JP3957222B2 - レーザー発振装置、およびレーザー発振装置の調整方法 - Google Patents

レーザー発振装置、およびレーザー発振装置の調整方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ある光学素子の調整が他の光学素子の調整結果に影響を及ぼす複数の光学素子を含むレーザー装置、光学素子を調整するレーザー装置の調整装置、その調整方法、及びその調整方法を調整装置の電子計算機に実行させる処理プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
光学装置により実現される機能の状態を所定の目標値まで高める方法として従来は、(1)熟練者による光学素子の調整、(2)精度の高い光学素子の採用がなされてきた。
【0003】
しかしながら(1)の熟練者による光学素子の調整による方法では、光学装置を設置した場所での調整が必要であり、調整時間が長く必要であった。また、熟練者であっても十分な調整結果が得られないこともあるとともに、光学装置の調整結果が最適なものであるかどうかの客観的な判断を行うことができなかった。さらに、熟練者を必要とすることから調整コストが高いという問題があった。
【0004】
上記(1)の熟練者による光学素子の調整の負担をなるべく小さくするために、(2)の精度の高い光学素子の採用がなされてきた。しかしながら、精度の高い光学素子は一般に高価であり、安定して入手できない問題もあり、光学装置の製造を困難にしていた。
【0005】
それゆえ、従来の方法では光学装置の製造コストが高く、また、熟練者による調整が必要になるとともに調整時間が長くなるという欠点があった。
上記調整方法において、自動的な調整が可能であれば熟練者を必要とせず、有効であると考えられるが、(1)の調整箇所の調整において、一般的には図2に示す如く調整箇所の光学装置の機能に与える影響が調整箇所ごとに独立していないので、自動的な調整は非常に困難であり、その調整には熟練者を必要としていた。
【0006】
すなわち、光学装置の調整箇所が複数である場合においては、これらの調整箇所が互いに依存関係を有する場合が多い。図2は、調整箇所と調整結果(調整量)に調整箇所をまたがる依存関係(相関関係)がある場合を例示する説明図である。たとえば、1番目の調整箇所を光学装置の機能が最適となるように調整し、次に2番目の調整箇所を光学装置の機能がさらに最適となるように調整したとする。このとき、1番目の調整箇所の調整結果は2番目の調整箇所の調整を行ったためにもはや最適をもたらすものではなくなっており、再度調整を行うと先ほどとは別の調整結果が最適のものとなっている。
【0007】
かかる依存関係を、レーザー装置の共振器を例に説明する。レーザー装置の共振器は、一般に3個以上のミラーおよびプリズムで構成され、光路がループ状になっている。ここで、ある1つのミラーの位置あるいは向きを変えた場合、光路の全体が変化する。そのために、ほかいずれものミラーの最適な位置および向きも変化してしまう。このことは、調整箇所であるミラーおよびプリズムの位置および方向のうちの一つを変化すると、ほかいずれもの調整箇所の最適な調整結果も変わってしまうことを意味する。
【0008】
上記のような複数の調整箇所の調整が独立でない場合、調整範囲の大きさが連携する調整箇所数と同じ次元数であるため、調整箇所の冪(べき)に比例して調整探索空間が広がり、組合せ爆発により、調整に非現実的な時間を要するか、調整不可能となる場合がある。一例として、8ビットの設定信号で調整される調整箇所が10カ所あり、すべてが連携している場合を考えると、調整の探索空間は2^80≒10^24(10の24乗)という莫大な数の組み合わせとなり、従来の方法では、現実的な時間での調整は不可能であった。
【0009】
従来の産業用レーザー装置は、鏡(ミラー)・レーザー結晶(光学結晶)・分散素子(プリズム)等の光学部品とそれらの保持部品から構成される。これらの部品で構成されたレーザー共振器においては、光学部品の配置がマイクロメートルの精度での設置が求められる。ミラーに関しては、縦方向・横方向・高さ方向・横方向反射方向、高さ方向反射方向と5つの方向の調整が必要となる。レーザー共振器内部には、2つ以上のミラーとその保持機構が設置されている。出力増大・短パルス化などの機能向上をレーザー装置に施した場合、ミラー・分散素子等の光学部品数は6個以上となる。それらの保持部品の調整箇所は30箇所以上の多数となる。
【0010】
一方、レーザー共振器内部では光強度が強いため、カーレンズ効果により非線形現象が誘起され、レーザー出力光の出力・波長・横モードなどが変動を受ける。従って、非線形現象により光学部品の最適配置条件も変わってくる。パルスレーザー装置の場合、最短パルス条件と最大出力条件で光学部品の最適配置が異なる。
【0011】
最適な配置条件の探索は、一般に熟練した技術者により行われている。光学部品数が6点程度の場合、典型的には熟練者で1週間程度、未熟練者では1月以上の調整時間が必要である。さらに、上記の調整に於いては、光学部品の保持部品の位置が時間と共にずれていくことから、レーザー装置の光出力が時間と共に変動するため、さらに調整が困難となる。
【0012】
レーザー装置からの光出力の情報をレーザー装置にフィードバックすることにより、レーザー装置の最適化がこれまでに行なわれている。光出力の情報としては、パワー(出力光強度)、光路の位置・方向、波長、位相、波面、パルス幅などがある。レーザービームを空間的に分割してこれらの情報それぞれに対して評価を行なった場合、多数の評価値が得られる。これらの評価値は互いに従属であり、その相関関係は、レーザー装置の動作条件に依存する。このような二つ以上の評価値が存在する場合はごく一般的である。
【0013】
しかしながら、従来技術においては、一般に、光出力の情報のうちのパワー関しては励起光強度のみの制御が行なわれ、光出力の情報のうちの光路の位置・方向に関しては、位置/方向制御が可能であるミラーの位置/方向のみの制御が行われている。
【0014】
これらの方法の特徴は、評価値に強い影響をおよぼす単一の光学素子を見出して、それに対してフィードバック制御を行なう点にある。これらの方法では、単一の素子のみを最適化するのでレーザー装置全体の最適化がなされていない。
【0015】
さらにまた、それらの評価値が非線形の強い相関を有する場合は多く有り、この場合は、光学装置全体の調整箇所の最適化が困難になるとともに、調整効率が非常に悪くなるという問題点がある。
【0016】
波面制御器においては、波面の各点における位相の値を正確に計算すると非現実的な時間がかかってしまうため、波面制御器の機能を良好な特性にすることが困難であった。
【0017】
望遠鏡においては、大きな凹面鏡で観測対象を結像面に結像するときに、凹面鏡の反射面の位置/形状が理想的な位置/形状とずれているため像の解像度が低下してしまう。
【0018】
また、光学装置は移動や運搬の際の振動や衝撃により構成要素の配置が変動し、装置の性能の劣化の問題があった。
このように、光学装置では、複数の光学素子の位置、方向、光学特性等(以下、パラメータと称する)の総合的な調整が必要である。
【0019】
それゆえ本発明は、上述の点に鑑みて、調整される光学素子のパラメータが、複数の光学素子で互いに従属した非線形な相関がある場合でも、従来必要とされた熟練者によらず自動的に、従来以下の精度の光学素子を用いて、従来技術による場合より高い機能・高い性能が、得られるような光学装置およびその調整方法を提供することを目的としており、さらに、光学装置の移動・運搬、経時変化等に起因する光学装置の機能・性能の低下を改善する方法をも提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の、複数の光学素子を含むレーザー装置は、前記光学素子の内特定の複数光学素子のパラメータが、調整装置が出力する制御信号により変更させられ、前記調整装置は前記特定の複数光学素子のパラメータに関し、確率的探索手法に従って、前記レーザー装置の機能が所定の仕様を満たすように制御信号を出力することを特徴としている。
【0021】
そして、請求項5記載の本発明のレーザー装置の調整方法は、複数の光学素子を制御するレーザー装置の調整方法において、確率的探索手法に従って制御信号を順次出力して、前記複数の光学素子の内、特定の複数光学素子のパラメータを変更し、レーザー装置の機能が所定の仕様を満たす最適値を探索することを特徴としている。
【0022】
かかるレーザー装置およびその調整方法によれば、所定の機能を奏するレーザー装置の複数の光学素子の中の、特定の複数の光学素子が、制御信号が示す値に応じて素子パラメータを変化させる光学素子で構成されていて、それら特定の複数の光学素子に駆動機構を介して与えられる複数の制御信号の値を、調整装置が確率的探索手法に従って、レーザー装置の機能が所定の仕様を満たすように変更するので、上記所定の機能を奏するレーザー装置のパラメータの調整が必要な場合に、熟練者を必要とせずに自動的に、その機能に関して従来技術による場合よりも高い機能・高い性能を得ることができる。しかもレーザー装置の移動や運搬、さらには、経時変化に起因するレーザー装置の機能・性能の低下をも改善することができる。
【0023】
ここで、レーザー装置の性能は一般に、そのレーザー装置が具える調整可能な複数の光学素子の各々のパラメータを引数とする関数Fで表すことができる。レーザー装置の機能が所定の仕様を満たすようにすることは、関数Fの最適解を求めることと等価である。本発明者はこの点に注目し、レーザー装置の調整に、遺伝的アルゴリズムをはじめとする確率的探索手法が適用可能なことを発見した。
【0024】
遺伝的アルゴリズムは、確率的探索手法の一つであり、(1)広域探索において有効に作用し、(2)評価関数F以外には微分値等の派生的な情報が必要でなく、(3)しかも容易な実装性を持つ、アルゴリズムである。従って、本発明においては、請求項2および請求項6の記載のように、上記調整装置による複数の制御信号の値の変更に遺伝的アルゴリズムを用いても良い。
【0025】
また、上記評価関数Fが特殊な条件をみたす場合には、遺伝的アルゴリズムの代わりに、これも確率的探索手法の一つである焼きなまし法を用いることにより探索効率を向上させることも可能である。従って、本発明においては、請求項3および請求項7の記載のように、上記調整装置による複数の制御信号の値の変更に焼きなまし法を用いても良い。このようにすれば、遺伝的アルゴリズムと比較して調整によって得られる性能は低くなるものの、調整時間を短縮することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。
【0031】
本発明は多様な光学装置に適用可能である。すなわち、調整対象の光学装置に複数の調整箇所を設け、該調整箇所を本発明による方法で調整することが可能である。次の例では、光学装置一般に本発明を適用した場合について述べる。
【0032】
光学装置は、通常、ミラー、レンズ、プリズムといった光学素子を構成要素として複数有している。また、光学装置では一般に、その構成要素である光学素子の光学装置内における位置や方向が製造誤差、あるいは光学装置に与えられる振動や衝撃によって設計仕様より大きくずれることから、光学装置の要求仕様を満たすためには調整が必要不可欠である。
【0033】
図1は、本例を適用した光学装置の一構成例である。図1中、1は所定の機能を奏する光学ユニット、2は素子のパラメータを制御信号(調整信号)CSの値に応じて変化させ得る調整可能な光学素子であり、3は調整を行わない光学素子である。光学素子2および光学素子3は、その光学ユニット1の構成要素である。4は、調整可能な光学素子2に接続する、調整可能な光学素子2のパラメータを制御信号CSの示す値に応じて変化させるための駆動機構である。5は、本発明の方法に従って、光学ユニット1を調整するための調整装置、6は、光学ユニット1(光学装置)の光出力の状態を観測するための観測装置である。この例では、調整装置5および観測装置6は光学ユニット1の外部装置となる。
【0034】
図1中、8、9はそれぞれ、光学装置に入力する光(入力光)、および光学装置から出力する光(出力光)である。
図1中、7は調整光発生装置であり、光学ユニット1を調整するための調整光を発生させる。この調整光発生装置7は、調整を行わないときには停止して、入力光8には通常の入力光が入力される。この調整光は、調整装置5からの信号5Tに従って発生され、光学装置1の入力光8として光学装置1に入力される。調節光は光の強度の波長分布および空間分布が一定である連続光またはパルス光であり、光学装置1を調整するときの基準となるものである。この調整光は複数の種類の光を切り替えることも可能であり、この場合は、信号5Tに従って切替られるものである。
【0035】
調整光発生装置7は、調整装置5からの信号5Tに従って調整光を発生する装置のほか、調整装置5によらず独自に調整光を発生する装置とすることも可能である。さらには、調整光発生装置7を省略して、調整光の代わりに、光学装置に通常入力される入力光を調整光とみなすことも可能である。さらにまた、入力光の光源を光学装置に内蔵することも可能である。
【0036】
図1において、光学素子2および光学素子3の配置、およびかかる光学素子に関する光路は、その概念を示す例示であり、実際には光学装置の設計により決められる。同様に、駆動機構4に入力する制御信号CSの数は光学素子の調整に必要なパラメータの数に対応して決められる。
【0037】
