JP3977387B2 - 意味情報スイッチ、意味情報ルータ、方法、記録媒体、プログラム - Google Patents
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Description
このブローカモデルでは、ブローカ(仲介者)が情報提供者とユーザを結びつける役割を担う。すなわち、ブローカを介してのみユーザと情報提供者が出会うことが可能である。
これらのサービスは、図25に示すように、ネットワーク網109、もしくはコンテンツ流通網110上に存在する個々のサービスプロバイダ103において、それぞれ一体型のサービスシステム(サービスアプリケーション)として実現されていた。
(1) 情報提供者(コンテンツプロバイダ102)が、第三者を介在せずにエンドユーザ(コンシューマ101)に対してコンテンツ情報をアナウンスする手段が存在しなかったため、情報提供者(コンテンツプロバイダ102)自身がコンテンツ情報を流通させる情報提供者(コンテンツプロバイダ)主導型の御用聞き社会を実現することができなかった。すなわち、コンテンツの提供元である情報提供者(コンテンツプロバイダ102)は、第三者を介在することなく自身のポリシでコンテンツ情報を流通させることができなかった。
(2)サービスプロバイダ103の提案サービスを享受するためには、サービスプロバイダ103の存在、位置、及びアクセス方法を、エンドユーザ(コンシューマ101)が明示的に認識しなければならなかった。
(4)サービスプロバイダ103におけるコンテンツ情報及びエンドユーザ嗜好情報の集中管理に起因して、スケラビリティの高いシステムを構築することが容易ではなかった。これまでは、コンテンツ情報及びエンドユーザ嗜好情報を管理するサーバシステムを複数用意する等の古典的な手法が用いられてきた。
このような事情や上記ブローカモデルの問題点に鑑み、情報提供者(コンテンツプロバイダ)が、ブローカの存在を仮定することなく自身のコンテンツに相応しいエンドユーザに対して、直接コンテンツを提供することが可能な非ブローカモデルを提唱した。
Gnutellaは,P2P(Peer-to-Peer)インタラクションモデルに基づいて、インターネット上に分散する不特定多数のエンティティ(情報)の中から、特定のエンティティを探索・発見するネットワークである。なお、Gnutellaではエンティティのことをサーバントとも呼ぶ。すなわち、個々の情報提供者がメタデータ(メタファイル)を超分散管理し、メタファイル間(メタファイルが格納されているホスト間)に任意のコネクションを設定することにより、情報提供者のみでメタデータに関する超分散データベースを構築する。そして、情報提供者同士が互いに分散協調することにより、ブローカを必要としない、メタデータの検索ネットワークの構築を可能にした。しかしながら、消費者からの検索要求パケットが、コネクションに基づいて全ての情報提供者に対してブロードキャストされる。すなわち、P2P方式のインタラクションを、コネクション情報に基づき、全てのホストに対して繰り返すため、ホスト数や扱うメタデータ種別の増加に比例して、不要なトラフィックが増大し、スケラビリティが極端に低下する問題がある。さらに、スケラビリティのみでなく、相互運用性、情報共有性、拡張性、セキュリティ、プライバシなどの面においても問題を有している。
さらに、テリトリ間のオントロジ(イベント辞書を変換する仕組みなど)を有していないため、相互運用性、情報共有性、拡張性などの面においても問題を有している。すなわち、文献1では、共通のイベント辞書(event dictionary)を共有するテリトリを規定しているが、テリトリの実現方法や、異なるテリトリ間で情報を共有するための方法が明確化されていない。そのため、テリトリに関しては具体的実現性の記述に乏しい。
○セキュリティとプライバシの保護の欠如・情報を流通させる範囲を限定する機構がない。つまり、イベントの波及先の限定が行えない。そのために、ネットワークに接続している人であれば誰でも情報を見ることが可能になる。
・また、情報の終端点が、エンドユーザの端末となり、外部からこれを参照する。そのために、外部に公開を望まない情報の載っている端末であっても、ネットワークに接続する場合は、情報を公開する可能性がある。
・セッションの概念がないため、イベント送受信端末のみでのネットワーク構築はできるが、ネットワークプロバイダとイベント送受信者を分離できない。
・必要なイベントのみの転送ができない。
○拡張性の欠如・動的な機能の追加・削除が困難である。
