた、癌の転移の存在の発見、ならびに、手術、癌の化学療法および/または放射線療法の後、全ての腫瘍組織がなくなっているか除去されているかを確認するのに役立つ。さらに、診断は、癌の化学療法および腫瘍の再発をモニターするのに役立つ。
MN抗原または抗体の存在は、多くの既に確立された診断分析を用いて検出および/または定量することができる。当業者であれば、従来から存在する任意のイムノアッセイ法を適用して、MN抗原および/または抗体を検出および/または定量することができる。
もちろん、MN抗原およびMN特異的抗体の検出にはほかの多くの方式も利用可能である。たとえば、ウエスタンブロット、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA、二重抗体サンドイッチ法、その他診断研究において通常使用される全ての分析法などがある。そのようなイムノアッセイにおける結果の解釈は、抗体あるいは抗体の組合せは、MNに関係のないサンプル中に存在する他の蛋白質および蛋白質の断片とは交差反応しないという仮定に基づいている。
MN抗原検出の代表的な一つのELISA試験は、MN蛋白質/ポリペプチドに対して作られた抗体あるいはMN蛋白質を発現する細胞全体に対して作られた抗体をコートしたマイクロタイタープレートに、組織あるいは細胞抽出物のような患者のサンプルを加える方法である。ある抗原が抗体と結合するように一定時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、酵素が連結している別の抗MN抗体を加え、反応が生じるようにインキュベートし、プレートを再洗浄する。その後、マイクロタイタープレートに酵素基質を加え、酵素が基質に作用するように一定時間インキュベートし、最終試料の吸光度を測定する。吸光度が大きく変化することは陽性の結果を示している。
患者の体液、組織および/または細胞中のMN抗原の存在を検出および/または定量するためにMN蛋白質/ポリペプチドが使用できることもイムノアッセイの分野の当業者には明かである。そのような実施態様の一つとして競合イムノアッセイがあるが、この方法では、MN蛋白質/ポリペプチドはラベルされ、MN蛋白質/ポリペプチドに特異的な抗体への該ラベル化MN蛋白質/ポリペプチドの結合に競合させるために体液を加える。
別の実施例としては、MN蛋白質またはポリペプチドに対するラベルされた抗体を用いるイムノメトリック分析がある。そのような分析においては、抗原結合抗体とコンプレックスを形成するラベル化抗体の量は、試料中のMN抗原の量と直接的に比例する。
MN特異的抗体を検出する代表的な分析は競合分析であり、この分析では、ラベルされたMN蛋白質/ポリペプチドはサンプル中の抗体、たとえば、MN蛋白質/ポリペプチドを認識するモノクローナル抗体と結合して沈降する。当業者であれば、従来から存在する任意のイムノアッセイ方法を適用してMN特異的抗体の検出および/または定量することができる。該抗体のMN蛋白質/ポリペプチドとの結合の検出は、当業者に知られた多くの方法、たとえば、ヒトにおいては抗ヒトラベルIgGの使用などにより行うことができる。
本発明に従い、脊椎動物のサンプルからMN抗原を検出および/または定量するイムノアッセイの方法の例は、以下のステップから構成されている。
a)MN抗原に結合する一組あるいはそれ以上の組の抗体(一つの抗体かあるいは複数の抗体)(そのうち一組はラベルされているかまたはその他の手法で検出可能となっている)と脊椎動物のサンプルをインキュベートする。
b)MN抗原と該抗体からなる免疫コンプレックスが存在するかについて、インキュベートしたサンプルを調べる。
本発明に従う別のイムノアッセイ法の例は競合イムノアッセイであり、脊椎動物サンプル中のMN抗原を検出および/または定量するために使用され、以下のステップから構成されている。
a)脊椎動物のサンプルを一組あるいはそれ以上の組のMN特異的抗体および一定量のラベルされたもしくは他の手段で認識できるようになっているMN蛋白質/ポリペプチドとインキュベートし、このとき、該MN蛋白質/ポリペプチドが抗体との結合において、サンプル中に存在するMN抗原と競合する。
b)インキュベートしたサンプルを調べて、抗体に結合しているラベルした/検出可能なMN蛋白質/ポリペプチドの量を測定する。
c)ステップb)の検査から、前記サンプル中に存在するMN抗原および/または前記サンプル中に存在するMN抗原の量を決定する。
望ましい特性を有する抗体(生物学的に活性な抗体の断片を含む)が調製されると、特定の抗体抗原コンプレックスの形成を判定するための広範な免疫学的分析法が可能である。多くの競合、非競合蛋白質結合分析に関して化学文献および特許明細書に記述されており、そのような分析法の多くは購入可能である。血清中の抗原の検出に適したイムノアッセイの例としては、以下の米国特許に記載されているものが含まれる。米国特許第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、および第4,098,876号。
分析に用いられる抗体は、ラベルされているかまたはラベルされていないものである。ラベルされていない抗体は凝集に用いられ、ラベルされた抗体は、多くの種類のラベルを施すことにより、広範な分析に使用される。
適切な検出には、放射核、酵素、補酵素、発蛍光剤、化学発光剤、色素原、酵素基質あるいは補助因子、酵素阻害剤、フリーラジカル、パーティクル、染料などのラベルを用いるものが挙げられる。そのようなラベル試薬は、既知のさまざまな分析、たとえば、ラジオイムノアッセイ、ELISA等の酵素免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイなどに用いられる。たとえば、米国特許第3,766,162号、第3,791,932号、第3,817,837号および第4,233,402号を参照のこと。
