JP3963542B2 - 電気防食場のシミュレーション解析方法及び装置 - Google Patents

電気防食場のシミュレーション解析方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、水溶液環境中あるいは土壌環境中において外部電源方式による電気防食(カソード防食)を施す際に、この電気防食場の状態をシミュレートするための、コンピュータを使用した電気防食場のシミュレーション解析方法、及び、この方法を使用する解析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような外部電源法によるカソード防食を数値解析により解く試みの一例は、火力発電Vol44.No4.1992の61−71頁の「海水系電気防食への電位分布解析技術の応用」に記載されている。これは、有限要素法を用いて電気防食を行っている被防食対象場を解析している。
この方法では、被防食対象物である管体表面に於ける電気化学的な反応抵抗である電位−電流曲線(分極特性)を考慮した解析を実施し、管体表面での電位分布を求めている。このとき、外部電源方式時に於ける対極の境界条件は、定電流設定である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した外部電源法によるカソード防食を解析する方法では、対極側の分極挙動を考慮することができず、対極の電気化学的な挙動を考慮した被防食対象物の防食状態を厳密に類推することは不可能である。即ち、対極の形状によって被防食対象物の防食状態が左右される系においては、対極に於ける電流分布・電位分布を考慮する必要があるが、定電流設定における解析では、このような問題の評価ができない。また、対極を定電位設定として解析を実施しても、上述した問題は、解決できない。又、この様な条件下での解析では、外部電源方式時に於ける特有の条件である対極と被防食対象物の任意の2点間の電位差が外部電源装置の出力電圧(極間電圧)に等しくなるという制約条件を解析的に満足することはできない。
従って、発明の目的は、電気防食場のシミュレーション解析において、上記のような不合理の無い解を得ることができる対極の分極状態を考慮した電気防食場の解析方法を得るとともに、このような方法を使用する解析装置を得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による、解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応した数値解析モデルを構築するとともに、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を前記数値解析モデルに適用して、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析方法の特徴構成は、以下の通りである。
即ち、外部電源装置を対極と被防食対象物との間に備え、前記対極より被防食対象物に防食電流を流して被防食対象物の電気防食をおこなう電気防食場を解析対象とする場合に、
その第1の方法として、予め求められている前記対極の分極特性に対して、電位の正負を逆にした分極挙動の電位を、前記外部電源装置の出力電圧分だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を求め、さらに、被防食対象物の分極特性に対して電位の正負を逆にした被防食対象物逆転分極特性を求めるのである。
このようにして、求められた前記第1シフト済分極特性を、前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とし、前記被防食対象物逆転分極特性を前記被防食対象物に対応するモデル部位に於ける境界条件とする演算条件の下に、前記数値解析手段を適応して解析をおこない、得られる解を前記電気防食場の解とするのである。
一方、その第2の方法は、予め求められている前記対極の分極特性に対して、前記外部電源装置の出力電圧分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を求め、前記第2シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とする演算条件の下に、前記数値解析手段を適応して解析をおこない、得られる解を前記電気防食場の解とするのである。
ここで、分極特性とは、図3、図4に示すような、電位と電流密度との関係を示すグラフであり、この分極特性は、検討対象の部材がある状況下で、部材が示す特性をいう。
【0005】
これらの方法の原理について、図8に示す説明図に基づいて以下説明する。