・ネットワーク規模を拡張することが容易でない。
○スケラビリティの欠如・イベントの送受信者数の増大に対処できない。
・意味情報種別(メタデータ種別)の増大に対処できない。
・不要なイベント転送を抑止できない。
・星合隆成, 柴田弘:"御用聞き型情報提案のための自律分散照合環境アーキテクチャとその性能評価", 電子情報通信学会論文誌(D-I), Vol.J83-D-I, No.9, pp.1001-1012 (2000-09).・星合隆成、柴田弘、酒井隆道、小柳恵一:”意味情報ネットワークアーキテクチャ: SIONアーキテクチャ”, NTT R&D, Vol.50, No.3, pp.157-164(2001.3).(下記非特許文献1に対応)
SIONの概念を図26に示す。図26と図21を比較すると明らかなように、SIONは、従来の宛先アドレス(誰に対して送信する)の代わりに、意味情報(どういう人に対して送信する)に基づくメタネットワークである。
イベント受信者毎のエンティティ22a、22b、22c(実際には端末等)と、イベント送信者毎のエンティティ21a、22b(実際には端末等)は、SION1を介して接続されている。各エンティティ22(a、b、c)は、あらかじめ、受信を希望するイベント(情報)の特性を示す意味情報をフィルタとして各々登録しておく。エンティティ21(a、b)は、イベントを送信することにより、SION1に”刺激”を与える。ここでは、エンティティ21aが刺激を与えたものとする。このイベントは、少なくとも意味情報を含んでいる。SION1は、送信されたイベントの意味情報と、登録された各フィルタを照合する。送信されたイベントの意味情報と登録されたフィルタが合致する場合、フィルタは”発火”し、当該イベントを対応するエンティティ22に送信する。ここでは、エンティティ22bのフィルタが発火したものとする。フィルタが発火すると、対応するエンティティ22bは自律起動し、当該イベントを受信する。これにより、特定のエンティティのみを探索、発見することができる。
例えば、現在提案されている概念では、イベント送受信条件の設定要求や解除要求は、順次、自律的に波及(伝播)するとしている。しかし、イベント送受信条件の設定・解除要求を受ける度、その要求を各ネットワーク構成要素等へ伝播させると、ネットワークに負担がかかる。また例えば、イベント送受信経路の解除のとき、装置等の故障などにより、正規の手順を踏むことなく中継していた装置等と通信できなくなった時どうするかという課題を解決する技術的提案はまだない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、意味情報ネットワークの構成要素であって、効果的なイベント転送の設立や解除、転送制御を行なうための意味情報スイッチ、意味情報ルータ、方法、記録媒体、プログラムを提供することを目的とする。
前記第2の意味情報スイッチは、前記意味情報ルータから送信された登録要求の内容をフィルタとして登録することを特徴とする。
少なくとも該第1の意味情報スイッチの識別子を含むシェアードリンク確立要求を送信し、前記第2の意味情報スイッチは、前記第1の意味情報スイッチから送信されたシェアードリンク確立要求を受信し、少なくとも該シェアードリンク確立要求に含まれる識別子を送信し、前記意味情報ルータは、前記第2の意味情報スイッチから送信された識別子に基づいて、前記第1の意味情報スイッチから送信されたイベントを前記第2の意味情報スイッチに転送するための設定をすることを特徴とする。
以下、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、情報携帯端末、携帯電話、ウエアラブルコンピュータなどのあらゆるコンピュータを総称して、ホストと呼ぶ。さらに、SIONソフトウエアを実装したホストを、SIONエンティティ(単に、エンティティ)と呼ぶ。
エンティティは、SIONにおける自律分散の単位であるとともに、SIONソフトウエアを実装したホストをSIONにおける自律的な動作実体として仮想化したものである(図1参照)。また、SIONソフトウエアは、個々のエンティティが自律分散協調を行うための種々の機構を提供する。
(1)サービスとして振舞うエンティティ(サービスエンティティ:以下SEと呼ぶ)
(2)ネットワーク構成要素として振舞うエンティティ(ネットワークエンティティ:以下NEと呼ぶ)
(3)サービス、および、ネットワーク構成要素の両者の観点から振舞うエンティティ(サービス・ネットワークエンティティ:以下SNEと呼ぶ)