イムノアッセイ試験キット
今までに概要を示した分析は、MN抗原および/またはMN特異的抗体(生物学的に活性な抗体の断片を含む)を検出および/または定量する試験キットとして具体化される。MN抗原を検出および/または定量する試験キットは、MN蛋白質/ポリペプチドおよび/または、(ポリクローナルおよび/またはモノクローナルの)MN特異的抗体からなる。そのような診断/予後用の試験キットは、一組またはそれ以上の組のポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体から構成されており、サンドイッチ法の場合には、抗体がMN抗原のエピトープを認識し、一組は適切にラベルされているか、その他の手段により検出可能である。
ラベルされた(あるいは他の手段で検出可能な)MN蛋白質/ポリペプチドとサンプル中のMN抗原との間で抗体に対する結合に関して競合がある分析方法の試験キットは、ラベルされた蛋白質/ポリペプチドと抗体の量を組合わせて、最適の感度と精度が得られるように構成されている。
MN特異的抗体検出のための試験キットは、ラベルされた/検出可能なMN蛋白質および/またはポリペプチドから構成されていることが好ましく、必要であれば、たとえば、対照、バッファー、希釈液、洗剤等の他の成分を含んでいてもよい。そのような試験キットは、その他の適切な手段を含んで、従来からあるような分析に応用することもできる。
酵素−免疫アッセイにおいて用いるためのキットは、典型的には、酵素標識された試薬および酵素の基質を含んでいる。酵素は、例えば、本発明のMN特異的抗体またはそのようなMN特異的抗体に対する抗体の何れかに結合していても良い。
MN特異的抗体の調製
本明細書で使用している「抗体」という語は、抗体全体を指すだけでなく、生物学的に活性な抗体の断片、好ましくは抗原結合部位を有する断片をも指している。そのような抗体は、従来からの手法および/または遺伝子工学により調製できる。抗体の断片は、遺伝子操作により、好ましくは超可変領域を含む、短鎖および/または長鎖の可変領域(VHとVL)から調製されるのがよく、さらに好ましくは、VH領域とVL領域の両方から調製されるのがよい。たとえば、本明細書で使用している「抗体」という語は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ならびにそれらの生物学的に活性な断片をも意味しており、とりわけ、「一価」抗体(グレニー(Glennie)ら、Nature, 295:712(1982));共有結合性または非共有結合性凝集をするFab’およびF(ab’)2断片を含むFab蛋白質;好ましくは短鎖および長鎖の可変領域(VHとVL領域)を含み、より好ましくは超可変領域(該VHとVL領域の相補性決定領域(CDRs)としても知られている)を含む短鎖または長鎖単独;Fc蛋白質;1以上の抗体と結合可能な「ハイブリッド」抗体;定常−可変領域キメラ;異なる起源由来の長鎖および短鎖からなる「複合」免疫グロブリン;通常の組換え手法により、またはオリゴヌクレオチドの依存突然変異誘発法(ダルバディー−マクファーランド(Dalbadie-McFarland)ら、PNAS(USA), 79:6409(1982))により調製された、特異性やその他の特性を改良した「改造」抗体などが含まれる。
治療および/またはイメージングに使用する抗体は、生物学的に活性な抗体の断片であることが好ましく、より好ましくは遺伝子工学的に処理された断片がよく、さらに好ましくはVHおよび/またはVL領域から遺伝子工学的に処理された断片がよく、さらにより好ましいのは、それらの超可変領域からなる断片である。
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作出する従来からの技術は、イムノアッセイの分野では周知である。MN特異的抗体を産生するための免疫原には、MN蛋白質および/またはポリペプチド、好ましくは純粋で、MXに感染した腫瘍細胞系、たとえば、MX感染HeLa細胞およびその他の免疫原が含まれる。
抗ペプチド抗体は、ヨーロッパ特許出願公開第44,710号(1982年1月27日公開)に記載されているような当該分野の従来法によっても作出される。該方法を要約すると、図1(A−C)に示すようなMNアミノ酸配列からペプチドを選択し、化学的に合成し、適切な免疫原蛋白質に結合し、適切な動物、通常はウサギあるいはマウスに注入し、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作らせることにより、抗ペプチド抗体が調製される。モノクローナル抗体はコーラー−ミルシュテイン(Kohler-Milstein)法に従って作出される。
従来のハイブリドーマ法だけでなく、新しい技術も本発明に従う抗体を産生するために用いることができる。たとえば、クローン作成および抗体のV遺伝子の発現にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用い、結合活性を有する断片をコードしている抗体遺伝子の選択にファージディスプレイ法を用いることにより、免疫されたマウスおよびヒト由来のPCR増幅したV遺伝子の集団から抗体の断片を単離することができた(マークス(Marks)ら、BioTechnology, 10:779(1992年7月号)参照のこと。シャン(Chiang)ら、BioTechniques, 7(4):360(1989);ワード(Ward)ら、Nature, 341:544(1989年10月12日号);マークス(Marks)ら、J. Mol. Biol., 222:581(1991);クラクソン(Clackson)ら、Nature, 352:(1991年8月15日号);ムリナックス(Mullinax)ら、PNAS(USA),87:8095(1990年10月号))。
