JP3946827B2 - 近接検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、検出要素としてコイルを使用して、磁性体の近接を検出する近接検出装置に関する。
【従来の技術】
近接スイッチの方式には種々のものが知られている。1つは、接点式(リードスイッチ)のものがあるが、これはチャタリングの問題があるので好ましくない。無接触式の近接スイッチとしては、光学式のものがあるが、これは外乱光の影響を受け易いという問題点がある。無接触式の近接スイッチの別のタイプとしては、電磁誘導式のものがある。これは、検出要素としてコイルを使用して、検出コイルをLC発振回路の中に組み込み、磁性体の近接の有無に応じて、その発振条件が成立/不成立となって発振のスタート/ストップが制御されるものである。
【発明が解決しようとする課題】
上記の電磁誘導式のタイプの近接スイッチにおいては、磁性体の近接の有無に応じて発振条件が成立/不成立となって発振のスタート/ストップが制御され、後段の平滑化回路等を介して発振の有無を検知することにより磁性体の近接を検出するようになっている。そのため、検出応答速度が比較的遅くなってしまい、検出対象である磁性体の動きが速くかつ複数の検出対象磁性体が連続して通過するような場合は、追従できず、検出エラーを生じるという問題点があった。また、発振条件を適切に設定するためには検出コイルの配置を発振回路本体から離して配線ケーブルで引き回すような配置とすることはできず、発振回路本体内に該検出コイルを組み込む必要があった。そのため、検出端近くに十分な回路配置スペースを確保することが要求されていた。また、近くにある携帯電話やトランシーバ等から発される外乱電波の影響を受けて、誤動作し易いという問題点があった。
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、検出応答速度が速くかつ検出エラーの少ない近接検出装置を提供しようとするものである。
【0002】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る近接検出装置は、コイルと、前記コイルを所定周期の信号で励磁する回路と、前記コイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該コイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第1の所定出力信号を生じる比較器と、前記所定周期の信号の該所定周期内の所定位相に対応する所定タイミングであって、前記コイルに対して磁性体が近接していないときに前記比較器が前記第1の所定出力信号を生じるタイミングよりも後に到来する該所定タイミングに対応して第2の所定出力信号を生じる信号発生回路と、前記第1及び第2の所定出力信号を入力し、前記第2の所定出力信号よりも後に前記第1の所定出力信号が発生されたとき、近接検出出力信号を発生するタイミング判定回路とを具え、前記コイルに対する磁性体の近接に応じて生じる前記コイルの出力信号の位相遅れに応じて前記近接検出出力信号が発生されることにより、該磁性体の近接を検出することを特徴とするものである。
コイルに対して磁性体が近接すると、該コイルのインダクタンスが変化し、これに伴い、該コイルの出力信号に位相遅れが生じる。信号発生回路では、前記所定周期の信号の該所定周期内の所定位相に対応する所定タイミングであって、前記コイルに対して磁性体が近接していないときに前記比較器が前記第1の所定出力信号を生じるタイミングよりも後に到来する該所定タイミングに対応して第2の所定出力信号を生じるようにしており、タイミング判定回路では、前記第1及び第2の所定出力信号を入力し、前記第2の所定出力信号よりも後に前記第1の所定出力信号が発生されたとき、近接検出出力信号を発生するように構成されている。したがって、この位相遅れを測定することができ、該磁性体の近接を検出することができる。
この発明によれば、コイル出力信号の位相遅れを測定する構成であるため、検出応答性を高めることができ、検出対象である磁性体の動きが速い場合であっても、これを確実に検出することができる、という優れた効果を奏する。
また、位相遅れを測定するタイプであるため、検出用のコイル配置が測定用の回路本体から多少離れていても、測定精度に悪影響を与えないため、検出用のコイルの配置を測定用の回路本体から多少(例えば数メートル)離して配線ケーブルで引き回すような配置とすることができ、従って、検出端近くに十分な回路配置スペースを確保することを要求せず、様々な環境下で非常に使い易いものとなる。また、従来技術のような発振条件を制御するタイプではないため、近くにある携帯電話やトランシーバ等から発される外乱電波の影響を受けて誤動作し易いという問題がない。
【0003】