調整可能な光学素子2および調整を行わない光学素子3は、ミラー、レンズ、光学フィルター、プリズム、回折格子、偏光素子、電気光学素子、音響光学素子、光学結晶(レーザー結晶)、スリット、および上記それらの光学素子の複合で構成される光学素子、等であり、光学ユニット1の構成要素として機能する。すなわち、光学装置において、調整可能な光学素子2および調整を行わない光学素子3は、光学ユニット1で取り扱う光の光路に設置され、その光を、別方向に反射、集光、光路の分割/合成、波長による選別、減衰、波長による光路の分別、偏光による光の選別、変調、波長変換等を行う。
【0038】
上記において、調整可能な光学素子2は本発明の方法で調整がなされる光学素子であり、調整を行わない光学素子3は、本発明の方法による調整が行われない光学素子であっても、ほかの方法、たとえば光学装置を組み立てた直後の粗調整など従来手法による調整を行うようにしても良い。
【0039】
光学素子2の素子パラメータ(パラメータ)とは、光学ユニット1内における光学素子2の位置、方向、光学特性であり、位置では、たとえば、直交座標系X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの方向の変位量x、y、z、であり、方向では、たとえば、X軸を中心とした回転の量θx、Y軸を中心とした回転の量θy、Z軸を中心とした回転の量θzである。かかる光学特性とは、たとえば、反射率、透過率、吸収係数、増幅係数、波長変換効率、屈折率、偏光特性(リターデーション)、伝達特性(位相、光強度、横モード等)、分配比、変調率、および上記それらの波長特性、集光条件(焦点の形状、収差)、コヒーレンス、光路条件である。
【0040】
調整対象となる光学ユニット1は、上述のように調整される光学素子2と調整されない光学素子3から構成されており、この例では、調整される光学素子2のパラメータを製造後あるいは光学装置の移動等で振動や衝撃が与えられた後に微調整することにより、光学装置の特性が要求仕様を満たすようにする。しかしながらこの光学装置は、図2に例示したように、ある光学素子2のある一つのパラメータの調整が他のほとんどすべてのパラメータの調整結果に影響を及ぼすような光学装置であるので、多くの場合、調整探索空間が組み合わせ爆発を起こしてしまう。それゆえ、本発明に基づく遺伝的アルゴリズムを用いた後述する調整手法が非常に有効である。
【0041】
本例において、光学装置の機能が所定の仕様を満たすように光学素子2のパラメータが調整される。調整装置5の1構成例を図3に示す。図中、5Rはデータを保持するレジスタ、5RGは調整箇所の数のレジスタ5Rを備えたレジスタ群である。5Aは本発明の方法に従って調整手順を実行する調整アルゴリズム実行装置、5Fは光学装置の機能の評価値を計算する評価関数器である。図中、4は駆動機構で、4Cは比較回路,4Dは光学素子のパラメータを変更する駆動機構4を駆動するモータ駆動回路である(後で説明する。)。
【0042】
本例における調整では、上記駆動機構4は、図3に示す調整装置5内のレジスタ5Rに保持されているデジタル値に対応する制御信号CSに従って、調整される調整素子2のパラメータを変更する。該制御信号CSは、レジスタ5Rのデータに一対一に対応したアナログ信号あるいはデジタル信号である。ここにおけるレジスタ5Rは、光学素子2の調整箇所の総数と一致した個数だけ設けられる。レジスタ5Rは、保持したデジタル値を駆動機構に出力するとともに、調整装置5内の調整アルゴリズム実行装置5Aにより、保持している値を変更され得る。
【0043】
上記の調整アルゴリズム実行装置5Aは、遺伝的アルゴリズムに従って、複数のレジスタ5Rの保持値として最適な値を探索する。なお、調整装置5は、パーソナルコンピュータあるいはマイクロコンピュータ等の読み取り可能な記録媒体/記録媒体の読みだし装置を具備した電子計算機により構成することが可能であり、また、特開平9−294069号公報に公開されているプログラマブルLSI、あるいは、梶谷らによる論文「GAによるニューラルネットワークの構造学習回路の実現」(日本神経回路学会誌vol.5、No.4、pp.145〜153、1998年)に記載されている回路を用いて構成することもできる。
【0044】
上記の電子計算機に於いては、調整アルゴリズム実行装置5Aおよび評価関数器5Fの機能を実現するプログラムがハードディスク、ROM(読みだし専用メモリ)、光ディスク、光磁気ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、フラッシュメモリ、強誘電体を利用したメモリ、磁性体を利用したMRAM、バックアップ機能をもつ半導体メモリ、等の記録媒体に格納されている。同様に、後述の駆動機構制御装置5Cの機能も電子計算機上で実現でき、このための調整方法に係るプログラム(調整を行うプログラム)が同様に上記の記録媒体に格納されている。
【0045】
また、上記の調整を行うプログラムは、ネットワークを経由して伝送・配信されるものであってもよい。
観測装置6は、光学装置(光学ユニット1)の出力光を入力されて、その入力光を分析し、電気的な信号に変換した後、調整装置5に引き渡す。調整装置5は、評価関数器5Fによって調整光に対応する光学装置1の出力がどの程度理想的であるかの評価値を計算する。その評価値は、調整装置5内の調整アルゴリズム実行装置5Aに引き渡される。調整アルゴリズム実行装置5Aは、後述するように本発明の方法で最適な調整結果を探索する。
【0046】
本例では入力光および出力光の光路数がそれぞれ一ずつであるが、本発明では、光学装置1の入力光8および出力光9の光路数は、複数の場合を含む任意の場合で可能であり、また、例えば、励起光源を内蔵したレーザーのように入力光8を有しない場合でも可能である。また、双方向に光を取り扱う光学装置の場合でも可能である。なお、この場合には、信号の方向に応じて入力光8と出力光9が変わるので、調整光発生器7と観測装置6の接続を切り替えて本発明の調整を実施する。
【0047】
また、本発明の調整に用いられる出力光9は光学装置1の本来の出力光のみならず、光学装置の内部(光学ユニット1)から取り出しても良い。
光学ユニット1における光学素子2の調整箇所の総数が複数であり、図2に例示するように、光学素子2の調整箇所において、ある調整箇所の調整が他のすべての調整箇所の調整結果に影響を及ぼすものであって、調整探索空間の組み合わせ爆発を起こす場合に、本発明は特に有効である。
【0048】
本例の光学ユニット1は、電気信号の調整信号に従って駆動機構4により調整される光学素子2、レジスタ群5RGを有する調整装置5により調整されることを大きな特徴としている。以下に本例の光学装置の動作説明を行う。
【0049】
光学素子2は、ミラー、レンズ、光学フィルター、プリズム、導波路型光学素子(光ファイバー、導波路型変調器、光ファイバーグレーティング)、半導体光部品(半導体ミラー、半導体吸収変調器)、回折格子、偏光素子、電気光学素子、音響光学素子、光学結晶(レーザー結晶)、スリット、および上記それらの光学素子の複合で構成される光学素子、等であり、調整装置5から出力される制御信号CSに対応して駆動機構4によりその位置、方向、光学特性のパラメータを変化させ得る光学素子である。
【0050】
そしてこの例は、かかる光学素子2の調整箇所の個数が複数であることを特徴としている。調整箇所が複数である場合はたとえ光学素子2の数が1であってもよい。光学素子2が複数の場合は、同一種類の光学素子であるか否かを問わない。また通常は、駆動機構4の数は光学素子2の調整箇所の同数である。ただし、駆動機構の一部、たとえば、モータに電流を流すための回路などは一体化してもよい。
【0051】
光学素子2は、駆動機構4によりそのパラメータを変化させるものである。可変するパラメータは上述のように、任意の座標系における位置、方向、光学特性であり、ある1つの調整箇所の変更、すなわち、ある1つの駆動機構4の動作により変化するパラメータの数は1とは限らない。以下に駆動装置4の構成例を示す。
【0052】
一方向の並進の移動が可能である光学素子2の駆動機構4の一構成例を図4に示す。図4中、401は該駆動機構の基台である。402は駆動され並進の動きをするステージであり、基台401上を一方向に動くことができるようにレールが設けられている(図示していない。)。該ステージ402には光学素子2が取り付けられている。403は雄ねじ、404は基台401に固定された雌ねじである。405は雄ねじ403を回転するためのモータ、406は雄ねじ403の回転した量(回転角)を検出するためのポテンショメータである。407はバネであり、雄ねじ403と雌ねじ404の間の隙間により位置の不確定さが生じることを防ぎ、また、雄ねじ403の移動量とステージ402の移動量が同じとなるように機能する。
【0053】
該駆動機構においては、モータ405により雄ねじ403が回転し、雌ねじ404が基台401に固定されていることから、雄ねじ403はその中心軸の方向に移動する。この移動量は雄ねじ403の回転角に比例した大きさである。雄ねじ403が一回転(回転角が360度)のとき、該移動量は雄ねじ403のねじ山のピッチに等しくなる。ステージ402は、雄ねじ402と同じ移動を行う。
【0054】
4Cは、制御信号CSと、ポテンショメータの示す回転角の信号(PS)を入力されて、制御信号CSに対応する回転角とポテンショメータの示す回転角を比較するための比較回路である。4Dは、比較回路4Cの出力に従ってモータ405を回転するための電流(MD)を出力するモータ駆動回路であり、比較回路の出力である制御信号CSに対応する回転角とポテンショメータの示す回転角が小さくなる方向にモータを回転する電流を出力する。
【0055】
以上の動作によって、該駆動機構は、該駆動機構に取り付けた光学素子2を、制御信号CSの示す値に対応する位置となるように並進移動させる。すなわち、該駆動機構は制御信号CSの示す値に対応して光学ユニット1内の光学素子2のパラメータを変化させる。
【0056】
図4の構成例の比較回路4Cおよびモータ駆動回路4Dを、調整装置5内に組み込むことも可能である。図5はこの一構成例を示している。図5中の5Cは、駆動機構制御装置で、ポテンショメータ406からの信号が入力されて図4の比較回路4Cおよびモータ駆動回路4Dと同じ機能を行う。ここで、図3と同じ参照符号のものは同じもの若しくは相当するものであることを表している。
【0057】
モータ405は直流モータのほか、圧電効果を利用するピエゾモータを使用してもよい。また、モータ405をステッピングモータとした場合、ステッピングモータに流す電流の状態に対応してモータの回転角度が制御できることから、ポテンショメータ406および比較回路4Cを省略する事が可能である。この場合、モータ駆動回路4Dは、制御信号CSが入力される。
【0058】
光学素子2において、二方向の並進を行うには、上記の図4の構成の駆動機構4を2段に重ねて使用すればよい。すなわち、2段に重ねた駆動機構のうち、下の段のステージ402と上の段の基台401を互いに固定するか、あるいは一体の構成とすればよい。このとき、下の段のステージ402と上の段の基台401の向きの関係は、平行であっても垂直であってもよい。さらには、任意の一定の角度であってもよい。
【0059】
光学素子2において、三方向の並進の移動を行うには、上述の二方向の並進の移動の場合と同様に、上記の図4の構成の駆動機構4を3段に重ねて使用すればよい。すなわち、3段に重ねた駆動機構4のうち、下の段のステージ402と中央の段の基台401を互いに固定するか、あるいは一体の構成とすればよく、中央の段のステージ402と上の段の基台401を互いに固定するか、あるいは一体の構成とすればよい。このとき、それぞれの段の基台401及びステージ402の向きの関係は、同様に平行であっても垂直であってもよく、任意の一定の角度であってもよい。
【0060】
光学素子2に対して一軸の回転を行う駆動機構4の一構成例を図6に示す。図6中、401は該駆動機構の基台である。402は駆動され並進の動きをするステージであり、410で示す支点を中心に回転する。該ステージ402に光学素子2が取り付けられる。403は雄ねじ、404は基台401に固定された雌ねじである。405は雄ねじ403を回転するためのモータ、406は雄ねじ403の回転した量(回転角)を検出するためのポテンショメータである。407はバネであり、雄ねじ403と雌ねじ404の間の隙間により位置の不確定さが生じることを防ぎ、また、雄ねじ403の移動量と一対一対応したステージ402の回転量が得られるように機能する。
【0061】
該駆動機構においては、モータ405により雄ねじ403が回転し、雌ねじ404が基台401に固定されていることから、雄ねじ403はその中心軸の方向に移動する。この移動量は雄ねじ403の回転角に比例した大きさである。雄ねじ403が一回転(回転角が360度)のとき、該移動量は雄ねじ403のねじ山のピッチに等しくなる。4Cは、制御信号CSに対応する回転角とポテンショメータの示す回転角を比較するための比較回路である。
【0062】
4Dは、比較回路4Cの出力に従ってモータ405を回転するための電流を出力するモータ駆動回路であり、比較回路の出力である制御信号CSに対応する回転角とポテンショメータの示す回転角が小さくなる方向にモータを回転する電流を出力する。雄ねじ403の移動によりステージ402が支点410を中心とする回転を行う。以上の動作によって、該駆動機構は、該駆動機構に取り付けた光学素子2を、制御信号CSの示す値に対応する方向となるように回転させる。すなわち、該駆動機構は制御信号CSの示す値に対応して該光学装置2のパラメータを変化させる。
【0063】
モータ405は直流モータのほか、圧電効果を利用するピエゾモータを使用してもよい。また、モータ405をステッピングモータとした場合、ステッピングモータに流す電流の状態に対応してモータの回転角度が制御できることから、ポテンショメータ406および比較回路4Cを省略することが可能である。この場合、モータ駆動回路4Dには、制御信号CSが入力される。
【0064】
