しかしながら、従来の太陽熱温水器は、それ自体が多くの専用部品により構成されており、コストが高くなっている。また、各メーカーにおいて付加価値を高めるため複雑な機能が追加されており、コスト高に拍車をかけている。そのため太陽熱温水器の普及率はあまり伸びていない。
一方、資源の枯渇化を防止する観点から、廃棄物の再資源化(以下、単にリサイクルという。)の重要度が高まっており、地方自治体主導の下、リサイクルが積極的に進められている。
地方自治体などによってリサイクル用に回収されているものの一例として、空缶、ペットボトル等の各種飲料用容器があげられる。これらは回収後、空缶に関しては溶解等の再処理が施された後再度缶等に加工され、ペットボトルに関しては、再処理後繊維に加工され、衣類の原料に利用されている。
しかしながら、空缶に関しては溶解等の再処理及び再加工に、莫大な電力を要し、リサイクルにもコストが高くつく問題がある。またペットボトルについては、衣料へのリサイクルが有効と言われてはいるが、実際のリサイクル率は極めて低いのが現実である。
そこで、本発明は、廃棄物の再利用を促し、廉価で広く普及することで省エネ効果を十分期待できる太陽熱温水器を提供することを目的とする。
実公平4−40129号公報(第2頁、第1図)
特開2002−48418号公報(第3頁、第1図)
本発明の請求項1に記載の太陽熱温水器は、頭部と底部に貫通孔を有する複数の空缶を当該空缶同士の接続部が円周方向外方に対して液密となるように互いに直列に連結した温水管と、ペットボトルの頭部と底部を切断してなる複数の筒体を直列に連結して構成される温水管カバーと、前記温水管の一端に設けられ、当該温水管に被加熱流体を導入する導入部と、前記温水管の他端に設けられ、加熱された被加熱流体を導出する導出部とを備え、前記温水管カバーの内部に前記温水管を挿通収容するとともに、前記温水管カバーと前記温水管との間に密閉された空気層を形成せしめた温水筒を有することを特徴とする構成を備えている。
空缶を直列に連結して形成された温水管が太陽光からの輻射熱を蓄積し、管内の例えば水等の被加熱流体を加熱して温水を得ることができる。また、ペットボトルにより形成される温水管カバーが、温水管に直接風が当たらないようにするとともに温水管の回りに空気層を形成し、温水管内の加熱された被加熱流体の放熱を防ぐ断熱保温層としての役目を果す。
また、本発明の太陽熱温水器においては、リサイクルのための特別な処理を必要とせず、ほとんど原形を残したまま再利用することができるので、廃棄物の再利用の観点から最も好ましい形態といえる。
また、請求項2に記載の本発明にかかる太陽熱温水器は、複数の前記温水筒と、それぞれの温水管の導入部と導出部とを連結して全体的に1つの被加熱流体の流路を形成する接続管と、複数の前記温水筒を並列配置状態で収容する収容体とを備えたことを特徴としている。
複数の温水筒を比較的コンパクトにまとめて収容体に収容することができ、小型で加熱容量の大きい太陽熱温水器となる。
また、請求項3に記載の本発明にかかる太陽熱温水器は、前記収容体が箱形状を有し、一部に太陽光を透過する透過面を備えるとともに、前記透過面に対向する位置に当該透過面より入射した太陽光を反射する反射面とを備えたことを特徴としている。
このような構成とすることにより、被加熱流体の加熱に際して、太陽光の一方向からの照射だけでなく、反射光をも有効に利用することができ、加熱効率を高める。
また、請求項4にかかる本発明の太陽熱温水器は、温水管カバーが大きさの異なる複数の温水管カバーからなり、当該温水管カバーが大きさの大きい順に挿通配置されることで当該温水管カバーに前記空気層を2つ以上形成せしめたことを特徴としている。
何重にもなった温水管カバーにより複数の独立した空気層が形成され、これによって断熱効果が向上するので、一旦加熱された被加熱流体の温度低下を有効に抑制することができる。
また、請求項5に記載の本発明の太陽熱温水器は、表面に凹凸形状を有する集光カバーを前記温水管カバーの周面の少なくとも一部に備えたことを特徴としている。
凹凸形状を有する集光カバーがある種のフレネルレンズのように作用し、温水管の温度上昇を助ける。
また、請求項6にかかる本発明の太陽熱温水器は、前記温水管の周囲表面が黒色塗装されたことを特徴としている。
黒色塗装によって温水管の赤外線吸収効率が向上し、それに伴い被加熱流体を効率的に加熱する。
また、請求項7に記載の太陽熱温水器は、頭部と底部に貫通孔を有する複数の空缶と、前記空缶同士を長手方向に直列に接続する際に当該空缶の間に介装される液密用の中間パッキンとを備え、当該空缶同士の接続部が円周方向外方に対して液密となるように前記中間パッキンを介して前記空缶同士を互いに直列に連結して構成された温水管と、
長手方向両端側近傍の所定位置に水循環用孔がそれぞれ穿設されると共に前記一方の水循環用孔に隣接して前記空缶への水導入用プラグが密着挿入され、前記空缶の貫通孔を介して前記温水管を貫通する塩ビ管と、
前記温水管両端と前記塩ビ管との間をシールする端部シール部と、
前記端部シール部を前記塩ビ管に固定する固定手段とを備えたことを特徴としている。
空缶同士を最小限の加工でほとんど原形をとどめたまま温水管としてリサイクルすることができる。また、この温水管に塩ビ管を貫通させると共に中間パッキン、端部シール部、及び端部シール部を塩ビ管に固定する固定手段を備えただけの簡易な構成によって太陽熱温水器を作ることができる。これによって、リサイクル性に優れ、コストが安くかつ組付け作業性にも優れた環境にやさしい太陽熱温水器を提供することができる。
また、請求項8に記載の太陽熱温水器は、請求項7に記載の太陽熱温水器において、前記中間パッキンの一側が、前記空缶の底部側突出部と密着するシール部及び前記空缶の底部側突出部外縁と接するテーパ部とを備え、
前記中間パッキンの他側は、空缶の上部側突出部と密着する密着シール面及び前記空缶の上部側突出部内縁に挿入される突出挿入部とを備えていることを特長としている。
中間パッキンの一側に空缶の底部側突出部と密着するシール部を有することで空缶の底部と液密性を保つことができる。また、中間パッキンの他側に空缶の上部側突出部と密着する密着シール面を有することで、空缶の上部側突出部の液密性を保つことができる。これによって、空缶同士を連結した際に連結部の液密性を確保することができる。
一方、中間パッキンの一側が空缶の底部側突出部の外縁と接するテーパ部を有することで、中間パッキンと空缶との同心度を維持することができる。また、中間パッキンの他側が突出挿入部を有することで、中間パッキンを空缶の上部側突出部内縁に挿入した際、空缶との同心度を維持することができる。これによって、多数の空缶同士を連結する際に空缶同士の同心度も維持することができ、構造体として強固な温水管を備えた太陽熱温水器を得ることができる。