これらは、バックボーン型P2Pネットワークの構築や、ハイブリッド型P2Pネットワークを構築する際に用いられる。
SNEは、サービスとネットワーク構成要素の両者の観点から振舞うエンティティであり、ピュア型P2Pネットワークを構築する際に用いられる。これは、個々のSNEが互いに助け合うことにより、ボランティア型のネットワークを構築する形態であり、SNEが分散協調することにより、ネットワークを自己組織化する。
この図では、そのようにして生成されたSI-SW、SI-R、SI-GW等が一つのエンティティ内に存在している。
なお、エンティティは公開プロトコルに基づいて、自身の存在をアドバタイズする。これをアドバタイズメントという。アドバタイズメントには、アドバタイズの発信基地として振舞う「アドバタイズメントベース(オリジンエンティティ、オリジンイベントプレースなど)」を用いる方法や、ブロードキャスト・カスケードによる方法がある。
以下に、個々のネットワークエンティティについて詳述する。
SI-SW(意味情報スイッチ)は、意味情報に基づいて、イベントをスイッチングするスイッチング機構を提供する。SIONでは、このSI-SWを分散ソフトウエアとして実装している。
図5にSI-SWの構成を示す。この図において、イベント受信部51は、イベント送信者からのイベントを受信する。照合部52は、イベント受信部で受信したイベントに付与された意味情報をフィルタと照合する。イベント送信部53は、照合部により発火したイベントを、イベント受信者へ送信する。フィルタ管理部54は、フィルタと、照合の結果発火した場合のイベントの送信先を記憶する。
制御要求受付部55は、他のスイッチ、ルータ等から制御要求を受け付ける。制御部56は、制御要求受付部で受け付けた要求に基づいて、フィルタ制御(登録、解除)、セッション制御(登録、解除)、シェアードリンク制御(確立、解除、再確立、情報応答)等を行なう。シェアードリンク設定情報管理部57は、シェアードリンク設定条件(設定相手のSWのID、設定要求/被要求の種別)を記憶する。
図7にイベント(SIONパケット)の構造を示す。イベントは、制御情報部(CI: Control Information)部、意味情報(SI: Semantic Information)部、データ部から構成される。データ部には、送信データが格納される。送信データとして、テキスト(文書、電話番号、XML)、バイナリデータ、リファレンス(URL, Object Reference)、プロキシ、エージェントなど、様々なデータ、プログラムを格納することができる。
図10に示すように、イベント受信エンティティは、セッションを介して、イベントの取得条件をSI-SWに登録する。これをフィルタと呼ぶ。
フィルタには、取得したいイベントのイベントタイプ、および、意味情報との照合条件(例えば、語彙”Price”が”$20から$40の範囲”のものを取得対象とする)が設定される。なお、当該イベントタイプに定義されているすべての語彙との完全一致、一部の語彙との部分一致、重み付け一致なども、照合条件をフィルタ単位で選択することができる。
取得したいイベントのイベントタイプにワイルドカードを指定した場合には、すべてのイベントタイプが照合の対象となる。また、意味情報との照合条件に1(論理値が真)が設定された場合には、無条件に意味情報との照合条件が満足されたことを意味する。
なお、発火によるイベント通知のほかに、ルックイン型のイベント通知もサポートする。これは、受信セッション単位にスプールされているイベントをプルで取得する受信モードである。このルックイン型のイベント通知は、図28に示すようなファイアウォールを跨るイベント受信や、SEがアクティブでない場合のイベント受信に有効である。
なお、フィルタに意味情報を登録し、イベントの意味情報部に配布条件(照合条件)を設定することも可能である。SIONでは、このような形態を御用聞き型モデルと呼んでいる。例えば、イベントの意味情報部に、「$20<Price<$30」を設定することができる。一方、本文中で説明したような形態(SI-SWにフィルタを登録し、イベントに意味情報を登録する形態)を御問い合せ型モデルと呼んでいる。
イベントプレースは以下の目的から考案されたドメインの概念である(図11参照)。なお、シェアードリンク、SI-Rについては後述する。
(1)イベントの転送範囲:刺激と発火に基づく連鎖反応の波及範囲を制限することができる。
(2)イベントルーティングの対象範囲:シェアードリンクにより接続されているSI-SWの集合である。イベントプレース毎に、リンクトポロジーやイベントルーティング方式を選択できる。
