本出願は、1998年4月16日に米国において出願された2件の特許出願(061,796および061,797)の優先権を主張して、1999年4月15日に出願された国際出願PCT/US99/08298の日本国に移行した特許出願(特願2000−544040)から分割されたものである。
本発明の特に好ましい実施形態は、半導体レーザーのダイオードアレイによって側面ポンピングされる固体利得媒体を含む、固体レーザーを提供する。側面ポンピング型の構成を利用することは、半導体レーザーの発散する出力を、固体利得媒体内部の拡大された利得領域に結合させることを可能とし、固体レーザーにおける端面ポンピング型の構成の場合に比して、固体利得媒体に対する熱入力が良好に分散されるようにする。半導体レーザーからの高レベルのポンピング光を利得媒体に結合することを容易にするためには、固体利得媒体が、ポンピング光の波長において比較的高いレベルの吸収能を有していることが好ましい。高い吸収能を有する利得媒体を選択すれば、Nd:YAG等のより低い吸収係数を有する利得媒体を使用する場合よりも効率的に、ポンピング放射を固体レーザーに結合することが容易になる。最も好ましくは、本発明による固体レーザーは、利得媒体中を通る比較的単純なビーム経路を提供し、これにより、前述のアルコック氏特許において用いられたグレージング角の入射幾何学特性に付随する、高い回折損失を回避する。たとえば、本発明の特に好ましい実施形態は、利得媒体中を貫いてまっすぐに延びるビーム経路であって、ポンピング光が入射するところの利得媒体の表面から離れているが該表面に近いビーム経路を提供する。
固体レーザーの好ましい構成は、レーザーの動作において、最も低次の共鳴モードであり空間的に最も良好に閉じ込められた共鳴モードであるTEM00共鳴モードが選択されるように固体レーザーの共鳴モードの領域を規定する、ミラーや熱レンズ等の構成要素を設ける構成である。さらに、こうした固体レーザーの好ましい構成は、TEM00モードからの回折損失を受容可能な低いレベルまで低減させるべく、当該モードの1/e2強度レベルにより規定されるTEM00モードの端点が利得媒体の表面から十分な距離だけ離れるように、レーザーキャビティのTEM00モードを位置させる構成である。このようにして高い吸収能を有する利得媒体内においてTEM00モードを選択および位置決定することは、利得媒体中においてTEM00利得領域(TEM00 gain volume)を効率よくポンピングすることに対して難題を突きつけるものである。なぜならば、高い吸収能を有する利得媒体の効率的なポンピングは、そうした高い吸収能を有する利得媒体の表面でのみ起こることが予期されるし、また従来からそのように教示されてきたからである。この点に関しては、キンツ氏(Kintz)らに付与された米国特許第4,942,582号「単一周波数固体レーザー(Single Frequency Solid−state Laser)」、およびアルコック氏らに付与された米国特許第5,315,612号「横方向においてポンピングされる高効率の固体平板レーザー」を参照されたい。高い吸収係数を有する固体レーザーの利得媒体の具体的な特定および特性に関するこれらの特許の教示事項は、参照により本明細書に記載されているものとする。
本発明の特に好ましい実施形態は、利得媒体の吸収特性を選択することにより、高い吸収係数を有する利得媒体に対して、レーザーの利得モードを内部的に位置させている。この利得媒体の吸収特性は、部分的には利得媒体のドープレベルを選択することによって調節可能である。利得媒体の吸収に関する第二の調節手段として、ポンピング光の波長が利得媒体の吸収ピーク波長から僅かにずらされるように、すなわち「離調される」ように、該ポンピング光を選択することも望ましい。このようにしてポンピング光の波長を選択することは、利得媒体の表面近くで吸収されるポンピング光の割合を減少させ、レーザーの利得領域内において吸収されるポンピング光の割合を増加させる。ポンピング光の波長を選択することは、半導体レーザーダイオードの設計により達成され得るし、より実用的には適当な出力波長を有する市販の半導体レーザーを購入することにより達成され得る。さらには、市販の半導体レーザーからの光出力波長は、該半導体レーザーの動作温度を調節することによって、約6nmあるいはそれより広い範囲に亘って波長調整され得る。このようにしてポンピング光の波長を選択することにより、半導体レーザーからの光が利得媒体中において吸収される位置の深さを調節し、所望のレベルのポンピング光を利得媒体中の利得領域に結合させることが可能となる。このようにして、本発明による固体レーザーシステムは、半導体レーザーからの高レベルのポンピング光を、高い吸収係数を有する利得媒体の表面から離れた利得領域に結合させる。
本発明のいくつかの態様によれば、固体レーザーは高い吸収係数を有する利得媒体を利用しており、該利得媒体を半導体ダイオードレーザーアレイで側面ポンピングする。本発明の特に好ましい実施形態においては、高い吸収係数を有する利得媒体内部にあるレーザーの利得領域は、利得媒体のポンピング表面を介しての回折損失が低い回折損失となることを保証するのに十分な距離だけ、該利得媒体の表面から離れている。最も好ましくは、ポンピングレーザーは、利得媒体から離れているが近い位置に配置され、その離間間隔は、固体レーザーからのTEM00出力を最適化するように好適に選択される。本発明の発明者らによる観察は、このポンピングレーザーと利得媒体との間の最適化された離間間隔が、固体レーザーからの多重モード出力パワーを最大化するのに最適な離間間隔とは一致しないことを示唆するものであった。
本発明のこの態様の特に好ましい実施形態は、変形された突合せ結合の構成にある利得媒体を側面ポンピングする。換言すれば、ポンピングレーザーからの出力は、レンズを通過することなく利得媒体に向けられるが、ポンピングレーザーと利得媒体との間の離間間隔は、典型的な突合せ結合の離間間隔ではなく、ポンピングレーザーと利得媒体との間には従来の離間間隔よりも広い離間間隔が存在する。最も好ましくは、該離間間隔の選択は、該離間間隔の選択に先だってかつ該離間間隔の選択とは独立に利得媒体内部において固定された位置を有する、TEM00モードへの結合を最適化するように行われる。TEM00モードあるいはその他の所望のレーザーモードは、利得媒体に対するレーザーキャビティの構成および相対位置によって、利得媒体中において規定される。利得媒体中において固定された位置にレーザー利得モードが保持された状態で、続いて、主としてポンピング放射のレーザー利得モードへの結合を最適化するために、半導体レーザーが利得媒体に対して相対的に位置決めされる。これらの実施形態のさらに別の一態様として、実用性の面から、ポンピングレーザーと利得媒体との間の離間間隔が経験に基づいて最適化され、最適水準の結合が得られる態様がある。また代わりに、利得媒体への半導体レーザーのポンピング放射の結合は、半導体ポンピングレーザーと利得媒体との間において適当な光学系を用いることにより、経験的に選択された利得領域と高さ方向の長さが整合された、平行光化されたビームを用いても達成され得る。この代替構成は、製造の容易さという点で利点を有するかもしれないが、突合せ結合の構成を利用した本発明の最も好ましい実施形態ほどには、良好に最適化されないと考えられる。
本発明の特に好ましい実施形態においては、側面ポンピングされる利得媒体と側面ポンピングを行う半導体レーザーとの間にいかなる光学要素も介在しないような側面ポンピング型の構成をもって、該半導体ポンピングレーザーが該利得媒体に対して設置される。集光用光学要素あるいは平行光化用光学要素が存在しないので、半導体ポンピング光は鉛直方向に発散する。半導体ポンピング光と利得媒体との間の離間間隔が大きくされると、利得媒体中におけるポンピング光のビームの高さ(鉛直方向の広がり)が変化させられる。したがって、この単純化された構成は、半導体レーザーからの発散する出力の高さ調整の容易化を、難なく実現する。さらには、半導体レーザーと利得媒体との間の離間間隔の調節は、ポンピング放射のレーザー利得モードへの結合の水準を調節し、ポンピング放射のレーザー利得モードへの最適な結合を選択することを可能にする。加えて、上記の好ましい固体レーザーシステムの好ましい構成は、従来型の側面ポンピングされる固体レーザーの実施態様に比べて、より効率的であり、かつ、より安定性が高い。
本発明のさらに別の態様では、本発明は、高出力パワーの固体レーザーシステムを使用した光学系に関して、単純化された光学系を提供する。本発明によるレーザーシステムは、好ましくは、約25kHzかそれより大きいパルス反復周波数(PRF)を有するパルス動作で動作し、このことは、パルス状のレーザー出力が最適な形で提供されるシステムの中で該レーザーを使用することを容易にする。レーザービームは、周波数調波発生(たとえば周波数2倍あるいは3倍)結晶を有効に利用するのに十分なほどに、良好な質のビームとして発生させられる。このことは、周波数が2倍、3倍あるいは4倍された光の発生において上記の固体レーザーを使用することを可能にし、それにより、紫外領域の波長を含めた特に有用な波長を有する光出力が発生させられる。
以下、本発明の上述およびその他の態様を、図を参照しながらより詳細に説明する。以下に説明される固体レーザーは、周波数が2倍、3倍あるいは4倍され、波長が短くされたレーザー光を光出力として発生させる光学系の一部として、特に有用な応用用途を見出される。そのような光学系は、紫外域の波長において干渉性のレーザー放射を出力する能力を有し、高速試作および製造(Rapid Prototyping & Manufacturing; RPM)技術の分野を含む種々の重要な応用用途において有用であるかもしれず、なかでもとりわけステレオリソグラフィの分野において有用であるかもしれない。本発明は、本明細書に記載された光学系、および1997年1月31日出願の継続中の米国特許出願第08/792,374号(続き番号)「ダイオードによりポンピングされる4倍周波数固体レーザーを有するレーザー露出システムを利用したステレオリソグラフィにおいて、3次元物体を形成する装置および方法(Apparatus and Method for Forming Three Dimensional Objects in Stereolithography Utilizing a Laser Exposure System Having a Diode Pumped Frequency Quadrupled Solid−state Laser)」に記載されているような手法で本発明の各態様による固体レーザーを組み込んだステレオリソグラフィ装置内の光学系の使用を意図したものである。この出願は、参照によりその全内容が本明細書に記載されているものとする。上記の参照出願において特に注目されたい点は、ステレオリソグラフィ装置においてパルス型の固体レーザーを有効に利用するのに好ましい反復周波数、およびそのような応用用途におけるその他の設計上の考察である。本光学系に関して意図される別の応用用途は、1997年8月28日出願の継続中の米国特許出願第08/847,855号(続き番号)「ステレオリソグラフィを使用した3次元物体の造形においてパルス放射源を用いて、硬化可能な媒体の露出を制御する装置および方法(Apparatus and Method for Controlling Exposure of a Solidifiable Medium Using a Pulsed Radiation Source in Building a Three−Dimensional Object Using Stereolithography)」に記載のステレオリソグラフィ装置内における用途である。この出願は、参照によりその全内容が本明細書に記載されているものとする。ステレオリソグラフィの方法および装置は、その他にも様々な米国特許に記載されており、それらの中には、(1)ハル氏(Hull)に付与された米国特許第4,575,330号;(2)ボーギッチ氏(Vorgitch)に付与された米国特許第5,182,715号;および(3)ハル氏に付与された米国特許第5,184,307号が含まれる。上記の各特許は、参照によりその全内容が本明細書に記載されているものとする。上記の特許出願および特許に記載されているようなステレオリソグラフィシステムにおける用途において特に有用である、以下に説明される実施形態においては、ステレオリソグラフィ装置へのレーザービーム入力として、真円形状から僅かにずれた離心率を有するレーザービーム入力が提供されることが望ましい。たとえば、レーザーシステムへの入力は、1.3未満の離心率を有していることが望ましく、さらにその離心率は、1.1未満あるいはおよそ1.1に等しいことがより好ましい。最も典型的には、ステレオリソグラフィ装置への入力は、周波数が3倍あるいは4倍されたレーザービームである。