光学素子2において、二軸の回転を行うには、上記の図6の構成の駆動機構を2組使用すればよい。さらには、支点410、バネ407を共通にして、図7に示す構成とすることも可能である。図7において、403a、403bは2つの軸に対応した回転を得るための雄ねじであり、410は共通の支点、407は共通のバネである。図7において、雄ねじ403a、403bの移動に必要なほかの構成要素の記載を省略してある。雄ねじ403a、403bがそれぞれ独立して制御信号CSに対応した位置に移動を行い、2軸の独立した回転が得られる。
【0065】
光学素子2において、三軸の回転を行うには、上述の二軸の回転の場合と同様に、上記の図6の構成の駆動機構を3組使用すればよい。
1つの光学素子2の変化し得るパラメータが並進の移動と回転の複合である場合には、上述の並進の移動の場合の構成例と、回転の場合の構成例を組み合わせることで構成できる。
【0066】
光学素子2が可変形ミラーである場合、取り扱う光の波面の制御が可能である。可変形ミラーの光学素子2およびその駆動機構4の一構成例を図8および図9に示す。図8は、この可変形ミラーの構成例の断面を示す図であり、図9は、この可変形ミラーの構成例の電極配置を示す平面図である。
【0067】
図8において、201は制御信号CSの示す値に対応して変形するミラー、202はミラーの支持構造、203は複数個の電極である。4AMは制御信号CSの値に応じて電圧を出力する増幅器である。本構成例では、1つの可変形ミラーなる光学素子2と複数の駆動機構4が一体の構成となっている。
【0068】
該変形するミラー201は、導電性の物質でできており、便宜上接地電位であるとする。複数の電極203は、該ミラー201に対向し、かつ、近接して等距離に設置されている。このとき、電極203に電圧を印加すると、静電引力により電極203に近接した部分のミラー201が引き寄せられる。その結果、該ミラー201は変形する。ここで、電極203および増幅器4AMは駆動機構4として機能する。
【0069】
電極203が複数あることから、それぞれの電極に印加される電圧に応じてそれぞれの電極近傍のミラーが引き寄せられることになる。このとき、ミラー201の変形の自由度は電極203の数と同じである。電極203は、図9に示す如く配置される。上記の構成例では、一つの可変形ミラーの電極の数、ミラー201の変形の自由度、調整箇所の数はともに37である。
【0070】
すなわち、該ミラー201は、入力される制御信号CSと同数のパラメータを有し、それと同数の自由度で変形する。ここで、ある電極203に対応する場所のミラー201の変形量は、該電極203に隣接する電極203の電圧により大きく影響される。そのため、複数の調整されるパラメータは、図2に示す如く該パラメータの調整結果に相互に影響を及ぼす。
【0071】
可変形ミラーの別の構成例について、図10にその断面を示す。図10中、4PZはピエゾ素子、204は絶縁体の支持構造である。このほか図8の場合と同様のものに同じ符号を付している。電極203の配置は図9に示す構成例と同様である。
【0072】
すなわち、入力される制御信号CSは増幅器4AMで増幅され、該制御信号CSに対応した電圧がピエゾ素子に印加される。これにより、ピエゾ素子が機械的に変形し、ミラー201が変形する。従って、上記の構成例と同様に、ミラーの形状を制御信号CSの示す値に応じて可変できる。この構成例では、ミラー201がピエゾ素子4PZ、電極203、および支持構造204により機械的に固定されているので、外部からの振動による影響を低減したい場合に有効である。
【0073】
さらにまた、可変形ミラーの別の構成例として、図10におけるピエゾ素子4PZを、ピエゾ素子と機械的に変位を生ずる駆動機構の複合としても良い。該駆動機構には、たとえば図4で示した駆動機構を用いることができる。この場合、ミラーの形状の大きな変位を該駆動機構で生じせしめ、変位の微調整をピエゾ素子により行うことで、大きな変位を高い精度で得ることができる。
【0074】
可変する素子パラメータが透過率、あるいは、吸収係数である場合の光学素子の一構成例を、図11に示す。図11中、210は半導体接合素子、211は入力光、212は出力光、213は電極、4AMは増幅器であり、本発明における駆動機構4に対応する。制御信号CSが増幅器4AMに入力され、その制御信号CSに対応した電圧が、電極213より、半導体接合素子210の逆バイアス電圧として該半導体接合素子に印加される。このとき、半導体接合素子210内部の物性値が変化し、光の透過率、あるいは、吸収係数が変化する。
【0075】
可変する素子パラメータが反射率である場合は、図11の構成で半導体接合素子210の光路と垂直の面の一つに反射膜を形成した構成が可能である。この場合、入射光と反射光の光路は同一となり、制御信号CSの示す値によって反射率が変化する。
【0076】
可変する素子パラメータが複屈折率である場合の光学素子の一構成例を、図12に示す。図12中、220は液晶、221は偏光子、222は位相調整器である。このほか、図11と同様の構成要素に同じ符号を付している。液晶220は電圧の印加により複屈折率が変化する。液晶220は、液晶の代わりに複屈折を有する電気光学結晶としても良い。位相調整器222は、たとえば1/2波長板もしくは1/4波長板である。この構成例も上記の透過率を可変する場合と同様にして、制御信号CSに対応した電圧が、液晶220に印加され、液晶の複屈折率が変化し、該光学素子を伝達する光の偏光特性(リターデーション)が変化する。
【0077】
可変する素子パラメータが伝達特性(位相/光強度)である場合の光学素子の一構成例を、図13に示す。図13中、230は電気光学結晶、231は分波器、232は合波器、233はミラー、221は偏光子である。このほか、図11と同様の構成要素に同じ符号を付している。電気光学結晶230は液晶などでもよい。分波器および合波器はたとえば偏光ビームスプリッタである。入力光211は分波器231で2分され、一方の光は電気光学結晶230により制御電圧の示す値に応じて位相が変化する。この光と分波器231からの光が合波器232で合成される。このとき、制御信号CSに対応して該光学素子の出力光の光強度が変化する。
【0078】
可変する素子パラメータが分配比である場合の光学素子の一構成例を、図14に示す。図14中、230は偏光を制御する電気光学結晶、231は分波器であり、たとえば、偏光ビームスプリッタである。221は偏光子である。212a、212bは二つに分配される出力光である。このほか、図11と同様のものには同じ参照符号を付している。上記の光学素子と同様に、入力光211は、電気光学結晶230により制御電圧の示す値に応じて偏光の状態が変化する。この光は分波器231で偏光の状態に応じて分配される。その結果、制御信号CSに対応して該光学素子の分配比が変化する。
【0079】
可変する素子パラメータが変調率である場合の光学素子の一構成例を、図15に示す。図15中、4VAは電気信号の利得可変増幅器、230は電気光学結晶である。このほか、図11と同様の構成要素に同じ符号を付している。入力光211は、電気光学結晶230において変調信号により変調される。このとき、利得可変増幅器4VAの利得を制御信号CSで可変することにより、制御信号CSに対応して該光学素子の変調率が変化する。
【0080】
可変する素子パラメータが振幅・位相特性の波長依存性(波長特性)である場合の光学素子の一構成例を、図16に示す。図16中、250は複数の制御信号CSによりその透過特性が制御される液晶パネル、251は回折素子、252はレンズである。回折素子251はたとえば回折格子もしくはプリズムである。入力光211は、回折素子251およびレンズ252によって波長別に光路が振り分けられる。そして、液晶パネル250は複数の制御信号CSの示す値に応じて複数の光路の振幅・位相特性が変化する。その結果波長ごとに光の振幅・位相が変化する。そしてレンズ252および回折素子251により波長別であった光路が一つの光路に合成される。その結果、複数の制御信号CSに対応して該光学素子の振幅・位相特性の波長依存性が変化する。
【0081】
上記の光学特性を可変する光学素子は、その光学特性をもっぱら電気的に可変するものであるが、光学素子2がその光学特性を光学的に可変する場合も可能である。
【0082】
光学素子2が該光学素子の光学特性を光学的に可変するものには、波長変換結晶、光増幅媒体、光変調器、光スイッチング素子がある。波長変換結晶は、光学結晶であり、分極振動の非線形性に基づく非線形光学現象を利用したものである。光増幅媒体には、レーザー結晶、有機色素、半導体、光増幅導波路がある。
【0083】
レーザー結晶は、レーザー準位(レーザー遷移を起こすことが可能なエネルギー準位)の反転分布を形成し、誘導放出を利用して光を増幅する。有機色素は有機色素中にレーザー準位の反転分布を形成し、誘導放出を利用して光を増幅する。光増幅導波路は、エルビウムなどのレーザー準位を有する元素を導波路に添加したものであり、たとえば、エルビウム添加光ファイバーである。
【0084】
光学素子2が該光学素子の光学特性を音響的に可変するものは、音響光学素子であり、たとえば、光学素子の光路に設置される媒質に超音波を印加して、この超音波の定在波による媒質の物性値の変化により光学素子の光学特性を変化させるものである。
【0085】
さらにまた、光学素子2が上記の光学素子2の複合であるものであってもよい。
次に、上記光学装置の調整のための、本発明の調整方法の図1の光学装置例について説明する。
【0086】
上記光学装置が製造された後、調整工程で、図1に示すように、光学ユニット1、調整装置5、観測装置6および調整光発生装置7がその光学装置にそれぞれ配置される。調整光発生装置7は、光学装置に調整光8aを入力し、調整装置5は、図17に示す処理手順に従って、レジスタ群5RGのレジスタ値の設定を行う。
【0087】
この処理手順では、まずステップS1で、人手により粗調整を行い光学装置を動作させ、そのときの各光学素子の素子パラメータ値を計測しその値を初期設定値としてレジスタ5Rに書き込んでレジスタ値として保持させ、次のステップS2で、調整光発生装置7が調整光を出力して、その調整光に対し光学装置を動作させ、次のステップS3で、その光学装置の光出力を観測装置6が観測してその結果を調整装置5に送り、次のステップS4で、調整装置5が、送られてきた観測値を使用して、光学装置の性能が、所定の仕様を満たす許容範囲にあるか否かを判定する。
【0088】
ここで許容範囲に無い場合には、ステップS5で、調整装置5が、レジスタ群5RGが保持しているレジスタ値を変更し、次のステップS6で、駆動機構4が停止するまで一定時間待機し、次のステップS7で、終了条件(具体的には後述する。)をみたしたか否かを判断し、終了条件をみたしていればステップS8で不良品処理を行った後に当該処理を終了するが、終了条件をみたしていなければステップS2へ戻る、という一連の処理が繰り返し実行される。そして上記ステップS4で、光学装置の性能が所定の仕様を満たすものとなったとの判定が得られた場合には、当該処理を終了する。
【0089】
上述した初期設定値からレジスタ値を変更する方法については、いくつかの方法を使用することができ、以下にその例を示す。すなわち、第1の方法は、想定されるレジスタ値の範囲におけるすべての組み合わせについて、適当な順序で順次設定値を切り替えていく方法であり、第2の方法は、乱数的に設定値を発生させる方法である。そして第3の方法は、人手による粗調整結果を初期設定値とし、その初期設定値から+方向と−方向に設定値を変化させる方法である。
【0090】
調整対象の光学ユニット1内に調整される光学素子2の数が少なく、レジスタ値の組み合わせ爆発を生じない場合は、第1、第2の方法を用いることができる。しかし、本例は、調整される光学素子2の数が多く、調整される素子パラメータの調整探索空間において組み合わせ爆発の発生が想定される場合であるので、第3の方法を使用する。このとき、遺伝的アルゴリズムと呼ばれる方法を使用する。以下では、遺伝的アルゴリズムを用いた光学装置の調整方法について説明する。
【0091】
上記遺伝的アルゴリズムの参考文献としては、例えば、出版社ADDISON-WESLEY PUBLISHING COMPANY, INC. が1989年に出版した、David E. Goldberg 著の「GeneticAlgorithms in Search, Optimization, and Machine Learning 」がある。なお、本発明でいう遺伝的アルゴリズムとは、進化的計算手法のことをいい、進化的戦術(Evolution Strategy: ES)の手法も含むものである。進化的戦術の参考文献としては、例えば、出版社John Wiley & Sons が1995年に出版した、H. P. Schwefel 著の「Evolutionand Optimum Seeking」がある。
【0092】
光学装置の性能は、複数の素子パラメータ値を引数とする評価関数Fで表すことができる。光学装置の性能が所定の仕様を満たすようにすることは、評価関数Fを最適にするパラメータ値を求めることと等価である。本発明者はこの点に着目し、光学装置の調整に上記の遺伝的アルゴリズムを適用可能なことを発見した。調整装置5は、この遺伝的アルゴリズムにしたがってレジスタ群5RGのレジスタ値を変更する。
【0093】
遺伝的アルゴリズムでは、まず遺伝子を持つ仮想的な生物の集団を設定し、あらかじめ定めた環境に適応している個体が、その適応度の高さに応じて生存し、子孫を残す確率が増えるようにする。そして、遺伝的操作と呼ばれる手順で親の遺伝子を子に継承させる。このような世代交代を実行し、遺伝子および生物集団を進化させることにより、高い適応度を持つ個体が生物集団の大勢を占めるようになる。そしてその際の遺伝的操作としては、実際の生物の生殖においても生じる、遺伝子の交叉、および突然変異等が用いられる。