組換え技術を用いた抗体(本明細書では生物学的に活性な抗体の断片を含む)の調製法に関する記載は下記に見出される。米国特許第4,816,567号(1989年3月28日付与)、ヨーロッパ特許出願公開番号(EP)第338,745号(1989年10月25日公開)、EP第368,684号(1990年6月16日公開)、EP第239,400号(1987年9月30日公開)、WO第90/14424号(1990年11月29日公開)、WO第90/14430号(1990年5月16日公開)、ヒューセ(Huse)ら、Science, 246:1275(1989年12月8日号);マークス(Marks)ら、BioTechnology, 10:779(1992年7月号);ラ・サストリー(La Sastry)ら、PNAS(USA),86:5728(1989年8月号);シャン(Chiang)ら、BioTechniques, 7(4):360(1989);オーランディ(Orlandi)ら、PNAS(USA),86:3833(1989年5月号);ワード(Ward)ら、Nature, 341:544(1989年10月12日号);マークス(Marks)ら、J. Mol. Biol., 222:581(1991);フーゲンブーム(Hoogenboom)ら、Nucleic Acids Res., 19(15):4133(1991)。
代表的なMab
本発明の分析で使用するモノクローナル抗体は、当該分野において既知の方法により得られる。たとえば、ガルフレ(Galfre)とミルシュテイン(Milstein)「モノクローナル抗体の調製:戦略および方法(Preparation of Monoclonal Antibodies:Strategies and Procedures)」(酵素学的方法:免疫化学的手法(Methods in Enzymology:Immunochemical Techniques)73巻1−46ページより)(ランゴーン(Langone)とヴァナティス(Vanatis)編、アカデミック・プレス(Academic Press)社(1981年)、および古典的な参考として、ミルシュテイン(Milstein)とコーラー(Kohler)、Nature, 256:495-497(1975)がある。
本発明の代表的なハイブリドーマは、マウス細胞系の融合により調製されるが、ヒト/ヒトハイブリドーマ(オルソン(Olsson)ら、PNAS(USA),77:5429(1980))およびヒト/マウスハイブリドーマ(シュローム(Schlom)ら、PNAS(USA),77:6841(1980)、シェアマン(Shearman)ら、J. Immunol., 146:928-935(1991)、ゴーマン(Gorman)ら、PNAS(USA),88:4181-4185(1991))からも調製され得る。そのようなヒト化されたのモノクローナル抗体は、治療およびイメージングに使用するのに好ましいモノクローナル抗体である。
本発明に用いるモノクローナル抗体は、適切なホ乳類、好ましくは齧歯類、より好ましくはウサギまたはマウスに、適切な免疫原、たとえば、MaTuに感染したHeLa細胞や、あるいは、必要であればキャリアー蛋白質をつけたMN蛋白質/ポリペプチドを用いて免疫することにより調製される。例として、本発明の抗体の産生について以下に記載している。
本発明に従ってMN蛋白質/ポリペプチドを同定するのに有用なモノクローナル抗体は、従来からの任意の方法によってラベルすることができる。たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のような酵素、蛍光化合物、125Iなどの放射活性同位体などである。本発明に従う好ましいラベルは125Iであり、好ましい抗体ラベル化の方法は、クロラミン−T法(ハンター(Hunter)、W.M.、「ラジオイムノアッセイ(Radioimmunoassay)」実験免疫学の手引(Handbook of Experimental Immunology)より、14.1-14.40(D.W.ウェイアー(Weir)編、ブラックウェル(Blackwell)社、オックスフォード/ロンドン/エディンバラ/メルボルン、1978年)である。
本発明のmabには、以下に記述されるMab M75、MN9、MN12およびMN7が含まれる。本発明のモノクローナル抗体は、MNタンパク質/ポリペプチドを、様々な実験室での診断テスト、例えば、腫瘍細胞培養または臨床試料中で同定する働きを有している。
HeLa細胞に対するMabの調製
MAb M75
モノクローナル抗体M75(MAb M75)は、マウスリンパ球ハイブリドーマVU−M75から産生されるが、該ハイブリドーマは、当初スロヴァク科学アカデミーウイルス研究所(Institute of Virology, Slovak Academy of Sciences)のハイブリドーマコレクション(Collection of Hybridomas)(チェコスロバキア、ブラティスラヴァ)に寄託され、また、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(米国、メリーランド州、ロックヴィル)に1992年9月17日にATCC受入番号HB11128として寄託されたものである。
Mab M75は、グリコシル化されていないGEX−3X−MN融合タンパク質およびCGL3細胞で発現されるような天然MNタンパク質との両方とも、同じようによく認識する。Mab M75はエピトープマッピングによって、図1(A−C)に示されているMNタンパク質のアミノ酸配列のAA62からAA67(配列番号10)と反応性を有する。