以上説明したように、請求項1に記載の太陽熱温水器は、太陽光からの輻射熱を蓄積する温水管に空缶を利用し、温水管内の加熱された温水の放熱を防ぐ温水管カバーにペットボトルを利用している。当該空缶による温水管の蓄熱性は十分であり、実用的な温度の温水が得られ、ペットボトルによる温水管カバーの保温性も十分であり、十分実用に耐えうる太陽熱温水器を構成することができる。このように、専用部品の使用を省くことができるので、太陽熱温水器の製造コストを極めて低く抑えることができる。これにより、太陽熱温水器の普及率向上に寄与する。
また、回収された空缶およびペットボトルをほとんどそのままの状態で再利用するので、再処理のためのコストがかからず、リサイクルにかかるコストの低減およびリサイクル率の向上に寄与する。
しかも、飲料用の缶およびペットボトルはもともと食料品に用いられるものなので、耐食性に優れ、破損防止の観点から強度も比較的高くなっている。よって、これらの部材を利用する本発明の太陽熱温水器は、耐久性においても優れたものが得られる。
請求項2の太陽熱温水器は、複数の温水筒を並列配置状態で収容するので、小型で十分な加熱容量を備えた太陽熱温水器を製造することができ、省スペース化に寄与する。
請求項3の太陽熱温水器は、温水筒等を箱形状の収容体内に収容していることから、収容体がある種の温室効果を奏し、加熱された温水の保温性に優れる。しかも、連結部も収容体内に収容されているため連結部からの放熱も防ぐことができる。また、当該収容体には、透過面より入射した太陽光を反射する反射面を備えていることから、被加熱流体の加熱に際して太陽光の一方向からの照射だけでなく、反射光も有効に利用することができ、加熱効率が高い。
請求項4の太陽熱温水器は、温水管カバーを何重にもしているので、複数の独立した空気層が形成され断熱効率が向上し、温水管内の加熱された被加熱流体の放熱が更に抑制でき、比較的高温の温水が得られる。
請求項5の太陽熱温水器は、集光カバーを備えていることから、温水管の蓄熱性が向上し、被加熱流体の加熱効率が高くなる効果を奏する。
請求項6の太陽熱温水器は、温水管の周面を黒色に塗装されていることから、赤外線の吸収効率が向上し、被加熱流体の加熱効率が高くなる効果を奏する。
また、請求項7に記載の太陽熱温水器は、空缶同士を最小限の加工でほとんど原形をとどめたまま温水管としてリサイクルすることが可能となる。また、この温水管に塩ビ管を貫通させると共に中間パッキン、端部シール部、及び端部シール部を塩ビ管に固定する固定手段を備えただけの簡易な構成によって太陽熱温水器を作ることが可能となる。これによって、リサイクル性に優れ、コストが安くかつ組付け作業性にも優れた環境にやさしい太陽熱温水器を提供することが可能となる。
また、請求項8に記載の太陽熱温水器は、中間パッキンの一側に空缶の底部側突出部と密着するシール部を有することで空缶の底部と液密性を保つことが可能となる。また、中間パッキンの他側に空缶の上部側突出部と密着する密着シール面を有することで、空缶の上部側突出部の液密性を保つことが可能となる。これによって、空缶同士を連結した際に連結部の液密性を確保することが可能となる。
一方、中間パッキンの一側が空缶の底部側突出部の外縁と接するテーパ部を有することで、中間パッキンと空缶との同心度を維持することが可能となる。また、中間パッキンの他側が突出挿入部を有することで、中間パッキンを空缶の上部側突出部内縁に挿入した際、空缶との同心度を維持することが可能となる。これによって、多数の空缶同士を連結する際に空缶同士の同心度も維持することができ、構造体として強固な温水管を備えた太陽熱温水器を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施形態にかかる太陽熱温水器を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態に係る太陽熱温水器の全体構成を一部を切り欠いた状態で示している。
太陽熱温水器1は、複数の温水筒2を備える温水ユニットUと、温水ユニットUを収容する収容ボックス3とを備えている。
温水筒2は、図2に示すように、温水管カバー23の内部に温水管20が挿通収容された構造を有している。
温水管20は、複数の空缶21が直列に配置されて構成される。直列に配置された複数の空缶21は、温水ユニットUにおける対向する挟持板31,31にロングボルト22を介して挟持されている。温水管20を構成する空缶21としては、廃棄前に、例えばコーヒー、ジュース、ビール等の各種飲料用容器として使用されていた缶が用いられているが、形状自体が缶形状を有していれば良く、廃棄前の使用用途は特に限定されるものではない。また、材質についてもアルミニウム缶、スチール缶があるが、材質についても特に限定されるものではない。
すなわち、どのような空缶であっても本発明の太陽熱温水器には使用可能であり、空缶の再利用性を高めている。但し、実際の組立性向上等の観点からは、同種類の空缶を用いることが好ましい。また、空缶21の周面は黒色に塗装するのが好ましい。これにより赤外線の吸収効率を上げて、温水管20を太陽光で加熱し易くする。尚、もともと全体的に黒色にラベル印刷された空缶をそのまま使用しても同様の効果を奏する。
続いて、温水管20の組立手順について説明する。
温水管20の組立手順としては、まず、複数集められた同種の空缶21については、残留飲料あるいは内部に入り込んだゴミ等を洗い流すため内部を洗浄する。ついで、空缶21の頭部と底部に貫通孔を設ける。当該貫通孔は被加熱流体をスムーズに流通させるとともに空缶内部に空気のトラップを形成させないように十分な大きさの孔として形成するのが好ましい。尚、空缶は通常頭部の飲み口は開口しているので当該飲み口をそのまま利用しても良い。その場合、底部にのみ穿孔すれば良く、作業の手間が省ける。また、貫通孔を形成した後には、孔形成部にバリが生じたりするので、バリ取りを行う。その後、缶内部に残留した切削くずを除去するために缶内部を十分に洗浄する。尚、この段階で十分に缶内部を洗浄できるのであれば、前述した貫通孔穿孔前の缶内部の洗浄は省いても良い。
その後、図3に示すように、頭部貫通孔21a、底部貫通孔21bを有する空缶21をシール部材として機能するOリング24Aを間に介在させた状態で積み重ねていく。その際、各空缶21は、半径方向にずれないようにテープなどで接続部の周囲を仮止めしておくことが好ましい。貫通孔を有する空缶21をこのように直列に配置していくことにより、全体として一つの連通孔を有する温水管20が形成される。尚、Oリング24Aが空缶21の間に介装されていることで空缶21同士の接続部の空缶周方向外方に対して液密となって、温水管20の管としての機能を担保している。
尚、ここで、積み重ねる空缶21の数は任意であり、太陽熱温水器の加熱容量や設置スペースの関係から適宜決めれば良い。
温水管20は、挟持板31、31に可撓性を有するパッキン25を介して挟持される。ここで、パッキン25は、温水管20と挟持板31とを液密に接触させるものであり、可撓性を有している部材、例えば、ゴムからなる。形状としては、例えば、温水管20の貫通孔21bと対向する位置に貫通孔25aを有する、温水管20の端部形状に適合した円環状部材が用いられる。尚、図3においては、空缶21の底部と挟持板31とがパッキン25を介して配置された構造について示しているが、挟持板31が空缶21の頭部をおさえる反対側の部分については、空缶21の頭部がパッキン25を介して缶周方向外方に向かって液密に配置されるだけで基本的に同じ構造をとるため、この部分に関する図示及び説明は省略する。