【0094】
図18は、かかる遺伝的アルゴリズムの概略手順を示すフローチャートであり、ここでは、初めにステップS11で、個体の染色体を決定する。すなわち、世代交代の際に親の個体から子孫の個体に、どのような内容のデータをどのような形式で伝えるかを定める。図19に染色体を例示する。ここでは、対象とする最適化問題の変数ベクトルxを、M個の記号Ai(i=1、2、・・M)の列で表わすことにし、これをM個の遺伝子座からなる染色体とみなす。各記号Aiは遺伝子であり、これらのとりうる値が対立遺伝子である。図19中、Chは染色体、Gsは遺伝子座を示し、遺伝子座の個数Mは5である。対立遺伝子としては、ある整数の組、ある範囲の実数値、単なる記号の列などを問題に応じて定める。図19の例では、a〜eのアルファベットが対立遺伝子である。このようにして記号化された遺伝子の集合が個体の染色体である。
【0095】
上記ステップS11では次に、各個体が環境にどの程度適応しているかを表わす適応度の計算方法を決定する。その際、対象とする最適化問題の評価関数の値がより高い変数あるいはより低い変数ほど、それに対応する個体の適応度が高くなるように設計する。またその後に行う世代交代では、適応度の高い個体ほど、生き残る確率あるいは子孫を作る確率が他の適応度の低い個体よりも高くなるようにする。逆に、適応度の低い個体は、環境にうまく適応していない個体とみなして、消滅させる。これは、進化論における自然淘汰の原理を反映したものである。すなわち適応度は、生存の可能性という面から見て各個体がどの程度優れているかを表わす尺度となる。
【0096】
遺伝的アルゴリズムでは、探索開始時においては、対象とする問題は一般にまったくのブラックボックスであり、どのような個体が望ましいかはまったく不明である。このため通常、初期の生物集団は乱数を用いてランダムに発生させる。従ってここにおける手順でも、ステップS12で処理を開始した後のステップS13では、初期の生物集団は乱数を用いてランダムに発生させる。なお、探索空間に対して何らかの予備知識がある場合は、評価値が高いと思われる部分を中心にして生物集団を発生させるなどの処理を行うこともある。ここで、発生させる個体の総数を、集団の個体数という。
【0097】
次にステップS14で、生物集団中の各個体の適応度を、先にステップS11で決めた計算方法に基づいて計算する。各個体について適応度が求まったら、次にステップS15で、次の世代の個体の基となる個体を集団から選択淘汰する。しかしながら選択淘汰を行うだけでは、現時点で最も高い適応度を持つ個体が生物集団中に占める割合が高くなるだけで、新しい探索点が生じないことになる。このため、次に述べる交叉と突然変異と呼ばれる操作を行う。
【0098】
すなわち、次のステップS16では、選択淘汰によって生成された次世代の個体の中から、所定の発生頻度で二つの個体のペアをランダムに選択し、染色体を組み変えて子の染色体を作る(交叉)。ここで、交叉が発生する確率を、交叉率と呼ぶ。交叉によって生成された子孫の個体は、親にあたる個体のそれぞれから形質を継承した個体である。この交叉の処理によって、個体の染色体の多様性が高まり進化が生じる。
【0099】
交叉処理後は、次のステップS17で、個体の遺伝子を一定の確率で変化させる(突然変異)。ここで、突然変異が発生する確率を突然変異率と呼ぶ。遺伝子の内容が低い確率で書き換えられるという現象は、実際の生物の遺伝子においても見られる現象である。ただし、突然変異率を大きくしすぎると、交叉による親の形質の遺伝の特徴が失われ、探索空間中をランダムに探索することと同様になるので注意を必要とする。
【0100】
以上の処理によって次世代の集団が決定され、ここでは次に、ステップS18で、生成された次世代の生物集団が探索を終了するための評価基準を満たしているか否かを調べる。この評価基準は、問題に依存するが、代表的なものとして次のようなものがある。
・生物集団中の最大の適応度が、あるしきい値より大きくなった。
・生物集団全体の平均の適応度が、あるしきい値より大きくなった。
・生物集団の適応度の増加率が、あるしきい値以下の世代が一定の期間以上続いた。
・世代交代の回数が、あらかじめ定めた回数に到達した。
【0101】
上述の如き終了条件(評価基準)の何れかが満たされた場合は、ステップS19へ進んで探索を終了し、その時点での生物集団中で最も適応度の高い個体を、求める最適化問題の解とする。終了条件が満たされない場合は、ステップS14の各個体の適応度の計算の処理に戻って探索を続ける。このような世代交代の繰り返しによって、集団の個体数を一定に保ちつつ、個体の適応度を高めることが出来る。以上が遺伝的アルゴリズムの概略である。
【0102】
上で述べた遺伝的アルゴリズムの枠組みは、実際のプログラミングの詳細を規定しない緩やかなものとなっており、個々の問題に対する詳細なアルゴリズムを規定するものではない。このため、遺伝的アルゴリズムを本例の光学装置の調整に用いるには、以下の項目を光学装置の調整用に実現する必要がある。
(a) 染色体の表現方法
(b) 個体の評価関数
(c) 選択淘汰方法
(d) 交叉方法
(e) 突然変異方法
(f) 探索終了条件
図20は、本例における遺伝的アルゴリズムを用いた調整装置5の処理手順を示すフローチャートである。なお、この図20の処理は、図17のステップS3〜ステップS5の処理を具体的に示すものである。本例は、遺伝的アルゴリズムの染色体として、レジスタ5のレジスタ値を直接用いることを大きな特徴としており、これにより、染色体の情報をレジスタ値に変換するための処理等を不要とすることができる。
【0103】
このことを図21を例に具体的に説明する。この図は、図4および図6に示した駆動装置を調整する場合の例であり、レジスタ5Rは、+4.32、−15.67、+3.47、−9.71等の値を保持している。これらの値を直列に接続したものが染色体であり、この例の場合、染色体中の各遺伝子が+4.32、−15.67、+3.47、−9.71等の値をとることになる。レジスタ5Rの値は駆動機構4内のポテンショメータ406の値に対応しているので、ポテンショメータ406の値がレジスタ5Rで指示された値になるように光学素子2が制御される。ポテンショメータ406の値と素子パラメータの値は一対一に対応するので、遺伝的アルゴリズムの遺伝子の値と素子パラメータの値は一対一に対応することになる。
【0104】
図20の処理で使用する、遺伝的アルゴリズムの個体の評価関数Fとしては、個体の染色体が表現するレジスタ値で光学ユニットを設定したのち動作させ、観測装置6によって観測された光出力が理想的な出力にどのくらい近いかを表す関数を用いる。
【0105】
図20に示す処理で用いるために、先に図17のステップS1で遺伝的アルゴリズムの初期集団として、一様乱数を用いて個体を複数作成する。つまりこの場合には、初期集団の各染色体の各遺伝子の値は上限値と下限値のあいだのランダムな実数値をとることを意味する。但し、素子パラメータの誤差の傾向について何らかの予備知識が存在する場合には、より適応度が高いと思われる個体を初期集団として作成することができる。
【0106】
観測装置6から送られてきた観測結果から、評価関数器5Fにより上記評価関数を用いて適応度を計算する。その後調整アルゴリズム実行装置5Aにより、光学装置1の性能が所定の仕様を満たす許容範囲にあるか否かをステップS23で判定し、許容範囲に無い場合には、ステップS24の選択淘汰、ステップS25の交叉、ステップS26の突然変異およびステップ27、ステップS28の局所学習の処理(後述する。)を行って、次世代の個体の集団(解の候補の集団)を作り出す。
【0107】
しかして、ステップS23での判断で光学装置の性能が所定の仕様を満たしたときに、調整処理は終了するが、一定世代数繰り返して調整処理をおこなっても仕様を満たす染色体(レジスタ値)が得られない場合には、調整対象の光学装置は不良品と判断され、図17のステップS8で不良品としての処理を行う。なお、所定の仕様にたとえば出力光強度等の評価値をできるだけ増大もしくは減少せよ、という指示がある場合には、ステップS23で調整処理を終了する条件としては、世代数が一定数をこえたか否かという条件を用い、不良品処理は行わない。
【0108】
上記ステップS24の選択淘汰処理においては、図22のフローチャートに示す方法を用いる。この方法は、まずステップS31およびステップS32で、集団中からランダムにふたつの個体A、Bを選び、次いでステップS33〜ステップS35で、そのふたつの個体A、Bのうち、より適応度の値が大きいほうの個体を次世代に生き残らせる個体とする。そして生き残った個体の数が集団の個体数に達するまで、ステップS36からステップS31へ戻ってその操作をくり返す。この方法では、適応度の大きい個体が次の世代の個体として選ばれる可能性が高いが、個体A、Bをランダムに選択しているため適応度が低い個体でも次世代の個体として選ばれる可能性が残されることになる。このようにするのは、適応度が高い個体だけ残すと、集団の収束性が高まり、局所的な最適解にとらわれて調整に失敗しやすくなるためである。
【0109】
上記ステップS25の交叉処理では、図23の説明図に示す方法を用いる。これは染色体をランダムな位置で部分的に入れ替える操作であり、1点交叉と呼ばれる手法である。図23では、Ch1およびCh2が選択淘汰の結果生き残った親A、Bの染色体であり、ここにおける交叉処理では、これらの染色体を、ランダムに選んだ交叉位置CPで切断する。図23の例では、左から2番目の遺伝子と3番目の遺伝子の間を交叉位置としている。そして、切断した部分的な遺伝子型を入れ替えることによって、染色体Ch3およびCh4をそれぞれ持つ子A' 、子B' を生成し、これらをもとの個体A、Bと置き換える。
【0110】
ステップS25での交叉にひき続いて実行する上記ステップS26の突然変異は、各染色体の遺伝子にガウス分布N(0、σ)に従って発生させた正規乱数を加算する操作とした。図24に突然変異の例を示す。この図では、染色体Ch5に対して、ガウス分布に従って発生させた正規乱数Nが加算されて染色体Ch6に変更されている。
【0111】
ステップS26での突然変異が終了したのち、得られた染色体の値をレジスタ群5RGに書き込む。その後、駆動機構制御装置5Cが、素子パラメータの値がレジスタ値に対応した値になるように駆動機構4を制御する。駆動機構制御装置5Cがない場合は、駆動装置内にある比較器4Cおよびモータ駆動回路4Dが素子パラメータがレジスタ値に対応した値になるように制御を行う。この制御には、観測装置6が出力光の状態を観測するのに要する時間と比較して、一般的に10から100倍の時間を要する。
【0112】
そこで、この制御を行っている最中にも観測装置6を動作させ、その観測値をもちいて効率的に探索を行う調整方法を発明した。その方法を局所学習と呼ぶことにし、ステップS27、ステップS28で実行する。局所学習を行う場合は、図5に示した調整装置5を用いる。なお、観測装置6が出力光の状態を観測するのに要する時間が、素子パラメータを制御するのに必要な時間と比較して大きい場合は、この局所学習はおこなわずにステップS27のみを行う。
【0113】
上記ステップS28の局所学習処理は、図25の説明図に示す方法を用いる。この方法は、まず図20のステップS27に対応する図25のステップS41でレジスタ値を変更し、図5の駆動機構制御装置5Cを動作させ、ステップS42で観測装置6により光学装置の出力光を観測し、それと同時に駆動機構制御装置5Cが素子パラメータの値をステップS43で計測する。ステップS44では、駆動機構制御装置5Cおよび評価関数器5FがステップS42とステップS43で得られた出力光の観測値と素子パラメータの値を調整アルゴリズム実行装置5Aに送り、調整アルゴリズム実行装置5Aがそれらを組としてメモリ5Mに保存する。
【0114】
そしてステップS45において、駆動機構制御装置5Cで素子パラメータの値がレジスタ値に対応した値になったと判定されるまで、上記ステップS42〜ステップS44を繰り返す。ステップS46では、素子パラメータの値がレジスタ値に対応した値になったと判定されたのち、調整アルゴリズム実行装置5Aにおいて、メモリ5Mに保存された出力光の観測値と素子パラメータの値の組のうち、もっとも評価関数Fの値が大きくなる組、すなわち局所的な最適解、を選び出す。最後にステップS47において、ステップS46で選び出された組の素子パラメータ値を用いて、それに対応するレジスタ値を求めその値で染色体を書き換える。
【0115】
上記局所学習処理において、調整対象の素子パラメータが2個の場合の動作例を、図26を用いて説明する。まず、上記ステップS41でレジスタ値を変更する前の素子パラメータの値が(XS,YS)であったとする。そして、ステップS41で変更したレジスタ値に対応する素子パラメータの値が(XE,YE)であるとする。このとき、ステップS42からステップS45のループにおいて、素子パラメータの値は、(XS,YS)から(XE,YE)へと駆動機構制御装置5Cによって徐々に変化させられる。そのときに、ステップS44により、変更途中の素子パラメータの値と、その値に対応する観測結果の組が複数個メモリに保存される。
【0116】
次に、ステップS46において、メモリに保存された上記素子パラメータ値と観測値の組のうち、観測結果より算出される評価関数Fの値(適応度)がもっとも大きくなる組を選び出す。この例の場合は、素子パラメータが(XM,YM)のときに評価関数値が最大のFMをとるので、ステップS46で(XM,YM)の組が選ばれる。最後にステップS47で、染色体の値が、素子パラメータ(XM,YM)に対応する値に書きかえられる。
【0117】
