JP3942747B2 - ブレーキトルク検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両用ディスクブレーキ装置のブレーキキャリパに歪みゲージを取り付けてブレーキトルクを検出するブレーキ力検出装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両用のブレーキ装置としては、例えば図1、図2に示すようなディスクブレーキ装置が知られている。
【0003】
ディスクブレーキ装置のブレーキキャリパ1には、一対のアーム3A、3Bが備えられ、図示されない鉄道車両の各車輪と一体に回転するディスクロータ2の両側面に回り込んでいる。これらのアーム3A、3Bの先端は、ディスクロータ2に平行にブレーキキャリパ1の両側(図1の上側と下側)に張り出す制輪子支持部4A、4Bとなっている。
【0004】
制輪子支持部4Aには、ディスクロータ2のアーム2A側の側面と平行に延びる制輪子5Aが、制輪子支持部4A両側においてそれぞれトルク受け部材6A、7Aを介して支持される。また、制輪子支持部4Bには、ディスクロータ2のアーム2B側の側面と平行に延びる制輪子5Bが、制輪子支持部5Bの両側においてそれぞれトルク受け部材6B、7Bを介して支持される。なお、図1には、トルク受け部材6B、7Bのみを図示し、トルク受け部材6Bと同じ側(図1の上側)にあるトルク受け部材6Aと、トルク受け部材7Bと同じ側(図1の下側)にあるトルク受け部材6Aとは図示されない。
【0005】
制輪子支持部4Bにはピストン8が備えられ、このピストン8は、同じ側のアーム3Bに配設された油圧導入口9を通じての油圧(ブレーキ圧)の供給を受けて作動し、制輪子5Bをディスクロータ2側に押し出す。この場合、ピストン8に供給されるブレーキ圧は、ノッチ(N)を単位として段階的に切り換えられるようになっている。
【0006】
ブレーキキャリパ1の制輪子支持部4A、4Bと反対側には、ブレーキキャリパ1の両側(図2の上側と下側)に斜めに延び出す一対のブラケット11、12が備えられる。これらのブラケット11、12の端部は、ディスクロータ2と直交する方向に開口するピン穴11a、12aを備えた円筒形となっている。そして、ブレーキキャリパ1は、これらのピン穴11a、11bにそれぞれ貫通する支持ピン13、14を介して、車両本体のブレーキ取り付け部20に支持されるようになっている。なお、支持ピン13、14はピン穴11a、12aの軸方向に摺動自在であり、ブレーキキャリパ1はディスクロータ2に垂直な方向に移動可能となっている。
【0007】
このような構成により、ピストン8の駆動で制輪子5Bがディスクロータ2に押し付けられると、ブレーキキャリパ1はディスクロータ2に垂直な方向に移動し、制輪子5A、5Bがディスクロータ2に挟み込むようにして当接する。そして、このときに制輪子5A、5Bとディスクロータ2との間に働く摩擦力がブレーキトルクとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、鉄道車両に対してもアンチロックブレーキシステム等のブレーキ制御システムを装備することがある。このため、アンチロックブレーキシステム等のブレーキ制御システムにおける使用に耐え得るような、ブレーキ装置のブレーキトルクを正確に検出し得るブレーキトルク検出装置が必要となって来ている。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、鉄道車両用ディスクブレーキ装置において、ブレーキトルクをより正確に検出し得るブレーキトルク検出装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明では、ブレーキキャリパに取り付けられてブレーキキャリパの歪みを検出するブレーキトルク検出用歪みゲージと、このブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号に所定の比例係数をかけてブレーキトルクを算出するブレーキトルク演算手段と、前記比例係数をブレーキトルクと前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号とが線形特性となるように前記ブレーキ圧の大きさにしたがって補正する補正手段とを備え、この補正手段は前記比例係数を一定値Td 0 にブレーキ圧に対応する理想歪みゲージ出力と前記ブレーキトルク検出用歪みゲージの出力との比を掛け合わせて算出し、前記一定値Td 0 をブレーキ圧が所定値以上の領域における前記ブレーキトルクと前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号に応じて求めるものとした。
【0011】
第2の発明では、前記補正手段は、ブレーキ圧が所定値以下であるときにおいてのみ前記比例係数の補正を行う。
【0012】