(3)意味情報体系の一意性が保証される空間:取り扱うイベントタイプの爆発的な増大を抑止する。
(1)サブネットの単位(物理的な単位)
例えば、職場のパソコンでSIONのローカルネットワークを構築する場合などに利用する。
(2)サービスの単位(論理的な単位)
一般的にサービス毎に、必要とされる意味情報体系(語彙概念や語彙)が異なるため、例えば、証券情報提供サービス、医療情報サービスなどサービス種別毎にイベントプレースを構築する場合などに利用する。
(3)サービス運営者の単位
同じサービス種別でも、サービス運営者毎に、異なるイベントプレースを構築する場合などに利用する。
承認されたエンティティのみが、イベントプレースに参加することが許される。すなわち、イベントプレース内のSI-SWにセッションを確立する、もしくは、イベントプレース内のSI-SWに対してシェアードリンクを確立することが許容される。基本的には、イベントプレース間での情報共有は許容されない。
(5)ネットワーク運営・管理者の単位
運営や管理の容易性から、イベントプレースを更に複数のイベントプレースに分割することがある。
(6)負荷分散の単位
負荷分散の観点から、イベントプレースを複数のイベントプレースに分割することがある。
SIONでは、サービスエンティティとSI-SW間のコネクション、およびSI-SW間のコネクション(シェアードリンク)は、セッションにより実現される。セッション自体は論理的な概念であるが、物理的に無線LAN等を用いて実装されている場合には、無線の到達距離によりグループ化の対象が制限される。
(8)グループのグループ化
後述するSI-GWを用いて、イベントプレースを階層的に連携させることにより、親グループ、子グループの関係を持ったクラスタリング構成を構築できる。
イベントプレースはイベントの転送範囲を制限するためのものであり、基本的には他イベントプレースとのイベント共有ができない。しかしながら、SI-GW(意味情報ゲートウエイ)を設定することにより、イベントプレース間でのイベント共有が可能になる(図11参照)。これにより、それぞれの用途や目的に応じて構築されたイベントプレース間の連携(フェデレーション)が可能になる。
図11において、例えば、イベントプレースAからイベントプレースBに対して連携要求を行い、これがイベントプレースBによって承認されたとき、イベントプレースAは、SI-GW A,Bを生成する。なお、連携要求として、片方向、もしくは双方向の連携を指定可能である。
これにより、イベントプレースBで生起したイベントをイベントプレースAに転送することが可能になる。
SI-GW A,Bは、イベント受信用セッションを介して登録するフィルタ値の設定により、すべてのイベントタイプを転送の対象とする、特定のイベントタイプのみを転送の対象とするなど、きめ細かなファイアウォール制御が可能になる。
上述の考え方に基づいて、他のP2Pネットワークとの相互接続も可能である。SIONでは、このための機構を「S/x-GW」と呼ぶ。例えば、SIONからは、S/G-GWを介して、Gnutellaネットワークが一つのエンティティとして仮想化される。
SIONはリファレンスモデルの考え方を採用している。最下位層がSIONでありイベントの伝達層である。上位層に対してネットワークインタフェースを提供する。ミドルウエア層がコミュニティネットワークであり、SIONのインテリジェンス層に相当する。最上位層がアプリケーション層(サービスエンティティ)である。
SION-Management TOOL(SION-MT)もサービスエンティティの一つに位置付けられる。これは、SIONのネットワークインタフェースを発行するGUIツールであり、サービス固有のロジックは有していない。しかしながら、SION-MTに他のアプリケーションプログラム(サービスロジックを有するアプリケーション)を組み込むことが可能なプラグイン機構を提供している。これにより、ユーザ毎にカスタマイズされたサービスエンティティを構築することが容易に可能になる。
ここでは、ネットワークエンティティの増減設方式に関して、特に、SI-SWの増減設の観点から述べる。
<SI-SW増減設の目的>
まず、SIONにおけるSI-SW増減設の目的について述べる。
(1)イベントプレースのトータル処理能力向上の観点から、イベントプレース内のSI-SWを増設し、イベントのフィルタリング処理を負荷分散する。その逆の観点から、SI-SWを減設する。
(2)動的に生成されたSI-SWに対して、シェアードリンクを柔軟に確立することにより、フレキシブルでグローバルなネットワークをボトムアップ的に構築する。