本発明の実施形態による全体的な光学系の設計は、固体レーザーの好ましい態様および利点に関する説明のための重要な背景知識を提供するものであるので、まずその光学系全体の、より関連性が深く特徴的な側面を説明する。この光学系全体の概要を説明した後に、その光学系全体に関する説明において提供された骨子の範囲内で、固体レーザーの設計に関するその他のより詳細な側面を説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態による、固体レーザーを含む光学系全体を図示した図である。まず留意すべきことは、図1に図示された全体的な光学系は、該光学系内の光路沿いの異なる点において、3種類の異なる波長を発生させるということであり、ここで第二番目および第三番目の波長は、第一番目の波長の調波波長である。固体レーザー10は、レーザー光の基本波長を出力し、この基本波長は、当該光学系内において、第二番目および第三番目の波長(すなわち、周波数が2倍、3倍あるいは4倍されたレーザービーム)を規定する。この固体レーザー10は、近赤外領域において約1064nmの波長を有する基本波長レーザービームを出力することが多い。この1064nmのレーザー線は、当該技術分野においてはよく知られている様々な理由から有用なものであり、それらの理由には、固体利得媒体中においてドープされたネオジムイオンを励起することによりこのレーザー線が発生させられることや、このレーザー線と半導体レーザーダイオードによるポンピングとの互換性などが含まれる。当該光学系内における調波発生結晶の作用により、周波数が2倍された532nmのレーザービームが第二調波発生結晶を用いて発生させされ、さらに、全体的な光学系からの所望の最終出力として周波数が3倍された355nmのレーザービームが発生させられる。この355nmのレーザービームは基本レーザービームの3倍周波数に相当するため、周波数3倍結晶を指して第三調波発生結晶と呼ぶことにする。本発明の別の実施形態においては、レーザーシステムの出力として周波数が4倍されたレーザービームを発生させるために、第一の周波数2倍結晶の後に第二の周波数2倍結晶が配されてもよい。
基本波長のレーザービームは、固体レーザー10により出力された後、まず半波長板12を通過させられる。この半波長板12は、基本となる出力ビームの偏光方向を90°回転させる。光路上のこの箇所に半波長板12を組み込むのは、主として、全体的な光学系内における周波数変換要素の配置において便利だからであり、とりわけ、第二調波発生結晶に向かう光の適当な偏光方向を得るために便利だからである。ここで、他の調波結晶には他の偏光方向が充てられ得る。本発明の特に好ましい実施形態においては、基本波長のレーザービームは水平方向に直線偏光されている(図1中の各要素が水平面上に配置されていて、紙面に垂直な方向が鉛直方向であると想定している)。半波長板12は、偏光方向を鉛直方向に回転させる。この偏光方向が回転されたビームは、次に一連の方向変換ミラー14および16によって反射される。これらの方向変換ミラー14および16は、光学系全体の占めるフットプリントをよりコンパクトにし、基本となるレーザービームの位置および方向の調節を可能とするために、光路を方向変換する(すなわち折り曲げる)ものである。第二番目の方向変換ミラー16により反射されたレーザービームは、続いて、周波数を2倍にする操作を実行する一連の光学要素に向かう。これらの一連の光学要素には、第一レンズ18、第二調波発生結晶20および第二レンズ22が含まれる。第一レンズ18は、固体レーザー10の出力カプラーから約25cmの距離だけ離れており、第一レンズの位置における基本レーザービームのビーム径(ビームウエストの半径の2倍、すなわち2w0)は、約2.5mmである。
第一レンズ18は、基本波長のレーザービームを第二調波発生結晶20上に集光させる。この第二調波発生結晶20は、簡単に言えば、基本波長光の2個の光子のエネルギーを加算して、基本波長のレーザービームを構成する各光子に比して2倍のエネルギーを有する1個の光子を発生させるものである。基本波長のレーザービーム中の2個の光子を結合することにより発生させられた1個の光子は、基本の光子に比して2倍のエネルギーを有し、基本の光子に比して2倍の周波数を有し、また基本のレーザービームの光子に比して1/2倍の波長を有する。この周波数を2倍にする処理は、第二調波発生結晶20内において大規模に行われ、2倍された周波数、すなわち約532nmの波長を有する第二のレーザービーム(すなわち第二調波)が発生させられる。このような調波発生の処理は、入射レーザービームが適当に強い瞬時パワーを有している限りにおいて、様々な異なる非線形結晶を使用したものが既知であり可能である。
本発明の特に好ましい実施形態は、図1の光学系内において、最初の周波数2倍操作およびその後の周波数3倍操作(あるいは周波数4倍操作)の双方に関し、リチウムトリボレート(LiB3O5;以下、「LBO」)を調波発生結晶として用いる実施形態である。周波数2倍結晶としてのLBOの製造および特徴については、米国特許第4,826,283号「LiB3O5結晶およびその非線形型光学装置(LiB3O5 Crystal and its Nonlinear Optical Devices)」に記載されている。この特許は、参照によりその全内容が本明細書に記載されているものとする。今日、LBO調波発生結晶は市販されており、その周波数2倍、3倍および4倍操作における応用法は、当業者にはよく理解されている。連続して配された同一の複数の結晶を、第二調波発生さらには第三調波発生に使用することに関する議論は、米国特許第4,346,314号「非線形光学要素を用いた、高パワーに有効な、干渉性放射の周波数変換(High Power Efficient Frequency Conversion of Coherent Radiation with Nonlinear Optical Elements)」、および米国特許第4,510,402号「光学的調波発生器(Optical Harmonic Generator)」に記載されている。2個の結晶を用いた第三調波発生に関する幾何学特性および位相整合についての、上記の各特許の教示事項は、参照により本明細書に記載されているものとする。上記の2つの参照特許に記載されている周波数3倍処理の応用手法と、図1に図示されている系との主たる相違点は、図1に図示された本発明の特に好ましい実施形態では、第二調波発生結晶について軽負担型の位相整合を利用している点である。軽負担型の位相整合とは、第一のLBO結晶中における第二調波発生での位相整合条件を満たすために、主として温度を利用する位相整合のことをいう。図1の実施形態のこの特徴は、周波数2倍結晶の結晶軸と入力の基本波長レーザービームの伝播方向との間において慎重な角度アラインメントをとらなくてはならない、より従来型の処理とは、対照的なものである。
第二のLBO結晶中において基本波長と2倍波長とが高水準で重複することを助けるために、軽負担型の位相整合条件は、第一のLBO結晶への基本波長レーザービームの入力に対して好適に採用される。軽負担型の位相整合条件の利用はまた、実際の光学系内の第二のLBO結晶中において、基本周波数と2倍周波数との間におけるずれの度合を最小限に留める。図示された実施形態においては、第二調波発生結晶20を約148℃の温度に保つことで、軽負担型の位相整合条件が満たされている。鉛直方向に偏光された基本レーザービームが第二調波発生結晶に供給されるような好ましい実施形態においては、第二調波発生結晶20からの2倍周波数の光出力は水平方向に偏光されている。第二調波発生結晶を通過した基本波長のレーザービームの一部は、鉛直方向に偏光されたままの状態にある。
本発明の好ましい実施形態においては、基本波長のレーザービームの一部のみが2倍周波数のレーザービームに変換される。これは、第三調波発生結晶により達成される周波数加算操作は、周波数が3倍された光子を発生させるに際し、基本波長レーザービームの光子と周波数が2倍されたレーザービームの光子との両方を必要とするためである。たとえば、第三調波発生結晶により行われる混合操作へ入力するために、基本波長の光子と2倍周波数の光子とを、ほぼ等しい割合で取得することが望ましいかもしれない。単純に説明すると、上記の割合は、第二調波発生結晶20に入力された基本波長レーザービームのエネルギーの約2/3が、2倍周波数の光に変換されることを要する。そのため、基本波長のレーザービームは、第一レンズ18により第二調波発生結晶20上に集光させられる。基本波長(1064nm)のレーザービームの一部は、2倍周波数(波長532nm)のレーザービームに変換され、その上で基本のレーザービームと2倍周波数のレーザービームとの双方が、第二調波発生結晶から出力される。この2つの出力ビームは、第二レンズ22によって平行光化され、共に第三調波発生結晶へと導かれる。レーザービームの平行光化を実行する便宜のため、第一レンズ18と第二レンズ22とは、同一の焦点距離(たとえばf=25mm)を有するように選択されることが望ましい。これらのレンズの各々は、第一レンズおよび第二レンズ各々の焦点距離に等しい距離だけ、第二調波発生結晶の中心から離れて配される。図示されている系においては、このようなレンズのアセンブリは、実際には第一レンズに入射させられたレーザービームの僅かな発散を再生するが、それでも平行光化は可能であり、また状況によってはこうした状態が望ましい場合もある。続いて、基本波長のレーザービームの残部、および2倍周波数のレーザービームは、第三レンズ24、第三調波発生結晶26として機能する第二のLBO結晶、および第四レンズ28から成る系に導かれる。第三調波発生結晶26は、周波数加算操作により、基本波長光と、先に周波数が2倍された光とを結合する。基本波長と第二調波の波長との周波数加算処理は、固体レーザー10により出力された基本波長の第三調波にあたる波長を有する、3倍周波数光を発生させる。本発明の特に好ましい実施形態においては、第三調波発生結晶26により発生させられた、紫外光にあたる335nmの光は、鉛直方向に直線偏光されている。いくつかの好ましい実施形態においては、第二のLBO結晶は、周囲温度よりも高い温度(たとえば50℃)に保たれるべく設計されていてもよい。
一般的に、第三調波発生結晶からの光出力は、3種類の波長の光、すなわち、約1064nmの波長を有する基本周波数の光、約532nmの波長を有する2倍周波数の光、および約355nmの波長を有する3倍周波数の光を、全て含んでいる。3種類の出力ビームは全て、第四レンズ28により平行光化され、出力ビームスプリッター(調波分離素子ともいう)30に導かれる。レーザービームの平行光化を実行する便宜のため、第三レンズ24と第四レンズ28とは、同一の焦点距離(たとえばf=50mm)を有するように選択されることが望ましい。これらのレンズの各々は、第三レンズおよび第四レンズ各々の焦点距離に等しい距離だけ、第三調波発生結晶の中心から離れて配される。ここでも、図示されている実施形態においては、第四レンズからの出力は、完全に平行光化されたビームの組ではなく、僅かに発散するレーザービームの組である。出力ビームスプリッター30は、周波数が3倍された波長355nmの光32を本光学系の最も望ましい出力として選択してその方向を変え、基本周波数および2倍周波数のビームを光学系外に排出するものである。適当な出力ビームスプリッター(調波分離素子ともいう)は、市販されており入手可能である。
別の実施形態においては、図1の実施形態中の第二のLBO結晶は、周波数が4倍された第四調波のレーザービームを発生させるために使用されてもよい。一般的に、図1のシステムに提供される光の基本波長によっては、このような系が、さらに短い波長の光を発生させるのに役立つ。3倍出力と4倍出力のどちらが望ましいかに関係なく、図1に図示された光学系には、本発明の特に好ましい態様による固体レーザーが好適に組み込まれ得る。以下の議論は本発明のそのような態様を特に強調して説明するものであり、本発明による固体レーザーの特徴をより詳しく説明するもである。
