JP3976433B2 - 配電系統計画作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、想定した今後の電力需要に対して過負荷、電圧過降下等の電力供給支障が生じない配電系統計画の作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、配電系統は図5に示すように構成されている。すなわち、変電所A,B,…それぞれには、変圧トランス設備(以下、バンクと呼ぶ)A11 〜 3,B11,…が設けられている。バンクA11 〜 3,B11,…は、通常、各変電所A,B,…に対して最大3つ設置できるようになっており、図5に図示された変電所Aには3つのバンクA11 〜 3が設けられており、変電所Bには一つのバンクB11が設けられている。
【0003】
各バンクA11 〜 3,B11,…それぞれには、変電所ブレーカ(以下、FCBと称す)2を介して配電線A31 〜 3,B31,…が接続されている。通常、各バンクA11 〜 3,B11には、最大12本の配電線A31 〜 3,B31,…が接続できるようになっている。各配電線A31 〜 3,B31,…には、低圧需要家α,ないし高圧需要家βに対して給電する引き込み線4が接続されている。低圧需要家αに給電する引き込み線4の中途部には、降圧用のトランス5が設けられている。
【0004】
各変電所A,B,…内の配電線(例えばA31 〜 3)どうしの間には、配電線どうしを連系接続する第2の配電線6が設置されている。第2の配電線6は、各変電所A,B,…内の配電線どうしの間で負荷融通ができるように設けられている。一方、各変電所A,Bの給電領域の間には、変電所A,Bそれぞれが所轄する配電線A31 〜 3,B31,…どうしを接続する第3の配電線7が配設されている。第3の配電線7は、変電所A,B,…の間で、負荷の移行ができるように設けられている。
【0005】
各配電線A31 〜 3,B31の配線中途部には、配電線経路の断続制御を行う開閉器8が設けられている。開閉器8は複数設けられており、これら開閉器8によって各配電線A31 〜 3は複数の区間に分割可能になっている。第2の配電線6の配線中途部には、連系開閉器9が設けられており、同一の変電所A,Bから給電される配電線A31 〜 3,B31の間の連系関係が連系開閉器9によって断続可能(通常は開状態)になっている。第3の配電線7の配線中途部には、連系開閉器10が設けられており、異なる変電所A,Bから給電される配電線A31 〜 3,b31の間の連系関係が連系開閉器10によって断続可能(通常は開状態)になっている。
【0006】
従来から、このように構成された配電系統において、今後の需要の伸びに応じた配電系統計画を立案する場合には、次のようにして行っていた。すなわち、まず、各配電線A31 〜 3,B31,…における最大負荷実績と新規の需要家α,βの追加予定とを調べる。各配電線A31 〜 3,B31,…の負荷実績は、各FCB2によって検出されたのち電力会社の中央制御装置(図示省略)に送信されて記憶されており、最大負荷実績は中央制御装置の記憶内容を調べればわかる。
【0007】
次に、最大負荷実績の増加予想データ(伸び率)、新規需要家の追加予定データ等を基にして、翌年度の電力需要想定を行う。この電力需要想定は専用様式の計算表を用いて手計算により行う。さらには、想定した次年度の電力需要に対して既存の配電設備で対応した際に、過負荷、電圧過降下等の電力供給支障が生じるか否かを判定する。この判定操作は、専用様式の計算表を用いて手計算により行う。
【0008】
さらに、電力供給支障が任意の配電線A31 〜 3,B31,…内で生じると判定する場合には、まず、電力供給支障が生じると想定される配電線A31 〜 3,B31,…が負担している負荷の一部を、電力供給支障が生じないと想定される他の配電線A31 〜 3,B31に移行することで、電力供給支障を解消させる。このような操作は、同じ変電所から給電される配電線どうしの間で行われ、具体的には配電線A31 〜 3,B31および第2の配電線6の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9の開閉組み合わせの変更をシミュレーションすることで行う。
【0009】
一方、電力供給支障が変電所A,B自体に生じると判定する場合には、電力供給支障が生じると想定される変電所A,B,…が負担している負荷の一部を、電力供給支障が生じないと想定される他の変電所B,A,…に移行させることで、電力供給支障を解消させる。このような操作は、具体的には第3の配電線7を含む各配電線A31 〜 3,B31,6,7の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせの変更をシミュレーションすることで行う。