図示するように、電気防食場内に、ある金属A,Bが存在し、ある照合電極によりそれらの自然電位を測定したところ、それぞれ−500mVであるとする(図8(イ))。金属Aを対極に、金属Bを被防食対象とし、この間に1000mVの定電圧を印加する。すると、金属Aは貴な方向に分極し、金属Bは卑な方向に分極する。この分極後の電位を金属A,Bにおいて、仮にそれぞれ−300mV、−750mVとする(図8(ロ))。この時、金属Bから見て金属Aは印加された電圧1000mVだけ電位差を有する。
ここで、ある照合電極を考えるのではなく、防食問題においては、一般に被防食対象物の電位を基準に考えるので、金属Bの電位を基準に考えると図8(ハ)のような電位勾配図が得られる。解析上金属に対する溶液の電位を考えることにすると、(即ち、通常の照合電極で測定した電位の正負を逆にした電位)、図8(ニ)の様な電位勾配図を得ることができる。
この状態を解析するためには、電位の正負を逆にした対極側の分極特性の電位を出力電圧分だけ貴な方向にシフトした分極挙動を用いることにより、外部電源方式時特有の制約条件を満たした解析が可能となる。
従って、先に説明した第1の方法では、予め求められている対極の分極特性に対して、正負逆にした対極側の分極特性を求め、外部電源装置の出力電圧分(これは既知となる)だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を求め、この求められた前記第1シフト済分極特性を、対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とする。一方、被防食対象物に関しては、先に説明した被防食対象物逆転分極特性を、対応するモデル部位に於ける境界条件とする。そして、このような境界条件を加味した演算条件の下に解析をおこなうことで、適切な解を求めることができる。
このような解析に於ける境界条件の設定は系の実情にあったものであり、後にも示すように、上記のような不合理の無い解を得ることができる。
【0006】
この解析方法を使用する解析装置としては、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を備え、
解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応して構築される数値解析モデルに対して、前記数値解析手段を適応して、電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置に、前記電気防食場内にある対極及び被防食対象物の分極特性を記憶する分極特性記憶手段を備えるとともに、
対極と被防食対象物との間に設定される電圧の入力情報に基づいて、前記対極の分極特性に対して、電位の正負を逆にした対極側の分極特性の電位を、前記電圧差分だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を自動生成し、前記第1シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位における境界条件とし、前記被防食対象物の分極特性に対して、その電位の正負を逆にした被防食対象物逆転分極特性をもとめ、これを被防食対象物に対応するモデル部位に於ける境界条件とする特定モデル部位境界条件設定手段を備え、
特定モデル部位境界条件設定手段により設定される境界条件を加味した演算条件の下に、数値解析手段を適応して、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう構成とする。
この構成を取る場合は、対極及び被防食対象物の分極特性及び外部電源装置の出力電圧の入力をおこなうことで、自動的に適切な対極、被防食対象物に於ける境界条件を設定して、合理的な解を得ることができる。
【0007】
一方、上記のように分極特性の逆転を行わない場合の取扱に関しては、以下のようにおこなうことができる。
即ち、通常の防食問題と同様に被防食対象物の電位を基準に考えるときには、対極の分極特性を出力電圧分だけ卑な方向にシフトした分極特性を用いればよい。予め求められている前記対極の分極特性に対して、前記出力電圧分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を求め、前記第2シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とする演算条件の下に、数値解析手段を適応して解析をおこない、得られる解を前記電気防食場の解を求める。
この場合も、上記の説明の原理から、このような解析に於ける境界条件の設定は系の実情にあったものであり、後にも示すように、上記のような不合理の無い解を得ることができる。解析上電流方向は逆となるが、以降の解析に使用可能な信頼性のある結果が得られる。
装置的には、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を備え、