第3の発明では、前記ブレーキキャリパは、ディスクロータの両側に回り込んで前記一対の制輪子をそれぞれ支持する一対のアームを備え、前記演算手段に、前記一対のアームの少なくとも一方の基端の湾曲部の内周側に取り付けた補正用歪みゲージからの検出信号に基づいて前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号を修正する検出信号修正手段を備えた。
【0013】
第4の発明では、車両の進行方向を判定する手段を備えるとともに、前記比例係数を車両の進行方向のそれぞれに対応して選択するようにした。
【0014】
第5の発明では、前記車両の進行方向を判定する手段は、前記ディスクロータの正転時に制動がなされると引っ張り応力がかかりかつ前記ディスクロータの反転時に制動がなされると圧縮応力がかかる第1の歪みゲージと、前記ディスクロータの正転時に制動がなされると圧縮応力がかかりかつ前記ディスクロータの反転時に制動がなされると引っ張り応力がかかる第2の歪みゲージとを備え、第1または第2いずれの歪みゲージに引っ張り応力がかかったかに応じて、車両の進行方向を判定する。
【0015】
第6の発明では、車両の速度を検出する車速検出手段を備え、車速が所定値以下となった場合には、トルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
【0016】
第7の発明では、ブレーキのONまたはOFFを検出するブレーキON/OFF検出手段を備え、ブレーキOFF直後には所定時間にわたってトルク出力信号を外部に出力するようにした。
【0017】
第8の発明では、車両の速度を検出する速度検出手段を備え、車両の完全停止直後には所定時間にわたって、トルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにした。
【0018】
第9の発明では、非制動時には、前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値を外部に出力しないようにした。
【0019】
第10の発明では、前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号ゼロ点の校正を所定時間毎に実行するようにした。
【0020】
【発明の作用および効果】
第1、第2の発明では、ブレーキトルクは、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号に比例係数を掛け合わせて算出されるが、この比例係数は、ブレーキ圧の大きさにしたがって補正されるので、歪みゲージからの検出信号と実際のブレーキトルク(正規トルク)との非線形のずれは、正しく補正され、正確なブレーキトルク検出が行われる。
【0021】
第3の発明では、ブレーキ時には一対のアームを押し開こうとする開き方向の歪みが発生し、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号にはこの開き方向の歪みの影響が重畳されているが、補正用歪みゲージはアーム基端の湾曲部に取り付けられ、開き方向の歪みを直接的に反映するものであるので、補正用歪みゲージの出力に基づいてブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号を修正することにより、修正された検出信号は、開き方向の歪みの影響の小さい、ブレーキトルクそのものによる歪みを直接的に反映したものとなる。したがって、補正後の検出信号によれば、より正確なブレーキトルク検出を行うことができる。
【0022】
第4の発明では、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号とブレーキトルクの関係は、車両の進行方向(ディスクロータの回転方向)がどちらであるかによって変わるが、ブレーキトルク演算のための比例係数は、車両の進行方向に対応して適切なものに変更されるので、ブレーキトルク検出は正しく行われる。
【0023】
第5の発明では、第1、第2の歪みゲージのいずれで引っ張り応力が検出されたかによって、車両の進行方向(ディスクロータの回転方向)を容易に検出することができる。
【0024】
第6の発明では、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号により演算されたブレーキトルクが実際のトルクからずれやすい車両の低速走行時には、ブレーキトルク検出装置から、トルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにしているので、ブレーキトルク検出装置からの出力に基づいて制御を行うブレーキ制御システムの誤動作を未然に防止できる。
【0025】
第7の発明では、ブレーキOFF直後には所定時間にわたってトルク出力信号を外部に出力されるので、ブレーキの作動に機械的な遅れ(例えば、ブレーキ圧を気体圧を油圧に変換して得ていることに起因する遅れ)がある場合でも、トルク検出を行うことができる。