【0010】
以上の電力供給支障の解消計画で電力供給支障が解消しない場合には、電力供給支障が生じないように配電設備(配電線やバンク)の新設計画を立てる。
【0011】
さらには、上述した操作により電力供給支障が解消した場合には、任意の配電線A31 〜 3,B31,…において断線等の配電事故が生じた場合を想定し、そのような場合においても、電力供給支障が発生しないように、配電線A31 〜 3,B31,…が負担している負荷(需要家α,β)の一部を他の配電線A31 〜 3,B31に移行させるシミュレーションを行う。このような操作は、具体的には配電線A31 〜 3,B31,第2の配電線6および第3の配電線7の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせの変更をシミュレーションすることで行う。
【0012】
このような翌年度の配電系統計画を作成したのち、さらに翌年度,翌翌年度といったように、一年単位の配電系統計画を同様の方法により作成する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の配電系統計画の作成方法では、上記電力供給支障が生じない系統運用状態を探り出す必要がある。具体的には、計画担当者が、経験と勘に基づいて試行錯誤しながら、電力供給支障が生じない開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせを探り出していた。しかしながら、これでは、立案に長時間を要するうえに、立案者の熟練度合によって計画精度が左右されてしまい、常時均質な立案が行えるとはいえなかった。
【0014】
さらには、電力供給支障が生じない最適な系統運用状態をコンピュータにより自動算出することが考えられるが、その場合にも次のような課題があった。すなわち、コンピュータによる自動算出を行う場合には、すべての系統運用状態(開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせのすべて)をシミュレーションしたうえで、その中から最適な系統運用状態(開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせ)を抽出するという手順が採られる。ところが、一般に一つの配電系統が負担する配電エリアは広大であって、その中には非常にたくさんの開閉器8,連系開閉器9,10が設けられている。そのため、算出対象となる系統運用状態(開閉組み合わせ)の数も膨大なものとなり、計算速度の速い昨今のコンピュータで自動計算したとしても、すべての計算が終了するには数百日から数年かかってしまい、これでは、実用的な配電系統計画と呼べるものにはならない。
【0015】
したがって、本発明においては、精度の高い立案を、短時間の自動計算により行うことができる配電系統計画の作成方法の提供を主たる目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のような手段によって、上述した課題を解決している。すなわち、想定した今後の電力需要に対して既存の配電設備で対応した際に、過負荷、電圧過降下等の電力供給支障が生じるか否かを判定したうえで、前記電力供給支障が生じると判定する場合に、その電力供給支障が生じない配電系統計画を作成する配電系統計画作成方法であって、前記電力供給支障が配電線経路内で生じると判定する場合には、各配電線の経路断続を行う開閉器、および同一の変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器の開閉組み合わせを、前記電力供給支障が生じないように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第1の電力供給支障解消計画作成手順と、前記電力供給支障が変電所自体に生じると判定する場合には、各配電線の経路断続を行う開閉器、同一の変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器、および異なる変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器の開閉組み合わせを、前記電力供給支障が生じないように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第2の電力供給支障解消計画作成手順と、前記第1,第2の電力供給支障解消計画作成手順で前記電力供給支障が解消しない場合には、前記電力供給支障が生じないように配電設備の新設計画を作成する第3の電力供給支障解消計画作成手順とを含むことで、上述した課題を解決している。