更に、この発明に係る近接検出装置は、第1のコイルと、第1のコイルの近傍に配置された第2のコイルと、前記各コイルを所定周期の信号で励磁する回路と、前記第1のコイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該第1のコイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第1の所定出力信号を生じる第1の比較器と、前記第2のコイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該第2のコイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第2の所定出力信号を生じる第2の比較器と、ここで、前記所定周期の信号の該所定周期内の所定位相に対応する所定タイミングであって、前記各コイルに対して磁性体が近接していないときに前記第1の比較器が前記第1の所定出力信号を生じるタイミングよりも後に到来する該所定タイミングに対応して前記第2の所定出力信号を生じるように前記基準レベル又はコイルの特性が設定されており、前記第1及び第2の所定出力信号を入力し、前記第2の所定出力信号よりも後に前記第1の所定出力信号が発生されたとき、近接検出出力信号を発生するタイミング判定回路とを具え、前記第1のコイルに対する磁性体の近接に応じて生じる前記第1のコイルの出力信号の位相遅れに応じて前記近接検出出力信号が発生されることにより、該磁性体の近接を検出することを特徴とするものである。これにより、温度特性によるコイル出力位相の変化を相殺することができ、精度のよい測定が行える。
【0004】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明しよう。
図1において、検出用のコイル1と適宜の抵抗2とによってLR直列回路が形成されており、発振回路3は、例えば適宜デューティ比の矩形波からなる励磁信号Aを発生し、これが該LR直列回路に印加される。コイル1の出力信号Bは、コイル1と抵抗2の接続点から取り出されてアナログコンパレータ4の一入力(−)に入力される。コンパレータ4の他入力(+)には、回路5から発生される所定の基準レベルVrを示す電圧が入力される。コンパレータ4は、コイル1の出力信号Bのレベルが基準レベルVrよりも小さいときハイレベル(“1”)の出力信号Cを生じ、コイル1の出力信号Bのレベルが基準レベルVrよりも大きければローレベル(“0”)の出力信号Cを生じる。コンパレータ4の出力信号Cは、フリップフロップ6のデータ入力(D)に入力される。フリップフロップ6の制御入力には、発振回路3からの矩形波信号Aを遅延回路7で所定時間遅延した信号Dが入力される。この所定の遅延時間量は後述のように設定される。フリップフロップ6の出力(Q)に現われる信号Eは、磁性体8の近接の有無を判定した結果を示す信号として出力される。なお、この信号Eは、回路設計上の要請に応じて、基準レベル発生回路5にフィードバックされるようになっていてよい。
検出用のコイル1は、検出対象である磁性体8が通過する場所の所定の位置に配置される。それ以外の測定回路本体9はコイル1を配置した所定の位置から適量(例えば数メートル)離れた位置に配置し、コイル1と回路本体9間の配線ケーブルが多少引き回されるようになっていても差し支えない。
【0005】
磁性体8がコイル1に近接していない状態における図1の各部の信号波形例を示すと図2の「ケース1」のようである。磁性体8がコイル1に近接していない状態では、図2の「ケース1」のBに示すように、コイル1の出力信号Bの位相遅れは、あまりない。この状態を基準として、該出力信号Bのレベルがコンパレータ4の基準レベルVrよりも大きくなる時点、つまり、コンパレータ4の出力信号Cがローレベルに立ち下がる時点、よりも幾分遅れて遅延回路7の出力信号Dがハイレベルに立ち上がるように、該遅延回路7の遅延時間が設定されている。これにより、フリップフロップ6の制御入力に加わる信号Dがハイレベルに立ち上がるとき、そのデータ入力(D)に入力されるコンパレータ4の出力信号Cはローレベルであるから、該フリップフロップ6にローレベル信号が取り込まれ、その出力(Q)に現われる信号Eはローレベル(“0”)である。このフリップフロップ6の出力信号Eのローレベル(“0”)は、磁性体8が近接していないことを示している。
【0006】