【0026】
第8の発明では、ブレーキが固着した場合など、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号により演算されたブレーキトルクが実際のトルクからずれやすい車両の完全停止直後には、ブレーキトルク検出装置からトルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにしているので、例えばブレーキトルク検出装置から出力に基づいて制御を行うブレーキ制御システムの誤動作を未然に防止できる。
【0027】
第9の発明では、非制動時にはブレーキトルク検出装置からの出力が行われないので、例えば外部のブレーキ制御システムには、ブレーキトルク検出装置からの不必要な信号が入力されることがなく、この不必要な信号による誤動作が起こることはない。
【0028】
第10の発明では、ブレーキトルク検出用歪みゲージは、制動時のブレーキキャリパの振動によりゼロ点のずれが生じやすいが、このゼロ点の校正は所定時間毎に繰り返し実行されるので、ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号は正しいものに維持される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図3には、ブレーキトルク検出用の歪みゲージ30およびブレーキトルク演算手段40からなる本発明のブレーキトルク検出装置を、ブレーキ制御システム50と接続した実施の形態を示す。図示されるように、ブレーキユニット(ディスクブレーキ装置)52の所定の位置に取り付けられた歪ゲージ30からの検出信号(歪みゲージ出力)は、ブレーキトルク演算手段40に取り込まれ、ブレーキトルクが演算される。
【0031】
ここで、ブレーキユニット52は、例えば図1、図2に示したようなディスクブレーキ装置である。そして、歪ゲージ30は、例えば、図1に示す歪みゲージ31、32のように、ブレーキキャリパ1のブラケット11、12の外周面に取り付けられたり、図2に示す歪みゲージ33のように、アーム3Bの基端付近に取り付けられたりするものである。また、歪ゲージ30からの検出信号である歪みゲージ出力は、例えば歪みゲージ30を組み込んだブリッジ回路の出力電圧として得られる。
【0032】
ブレーキトルク演算手段40は、歪みゲージ出力に所定の比例係数Tdをかけてブレーキトルクを算出する。
【0033】
この場合、ブレーキ圧が高い場合など、ブレーキキャリパ1の歪みとブレーキトルクが略線形の関係にある範囲では、比例係数Tdを定数係数Td0としてブレーキトルクを算出すればよい。しかしながら、実際には、ブレーキトルクとブレーキキャリパ1の歪みとの関係は、例えばブレーキ圧が低い場合などには、ブレーキキャリパ1の形状特性等の影響により、理想的な線形関係にはない。また、ブレーキキャリパ1には、トルク受け部材6A、7A、6B、7Bを介して作用するブレーキトルクの反力の他に、ピストン8が制輪子5A、5Bをディスクロータ2に押し付ける力の反力(アーム3A、3Bを押し開こうとする力)も作用する。このため、特にブレーキ圧が低い範囲では、歪ゲージ出力には、この開き方向歪みの影響による非線形要素が含まれてしまう。
【0034】
このため、ブレーキトルクを歪みゲージ出力に単純に比例するものとして定数の比例係数Td0に基づいて算出すると、図4に示すように、特に非線形要素の影響の大きなブレーキトルクの比較的小さな範囲では、定数の比例係数Td0に基づいて算出したブレーキトルク(歪みゲージ計測トルク)は、実際のブレーキトルク(正規トルク)と一致しない。
【0035】
なお、この場合に、正規トルクは、試験治具を用いた実験において、ブレーキ圧に比例するトルクがかけられたテスト用歪みゲージからの検出信号に基づいて演算する。また、歪みゲージ計測トルクと正規トルクはいずれも複数のサンプリング値を平均して求めているので、図4の縦軸にはトルク平均値との表示をしている。また、図のEBは緊急ブレーキ時のブレーキ圧を示している。
【0036】
このような歪みゲージ計測トルクと正規トルクの不一致を解消するため、ブレーキトルク演算手段40に比例係数補正手段41が備えられる。そして、比例係数補正手段41により、ブレーキトルク演算手段40における比例係数Tdは、対応するブレーキ圧が所定値L以下(例えばL=5ノッチ以下)の場合に、ブレーキ圧の大きさにしたがって補正される。
【0037】
具体的に説明すると、ブレーキトルクRは、歪ゲージ出力Vと比例係数Tdに基づいて、
R=V×Td …(1)
と演算される。
【0038】
ここで、5ノッチのブレーキ圧に対応する歪みゲージ出力V(5)よりも大きな歪みゲージ出力Vに対する比例係数Tdは、一定値Td0とする。
【0039】
一方、5ノッチ以下の各段階のブレーキ圧Pnに対応する歪みゲージ出力V(Pn)に対応する比例係数Td(Pn)は、一定値Td0に、理想歪みゲージ出力Vi(Pn)と実際の歪みゲージ出力V(Pn)との比Vi(Pn)/V(Pn)を掛け合わせて、