融合タンパク質GEX−3X−MNに対するMabの調製
本発明のモノクローナル抗体は、MNグルタチオンS−トランスフェラーゼ融合タンパク質(GEX−3X−MN融合タンパク質に対してもまた調製される。BALB/Cネズミが、標準的な手法に従って、Freundのアジュバント中のGEX−3X−MNタンパク質によって腹腔内経由で免疫化された。ネズミの脾臓細胞をSP/20ミエローマ細胞と融合した(Kohler,前出)。
ハイブリドーマの組織培養培地は、CGL3およびCGL1膜抽出物に対して、HRP標識ウサギ抗マウス抗体を用いたELISAによってスクリーニングされた。この膜抽出物を、マイクロタイタープレート上にコートした。選択されたのはCGL3膜抽出物と反応する抗体である。選択されたハイブリドーマは限定希釈によって2回クローン化された。
ちょうど記載されている方法で調整されたmabは、CGL1およびCGL3細胞膜とともに、GEX−3X−MN融合タンパク質のウエスタンブロットで特徴づけられた。調製されたMabの代表は、Mabs MN9、MN12およびMN7である。
Mab MN9 モノクローナル抗体MN9(Mab MN9)は、図1(A−C)のMNタンパク質のAA62からAA67(配列番号10)で示される、Mab M75と同じエピトープと反応する。Mab M75と同様に、Mab MN9はGEX−3X−MNと天然MNタンパク質との両方を同じように良く認識する。
Mab MN9に相当するMabは、例えばGEX−3X−MN融合タンパク質などのMNタンパク質/ポリペプチドに対して、Mabs M75やMN9に対するエピトープを示すペプチド、すなわち配列番号10に対して調製された一連の抗体をスクリーニングすることにより、再生産可能に調製できる。別の方法としては、Novatopeシステムまたは寄託されたMab M75との競合物もまた、Mab M75およびMN9と匹敵するMabを選択するために利用できる。
Mab MN12 モノクローナル抗体MN12は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)12301 Parklawn Drive in Rockville,Maryland 20852(USA)にATCC番号HB111647として1994年6月9日に寄託してあるネズミリンパ性ハイブリドーマ、MN12.2.2によって生産される。Mab MN12に相当するMabは、上記にMN9について概説したのと同様に、MNタンパク質/ポリペプチドに対して、Mab MN12に対するエピトープを示すペプチドに対して調製された一連の抗体をスクリーニングすることにより調製できる。そのようなペプチドは、図1(A−C)のAA55−AA60(配列番号11)である。Novatopeシステムもまた、前記エピトープに特異的な抗体を発見するために利用できる。
Mab MN7 モノクローナル抗体MN7(Mab MN7)は、上記のように、非グリコシル化GEX−3X−MNに対して調製されたmabから調製した。それは図1(A−C)のMNタンパク質のアミノ酸配列のAA127−AA147(配列番号12)を認識する。上記にMN9およびMN12について概説したのと同様に、Mab MN7に相当するmabは、MNタンパク質/ポリペプチドに対して調製された抗体から配列番号12のペプチドと反応性であるものを選択することにより、あるいは前述の別の方法により調製できる。
エピトープのマッピング
エピトープのマッピングはNovagen Inc.より市販されているNovatopeシステムを用いて行った(同様の例Li et al.,Nature,363:85−88(6May1993)を参照されたい)。簡潔に言えば、MN cDNAは、オーバーラップしている、約60塩基対の短い断片に切断される。断片はE.coli中で発現され、E.coliのコロニーはニトロセルロース紙に移され、溶解され、所望のmabでプローブされる。所望のmabと反応性を有するMN cDNAは配列決定され、mabのエピトープは、各々のmabと反応しうると判明したオーバーラップしているポリペプチドから推定できる。
MN特異的抗体の治療への応用
本発明のMN特異的抗体、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体、好ましくはモノクローナル抗体は、腫瘍および/または前腫瘍性疾患の治療に用いることができ、単独あるいは化学療法剤または毒性剤(たとえば、リシンA等)と組み合わせて用いることができる。治療用としてより好ましいのは、本明細書に記載しているような生物学的に活性な抗体の断片である。同様に、治療用として好ましいMN特異的抗体は、ヒト型モノクローナル抗体である。
MN特異的抗体は、好ましくは生理学的に許容性の非毒性液体基剤に分散された形で、治療効果を発揮するのに十分な量が投与される。
イメージングへの抗体の応用
さらに、本発明のMN特異的抗体は、放射核などのイメージング剤と結合させた場合には、イメージングに利用できる。生物学的に活性な抗体の断片あるいはヒト型モノクローナル抗体がイメージング用としては好ましい。
たとえば、腫瘍の形質転換された部位や転移の位置などが患者の腫瘍組織から同定できる。適切にラベルしたあるいはイメージング剤と結合させた抗体を生理学的に許容性のキャリアーと共に患者に投与し、結合した抗体は、ラベルあるいはイメージング剤の検出に適した方法、たとえば、シンチグラフィーなどにより検出される。
アンチセンスMN核酸配列