SIONでは幾つかの増減設形態を提供しているが、ここでは、図13に代表的な形態を示す。
(1)イベントプレースの合成と分離
図13(a)に示すように、複数のイベントプレースを合成することができる。
これは、イベントプレースに属する任意のSI-SW、もしくはイベントプレースに対して、合成要求(シェアードリンクの確立要求)を行うことにより、イベントプレース間にシェアードリンクが確立され、両者の合成が実現される。なお、合成(シェアードリンク確立)の要求元および要求先は、それぞれ、SI-SWでもイベントプレースでもどちらであってもかまわない。一方、分割する場合には、確立されているシェアードリンクを解除し、それぞれのイベントプレースに分離する。
図13(b)に示すように、イベントプレース内のSI-SW、もしくは、イベントプレースに対して参加要求(シェアードリンクの確立要求)を行うことにより、既存SI-SWとの間にシェアードリンクが確立され、当該イベントプレースに参加することができる。
SI-SWがイベントプレースから退去する場合には、他のSI-SWとのシェアードリンクを解除し、さらに、シェアードリンクの再構築を行い、当該イベントプレースから退去する。このとき、退去したSI-SWの状態は、サスペンド状態へと遷移する。
なお、イベントプレース側からSI-SWに対してシェアードリンクの確立を要求することにより、当該SI-SWをイベントプレース内に取り込むことも可能である。これを吸収という。その逆を分裂という。
図13(c)に示すように、イベントプレース内のSI-SW、もしくは、イベントプレースに対して、SI-SWの増設要求を行うと、指定されたホスト(エンティティ)に指定された数のSI-SWが新たに生成され、既存のSI-SWとの間にシェアードリンクが確立される。一方、イベントプレースにSI-SWの減設要求を行うと、指定されたSI-SWのシェアードリンクが解除された後、シェアードリンクの再確立が行われ、当該SI-SWが削除される。このとき、SI-SWの状態は、Non-Existentに遷移する。
図13(d)に示すように、イベントプレース内のSI-SW、もしくは、イベントプレースに対して、フェデレーション(連携)要求を行うことにより、SI-GWが生成され、セッションを介して両イベントプレースが連携する。なお、フェデレーションの要求元および要求先は、それぞれ、SI-SWでもイベントプレースでもどちらであってもかまわない。
上記形態におけるSI-SWの状態遷移を図14に示す。SI-SWを生成した時の当該SI-SWの状態は、サスペンド状態であるため、いずれかのイベントプレースに属さない限り、当該SI-SWはアクティブにならない。また、シェアードリンクが確立されているSI-SWを削除することはできない。
上述したように、ネットワークエンティティの配置の仕方により、ハイブリッド型のビジネスモデルとピュア型のビジネスモデルを構築することができる。
前者は、ネットワークプロバイダもしくはサービスプロバイダが用意するホストに、ネットワークエンティティを予め配置することによりイベントプレースを構築し、ユーザ(イベントの送受信者)はセッションを介して、イベントプレースに参加する形態である。
SIONを用いることにより、同一のネットワークアーキテクチャ、制御方式で、両者の形態を実現することができる。すなわち、ネットワークエンティティの配置方法の問題に帰着させることができる。また、SI-GWを介して、両者を連携することも可能である。SI-GWの利点は、あるイベントプレースAに着目したとき、当該イベントプレースと連携しているイベントプレースB(SI-GW)が、イベントプレースAの一つのサービスエンティティとして見える点にある。すなわち、一般のサービスエンティティとイベントプレースを同様に扱うことが可能である。
この考え方を発展させ、SION/Gnutella-GWを配置することにより、Gnutellaのような他のP2Pネットワークとも簡単に連携することができる。SION(イベントプレース)側から見ると、Gnutellaネットワーク全体がSIONに参加している一つのサービスエンティティとして見える。なお、このようなSX-GW(X=I, G)は、イベントプレース運営者が配置することも可能であるが、SION-MTのプラグイン機構を用いてSX-GWをSION-MTに組み込むことにより、エンドユーザが配置することも可能である。
これにより、シームレスなネットワークをビルドアップに構築することが可能になるとともに、SIONが異なるビジネスモデル(ブローカモデル、他のブローカレスモデル)の接着剤となることができる。