解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応して構築される数値解析モデルに対して、前記数値解析手段を適応して、電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置を構成するに、
前記電気防食場内にある対極の分極特性を記憶する分極特性記憶手段を備えるとともに、
前記対極と被防食対象物との間に設定される電圧の入力情報に基づいて、前記分極特性に対して、前記電圧分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を自動生成し、前記第2シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位における境界条件とする特定モデル部位境界条件設定手段を備え、
前記特定モデル部位境界条件設定手段により設定される境界条件を加味した演算条件の下に、数値解析手段を適応して、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう構成とすることができる。
この場合も、対極及び被防食対象物の分極特性及び外部電源装置の出力電圧の入力をおこなうことで、自動的に適切な対極に於ける境界条件を設定して、合理的な解を得ることができる。
【0008】
これらの上述した境界条件の設定方法を用いることにより、外部電源方式に於ける対極の分極挙動を考慮した数値解析が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本願の実施の形態に関して、以下図面を参照しながら説明する。
電気防食場の数値解析的な取扱は、基本的には、従来のものと同一であり、解析対象の電気防食場の電位分布を、ラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、この電気防食場に対応した数値解析モデルを構築するとともに、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段1を、構築される数値解析モデル2に適用して、シミュレーション解析をおこなう。
本願に於ける解析対象の電気防食場は、図2に示すように、水または土壌といった電位分布が発生する媒体内に、防食対象の被防食対象物3(カソードとなる)と、前記被防食対象物3に対する給電極としての対極4(アノードとなる)とを備えた構成である。
【0010】
このシミュレーション解析にあたっては、図1に示すように、所謂、コンピュータ5が使用される。このコンピュータ5の記憶装置6には、図示するように、上記の数値解析手段1、解析対象の物理条件に適合して構築される数値解析モデル2が格納されるとともに、解を求める場合に必要となる演算条件である特定モデル部に於ける境界条件が格納される境界条件格納部7、さらに、解析演算の初期設定である初期条件が格納される初期条件格納部8が設けられている。
さらに、本願にあっては、後に説明するように、対極4に於けるその分極特性に対して特殊な扱いを必要とするため、入力される分極特性を記憶する分極特性記憶部(分極特性記憶手段である)9が備えられているとともに、この記憶部9に記憶された分極特性から、対極4に対応するモデル部位あるいは被防食対象物3に対応するモデル部位に適応すべき境界条件を自動生成して、設定する特定モデル部位境界条件設定手段10が設けられている。
この構成より、数値解析にあたっては、外部入力により得られている対極4の分極特性及び被防食対象物3の分極特性を、分極特性記憶手段9から読み出すとともに、特定モデル部位境界条件設定手段10が、後に示す第1シフト済分極特性あるいは被防食対象物逆転分極特性を生成し、境界条件格納部7におくる。そして、数値解析手段1が、境界条件格納部7、初期条件格納部8に格納されている条件を対応する数値解析モデルの特定モデル部に適応しながら、解析演算を実行する。
【0011】
以下、個々に説明していく。
【0012】
前記数値解析モデル2は、解析対象の電気防食場に対応して、場内に存在するものの物理的形状条件を満足し、且つ、モデル内にある各要素間の物理量(電位)が、ラプラス方程式を満たすように接続されて構築される。
ここで、解法として、以下に示すように有限要素法を採用する場合は、公知の手法に従って領域内が、多数の有限要素に分割される。一方、数値解析手法として、境界要素法をを採用する場合は、電気防食場の境界が、複数の要素に分割される。
【0013】
前記数値解析手段1としては、所謂、ソルバーがこれにあたり、解析手法として有限要素法を採用する場合は、市販のソルバーであるABAQUS(Hibbitt,Karlsson & Sorensen,Inc.製)等の公知のソルバーを採用する。