図26の例の場合、局所学習を行わない場合は、素子パラメータが(XS,YS)のときと(XE,YE)のときの二通りしか探索(観測)を行わないので、評価関数値をFMにする素子パラメータ(XM,YM)を発見することはできない。しかしながら、局所学習を行う場合は、素子パラメータ変更中にも観測をおこなうので、(XS,YS)(XM,YM)以外の複数個の素子パラメータ値(おおむね10から100個程度)において探索を行っているので、(XM,YM)を発見することができる。さらに、この(XM,YM)に対応したレジスタ値で染色体が書き換えられるので、探索効率が大幅に改善される。
【0118】
上述したように、本例の光学装置では、複数の光学素子に、素子パラメータを変更可能な素子2を使用し、それらの光学素子2の素子パラメータを光学装置の性能が好適となるように探索する。従って、熟練者による手動の調整および精度の高い光学素子を必要とすることなく、また、精度の高い駆動装置を必要することなく、光学装置を所定の仕様を満たすように自動的に調整することができる。このことは、従来技術による場合より少ない労力で、従来技術による場合より高性能が得られることを意味する。
【0119】
次に、図1の光学装置例の一変形例について説明する。先の図1の光学装置例では、調整される光学素子2が光学装置内に実装される一方、調整装置5および観測装置6は外部装置として光学ユニット1に脱着可能に接続される。しかしながら本発明では、調整装置5や観測装置6に相当する機能を調整手段として光学ユニット1に組み込んだ装置にしてもよい。
【0120】
このように構成された変形例を図27に示す。ここでは光学装置1A内に光学ユニット1、調整装置5および観測装置6に相当する機能が組み込まれている。
すなわち、図27の光学装置の例は、光学装置1Aの入力光8および出力光9の光路部分に、ミラーを利用した切換スイッチ13が設置されている。この切換スイッチ13は、図示例のように光学装置1A内に設けられていても良いが、光学装置1A外に設けても良い。ここで、切換スイッチ13を操作すると、光学ユニット1の出力光が観測装置6に入力されるとともに、調整装置5、調整光発生装置7が動作を開始し、設定値の調整を行う。設定が終了したら、切換スイッチ13の操作で、光学ユニット1の出力光を本来の出力光路側に切り替える。なお、この例では、仕様を満たす解(レジスタ値)が得られない場合に警告表示をする表示器14が設けられている。
【0121】
かかる変形例によれば、組立後の光学装置1Aの調整だけでなく、ユーザーが光学装置1Aを組み込んだ製品を購入した後、ユーザー自身が光学装置1Aの調整を随時行うこともできる。これにより、光学装置1Aを移動運搬した場合や、光学装置1Aが置かれた環境の温度その他が変化した場合等に、光学装置の性能特性に変化が生じても、その変化を補償することができ、ひいては、光学素子の素子パラメータのずれによる光学装置の機能・性能の低下を改善することができるというメリットがある。なお、切換スイッチ13は手動に限らず、光学装置1Aの起動時に自動切換するように構成することもできる。
【0122】
また、この変形例は、調整装置5として先の梶谷らによる論文記載の遺伝的アルゴリズム実行回路等を用いることにより、小型化にも適している。
さらにまた、この変形例によると、ユーザーが随時調整可能であるから、光学素子のホルダーや光学ユニット1の基台(光学定盤)の剛性が従来のものより低い物であってもよい。その結果、光学ユニット1の大幅な軽量化、小型化、ひいてはコストの低減というさらなる効果が得られる。
【0123】
次に、本発明の光学装置の実施例としての超短パルスレーザー装置(発生する光パルスの幅がフェムト秒領域から10ピコ秒であるレーザー装置)の一構成例を示す。図28は、本発明の光学装置の実施例としての超短パルスレーザー装置を例示する構成図である。
【0124】
超短パルスレーザー装置は、発生する光パルスのパルス幅がフェムト秒領域と非常に短く、かつ、光パルスの強度の尖頭値(ピーク値)が非常に大きいという特徴があり、それゆえ、超高速サンプリング測定技術に代表される計測技術のみならず、光通信技術、医療技術、加工技術においても超短パルスレーザー装置は高い有用性がある。
【0125】
超短パルスレーザー装置は、励起光源、光学結晶、共振器(キャビティー)を構成する複数のミラーおよびプリズムなどの光学素子を該レーザー装置の主要な構成要素としている。そして、超短パルスレーザーの機能には、発生する光パルスの強度ができるだけ高く、パルス幅ができるだけ短く、光パルスの強度のピーク値ができるだけ大きく、さらにまた、必要な励起光の強度がなるべく小さいという特性が望まれる。
【0126】
実際に製造される超短パルスレーザー装置では、製造工程における加工・組立精度の限界、移動・運搬時の振動や衝撃、設計上の誤差等に起因する該光学素子の位置や方向(パラメータ)の誤差のために、光学素子の作用が完全ではなくなり、その結果、光パルスの強度が低下し、パルス幅が長くなり、光パルスの強度のピーク値が低下し、必要な励起光の強度が高くなるといった機能の低下が起きてしまう。
【0127】
そこで、この実施例では、超短パルスレーザー装置を構成する光学素子のうちの複数の光学素子のパラメータを可変にし、該レーザーの機能が高くなるように遺伝的アルゴリズムを用いて調整を行う。図28は、この実施例の超短パルスレーザー装置の構成を示しており、この超短パルスレーザー装置(以下、「レーザー装置」と称する)1Lは、図1の光学装置例における光学ユニット1に該当する。なお、図1に使用されたと同様のものにはそれと同一の参照符号を付している。
【0128】
図28は、本発明の光学ユニットを適用した超短パルスレーザー装置の一構成例であり、この実施例においては、調整装置5および観測装置6は外部装置となる。レーザー装置1Lにおいて2M1から2M4は、制御信号CSが示す値に応じてパラメータを変化させる光学素子としての、パラメータを変化させ得るミラー、2P1および2P2は、これも制御信号CSが示す値に応じてパラメータを変化させる光学素子としての、パラメータを変化させ得るプリズムである。3M1および3M2は、本発明による方法での調整を行わない光学素子としてのミラー、3Cはこれも本発明による方法での調整を行わない光学素子としての光学結晶(レーザー結晶)である。
【0129】
7PBはレーザー装置の励起光を発生する光源(励起光源)であり、励起光源7PBは図1における調整光発生装置に対応しており、調整対象の光学装置すなわちレーザー装置1Lに内蔵された構成である。そして、光学結晶3C、およびミラー2M1から2M4の部分は、光が2M1と2M4の間を往復するため共振器(キャビティー)を構成する。この共振器を2Rとする。この共振器2Rが後述するように本発明の方法により調整される。
【0130】
また図28中、4は駆動機構であり、この駆動機構4は、保持回路としてのレジスタ5Rに保持されているデジタル値に対応する電気的信号を、制御信号CSとして、光学素子である2M1から2M4、および2P1、2P2、に供給する。ここで、駆動機構4およびレジスタ5Rは、調整箇所の数(図28の構成では14)だけ設けられる。
【0131】
上記駆動機構4は図1の光学装置例で用いた図4から図7に示す構成が利用できる。それぞれの調整箇所のパラメータは、レジスタ5Rの32ビットのデータに応じてポテンショメータ406の示す値が該データに対応した値となるようにモータ405が回転し、光学素子2の位置あるいは方向が変化する。
【0132】
図28中、8は励起光源により発生した励起光であり、9はレーザー装置1Lの出力光である。6はレーザー装置1Lの出力光9を観測して、光強度、パルス強度、あるいはパルス強度に関連した量(たとえば、レーザーパルス光により化合物半導体中に2光子吸収により誘起される電流値)、等、あるいはそれらの組み合わせを演算した結果を出力するものである。
【0133】
そして5は調整装置であり、遺伝的アルゴリズムに従って、図1の光学装置例に詳述したと同様の方法で、複数のレジスタ5Rの保持値として最適な値を探索する。
【0134】
上記ミラー2M1は平面のミラーであり、該ミラーに入射する光の一部を反射し、その反射した光の残りを透過する。上記ミラー2M2は、凹面のミラーであり、凹面の側に入射する光の一部を反射して集光する。また、裏面から入射する光の一部を透過する。上記ミラー2M3は、凹面のミラーであり、凹面の側に入射する光を反射して集光する。上記ミラー2M4は平面のミラーであり、該ミラーに入射する光の一部を反射する。上記プリズム2P1および2P2は、光の屈折作用により光の波長に依存する角度で光路を折り曲げる。ミラー2M1から2M2、およびプリズム2P1、2P2は駆動機構4により位置および方向が制御され得る図4ないし図7のステージ402に設置される。
【0135】
上記ミラー3M1、3M2は平面のミラーであり、該ミラーに入射する光を反射する。上記光学結晶3Cは、チタンを添加したサファイアの結晶であり、入射光のエネルギーを吸収し蓄積して、誘導放出現象により光の増幅を行う。かかるミラーおよび光学結晶はレーザー1を組み立てる際に適切な光路が得られるように位置や方向の調整を行うこともあるが、本実施例においては、本発明の調整方法による調整を行わなくてもよい。
【0136】
かかるミラー2M1から2M4、およびプリズム2P1および2P2は、本発明の方法で調整される光学素子であり、制御信号CSの示す値のよって光学素子のパラメータ、すなわち、位置および方向、あるいは方向が変化する。それにより、共振器2Rの特性が変化し、レーザーの特性が変化する。
【0137】
上記の調整される光学素子の位置と方向について図を用いて説明する。図29は光学素子を便宜上平板で表したものであり、21はかかる調整される光学素子である。ここで、光学素子21の基準となる軸を便宜上X軸とし、次のように定義する。すなわち、光学素子21がミラーである場合はミラーの中心を通り面に垂直の線、光学素子21が凹面のミラーである場合は凹面のミラーの中心と焦点を結ぶ線、光学素子21がプリズムである場合はプリズム中の平均的な光路の中心である線、をX軸とする。また、光学素子21の別の軸を便宜上Y軸とし、次のように定義する。すなわち、光学素子21がプリズムである場合、入射光の光路と出射光の光路の作る面上で該X軸と垂直の線、光学素子21がミラーあるいは凹面のミラーである場合X軸と垂直である任意の1つの線、をY軸とする。さらにまた、該X軸と該Y軸に垂直である線をZ軸と定義する。X軸、Y軸、およびZ軸の符号の向き(正の方向)の定義は任意である。ここで、光学素子21が駆動機構4により位置を変えるとき、X軸方向の移動量をx、Y軸方向の移動量をy、Z軸方向の移動量をzとする。
【0138】
光学素子21の方向については、光学素子21を駆動機構4によりY軸に平行なある直線を軸として角度θyだけ回転させるとき、便宜上Y軸方向の回転と呼ぶ。同様に、Z軸に平行なある直線を軸として角度θzだけ回転させるとき、便宜上Z軸方向の回転と呼ぶ。
【0139】
本実施例においても、図1の光学装置例の図4から図7で示した方法を適用して駆動機構4により光学素子21の位置および/あるいは方向を変化できる。調整される光学素子のそれぞれについて、調整される内容およびパラメータを表1に示す。
【0140】
【表1】
Figure 0003957222
【0141】
上記の光学素子に適用する駆動機構4および該光学装置の構成は、具体的にはたとえば次の構成である。ミラー2M1および2M4は、それぞれ、図7に示す構成の駆動機構のステージ402に取り付けた構成である。ミラー2M2および2M3は、それぞれ、図4に示す構成および図7に示す構成の組み合わせが適用され、図4中のステージが図7で不図示の基台とした駆動機構の構成であり、該ミラーを図7のステージ402に取り付けた構成である。プリズム2P1および2P2は、それぞれ、図4に示す構成のおよび図6に示す構成の組み合わせが適用され、図4中のステージが図6中の基台401とした駆動機構の構成であり、該プリズムを図6のステージ402に取り付けた構成である。
【0142】
励起光源7PBは、たとえば、四酸化イットリウムバナジウム(YVO4)の結晶をもちいて波長が530nmの連続した光を発生するレーザー装置である。励起光源7PBで発生する光は、ミラー3M1および3M2を経由して、その光の一部がミラー2M2を透過して光学結晶3Cに照射される。光学結晶3Cにおいては、その照射された光のエネルギーを吸収し蓄積して、その照射された光と異なる波長の光RLをミラー2M2の方向およびミラー2M3の方向に放出する。ミラーM1からM4、プリズムP1、P2、光学結晶3Cからなる共振器2Rにおいては、光路の長さで決まる時間周期で該光RLが共振器の両端であるミラー2M1と2M4の間を往復する。この光の往復によりレーザー発振が得られる。ミラー2M1は、光の一部を透過することから、出力光9が得られる。
【0143】
上記の光学素子の位置および方向は、レーザー装置の設計上の位置および方向と完全に一致することが理想的であり、このとき、レーザー装置の特性が良好(たとえば、該レーザー装置の出力光の強度が高く、パスル幅が短く、パルスのピーク強度が高く、必要な励起光の強度が低い状態)となる。
【0144】
しかしながら、実際に製造される超短パルスレーザー装置では、製造工程における加工・組立精度の限界、移動・運搬時の振動や衝撃、設計上の誤差等に起因する該光学素子の位置や方向(パラメータ)の誤差のために、光学素子の作用が完全ではなくなり、その結果、レーザー装置の性能が低下してしまう。
【0145】
そこでこの実施例のレーザー装置1Lでは、共振器2Rの構成要素であるミラー2M1から2M4およびプリズム2P1、2P2の位置や方向(パラメータ)を調整することにより、レーザー装置の性能が高い状態、すなわち、光パルスの強度が高く、パルス幅が短く、強度のピーク値が高く、必要な励起光の強度が低くなるようにする。