本発明のMN遺伝子は、腫瘍遺伝子と推定され、それによってコードされている蛋白質は、腫瘍性蛋白質であると推定される。MN遺伝子から転写されたmRNAと実質的に相補性のアンチセンス核酸配列は、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドODN1およびODN2(配列番号3および4)に代表されるものであり、MN遺伝子の発現を減少あるいは抑制するのに用いることができる(ザメクニック(Zamecnick)、P.C.「イントロダクション:遺伝子情報解読のモジュレーターとしてのオリゴヌクレオチド塩基ハイブリダイゼーション(Introduction:Oligonicleotide Base Hybridization as a Modulator of Genetic Message Readout)」1−6ページ、癌およびAIDSへのアンチセンス核酸療法の予測(Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS)より(ウィレイ−リス(Wiley-Liss)社、米国、ニューヨーク州、ニューヨーク、1991年);ウィックストーム(Wickstorm)、E.7−24ページ、同上;レザマン(Leserman)ら、25−34ページ、同上;ヨコヤマ(Yokoyama)、K.35−52ページ、同上;ヴァンデンベルク(van den Berg)ら、63−70ページ、同上;メルコーラ(Mercola)、D.83−114ページ、同上;イノウエ(Inouye)、Gene, 72:25-34(1988)、ミラー(Miller)とティソー(Ts′o)、Ann. Reports Med. Chem., 23:295-304(1988);ステイン(Stein)とコーエン(Cohen)、Cancer Res., 48:2659-2668(1988);ステヴェンソン(Stevenson)とインヴァーセン(Inversen)、J. Gen. Virol., 70:2673-2682(1989);グッドチャイルド(Goodchild)53−77ページ、オリゴデオキシヌクレオチド:遺伝子発現のアンチセンス抑制剤(Oligodeoxynucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression)、(コーエン(Cohen)、J.S.編、CRCプレス(CRC Press)社、米国、フロリダ州、ボカ・ラートン、1989年);デルヴァン(Dervan)ら、197−210ページ、同上;ネッカーズ(Neckers)、L.M.211−232ページ、同上;レイトナー(Leitner)ら、PNAS(USA),87:3430-3434(1990);ベヴィラッカ(Bevilacqua)ら、PNAS(USA),85:831-835(1988);ローク(Loke)ら、Curr. Top. Microbiol. Immunol., 141:282-288(1988);サリン(Sarin)ら、PNAS(USA),85:7448-7451(1988);アグラワル(Agrawal)ら、「アンチセンスオリゴヌクレオチド:化学療法およびAIDSへのアプローチの可能性(Antisense Oligonucleotides:A Possible Approach for Chemotherapy and AIDS)」核酸療法に関する生化学会国際会議(International Union of Biochemistry Conference on Nucleic Acid The rapeutics)(1991年1月13−17日、米国、フロリダ州、クリアウォタービーチ);アームストロング(Armstrong)、
L.、Ber. Week、88−89ページ(1990年3月5日号);ウエイントラウブ(Weintraub)ら、Trends, 1:22-25(1985))。そのようなアンチセンス核酸配列、好ましくはオリゴヌクレオチドは、MN mRNA、特にリボソーム結合部位と翻訳開始点の近傍でハイブリダイゼーションすることにより、mRNAの翻訳を阻害する。それゆえ、そのようなアンチセンス核酸配列を使用することは、癌の治療の一つの方法と考えられる。
本発明に従う好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子特異的ODNsあるいはMN mRNAの5’末端に相補的なオリゴヌクレオチドである。特に好ましいのは、29−mer ODN1および19−mer ODN2である(配列番号3および4)。これらのアンチセンスODNsは、MN遺伝子の発現を抑制する機能を有する多くのアンチセンス核酸配列の中の代表的なものである。当業者であれば、図1(A−C)および図3(A−F)の核酸配列から適切なアンチセンス核酸配列、好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドを確定することができる。
また前述のように、アンチセンスMN cDNA/プロモーター構築物を移入されたCGL3細胞は、対照CGL3細胞よりも顕著に小さいコロニーを形成した。
ワクチン
本発明のMN蛋白質およびポリペプチドは、腫瘍性疾患に対して防御免疫を誘起でき、腫瘍形成活性を弱める効果を有するようなワクチンに組込むことができる。代表的MN融合タンパク質がGEX−3X−MNのラットモデルにおけるワクチンとしての効果は実施例2に示されている。
MN蛋白質および/またはポリペプチドは、合成あるいは組換えやその他の生物学的手法により調製されて、単量体、または多量体型のMN蛋白質の1またはそれ以上のエピトープに対応する、1またはそれ以上のアミノ酸配列から構成されるようにすることができる。つぎに、これらの蛋白質および/またはポリペプチドは、防御免疫を誘起できるワクチンに組込まれる。そのようなポリペプチドの免疫原性を上げる方法は、多量体構造に組込むこと、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)あるいはジフテリア毒素等の高免疫原性蛋白質キャリアーに結合させること、およびアジュバントあるいはその他の免疫応答強化剤と組み合わせて投与することを含む。