このようなソルバーに関する要件として、少なくとも、対極4、被防食対象物3に於ける境界条件として、これらのものの分極特性(材料の電位と電流密度との関係と示す特性)もしくは、このような分極特性に相当する特性(後にシフト済分極特性として使用する特性)を取扱う必要があるため、所謂、非常に強い非線形な境界条件を取扱ことができる数値解析手段を使用する。先に有限要素法のおりに説明したソルバーABAQUSは、このような非常に強い非線形な境界条件を取扱ことができる。この分極特性が分極曲線として与えられる場合は、その境界においては、曲線に従って、電位から電流値を求めることとなる。
さらに、所謂、非常に強い非線形な特性の熱伝達係数を有する熱伝導問題を解析可能な数値解析手段(数値解析ソフトであり、MARC等)も、本願の用途に使用することができる。このような熱伝導問題を解析可能な数値解析手段を使用する場合は、先に先行技術の項で挙げた例に示されるように、電位と電流密度との関係として与えられる分極特性を、数値解析手段内で熱伝達係数が満たすべき境界条件に書き換えて適用することにより、使用することができる。
【0014】
以下、有限要素法を適応する場合に具体例を取って説明する。
この有限要素法を電気防食場に適応する場合の基本的な構成に関して、以下付言しておく。
電気防食場の電位(φ)は数1のラプラス方程式に支配される。
【0015】
【数1】
2 φ=0
【0016】
場が境界Γ1 ,Γ2 ,Γa およびΓc に囲まれているとする。ここで、Γ1 は電位φの値がφ0 に指定された境界(電位一定の境界)、Γ2 は電流密度qの値がq0 に指定された境界(電流密度一定の境界)、Γa およびΓc は、それぞれ対極4および被防食対象物3の表面となる。各境界における境界条件は次式で与えられる。
【0017】
【数2】
Γ1 上:φ=φ0
Γ2 上:q{≡−κδφ/δn}=q0
Γa 上:q=fa (φ)
Γc 上:q=fc (φ)
【0018】
ここで、κは場の電気伝導度、δ/δnは外向き法線方向の微分であり、fa (φ)およびfc (φ)は対極4および被防食対象物3の分極特性を表す非線形の関数(外部分極曲線)で、実験によって求められる。数1を境界条件(数2)のもとで解けば、表面近傍の電位および電流密度分布を求めることができる。この解法としては、所謂、有限要素法を使用することができる。
【0019】
以上が、一般的な意味で電気防食場を有限要素法を適応して解く場合の構成であり、このようにして、対極4及び被防食対象物3を加味した数値解析モデル2を構築し、少なくとも対極4及び被防食対象物3に於ける電気化学的条件を、それぞれ対応するモデル部位に於ける境界条件として適切に与えることにより、境界条件を満たす定常解を得ることができる。
しかしながら、本願のように、対極4に於ける分極特性を正確に取り扱おうとする場合は、さらなる手続きが必要となる。即ち、対極4に於ける境界条件の設定を、予め求められている対極4の分極特性(これは、入力装置から入力操作される)に対して、電位の正負を逆にした分極特性の電位を、外部電源装置の出力電圧分だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を求め、この第1シフト済分極特性を、前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とする。さらに被防食対象物3の分極特性(これは、入力装置から入力操作される)に対して、電位の正負を逆にした分極特性(これを被防食対象物逆転分極特性と呼ぶ)を求め、この分極特性を、前記被防食対象物に対応するモデル部位に於ける境界条件とする。
即ち、図3に示す対極の分極特性に対して、その電位を正負逆転した曲線データを作成し(電位の符号を正負逆転させる)、さらに電位が逆転された状態で貴側(正側)に外部電源装置の出力電圧分だけ貴側にシフトさせた(図3において下側に移動することとなる)第1シフト済分極特性を得る。得られた第1シフト済分極特性を、対極4に対応するモデル部位における境界条件として使用できるようにするのである。
一方、図4に示す被防食対象物の分極特性に関しても、その電位を正負逆転したものとする(電位の符号を正負逆転させる)。このようにして得られる被防食対象物分極特性を、被防食対象物に対応するモデル部位における境界条件として使用できるようにするのである。
【0020】
以上が、本願の電気防食場のシミュレーション解析方法の主要構成の説明であるが、図2に示す電気防食場を対象とする場合について、実際の適用状況に対応させながら、以下説明していく。
図2に示す実験モデルを使用して実験を実施した。図2はオートクレーブによる高温状態に於ける実験モデルであり、円筒のテフロン容器11の中には、熱供給地点における薬注入液の入った現場溶液12を入れ摂氏150度に保持する。このときの溶液の比抵抗値は約187S-1cmである(別実験により実測)。このデータは、後に示す電気伝導率(0.0053398S/cm)として解析に対する入力として使用される。