好ましいレーザーシステムの性能上の特徴は、好ましい固体利得媒体としてNd:YVO4(ネオジム‐イットリウム‐バナデート)を選択することと密接に関連している。Nd:YVO4は、ポンピング光を効率よく出力レーザー光に変換する能力を有する、高利得の材料である。Nd:YVO4は、高い吸収係数を有しており、したがって、Nd:YAGを利得媒体として使用したもの等の固体レーザーにおいて典型的である大きさに比べて遥かに小さな大きさの部分中において、レーザーダイオードからのポンピング放射を吸収する。この利得媒体およびその他の高吸収係数材料が有する特に重要な利点は、参照により内容が本明細書に記載されている前出の1997年1月31日出願の米国特許出願第08/792,374号(続き番号)、および参照により内容が本明細書に記載されている高吸収係数利得媒体に関する前出の各参照物件に記載されている。比較的高い吸収係数を有する他の利得媒体も使用可能であるが、Nd:YVO4は、高い誘導放射係数を有し、かついくつかの特定の重要な励起状態において短いライフタイムを有するという利点を持つ。利得媒体としてNd:YVO4を使用することは、本固体レーザーの好ましい実施形態を用いたレーザーシステムのような、25kHzより大、あるいはより大きい周波数より大であるパルス反復周波数を有するパルス型のレーザーシステムに対しては、即効的かつ実用的な利点を有する。本発明の特に好ましい実施形態は、全体としては直方形プリズム状の形状である利得媒体であって、比較的小さい断面寸法(約1.8mm×2mm)を有する利得媒体を備えた、側面ポンピング型の固体レーザーを提供する。
本発明の各態様の議論のために、ポンピング波長において、主に側面ポンピングされた固体利得媒体の横断寸法よりも短い距離に亘って吸収が起こるような吸収係数を有する固体利得媒体を考慮して、ある高い吸収係数が規定される。好ましくは、利得媒体の吸収係数は、該利得媒体中におけるポンピング放射の強度分布の1/e点を、約800μmよりも小さくするような吸収係数である。本発明のさらに別の態様では、Nd:YVO4等の材料を利得媒体として使用し、ネオジムのドープ濃度を変化させて所望の吸収特性および励起特性を得ることにより、該Nd:YVO4利得媒体の吸収特性を調整する。本発明による固体レーザーの好ましい実施形態は、典型的には、およそ0.5−1.5%の範囲内にあるネオジムドープ濃度を使用しており、より好ましくはおよそ0.6−1.2%の範囲内、最も好ましくはおよそ0.9−1.1%の範囲内にあるネオジムドープ濃度を使用している。
ドープ濃度は、好ましくは、ピーク波長における吸収を所望の値よりも高い値に設定するものである。この値、およびポンピング波長の調整により、所望の波長範囲内における吸収が設定され、この所望の波長範囲とは200−2000μmの範囲であり、より好ましくは400−1000μmの範囲内であり、最も好ましくは600−800μmの範囲内である(1/e点において)。
本発明の好ましい実施形態による固体利得媒体中における適当なドープ濃度の選択は、所望のレベルのポンピング光を所望のレーザー利得モードに結合させることを容易にするようなやり方で、該利得媒体の吸収特性を調整する。この固体利得媒体は、バナデートあるいはその他のホスト材料中に存在するネオジムあるいはその他のドープ材料を最も効率よくポンピングする光の波長に相当する特定波長近くの、ある波長範囲に亘って、本質的に高い吸収係数を有するNd:YVO4のような材料であることが望ましい。そのような高い吸収係数を有する利得媒体を選択することは、効率的な側面ポンピングを容易にする。実際のレーザーシステムにおいて効率的な側面ポンピングを達成するためには、利得領域に達するのに十分な深さまで浸透し、かつ該利得領域中において強く吸収されるようなポンピング放射をもって、利得媒体をポンピングすることが極めて望ましい。本発明の好ましい実施形態においては、半導体ポンピングレーザーから出力されるポンピング光の波長の変化に対して極めて敏感な吸収係数を有するような利得媒体を選択することによって、上記の要請が達成される。そのような実施形態においては、ポンピングレーザーの出力波長の調整は、ポンピング放射が主として吸収される位置の深さを変化させるものである。
図2は、好ましい半導体ダイオードポンピングレーザーの動作温度を変えることによって発生される光の異なる波長をもってポンピングを行うことにより、Nd:YVO4の利得媒体において可能となる吸収係数調整の範囲を示した図である。図2は、グレッグ・ミゼル氏(Greg Mizell)らの論文「希土類元素をドープされたYVO4単結晶の成長、処理および試験における近年の発展(Recent Developments in the Growth, Processing and Testing of Rare Earth Doped YVO4 Single Crystals)」(SPIE 2115巻、可視および紫外レーザー(Visible and UV Lasers)、pp.52−59、1994年)から抜粋したものである。詳細には、図2は、ある1つの濃度でネオジムをドープされたNd:YVO4の吸収係数の実験による変化を、790から850nmに亘るポンピング光の波長に対して概略的に図示したものである。Nd:YVO4利得媒体のc軸に平行に向けられた光と、Nd:YVO4利得媒体のc軸に垂直に向けられた光とでは、吸収係数とポンピング光の波長との間の関係として、異なる関係が観測されている。異なるネオジム濃度に対しては、異なる関係が知られている。ポンピング光の波長範囲(±3nm)は、典型的には市販の半導体レーザーを使用して選択することが可能であり、その選択は、単に該半導体レーザーが搭載されたペルティエ冷却器の冷却パワーの調節を通じて該レーザーの動作温度を変化させることによってなされる。ここで、Nd:YAGを含む他の利得媒体もまた、ポンピング光の波長の変化に対して、吸収係数の変化を示すことに注意されたい。
Nd:YVO4の吸収係数はより広いポンピング光波長範囲に亘らないと変化しないため、上記の他の利得媒体のほとんどと比較しても、Nd:YVO4は利得媒体として特に好ましい。Nd:YVO4の吸収係数の、ポンピング光の波長に対する依存性が比較的低いことは、利得媒体としてのNd:YVO4において、Nd:YAG等の場合よりも精密な所望吸収係数の選択を可能とするものであり、また、通常の動作において予期される半導体レーザーの温度における微小変化の下での、より安定な固体レーザー出力を可能とするものである。ここで、好ましいNd:YVO4利得媒体中のネオジム濃度が変化させられると、ポンピング波長対吸収係数の曲線の形状と、該曲線のピークとの双方が変化することに注意されたい。所望の量丁度のドープ量をもって、繰返しNd:YVO4結晶を作製することは、極めて困難である。したがって、本発明の好ましい実施形態は、ある特定の固体レーザーのための動作条件を確立するに際し、ある特定のNd:YVO4結晶中においてポンピング光の所望の分布を実現させるために、ある特定の半導体ポンピングレーザーの動作温度を変化させることにより調整を行う。勿論、レーザーに対して最大限のパワー出力あるいは光変換効率が要求されていない場合には、この最適化は不必要であるかもしれず、また、利得媒体の組成に関し精密な制御および選択が可能となれば、該最適化は必要なくなるかもしれない。
Nd:YVO4を固体レーザーの利得媒体として使用する際には、Nd:YVO4およびその他の利得媒体の熱レンズ効果特性が、ポンピング光分布の選択およびレーザーキャビティの設計に組み入れられなくてはならない。米国特許第5,577,060号「ダイオードによりポンピングされる、強い熱集光を示す結晶を使用したレーザー(Diode Pumped Laser Using Crystals with Strong Thermal Focussing)」、および米国特許第5,651,020号「ダイオードによりポンピングされる共焦点対共焦点レーザー(Confocal−to−Confocal Diode Pumped Laser)」に記載されているように、典型的な高ポンピング強度の動作条件の下では、Nd:YVO4は強い熱レンズ効果を示す。上記の各特許は、参照によりその内容が本明細書に記載されているものとする。「熱レンズ効果」という用語は、固体レーザーの技術分野において使用されている用語であり、固体利得媒体の光学的特性が有する強い温度依存性により、該固体利得媒体中に強力なレンズが形成される現象を表す用語である。熱レンズは、伝統的なレンズと同様の特性を有するが、温度依存性の点、および熱レンズは一般的により分布的な性質を有している点が異なっている。本発明の好ましい実施形態においては、高いポンピング強度の下でNd:YVO4内に形成される熱レンズの効果は、共鳴キャビティ中にある他の集光用光学要素(すなわちミラーあるいはレンズ)のどれよりも強い。たとえば、今議論されているレーザーシステムの実施形態においては、熱レンズは、最適動作温度およびパワーの下において、約4から5cm程度の焦点距離を有するのが典型である。この熱レンズの集光力は、該熱レンズを、光学的キャビティ中の他のいかなる要素よりも強力な集光要素とならしめるものである。以下の説明においてさらに明らかとされるように、本発明の好ましい実施形態は、通常の動作状態下でNd:YVO4中において形成される強力な熱レンズを利用して、固体レーザーのキャビティを安定化させるものである。したがって、Nd:YVO4の熱レンズは、固体レーザーの共鳴キャビティの設計において支配的な要素である。
Nd:YVO4利得媒体の最適な吸収係数の確立、したがってNd:YVO4中の最適なポンピング放射分布の確立においても、熱レンズは検討事項となり得る。本発明の好ましい実施形態は、典型的には、ポンピング光がNd:YVO4結晶のa軸に平行な方向に沿ってNd:YVO4利得媒体に向かうように該Nd:YVO4結晶を配置し、またNd:YVO4結晶の反対側のa軸面に接する少なくとも1個の固体冷却器(たとえばペルティエ冷却器あるいは熱電冷却器)を設けるものである。Nd:YVO4は、Nd:YVO4を通常の動作温度に熱することによりその結晶中に強い複屈折性が確立されるような、温度に依存した複屈折性を示す。この温度に依存した複屈折性は、c軸に平行な方向よりもa軸に平行な方向により強く集束を行うような、大きく変形した(歪んだ)熱レンズを生じさせることが報告されている。したがって、最適な吸収係数およびNd:YVO4利得媒体中におけるポンピング光の最適な分布は、この変形した熱レンズの効果を考慮に入れたものでなくてはならない。
熱レンズの形状および集光力は、算出が非常に難しい。その理由は、少なくとも特に、システム中の支配的な効果の1つとして、レーザー光そのものが利得媒体からエネルギーを除去する有効な手段となっていることが挙げられるからである。したがって、全体的なエネルギー平衡の式は、非線形の式となる。好ましい固体レーザーシステムのこうした特徴は、実用においては、ある特定のNd:YVO4結晶、ある特定の半導体レーザー、ある好ましい共鳴キャビティの幾何学特性および熱浴等を有する、ある特定のレーザーシステムに対し、該特定のレーザーシステムについて最適化された動作条件が経験的に決定されなくてはならないことを示唆するものである。この最適化のいくつかの特定の特徴は、当業者においては明らかかつ既知である。本発明による固体レーザーシステムの最適化に関する他のいくつかの特徴は、従来的な事項とは全く異なるものであり、そうした特徴については以下に詳細に説明される。各々の特定のレーザーについての最適化された動作条件は、同様の構造であり本質的には同一の構造である他の固体レーザーとは異なるものになると推定される。
本発明の固体レーザーの好ましい実施形態の構成および最適化に関しては、図3に一部が図示されているような現在において好ましい構成についての、以下の説明によってよりよく理解されよう。既に述べた理由によりNd:YVO4結晶であることが好ましい固体利得媒体40が、高反射能ミラー42および出力カップリングミラー44により規定される共鳴キャビティ内に設置されている。好ましくは、Nd:YVO4結晶を所望の動作温度に保つため、該Nd:YVO4結晶は、大容量の熱電(ペルティエ)冷却器と熱接触した状態で搭載される。半導体レーザーがNd:YVO4結晶を側面ポンピングするために配置されるが、この半導体レーザーは、好ましくは、ポンピングレーザーについて選択された動作温度を維持するために、独立した熱電冷却器上に配置される。こうした構成の半導体ダイオードレーザーアレイは、多くの業者により市販されており入手可能である。半導体レーザーの動作温度を調節することは、本発明による固体レーザーの最適化において望ましいようなやり方で、レーザーの出力波長を変化させる。上記のキャビティ内にはさらに、Qスイッチ48が図示されている。このQスイッチ48は、レーザーからの高レベルの瞬時出力パワーを達成するために好ましい技術である固体レーザーのパルス型動作において、特に好ましい要素である。