一方、磁性体8が、破線8’で示すように、コイル1に近接した状態における図1の各部の信号波形例を示すと図2の「ケース2」のようである。磁性体8がコイル1に近接した状態では、コイル1のインダクタンスが相対的に増加することにより、図2の「ケース2」に示すように、該コイル1の出力信号Bの位相遅れが大きくなる。従って、コイル1の出力信号Bの立ち上がりが遅れることにより、該出力信号Bのレベルがコンパレータ4の基準レベルVrよりも大きくなる時点、つまり、コンパレータ4の出力信号Cがローレベルに立ち下がる時点は、遅延回路7の出力信号Dがハイレベルに立ち上がる時点よりも遅れる。これにより、フリップフロップ6の制御入力に加わる信号Dがハイレベルに立ち上がるとき、そのデータ入力(D)に入力されるコンパレータ4の出力信号Cはハイレベルであるから、該フリップフロップ6にハイレベル信号が取り込まれ、その出力(Q)に現われる信号Eがハイレベル(“1”)となる。このフリップフロップ6の出力信号Eのハイレベル(“1”)は、磁性体8が近接したことを示している。
【0007】
以上のようにして、コイル1に対する磁性体8の近接に応じて生じる該コイル1の出力信号Bの位相遅れを測定することにより、該磁性体8の近接を検出することができる。
なお、磁性体8の近接に応じて生じるコイル1の出力信号Bの位相遅れを測定する回路の具体的構成は、図示の実施例に示したものに限らず、適宜に変更してよい。例えば、図1の回路では、フリップフロップ6の制御入力として、コイル1の励磁信号Aの位相を基準とする所定時間よりも遅れた信号、つまり、信号Aを所定時間遅延した信号Dを使用しているが、これに限らず、適宜の設計変更が可能である。例えば、コイル1、コンパレータ4と同じ回路を制御信号用としてもう一系列設け、この制御信号用のコンパレータから磁性体が近接していないときの所定位相に対応する出力信号を発生させ、この出力信号に対応する信号を適宜微小遅延してフリップフロップ6の制御入力に入力するようにしてもよい。
【0008】
図3は、本発明の別の実施例を示すもので、図1の遅延回路7に代えて、追加のコイル11及び抵抗12からなるLR直列回路と、コンパレータ14及び基準レベル発生回路15を設けている。この場合、追加のコイル11は、検出用コイル1の隣(少しずれた位置)に設け、コイル11及び抵抗12の接続点から取り出された出力をアナログコンパレータ14に入力し、基準レベル発生回路15からの基準レベルと比較する。コンパレータ14の出力は、フリップフロップ6の制御入力に与えられる。
図4は、図3の動作例を示す図であり、信号C,Dのタイミングチャートの表わし方は図2に対応している。(a)は、磁性体8がコイル1及び11に近接していない状態を示しており、この場合、コンパレータ4の出力Cの立下りの少し後にコンパレータ14の出力Dが立上るように予め設定する。このような設定は、フリップフロップ6からのフィードバックヒステリシス分によって設定可能であるし、あるいは、両コイル1,11の特性を少しずらすこと、あるいは基準レベル発生回路15からの基準レベルを適切に設定すること、等によって設定可能である。図4(a)は図2のケース1と同様である。
【0009】
図4(b)は、検出用のコイル1に磁性体8がより多く近接した状態を示す。この場合コイル1のインダクタンスがより増加するので、信号Bの遅れが大きくなり、コンパレータ4の出力Cの立上りがコンパレータ14の出力Dの立上りよりも遅れ、フリップフロップ6の出力Eが“1”に立ち上がる。図4(b)は図2のケース2と同様であり、検出用のコイル1への磁性体8の最近接を検出ことができる。
図4(c)は、検出用のコイル1よりも補助用のコイル11に磁性体8がより多く近接した状態を示す。この場合コイル11のインダクタンスがより増加するので、信号Fの遅れが大きくなり、コンパレータ4の出力Cの立上りの後にコンパレータ14の出力Dが立上るので、フリップフロップ6の出力Eは“0”に立ち下がる。
図1の例では、温度変化によってコイル1のインピーダンスが変化したとき、遅延回路7の遅延時間は変化しないので、検出誤差を生じるおそれがある。これに対して、図3の例では、コイル1及び11の両者が温度特性を持つので、誤差分が相殺され、検出誤差を生じるおそれがない、という利点がある。なお、図3において、補助のコイル11は、磁性体8が近接しない位置に設けてもよい。
【0010】
なお、上記各実施例において、励磁信号Aは、上記のような矩形波信号に限らず、サイン波のような交流信号であってもよい。サイン波のような交流信号を用いた場合は、コンパレータ4はゼロクロス検出コンパレータを用い、その後段の回路はゼロ位相の位相遅れを測定する適宜の回路とすることができる。例えば、図1に示したようなフリップフロップを含む回路であってもよいし、ディジタル位相カウント回路とディジタルコンパレータ等を含む適宜の回路を用いることもできる。また、励磁信号Aとしてデューティ比の小さなパルス信号を使用してもよい。その場合、コイル1のインダクタンス変化に応じてパルス幅変調されたような状態でコイル出力信号が生じるので、位相遅れの測定はパルス幅測定によって等価的に置換できることがあり得る。
【0011】
【発明の効果】