シェアードリンク(共有リンク)は、複数の異なるSI-SW間において、双方向のイベント共有を行うための概念である。例えば、SI-SWは、他のSI-SWに対して、シェアードリンク(Shared Link:SL)の確立要求を行うことにより、SI-SW間にシェアードリンクを確立することができる。なお、後述するフィルタ値の設定によって、SI-SW間に様々なイベントルーティング方式を動的に選択できる。
図15は、SI-SW2およびSI-SW3がSI-SW1に対して、それぞれシェアードリンクの確立要求を行っている状態を表している。
ここで、図15において、SI-SW2がSI-SW1に対して、シェアードリンクの確立要求から確立までの仕組みを説明する。
図16に示すように、SI-SWとSI-SWとの間にはSI-Rが設置され、SI-Rは、意味情報に基づいて、SI-SW間のイベントルーティング(イベント転送)を行う。SI-Rの構成を、図17を参照して説明する。
イベント転送部71は、スイッチからイベントを受信し、他のスイッチへ送信する。制御要求受付部72は、他のスイッチ、ルータ等からシェアードリンク制御(確立、解除)、フィルタ登録制御等の制御要求を受け付ける。制御部73は、制御要求受付部で受け付けた制御を行なう。フィルタ登録情報管理部74は、フィルタ登録情報(イベントタイプ毎の登録回数のカウンタ)を記録する。
(1)SI-SW2はSI-SW1に対して、シェアードリンクの確立要求と共に、SI-SW2の識別子と、フィルタ設定内容とを発行する。なお、フィルタ設定内容は必要に応じて発行するものであり、あってもなくてもよい。
(2)このとき、図16に示すように、SI-SW1は、SL1,2を確立するために、ファクトリ32によりSI-R1,2を動的に生成するとともに、シェアードリンク設定情報管理部57にSI-SW2がシェアードリンクの確立要求元であることを記憶する。SI-SW1はSI-R1,2に、SI-W2の識別子と、フィルタ設定内容等を渡す。
(4)これにより、SL1,2が確立され、例えば、SE4がSI-SW2に対して送出したイベントが、SI-R1,2を介して、SI-SW1へも送出されることになる。
(5)このとき、SI-R1,2はSI-SW2に対してフィルタの登録を要求し、SI-R1,2はフィルタを登録する。そのフィルタの設定内容により、イベントの転送方式を選択できる。イベント転送方式の一例を以下(a)、(b)で説明する。
すなわち、すべてのイベントに対して、SI-R1,2が発火する。これは、SI-R1,2がイベント受信セッションを介して登録するフィルタに対し、受信したいイベントタイプとしてワイルドカードを設定し、照合条件として1(論理値の真)を設定することにより可能になる。この方式では、無駄なイベント転送と転送先でのイベント照合処理オーバヘッドが発生するが、後述するイベントパスの設定オーバヘッドが発生しないため、フィルタ登録数がイベント送出数よりも十分大きい場合に有効な方式である。
なお、EPの生成時、もしくは、サービスエンティティからのフィルタ登録時に、イベント転送方式(SI-RによるSI-SWへのフィルタ登録時のフィルタ値)を選択できる。
これらの仕組みにより、意味情報に基づく、イベントのマルチホップおよびマルチキャストが実現される。
これまでの説明から明らかなように、SI-Rは、イベント送信とイベント受信の両者の側面を持つエンティティであり、一般のサービスアプリケーションであるサービスエンティティと本質的な違いはない。SIONでは、SI-RのようなSIONの制御に用いられるエンティティを、サービスエンティティと特に区別して、ネットワークエンティティと呼ぶ。SIONにおいては、サービスエンティティ、ネットワークエンティティのすべてのエンティティを共通のエンティティとして扱い、さらに、イベント送出とイベント受信、すなわち刺激と発火の連鎖反応という単純かつ一貫性のある共通ロジックに従って自律動作させることにより、すべてのエンティティが自律分散協調可能な超分散・超疎結合アーキテクチャを提供する。
特定のSI-SWを退去、減設させる場合には、当該SI-SW間において確立されているシェアードリンクを解除し、さらにシェアードリンクの再確立を行わなければならない。以下に、その概要を紹介する。
図18において、シェアードリンク確立要求の先頭数字は、それらの要求順序を示している。まず、SI-SW2からSI-SW1へシェアードリンクの確立要求を行う。