【0017】
なお、遺伝的アルゴリズムとは、非常にたくさんの組み合わせの中から最適なものを抽出する場合のように規模が大きくて組み合わせの全てを計算するのには膨大な時間と手間が要る場合において、その計算の迅速化を図る手法であって、生物の遺伝と進化とを模倣した選択淘汰,交叉,および突然変異の手法を用いて組み合わせの最適化を図ることをいう。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施の形態の配電系統計画作成方法を実施する配電系統計画支援システム20の概略構成は、図1に示すように、電力会社の中央制御装置100に接続(例えばLAN接続)されたワークステーション21と、ワークステーション21の出力端末であるプリンタ22とカラーハードコピー23とを備えている。なお、配電系統の構成は、図5に示したものと同一であるので、以下の説明では、図5の配電系統の名称(符号を含む)を用いて説明する。
【0020】
次に、この配電系統計画支援システム20を用いた配電系統計画の作成方法を図2のフローチャートを用いて説明する。
【0021】
まず、ワークステーション21において、中央制御装置100から過去、数年における各配電線A31 〜 3,B31,…の年度別最大負荷等の負荷データを呼び出して負荷実績を作成する。負荷データは、各FCB2によって検出されたのち中央制御装置100に送信されて記憶されている。(ステップ21)
次に、作成した負荷実績から負荷実績の伸び率を算出したうえで、その伸び率と、新規の需要家α,βの追加予定(これは予め調べておく)とをワークステーション21に入力する。伸び率の算出および入力は、ワークステーション21内において自動的に行うようにしてもよい。(ステップ22)
次に、負荷実績の伸び率と新規需要家の追加予定データ等を基にして、翌年度の電力需要想定(翌年度の負荷最大値や電圧降下値の算出)を行う。(ステップ23)
さらには、想定した翌年度の電力需要に対して既存の配電設備で対応した際に、過負荷、電圧過降下等の電力供給支障が生じるか否かを判定する。(ステップ24)
なお、ステップ23,24の操作は、専用様式の計算表を用いて手計算により行ってもよいが、ワークステーション21において自動的に行うようにするのが好ましい。
【0022】
ステップ24において、電力供給支障が生じていると判定する場合には、まず、その電力供給支障が、対応する配電線A31 〜 3,B31,…に生じていると判定する。そして計画担当者がステップ25〜27のいずれかの電力供給支障解消操作を行ったのち、ステップ24において、電力供給支障の有無を再判定する。そこで、電力供給支障が生じていると判定する場合には、ステップ24で電力供給支障が生じないと判定するまで、計画担当者がステップ25〜27のいずれかの電力供給支障解消操作を行う。
【0023】
ステップ25の電力供給支障解消操作を行う場合は、まず、電力供給支障が生じると判定した配電線A31 〜 3,B31,…が負担している負荷(主として需要家α,β)の一部を、電力供給支障が生じないと想定される他の配電線A31 〜 3,B31に移行することで、電力供給支障を解消させる操作を行う。このような操作は、具体的には配電線A31 〜 3,B31および第2の配電線6の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9の開閉組み合わせの変更を遺伝的アルゴリズム(以下、GAと略す)を用いてワークステーション21でシミュレーションすることで行う。
【0024】
ステップ26の電力供給支障解消操作を行う場合は、まず、電力供給支障が生じると判定した変電所A,B,…が負担している負荷(需要家α,β)の一部を、電力供給支障が生じていないと判定した他の変電所B,A,…に移行させることで、電力供給支障を解消させる操作を行う。
【0025】
ステップ26の操作は、第3の配電線7を含む各配電線A31 〜 3,B31,6,7の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせの変更をGAによりワークステーション21でシミュレーションすることで行う。つまり、ステップ26では、ステップ25の開閉組み合わせの変更操作を、連系開閉器10をさらに加えて行い、これによって、電力供給支障が生じない他の変電所に対して負荷を移行させる。