本発明に従うワクチンにおいて使用される好ましいMN蛋白質/ポリペプチドは、遺伝子工学的に処理されたMN蛋白質である。好ましい組換えMN蛋白質は、本発明に従って産生された融合蛋白質GEX−3X−MN、MN 20−19、MN−FcおよびMN−PAタンパク質である。
他のワクチンの例としては、ワクシニア−MN(全長MN cDNAを有する生ワクシニアウイルス)およびバキュロウイルス−MN(バキュロウイルスベクター中に挿入された全長MN−cDNA、たとえば、感染昆虫細胞の懸濁液)がある。異なったワクチンを組み合わせ、ワクチン期間を長くすることができる。
本発明のそのようなワクチンの好ましい使用例は、MN関与性一次癌が外科的に切除された患者へ投与することである。ワクチンは患者の体内で能動免疫を誘起し、再発あるいは転移を防ぐことができる。
さらに、MN蛋白質/ポリペプチドに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体もワクチンとして有用であり、同様に製剤化できる。
単量体、または多量体型のMN蛋白質/ポリペプチドのエピトープに対応するアミノ酸配列は、化学的合成、あるいは遺伝的に変更された微生物やそれらの培養培地などの生物源を精製することによっても得られる(ラーナー(Lerner)「合成ワクチン(Synthetic Vaccines)」Sci. Am., 248(2):66-74(1983)を参照)。蛋白質/ポリペプチドは、他の蛋白質/ポリペプチド(他のタンパク質の断片を含む)と組合わされて一つのアミノ酸を形成することがあり、たとえば、融合蛋白質として合成される場合や、合成または生物由来の抗原性あるいは非抗原性の他のポリペプチドに結合する場合などがある。
いくつかの例では、MNタンパク質/ポリペプチドを免疫原性および/または抗原性タンパク質またはポリペプチドと、例えばMNベースのワクチンの効率を刺激するために融合することが望ましい。
「MN蛋白質/ポリペプチドのエピトープに対応する」という言葉は、天然に存在する蛋白質またはポリペプチドのアミノ酸配列の変化が抗原性を与えることがあり、腫瘍性疾患に対する防御免疫および/または抗腫瘍形成性効果を付与することがあるという実際的な可能性を含むものとする。配列の変化の可能性としては、アミノ酸の置換、伸長、欠失、削除、挿入およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。そのような変形も本発明の範ちゅうに含まれる。ただし、それらを含有する蛋白質またはポリペプチドが免疫原性であり、そのような蛋白質またはポリペプチドによって分泌された抗体は、天然に存在するMN蛋白質またはポリペプチドと交差反応し、その分泌量は、ワクチンとして投与したときに防御免疫および/または抗腫瘍形成性活性を誘起するのに十分な量であるものとする。
そのようなワクチンの組成物は、生理学的に許容し得る基剤、たとえば、免疫的に許容される希釈剤およびキャリアー、また、フロイントの完全アジュバント(Freund′s Complete Adjuvant)、サポニン、明ばん等の通常用いられるアジュバントなどと組合せられる。投与は、免疫学的に有効な量のMN蛋白質またはポリペプチドで行うが、好ましい投与量ユニットは、被投与体の体重1kgあたり0.01から10.0μgの免疫学的に活性なMN蛋白質および/またはポリペプチドである。防御に有効な総投与量は、抗原量として0.1から約100μgの範囲である。
投与経路、抗原量、投与の回数と頻度はすべて最適の条件で行うが、これらは当該分野の通常の技術範囲の範ちゅうに含まれる。
以下の実施例は説明をするためのものであり、如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
実施例1
組織標本の免疫組織化学染色
組織配分範囲およびMNタンパク質の発現を研究および評価するために、多様なヒト組織標本を免疫組織学的に染色するためにモノクローナル抗体M75を用いた。これらの免疫組織化学的染色実験に用いられた1次抗体はM75モノクローナル抗体である。ビオチン化された2次抗体およびストレプトアビジン−ペルオキシダーゼを、フォルマリン固定、パラフィン固定組織試料中でのM75との反応性を検出するために用いた。市販の増幅キット、特にDAKO LSAB(登録商標)キット(DAKO Corp.,Carpinteria,CA(USA))は、好適な既製のブロッキング試薬、2次抗体およびストレプトアビジンー西洋ワサビペルオキシダーゼを提供するもので、これらの実験で用いられた。
M75免疫反応性を、本発明に従って、胸部、結腸、子宮、肺および正常組織の複数の組織区分において試験した。そのような複数組織区分は、City of Hope(Duarte,CA(USA))より購入した、「ソーセージ」と呼ばれる組織のパラフィンブロックから切り出された。組み合わされた、このような複数組織区分とは、与えられた組織の正常、良性および悪性標本である;例えば、異なった患者由来の、胸部ガンの一組の組織標本、同じような数の良性胸部組織試料、正常胸部組織試料が、1つのこのような複数胸部組織区分中に組み合わされる。正常複数組織区分は、多様な器官、例えば、肝臓、脾臓、肺、腎臓、副腎、脳、前立腺、膵臓、甲状腺、卵巣および睾丸等由来の正常組織のみを含む。
