JP3964357B2 - 相変化型光情報記録媒体の記録再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型光情報記録媒体の記録再生方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
(相変化記録について)
レーザビーム照射による情報の記録、再生及び消去が可能な光情報記録媒体として、結晶状態と非晶質(アモルファス)状態の可逆的相変化を利用した相変化型光情報記録媒体が知られている。現在、5インチのディスクに4.7GBの容量を記録するDVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWが実用化されているが、更なる高密度化が期待されている。
(高記録密度化について)
記録の高密度化は、トラック方向の密度を上げる事と、半径方向の密度を上げる事でなされる。記録レーザーのスポット径を小さくする事はこの両方に有効である。記録レーザースポットを小さくするには、レーザーの短波長化と対物レンズの大口径化の二つの方法がある。
レーザーの短波長化では、現在DVDで実用化されている赤色に代わる青紫色領域のレーザーが開発中であり、対物レンズの大口径化では、現在DVDで実用化されている開口数(以下NAと略す)0.65に対して、0.85が開発されている。略円径にビーム成形した場合のビーム径は、赤色レーザーでNA0.65の場合0.8μm、青紫色レーザーでNA0.65の場合0.55μm、青紫色レーザーでNA0.85の場合0.4μmである。
【0003】
しかし、従来技術により記録レーザービームを小径化する場合、短波長化ではPD(フォト・ディテクター)感度の低下のため信号強度が下がることが大きな問題であり、高NA化ではレンズと記録媒体間の距離が小さくなることが大きな問題である。このように、記録レーザビームを小径化する事は記録再生を考えた場合に弊害を伴う事が必然であり、これらの弊害を克服する必要がある。
ビーム径を小径化せずに記録密度を上げる方法として、特許文献1には、ビーム走査方向に対して垂直な方向を長軸に持つ楕円ビームで記録再生を行う事により、円形ビームで行うのに比べて、ビーム走査方向の解像度を上げ記録の高密度化を図る技術が開示されている。また、特許文献2には、光磁気記録において、ディスク接線方向に長軸を持つ楕円ビームで記録再生を行う事により、ランド・グルーブ間クロストークを減少させ記録の高密度化を図る技術が開示されている。また、特許文献3には、ランド・グルーブ双方に記録する場合に、記録トラック方向に長軸の楕円ビームで行う技術が開示されている。更に、この他の楕円ビームを用いる技術としては、特許文献4に、消去用ヘッドと記録再生用ヘッドを有し、消去用ビームはディスク接線方向に長軸の楕円であり、記録再生用ビームはディスク半径方向に長軸の楕円である技術が開示されている。
【0004】
(従来技術の問題点)
上記特許文献1の技術の場合、円形ビームで行うのに比べて、ビーム走査方向の解像度が上がる反面、ビーム走査方向に垂直な方向、即ちディスク半径方向の解像度が下がるためトラックピッチを拡大する必要が生じ、結果として記録密度の向上効果が小さい。また、上記特許文献2の技術の場合、ランド・グルーブ間クロストークを減少させトラックピッチを縮小する事は可能であるが、ビーム走査方向の解像度が減少するため記録可能限界のマーク長が大きくなり、結果として記録密度の向上効果が小さい。しかも、これら高密度化を目的とする従来技術の問題点は、再生光の反射光強度を3値以上に制御して記録する場合であって、最小マークの長さが再生ビーム径の1/4以下となるような場合に一層顕著となる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−84591号公報
【特許文献2】
特開平8−124232号公報
【特許文献3】
特開平8−180492号公報
【特許文献4】
特開平8−147753号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、記録時と再生時のビーム形状を変えることにより楕円ビームの長所を活かした高密度記録可能な相変化型光情報記録媒体の記録再生方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は次の1)〜3)の発明(以下、本発明1〜3という)によって解決される。
1) 螺旋又は同心円状の案内溝を有する基板上に少なくとも記録層を有する相変化型光情報記録媒体に対し、集光したレーザービームをパルス状に照射して記録再生を行うに当り、記録媒体上でのレーザービームスポット形状を、記録時にはビーム進行方向に短軸を持つ楕円形のレーザービームスポットとし、再生時にはビーム進行方向に長軸を持つ楕円形のレーザービームスポットとする事を特徴とする記録再生方法。