この環境中に対極4及び被防食対象物3(試験極)となる試験片P(SS400)を挿入する。試験片Pは1.5cm角の正方形であり、その厚みは2.5mmである。試験片P1.5cm角の試験面13(相手電極に対向する側の片面)を#800番まで研磨し、その裏面及び端面は絶縁コーティングを施した。
この試験片Pを試験面13を0.5cm離して向かい合わす形に設置した外部電源装置14(定電圧発生装置)により、電圧を印加する。また、対極4と被防食対象物3の間には、照合電極15(銀塩化銀電極)により電位を測定できるように設定する。
このような設定で、1.0Vの定電圧を印加し、1ケ月間浸漬した後、電圧を徐々に落としていき、対極4及び被防食対象物3の電位と電流密度を測定する。このとき得られたデータを基に近似曲線で分極特性を作成した(対極側に対応するもの図3、被防食対象物に対応するもの図4)。これらの分極特性も、入力装置より入力し、解析の基礎データとして使用する。
【0021】
以下、上記の電気防食場を対象とした場合に於ける解析フローを、図5に示す解析作業フローに従って説明する。
1 モデル化
上記の電気防食場の物理的な関係を満足するように、数値解析モデル2が構築される。有限要素法に使用した要素は、電気防食場全体の要素数を3960として、各試験片Pは3次元6面体要素(伝熱要素:8節点、線形、れんが型)とした。ここで、各試験片間の要素数は、36個の要素があるようにした。この工程が、図5に示すステップ1である。
2 場内の電気伝導率の入力
電気防食場は、一般に、水、土壌等の媒質に満たされており、これらの媒質に従って、その電気伝導率が異なる。従って、解析対象によって決定される電気伝導率を入力する。この例の場合は、現場溶液12から形成されるため、電気伝導率は、0.0053398S/cmである。場内全領域で、電気伝導率は一定とする。この工程が、図5に示すステップ2である。
3 分極特性入力
解析対象とする電気防食場によって、対極4、被防食対象物3、それぞれに設定されるべき境界条件は異なるが、境界条件の設定に際して必要となる、対極4、被防食対象物3、それぞれの分極特性を入力する。
対極4に関しては、先に説明した対極分極曲線を与える。この曲線の一例が、先に説明した図3である。ただし、以下の解析にあたっては、電位の正負を逆転させ、この対極分極曲線を所定の電位量だけシフトされたシフト済分極曲線が、対極に於ける境界条件として与えられる。
被防食対象物3に関しても、被防食対象物分極曲線を与える。この曲線の一例が、先に説明した図4である。但し、上記と同様に、被防食対象物に於ける境界条件としては、この被防食対象物分極曲線を電位を逆転させた被防食対象物分極特性として使用する。
この工程が、図5に示すステップ3−1、2である。
さらに、電位分布の初期値としては、最終的に収束解を得るのに、解析演算時間をできるだけ短縮することができる初期値を与えておく。例えば、対極4を一定電位に設定した状態で、対極4と被防食対象物3との間で、電位が線形に被防食対象物の電位まで減少していくような分布を与えておく。
【0022】
4 対極モデル部の境界条件の自動生成
さて、先に説明したように、対極4は被防食対象物3に対して、外部電源装置14の出力電圧分だけ電位が変移した状態に維持される。従って、コンピュータ内において、外部電源装置14の出力電圧に従って、対極4の分極特性をシフトしたシフト済分極特性が自動生成される。さらに具体的には、先に説明した第1シフト済分極特性を自動生成し、この第1シフト済分極特性を対極4に対応するモデル部位に於ける境界条件とする。
一方、被防食対象物に対応するモデル部位の境界条件としては、先に説明した被防食対象物逆転分極特性を自動生成し、この特性を対応するモデル部位に於ける境界条件とする。この工程が、図5のステップ4である。
5 解析計算
上記のような状態で、対極4、被防食対象物3に対応するモデル部位に於ける境界条件の設定を完了するとともに、初期条件の設定を完了し、数値解析モデル2に対して、数値解析手段1が適応され、電気防食場内に於ける電位分布を得ることができる。この工程が図5のステップ5である。
この解析解の妥当性の検証として、対極より流出した電流が全て被防食対象物に流入していること(あるいはその逆)を確認し、解の収束が正しくおこなわれたことの傍証とする。さらに、この状態にあっては、解析上、電位分布は正負逆転しているため、電位分布の出力時には、さらに正負を逆転させ元の符号状態とする操作を必要とする。
6 対極電位の導出
上記の解析においては、対極4の境界条件は、第1シフト済分極特性に対応するものとなっており、解析上必要な電位であり真の電位ではない。従って、上記のようにして得られる電位分布に対して外部電源装置14の出力電圧分だけ元に戻した電位を求めることにより、対極4の電位を求めることができる。この工程が図5のステップ6である。