挟持板31は、細長板状の部材からなり、太陽熱温水器のフレーム部分を構成するのに必要なだけの強度を有するものであればどのようなものを使っても構わない。本実施形態においては、廃棄されたプラスチックや紙などを原料としてリサイクルされた廃プラスチックリサイクル板を用いている。
このように、回収された空缶、ペットボトルを再利用するのみならず、フレーム材にもリサイクルされた部材を使うことにより、本発明にかかる太陽熱温水器の製造コストを格段に削減することができるとともに、地球環境保全にも寄与することができる。
挟持板31は強度を十分に確保する所定の厚みを有する板材であり、通水用貫通孔31aと、ロングボルト用貫通孔31bが穿設されている。通水用貫通孔31aは、温水管20の貫通孔21bと対向する所定箇所に設けられている。また、通水用貫通孔31aには、被加熱流体を導入又は導出する、例えば、L字状の管(以下、エルボという)26が取り付けられる。尚、通水用貫通孔31aには雌ネジが形成されている。
エルボ26は、一端に雄ネジ部26aとフランジ26bを有し、他端にも雄ネジ部26cを有している。エルボ26は、雄ネジ部26aにエルボ側パッキン26dを嵌合した状態で挟持板31の通水用貫通孔31aに螺合されることにより被加熱流体の導入部または導出部を形成している。これにより、温水管20の貫通孔21bと、パッキン25の貫通孔25aと、挟持板31の通水用貫通孔31aと、エルボ26とにより流路が形成される。
ロングボルト用貫通孔31bは、ロングボルト22が挿通される孔であり、例えば温水管20を中心として、その周方向適所に等間隔で4個穿設されている。
ロングボルト22は、挟持板31を介して温水管20を軸線方向に挟持するもので、長尺のボルトであり両端部にナット22aとワッシャ22bが組み合わされている。ロングボルト22は、4本用意され、挟持板31のロングボルト用貫通孔31bにそれぞれ挿通されている。尚、ロングボルト22は、温水管20を挟持板31を介して均等に挟持できれば、その数は4本に限定されるものではない。従って、ロングボルト22は、3本あるいは2本であっても構わず、逆に4本以上であっても構わない。尚、ロングボルトが4本以外の場合は、これに合わせて、ロングボルト用貫通孔31bも適所に所定個数だけ穿設されている。
続いて、温水管カバー23の構造について説明する。
温水管カバー23は、複数のペットボトルの胴体部分のみからなる筒体を連結して形成したものである。温水管カバーを構成するペットボトルとしては、廃棄前に、例えば各種飲料用容器として使用されていたペットボトルが用いられ、飲料の種類は特に限定されない。ペットボトル230は、図4に示すように、ラベルを外した後、矢線Aで示す底部所定位置と矢線Bで示す上部所定位置を鎖線に沿って切断した後内部を洗浄し、図5に示すような筒体231に加工される。筒体231は複数用意され、一の筒体231の底部に他の筒体231の上部を嵌合させ、嵌合部231aを、例えば、ホットメルトによって接続し、各筒体を連結していく。この作業を繰り返すことにより温水管カバー23として機能する長尺の透明の筒体を形成する。ここで、温水管カバー23を形成する筒体231の連結する数は任意であり、温水管20の長さとの関係で適宜決めれば良い。
このようにして得られた温水管20及び温水管カバー23は、以下のようにして温水筒2へと組み上げられていく。
まず、適所に所定個数の通水用貫通孔31aとロングボルト用貫通孔31bを穿設した図3及び図6に示す一方の挟持板31を用意する。そして、図3に示すように、温水管20を、パッキン25を介在させた状態で貫通孔21bと通水用貫通孔31aが対向する位置に配置する。これと同時に、ロングボルト貫通孔31bにワッシャ22bとナット22aを一端に組み付けたロングボルト22を挿通する。
次いで、温水管20及びロングボルト22を内包するように温水管カバー23(図7参照)を配設する。このような温水管20、ロングボルト22、温水管カバー23の組み合わせを一つの温水筒エレメントとし、挟持板31に当該温水筒エレメントを複数並列に配置していく。その後、上述した一方の挟持板31と同形状の他方の挟持板31を前記温水筒エレメントを挟んで対向配置させる。このように組み立てることで、温水管20の頭部側の貫通孔21aと他の挟持板31の通水用貫通孔31aがパッキン25を介して当接し、他の挟持板31のロングボルト用貫通孔31bにそれぞれロングボルト22が挿通された状態となる。そして、ロングボルト22の他端つまり他の挟持板31から突き出した部分にワッシャ22bとナット22aを取り付け、当該ナット22aを締め付けることにより温水管20及び温水管カバー23を軸線方向にしっかりと挟持する。
次いで、一側の挟持板31と他側の挟持板31の通水用貫通孔31aにそれぞれエルボ26、26を取り付ける。このエルボ26は、一方が被加熱流体の導入部26A、他方が被加熱流体の導出部26Bとなる。尚、温水管カバー23が挟持板31と接する一端部および他端部には、気密性を高めるため、温水管カバー23の端部形状に適合する例えば円環状の図示しないパッキンを配設することが好ましい。
以上のようにして、図2に示すような温水管20および温水管カバー23が挟持板31、31に挟持された状態の温水筒2が形成される。当該温水筒2は、任意の数だけ並列に配置され、図6および図7に示すような温水ユニットUの形態をとる。すなわち、当該温水ユニットUは、挟持板31,31に挟持された温水筒2が複数並列に配置されるようになる。このとき、隣り合う温水筒2の導入部26Aと導出部26Bとは接続管27で連結される。そして、被加熱流体の供給源から被加熱流体を温水ユニットU内に導入する始端部に始端導入部28が取り付けられるとともに、加熱された被加熱流体を温水ユニットUから導出する終端部に終端導出部29が取り付けられる。
接続管27は、例えば金属製の管からなり、図6に示すように両端部にシール部材付きのナットを備えた連結部27aを有している。接続管27は、両端の連結部27aが、導入部26Aと導出部26Bの雄ネジ部26cに螺合され、これにより、隣り合う温水筒2の導入部26Aと導出部26Bとが連結されている。尚、接続管27には、隣り合う温水筒2の導入部26Aと導出部26Bとを連結することができるものであれば、金属製の管に限定されることなく、ゴム管、ホースなどを用いても良い。
始端導入部28は、温水筒2の始端部分に取り付けられる管であり、例えば、所定長さの金属管が用いられる。当該金属管の一端には雄ネジが形成されており、導入部26Aと同じ要領で挟持板31に取り付けられている。
また、終端導出部29は、温水筒2の終端部分に取り付けられる管であり、始端導入部28の金属管と同一の金属管が使用され、同じ要領で挟持板31に取り付けられている。