Td(Pn)=Td0×[Vi(Pn)/V(Pn)] …(2)
として定められる。ここで、理想歪みゲージ出力Viは、前述の試験治具を用いた実験における、正規トルクに理想的な線形関係を持つように設定されたテスト用歪みゲージ出力を、ブレーキ圧が所定値(例えば5ノッチ)よりも大きい範囲の歪みゲージ出力Vと略一致するように調整したものである。
【0040】
また、比Vi(Pn)/V(Pn)の決定においては、理想歪みゲージ出力と歪みゲージ出力と、を複数回(例えば10回)にわたってサンプリングする。そして、サンプリングされた理想歪みゲージ出力Vi(Pn)1、Vi(Pn)2、…、Vi(Pn)j、…と、歪みゲージ出力V(Pn)1、V(Pn)2、…、V(Pn)j、…から誤差率e1、e2、…、ej、…を
en=[(Vi(Pn)j−V(Pn)j)/Vi(Pn)j]×100…(3)
として演算する。そして、平均的な誤差率eaにおけるVi(Pn)a、V(Pn)aを、それぞれVi(Pn)、V(Pn)とする。
【0041】
さらに、これらの各段階の歪みゲージ出力V(Pn)の間の歪みゲージ出力Vに対する比例係数Td(0〜1)、Td(1〜2)、…、Td(L−1〜L)は、それぞれ一定値Td0に、補正係数K01、K12、…、KL-1Lをかけて求める。すなわち、例えば所定値L=5の場合には、
Td(4〜5)=Td0×K45(P) (4<P≦5) …(4)
Td(3〜4)=Td0×K34(P) (3<P≦4) …(5)
Td(2〜3)=Td0×K23(P) (2<P≦3) …(6)
Td(1〜2)=Td0×K12(P) (1<P≦2) …(7)
Td(0〜1)=Td0×K01(P) (0≦P≦1) …(8)
とする。
【0042】
ここで、補正係数K01〜K45は、図4に示すブレーキ圧に対する歪みゲージ計測トルクのグラフにおいて、図に×印で示す各ノッチにおける歪みゲージ計測トルクを直線補間して各ノッチ間のブレーキ圧に対応する歪みゲージ計測トルクを演算した場合に、この直線補間部分の歪みゲージ計測トルクを正規トルクに補正する補正係数として、
K45=a45×P+b45 …(9)
K34=a34×P+b34 …(10)
K23=a23×P+b23 …(11)
K12=a12×P+b12 …(12)
K01=a01×P+b01 …(13)
の各式から演算される。
【0043】
このように、ブレーキ圧が低圧である範囲では、ブレーキトルク演算手段40の比例係数補正手段41により補正された比例係数Tdに基づいてブレーキトルクを算出することにより、ブレーキトルクは正しく算出される。
【0044】
補正用歪みゲージ35は、前述したピストン8が制輪子5A、5Bをディスクロータ2に押し付ける力の反力(アーム3A、3Bを押し開こうとする力)に基づくの開き方向歪みを、直接的に検出し得るように設けられるもので、例えば図2に示すように、アーム3Bの基端の湾曲部の内周側に取り付けられる。なお、この補正用歪みゲージ35からのブレーキ圧Pに対応する歪ゲージ出力Vh(P)は、制動を与えずにブレーキ圧のみを加えたときの歪みに基づくものとする。
【0045】
ブレーキトルク演算手段40に備えられた検出信号修正手段42は、歪みゲージ30からの歪ゲージ出力Vt(P)(例えばアーム3Bの基端付近(湾曲部の内周側でない箇所)に取り付けられ、開き方向歪みの影響を受けやすい歪みゲージ33からの歪みゲージ出力)を、この補正用歪みゲージ35からの歪みゲージ出力Vh(P)に基づいて修正する。すなわち、ブレーキ圧Pに対応する修正後の歪ゲージ出力V(P)は、
V(P)=Vt(P)+Th(P)×Vh(P) …(14)
となる。
【0046】
ここで、修正係数Th(P)は歪みゲージ33からの歪みゲージ出力Vtに対する開き方向歪みの影響の程度により変わる変数であり、ブレーキ圧が低いときほど開き方向歪みの影響が略線形に大きくなることから、A、Bを所定の定数として、
Th(P)=A×P+B …(15)
と表現される。
【0047】
ブレーキトルク演算手段40は、この修正後の歪みゲージ出力に基づいてブレーキトルクを演算する。すなわち、ブレーキトルクRは、上述の式(1)のVに、式(14)のV(P)を代入して演算され、
R=(Vt(P)+Th(P)×Vh(P))×Td …(16)
となる。
【0048】
このようにブレーキトルク演算手段40において算出されたブレーキトルクの演算値Rは、トルク検出信号としてブレーキ制御システム50(例えばアンチロックブレーキシステム)に取り込まれる。ブレーキ制御システム50は、このブレーキトルクの検出値に基づいて、所定のブレーキ制御が行われるように(例えばアンチロックブレーキ制御が行われるように)、圧力流体コントロールバルブ51を制御する。ブレーキユニット52(図1、図2のディスクブレーキ装置の油圧ピストン8)には、この圧力流体コントロールバルブ51を介して所定圧に制御されたブレーキ圧が供給され、ブレーキトルクは、このブレーキ圧を介してフィードバック制御される。