様々なタイプの半導体レーザーが入手可能であり、かつ本発明の特定の態様に従って使用され得る。固体レーザーから最も高いレベルの出力を得るためには、ポンピングレーザーとして高出力パワーの半導体レーザーを使用することが好ましい。本発明によると、現在において最高の出力を有する半導体レーザーを有利に活かすためには、側面ポンピング型の構成がとりわけ好ましい。ここで、好ましい半導体ポンピングレーザーは、弱く結合された独立複数のレーザーダイオード発光子が半導体レーザー装置の長さ方向に沿って配されて成るアレイから、高い出力パワーを供給する。図示されている実施形態は、ポンピングレーザー46としてSDL3470を使用している。このSDL3470は、カリフォルニア州サンホセのスペクトラ・ダイオード・ラボラトリーズ(Spectra Diode Laboratories)から市販されている製品であり、全体で20ワットのCW(連続波)出力パワーを有する、1cmの長板形状の上に一様に分布させられた60個の発光子を提供するものである。各発光子は独立したダイオードであって、約4μmの幅と約100μmの高さを有し、アレイ内において、当該各発光子の幅方向に延びる直線上に沿って離れて配されている。各発光子は、約15°の角度をもって広がる(FWHM)ようにして水平方向に(幅方向に)発散し、かつ約35°の角度をもって広がる(FWHM)ようにして鉛直方向に(高さ方向に)大きく発散する出力を発生させる。発光子のアレイは、固体レーザー結晶に面しており、個々の発光子からの水平方向に発散する出力は結合して、水平方向に沿って略一様の強度を有するバー状の光を発生させる。固体レーザー結晶は、約2mmである高さと、約1.8mmである幅41(すなわち、ポンピングレーザーの方向から見れば「深さ」)を有している。固体レーザー結晶の端面43および45を介した回折損失により著しい量のポンピング放射が失われることがないように、固体レーザー結晶は、半導体ダイオードレーザーアレイの長さよりも十分に長くされることが好ましい。たとえば、好ましいSDL3470ダイオードレーザーアレイによって発生させられる1cmの長板状のポンピング放射と組み合わせて使用される場合には、利得媒体40は、約1.1から1.4cmの長さ47を有するように選択され得る。半導体レーザーに近い方の固体利得媒体表面に、半導体ポンピングレーザーの出力波長に対して有効であるような反射防止コーティングを施して、半導体ポンピング光の利得媒体への結合を改善することが望ましいかもしれない。
固体レーザー結晶は、共同で共鳴キャビティの範囲を規定する2つのミラー42および44の間に配置されていることが好ましい。動作中における固体レーザー結晶の熱レンズ効果の方が、レーザー利得モードの形状および領域を決定する遥かに決定的な要素ではあるが、典型的には共鳴キャビティを範囲規定するために用いられるこれらのミラーも、部分的には共鳴モードの形状を決定する。共鳴キャビティの1つの端面は、略平坦な高反射能ミラー42により規定される。高反射能ミラーの背面の曲がりは典型的には重要な検討事項ではないが、原始的な形態のモード形状分析を可能とする本発明の態様のためには、平坦/平坦型の高反射能ミラー、すなわち鏡面側と背面側の双方において平坦である高反射能ミラーを選択することが好ましい。キャビティに面している側の高反射能ミラー42の表面が平坦である場合、すなわち該ミラーが無限大の曲率半径を有している場合もあり、あるいは、高反射能ミラー42が約1m(R=1)かそれより大であるような非常に大きい曲率半径(キャビティの長さに比して非常に大きい)を有している場合もある。一般的に、高反射能ミラーは、約1064nmの基本レーザー利得波長において、表面に入射する光の99%以上を反射するようなものが選択される。ほとんどの状況において、高反射能ミラー42は、1064nmの波長において極めて高い反射能を示すように設計された多層絶縁コーティングを有している。図示されている実施形態においては、高反射能ミラー42は無限大の曲率半径を有しており、該高反射能ミラー42の内側表面はレーザー結晶40の中心から約3.0cm離れている。出力カプラーは、上記の共鳴キャビティのもう一方の端面を規定する。出力カプラー44は、レーザー光を共鳴キャビティから出射させるポートであり、したがって高反射能ミラーよりも低い反射率を有するように作製されている。出力カプラー44の反射率は、所望の最低次モード(TEM00モード)におけるレーザーのパワー出力を最適化するように選択されることが好ましい。図示されている構造を変形した構造においては、より高いあるいはより低い反射率が好ましいかもしれないが、図示されている実施形態においては、出力カプラーは約70−75%の反射率を有するように選択されている。図3のレーザーの実施形態においては、市販されている絶縁コーティング付きの高パワーレーザー用ミラーであって、所望の反射特性を提供するようなミラーが、高反射能ミラーおよび出力カプラーの双方に使用されている。一般的には、出力カプラーもまた、その内側表面(すなわち共鳴キャビティに面する表面)において、約1から5m、あるいはそれより大である大きな曲率半径を有している。本発明の現在において好ましい実施形態では、出力カプラーの外側表面は、無限大の曲率半径を有するように選択されている(すなわち、平坦な外側表面)。平坦な外側表面を使用することにより、僅かに発散する出力ビームが固体レーザーから発生させられる。この僅かに発散する出力ビームは、一般的には図1に示すシステムの全体構成において有用なものであり、ここで基本レーザービームは、基本ビームである赤外ビームを最初の調波発生結晶の表面上に集光させる第一レンズの表面において、約2.5mmの直径(2w0)を有している。本発明の別の特定の実施形態においては、上記の出力カプラーは、同様の透過率を有するような平坦/平坦型の出力カプラーであってもよい。そのようなシステムのある特定の例を、以下に説明する。
レーザーキャビティ内の共鳴レーザーモードがレーザー結晶に対して対称形となるように、出力カプラー44の反射能を有する内側表面は、レーザー結晶から約6cmの距離だけ離れている。図示されている離間間隔は、1個あるいはそれより多くの追加の光学要素を設置するのに十分な空間を、キャビティ内に残すような間隔である。最も好ましくは、Qスイッチ48が、出力カプラー44と利得媒体40との間に設置される。高レベルの利得を有する好ましいNd:YVO4利得媒体においては、該利得媒体中に所望レベルのポンピングエネルギーが蓄積される前に、レーザーの発射が起こる。低レベルのポンピング放射に対してレーザーの発射を行う上記の利得媒体の傾向は、固体レーザーから高レベルの出力強度を得るという最終的な目標に逆行するものである。そのため、Qスイッチが固体レーザーの共鳴キャビティ内に配置され、該キャビティ内においてスイッチ可能な損失として作用する。このQスイッチは、各周期的な期間中のある所望箇所において該Qスイッチをキャビティ内で損失素子として作用させ、レーザー作用を妨害させるようなデューティ周期により動作する。Qスイッチが共鳴キャビティ内の損失素子として活性化されている期間中においては、レーザー作用は生じない。Qスイッチが損失素子として活性化されている間は、利得媒体中の反転分布数が、ポンピングダイオードのポンピング作用によってより急速に増加し、また、共鳴キャビティ中にQスイッチあるいはその他の損失源が存在していない場合に比してより高い水準まで増加する。Qスイッチが損失素子として活性化されていない時には、利得媒体中に蓄積されたエネルギーを放出すべくレーザー発射動作が高速で行われ、持続時間が短く瞬時強度が強いレーザーパルスが発生させられる。
Qスイッチを含むレーザーにおいては、Qスイッチが損失素子として動作しない状態、あるいは少なくともQスイッチが利得キャビティ中に比較的低いレベルの損失しかもたらさないような状態に、Qスイッチを切り換えることにより、レーザーの動作が開始される。比較的低損失の状態にQスイッチが切り換えられると、共鳴キャビティ中の損失レベルは、レーザーの利得およびレーザーの動作が高速に進むような損失レベルにまで、好適に低減させられる。このキャビティ内の損失が低減させられている期間中は、利得媒体中の反転準位からエネルギーが急速に引き出され、レーザー動作が開始され、高レベルの瞬時パワーおよび強い強度を特徴とする出力光が発生させられる。Qスイッチの使用によって得られたより高いレベルのエネルギー蓄積は、レーザーの利得および出力強度を減少させながら急速に消費される。そのため、Qスイッチはごく短い期間しか低損失状態に置かれず、その後は、該Qスイッチが再び高損失素子として活性化され、利得媒体中において再びポンピングエネルギーの蓄積が開始される。図示されている実施形態においては、Qスイッチは、結晶上に搭載された圧電素子により駆動されるTeO2等の音響光学素子であることが望ましい。そのような装置は市販されており入手可能である。Qスイッチ自体は、約1.0cmの長さを有しており、該Qスイッチの中心は、約1cmの距離だけ出力カプラーの前表面から離れている。
適当なパルス反復周波数(PRF)の設定は、固体レーザーの所望の出力強度と、特に好ましい利得媒体中における関連する励起状態のライフタイム等の、利得媒体の特性とを、考慮に入れたものとされ得る。本発明による固体レーザーの特に好ましい実施形態は、約25kHzのパルス反復周波数(PRF)を使用したものである。25kHzのPRFは、25kHzの速度で高損失状態と低損失状態の間で切換えを行い、固体レーザーの出力パルスを発生させる。この25kHzという速度は、レーザーの性能および特性から見て、ほぼ最適に近い速度である。一方、ある特定の特性および関連性を有する全体的なシステム中において図3の固体レーザーが使用される場合には、パルス型レーザーシステムの所望の動作特性を確立するに際し、該全体的なシステムの特性および関連性の方が重要視されることもある。たとえば、図3のレーザーが図1に図示されたような調波発生システムに組み込まれ、そのシステム全体がステレオリソグラフィ装置内で使用される場合には、該ステレオリソグラフィ装置の性能に関する要請が、実動のパルス反復周波数を確立する際における最も重要な検討事項となり得る。本発明のいくつかの実施形態においては、図3の固体レーザーが約22.2kHzのPRFで動作させられることが好ましく、別の特に好ましいいくつかの実施形態においては、約40kHzのPRFで動作させられることが好ましい。これらの周波数は、本発明の好ましい実施形態が標的とする応用用途である、いくつかのステレオリソグラフィ装置によく適した周波数である。
半導体ポンピングレーザー46と利得媒体40との間における好ましい位置関係は、本発明のいくつかの態様にとっては重要な検討事項である。しかしながら、この関係に関する議論を始めるにあたっては、まず固体利得媒体中におけるレーザー利得モードの位置決めを議論する必要がある。図4を参照すると、利得媒体40と半導体レーザー46の双方が、立面断面図で示されている。この図においては、最も低次のレーザーTEM00モード50が概略的に断面で示されており、ここで図4に示されているのは、該モード中の強度分布における1/e2レベルの線を表す水準線50である。Nd:YVO4利得媒体40の熱レンズ効果により発生させられる熱的複屈折効果のために、モード50は水平方向軸に沿って圧縮されるであろうと主張する研究者もいる。本発明の発明者らは、報告にかかるようなレーザーモードの楕円性を観測してはいないが、レーザーモードが真円形状を有するであろうと結論付ける根拠はほとんど存在しないことを示唆するために、レーザーモード50は、真円形ではない水準線を有するように描かれている。高レベルのポンピング放射を好ましい高吸収能Nd:YVO4利得媒体に結合させるためには、利得媒体40の表面であってポンピング放射が供給される表面上、あるいは該表面の近くに共鳴モード50が位置させられるように、キャビティ用ミラー42および44(図3)の利得媒体に対する相対的配置を行うことが望ましい。