以上のように組み立てられた温水ユニットUは、図1に示す収容ボックス3内に収容される。
収容ボックス3は、外枠32と、太陽光透過窓33、背面反射板34とを備えている。
外枠32は、所定寸法の矩形状板材32aを枠状に組み、四隅に断面L字状のコーナー金具32bを配設してボルト32cにより締め付け固定することにより組み立てられている。尚、板材32aには、前記した挟持板31と同じ廃プラスチックリサイクル板を用いることが好ましい。
太陽光透過窓33は、外枠32の一方の開口面を塞ぐものであり、当該開口面と同形状の透明部材、例えばガラス板からなる。当該ガラス板は、ガラス押さえ部材33aにより4辺を押さえられ、外枠32に固定されている。ガラス押さえ部材33aは、断面L字状の金属製部材であり、外枠32にボルト33bで締結することでガラス板を固定するようになっている。また、当該ガラス板を固定する際、外枠32とガラス板との接触部には、ガラス板への衝撃緩和および外枠内の気密性確保のためブチルゴムが配設されている。尚、太陽光透過窓33としては、太陽光を透過するものであれば、ガラス板に限定されるものではなく、例えば透明の合成樹脂板を用いても良い。
背面反射板34は、太陽光透過窓33から入射した太陽光を反射させるものであり、例えば、鏡面処理されたステンレススチール板が用いられている。当該ステンレススチール板は、太陽光透過窓33と対向する開口面すなわち外枠32の背面を塞ぐとともに太陽光を反射させて、被加熱流体の加熱効率を向上させる役割を果す。背面反射板34は、当該開口面と同形状の板材で、外枠32に例えばネジ止め等によって固定されている。尚、背面反射板34には、入射した太陽光を反射できれば前記ステンレススチール板に限られるものではなく、例えば、廃プラスチックリサイクル板に鏡を取り付けたもの、鏡面処理されたアルミニウム板等を用いても良い。
そして、温水ユニットUは外枠32内で、例えばコーナー金具とボルトなどの固定手段(図示せず)により固定され、その始端導入部28と終端導出部29とを外枠の外部に突出させている。また、始端導入部28と終端導出部29の先端には、外部配管との接続用ジョイント手段28j、29jが設けられている。
以上のようにして組み立てられた太陽熱温水器1は以下のような作用を有している。
本発明の太陽熱温水器1は、上述したように外枠32内に温水ユニットUが配設され、前面がガラス板からなる太陽光透過窓33を有し、背面に背面反射板34を有する全体として密閉された箱形状を有している。そして、太陽光透過窓33から太陽熱温水器1内に入射した太陽光及び背面反射板34により反射した反射光により温水ユニットUの温水管20に蓄熱され、管内の被加熱流体が加熱される。
一方、温水管20の周りには図7に示すように温水管カバー23により空気層Kが形成されており、この空気層Kは温水管20内の被加熱流体の放熱を防ぐ働きをしている。更に、太陽熱温水器1は密閉されているため、温水器内部の領域にも空気層が形成されており、放熱による被加熱流体の温度低下を抑制する。特に、温水ユニットUの各温水筒2を連結する連結部分(導入部26A、導出部26b、接続管27)も収容ボックス3内に収容されているため、当該連結部分からの放熱も効果的に抑制することができる(図1参照)。
次に、本発明の太陽熱温水器1の実際の使用態様について図8を用いて説明する。
太陽熱温水器1は、これを太陽光の当たる適当な場所に設置し、適当な接続管を介して貯湯タンク5、電気温水器6と組み合わせることで使用するようになっている。配管態様としては、まず太陽熱温水器1の始端導入部28に第1バルブ41を備える水道管からの管45を接続する。また、太陽熱温水器1の終端導出部29には第2バルブ42を備える管46の一端を接続する。そして、管46の他端を貯湯タンク5の導入部51に接続する。貯湯タンク5の導出部52には、第3バルブ43を備える管47の一端を接続する。そして、管47の他端を電気温水器6の導入部61に接続する。電気温水器6の導出部62には、第4バルブ44を備える管48の一端を接続する。そして、管48の他端はバスタブ7に温水を供給可能な位置に配設される。
このような配管態様を備えることで、水道管から供給された水道水は太陽熱温水器1内に導入され、太陽熱により加熱されて一定時間後に所定の温度まで上昇した温水が得られる。当該温水は保温機能を有した貯湯タンク5に一旦貯められ、適当な量の温水を確保する。
次いで、実際に温水を使用する場合、用途により温水の温度が異なるため、使用目的に合った温度にする補助手段としての電気温水器6に貯湯タンクから温水を供給する。電気温水器6で所望の温度に調節された温水は第4バルブ44を開くことによりバスタブ7等へ供給される。このように太陽熱温水器1を予備加熱手段として利用することで、水道水を電気温水器6のみで加熱するよりもかなりの省エネ効果を期待することができる。
尚、太陽熱温水器1の使用態様としては、上記態様に限定されるものではなく、貯湯タンク5を省略して太陽熱温水器1から電気温水器6に温水を供給してもよく、逆に電気温水器6を省略して貯湯タンク5からバスタブ7等に温水を直接供給しても構わない。また、太陽熱温水器からバスタブ7等へ温水を直接供給しても構わない。
次いで、本発明の一実施形態にかかる太陽熱温水器1の変形例について説明する。
上述した本実施形態では、空缶21と空缶21との間に介在させるOリング24Aとして、図9に示すような断面円形状で全体として円環状のゴムが使われている。しかしながら、空缶21を積み重ねる際、単純形状のOリング24Aでは空缶21の座りが悪く、温水管20を真直ぐに配列するのが難しい場合がある。そのような場合、図10に示すような断面形状が空缶21の頭部と底部の形状に適合した形状のOリング24Bを用いることが好ましい。Oリング24Bによれば空缶21の座りがよく、温水管20を真直ぐに積み上げて配列することが容易になる。また、空缶21の種類によっては、頭部や底部の形状が複雑なものもあるので、それらの形状に対応した断面形状を有するOリング24Cを用いることも好適な変形例といえる(図11(b)参照)。尚、図11(a)はOリング24Cを用いた場合の空缶21同士の積み重ね部分を一部切り欠いて局所的に示したものである。同図からも頭部や底部の複雑な形状を有した空缶21が真直ぐに積み重なっていることがわかる。
次に、空缶21を積み重ねて温水管20を形成していく際、空缶21を真直ぐに配列するためにテープにより仮止めすることを行う。更には、直列に配列した空缶21同士のずれを極力なくすために、空缶21と空缶21との連結部に、図12に示すような管状の連結補助部材210を用いることが好ましい。連結補助部材210は、空缶21の外周に適合する内径を有する管であり、金属製の管であっても合成樹脂製の管であってもよい。連結補助部材210により温水管20の組立性を更に向上させるとともに、液漏れ防止やロングボルト22の締め付け時の空缶21の座屈防止に寄与する。