MN遺伝子発現を、子宮ガン、膀胱ガン、腎臓細胞ガン、および頭部および頸部ガン由来の、複数の独立した標本からもスクリーニングした。このような標本は、サクラメント、CAのU.C.Davis Medical CenterおよびDr.Shu Y.Liao(Department of Pathology;St.Joseph Hospital;Orange,CA(USA))から得た。
これらの実験において対照としたのは、M75モノクローナル抗体によりそれぞれ陽性および陰性に染色されることが知られている細胞系統CGL3(H/F−Tハイブリッド細胞)およびCGL1(H/F−Nハイブリッド細胞)である。M75モノクローナル抗体を1:5000希釈で希釈し、希釈液はPBS(0.05Mリン酸緩衝生理食塩水(0.15M NaCl),pH7.2−7.4)または1%プロテアーゼフリーBSAをタンパク質安定化剤として含んだPBSの何れかであった。
免疫組織化学的染色のプロトコル
免疫組織化学的染色プロトコルを、DAKO LSAB(登録商標)キットの製造者の指示に従って行った。簡潔にいうと、区分を脱ワックスし、再水和し、非特異的反応性を内因性ペルオキシダーゼ活性とともに取り除くためにブロックした。それぞれの区分は続いてM75モノクローナル抗体希釈液とともに保温した。区分を濯いで非結合M75を取り除いた後、区分は、連続的にビオチニル化抗マウスIgG抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ストレプトアビジンと反応させた;すすぎ工程はこれらの2つの反応および第2の反応あとで行われた。最後のすすぎに続いて、抗体−酵素複合体を、不溶性色素体(ジアミノベンジジン)および過酸化水素との反応により検出した。区分を続いて濯ぎ、ヘマトキシリンで反染色し、脱水し、カバーをかぶせた。その後、区分を標準的な光学顕微鏡により試験した。
解釈 プラズマメンブレン上の赤褐色の沈殿の堆積は、M75抗体が組織中でMN抗原と結合した証拠として取られた。公知の陽性コントロール(CGL3)はアッセイを妥当なものとするために染色されなければならない。区分の厚さは、染色強度の比較において、他のアッセイのパラメーターとは独立して、より厚い区分はより強い染色強度を作り出すとされた。
結果
予備的な子宮標本の検査では、68の鱗状細胞腫瘍標本の62(91.2%)がM75で陽性に染色された。付加的には、6のアデノカルシノーマのうちの2、および2の子宮アデノ鱗状ガンのうちの2が陽性に染色された。以前の研究では、55.6%(18のうちの10)の子宮異常が陽性に染色された。子宮異常および腫瘍を両方含む、全体で9の標本が、子宮頸管腺上皮の正常に見える領域、通常は基底層に、いくらかのMN発現を示していた。いくつかの標本においては、形態上は正常に見える領域がMN抗原の発現を示す一方、異型および/または悪性を示す領域ではMN発現を示していなかった。
M75陽性免疫反応性は、最も頻繁には細胞のプラズマメンブレンに局在化し、隣接細胞との間の接合部に存在する最も明白な染色を伴っていた。細胞質染色もまた、いくらかの細胞で明白であった;しかしながら、プラズマメンブレン染色が、陽性の基準として最も良く用いられた。
M75陽性細胞は、子宮標本中でケラチン分化を示している領域の近くにある傾向があった。いくつかの細胞では、陽性染色細胞は非染色細胞の一群の中心に位置していた。しばしば、存在していても非常に僅かであるが、明らかな形態上の違いが、染色細胞と非染色細胞との間に存在した。いくつかの標本においては、陽性染色細胞はネクロシス領域に隣接していた。
子宮の鱗状細胞腫瘍のほとんどにおいて、M75免疫反応性は巣状の配分であった、すなわち、標本のある部分のみが染色された。供与された標本内部の、陽性反応性の配置は、かなり散発的であり、反応性の強度は通常非常に強かった。子宮のアデノカルシノーマにおいては、染色パターンは、陽性に染色している標本の大多数においてより高い相同性を有していた。
正常組織試料のなかでは、強烈な、陽性でM75特異的である免疫反応性は正常胃組織のみにおいて、小腸、盲腸及び結腸の減少してゆく反応性とともに見られた。他の如何なる組織も、M75では目立って陽性には染色されなかった。時々、しかしながら、強烈に染色された細胞の中心が、正常腸試料(通常は小窩の底)において、または、異型および/または悪性を示している子宮の上皮標本の形態上は正常に見えている領域において観察された。このような、子宮標本の正常に見えている領域においては、陽性染色は、子宮膣部の上皮の底層または子宮頸管腺上皮の底層の中心において見られた。ひとつのヒト皮膚正常標本においては、細胞質MN染色は底層において見られた。これらの上皮の底層は、通常拡散領域であり、MN発現は細胞増殖に関与しているかもしれないことを示唆している。2、3の子宮生検標本においては、MN陽性は、形態上は正常に見える重層鱗状上皮において見られ、時々koilocytic変化を受けることと関連していた。
いくつかの結腸アデノーマ(11のうちの4)およびアデノカルシノーマ(15のうちの9)は陽性に染色された。1つの正常結腸標本は小窩の底で陽性であった。15の結腸ガン標本のうち、4つのアデノカルシノーマおよび5つの転移性外傷がMN陽性であった。より少ない悪性胸部ガン(25のうちの3)および卵巣ガン標本(15のうちの3)が陽性に染色された。4つの頭部および頸部のガンのうち、3が非常に強烈にM75によって染色された。
正常胃組織がいつも規則的に陽性ではあったが、4つの胃アデノカルシノーマーはMN陰性であった。3つの膀胱ガン標本(1つはアデノカルシノーマ、1つは非円錐遷移細胞腫瘍、1つは鱗状細胞腫瘍)のうち、鱗状細胞腫瘍のみがMN陽性であった。約40%(30のうちの12)の肺ガン標本が陽性であった;4つの未分化細胞腫瘍のうちの2;8つのアデノカルシノーマのうちの3;8つのエン麦細胞のうちの2;および10の鱗状細胞腫瘍のうちの5。100%(4つのうちの4)の腎臓細胞腫瘍がMN陽性であった。