しかし一方では、共鳴モード50の位置を利得結晶の各表面(利得媒体にポンピング放射が供給される表面を含む)に近すぎる位置とさせるようなキャビティ用ミラー42および44の配置は、行わないことが望ましい。図示されているTEM00モード50は、一般的にはガウス分布の形状を有しており、該モードの強度分布の一部は、図示されている1/e2レベルの水準線を超えて広がっている。Nd:YVO4利得媒体40のポンピング表面に近すぎる位置にモード領域(mode volume)50が位置させられると、結晶の表面を介した回折損失が受容できないほど大きくなりかねず、図3に示すレーザーの高パワー動作特性を制限しかねない。モード分布の外側部分(「裾」)中にはほとんどエネルギーが含まれないが、そうとは言え、そのエネルギーはレーザーの回折特性に影響する。したがって、ここで説明されているシステムおよび幾何学特性においては、回折損失を受容できるレベルに制限するべく、レーザーモードの水準線が利得媒体の端面から少なくとも約200μm離れるように、該レーザーモードの位置決めを行うことが好ましい。回折損失の受容可能なレベルは、利得媒体の端面を介した回折損失によってモードにもたらされる歪みのレベルに応じて、決定され得る。ある与えられたミラーおよび熱レンズ効果の組み合わせにおいて、モードが利得媒体の全表面から離れて配置された場合、該レーザーモードは完全なサイズおよび強度分布を有することになる。レーザーキャビティが、利得媒体のある表面を介して著しい回折損失を体現するのに十分な程度に該利得媒体の該表面に近い位置に配された場合、レーザーモードには、形状、エネルギー分布あるいはその他の特性のいずれかの点において歪みが生じる。少なくともいくつかの実施形態においては、レーザーモードが完全なモードサイズおよび強度分布に比して著しくは歪んでいない場合にも、受容できないレベルの回折損失が実在する。実際的な例として言えば、アルコック氏特許において報告された回折損失と、アルコック氏特許において報告された高い回折損失を有する幾何学特性は、固体レーザーが高利得で動作することを困難にさせるものであり、したがって受容できないレベルの回折損失を代表するものである。したがって、本発明の好ましい実施形態は、利得媒体40に対するキャビティ用ミラー42および44の相対的配置を通じて、モード領域にポンピング光が供給される結晶面54からレーザーモードが離れるように、利得キャビティを配置するものである。モード領域50の1/e2水準線と利得媒体の表面54との間における離間間隔52は、該表面54を介した回折損失を小さくするのに十分な離間間隔であることが好ましく、一往復についての該回折損失を、利得媒体中のその他の損失に比して少なくとも20%以下、より好ましくは10%以下とするような離間間隔であることが好ましい。加えて、この離間間隔は、レーザーモード領域に到達するポンピング放射の量が少なくなり過ぎる程には大きくされるべきではない。この要請は、200−300μm程度の離間間隔52を設けることによって達成され得るが、この距離は、モード領域がどれだけ良好に閉じ込められているかという点や、当該システムのその他の特定の特徴に依存していくらか変わり得る。レーザーの構成が異なる場合には、該構成が示す好ましい離間特性も異なるかもしれない。好ましくは、上記のモードは、入射させられるポンピング放射の少なくとも50%を該モードの深さに到達させるような距離だけ、ポンピング表面から離れている。利得媒体中におけるドープ材料の濃度の違いによっても、回折損失、および離間間隔を制限して高吸収係数材料中におけるレーザーモードの位置を最適化するのに適当な離間間隔の選択は左右される。
利得媒体50と該利得媒体の表面54との間において所望の離間間隔が与えられた後、続いてポンピングレーザー46とレーザー結晶40との間の離間間隔が、ポンピング放射の鉛直方向の広がり範囲をモード領域の高さ56に整合させるように設けられる。利得媒体内にポンピング放射を提供する従来型の技術は、ポンピングされるべき利得媒体の表面から離れているが近くに、あるいは該表面に接して半導体レーザーが配置される、突合せ結合を含むものである。単純な突合せ結合の幾何学特性は、利得媒体中においてより深い位置に利得モードを移動させることを必然的に伴う場合があり、それによって、該利得媒体が有する高い吸収能のためにポンピング効率が低くなるかもしれないので、本発明の実施形態においては好ましくない。その代わりに、本発明の好ましい実施形態は、レーザーシステムの複雑な光学的環境および熱的環境を考慮に入れた上で、利得媒体中のある深さに固定されたモード領域の高さにポンピングレーザーを整合させるものである。
側面ポンピングレーザーにおいて従来から実践されているある別の幾何学配置は、円柱レンズ(ファイバーレンズであることが多い)を用いて、ポンピング放射を利得媒体に供給するのに先立って半導体ポンピングレーザーの出力を平行光化するものである。しかしながら、そのような構成は、平行光化用光学要素およびビーム形状調整用光学要素の各表面において損失を生じさせる傾向があり、また、最適化された動作条件を達成および維持するべく光学系のアラインメントをとることの困難性を増加させる。加えて、固定された位置を有するレーザーモードと発散しながら伝播するポンピングビームとの間の離間間隔を変化させる調節が可能でない場合には、完全ではないが個々のレーザーに対して適度に最適化されたポンピング環境に近づくことすらも極めて困難になりかねない。前述のように、各レーザーは各々異なる動作特性を有していると予想され、したがって個々別々の最適化を必要とすると予想される。ファイバーレンズ型の構成は、単一の高さを有するポンピングビームしか発生させないように設計されているものであり、したがって典型的には、レーザーシステムの最適化のためには有効性の低い手段である。
本発明の好ましい実施形態は、半導体ポンピングレーザー46を、ポンピング放射が利得媒体40に供給される表面である表面54から距離58だけ離したものであり、この距離58は、ポンピングレーザー46の出力の鉛直方向における角度広がり60と、利得媒体の屈折率(好ましいNd:YVO
4においてはn=1.9)と、モード領域の位置におけるポンピングレーザーの出力光の鉛直方向の広がり範囲をモード領域の高さ56に整合させるためのスネルの法則の単純な適用に従って選択される。しかし一方、スネルの法則の単純な適用から導出された所望配置では、材料中における熱レンズ効果のためにモードの大きさが正確に計算できないので、該所望配置は実用的でない。既に述べたように、利得媒体中の熱レンズ効果は、ポンピング効率と全ポンピングパワーとに関わる要素である。したがって実際のところは、ポンピングレーザー46と利得媒体40の表面54との間における最も望ましい離間間隔58は、典型的には経験的に決定されなくてはならない。そのため、本発明の好ましい実施形態は、該離間間隔の経験に基づく調節を行って所望の出力特性を達成するものであり、出力特性の実例となる結果は以下の表に示されている。表1は、ダイオードレーザーとNd:YVO
4レーザー利得媒体との間の離間間隔の関数として、レーザーシステムの出力パワーを示した表である。
表1の第二列に列挙されている多重モードについての測定値を得るにあたっては、モードの質を考慮せずに、赤外領域において最大の合計エネルギー出力が得られるように図3のレーザーの共鳴キャビティが調整された。一方、表1の第三列に列挙されている単一モードTEM00出力値を得るにあたっては、図1のシステム中に配された赤外レーザーから最大の2倍周波数出力(図1の第四列)が得られるように、キャビティが調整された。換言すれば、図1中の第二調波発生結晶20から出射する点において最大量の532nm緑色光を発生させるように、図3のレーザーを最適化したものである。以下に述べるように、2倍周波数光の出力値を最大化する作業は、レーザーのTEM00出力を最大化するために使用され得るレーザーのモードの質を極めて精密に測定する作業である。図4のレーザーにおける最適な離間間隔58は、必ずしも固体レーザーからの合計出力パワーを最大化することによって決定されるものではない点を、理解することが重要である。その代わりに、固体レーザーが使用される特定の用途によっては、TEM00モード等のある特定のモードに関して最大のパワー出力を選択することが好ましい場合もある。特に、図3のレーザーが図1のシステム中において使用される際には、TEM00モードによる出力パワーを最大化するように、離間間隔58が選択されることが好ましい。
いくつかの好ましい実施形態においては、上述のような物理的な高さの整合ということで整合が規定されるのではなく、その代わりに、ポンピング源と利得媒体との間の離間間隔のみを変化させることにより、与えられた光学系構成のレーザーシステム出力を最大化するということで整合が規定される。いくつかの実施形態においては、出力パワーが、最適化された離間間隔において測定される出力パワーの最大値の約50%以内の範囲にあるときに、整合が成立することとされる場合もある。より好ましくは、出力パワーが最大値の約20%以内の範囲にあるときに整合が成立することとされ、さらに好ましくは、出力パワーが最大出力パワーの約10%以内の範囲にあるときに整合が成立することとされる。最も好ましい実施形態においては、離間間隔あるいは動作特性の組が、パワー測定処理の測定誤差特性、および機械的な製造誤差許容量を考慮した測定誤差特性の範囲内である最大出力パワーを提供する特定のものであることによって、整合が規定される。ここで、最適な動作条件に極めて近いシステムにおいてさえ、出力パワーの変化は劇的である可能性があることに注意するべきである。したがって、最適な構成からの比較的小さなずれでも、レーザーの出力光は半分にまで減少され得る。ここで、産業的な環境下におけるレーザーシステムの通常の使用状態は、最適な動作特性から該レーザーをずれされてしまうものであるであると考えられる。
図3に図示した固体レーザーを含む図1に示したシステムの実施形態の、最適な性能を得るためには、図3の固体レーザーは、周波数2倍結晶26への入力として単一TEM00モードを提供するべきであり、これは、該TEM00モードのコンパクトな大きさのためである。該固体レーザーにより発生させられ得るより高次のあらゆる出力モードは、より大きい横断方向の(断面の)広がりを有しており、したがって最低次のTEM00モードのスポットサイズほどには集光させられることができない。TEM00モードは、小さなスポットサイズにまで集光させられることができ、また他のより高次のモードに比してより遠い距離までに亘ってその小さなスポット径を保持することができる。したがって、TEM00モードは、周波数2倍結晶の小さな領域に、エネルギーを最も効率的に結合させる。周波数2倍操作からの出力は、おおよそ光強度の二乗をレイリー長に亘って線積分した値に等しく、変化する値である。したがって、入力ビームが質の高い単一TEM00モードである場合に得られるような、より遠い距離にまで亘って小さな径を保持する細く集光された光ビームは、周波数2倍結晶からの出力を増大させるという顕著な利点を提供するものである。一方、周波数2倍結晶からのパワー出力は、該周波数2倍結晶に入力されたレーザービームのモードの質を、感度よく測定する値としても役立つ。ビームの質の測定値としての2倍周波数パワー出力の感度の良好さは、図3の固体レーザーの最適化された構成について表1の第三列および第四列に記載された測定値により示される。勿論、与えられた応用用途において、より緩い最適化が許容される場合には、より高次のモードの使用も受容され得る。
図4に関する説明は、固体レーザーシステムの最適化に関する、第一の一連の考察を提供するものである。固体レーザーシステムの最適化に関する別の一連の考察は、図5に図示されている。前述のように、利得媒体40内における利得モード50の位置は、回折損失を制限するという最終目標と、利得媒体内で深さが増大するにつれて生じるポンピングビーム強度の減少との均衡を図るように選択されることが望ましい。ある与えられたポンピング源の位置と、それに対して相対的に位置させられたある利得媒体の位置とに対し、他のキャビティ構成要素の位置は、システムから最大の出力が得られるまで調整されることが可能であり、それにより、回折損失とポンピングビーム強度の損失とを均衡させるような最適な位置を設定することが可能である。この位置は、上述したやり方で選択されることが望ましい。レーザーモードに結合されるレーザー放射の量を調整することによって、さらなる別個の最適化を達成することもできる。