次にSI-SW3からSI-SW2へシェアードリンクの確立要求を行う。最後に、SI-SW4からSI-SW2へシェアードリンクの確立要求を行う。なお、ここでは、各SI-SWはシェアードリンクの確立要求を、他のSI-SW各々に対し高々1回しかできないが、無制限に確立要求を受け付けることが可能なリンクトポロジーを採用することもできる。これにより、無駄なシェアードリンクを防ぐことができる。
この状況において、例えば、SI-SW2の退去、減設などが求められる場合、SI-SW2に対してシェアードリンクの解除要求を発行し、シェアードリンクの解除後に新たなシェアードリンクの確立が必要になる。以下に手順を示す。なお、ここでは説明の便宜上、SI-SW1の各部はその末尾にa(例えば制御部56a)、SI-SW2の各部はその末尾にb(例えば制御部56b)、SI-SW3の各部はその末尾にc(例えば制御部56c)、SI-SW1の各部はその末尾にd(例えば制御部56d)と記載して説明する。
(2)SI-SW2の制御部56bは、自身のシェアードリンクを解除する旨を、1ホップのSI-SW (SI-SW1, SI-SW3, SI-SW4)に対して通知する。これは、イベントのTTL値を1にしてイベント送出を行うことにより可能になる。なお、このとき、自身へのシェアードリンク確立を受け付けたSI-SW (SI-SW3, SI-SW4)に対しては、自身に代わるシェアードリンクの確立要求先、すなわち自身が確立要求を行ったSI-SW1を教える。その後、SI-SW2の制御部56bは、自身が確立したシェアードリンク(SL2,1, SL2,3, SL2,4)を解除するために、その旨をSI-R2,1, SI-R2,3, SI-R2,4(ただし、これらのSI-Rは図示されていない)に通知する。これらのSI-Rの各制御部73は、これを契機に他のSI-SWとのセッションを解除する。
しかしながら、このようなケースにおいては、シェアードリンクの再確立時に必要となる代わりのSI-SWを教授できない可能性がある。SIONでは、このような状況に対応するために、各SI-SWはnホップ(nは任意)のイベントを送出することにより、代わりの確立要求先SI-SWの把握を行っている。なお、SIONでは、TTL値と、イベントの意味情報中に含まれるホップ属性とを用いることにより、更にきめこまかなホップ制御が可能である。代表的なホップ属性には以下のものがある。
「1」シェアードリンクの確立要求を行っているSI-SWのみをホップ対象とする。
「2」シェアードリンクの確立要求を受け付けているSI-SWのみをホップ対象とする。
「3」すべてのSI-SWをホップ対象とする。
図20は、片方向のシェアードリンクにおいて、サービスエンティティがフィルタを登録したときに、SI-Rが設定するイベントパス(イベントルーティング情報)がどのように更新・管理されるかを示したものである。
図20の(b)は、図20の(a)のネットワーク構成において、イベントタイプ「BGM」に対し、SEがフィルタを登録・解除する時のSI-Rのカウンタ値変遷例を示したものである。
また、表中の数字は、SI-Rのフィルタ登録情報管理部74が保持しているイベントパス管理のためのカウンタ値であり、SI-RがSI-SWに対して、イベントパス設定のためのフィルタ登録を行っている回数を示している。このような管理は、イベントタイプ毎に行われる。但し、SI-RからSI-SWに対する実際のフィルタ登録は、カウンタ値が0から1へインクリメントされたときのみ行われるように制御部73で制御される。SI-Rは、例えば、1から2へ遷移する場合には、フィルタ登録は行わずに、フィルタ登録が要求された旨のみをフィルタ登録情報管理部74のカウンタで記憶している。同様に、サービスエンティティがフィルタ解除を行った場合には、イベントパスの更新のために、カウンタをデクリメントするが、SI-RからSI-SWに対する実際のフィルタ解除は、カウンタ値が0になったときに始めて行われる。これにより、イベントパスの設定要求や解除要求が、順次、自律的に波及(伝播)していく回数を必要最低限に抑止することが可能になり、イベントパス制御のオーバヘッドを低減することができる。
以下に、簡単に図20の(b)を説明する。
「1」初期値において、イベントタイプ「BGM」に対するイベントパスは確立されていないことを示している。
「2」SE3がフィルタを登録することにより、イベントパスの設定要求が順次、自律的に波及し、その結果、SI-R3,2がSI-SW2にフィルタを登録し、同様に、SI-R2,1とSI-R2,4がそれぞれSI-SWにフィルタ登録することによりイベントパスが設定される。このとき、該当のSI-Rはそれぞれカウンタをインクリメントする。