7 解析結果の出力
以上のようにして得られた場内の電位分布、対極に於ける電位(必要な場合は電流量もしくは電流密度)、被防食対象物に於ける電位(必要な場合は電流量もしくは電流密度)を出力する。この工程が図5のステップ7である。
【0023】
以下、上記のようにして得られた解析結果について説明する。
1 解析結果の評価
(イ) 図6(イ)(ロ)に、対極及び被防食対象物の分極特性として、入力した特性曲線と、解析上使用された積分点に於ける計算位置の結果の関係を示した。計算値は、曲線上にあり、入力した境界条件を守って解析が行われていることが判る。
(ロ) 解析値に関して、各試験片Pに形成された要素間の位置関係を、図7に示すとともに、対応する要素(A1−C1、A2−C2、A3−C3;この要素の組み合わせは、任意に選択している)に於ける電位の関係を示すとともに、両者間に於ける電位差の計算結果((a)−(b)+(c))を、表1に示した。結果、解析の設定条件である外部電源装置の出力電圧である1.0Vに等しいことから制約条件を守って解析が実施されていることが判る。
【0024】
【表1】
Figure 0003963542
【0025】
2 解析結果と実験結果の比較
表2に上記の実験の結果と、解析結果との比較結果を示した。
この結果より、測定時の若干の誤差を考慮しても、十分妥当な解析結果となっていることが判る。
【0026】
【表2】
Figure 0003963542
【0027】
〔別実施の形態例〕
(イ) 上記の実施の形態例においては、対極の境界条件の入力手法として、第1シフト済分極特性を使用する例を示したが、以下の方法も可能である。
即ち、予め求められている対極の分極特性に対して、外部電源装置の出力電圧分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を求め、
この第2シフト済分極特性を対極に対応するモデル部位に於ける於ける境界条件とするのである。この場合は、被防食対象物側における分極特性の電位逆転は必要ない。この場合も、対極の分極特性(挙動)を適切に加味した解析をおこなうことができる。
このような手法を採用する場合は、前記の特定モデル部位境界条件設定手段は、対極と被防食対象物との間に設定される電圧の入力情報に基づいて、対極側の分極特性に対して、この電圧差分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を自動生成し、生成された第2シフト済分極特性を対極に対応するモデル部位における境界条件とすることにより、適切な解析を実行できる。
(ロ) 上記の実施の形態においては、図2に示す電気防食場に関する解析をおこなう例に関して説明したが、本願手法及び装置は、対極と被防食対象物が存する任意の電気防食場に対して、対極の分極挙動を考慮した、より現実に近い解析をおこないたい場合に適応できる。
この場合、対極の形状、被防食対象物の形状が、複雑であればある程、従来、無理であった解析に対して、合理的な解析結果を容易に得ることができる。
【0028】
【発明の効果】
従って、本発明により、ラプラス場を解析対象領域とし、その境界条件が非線形境界条件を扱える汎用の数値解析ソフトによって、外部電源方式時に於けるカソード防食での対極の分極挙動を考慮した被防食対象物の防食状態の推定を数値解析により把握できる。そこでは、様々な形態の対極自身の電流分布・電位分布を考慮し、且つ、被防食対象物に於けるその影響を考慮した防食状態の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の解析方法を採用する解析装置の機能ブロック図
【図2】解析の対象とした実験装置の概略を示す装置説明図
【図3】対極の分極特性を示す図
【図4】被防食対象物の分極特性を示す図
【図5】本願の解析方法を採用する解析フローを示すフローチャート
【図6】解析の妥当性の検証図
【図7】任意の2点間の位置関係を示す説明図
【図8】本願の手法の原理を説明するための説明図
【符号の説明】
1 数値解析手段
2 数値解析モデル
3 被防食対象物
4 対極
10 特定モデル部位境界条件設定手段

Claims (4)

  1. 解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応した数値解析モデルを構築するとともに、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を前記数値解析モデルに適用して、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析方法であって、
    外部電源装置を対極と被防食対象物との間に備え、前記対極より被防食対象物に防食電流を流して前記被防食対象物の電気防食をおこなう電気防食場を解析対象とする場合に、