【0026】
ステップ27の電力供給支障解消操作を行う場合は、現状の配電設備では電力供給支障を解消することは不可能であると判定し、電力供給支障が生じないように配電設備(配電線やバンク)の新設計画を立てる。この作業は、例えば計画担当者が経験に基づいて試行錯誤しながら行う。
【0027】
ステップ25〜27を経て立案した配電系統に電力供給支障が生じないことをステップ24において確認したのち、今度は、開閉器8、連系開閉器9の開閉組み合わせを、各配電線経路の配電線ロスが最小になるようにGAを用いてワークステーション21で作成する。(ステップ28) ステップ28の操作は変電所毎に行う。
【0028】
ステップ28の操作は次のことを目的にして行う。すなわち、ステップ25〜ステップ27の操作を行うことで、電力供給支障(過負荷、電圧過降下)は解消できるものの、各配電線A31 〜 3,B31に対する負荷の均等化までは達成できず、立案された配電系統において、配電線ロスが最小のものとなっているとはいえない。一般に、特高・高圧線の線路インピータンスに起因する配電線ロスは、配電ロスの中で1/4程度を占めており、柱上トランスの鉄損と並んで配電ロスの中で大きな割合を占めており、このような配電線ロスの削減を図ることは配電計画の作成において、重要なものとなっている。
【0029】
これに対して、配電系統は事故時に備えて他の配電線や変電所から電力が融通できるように網目状の構成をしているものの、通常は、系統内の各所に配設された開閉器8,連系開閉器9,10の一部を開放して電力供給源からみて放射状になる(各配電線A31 〜 3,B31が互いに分離して配電する)ように運用されている。しかし、上記ステップ25〜27を経て想定された開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせでは、各配電線A31 〜 3,B31の間を配電線ロスが最小となるように連結しているとはいえず、まだまだ、上記開閉組み合わせを選択するうえで余裕がある。
【0030】
そこで、ステップ25〜27を経て立案された配電系統(開閉器8,連系開閉器9の開閉組み合わせ)に対して、配電線経路の配電線ロスが最小限になるように再検討を加えることで、電力供給支障のない配電系統を、最も配電線ロスの少ない形態に立案し直すことができる。
【0031】
このような配電線ロスが最小となる配電系統(開閉器8,連系開閉器9の開閉組み合わせ)の立案は、全ての開閉組み合わせの中から最適な配電系統(配電線ロスの最も少ない開閉組み合わせ)を選択する必要があり、手作業による立案は不可能であった。さらには、コンピュータを用いて全ての配電系統(開閉器8,連系開閉器9の開閉組み合わせ)における配電線ロスを算出する場合には計算に長時間を要し、実用的な立案を行えるものではなかった。すなわち、一つの変電所に対して設けられる開閉器8,連系開閉器9の数は、100〜200個程度あり、このような多数の開閉器8,連系開閉器9に対して行う開閉組み合わせは、概算しただけでも(2の100乗〜2の200乗)通りとなり、たとえ、コンピュータで自動計算するとしても実用的な処理時間内で計算することは困難であった。これに対して、GAを用いてこれらの立案を行う場合には、立案に要する時間を十分実用可能な程度まで短縮化することができる。
【0032】
ステップ28において、配電線ロスの削減を図ったのち、想定し直した配電系統における電力需要の再計算を行って、各配電線A31 〜 3,B31における負荷最大値を算出してワークステーション21に記憶させる。ステップ28の操作は、ステップ23と同様、専用様式の計算表を用いて手計算により行ってもよいが、ワークステーション21において自動的に算出するのが好ましい。
【0033】
次に、ステップ28,29において、配電線ロスを削減した配電系統の再想定と、再想定した配電系統での電力需要の再計算を行ったのち、任意の配電線A31 〜 3,B31,…において断線等の配電事故が生じた場合をさらに想定し、そのような場合において、各配電線A31 〜 3,B31,…が負担している負荷(主として需要家α,β)の一部を他の配電線A31 〜 3,B31,…に移行させるシミュレーションを行う。そして、シミュレーションした事故時緊急配電系統の中から、停電区間が少なく、各配電線A31 〜 3,B31,…における電圧降下値が、予めワークステーション21に設定された下限値を下回らない事故時緊急配電系統を見つけ出して、見つけ出した事故時緊急配電系統をワークステーション21に記憶させる。(ステップ30) なお、ステップ30の操作(事故時における配電移行のシミュレーション操作)は、変電所間での負荷移行操作も含んでいる。