利得モードに結合されるポンピング光の量の最適化は、多くの異なる要素を考慮に入れるものであり、それらの要素の中には、利得媒体として用いられる特定の高吸収係数材料や、利得媒体中における励起物質のドープレベルが含まれる。本発明の現在において好ましい実施形態においては、利得媒体はNd:YVO4であり、ネオジムのドープレベルは約1%になるよう選択される。Nd:YVO4のドープ状態を精度良く再現することは困難である。したがって、一般的には、各特定のNd:YVO4結晶ごとに、含まれるネオジムの量は変化する。こうした変化を組み込んだ上で、図2に図示され対応の本文中において既に述べられたように、ポンピングによる励起の利得媒体への整合が、半導体レーザーの動作温度を選択することにより達成され得る。半導体レーザー46は、典型的には熱電冷却器あるいはペルティエ冷却器である温度制御装置64上に搭載されている。制御装置66は、図1のシステムのようなレーザーシステムのために設けられた制御システム全体の一部であることが多く、温度制御装置64を使用して半導体レーザー46の温度を設定および維持するためにいる。ここで、結晶は、ポンピング放射について所望されるよりも大きいピーク吸収係数をもたらすドープレベルを有していることが望ましい。そのような場合には、半導体ポンピングレーザーの温度は、典型的には利得媒体の吸収ピーク波長とは異なる波長においてポンピングレーザーが光を出力するように選択されることが好ましい。そのような離調された動作は、利得媒体中におけるより深い深さまでポンピング光が浸透することを保証するものであって、それにより、TEM00利得モードへの、より高い水準での光の結合をもたらすことが可能になる。
図中においてLhで示されている利得モード50の幅は、ポンピングビームの強度、およびNd:YVO4利得媒体40の熱レンズ効果に強く依存する関数である。したがって、ポンピング光の利得モードへの結合は、ここでも、現在のところ実用では経験的に達成される必要のある作業である。図示されているレーザービームの最適化に関する別の側面から言えば、最適化の作業がどの程度まで必要であるかは、特定の応用用途、およびそれらの応用用途が必要とする出力強度に依存する。図6は、利得媒体内における深さの関数として、ポンピング光の吸収の様子を概略的に示した図である。図示されているように、エネルギー吸収の1/e点は、吸収係数αの逆数に対応する。本発明の発明者らは、好ましいレーザーモードの幅Lhが一般的には吸収係数の逆数に比例して変化することを観測しており、最終的なレーザーシステムは、図示されている比例定数「c」が0.5から2.0の範囲内に収まるように選択される。
固体レーザーの性能の最適化は、レーザーの構成の種々の異なる側面および種々の異なる動作パラメターの調節を含み得る。最適化は、典型的には経験的に、すなわち、固体レーザーの構成あるいは動作パラメターを調節しながら出力パワーあるいはその他のレーザーの性能特性を監視することにより、極大値的な最適状態を連続的に特定する経験的な手法によって行われる。各変数は、典型的には個別に調節され、他のパラメターを最適化するためにさらなる調節が行われる。レーザーの全ての特性は、利得媒体中の熱レンズと相互に影響を及ぼしあうため、高水準の最適化は、反復的な最適化プロセスを必要とし得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態においては、利得媒体中におけるレーザーモードの位置は、該利得媒体に対するミラーの位置を調節することによって選択され得る(たとえば、極大値あるいはそれに近い値を実現するために)。レーザーモードの高さと、該レーザーモードにおけるレーザービームの高さとの整合が、好ましくは半導体レーザーと利得媒体との間の離間間隔を調節することにより達成される(たとえば、極大値あるいはそれに近い値を実現するために)。最も好ましくは、固体レーザーが図1に示されたレーザーシステム内に組み込まれる際において、2倍周波数のレーザービームの出力パワーを監視することが、最適な離間間隔を特定する手段を提供する。その後、最適化プロセスの第三番目の工程において、半導体レーザーの動作温度を調節することにより、レーザーモードに結合される光のレベルを設定することができる(たとえば、極大値あるいはそれに近い値を実現するために)。その後、一連のレーザー最適化工程のいくつかあるいは全てが繰り返され得る。たとえば、利得媒体に対するミラーの位置を再調節し、それにより、利得媒体のポンピング表面に対してレーザーモードを移動させ、より良好な出力パワーレベルを得ることが望ましいかもしれない。
所望の最適化レベルが取得されるまで、一連の最適化工程全体が繰り返され得る。性能改善に関する最低閾値による制限が、最適化の完了時を特定するために使用され得る。たとえば、レーザー構成およびパラメターは、出力パワーを10%以下しか向上させないようになった一連の最適化工程全体によって特定されるかもしれないし、あるいは状況によっては、5%以下しか向上させないようになった一連の最適化工程全体によって特定されるかもしれない。この最適化の評価は、たとえば、基本波長のレーザービームあるいは2倍周波数のレーザービーム中の出力パワーに基づいて行われ得る。レーザーシステムの最適化プロセス全体の中の種々の最適化工程のうち、いくつかの工程のみしか繰り返さなくてよい場合もある。各特定のレーザーの応用用途に対する最も好ましい最適化のレベルは、おそらくは、(1)利得媒体中におけるレーザーモードの位置を最適化する工程、(2)ポンピング放射の物理的な広がりをレーザーモードに整合させる工程、および(3)ポンピング放射の分布をレーザーモードに整合させる工程を必要とするレベルである。いくつかの特定の状況においては、上記に列挙した3つの特定の特性のそれぞれについて、極大値に近い出力パワーレベルによって測定されるような整合性を得ることのみが必要とされ得る。
図7は、レーザーシステムのさらに追加の特性を最適化するのに使用され得るモード形状アナライザーを提供するための、図3のレーザーシステムの変形例を図示したものである。図7に図示されているシステムは、高反射能ミラー42に入射するレーザー放射のうち少量の一部がその高反射能ミラーを透過するという事実を、利用したものである。高反射能ミラー42は平坦/平坦型であるため、高反射能ミラー42の外側表面上におけるレーザービームの像は、キャビティ内の該高反射能ミラーにおけるビーム形状を再生した像である。したがって、このビームの像は、キャビティ内におけるモードの形状を分析するために観察され得る。高反射能ミラーを透過するレーザービームの強度は検出器を破損させるのに十分足るほど強いので、より扱い易いビーム強度を発生させるべく、高反射能ミラー42の近くには1個あるいは複数個のNDフィルターが配置され得る。その後、所望の分解能を有する検出器、あるいはレーザービームの近赤外光に対して感度を有するメルズ・グリオット・ビームアナライザー72等のプロファイルアナライザーを使用して、ビームが撮像される。アナライザー72は、高反射能ミラー42に対して比較的近く(約1.5cm)に配置され得る。この撮像能力は、ビーム形状を観察するため、したがってレーザーがTEM00モードあるいはそれに近いモードで動作しているか否かを特定するために、容易に用いられることが可能である。この観察方法は、図1のシステム中における周波数2倍結晶20からの2倍周波数出力を最大化する上述の最適化技術に比べれば、遥かに精度が劣るものである。
図7のアナライザーは、レーザーシステム中の異なる位置におけるモードの大きさを測定する、大雑把かつ概して定性的な測定手段として用いられ得る。マイクロマニピュレーターあるいは微小移動ステージ74が、ナイフエッジあるいはレザーエッジ76を利得媒体に対して精度良く配置するために使用される。該ステージは、キャビティの長さ方向に沿ったある位置に配置され、該レザーエッジは、該エッジ76がアナライザー72における像を最初に歪ませ始めるまで(典型的にはモードの像が縮小され始めることにより観測される)、横断方向に移動させられる。アナライザー72における像が消滅して、該エッジ76がモード断面に到達している光全体を遮断していることが示唆されるまで、該エッジ76は移動させられる。利得媒体の、最初にビームが歪んだ点から消滅点までの距離は、一般的にその点におけるモードの幅に関連している。図7に示されたレーザーシステムのレーザーは、該レーザーシステムの使用時においては高パワーの動作状態にあり、したがってレザーエッジがレーザー結晶40から安全に離されて保持されることが重要である点に注意されたい。図7のシステムを使用して、TEM00モードでの動作のために最適化されたレーザーシステム中における近似的なモード幅が、上述の実施形態の約9cm長のレーザーキャビティ中における異なる複数の点において測定された。高反射能ミラー42の近傍においてはモード幅は約400μmであり、高反射能ミラーから1cmの距離においてはモード幅は約560μmであり、Qスイッチ48のキャビティ中における通常位置に対応する7.5cmの距離においてはモード幅は約230μmであり、出力カプラー44の表面近くにおいてはモード幅は約130μmである。したがって、利得モードの大きさが、利得媒体40において最大であり。出力カプラーにおいて最小であることは明らかである。図7のシステムは、TEM00モードで動作する最適化されたレーザーにおけるモードの形状および大きさを分析するのに有用であるだけでなく、より高次のモードの存在を特定するため、およびより高次のモードの存在を制限する構造を工夫するためにも使用され得る。
共鳴キャビティの光路上において適当な横方向にQスイッチ48を配置することは、固体レーザーを単一モード動作で動作させる際において、開口部として作用し得る。より高次のキャビティモードは、基本となるTEM00モードが占める領域の中心線周りに対称的に配置されたローブを示すものである。最初の高次モードは、共鳴キャビティ全体に亘って断面的に観察すると、基本となるモード領域の両側に位置させられた水平方向に離れた1組のローブを有しており、このうち第一ローブはポンピング光に近い方に離れて配されており、第二ローブはポンピング光から遠い方に離れて配されている。第一ローブと第二ローブとの間においては、ポンピング放射は距離に対して指数関数的な分布をしているので、第一ローブはキャビティの高利得領域に位置しており、第二ローブは該キャビティの低利得領域に位置していることになる。
利得プロファイルの調節は、第二ローブがレーザー動作を保ち続けるために十分な利得を有することを、防止し得るものである。この調節と併せて、基本となるTEM00モード領域が全てQスイッチの表面と重なるが、共鳴キャビティの最初の高次モードにおける第一ローブが該Qスイッチの表面にかからないようにして、該Qスイッチが配置されることが好ましい。そのようにすると、最初の高次モードの第一ローブはQスイッチを透過させられず、それにより該第一のローブの高程度の損失あるいは物理的な遮断がもたらされ、該第一ローブはレーザー動作を保ち続けるために十分な利得を有さないようになる。したがって、固体レーザーにおける最初の高次モードの振動は、利得プロファイルを調節すること、および該最初の高次モードを抑制するようにQスイッチを配置することにより、抑制され得る。2番目のおよびさらに高次の高次振動は、通常は実際に振動に到達する度合がより低く、したがって、利得プロファイルの選択とQスイッチの配置との組合わせは、固体レーザーのいくつかの実施形態において効果的に単一TEM00モードでの動作を選択するものである。キャビティを慎重に調整することによっても同様の結果が得られるが、レーザーの調節を要さずに、より強力かつより確実に単一モード動作を保持するという点で、いくつかの応用用途においては、上記の利得プロファイルの選択とQスイッチの配置との組合わせの方が好ましい。そのようなメンテナンスの必要性が低い動作特性は、産業的用途における使用およびステレオリソグラフィ等の応用用途において使用される固体レーザーの、設計の実用性という点で非常に重要である。