【0146】
以下に、図28に示す本実施例のレーザー装置1Lに適用される、本発明の実施例の調整方法を述べる。ここでは、便宜上、レーザー装置に望まれる性能として光パルスの強度が高いということを例に説明する。
【0147】
このレーザー装置1Lの要求仕様の一例は、次のとおりである。
(1) 励起光のパワーが3W時に 出力光の平均パワーが250mW以上
(2) 出力光の平均パワーはできるだけ大きいこと
このレーザー装置1Lの性能は、複数の光学素子2M1〜2M4および2P1、2P2の素子パラメータを引数とする評価関数Fで表すことができる。レーザー装置1Lの性能がなるべく高いようにすることは、評価関数Fを最適にするパラメータ値を求めることと等価である。
【0148】
本実施例では、調整される光学素子2の数が6個と多く、調整される素子パラメータの数が14個となり組み合わせ爆発の発生が想定される場合であるので、調整装置5は、評価関数Fを用い、遺伝的アルゴリズムに従ってレジスタ群5RGの値を変更する。
【0149】
光共振器内の光学素子の調整は、図1の光学装置例の場合と同様、図17および図20に示すフローチャートに従って行われる。本実施例は、遺伝的アルゴリズムの染色体として、レジスタ群5RGの値を直接用いることを大きな特徴とする。これにより、染色体の情報をレジスタ値に変換するための処理等が不要になる。
【0150】
すなわち、本実施例における染色体は、図21に示すように、14個の素子パラメータ値に対応する14個のレジスタ5Rのレジスタ値から構成されている。そして各素子パラメータに対応する各レジスタ5Rは、32ビットの浮動小数点値とされている。それゆえ、レジスタ長(=染色体長)は、448ビットである。従って、上記実施例の光学装置1の調整探索空間の大きさは、2^448≒10^135(10の135乗)であり、全探索による調整はいうまでもなく不可能である。
【0151】
各レジスタ値の上限値および下限値は、初期設定時の人手による粗調整の精度に依存し、粗調整後に必要となる光学素子2の移動量、回転量に応じて決められる移動範囲、回転範囲に応じて定める。このレジスタ値の上限値および下限値は、調整装置5による調整が進むにつれて、下限値と上限値の幅が狭くなるようにしてもよい。また、調整装置5による調整過程で得られるレジスタ値が上限値あるいは下限値と等しくなる場合が頻発する場合には、調整途中であっても下限値と上限値の幅を広くしてもよい。 なお本実施例では、各レジスタ値の上限値を初期設定値から+32.0、下限値を−32.0とした。
【0152】
図20の処理で使用する、遺伝的アルゴリズムの個体の評価関数Fとしては、個体の染色体が表現するレジスタ値でレーザー装置1Lを設定したのち動作させ、観測装置によって観測された光出力が理想的な出力にどのくらい近いかを表す関数を用いる。具体的には、本実施例の実験例では観測装置としてパワーメータを用い、その観測されたパワーの平均値を個体の適応度とした。
【0153】
上記の評価関数Fは、レーザー装置1Lがより大きな平均パワーを出力すればするほど理想的であると定めている。例えば、ある染色体が表現するレジスタ値で設定した光学装置の光出力のパワーが、6.8mWであったとすると、その場合の評価関数Fの値は、6.8になる。
【0154】
図20に示す処理で用いるために、先に図17のステップS1で遺伝的アルゴリズムの初期集団として、一様乱数を用いて個体を複数作成する。つまりこの場合には、初期集団の各染色体の各遺伝子の値は上限値と下限値のあいだのランダムな実数値をとることを意味する。本実施例では、集団の個体数は50とした。
【0155】
しかる後、各個体の表現するレジスタ値でレーザー装置1Lを動作させ、ステップS3における観測装置6での観測結果を使用して、ステップS4において調整装置5で、上記評価関数により適応度を計算する。その後、順次に、ステップS24で選択淘汰、ステップS25で交叉、ステップS26で突然変異、ステップS28で局所学習の処理を行ない、次世代の個体の集団(解の候補の集団)を作り出す。本実施例では、全個体数のうちの交叉を行う個体数の割合である交叉率は0.5とし、突然変異のさいに加算する正規乱数のガウス分布のσは3.2を用いた。
【0156】
ステップS4では、レーザー装置1Lの性能が前述したような所定の仕様を満たすかどうかが判断され、所定の仕様を満たしたときに、調整処理は終了する。また、一定世代数繰り返して調整処理をおこなっても、仕様を満たす染色体(レジスタ値)が得られない場合は、調整対象のレーザー装置1Lは不良品と判断され、ステップS8で不良品としての処理を行う。なお、本実施例では、繰り返しを打ち切る世代数は30とした。
【0157】
以下に、図28に示すレーザー装置1L(具体的にはその光学装置1内の光共振器2R)に本実施例の遺伝的アルゴリズムを用いた調整方法を適用した場合の実験結果について示す。この実験では、調整光にはパワー3.0W、波長530nmのYVO4レーザー光を用い、透過率2.0%の平面カプラを透過した出力光をパワーメータで観測する。かかるパワーメータは観測装置6に対応し、その観測結果はレーザー装置1Lの出力光の平均強度に比例しており、この値を評価関数値として用いた。
【0158】
上記実験の結果、人手による粗調整では4.37mWしか得られなかったパワーメータにおけるパワーが、レーザー装置に対し本実施例の遺伝的アルゴリズムを用いた方法で調整を行ったところ、9.96mW(実際の光出力は9.96/2.0%=498mW)のパワーを得たので、前述の仕様をみたすことができた。図30に、実験中の世代中の最良個体の評価関数値Fと世代の関係を示す。遺伝的アルゴリズムの世代が進むにつれて、レーザー出力光のパワー値が増加し、評価値が改善されていることがわかる。例えば、9.96mWのパワーを得るには、従来技術によれば、熟練者であっても1週間以上の長時間を要するか、そのような性能が最終的に得られないが、本発明の方法によれば、自動的に短時間(この実験では約3時間)で従来よりも遥かに良好な結果が得られた。従って、この実験により、本実施例の調整方法の有効性が確認出来た。
【0159】
上述したように、本実施例のレーザー装置1Lでは、複数の光学素子に、素子パラメータを変更可能な素子2M1〜4、2P1、2P2を使用し、それらの光学素子の素子パラメータをレーザー装置1Lの性能が好適となるように探索する。従って、熟練者による手動の調整および精度の高い光学素子を必要とすることなく、また、駆動精度の高い駆動装置を必要することなく、レーザー装置1Lを所定の仕様を満たすように自動的に調整することができる。このことは、従来技術による場合より少ないコストおよび労力で、従来技術による場合より高性能が得られることを意味する。
【0160】
さらにまた、本発明によると、レーザー装置1Lを移動・運搬したり、経時変化や温度変化等によって素子パラメータの値が最適値からずれた場合でも自動的に、従来技術による場合より少ないコストおよび労力で、従来技術による場合より高性能に調整することができる。
【0161】
なお、本実施例は、レーザー1Lの共振器2Rがプリズムを有する場合には、素子パラメータ同士の非線形な相関がプリズムを有しない場合に比べて強いので、特に好適である。
【0162】
本実施例に関しては、以下の変形例を実施できる。
(1)調整を行う際に観測装置6で測定するレーザー装置1Lの出力光の測定項目を、光パルスの強度の1種類だけでなく、光パルスのパルス幅、光パルスの強度のピーク値、さらには、光パルスのスペクトルの幅、光パルスのスペクトルの対称性、光パルスの安定性、光パルスの雑音成分の量等のうちの幾つかを用いて要求仕様に応じて測定項目を多種類としても良く、このようにすれば、多様な要求仕様に対応でき、さらにまた調整精度を向上させることができる。
【0163】
(2)上記の実施例では、ミラーM1からM4、プリズムP1、P2のパラメータを可変としたが、さらにミラー3M1、3M2のパラメータを可変としても良い。
【0164】
(3)レーザー装置1Lの出力光の光路上にパラメータを可変可能な可変形ミラーを用いた波面制御器を設け、後述する参照例の方法により、併せてその波面制御器を調整すれは、さらに高い特性を得ることができる。
【0165】
上記(1)の測定項目を多種類とする場合には、たとえば、次の(1)式ような評価関数を用いることができる。
F=Σwi|Xi−Ai| ・・・・(1)
fitness=1/(1+F)
ただし、iは測定項目である。
【0166】
ここで、Fは評価関数値、wiは測定項目iについての加重係数、Xiは測定項目iについての観測結果の値、Aiは測定項目iについての理想的な値である。fitnessは遺伝的アルゴリズムにおける適応度である。該測定項目は、たとえば、出力光の平均の強度、光パルスのパルス幅、光パルスの強度のピーク値、光パルスのスペクトルの幅、光パルスのスペクトルの対称性、光パルスの安定性、光パルスの雑音成分の量、等であり、測定項目は光学装置の機能(光学装置に求められる光学装置の機能/動作であって設計により定まるもの)が所定の仕様(光学装置の必要とされる機能、動作、特性などを項目ごとに列挙したものであり、その項目は数値で示されるもののほか、できるだけ大きい/小さい、できるだけ高い/低いというような項目であってもよい)を満たすかどうかを評価するために必要十分な項目であると好適である。
【0167】
上述の図1の光学装置例、実施例では、レジスタ群5RGの初期設定値からレジスタ値を変更する方法については遺伝的アルゴリズムを用いた。しかしながら、遺伝的アルゴリズムにおける適応度、つまり、レジスタ設定値が理想的な解にどのくらい近いかを表す評価関数Fにおいて、局所的な最適解の個数が少ない場合(おおむね一桁の個数)には、焼きなまし法とよばれるアルゴリズムを遺伝的アルゴリズムの代わりに用いることができる。また、局所的な最適解の個数が多い場合でも、遺伝的アルゴリズムと比較して調整の結果得られる性能は低下するが高速に探索することができる。
【0168】
焼きなまし法の詳細は、例えば、JOHN WILEY & SONS が1989年に出版した、E. Aarts and J. Korst 著の「Simulated Annealing and Boltzmann Machines」を参照されたい。焼きなまし法は、山登り法の一種であり、温度と呼ばれる制御パラメータによって、局所的な最適解に探索が捕らわれないような工夫を加えたものである。
【0169】
次に述べる本発明の第2実施例のレーザー装置およびその調整方法では、図28に示すように、先の実施例と同様の構成において、調整装置5で、この焼きなまし法にしたがってレジスタ群5RGの値を変更する。本実施例では特に、焼きなまし法における解の候補として、レジスタ群5RGの値を直接用いることを大きな特徴とする。このようにすれば、実施例と同様に、解候補の情報をレジスタ値に変換するための処理等を不要とすることができる。ここではまた、解候補が理想的な解にどのくらい近いかを表す評価関数Fを用意する。
【0170】
すなわち本実施例の方法では、レーザー装置1Lを動作させ、図31に示すように、ステップS51における観測装置5での観測結果を使用して、ステップS52において調整装置5で、上記評価関数Fにより解候補の評価関数値を計算する。その後、ステップS54において、この評価関数値が、前ループにおける評価関数値と比較して値が改善されたか否かを判断する。
【0171】
そして、改善された場合は、その時点でのレジスタ値を次のレジスタ候補値とし、ステップS57へ進んで、そのレジスタ候補値に対し、その候補値の一部を変化させる操作を施す。この操作は遷移と呼ばれる。本実施例では、焼きなまし法の遷移として、図24で説明した遺伝的アルゴリズムにおける突然変異方法と同一の方法を用いる。
【0172】
ステップS54において、値が改善されなかった場合は、ステップS55で、受容関数と呼ばれる、値域が0以上1以下である後述の関数の値を計算する。この関数値と0〜1の間で発生させた一様乱数の実数値とを比較して、乱数値の方が小さかった場合は、遷移結果を受容するものとして前述のステップS57へ進む。この場合には、評価関数の改悪方向に、探索が一時的に行われることになる。受容関数値より乱数値の方が大きかった場合は、ステップS56でレジスタ候補値を前ループにおけるレジスタ値に戻した後、ステップS57へ進む。
【0173】
ループkにおける受容関数値は、以下の(2)式で記述される。
【0174】
【数1】
Figure 0003957222
【0175】
ここに、F(k−1)は前ループにおける評価関数値、F(k)は現ループにおける評価関数値である。また、T(k)は温度と呼ばれるパラメータであり、温度が高いほど受容関数値が1に近づく。つまり、温度が高いほど、探索が評価関数の改悪方向に進むことになる。これは、探索が局所的な最適解に捕われることを避ける目的で行われる。よって、探索の初期の段階では温度を高く設定し、探索が進むにつれて温度を徐々に低くしていくことにより、最終的に真の最適解にたどりつくことが期待される。かかる操作が、焼きなまし、またはアニーリングと呼ばれている。
【0176】
焼きなまし法は、レーザー装置1Lの性能と光学素子2との関係が比較的単純で、レーザー装置1Lの評価関数Fが多数の局所最適解をもたない場合には、遺伝的アルゴリズムと比較して効率的な探索を行うことができる。しかしながら、評価関数Fが多数の局所最適解をもつ場合には、現実的な時間では局所最適解にとらわれてしまい、遺伝的アルゴリズムほどの性能をえることはできない。ただし、収束までに要する時間が短くてすむという利点がある。
【0177】
その後はステップS58で、レジスタ候補値をレジスタ値とするようにレジスタ値を変更し、ステップS59で、図25で説明した遺伝的アルゴリズムで用いた局所学習処理を行う。評価関数値が高く満足な解が得られる(レーザー装置1Lの特性が所定の仕様を満たす)まで上述の操作を繰り返すことにより、レーザー装置1Lの調整を行う。