【0034】
ステップ30の操作は、具体的には配電線A31 〜 3,B31,第2の配電線6および第3の配電線7の経路中に設置した開閉器8,連系開閉器9,10の開閉組み合わせの変更をGAによりシミュレーションすることで行う。
【0035】
このような翌年度の配電系統計画を作成したのち、さらに翌々年度,翌々々年度といったように、一年単位の配電系統計画を同様の方法により作成する。
【0036】
次に、GAを用いたステップ25,26,28,30の操作を図3,図4を参照して詳細に説明する。ここでは、説明を容易にするために、配電系統を次のように簡略化している。すなわち、この配電系統は、図3(a)に示すように、単一のバンクC1に2本の配電線C31,C31が配設されるとともに、配電線C31,C31の間に2本の第2の配電線6,6が設けられている。そして、各配電線C31,C31には、それぞれ2つの開閉器8,8が設けられており、第2の配電線6,6にはそれぞれ連系開閉器9が設けている。開閉器8,連系開閉器9には、連番81 〜 4,91,92が付されており、以下の説明では、開閉器8,連系開閉器9をこれら連番によって区別して説明している。また、図3(a)では、説明の簡略化のために、変電所間での配電移行の入切操作を行う連系開閉器10については図示省略しているが、連系開閉器10を設けた場合においても、以下の説明が同様に当てはまるのはもちろんである。
【0037】
まず、図3(b)に示すように、所定の並列配置状態(図では81,82,91,92,83,84の配置)での開閉器81 〜 4,開閉器91,92の開閉組み合わせを、(0,1)を構成単位にした数列からなる個体Tとして規定する。なお、図3(b)では、”0”は開状態を示し、”1”は閉状態を示している。このようにして規定した個体Tの組み合わせの総数は、開閉器8,連系開閉器9の総数をMとした場合、2M個となる。図3の場合では、開閉器8,連系開閉器9の総数が6であるので、組み合わせ総数は26個となる。本実施の形態では、以上のようにして、開閉器81 〜 4,開閉器91,92の開閉組み合わせを(0,1)を構成単位にした数列からなる個体として認識することで、配電系統をGAとして取り扱うことを可能にしている。
【0038】
次に、上記のように規定した個体Tの中から、任意の個体(任意の開閉組み合わせ)を、N個だけ生成するとともに、生成した個体T1〜TNについて、それぞれ評価関数Vを計算により求める。評価関数Vは各ステップにおいて、次のようになる。すなわち、ステップ25,26では、電力供給支障(過負荷、電圧過降下の程度)が評価関数Vとなり、ステップ28では、配電線ロスが評価関数Vとなり、ステップ30では、供給支障が評価関数Vとなる。
【0039】
この選出数Nは予め設定してワークステーション21に登録しておく。
【0040】
評価関数Vを求めた選出個体T1〜TNを、図4(a)に示すように、評価関数Vに基づいて優秀な順に並び替える。図4では、個体T1(V=10)が最も優秀な個体を示し、個体TN(V=200)が最も劣等な個体を示している。そして、淘汰率Sに基づいて、並び順の上位に位置する個体T1〜TQ(評価関数Vがより高い個体)を残して、下位の個体TQ+1〜TN(評価関数Vがより低い個体)を淘汰(削除)する。淘汰率Sは、淘汰の閾値を示すものであって、全体の半分を淘汰する場合には、50%(=0.5)が淘汰率Sとなる。このように作用する淘汰率Sや評価関数Vは予めワークステーション21に設定しておく。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、淘汰されずに残った個体T1〜TQの中から親となる任意の2つの個体を選出し、選出した親個体TP(1),TP(2)それぞれを任意に設定した交叉点Iに基づいて二つに分断する。
【0042】
次に、分断された親個体TP(1)の前端部P1fと親個体TP(2)の後端部P2bとを組み合わせて子個体TK(1)を生成する。同様に、分断された親個体TP(2)の前端部P2fと親個体TP(1)の後端部P1bとを組み合わせて子個体TK(2)を生成する。
【0043】
このような子個体TK(1),TK(2)の生成操作を以下の状態となるまで継続する。すなわち、淘汰されずに残った個体T1〜TQと、作成した子個体TK(1)〜TK(R)とを合わせた個体T(以下、これら個体Tを個体T1’〜TN’と称す)の総数(T1〜TQ)+{TK(1)〜TK(R)}が、当初の個体総数Nと同じになる[(T1〜TQ)+{TK(1)〜TK(R)}=N]まで、子個体TK(1),TK(2)の生成操作を行う。