まとめると、M75によって検出されたMN抗原および上記の実験の免疫組織化学的染色は、腫瘍細胞中、もっとも注目すべきことには子宮ガン細胞組織中に広く存在していた。MN抗原はまた、正常組織のいくつかの細胞においても、時々は、異型および/または悪性を示している標本の形態上は正常にみえる領域にもみられた。しかしながら、MNは、それが広く発現されている胃組織と、それが少なく発現されている低胃腸路を除いては、通常はほとんどの正常細胞中では広くは発現されていない。MN発現は、最も頻繁には、腫瘍細胞の細胞プラズマメンブレンに局在化しており、細胞間のコミュニケーションまたは細胞接着において役割を果たしていると思われる。上記で示された代表的な結果を表2に示す。
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この実施例に記録されている結果は、患者由来の組織試料中におけるMNタンパク質の存在は、一般に、関与している組織に応じて、前腫瘍性または腫瘍性プロセスが生じていること知らせるマーカーであることを示唆している。このように、これらの結果から、MN抗原を検出する診断/予後方法は、患者試料を、前腫瘍性段階、または、明白にもしくは知られている基礎に基づいて明白な異型および/または悪性と関連した明らかな形態変化にさきだって、それによって検出可能な数多くのガンのスクリーニングに極めて有用であると結論づけるであろう。
実施例2
ワクチン――ラットモデル
WO93/18152(国際刊行日1993年9月16日)の実施例7に示されているように、いくつかのラットの腫瘍、例えば、XC腫瘍細胞系統(ラット横紋筋肉腫からの細胞)においては、ヒトMNと関連したラットMNタンパク質が発現された。このように、1つのモデルは実験的MNベースのワクチンによって誘導された抗腫瘍免疫の研究をする余地があった。以下の代表的な実験を行った。
生後9−11日の、いくつかの科からのWistarラットを不規則化し、腹腔内経由で0.1mlの対照ラット血清(Cグループ)またはMN融合タンパク質GEX−3X−MNに対するラット血清(IMグループ)の何れかを接種した。両方のグループは同時に、皮下で106のXC細胞を接種された。
4週間後、ラットを安楽死させ、それらの腫瘍の重量を測定した。結果は図2に示す。グラフの各々の点は1匹のラットからの腫瘍を示す。2つのグループ(CとIM)の差は、Mann−Whitneyランク試験では顕著であった(U=84,α<0.025)。この結果は、18の対照の1と比較して、IMグループの幼児ラットは対照の約1/2の腫瘍を発展させ、受動免疫された18のうちの5は全く腫瘍を発展させなかった。
ATCCへの寄託
下記に挙げる材料は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(米国、メリーランド州、ロックヴィル、パークローン通り(Parklawn Drive)12301番地、郵便番号20852)に寄託されている。寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of Deposited Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure and Regulations thereunder)(ブダペスト条約)に基づいてなされた。生細胞培養の維持は寄託の日から30年間保障されている。微生物は、ブダペスト条約の規定に基づいてATCCから入手可能であり、寄託者とATCCは、関連する米国特許が付与されると制限されることなく入手できることについて合意している。寄託した株が入手可能できるとは言っても、ある政府機関がその国の特許法に基づいて許可する権利に違反して発明を実施する実施権を与えるということではない。
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本発明に関する以上の具体例の記述は、例示および説明のためのものである。これらの具体例は全てではなく、また、開示された特定のものに発明を限定するものでもない。さらに、以上の教示から多くの修正や変形が可能なことは明かである。以上の具体例は、本発明の要旨を説明するため、および、当該業者が図する特定の使用に適するようにさまざまな修正を加えた各種の態様で本発明を利用できるようにするために、選択して記載したものである。本発明の範囲は、明細書に添付された請求項によって定められる。
引用した全ての文献は、参考のために本明細書に取り入れられている。
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Claims (3)

  1. (a)配列番号27のヌクレオチド配列またはそれに相補的なヌクレオチド配列;および
    (b)配列番号27のヌクレオチド配列またはそれに相補的なヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記(a)のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の相同性を有するヌクレオチド配列;より成る群から選択されるヌクレオチド配列から成り、プロモーター活性を有することを特徴とする単離核酸。
  2. 前記ヌクレオチド配列が、配列番号27のヌクレオチド配列およびそれに相補的なヌクレオチド配列より成る群から選択されることを特徴とする請求の範囲第1項記載の単離核酸。
  3. 請求の範囲第1項または第2項記載の単離核酸を含むベクター。
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