以上の通り、この発明によれば、コイルに対する磁性体の近接に応じて、該コイルのインダクタンスが変化し、これに伴い、該コイルの出力信号に位相遅れが生じ、この位相遅れを測定することにより、該磁性体の近接を検出することができるものである。従って、コイル出力信号の位相遅れを測定する構成であるため、検出応答性を高めることができ、検出対象である磁性体の動きが速い場合であっても、これを確実に検出することができる、という優れた効果を奏する。
また、位相遅れを測定するタイプであるため、検出用のコイル配置が測定用の回路本体から多少離れていても、測定精度に悪影響を与えないため、検出用のコイルの配置を測定用の回路本体から適宜離して配線ケーブルで引き回すような配置とすることができ、従って、検出端近くに十分な回路配置スペースを確保することを要求せず、様々な環境下で非常に使い易いものとなる、という優れた効果を奏する。また、発振条件を制御するタイプではないため、近くにある携帯電話やトランシーバ等から発される外乱電波の影響を受けて誤動作し易いという問題がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態を示すブロック図。
【図2】 図1の動作例を示す信号波形図。
【図3】 この発明の別の実施形態を示すブロック図。
【図4】 図3の動作例を示す信号波形図。
【符号の説明】
1,11 コイル
2,12 抵抗
3 発振回路
4,14 コンパレータ
5,15 基準レベル発生回路
6 フリップフロップ
7 遅延回路
8 磁性体

Claims (4)

  1. コイルと、
    前記コイルを所定周期の信号で励磁する回路と、
    前記コイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該コイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第1の所定出力信号を生じる比較器と、
    前記所定周期の信号の該所定周期内の所定位相に対応する所定タイミングであって、前記コイルに対して磁性体が近接していないときに前記比較器が前記第1の所定出力信号を生じるタイミングよりも後に到来する該所定タイミングに対応して第2の所定出力信号を生じる信号発生回路と、
    前記第1及び第2の所定出力信号を入力し、前記第2の所定出力信号よりも後に前記第1の所定出力信号が発生されたとき、近接検出出力信号を発生するタイミング判定回路と
    を具え、前記コイルに対する磁性体の近接に応じて生じる前記コイルの出力信号の位相遅れに応じて前記近接検出出力信号が発生されることにより、該磁性体の近接を検出することを特徴とする近接検出装置。
  2. 前記信号発生回路は、前記所定周期の信号を該所定周期内の前記所定位相に対応する時間だけ遅延することで、前記第2の所定出力信号を生じるものである請求項1に記載の近接検出装置。
  3. 前記信号発生回路は、
    検出対象の前記磁性体が近接することなく、前記所定周期の信号で励磁されるダミーのコイルと、
    該ダミーのコイルの出力信号レベルと前記所定の基準レベルとを比較することで、該ダミーのコイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第3の所定出力信号を生じる比較器と、
    前記第3の所定出力信号を所定時間遅延することで、前記第2の所定出力信号を生じる回路と
    を含む請求項1に記載の近接検出装置。
  4. 第1のコイルと、
    第1のコイルの近傍に配置された第2のコイルと、
    前記各コイルを所定周期の信号で励磁する回路と、
    前記第1のコイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該第1のコイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第1の所定出力信号を生じる第1の比較器と、
    前記第2のコイルの出力信号レベルと所定の基準レベルとを比較することで、該第2のコイルの出力信号レベルが該基準レベルを越えたときに第2の所定出力信号を生じる第2の比較器と、ここで、前記所定周期の信号の該所定周期内の所定位相に対応する所定タイミングであって、前記各コイルに対して磁性体が近接していないときに前記第1の比較器が前記第1の所定出力信号を生じるタイミングよりも後に到来する該所定タイミングに対応して前記第2の所定出力信号を生じるように前記基準レベル又はコイルの特性が設定されており、
    前記第1及び第2の所定出力信号を入力し、前記第2の所定出力信号よりも後に前記第1の所定出力信号が発生されたとき、近接検出出力信号を発生するタイミング判定回路と
    を具え、前記第1のコイルに対する磁性体の近接に応じて生じる前記第1のコイルの出力信号の位相遅れに応じて前記近接検出出力信号が発生されることにより、該磁性体の近接を検出することを特徴とする近接検出装置。
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