また、反射光を有効利用する変形例として、例えば、図13に示すように、温水筒2の温水管カバー23の内側にリフレクタ232を配設することが好ましい。リフレクタ232は、例えば、アルミ箔を湾曲させたものであり、温水管カバー23の内面に沿って配設する。これにより反射光を温水管20に照射できるとともに空気層Kを暖め、保温効果を向上させることにも寄与する。
また、ここでは図示しないが、外枠32に取り付けられる背面反射板34に凹凸をつけ、断面形状が略波形の反射板とすることも好適な変形例といえる。これにより単なる平面状の反射板を備えた場合にくらべて被加熱流体の加熱において反射光を更に有効利用することができる。
また、図13に示すように、温水筒2の太陽光が入射する側の表面に集光部材233を貼着することが好適な変形例である。これにより集光効率が向上し、温水管20内の被加熱流体の加熱が促進される。集光部材233は一例として、例えば、ペットボトルを半割にしたものを凹凸形状に成形し、ある種のフレネルレンズのように加工したものであり、太陽光を集光する役目を効果的に果たすものである。
尚、リフレクタ232と集光部材233を両方とも温水筒2に配設する構成としても良く、どちらか一方だけを配設する構成としても良い。
次に、温水筒2の保温効果を高める更なる変形例として、例えば、図14に示すように温水カバー23の外側にさらに大型のペットボトルで形成した第2温水管カバー234を配設して、温水管20の周囲に第1空気層K1と第2空気層K2を設けることが好ましい。これにより、空気層が2層構造となり保温効果が向上する。
また、前述したロングボルト22は、その全長にわたって雄ネジが形成されているが、この場合、比較的コストが高い部材となってしまう。そこで、ロングボルト22の代わりに図15に示すようなパイプ221の両端に雄ネジ部材222,222が挿通されたスタッドボルト状の長尺締結具220を用いることが好適な変形例である。パイプ221は、金属製の管材であり、温水管20の長さに対応して適宜所望の長さに設定される。雄ネジ部材222は、雄ネジが形成された雄ネジ部222aとパイプ221に挿通される挿通部222bを有する棒状部材である。雄ネジ部222aには、ナット223や図示しないワッシャが適宜組み合わされている。雄ネジ部材222aはその挿通部222bがパイプ221の端部に挿通され溶接固定される。これにより、部品のコストを下げることができるとともに、パイプ221が中空のため太陽熱温水器の重量低減にも寄与する。
また、本発明の太陽熱温水器においては、必ずしも上述した外枠を必要とするものではなく、例えば、図16に示すように、温水ユニットUの挟持板31,31を温水ユニットUの外板の一部として利用しても良い。即ち、挟持板31,31にコーナー金具32bを用いて板材31b,31bを取り付けることで枠状のフレームとし、当該フレーム開口部の一側に太陽光透過窓としてのガラス板を取り付け、当該太陽光透過窓に対向する面に背面反射板を取り付ける。これによって、簡便な構成の太陽熱温水器を得ることができる。
更に、上述した温水筒2は複数並列に配置する構成を必ずしもとる必要はなく、任意の長さの1本の温水筒2だけでも十分に温水を得ることができ、本発明の太陽熱温水器を形成することができる。
次に、温水筒の別な変形例について説明する。
第2温水筒8は、図17に示すように、アウター温水管カバー81と、アウター温水管カバー81内に収容されるインナー温水管カバー82と、インナー温水管カバー82内に配設される温水管9と、温水管9に連結するジョイントパイプ10とを備えている。そして、複数の第2温水筒8がフレーム材35に固定されることで、温水ユニットが形成され、当該温水ユニットが前述の収容ボックス3に取り付けられることにより本発明にかかる太陽熱温水器の別な実施形態を有している。
温水管9は、頭部と底部に貫通孔を有する複数の空缶91を直列配置した空缶連結体と、当該空缶連結体の両端に配置された一対のエンドプレート92,92と、当該エンドプレート92,92同士を接続する長尺締結具93とを備えている。
尚、空缶連結体は、複数の空缶91を図示しないリング状のシールパッキンを間に介在させて連結されている。前記シールパッキンは可撓性を有する例えばゴム製の部材で各空缶の連結部を空缶周方向に対して液密を維持した状態で連結するものである。その形状としては、全体として環状であり、ある空缶91の頭部とこれと隣接する空缶91の底部との間で前者の空缶91の頭部形状と後者の空缶91の底部形状とがシールパッキンを介して適合する形状を有している。尚、空缶91の周面は黒色に塗装しておくのが好ましい。
エンドプレート92は、長尺締結具93と協働して空缶連結体を挟持するものであり、例えば、ステンレススチール製の薄肉の板材である。尚、エンドプレート92には、パイプ取付用貫通孔と長尺締結具取付用貫通孔が穿設されている。
尚、パイプ取付用貫通孔は、空缶91の貫通孔と対向する位置に設けられている。また、当該パイプ取付用貫通孔92aには、図18に示すようにかしめナット94がかしめ固定されている。長尺締結具取付用貫通孔は、長尺締結具93(図17参照)が挿通される孔であり、例えば、空缶連結体を中心として、その周方向適所に等間隔で4個穿設されている。
長尺締結具93は、図15に示す長尺締結具220と同様の形状を有しており、空缶連結体の両端に配置されたエンドプレート92,92同士を接続するものである。すなわち、長尺締結具93の端部に螺合されているナット93a(図17参照)を締め付けることによりエンドプレート92,92を介して空缶連結体を軸線方向に挟持することができる。
ここで、エンドプレート92と空缶連結体の端部との間には、エンドシールパッキン95が配設される。エンドシールパッキン95は、空缶連結体とエンドプレートとの間を液密に保つ働きをし、例えば、可撓性を有するゴムでできている。また、エンドシールパッキン95は、空缶連結体の端部形状及びエンドプレートと適合する形状で、全体として円環状をなしている。
エンドプレート92を貫通するジョイントパイプ10は、図19に示すように、中空の管状部材であり、一端に雄ネジ部10aが設けられており、軸方向の中間部分の適当な位置に第1のOリング11と、第2のOリング12とを備えている。また、ジョイントパイプ10は、図18に示すように、エンドプレート92にかしめ固定されているかしめナット94にその雄ネジ部10aが螺合されている。
図17に示すアウター温水管カバー81は、複数のペットボトルを連結して形成されたものであり、両端部に頭部をそのまま残したペットボトルを頭部同士が互いに反対側を向くように配置して、中間部分には複数のペットボトルの胴体部分を使用して構成されている。アウター温水管カバー81は、両端部に頭部をそのまま残したペットボトルを使用したことを除いては、前述した温水管カバー23と同様にして形成されるので、詳細な説明は省略する。
インナー温水管カバー82は、アウター温水管カバー81に用いられるペットボトルよりも容量の少ないペットボトルを用いることを除いてはアウター温水管カバー81と基本的構造は同じであるので、詳細な説明は省略する。