さらにより強力な物理的開口部と利得開口部(gain aperture)との組合わせを、同様のやり方で使用することも可能である。物理的開口部としてQスイッチを使用する代わりに、該Qスイッチの近傍に位置させられた別個の開口部を使用して、レーザーの最初の高次モードにおけるローブのうちの1つを遮断することも可能である。この代替手段においては、上記の物理的開口部は、ナイフエッジでもよく、あるいはその他の好適な遮断材であってもよい。上述のQスイッチに関する説明と同様のやり方で、該物理的な開口部が配置され、最初の高次モードのポンピング源に最も近いローブが遮断されるべきである。レーザーシステムの好適な設計においては、最初の高次モードの第二ローブにおける利得は、レーザーとしての作用を保ち続けることができない程度に低くされ得る。最初の高次モードにおける往復の利得が、レーザーの往復の損失よりも少ない場合には、第二ローブにおける利得は十分に低いと言える。この低利得条件を保証するために、ポンピングビームの波長、利得媒体の吸収係数、あるいはその他の損失機構は、必要なように調節されることが可能である。物理的な開口部と利得の選択との組合わせは、利得の選択を開口部としてのQスイッチと組み合わせるよりも、レーザーシステムの構成により柔軟性を持たせるものである。
図8は、本発明の教示にしたがって構成され最適化された図3のレーザーシステムの、上述した実施形態の性能を図示し、さらに、最適化された図3のレーザーを組み込んだ図1のシステムの性能を図示したものである。図8は、25kHzのPRF(パルス反復周波数)を使用して得られた、基本レーザー出力、2倍周波数レーザー出力(532nm)、および3倍周波数レーザー出力(355nm)のグラフを提供するものである。基本レーザー出力パワーのグラフは、約12%の光‐光ポンピング効率と、20%を超える(23.5%)傾き効率とを有しており、これらは共に側面ポンピングレーザーとしては高い値である。レーザー動作の閾値は、ミラーを含むキャビティが20Wの入力ポンピングパワー用に最適化されている場合においては、約9.5Wの入力パワーである。この構成におけるレーザー動作の閾値は、熱レンズを確立および安定化するために必要とされる、熱的パワーの入力量を反映したものである。この安定状態の動作条件が確立される前においては、熱レンズは十分に発達しておらず、キャビティ内を伝播する光はキャビティ内部に留まらない傾向を有する。このレーザーシステムにおいては、著しいレベルの3倍周波数出力光が得られ、そのことは、本システムを、上述のステレオリソグラフィの応用用途に適したものとさせる特徴である。
図1のシステムからの高レベルのパワー出力に関しては、第三調波発生結晶26の出力面におけるエネルギー密度が、該第三調波発生結晶26の出力面を破損させるほどに大きくなることもあり得る。本発明の発明者らは、該第三調波発生結晶の出力面への破損を観測したが、破損は結晶の出力面においてのみ生じており、また該破損はレーザービームが該結晶から出射する位置の近傍に強く局在化されていた。そのことから、上記の結晶の出力面において、上記の破損は高密度の355nm光子(3倍周波数、紫外領域)の存在に付随している可能性が極めて高い。仮に上記の破損が単純に合計のエネルギー密度に起因するものだとすれば、図1のシステム中の、周波数2倍結晶においても、あるいは周波数3倍結晶の入力面においても、破損が生じるはずである。観測された破損は、実質的に結晶から出射するビームのスポットサイズ(スポット径にして100μm程度)の範囲内に限られているが、その破損位置は、3倍周波数ビームの質および強度に必然的に影響する。周波数3倍結晶の出力面の破損は、図1に図示されるようなレーザーシステムの寿命を著しく短縮させるものである。
図9は、高レベルの紫外出力光を発生させるための周波数3倍結晶を使用しながらレーザーの寿命を延ばすために図1のレーザーシステムに代替的に組み込まれ得る、単純な要素群を図示したものである。図9は、図1の実施形態の周波数3倍結晶26に代替し得る変更されたアセンブリを示すものであり、該図9のアセンブリは、機能的には図1に図示された前述の周波数3倍結晶26と等価であるLBO結晶を含んでいる。ここでの議論および説明の便宜のために、説明をより分かり易くするべく、周波数3倍結晶が必要とする温度制御機構等のいくつかの特定の周辺構成要素は図示されていない。周波数3倍結晶90は、手動制御により移動させることも可能であるが、好ましくはコンピュータ制御される移動機構上に搭載されており、また横方向および縦方向への移動能力を双方とも有していることが好ましい。x軸移動ステージ92は、LBO結晶の支持部として設けられてもよく、LBO結晶90の横方向への移動をもたらすものである。Z軸移動ステージ94あるいは昇降機が、たとえばx軸移動ステージの下に、レーザーキャビティに対して垂直な方向に沿ったLBO結晶の移動をもたらすべく設けられる。このことは、二次元的に移動する系を提供するものであり、したがって、調波発生結晶に関して最長の寿命を提供するものである。勿論、一次元の移動が満足な結果をもたらす場合には、単一の移動機構のみが設けられ、単一方向に沿ってのみ移動が行われる場合もある。上記の移動機構は、制御システムあるいはコンピュータ96により制御され、この制御システムあるいはコンピュータ96は、図1に図示されたレーザーサブシステムの制御に専用のものでもよく、あるいはステレオリソグラフィ装置のための全体的な制御コンピュータシステムの一部であってもよい。好ましくは、コンピュータ96に紫外領域における出力強度を特定させるか、あるいは周波数3倍結晶からの出力強度に関する他の測定基準を導出させるために、コンピュータ96は、図1に示した全体的なレーザーシステム内に配置されたセンサーあるいは光学的サンプリングシステムに接続されている。また、コンピュータ96は、データ制御ライン98を介してx軸移動ステージ92に接続されており、さらにコンピュータ96は、データ制御ライン100を介してz軸移動ステージ94に接続されている。
図9に図示されたサブシステムは、周波数3倍結晶90の出力面におけるレーザー位置に対しての、該周波数3倍結晶90の自動的な再配置を可能にするものである。たとえば、最初の組込状態中においては、周波数3倍結晶90は、ビームが初期スポット102を通過するように、レーザーキャビティに対して相対配置させられ得る。一定期間の経過後に、該周波数3倍結晶は、レーザービームが新たなスポット104を通過するように、レーザーキャビティに対して移動させられる。以前の占有位置から離れた位置においてレーザービームが周波数3倍結晶から出射するので、以前の占有位置に存在するいかなる破損も、再配置されたビームに影響を及ぼさない。周波数3倍結晶(〜2−5mm)は、周波数3倍結晶の出力面におけるビーム径(〜100μm)に比して大きいので、与えられたいかなる結晶においても、多数回の上記のような移動が安全に行われ得る。したがって、周波数3倍結晶の有用な寿命、あるいは出射する放射によって破損され得る他の同様な結晶の有用な寿命は、著しく延ばされ得る。さらには、この変更例は紫外光を発生させる調波発生結晶がレーザーキャビティ外に配置されている図1のシステムを前提として説明されたが、レーザーキャビティ内に配された調波発生結晶の寿命を延ばすべく、該レーザーキャビティ内に配された調波発生結晶が再配置されるレーザーシステムに対しても、同様の手法が適用され得る。少なくともいくつかのレーザーシステムは、レーザーキャビティ内において2倍周波数あるいはより高次の調波発生を使用するものであり、そのようなレーザーシステムは、紫外放射あるいはその他の破損をもたらす放射を発生し得ることに注意されたい。そのようなシステムは、調波発生結晶の移動による恩恵を受けることができる。
レーザーシステムあるいはその他のより大系的なシステムに関する検討事項における各特定のニーズに応じて、入力レーザービームに対する周波数3倍結晶の再配置は、多くの異なる方法によって始動され得る。最も簡単な手法では、性能低下に気づいたユーザーが再配置動作を始動させ、以前は使用されておらず破損されていない部分をレーザービームが通過するように、周波数3倍結晶を移動させることが可能である。この手法は簡単ではあるが、ユーザーは、性能に関するあらゆる問題を周波数3倍結晶の劣化と絡めて考え、周波数3倍結晶の位置に関して非生産的な調節を行う傾向を有するかもしれないので、該手法は実用においては逆効果となり得るものである。したがって、図9の実施形態は、周波数3倍結晶の、最も最近の1つあるいは2つあるいはより多くの占有位置を記憶しておくための、メモリを含んでいることが望ましい。再配置動作後においてもレーザーの性能がほとんどあるいは全く改善しない場合(すなわち、10%あるいは20%程度の改善しか見られない場合)には、周波数3倍結晶が元の位置を占有するように、該再配置動作が元に戻され得る。以前の占有位置の再取得が可能であることは、図9に示した周波数3倍結晶を含むアセンブリの、この比較的手動に近い構成においてのみでなく、以下に議論されるより自動化された構成においても望ましいことである。ある変更例においては、性能改善を確認するために2回以上の前進工程が行われることが可能であり、その2回以上の前進工程の後に改善が見られない場合には、当該システムは、自動的あるいは手動により、以前の各位置を通りながら段階的に元に戻される。
上述の比較的手動に近い再配置動作に対する変更例として、図1のレーザーシステムの合計動作時間を記憶するメモリが、コンピュータ96内あるいはコンピュータ96からアクセス可能な場所に設置されてもよい。配置動作を実行するための期間が、性能特性および寿命特性に関する製造者の知識に基づいて、予め設定された様式でコンピュータ96内に記憶され得る。あるいは、再配置のための時間は、ユーザーが目的とする応用用途におけるレーザーシステムに関する該ユーザーの経験に基づいて、該ユーザー自身が設定できるようにされてもよい。これらおよびその他の実施形態においては、特定の周波数3倍結晶に関し、レーザービームが通過してきた全ての位置の履歴を記憶しておくことが望ましい。そのようなシステムは、以前に占有された各位置を避けるために、まず以前に占有された各位置の履歴を確認した上で、再配置を実行する。
図9に示した周波数3倍結晶を含むアセンブリのさらに別の自動化された構成の下では、再配置を実行するか否かの決定は、出力強度あるいはビームの質に関する外部からの測定値に基づいて行われ得る。そのような構成においては、図1のシステムに対し、出力パワーセンサーが設けられる。そのような出力パワーセンサーは、周波数3倍結晶からの合計パワー出力、あるいは周波数が3倍(あるいは4倍)された紫外出力パワーをサンプリングすることができる。場合によっては、基本周波数および2倍周波数のビームの出力強度を、図1の光路34上で測定することも認容可能である。周波数3倍結晶が破損されているか否かの判定は、光路32および34の双方に関してなされるビームパワーの測定に基づいて行われてもよい。ベースラインとなる出力パワーレベルは、周波数3倍結晶の組込みおよび最適化の後に、測定および記憶される。レーザーシステムの出力パワーが規則的な時間間隔で測定され、コンピュータ96は、現在の出力パワーレベルを、以前の履歴に基づくベースラインのパワーレベルと比較する。現在の出力パワーレベルが、ベースラインのレベルに対してある所定の割合未満に落ちた場合には、上記のコンピュータが再配置動作を始動させる。再配置動作の後に、出力パワーレベルが再測定される。出力パワーレベルが以前のレベルに戻った場合、あるいは以前のレベルに十分近いレベルに戻った場合には、その新たな出力パワーレベルが新たなベースラインレベルとしてメモリ内に蓄積され、新たな位置が受け入れられる。新たな位置における出力パワーが受容不可能なものである場合には、周波数3倍結晶が以前の位置に戻される。その後、コンピュータ96が、システム診断あるいはその他のサービスの実行の必要性を示す信号を発する場合もある。
基礎となるレーザーシステムの別の変更例が、図10に図示されている。この図10は、半導体ダイオードポンピングレーザー46および利得媒体40について、前出の図5に図示されたよりも詳細な断面図を示したものである。半導体レーザー46と利得媒体40を含むアセンブリのいくつかの実施形態においては、該半導体レーザーおよび該利得媒体の双方が同一のブロック(たとえば銅製)上に搭載され、共に冷却されてもよい。そのようなシステムにおいては、半導体レーザーおよび利得媒体は、同一の温度で動作する。しかし、本発明の発明者らは、半導体ダイオードレーザーと利得媒体を異なる温度に保つことが有利であるかもしれないことを観測した。図10は、半導体レーザー46とNd:YVO4利得媒体40を含むアセンブリであって、動作中において半導体レーザーと利得媒体を異なる温度に保つことを可能とするようなアセンブリを概略的に示した図である。