【0178】
設定値の取り得る値の組み合わせをすべて探索した場合、あるいは一定回数、または一定時間繰り返して処理をおこなっても満足な解が得られない場合は、調整対象のレーザー装置1Lは不良品と判断され、不良品としての処理を行う。
【0179】
以下に、図28に示すレーザー装置1L(具体的にはその光学装置1内の光共振器2R)に本実施例の焼きなまし法を用いた調整方法を適用した場合の実験結果について示す。この実験では、実施例の実験条件と同様に、調整光にはパワー3.0W、波長530nmのYVO4レーザー光を用い、透過率2.0%の平面カプラを透過した出力光をパワーメータで観測する。
【0180】
なお、温度は次の(3)の式にしたがって変化させる。
T(k)=0.1/(k+1)・・・・(3)
上記実験の結果、人手による粗調整では4.14mWしか得られなかったパワーメータの示すパワーが、レーザー装置に対し本実施例の焼きなまし法を用いた方法で調整を行ったところ、6.01mW(実際の光出力は6.01/2.0%=301mW)のパワーを得た。図32に、実験中の評価関数値Fと遷移回数の関係を示す。遷移が進むにつれて、レーザー出力光のパワー値が増加し、評価値が改善されていることがわかる。遺伝的アルゴリズムの結果と比較すると、4.14÷9.97×100=60.3%の性能を得ている。一方、探索時間に関しては、遺伝的アルゴリズムの1世代分にもみたない時間で収束している。この実験により、本実施例の調整方法の有効性が確認出来た。
【0181】
上記の焼きなまし法により、遺伝的アルゴリズムと比較して得られる性能は低いものの、高速にレーザー装置1Lの調整を行うことができる。本実施例は、光学ユニットが実施例に示すレーザー装置に使用される場合を例に説明したが、言うまでもなく、光学ユニットが図1の光学装置例に示されるように一般のものであってもよく、同様にして、遺伝的アルゴリズムと比較して得られる性能は低いものの、高速に光学ユニット1の調整を行うことができる。
【0182】
次に、この発明の光学装置の参照例としての波面制御器の主要構成部の一構成例を示す。波面制御器は入力光の空間的な位相を制御するもので、位相の空間的な不均一性を取り除いて波面(等位相面)のそろった出力光を得る機能を有するものである。この波面制御器は、半導体製造における露光装置(リソグラフィ装置)、波長変換器、干渉計、分光計測、光増幅器など、波面の正確な制御が必要とされる装置の構成要素として用いられる。
【0183】
図33は、この参照例の波面制御器の主要構成部の一例を示し、図33中、1Cは波面制御器であり、この波面制御器1Cは、図1の光学装置例における光学ユニットの代わりに、波面制御器1Cを用いて構成されている。すなわち、図1の光学装置を図33に示す波面制御器とした図1の構成である。この参照例においては、調整装置5および観測装置6は外部装置となる。この波面制御器1C内において、2DMは入力する電気信号の変更によりパラメータである鏡面の形状を変化させ得る変形可能なミラー(可変形ミラー)であり、図中の制御信号CSによってパラメータが調整される。8、9はそれぞれ、入力光、出力光であり、波面(等位相面)を点線で示す。
【0184】
可変形ミラー2DMは、図1の光学装置例の図8に示す如く構成されており、制御信号CSの示す値に対応して鏡面201の形状が変化する。本参照例では、その調整箇所は37カ所である。そこで本実施例においては、37個の制御信号CSと、該制御信号を保持するレジスタ5Rが、37組用いられる。波面制御器1Cは、可変形ミラー2DMの鏡面201の形状の変更により出力光9の波面(位相特性)が変化する。かかる波面制御器の具体的な構成方法は周知なので、その詳細な説明は省略し、以下では本参照例に係わる波面制御器の動作説明を行う。
【0185】
すなわちここでは、可変形ミラー2DMの37箇所の電極203に印加する電圧の調整により、出力光9の波面の空間モードの特性をガウシアン状態にでき、さらにまた、波面の空間モードにおける高次モードを低減できる。しかしながら、ある電極203に印加する電圧を変えると、上記の波面の空間モードに関する調整の最適値も変わってしまう。このため、波面制御器1Cを特性が所定の仕様を満たすような好適な状態に調整するには、可変形ミラー2DMの37の調整箇所を総合的に調整する必要がある。
【0186】
上記波面制御器1Cの調整のための、本発明の調整方法の参照例について説明する。この参照例の調整方法も、基本的には先の図1の光学装置例の調整方法と同様である。
【0187】
波面制御器1Cがその機能を必要とする場所に実装された後、検査工程で、調整装置5、観測装置6および調整光発生装置7がその波面制御器1Cにそれぞれ接続され、調整光発生装置7は、波面制御器1Cの入力光8として調整光を入力する。観測装置6は、例えば、出力光の波面の空間モードの特性、および、波面の空間モードにおける高次モードの観測結果を評価関数のための値として調整装置5に与え、調整装置5は、上記複数の観測結果に重み付けをした評価関数を用いて評価を行う。調整装置5は、図18に示すと同様の処理手順に従って、波面制御器1Cの可変形ミラー2DMの調整値の設定を行う。
【0188】
本参照例の方法によれば、波面制御器1C(光学装置)内の光学素子に、パラメータが可変である光学素子2DMを使用し、その光学素子の特性を、光学装置の機能が好適となるように探索する。従って、熟練者による手動の調整および精度の高い光学素子を必要とすることなく、また、精度の高い駆動装置を必要することなく、波面制御器1Cを所定の仕様を満たすように自動的に調整することができる。このことは、従来技術による場合より少ない労力で、従来技術による場合より高性能が得られることを意味する。
【0189】
本参照例においては可変形ミラーの調整箇所の数を37としたが、本発明においては、いうまでもなく該調整箇所の数を問わない。また、本参照例は、波面制御器1Cが多数の調整箇所を有する可変形ミラーで構成される場合に特に好適である。可変形ミラーの調整により可能な最大変形量は、取り扱う光の波長と同程度の長さであると効果的である。
【0190】
本参照例では、図33に示すように出力光9が集光されないことを仮定しているが、一方で、図34に示すように、出力光が集光される場合の変形例にも有効である。図34は図33の出力光を集光させた場合であり、図33と同じものに同じ参照符号を付している。
【0191】
波面制御器1Cからの出力光が集光される場合も、上記の参照例と全く同様にして該波面制御器1Cが調整される。この変形例では、出力光9が波長変換結晶あるいは光増幅媒体に集光される場合に特に有効である。
【0192】
本参照例は、ミラーの形状を自由に制御できるという更なる効果があり、理想的なミラーの形状を得るための調整にも有効である。この場合の参照例を次に示す。
【0193】
図35は、本発明の光学装置の参照例としての望遠鏡の一構成例を示す。図35中、1Tは光学装置(ユニット)としての望遠鏡を示しており、この望遠鏡1Tは、調整対象となる光学素子として、凹面の可変形ミラー2DM2を具えている。なお、図35中、図1に示すと同様の部分はそれと同一の符号を付している。8は望遠鏡への入射光、すなわち、望遠鏡1Tで観測する対象からの光である。CCDは望遠鏡の結像面に設置される撮像装置である。ここでは、撮像装置CCD固有の解像度は十分に高いと仮定する。また、撮像装置の出力である電気信号(映像信号)が該望遠鏡の出力である。調整のための観測装置6および調整装置5は望遠鏡1Tに組込された内部装置である。
【0194】
望遠鏡1Tは、観測対象からの光である入射光8を凹面鏡として機能する可変形ミラー2DM2で反射、集光し、この集光された光が撮像装置CCDにより電気的な映像信号に変換される。本参照例においては、図1の光学装置例での光出力の代わりに電気的な映像信号を用いて評価を行い、調整を行う。このように、本発明の光学装置の出力9としては、光のみならず電気信号などの光以外のものであっても良い。
【0195】
望遠鏡1Tに望まれる特性としては、観測対象をできるだけ高い解像度で撮像することである。このような特性を得るためには、上記ミラー2DM2の焦点が一点にできるだけ集中し、結像面と撮影装置CCDの位置が一致するように調整する必要がある。ところで、望遠鏡の製造誤差、望遠鏡の移動や温度変化等により、理想的な結像面である設計上の撮影装置CCDの位置と実際の撮影装置CCDの位置は完全に一致しない。そのため、可変形ミラー2DM2の特性を望遠鏡1Cの特性に合わせて調整する必要があり、具体的には、可変形ミラー2DM2の個々の調整箇所における変形量を調整する。
【0196】
ミラー2DM2は、図10および図34の場合と同様の構成が可能である。図1の光学装置例および波面制御器の参照例の場合と同様にして、本参照例においても制御信号CSの示す値に対応してパラメータすなわちミラー2DM2の形状が変化する。
【0197】
調整装置5からの制御信号CSは、図10に示す可変形ミラーの電極203の電圧を変化させ、可変形ミラー2DM2の形状を変化させる。これにより、望遠鏡の結像の状態が変化し、解像度が変化する。その結果、レジスタ群5RGのレジスタ値に応じて望遠鏡の解像度を変化、向上させることができる。
【0198】
かかる望遠鏡1Tの調整のための、本発明の調整方法の参照例について説明する。この参照例の方法も、基本的には先の図1の光学装置例の調整方法と同様である。
【0199】
望遠鏡1Tが製造、あるいは移動された後、あるいは望遠鏡を使用する温度等の条件が変化した後、調整光が入力光8として望遠鏡1Tに入力される。この調整光は、調整光発生装置による光の代わりに、時間による像の変化の少ない実際の観測対象であってもよい。調整光は、コントラストの高い像であることが望ましく、かつ、望遠鏡の観測対象と同等の距離から発生する光であることが望ましい。そこで、調整光として、既知の細密な像、たとえば遠方に置かれた細密な市松模様、あるいは月面からの光が用いられる。
【0200】
可変形ミラー2DM2の形状が理想的な形状からずれている場合、撮像装置CCDからの出力は解像度が低下したものとなる。そこで、調整装置5は、観測装置6が出力する撮像装置CCDにおける像の解像度、具体的には、たとえば映像信号の周波数スペクトルにおける周波数の高い成分の割合、を評価関数で用いればよい。
【0201】
本参照例の方法では、上記の如き望遠鏡で得られる解像度を評価関数に用いることで調整を実行する。調整装置5は、図1の光学装置例の方法の場合と同様の処理手順に従って、可変形ミラー2DM2のパラメータの設定を行う。
【0202】
すなわち、本参照例では、ミラーの形状が可変である光学素子(可変形ミラー2DM2)を使用し、該ミラーの形状(光学素子2DM2のパラメータ)を光学装置である望遠鏡の機能(特性)が好適となるように探索する。従って、本参照例によれば、望遠鏡1Tの製造工程におけるプロセスの不均一、部材の品質の不均一、設計上の誤差、さらには、移動・運搬による振動、温度変化、経時変化等に起因する光学素子の特性の誤差を吸収して、望遠鏡1Tが所定の仕様を満たす機能を有するように調整することができる。
【0203】
上記のように本発明は、直接的な調整対象の光学素子(可変形ミラー2DM2)を、その回路と共働して光学装置を構成する他の要素(撮像素子CCD)の特性(位置)を補償するように調整する場合にも有効である。
【0204】
本参照例においては、いうまでもなく、可変形ミラー2DM2の調整箇所の数を問わない。また、本参照例は、望遠鏡を構成するミラーの寸法が非常に大きいときにはさらに好適である。
【0205】
本発明においては、光学装置を動作させる条件が複数であってその条件毎に光学装置の最適な調整結果が異なる場合に、各光学素子に対しレジスタ群5RGを複数組用意して、条件毎にレジスタ群5RGを切り替える方法も可能である。
【0206】
また、光学装置の動作特性はその装置の温度により変化する場合があるので、最適な調整結果も温度とともに変わってしまう場合がある。さらに、光学装置の仕様(例えばレーザーの出力パルスのスペクトルの形状)を当初のものから変えた特性が必要になる場合がある。
【0207】
図36は、条件毎にレジスタ群5RGを切り替える場合の一構成例を示す。ここでは条件の数をkとする。SELは、条件に応じて対応するレジスタ群5RGを切り替える選択器、5RG−1〜5RG−kは、k個のレジスタ群5RGである。ここで便宜上5RG−iにおけるiをレジスタ番号と呼ぶ。
【0208】
かかる構成を用いた場合の調整方法は、例えば次のようにすることができる。光学装置の温度が変化してもその装置の特性が一定となるようにしたい場合、温度とレジスタ番号とを対応させておき、検査工程で、それぞれのレジスタ番号に対応する温度で本発明の方法による調整を行い、調整結果をレジスタ群5RG−1〜5RG−kに記憶させておく。そして光学装置を使用する際には、選択器SELにより回路の温度を検出して対応するレジスタ番号を選択するようにする。
【0209】
なお、上記の調整方法において、いくつかのレジスタ番号に対応する温度での調整を省略することも可能であり、その場合には、他の調整されたレジスタ値から補間により推定されるレジスタ値を当該レジスタに記憶させておけばよい。補間の方法としては、直線近似、スプライン関数などを使うことができる。
【0210】
光学装置の特性を複数の仕様条件に対応させて切り替えることも可能である。この場合には、仕様条件とレジスタ番号とを対応させておき、検査工程で、それぞれのレジスタ番号に対応する仕様条件で本発明の方法による調整を行い、調整結果をレジスタ群5RG−1〜5RG−kに記憶させておく。そして光学装置を使用する際には、選択器SELにより仕様条件に対応するレジスタ番号を選択するようにする。