ここで、アウター温水管カバー81とインナー温水管カバー82のそれぞれの両端部のキャップ81a、82aにはジョイントパイプ10を挿通することができる貫通孔が穿設されている。また、アウター温水管カバー81とインナー温水管カバー82との間にはディスタンスピース83が配置されている。尚、ディスタンスピース83はアウター温水管カバー81とインナー温水管カバー82との間隔を一定に保つスペーサとしての役割を果たしている。
以下、第2温水筒8の構成について、その組み立て手順を交えて説明する。
第2温水筒8では、図17に示すように、ジョイントパイプ10が螺合された温水管9がインナー温水管カバー82内に配置されている。このとき、インナー温水管カバー82と内部の温水管9との相対的な位置が所望の関係となるようにインナー温水管カバー82と温水管9とを配置する。そして、ジョイントパイプ10の第1のOリング11(図19参照)をインナー温水管カバー82の口82bと当接する位置に配置する。この状態で、第1のOリング11を挟み込むようにしてキャップ82aを口82bに螺合させ、インナー温水管カバー82を固定する。
更に、温水管9を内包したインナー温水管カバー82を、アウター温水管カバー81内に配置する。このとき、フレーム材35の取付凹部35aの貫通孔35bにアウター温水管カバー81の口を挿通する。そして、当該口と当接する位置にジョイントパイプ10の第2のOリング12を配置する。この状態でキャップ81aを当該口に螺合させる。これにより第2のOリング12が挟み込まれるとともに、当該口の下方に位置するフランジ部81cとキャップ81aによりフレーム材35が挟持されアウター温水管カバー81および温水管9がフレーム材35に固定される。
以上のようにして組み立てられた第2温水筒8は、ペットボトルの頭部をそのまま利用しているので、気密性が高く、組立作業性が良好でしかも強度的にも信頼性が高い。
本発明者らは、容量が190mlのコーヒー缶と容量が2リットルの角型のペットボトルを用い、図1に示すような、収容ボックス3内に温水ユニットUを備えた本発明の太陽熱温水器を製造した。温水筒2Aとしては、図20に示すように、角型のペットボトル236内にコーヒー缶からなる温水管211が2列配置されている構成をとった。尚、収容ボックス3の外寸は縦1200mm、横1100mmとした。尚、1本の温水筒2A内には、コーヒー缶を9本直列に連結したものを2列配置したので、温水筒1本当たり18本のコーヒー缶が配置されている。その温水筒2Aを11本配置して温水ユニットUを形成し、当該温水ユニットUを収容ボックス3内に収容して太陽熱温水器を製造した。
すなわち、このような太陽熱温水器を1台製造することでコーヒーの空缶198個、ペットボトル55個を面倒なリサイクル処理を行うことなく最小限の加工で再利用できることが分かった。従って、少ないコストで廃棄物の再利用を行うことができ、時代のニーズに合った太陽熱温水器を提供できることが分かった。
また、本発明者らは、上記太陽熱温水器を8基製造し、実際に運転した。その結果、家庭で使用するには十分の温度の温水を約300リットル得ることができた。すなわち、本発明の太陽熱温水器は一般家庭で十分使用できる容量と温度の温水をコストをかけずに簡単に得ることができることが分かり、本発明の有用性を確認することができた。
続いて、本発明の第2の実施形態にかかる太陽熱温水器について図面に基づいて説明する。なお、第1の実施形態にかかる太陽熱温水器と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本発明の第2の実施形態にかかる太陽熱温水器100は図21に上部を示すと共に図22に下部を示すように、空缶101を直列に連結して構成された温水管110と、当該温水管110を貫通する塩ビ管120と、空缶同士の間に介装される中間パッキン130と、温水管両端に備えられた端部シール部140と、端部シール部140に当接するエンドプレート150と、端部シール部140を塩ビ管120に固定するS型ストップリング(固定手段)160とを備えている。
温水管110は、頭部と底部に貫通孔101a,101bを備えた複数の空缶101を、各空缶の間に中間パッキン130を介装させることで当該空缶同士の接続部が円周方向外方に対して液密を保ちながら互いに直列連結されて構成されている。また、各中間パッキン130及びこの中間パッキン130と当接する空缶101の一部を囲繞するように空缶同士の保持用樹脂フィルム170が貼着され、複数の空缶101と中間パッキン130との組み合わせを温水管110として一体化する役目を果たしている。
空缶101に穿設される貫通孔101a,101bの寸法は、一例として空缶101の上部においては直径45mmの孔寸法であり、空缶の底部にも同様に直径45mmの孔寸法となっている。しかしながら、貫通孔101a,101bの直径はこの寸法に限定されるものではなく、塩ビ管120を挿通でき、かつ空缶101の強度を十分確保するために空缶101の上部側突出部101cと底部側突出部101dを残すことができる程度の孔径であれば如何なる孔径であっても良い。また、貫通孔101a,101bを穿設した後であって温水管組付け前に一旦空缶101を洗浄して貫通孔穿設に伴う切り屑を洗い流すことが好ましい。
一方、温水管110を貫通する塩ビ管120は、上述した貫通孔101a,101bが形成された空缶101を複数個まとめて貫通するようになっており、当該塩ビ管120の長手方向一方の端部(水入口側端部)近傍であって温水管110の一端側空缶に対応する位置には、水循環用孔121が複数個所定間隔で穿設されている。より具体的には塩ビ管120の水循環用孔121は、塩ビ管120と温水管110を互いに固定した状態で一端側の空缶101に対応する位置において塩ビ管の長手方向に7個ずつ周方向両側に穿設され、これによって合計14個の水循環用孔121が塩ビ管120の一端側(水導入口側)に設けられている(図中では塩ビ管120の周方向一側に穿設された水循環用孔121のみ図示)。
そして、塩ビ管120の一端側(水導入側)の水循環用孔121に隣接して塩ビ管120の長手方向中央側にポリエチレンでできたプラグ(水導入用プラグ)125が密着挿入されている(図21参照)。このプラグ125は塩ビ管120の一端から導入された水が塩ビ管120内をそのまま通過するのを阻止して水循環用孔121を介してこの水循環用孔121に対応する空缶101内に当該水を導く役目を果たしている。
また、図22に示すように塩ビ管120の長手方向他方の端部(温水排出側端部)近傍には水循環用孔122が複数個所定間隔で穿設されている。より具体的には、塩ビ管120の長手方向において温水管他端側の空缶に対応する位置に7個ずつ周方向両側に合計14個の水循環用孔122が穿設されている(図22中においては水循環用孔122の一部のみ図示)。