「3」さらに、SE5がフィルタを登録すると、SI-R5,3を介して、イベントパスの設定要求がSI-R3,2に対して波及するが、SI-R3,2は、既にイベントタイプBGMに関するイベントを転送するためのフィルタを登録済み(カウンタ値が1)であるため、カウンタを単に2にインクリメントするだけで、更なるフィルタ登録は行わない。そのため、SI-R2,1とSI-R2,4に対して、イベントパスの設定要求が波及しないため、両者のカウンタには変更が生じない。
「4」同様の考え方で、図20の(b)に示すように、表中のカウンタ値が更新される。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
Claims (5)
- ネットワーク上において、少なくともデータと、該データのメタデータである意味情報と、該意味情報の語彙概念であるイベントタイプとからなるイベントを、第1の意味情報スイッチと、意味情報ルータを介して前記第1の意味情報スイッチと接続された第2の意味情報スイッチとの間で転送するための通信システムであって、
前記第1の意味情報スイッチは、
少なくとも該第1の意味情報スイッチの識別子を含むシェアードリンク確立要求を送信し、
前記第2の意味情報スイッチは、
前記第1の意味情報スイッチから送信されたシェアードリンク確立要求を受信し、少なくとも該シェアードリンク確立要求に含まれる識別子を送信し、
前記意味情報ルータは、
前記第2の意味情報スイッチから送信された識別子に基づいて、前記第1の意味情報スイッチから送信されたイベントを前記第2の意味情報スイッチに転送するための設定をする
ことを特徴とする通信システム。 - 前記第2の意味情報スイッチは、
該意味情報スイッチの識別子を、通信ネットワークを介してさらに送信し、
前記意味情報ルータ、又は前記第1の意味情報スイッチと前記第2の意味情報スイッチを接続する他の意味情報ルータは、
前記第2の意味情報スイッチから送信された識別子に基づいて、前記第2の意味情報スイッチから送信されたイベントを前記第1の意味情報スイッチに転送するための設定をさらに行なう
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。 - ネットワーク上において、少なくともデータと、該データのメタデータである意味情報と、該意味情報の語彙概念であるイベントタイプとからなるイベントを、第1の意味情報スイッチと、意味情報ルータを介して前記第1の意味情報スイッチと接続された第2の意味情報スイッチとの間で転送するためのシェアードリンク確立方法であって、
前記第1の意味情報スイッチは、
少なくとも該第1の意味情報スイッチの識別子を含むシェアードリンク確立要求を送信する過程と、
前記第2の意味情報スイッチは、
前記第1の意味情報スイッチから送信されたシェアードリンク確立要求を受信し、少なくとも該シェアードリンク確立要求に含まれる識別子を送信する過程と、
前記意味情報ルータは、
前記第2の意味情報スイッチから送信された識別子に基づいて、前記第1の意味情報スイッチから送信されたイベントを前記第2の意味情報スイッチに転送するための設定をする過程と
を特徴とするシェアードリンク確立方法。 - ネットワーク上において、少なくともデータと、該データのメタデータである意味情報と、該意味情報の語彙概念であるイベントタイプとからなるイベントを、第1の意味情報スイッチと、意味情報ルータを介して前記第1の意味情報スイッチと接続された第2の意味情報スイッチとの間で転送するためのシェアードリンク確立プログラムであって、
前記第1の意味情報スイッチは、
少なくとも該第1の意味情報スイッチの識別子を含むシェアードリンク確立要求を送信するステップと、
前記第2の意味情報スイッチは、
前記第1の意味情報スイッチから送信されたシェアードリンク確立要求を受信し、少なくとも該シェアードリンク確立要求に含まれる識別子を送信するステップと、
前記意味情報ルータは、
前記第2の意味情報スイッチから送信された識別子に基づいて、前記第1の意味情報スイッチから送信されたイベントを前記第2の意味情報スイッチに転送するための設定をするステップと
をコンピュータに実行させるためのシェアードリンク確立プログラム。 - 請求項4に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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