2) 光源から対物レンズを経て記録層に光を照射する光学系であって、ジャストフォーカス位置から対物レンズに近い側をマイナスフォーカス、遠い側をプラスフォーカスとしたとき、プラスフォーカス位置及びマイナスフォーカス位置で楕円形レーザービームの長軸方向が異なる光学系を用いて、ジャストフォーカスからオフセットさせて記録及び再生を行い、且つ、記録時と再生時でフォーカスオフセットのプラスとマイナスを逆にする事を特徴とする1)記載の記録再生方法。
3) 前記相変化型光情報記録媒体に対し、波長405nmのレーザーとNA0.65の対物レンズを使用して記録及び再生を行う事を特徴とする1)又は2)記載の記録再生方法。
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明によれば、記録媒体上でのレーザービームスポット形状を記録時と再生時で変える事により、記録時と再生時に、それぞれに有利なビーム形状とすることが出来るので、ビーム進行方向及びビーム進行方向と垂直な方向の記録密度を同時に高密度化する事ができる。
【0009】
また、本発明によれば、ビーム進行方向に短軸を持つ楕円形のレーザービームスポットで記録を行い、ビーム進行方向に長軸を持つ楕円形のレーザービームスポットで再生を行う事により、記録時には熱干渉のために記録時に特に必要とされるビーム進行方向の解像度を向上させ、再生時にはトラッキングのため再生時に特に必要とされるビーム進行方向と垂直な方向の解像度を向上させることが出来るので、記録密度を高密度化する事ができる。
本発明2は、本発明1を実施するための光学系を規定した発明である。
【0010】
本発明の記録再生方法の対象となる相変化型光情報記録媒体は特に限定されないが、一般的に、螺旋又は同心円状の溝を形成したポリカーボネートなどの透明なプラスチック基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層(放熱)などの薄膜を形成する。下部及び上部保護層には、酸化物、窒化物、硫化物などからなる誘電体が用いられるが、中でもZnSとSiO2を混合したZnS・SiO2が好ましい。記録層にはSbTeを主成分とした相変化材料がよく用いられる。具体的には、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Ge−In−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Teなどが挙げられる。また、これら以外にもGeTeやInTe、InSeなども用いられる事がある。反射層には金属材料が用いられるが、光学特性及び熱伝導率などからAl、Ag、Au、Cuなどの金属材料及びそれらの合金材料がよく用いられる。
これらの多層膜の成膜方法としては、抵抗線加熱法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法、CVD法など様々な方法を用いる事ができるが、中でも量産性に優れている点からスパッタ法がよく用いられる。これらの多層膜を形成後、薄膜を保護する為に樹脂層をスピンコートにより被覆する。
【0011】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0012】
実施例1、参考例、比較例1〜3
厚さ6mm、直径120mmのポリカーボネート基板上に、複数の成膜室を有する成膜装置を用いてスパッタリング法により、厚さ70nmの第1保護層(誘電体層)、厚さ15nmの記録層、厚さ12nmの第2保護層(誘電体層)、厚さ140nmの反射放熱層を順に成膜した。各層の材料は次の通りである。
・第1保護層:ZnS・SiO2(モル比79.5:20.5)
・記録層 :Ge5Sb74Te21
・第2保護層:ZnS・SiO2(モル比79.5:20.5)
・反射放熱層 :Al
成膜終了後、反射放熱層の上にUV(紫外線)硬化樹脂(大日本インキ社製SD318)をスピンコートした後、UV照射により硬化させた。このようにして製造した基板と、他の厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を、UV硬化樹脂(日本化薬社製DVD3)で貼り合わせて厚さ約1.2mmの相変化型光情報記録媒体を作成した。
【0013】
この光情報記録媒体に対し、波長405nm、NA0.65のピックアップヘッドを使用して記録及び再生を行った。
2値記録は、6.0m/secの線速度で長さ0.275μmのアモルファスと結晶の繰り返しパターンを記録し、再生は記録速度と同じ線速度6.0m/secにて行った。ジッター特性は、記録マークとスペースの境界の読み出し時間のズレの標準偏差を、読み出しクロック1周期時間で除した値(単位%)であり、望小特性(値が小さい方が望ましい特性)である。