【0044】
次に、このようにして作成した個体T1’〜TN’を、上述したのと同様に、評価関数Vに基づいて優秀な順に並び替える。ここでは、上述の説明と同様、個体T1’が最も優秀な個体を示し、個体TN’が最も劣等な個体を示しているものとする。
【0045】
このとき同時に、各個体T1’〜TN’に対して設定された突然変異率Mに基づいて、突然変異が発生するかをシミュレーションする。突然変異のシミュレーションは例えば、次のようにして行われる。すなわち、任意の個体Tn’に対して、突然変異率M(ワークステーション21に設定された値)を使用し、ワークステーション21内において、0〜100までの間で任意の数を無作為に設定し(例えば乱数により設定)、設定した任意の数Zが(100−W)と100との間、すなわち、100−W≦Z≦100であれば、その個体Tnに突然変異が発生すると想定する。
【0046】
例えば、突然変異率Mを5%と設定した場合には、ワークステーション21内において、0〜100まで間で任意の数を無作為に設定し、設定した任意の数Zが95と100との間であれば(95≦Z≦100)、個体Tnに突然変異が発生すると想定する。
【0047】
そして、突然変異が発生したと想定した個体Tnに対しては、次のような操作を行うことで突然変異を生じさせる。すなわち、図4(c)に示すように、個体Tn(数列)を構成する各桁Fのうち、数字”0”が記入されている桁群F0の中から任意の桁F0’を選出して、その桁F0’に記入されている数字”0”を、数字”1”に反転させる。同様に、個体Tn(数列)を構成する各桁Fのうち、数字”1”が記入されている桁群F1の中から任意の桁F1’を選出して、その桁F1’に記入されている数字”1”を、数字”0”に反転させる。
【0048】
一般に、GA(遺伝的アルゴリズム)において突然変異を発生させる部位(桁F)は、少なくとも1ケ所だけでよい。しかしながら、本発明では、上述したように、記入されている数値が反対である2ケ所の部位(桁)において、それぞれ数値反転を生じさせることで突然変異を発生させている。これは次のような理由によっている。
【0049】
GAにおいて計算を迅速化するためには、突然変異を生じさせた個体中に劣等な個体が生じる確率をできるだけ低くするほうがよい。配電系統におけるGA上の劣等とは、配電線に停電等が生じるか、給電する電力が衝突し合うことを意味している。このような配電系統におけるGA上の劣等な個体を生じさせないためには、突然変異個体中における配電線中に電気的なループを生じさせず、しかも、配電線を放射状に構成させればよい。そこで、本願発明者は、配電系統における劣等な個体の発生をグラフ理論等により検証した。すると、開閉器8,連系開閉器9の中から単一のものを選択してその開閉状態を反転させることで発生させた突然変異個体では、必ず劣等な個体が発生することがわかった。これに対して、開状態の開閉器8,連系開閉器9の中から任意に選択したひとつを閉状態に反転させる一方、閉状態の開閉器8,連系開閉器9の中から任意に選択したひとつを開状態に反転させることで発生させた突然変異個体では、劣等な個体が発生する確率が低くなることがわかった。
【0050】
このことを鑑みて、本実施の形態では、記入されている数値が反対である2ケ所の部位(桁)において、それぞれ数値反転を生じさせて突然変異を発生させている。
【0051】
このようにして突然変異を発生させた突然変異個体を含む次世代に生き残る個体T1’〜TN’に対して、再度、上述したGAを用いたステップ25,26,28,30の操作を施して、次々世代に生き残る個体T1''〜TN''を作成する。
【0052】
このような次世代に生き残る個体T1’〜TN’,次々世代に生き残る個体T1''〜TN'',…の作成操作を所定回数(例えば5回)繰り返す。そして、最終世代に生き残った個体T1(')〜TN(')において、最も優秀な個体T1(')を取り出し、その個体T1(')をGAにより選択されたものとする。
【0053】
なお、多少の処理時間の延長が認められる場合には、GAの解の精度を高めるために次のような処理を行ってもよい。すなわち、選出する個体Tとして必要な評価関数Vの閾値VTを予め設定してワークステーション21に登録しておく。そして、次世代混合個体T1’〜TN’を作成する毎に、その世代の最優秀個体T1’の評価関数V1と上記閾値VTとを比較し、V1≧VTとなった時点で、次世代混合個体T1’〜TN’の作成を終了して、その世代の最優秀個体T1をGAにより選択されたものとする。この処理では、その世代の最優秀個体T1の評価関数V1が閾値VT以上となるまで、次世代混合個体T1’〜TN’の作成操作を継続するため、処理時間は多少、長時間化するものの、所望の評価関数VTを有する個体Tを確実に得ることができる。