図10のアセンブリにおいては、半導体ダイオードレーザーは銅製ブロック110の上に搭載されており、該銅製ブロック110は、ダイオードレーザー内部において発生させられた熱を、熱電(ペルティエ)冷却器112を介して効率的に除去するものである。熱電冷却器112から排出された熱は、上記よりも顕著に大きい銅製ブロック114に送られるか、あるいは、図示されたアセンブリ内にある熱電冷却器の冷却作用を妨害することなくシステムから効率的に熱を除去するような他の形式の蓄熱部に送られる。半導体レーザー46の温度の測定手段を提供するために、温度感知ダイオードあるいは抵抗器116が銅製ブロック110上に搭載されてもよい。制御装置118が温度感知器116および熱電冷却器110に接続されており、該制御装置118は、熱電冷却器を流れる電流を制御して、半導体レーザー46の温度を所望の水準に保つためのものである。利得媒体40は、インジウム箔あるいはその他の軟性金属箔等の、展性を有する熱伝導体124を用いて、銅製冷却ブロック120と122との間に搭載されている。銅製ブロック120は、放射冷却のためのフィン状の構造を有していてもよく、あるいは、該銅製ブロックは、利得媒体40中で発生させられた熱を熱電冷却器(図示せず)を介して排出してもよい。銅製ブロック122は熱電冷却器126上に搭載されており、該熱電冷却器126は、利得媒体40から熱を引き出し、その熱を蓄熱部114中へと発散させるものである。温度感知器128は、利得媒体の温度測定手段を提供するものであり、ダイオードあるいは抵抗器であってもよい。制御装置130は、銅製ブロック122の温度を示す信号を受信し、熱電冷却器126を流れる電流を制御して、利得媒体の温度を制御するものである。
制御装置118および130に接続された全体的システム用コンピュータが、半導体レーザーおよび利得媒体が動作させられるべき特定の動作温度の入力を可能とする。最も好ましくは、半導体レーザーの動作温度は、ポンピング光のレーザーモードへの結合を最適化するように設定される。続いて、利得媒体の動作温度が、出力パワーを最適化するように選択される。既に説明したダイオードアレイと利得媒体を使用したここでの望ましいシステムにおいては、ある有利な構成は、約40kHzのパルス反復周波数で動作するレーザーに関して、半導体ポンピングレーザーの温度を25℃に設定し、利得媒体の温度を約18℃に設定する構成である。利得媒体をさらに冷却することが好ましい場合もあるが、利得媒体の温度が過度に低く保たれると、望ましくない結露が形成される怖れがある。図示され説明されたような、独立した温度制御を有する半導体ダイオードアレイポンピングレーザーと利得媒体とを含むアセンブリが、上記において図3に図示されたようなレーザー内に組み込まれた。この実施において使用された上記の特定のレーザーは、平坦型の高反射能ミラー42であって、そのキャビティに面した側の表面が利得媒体の中心から約2.86cmの距離だけ離れている高反射能ミラー42を設けたものであった。出力カプラー44は、平坦/平坦型であって、約70%から75%の間の透過率を有しており、そのキャビティに面した側の表面が利得媒体40の中心から約4.3cmの距離だけ離れている出力カプラーである。このレーザーは、40kHzのパルス反復周波数(PRF)で動作させられた。この独立温度制御型のレーザーは、先に説明された実施形態に比して、ほぼ2倍の出力パワーレベルおよび効率を示す。
他の側面においては、上記の独立温度制御型のレーザーは、先に説明された最初のレーザーシステムと本質的には同様である。先に説明された最初の実施形態と同様に、この独立温度制御型のレーザーも、半導体ポンピングレーザーと利得媒体との間にいかなる光学要素も配されないような、変更された突合せ結合の構成を使用する。半導体レーザーと利得媒体との間には、ある離間間隔が設けられている。キャビティ用ミラーは、利得媒体の表面であって該利得媒体にポンピング光が供給される側の表面の近くにレーザーモードを位置させるようにして、利得媒体に対して相対配置される。レーザーモードは、ポンピング表面を介した該レーザーモードの回折損失を制限するのに適当な距離だけ該ポンピング表面から離れているが、該レーザーモードに到達するポンピング光の量を不必要に制限する程には、高い吸収係数を有する該利得媒体中に深く配されない。典型的には利得媒体の吸収ピーク波長と異なるポンピングレーザーの出力波長を選択することにより、半導体レーザーの動作温度が、ポンピング光のレーザーへの結合を最適化するように選択される。
半導体レーザーと利得媒体との間の最適な離間間隔は、上述したやり方で決定される。すなわち、最も低次であるTEM00基本波長(1064nm)の出力パワーを、好ましくは経験的な方法によって最適化することにより、該離間間隔が選択される。好ましくは、この最適化は、2倍周波数(532nm)レーザービームの出力パワーを最適化することにより実行される。既に述べたように、この2倍周波数レーザービームの出力パワーは、レーザービームのTEM00モードの質を測定する極めて感度のよい測定手段である。図11は、半導体レーザーと結晶の間の離間間隔と、基本周波数レーザービームおよび2倍周波数レーザービームの出力パワーとの間の、関係を図示したものである。図示されているように、離間間隔の関数としての2倍周波数出力パワーにおけるピークは、比較対象となる基本周波数レーザービームの出力光に関する関係におけるピークに比して、より強いピークとなっている。このことは、2倍周波数出力パワーが、基本周波数レーザービームの出力パワーに比して、離間間隔を最適化するためのより感度のよい測定値であることを実証するものである。
以下の表2は、半導体レーザーが25℃に保たれ、利得媒体が18℃に保たれた図10のレーザーについて、該半導体レーザーと該利得媒体との間の離間間隔の関数として、基本周波数(TEM00)のレーザービームの出力パワーを列挙した表である。表2はまた、独立型の冷却を行う図10のレーザーが図1に示したレーザーシステムの実施形態中に配された際における、基本周波数(TEM00)レーザービームおよび2倍周波数レーザービームの出力パワーと、該基本周波数レーザービームと該2倍周波数レーザービームの間の変換効率との間の関係も示している。以下の表で、基本波長(TEM00、1064nm)のレーザービームについて列挙されている出力パワーは、予め定められた20Wというポンピングレーザーのパワーにおいて、各離間間隔値に対してキャビティを最適化することにより得られた出力パワー値を表すものである。
図12と図13は、このレーザーシステムの性能についてさらなる説明を提供するものである。このレーザーの性能特性は図12および図13に図示されており、図8に図示された最初に説明されたレーザーの性能と比較することができる。これら2つのレーザーの比較は、半導体レーザーと利得媒体の温度をそれぞれ独立に設定することに伴う性能向上を説明するものである。
好ましい実施形態についての以上の説明は、典型的には、レーザー媒体が固体媒体である場合に言及するものであった。いくつかの変更実施形態においては、たとえば気体、染料、およびそれらに類似のもののような、他のレーザー媒体も使用可能であろうと考えられる。
好ましい実施形態についての以上の説明は、典型的には、ポンピング源が半導体レーザーあるいはダイオードレーザーである場合に言及するものであった。いくつかの変更実施形態においては、放電ランプ、フラッシュランプ、他の種類のレーザー、およびそれらに類似のもののような、他のポンピング源も使用可能であろうと考えられる。
好ましい実施形態についての以上の説明は、典型的には、レーザーキャビティ用ミラーが、レーザー媒体、Qスイッチ、あるいは該キャビティ内に配置され得る他の変調装置から離れている場合に言及するものであった。いくつかの変更実施形態においては、上記のキャビティ用ミラーが、レーザー媒体の両端面を直接被覆しているか、あるいは該レーザー媒体の両端面上に搭載されているような形態も可能である。さらに別のいくつかの変更実施形態においては、レーザー媒体と変調装置が結合されており、一方のキャビティ用ミラーが該変調装置とは反対側の該レーザー媒体の一端面を被覆しているか、あるいは該一方のキャビティ用ミラーが該一端面上またはその近傍に搭載されており、さらにもう一方のキャビティ用ミラーが上記の変調装置を被覆しているか、あるいは該もう一方のキャビティ用ミラーが該変調装置上またはその近傍に搭載されているような形態も可能である。
好ましい実施形態についての以上の説明は、典型的には、全体的なレーザーシステムについてある特定の方向設定を想定したものであったが、該システムにおいては他の方向設定も可能である。とりわけ、本明細書は、レーザーが水平方向に延びる光軸を有するものであるとして説明したものである。この光軸が水平方向に延びていると考える代わりに、他の方向に延びていると考えることも可能であり、その方向はいかなる方向であってもよい。この光軸は、所望のいかなる方向であってもよい第一方向に沿って延びていると考えることもできる。この第一方向はまた、該第一方向に垂直な方向から成る様々な方向対を規定するためにも利用され得る。これらの垂直な方向から成る各方向対は、各対を成すそれぞれの方向が上記の第一方向に垂直であるばかりでなく、典型的には該各対を成すそれぞれの方向同士も互いに垂直であると考えられる。
さらに、好ましい実施形態についての以上の説明は、典型的には、水平平面内に位置していると想定された第一の横断方向に沿って、レーザーシステムがポンピングされると考えるものであった。前述の通り、ポンピング放射が側面ポンピングの構成でレーザー媒体に照射されるように、該ポンピング放射はこの第一の横断方向に沿って伝播する。しかしながら、実際には、ポンピング放射は、光軸方向と第二の横断方向の双方に沿って発散する(光軸方向への発散の方が程度が小さく、第二の横断方向への発散の方が程度が大きい)ので、該ポンピング放射は、上記の第一の横断方向への伝播に限定されないのが典型である。しかしながら、典型的な応用用途においては、ポンピング放射は、実質的に第一の横断方向に平行な平均伝播方向を有するものとみなされ得る。より一般的に言えば、ポンピング放射の平均伝播方向は、上記の第一の横断方向に平行な成分を有する第二の方向に沿って方向付けられると考えることもできる。最も好ましい実施形態においては、この第二の方向は、上記の第一の横断方向に平行であるか、上記の第一の横断方向から約5°から10°の範囲内にある。さらに、ポンピング放射は、レーザー媒体の変化し得る浸透深さまで浸透しながらこの第二の方向に沿って吸収されるものであると捉えることができるため、この第二の方向を深さ方向とみなすことも可能である。上記の説明より、第一の横断方向と第二の方向はいずれも、水平平面内において方向付けられなくてもよい点に注意されたい。
さらに、好ましい実施形態についての以上の説明においては、ポンピングレーザーは典型的には鉛直方向に沿って発散するものとみなされていた。これらの実施形態においては、この鉛直方向は、第一の横断方向と光軸方向との双方に垂直な第二の横断方向に沿って方向付けられるのが典型である。該第二の横断方向は、第三の方向とも呼ばれ得る。この第三の方向は、必ずしも鉛直方向に方向付けられなくてもよい点を理解されたい。
本発明は、いくつかの特定の実施形態の形式で説明されてきた。本明細書中で説明された特定のシステムに対する複数の変形形態が、本発明の教示事項を変更することなく可能であることは、当業者には理解できることであろう。これらの変形形態の中には、本明細書中に明示的に記載されているものもあれば、本発明に関する簡明な説明を提供するという観点から、明示的に記載されていないものもある。たとえば、以上の説明は、利得結晶(gain crystal)の一側面に沿って配置された単一のダイオードアレイ半導体ポンピングレーザーを想定して行われたが、本発明の教示事項は、一対の半導体ポンピングレーザーが利得媒体の両側に配置されるような変更例にも適用され得る。そのような変更例においては、両側のポンピング源からの光を利得媒体に効率的に結合させるべく、十分に細い利得媒体が選択されるべきである。したがって、本発明は前述された特定の実施形態のいずれにも制限されるべきものではなく、本発明の範囲は、各請求項を参照して決定されるべきである。