多値記録は、6.0m/secの線速度で、ビーム進行方向に0.275μmを単位として、この単位長さの中に8値の反射光強度(以下、レベルという)を制御する記録を行った。反射光レベルのバラツキは、各値の反射光レベルの標準偏差を最大レベルと最小レベルの強度の差で除した値〔以下SDR:Sigmato Dynamic Range、シグマ・トゥー・ダイナミック・レンジ(単位%)〕が目安であり、望小特性である。
記録再生には、ジャストフォーカスでビーム形状が円形であり、ジャストフォーカスから対物レンズ側でビーム進行方向に垂直方向が長軸の楕円形状となり、ジャストフォーカスから対物レンズと逆側で進行方向が長軸の楕円形状となる光学系を使用した。
【0014】
表1に、比較例、実施例及び参考例におけるジッター値と比較例1及び実施例1におけるSDR値を纏めて示す。
【表1】
表1の結果から、実施例1のように記録時と再生時のレーザービームの形状を変える事により、比較例に比べて低ジッターとなることが分る。
また、SDRについても、実施例1のように、記録時ビーム進行方向に短軸の楕円、再生時ビーム進行方向に長軸の楕円とする事により、比較例1に比べて低SDRとなることが分る。
【0015】
また、ジッターの評価データの詳細及びグラフを〔表2〕、〔図1〕、〔図2〕に、SDRの評価データ及びグラフを〔表3〕、〔図3〕に示す。
表2は記録時フォーカスオフセット位置及び再生時フォーカスオフセット位置に対するジッター特性である。ここでフォーカスオフセット0.0はジャストフォーカス(円形ビーム)の場合、フォーカスオフセット−0.5は対物レンズ側へオフセット(実施例ではビーム進行方向に短軸の楕円)の場合、フォーカスオフセット+0.5は対物レンズと逆側へオフセットの場合(実施例ではビーム進行方向に長軸の楕円)である。
表3は、記録時及び再生時フォーカスオフセット0.0(ジャストフォーカス)の場合のSDR(比較例1に相当)、記録時フォーカスオフセット−0.5(マイナスフォーカス)の場合のSDRの再生時フォーカスオフセット依存性を示す。
図1は、再生時フォーカスオフセット位置が何れの場合においても、記録時フォーカスオフセットがマイナス位置である方が低ジッターであり、記録時フォーカスオフセットがマイナス位置である方が記録の高密度化に有利である事を示している。
図2は、再生は、ジャストフォーカス又はフォーカスオフセット+0.5で行う場合に低ジッターである事を示している。特に、記録時フォーカスオフセット−0.5で行い、再生時フォーカスオフセット+0.5で行う場合が最小ジッターであり、最も高密度記録に適する。
図3は、SDRは、記録時フォーカスオフセット−0.5、再生時フォーカスオフセット+0.5で最小値が得られる事を示している。
【0016】
【表2】
【表3】
【0017】
【発明の効果】
記録時と再生時のビーム形状を変えることにより楕円ビームの長所を活かした高密度記録可能な相変化型光情報記録媒体の記録再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録時及び再生時フォーカスオフセットとジッターの関係を示す図。
【図2】記録時及び再生時フォーカスオフセットとジッターの関係を示す図。
【図3】記録時及び再生時フォーカスオフセットとSDRの関係を示す図。
Claims (3)
- 螺旋又は同心円状の案内溝を有する基板上に少なくとも記録層を有する相変化型光情報記録媒体に対し、集光したレーザービームをパルス状に照射して記録再生を行うに当り、記録媒体上でのレーザービームスポット形状を、記録時にはビーム進行方向に短軸を持つ楕円形のレーザービームスポットとし、再生時にはビーム進行方向に長軸を持つ楕円形のレーザービームスポットとする事を特徴とする記録再生方法。
- 光源から対物レンズを経て記録層に光を照射する光学系であって、ジャストフォーカス位置から対物レンズに近い側をマイナスフォーカス、遠い側をプラスフォーカスとしたとき、プラスフォーカス位置及びマイナスフォーカス位置で楕円形レーザービームの長軸方向が異なる光学系を用いて、ジャストフォーカスからオフセットさせて記録及び再生を行い、且つ、記録時と再生時でフォーカスオフセットのプラスとマイナスを逆にする事を特徴とする請求項1記載の記録再生方法。
- 前記相変化型光情報記録媒体に対し、波長405nmのレーザーとNA0.65の対物レンズを使用して記録及び再生を行う事を特徴とする請求項1又は2記載の記録再生方法。
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