【0054】
本実施の形態の配電系統計画作成方法を用いて実際の変電所において検証を行った。検証は、64ビットCPU、128MBのメモリ、512KBのキャッシュ、2.1GBのハードディスクを備えたワークステーション21を有する配電系統計画支援システムを用いて、50ケ所の変電所において行った。その結果、GAを用いた上記ステップ25,26,28,30の操作に要する時間の平均は1分程度と、処理時間が非常に短時間となることが確認できた。さらには、得られた解の精度も、ばらつきがなく安定したものであることが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、立案を短時間で行うことができるうえに、立案者の熟練度合に関係なく、高精度で均質な配電系統計画の立案を行うことができるようになった。
【0056】
また、短時間の立案時間で配電線ロスの削減をも図ることができるようになり、その分さらに立案精度を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配電系統計画作成方法を実施する配電系統計画支援システムの概要図である。
【図2】実施の形態の配電系統計画のフローチャートである。
【図3】(a)は配電線の経路図の一例を示す図であり、(b)はその経路図の例から作成される個体の構成図である。
【図4】それぞれ実施の形態の配電系統計画の作成に用いられる遺伝的アルゴリズムの説明に供する図である。
【図5】配電系統の実際例を示す図である。
【符号の説明】
A,B 変圧設備 A11 〜 3 バンク(変圧トランス設備) B11 バンク 2 FCB
A31 〜 3 配電線 B31 配電線
α 低圧需要家 β 特需需要家
6 第2の高圧線 7 第3の高圧線
8 開閉器 9 連系開閉器
10 連系開閉器 20 配電系計画支援システム
T 個体
Claims (3)
- 想定した今後の電力需要に対して既存の配電設備で対応した際に、過負荷、電圧過降下等の電力供給支障が生じるか否かを判定したうえで、前記電力供給支障が生じると判定する場合に、その電力供給支障が生じない配電系統計画を作成する配電系統作成方法であって、
前記電力供給支障が配電線経路内で生じると判定する場合には、各配電線の経路断続を行う開閉器、および同一の変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器の開閉組み合わせを、前記電力供給支障が生じないように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第1の電力供給支障解消計画作成手順と、
前記電力供給支障が変電所自体に生じると判定する場合には、各配電線の経路断続を行う開閉器、同一の変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器、および異なる変電所から給電される配電線どうしの間の連系断続を行う開閉器の開閉組み合わせを、前記電力供給支障が生じないように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第2の電力供給支障解消計画作成手順と、
前記第1,第2の電力供給支障解消計画作成手順で前記電力供給支障が解消できない場合には、前記電力供給支障が生じないように配電設備の新設計画を作成する第3の電力供給支障解消計画作成手順と、
を含むことを特徴とする配電系統計画作成方法。 - 請求項1記載の配電系統計画作成方法であって、
前記第1〜第3の電力供給支障解消計画作成手順を経たのち、前記各開閉器の開閉組み合わせを、各配電線経路の配電線ロスが最小になるように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第4の電力供給支障解消計画作成手順を更に含むことを特徴とする配電系統計画作成方法。 - 請求項1または2記載の配電系統計画作成方法であって、
第3ないしは第4の電力供給支障解消計画作成手順を経たのち、任意の配電線経路において断線等の配電事故が生じた際の前記各開閉器の開閉組み合わせを、前記電力供給支障が最小限になるように遺伝的アルゴリズムを用いて作成する第5の電力供給支障解消計画作成手順を更に含むことを特徴とする配電系統計画作成方法。
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