【0211】
なお、上記の調整方法においても同様に、いくつかのレジスタ番号に対応する仕様条件での調整を省略することも可能であり、他の調整されたレジスタの値から補間により推定されるレジスタ値を当該レジスタに記憶させておけばよい。
【0212】
この一方、この発明の光学装置における駆動機構4は、その一部を脱着可能なように構成することも可能である。この場合には、光学装置がこの発明による方法で調整された後、駆動機構4の一部をほかの光学装置に再利用することができる。すなわち、調整の後、駆動機構4の可動部分であるステージ402と固定部分である基台401を接着剤あるいはネジ等で固定可能とし、それ以外の該駆動機構の部分を脱着可能するものである。
【0213】
この構成例によれば、駆動機構4の一部分が脱着するので、調整を完了した光学装置1において駆動機構4の一部を省略することができ、光学装置1の軽量化やコストの低減が可能である。
【0214】
本発明は、いうまでもなく、光学ユニットを用いる光学装置の全体、一部、あるいは複数の部分の何れにも適応可能であり、光学ユニットの規模を問わない。
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で当業者が容易に改変し得る他の構成をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学装置よび光学装置の調整方法を説明する概念図である。
【図2】調整箇所に関する依存関係による問題点を説明する図である。
【図3】本発明の調整装置を示す構成図である。
【図4】本発明に用いる並進の移動を行う駆動機構の一例を示す構成図である。
【図5】本発明の調整装置を示す構成図である。
【図6】本発明に用いる一軸の回転を行う駆動機構の一例を示す構成図である。
【図7】本発明に用いる二軸の回転を行う駆動機構の一例を示す構成図である。
【図8】光学素子および駆動機構に用いる可変形ミラーの一例を示す構成図である。
【図9】上記可変形ミラーの電極の配置の一例を示す構成図である。
【図10】光学素子および駆動機構に用いる可変形ミラーの別の構成例を示す構成図である。
【図11】可変する素子パラメータが透過率あるいは吸収係数である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図12】可変する素子パラメータが偏光である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図13】可変する素子パラメータが位相および光強度である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図14】可変する素子パラメータが分配比である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図15】可変する素子パラメータが変調率である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図16】可変する素子パラメータが波長特性である光学素子および駆動機構の一例を示す構成図である。
【図17】本発明の調整方法の処理手順の概略を示すフローチャートである。
【図18】一般的な遺伝的アルゴリズムの手順の概略を示すフローチャートである。
【図19】遺伝的アルゴリズムで用いる染色体を例示する説明図である。
【図20】本発明の方法における遺伝的アルゴリズムを用いた処理手順を示すフローチャートである。
【図21】遺伝的アルゴリズムで用いる染色体とそこから定まるレジスタ値および素子パラメータの値とを示す説明図である。
【図22】遺伝的アルゴリズムで行う選択淘汰処理の手順を示すフローチャートである。
【図23】遺伝的アルゴリズムで行う交叉処理の手順を示す説明図である。
【図24】遺伝的アルゴリズムで行う突然変異処理の手順を示す説明図である。
【図25】遺伝的アルゴリズムで行う局所学習の手順を示すフローチャートである。
【図26】上記局所学習方法の動作を例示する説明図である。
【図27】光学素子の調整の一変形例を示す構成図である。
【図28】本発明のレーザー装置およびその調整方法を例示する説明図である。
【図29】光学装置に用いる光学素子の位置および方向を説明する説明図である。
【図30】本発明のレーザー装置の調整実験の結果である評価関数値と遺伝的アルゴリズムにおける世代数との関係を示す特性図である。
【図31】光学装置およびその調整方法に焼きなまし法を用いた処理手順を示すフローチャートである。
【図32】本発明のレーザー装置の調整方法による調整実験の結果である評価関数値と焼きなまし法における遷移回数との関係を示す特性図である。
【図33】波面制御器の構成を例示する構成図である。
【図34】波面制御器の別の構成を例示する構成図である。
【図35】望遠鏡の構成を例示する構成図である。
【図36】本発明の調整装置およびその調整方法で用い得るレジスタの他の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 光学ユニット
2 調整される光学素子
3 調整されない光学素子
4 駆動機構
5 調整装置
6 観測装置
7 調整光発生装置
8 入力光
8a 調整光
9 出力光
1A 光学装置
1L レーザー装置
1C 波面制御器
1T 望遠鏡
2DM 可変形ミラー
2DM2 可変形ミラー
CS 制御信号
5T 調整光切替信号
5R レジスタ
5RG レジスタ群
5A 調整アルゴリズム実行装置
5F 評価関数器
5C 駆動機構制御装置
401 基台
402 ステージ
403 雄ねじ
404 雌ねじ
405 モータ
406 ポテンショメータ
4C 比較回路
4D モータ駆動回路

Claims (7)

  1. 少なくとも3個以上の光学素子を含み、該複数の光学素子が互いに独立でない複数の調整箇所を有する光学ユニットと、
    前記複数の調整箇所の内の特定の複数の調整箇所の素子パラメータを変更する制御信号を出力する調整装置と、
    複数の調整箇所の素子パラメータとそのときの出力光の観測値との組を記憶するメモリと、
    前記制御信号により前記光学素子を制御する駆動機構とを具備し、
    該調整装置が、出力光の観測に基づいて計算された評価値に基づき、前記特定の複数光学素子のパラメータに関し、確率的探索手法に従って制御信号を順次変更し、探索することにより、前記光学ユニットを有するレーザー発振装置の機能が所定の仕様を満たす状態となる最適値にするレーザー発振装置において、
    前記特定の調整可能な光学素子は、ミラー、レンズ、光学フィルタ、プリズム、導波路型光学素子、半導体光学素子、回折格子、偏光素子、電気光学素子、音響光学素子、光学結晶、スリット、およびこれらの光学素子の複合で構成される光学素子のいずれかであって、前記駆動機構によってその位置、方向、あるいは光学特性を駆動制御可能であり、
    前記調整装置は、レジスタ値を保持するレジスタ、評価関数器から引き渡された評価値をもとに、確率的探索手法のアルゴリズムに従って、レジスタの保持するレジスタ値として最適な値を探索し、レジスタの保持するレジスタ値を変更する調整アルゴリズム実行装置、及びレーザー発振装置の機能の評価値を計算する評価関数器からなり、
    前記調整装置がレーザー発振装置の機能の状態を評価する関数として複数の評価値を重みづけ積算する評価関数を用い、
    前記レジスタは、レジスタ値を保持し、該レジスタ値は確率的探索手法における解の候補として直接用いられると共に、該レジスタ値によって前記制御信号を変更し、素子パラメータ値が該レジスタ値と等しくなるまで駆動機構を段階的に動作させて素子パラメータ値を調整する際、前記素子パラメータ値の調整による駆動機構制御時間が前記出力光の状態を観測するのに要する時間と比較して十分に長く、変更前のレジスタ値をもとに確率的探索手法により得られるレジスタ候補値が表現する素子パラメータによってレジスタ値を変更し、駆動機構の制御信号を、変更前のレジスタ値が表現する素子パラメータ値から出発して、変更後のレジスタ値が表現する素子パラメータ値に段階的に変更し、上記素子パラメータ値の変更の各段階において、上記素子パラメータ値を計測し、そのときのパラメータ値を出力光の観測値との組で前記メモリに記憶し、その変更途中における、評価値が最大となるような素子パラメータ値を、上記変更途中の局所的な最適解とし、上記局所的な最適解によって、上記変更後のレジスタ値を更に書き換えることにより、
    確率的探索方法により前記レジスタに保持されるレジスタ値を順次変更し、前記評価値が最大となるレジスタ値を前記変更途中の局所的な最適解とすることを特徴とするレーザー発振装置。
  2. 前記レジスタ値が、遺伝的アルゴリズムの染色体として直接用いられ、前記レジスタ値の変更が、「第n世代のN個の個体の集団をもとに遺伝的操作を経て得られるN個の染色体が表現する素子パラメータ値によってレジスタ値を変更すること」であり、前記駆動機構の制御信号の段階的な変更が、「駆動機構の制御信号を、第n世代の終了時の個体の染色体が表現する素子パラメータ値から出発して、前記第n世代のN個の個体の集団をもとに遺伝的操作を経て得られるN個の染色体が表現するN通りの素子パラメータ値に段階的に変更すること」であって、
    前記調整装置が、遺伝的アルゴリズムに従って制御信号の値を順次変更、探索して、特定の複数光学素子のパラメータを変更することにより、レーザー発振装置の機能が所定の仕様を満たす状態となる最適値にすることを特徴とする請求項1記載のレーザー発振装置
  3. 前記調整装置が、焼きなまし法に従って制御信号の値を順次変更、探索して、特定の複数光学素子のパラメータを変更することにより、レーザー発振装置の機能が所定の仕様を満たす状態となる最適値にすることを特徴とする請求項1記載のレーザー発振装置。
  4. 前記レーザ装置が、フェムト秒領域から10ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザであることを特徴とする請求項1記載のレーザー発振装置。
  5. 少なくとも3個以上の光学素子を含み、該複数の光学素子が互いに独立でない複数の調整箇所を有する光学ユニットと、
    前記複数の調整箇所の内の特定の複数の調整箇所の素子パラメータを変更する制御信号を出力する調整装置と、
    複数の調整箇所の素子パラメータとそのときの出力光の観測値との組を記憶するメモリと、
    前記制御信号により前記光学素子を制御する駆動機構とを具備し、
    該調整装置が、出力光の観測に基づいて計算された評価値に基づき、前記特定の複数光学素子のパラメータに関し、確率的探索手法に従って制御信号を順次変更し、探索することにより、前記光学ユニットを有するレーザー発振装置の機能が所定の仕様を満たす状態となる最適値にするレーザー発振装置において、
    前記特定の調整可能な光学素子は、ミラー、レンズ、光学フィルタ、プリズム、導波路型光学素子、半導体光学素子、回折格子、偏光素子、電気光学素子、音響光学素子、光学結晶、スリット、およびこれらの光学素子の複合で構成される光学素子のいずれかであって、前記駆動機構によってその位置、方向、あるいは光学特性を駆動制御可能であり、
    前記調整装置は、レジスタ値を保持するレジスタ、評価関数器から引き渡された評価値をもとに、確率的探索手法のアルゴリズムに従って、レジスタの保持するレジスタ値として最適な値を探索し、レジスタの保持するレジスタ値を変更する調整アルゴリズム実行装置、及びレーザー発振装置の機能の評価値を計算する評価関数器からなり、
    前記調整装置がレーザー発振装置の機能の状態を評価する関数として複数の評価値を重みづけ積算する評価関数を用い、
    前記レジスタは、レジスタ値を保持し、該レジスタ値は確率的探索手法における解の候補として直接用いられると共に、該レジスタ値によって前記制御信号を変更し、素子パラメータ値が該レジスタ値と等しくなるまで駆動機構を段階的に動作させて素子パラメータ値を調整する際、前記素子パラメータ値の調整による駆動機構制御時間が前記出力光の状態を観測するのに要する時間と比較して十分に長く、変更前のレジスタ値をもとに確率的探索手法により得られるレジスタ候補値が表現する素子パラメータによってレジスタ値を変更し、駆動機構の制御信号を、変更前のレジスタ値が表現する素子パラメータ値から出発して、変更後のレジスタ値が表現する素子パラメータ値に段階的に変更し、上記素子パラメータ値の変更の各段階において、上記素子パラメータ値を計測し、そのときのパラメータ値を出力光の観測値との組で前記メモリに記憶し、その変更途中における、評価値が最大となるような素子パラメータ値を、上記変更途中の局所的な最適解とし、上記局所的な最適解によって、上記変更後のレジスタ値を更に書き換えることにより、
    確率的探索方法により前記レジスタに保持されるレジスタ値を順次変更することにより前記評価値が最大となるレジスタ値を前記変更途中の局所的な最適解とすることを特徴とするレーザー発振装置の調整方法。
  6. 前記調整装置が、焼きなまし法に従って制御信号の値を順次変更、探索して、特定の複数光学素子のパラメータを変更することにより、レーザー発振装置の機能が所定の仕様を満たす状態となる最適値にすることを特徴とする請求項5記載のレーザー発振装置の調整方法。
  7. 前記レーザ装置が、フェムト秒領域から10ピコ秒のパルス幅の超短パルスレーザであることを特徴とする請求項5記載のレーザー発振装置の調整方法。
JP2002244414A 2002-08-23 2002-08-23 レーザー発振装置、およびレーザー発振装置の調整方法 Expired - Lifetime JP3957222B2 (ja)

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