    予め求められている前記対極の分極特性に対して、電位の正負を逆にした前記分極特性の電位を、前記外部電源装置の出力電圧分だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を求めるとともに、前記被防食対象物の分極特性に対して、電位の正負を逆にした被防食対象物逆転分極特性を求め、
    前記第1シフト済分極特性を、前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とし、前記被防食対象物逆転分極特性を、前記被防食対象物に対応するモデル部位に於ける境界条件とする演算条件の下に、前記数値解析手段を適応して解析をおこない、得られる解を前記電気防食場の解とする電気防食場のシミュレーション解析方法。
  2. 線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を備え、
    解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応して構築される数値解析モデルに対して、前記数値解析手段を適応して、電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置であって、
    前記電気防食場内にある対極及び被防食対象物の分極特性を記憶する分極特性記憶手段を備えるとともに、
    前記対極と被防食対象物との間に設定される電圧の入力情報に基づいて、前記対極の分極特性に対して、電位の正負を逆にした前記分極特性の電位を、前記電圧分だけ貴側にシフトした第1シフト済分極特性を自動生成するとともに、前記被防食対象物の分極特性に対して、電位の正負を逆にした被防食対象物逆転分極特性を求め、
    前記第1シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位における境界条件と、前記被防食対象物逆転分極特性を前記被防食対象物に対するモデル部位における境界条件とする特定モデル部位境界条件設定手段を備え、
    前記特定モデル部位境界条件設定手段により設定される境界条件を加味した演算条件の下に、前記数値解析手段を働かせて、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置。
  3. 解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応した数値解析モデルを構築するとともに、線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を前記数値解析モデルに適用して、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析方法であって、
    外部電源装置を対極と被防食対象物との間に備え、前記対極より被防食対象物に防食電流を流して前記被防食対象物の電気防食をおこなう電気防食場を解析対象とする場合に、
    予め求められている前記対極の分極特性に対して、前記外部電源装置の出力電圧分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を求め、
    前記第2シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位に於ける境界条件とする演算条件の下に、前記数値解析手段を適応して解析をおこない、得られる解を前記電気防食場の解とする電気防食場のシミュレーション解析方法。
  4. 線形及び非線形な境界条件下でラプラス場を解くことが可能な数値解析手段を備え、
    解析対象の電気防食場の電位分布をラプラス方程式に従うラプラス場と見なし、前記電気防食場に対応して構築される数値解析モデルに対して、前記数値解析手段を適応して、電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置であって、
    前記電気防食場内にある対極の分極特性を記憶する分極特性記憶手段を備えるとともに、
    前記対極と被防食対象物との間に設定される電圧の入力情報に基づいて、前記分極特性に対して、前記電圧差分だけ卑側にシフトした第2シフト済分極特性を自動生成し、前記第2シフト済分極特性を前記対極に対応するモデル部位における境界条件とする特定モデル部位境界条件設定手段を備え、
    前記特定モデル部位境界条件設定手段により設定される境界条件を加味した演算条件の下に、
    前記数値解析手段を働かせて、前記電気防食場のシミュレーション解析をおこなう解析装置。
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