また、塩ビ管120の他端側(水排出側)の水循環用孔122に隣接して塩ビ管120の長手方向中央側にポリエチレンでできたプラグ(温水排出用プラグ)126が密着挿入されている(図22参照)。このプラグ126は塩ビ管120の水循環用孔122から塩ビ管120内に戻った水がそのまま塩ビ管内に溜まったままとなるのを阻止して水循環用孔122を介して塩ビ管120の他端側(温水排出側)から温水を効率良く排出する役目を果たしている。なお、塩ビ管120は、一例として直径18mmの塩ビ管が使用されている。
このように、塩ビ管120には水循環用孔121が穿設されると共にプラグ125が密着挿入されているので、例えば塩ビ管120を温水管110に挿入して端部シール部140及びS型ストップリング150で当該温水管110に塩ビ管120をしっかりと取り付けた時、塩ビ管120の一端側に導入された水の流れがプラグ125で阻止されると共に当該水循環用孔121を介して一旦温水管110内に導かれ、温水管110の各空缶101を経由して塩ビ管120の他端に温水として達し、この温水を水循環用孔122として再び塩ビ管120内に導いて塩ビ管120の他端から排水するようになっている。
空缶同士の間に介装されている液密用の中間パッキン130は例えばゴムでできた断面異形のリング形状を有している。中間パッキン130の一側には空缶の底部側突出部101dと密着するシール部131及び空缶の底部側突出部101dの内縁と接するテーパ部132とを備えている。また、中間パッキン130の他側には空缶の上部側突出部101cと密着する密着シール面133及び空缶の上部側突出部101c内縁に挿入される突出挿入部134を備えている。
そして、中間パッキン130の一側に備わったシール部131及び他側に備わった密着シール面133によって空缶101と中間パッキン130との液密状態を保つことができ、塩ビ管120の水循環用孔121を介して温水管内に充満した水や温水が温水管110の円周方向外方に対して漏れないようになっている。
また、中間パッキン130の一側に備わったテーパ部132及び中間パッキン130の他側に備わった突出挿入部134は中間パッキン130と空缶101との同心度を維持するためのもので、これらの中間パッキン130を介して空缶同士を複数直列に連結した場合、空缶同士の同心度を結果的に保つことができるようになっている。
端部シール部140は例えばゴムでできており、空缶の上部をシールする上部側端部パッキン141と空缶の底部をシールする底部側端部パッキン145とからなる。上部側端部パッキン141は、空缶の上部側突出部101cと着座する着座シール面141cを備えると共に、空缶の上部側突出部101c内縁に挿入される挿入突出部141dとを備えている。また、上部側端部パッキン141の空缶当接面と反対側には円板状の形成された管パッキン141pが一体に備わり、塩ビ管120の周囲に密着して温水管内部からの水又は温水の漏出を防いでいる。そして、上部側端部パッキン141の反対側面には例えば金属からなるエンドプレート150が密着し、S型のストップリング160を塩ビ管120に咬止することによって上部側端部パッキン141とエンドプレート150が塩ビ管120の長手方向所定位置に固定されるようになっている。
底部側端部パッキン145も上部側端部パッキン141と同様に一側が空缶101の底部側突出部101dと密着するシール部145d及び底部側突出部101d外縁と接するテーパ部145eを備え、他側には円板状に形成された管パッキン145pが一体に備わり、塩ビ管120の周囲に密着して温水管内部からの水又は温水の漏出を防いでいる。そして、管パッキン145pの反対側面には、エンドプレート150が密着している。また、エンドプレート150に隣接して上部側端部パッキン141と同様にS型ストップリング160が塩ビ管120に咬止され、底部側端部パッキン145及びエンドプレート150を塩ビ管120の長手方向に拘束するようになっている。
また、上述したように空缶同士を連結保持するための粘着テープ状の樹脂フィルム170が中間パッキン130の周囲を囲繞するように巻かれている。しかしながら、この樹脂フィルム170の代わりに空缶101が連結されて構成された温水管110の長手方向全体に亘って一本もしくは複数本のアルミテープ180(図21及び図22において一部を二点鎖線で図示)を貼付けても良い。これによっても、空缶同士の連結を強固に維持することが可能となる。
S型ストップリング160は外形が略C字形状を有し、その端部に内径拡開用の2つの穴(図示せず)が設けられて当該穴間の間隔を拡げることによってS型ストップリング160の内径を大きくすることができる。そして、内径が大きくなったS型ストップリング160に塩ビ管120を挿通し、当該塩ビ管120の適所においてS型ストップリング160の拡開状態を解除することにより、S型ストップリング160の内周部を塩ビ管120の外周面にくい込ませる。これによって、この適所位置においてS型ストップリング160に隣接するエンドプレート150を拘束し、これによって上部側端部パッキン141と底部側端部パッキン145の塩ビ管長手方向への動きを拘束するようになっている。
なお、上述の太陽熱温水器100を組み立てるに当たって、例えば細長の2枚の板からなる断面L型アングルの治具を使用するのが良い。すなわち、この治具に空缶、中間パッキン130、及び端部シール部140を適当数並べてこれらに塩ビ管を挿入する。そして端部シール部140にエンドプレート150を押え付け、S型ストップリング160をエンドプレート150に隣接して塩ビ管120に咬止する。これによって、太陽熱温水器100を簡単に組み付けることができる。なお、S型ストップリング160を使用する代わりに塩ビ管自体にネジを切ってナット等の締結具を利用しても良い。これによっても端部シール部140を塩ビ管120の長手方向において適所位置で拘束して固定することができる。また、温水器110を貫通する塩ビ管120より一回り外周の太い塩ビ管を適当な長さに切断して、この塩ビ管に塩ビ管120を挿通して適所位置で両者を接着し、これによって端部シール部140を塩ビ管120に固定するようにしても良い。
続いて、以上のようにして組み立てた太陽熱温水器100の作用について説明する。塩ビ管120の一方の口を水導入孔として例えば水道の蛇口に接続し、温水を使用する場所に他方の口を開放しておく。これによって、水道の蛇口から塩ビ管120内に供給された水はプラグ125で塩ビ管120内を通過するのを阻止されると共に、塩ビ管120の水循環用孔121を介して一旦、空缶101(図21参照)に流入し、温水管の一端側の空缶内に充満する。これに続いて空缶101の貫通孔を介して隣接する空缶101に水が移動してやがては温水管110の他方の端部に配置された空缶101(図22参照)まで達する。なお、この空缶を水が順序良く流れる過程で空缶表面に受けた太陽エネルギーによってこの水が温められて温水となる。そして、端部側(温水排出側)における塩ビ管120の水循環用孔122を介してこの温水が空缶101から再び塩ビ管120の中に流入して当該塩ビ管120を介して排出口側から排出される。
すなわち、プラグ125(図21参照)が塩ビ管120の水循環用孔121に隣接して密着挿入されているので、塩ビ管全体を水が流れることなく、空缶101が受けた太陽エネルギーを温水化に効率的に利用できる。
また、プラグ126(図22参照)が塩ビ管120の水循環用孔122に隣接して密着挿入されているので、水循環用孔122を介して空缶101から塩ビ管120に再び流入した温水が塩ビ管120内で一部溜まって排出されなくなくのを防止する。
すなわち、塩ビ管120の中央部分には水が通過や滞留しないようになっており、これによって水は直列に並べられた空缶の中を順序良く流れることになり、効率良く水を温水として利用することができるようになる。
このように、各空缶101はその表面が太陽熱で温められ、これに応じて空缶内の水も温められながら塩ビ管120の出口方向に徐々に移動して温められた水は温水として塩ビ管120の出口から排水され、これを農業用灌漑水として直接利用したり、電気温水器を利用して少ない電力で省エネを図りながら高温に加熱して利用する。
なお、プラグ126を塩ビ管120に必ずしも挿入しなくてもプラグ125が少なくとも塩ビ管120の水導入口側に密着挿入されていれば良い。これによって塩ビ管120に導入した水を水導入側の空缶101に確実に導くことができる。また、プラグ125の代わりに塩ビ管120に絞りなどの特別な加工を施して塩ビ管中央部分を水が流れるのを阻止しても良い。
なお、上述の実施形態にかかる太陽熱温水器100は第1の実施形態にかかる太陽熱温水器とは異なり空缶の周囲にペットボトルを加工した筒体を備えていないが、上述したように空缶101の表面全体に太陽熱が加わることで十分な加熱効果を得ることが可能である。しかしながら、後述する応用例に示すようにペットボトルを加工した筒体を更に組み合わせることで、より高い加熱効果を得ることも可能である。
以上のようにして構成された太陽熱温水器100は、空缶同士を最小限の加工でほとんど原形をとどめたまま温水管110として利用することができる。そのため、リサイクル性に優れた太陽熱温水器100を実現することができる。また、温水管110に塩ビ管120を貫通させると共に中間パッキン130、端部シール部140、エンドプレート150、及び端部シール140とエンドプレート150を塩ビ管120に固定するS型ストップリング160を備えただけの簡易な構成のため、コストが安くかつ組付け作業性にも優れた環境にやさしい太陽熱温水器100を実現することができる。
これに加えて、本実施形態にかかる太陽熱温水器100は、これに使用される中間パッキン130に独特の構造を有し、かつこれに伴う特有の作用効果を奏している。すなわち、中間パッキン130の一側に設けたシール部131と他側に設けた密着シール面133によって空缶連結部の液密性を確実に保つ。また、中間パッキン130の一側に設けたテーパ部132と中間パッキン130の他側に設けた突出挿入部134によって空缶同士の同心度を維持し、これによって、多数の空缶同士を連結しても構造体として強固な温水管を容易に組み立て可能とし、この強固な温水管を備えた太陽熱温水器を実現することができる。
なお、上述の仮止め用の樹脂フィルム170や温水管の長手方向に貼着可能なアルミテープ180については、これらを選択的に使用するように記載したが、これら両方を利用してより強固な温水管を構成しても良いことは言うまでもない。
また、空缶101を多数連結して太陽熱温水器100を構成する場合は、当該温水器全体の剛性を確保して温水器自体に座屈や曲げが生じないように、空缶同士の適当な位置に中間パッキン130に加えてベースプレート(図示せず)を介装させるのが好ましい。このベースプレートは中間がポリエチレンの円板で両側がSUSの円板からなり適当な厚みのサンドイッチ構造体からなる補強用プレートである。そして、中央部には塩ビ管挿通用孔が穿設され、当該塩ビ管挿通用孔の周囲には周方向所定間隔で空缶内の水又は温水を通過させる流通孔が穿設されている。このベースプレートを空缶同士の間において適当な間隔で中間パッキン130に隣接して介装させることで、太陽熱温水器100の強度や剛性を高めることができ、太陽熱温水器100を後述する特別なフレーム内に収容せずにそのまま屋外に設置しても長期間使用することが可能となる。
続いて、本実施形態にかかる太陽熱温水器100にペットボトルをリサイクルして作った筒体510,520を被せかつこの太陽熱温水器100をエルボ530によって互いに並列に配置しかつこれらをフレーム550内に収容した温水ユニットU’について説明する。なお、温水ユニットU’の詳細な構成に関して、第1の実施形態において説明した温水ユニットUと同等の構成については詳細な説明を省略する。温水ユニットU’は、図23に示すように箱型のフレーム550の内部に第2の実施形態にかかる太陽熱温水器100を複数並列させ、当該温水管100をそれぞれエルボ530によって連結している。これによって、一本の長い温水管の流路が形成されている。そして、温水管の一方はエルボ530を介してレギュレータ560に接続され、かつこのレギュレータ560には逆止弁570が接続されて逆止弁570を介して水が導入されるようになっている。また、フレーム550の他方には温水管の端部にエルボ530を介して温水排出口580が設けられている。そして、温水管は、図23に一部を示すように、温水管を形成する空缶101の周囲が筒体510,520によって二重に囲繞されている。筒体510,520は図17に示すようにリサイクルしたペットボトルを最小限の加工で再利用したものである。すなわち、ペットボトルの底部を切断すると共にペットボトル上部のキャップ上面に塩ビ管120が貫通する程度の孔を穿設する加工を施しただけで再利用されている。なお、太陽熱温水器自体は中間パッキン130及び端部シール部140によってよって温水管110の周囲と液密性が保たれているので、筒体自体の液密性は要求されることはない。そのため、筒体同士の接続部は厳密にシールされている必要はない。また、筒体510,520のキャップ部に形成された孔の大きさは塩ビ管120が貫通できるのに十分な大きさを有していれば良く、厳密な孔径に加工する必要はない。なお、図23においては図示しないが、端部の筒体510,520間に中間筒体が2重構造を有しながら連結している。中間筒体は、リサイクルしたペットボトルの上部と底部を切断して四角筒型もしくは円筒状の筒体として形成したものを連続的につなげて構成されている。また、筒体同士の連結は図示しない粘着テープ等適当な結合手段を用いている。このようにペットボトルをリサイクルした筒体を二重構造として太陽熱温水器の周囲を覆うことで、太陽熱温水器100の周囲に第1の空気層が形成されると共に第1の空気層の更に外側に第2の空気層が形成される。そして、太陽熱によってこれらの空気層の空気が温かくなることで、温水管内部に充満した水を効率良く温めて温水とすることが可能となる。
以上、説明したように、本応用例にかかる温水ユニットU’は空缶とペットボトルを共に最小限の加工で再利用することができると共に、これに加えて中間パッキン、シール部、フレーム、エルボ等の少ない追加部品でユニット全体を簡単に組み立てることができるというメリットを有する。