【0049】
図5には、図3に示したブレーキ制御システム50(例えばアンチロックブレーキシステム)によるブレーキ制御の制御手順をフローチャートで示す。
【0050】
図示されるように、ステップS1では、ブレーキがONであるかOFFであるかが判定される。
【0051】
このステップS1でブレーキがOFFであると判定されたならば、ステップS2に進み、ブレーキトルク検出装置からブレーキ制御システム50へのトルク出力信号の送信を行わない状態を維持する。これにより、ブレーキトルク検出装置からブレーキ制御システム50へ不必要な信号の入力が行われないようにして、ブレーキ制御システム50の誤動作を防止する。また、ブレーキがOFFである間は、所定時間間隔(例えば2秒間隔)で、歪みゲージ出力のゼロ点を校正する。これにより、ブレーキ時の振動によりずれの生じやすい歪みゲージ30のゼロ点が正しく保たれる。
【0052】
一方、ステップS1でブレーキがONされたと判定されたならば、ステップS3に進み、トルク検出信号(ブレーキトルクの演算値R)の正負から、車両の進行方向を判定する。そして、車両が正方向に進んでいる(ディスクロータ2が正転している)と判定されたときには、ステップS4において正転側補正式(正転側の補正係数)を選択し、ステップS6に進む。一方、車両が負方向に進んでいる(ディスクロータ2が逆転(反転)している)と判定されたときには、ステップS4において逆転側補正式(逆転側の補正係数)を選択し、ステップS6に進む。
【0053】
なお、この車両の進行方向の判定は、図1の歪みゲージ31、32のように、ディスクロータ2の回転方向に対して対称な位置に一対の歪みゲージ31、32を取り付けることにより、ディスクロータ2の正転または反転(逆転)に応じて歪みゲージ31、32の一方にのみ引っ張り応力がかかるようにしておくことで、どちらの歪みゲージ31、32に引っ張り応力がかかっているかの判定で容易に実行することができる。
【0054】
ステップS6では、選択された補正式(補正係数Td)に基づいてブレーキトルクを算出し、トルク出力信号を生成する。
【0055】
続くステップS7では、車速が所定速度(例えば5km/h)以上であるか以下であるかの判定がなされる。ここで、車速は、例えば車両の搭載された車輪回転速度センサにより検出される。
【0056】
ステップS7で車速が所定速度(例えば5km/h)以上であると判定されたならば、ステップS8でトルク検出信号の出力処理を行い、続くステップS9でブレーキがONと判定されたならばステップS3に戻る。
【0057】
一方、ステップS7で車速が所定速度(例えば5km/h)以下であると判定されたならば、ステップS10では、トルク出力信号を所定速度以下になる直前のトルク出力信号の値にホールドする。すなわち、トルク出力信号としては、所定速度以下になる直前のトルク出力信号の値(固定値)であるトルクホールド信号が出力され続ける。
【0058】
続くステップ11では車両停止か否かが判定され、車両停止でない場合にはステップS12に進み、車両停止の場合にはステップS13に進む。
【0059】
ステップS12ではブレーキのON/OFFが判定され、ブレーキがONと判定されたならばステップS7に戻る。すなわち、車両の低速走行時には、歪みゲージ出力は正規トルクを正しく反映しない場合が多いので、ブレーキ制御システム50にはトルクホールド信号を出力して、ブレーキ制御システム50の誤動作を未然に防止する。
【0060】
ステップS9またはステップS12でブレーキがOFFされたと判定されたならば、ステップS13に進み、ブレーキOFFの後、所定時間(例えば3秒間)経過したが否かが判定される。
【0061】
このステップS13で、ブレーキOFFの後、所定時間(例えば3秒間)経過していないと判定されたときには、ステップS15に進み、ブレーキのON/OFFが再び判定され、ブレーキがOFFと判定されたならばステップS13に戻り、またブレーキがONと判定されたならばステップS3に戻る。
【0062】
また、この処理と平行して、トルク出力信号が所定時間(例えば3秒間)にわたって出力され続ける。
【0063】
具体的には、ステップS9から来たフローにおいては、その時点でのトルク出力信号がそのまま出力される。これにより、ブレーキOFF信号に対するブレーキの作動に機械的な遅れが生じたにものトルク出力の検出を行うことができる。なお、このブレーキの作動の機械的な遅れは、例えば、ピストン8に作用するブレーキ圧(油圧)を得る場合に、まずブレーキ信号に対応する気体圧力を発生させ、この気体圧力を油圧に変換するようにしている構成を採用した場合などに特に発生するものである。
【0064】
また、ステップS12から来たフローにおいては、トルクホールド信号が出力され続ける。これにより、正規トルクからずれた信号が出力されやすいブレーキOFF間際の生のトルク出力信号はブレーキ制御システム50に取り込まないようにして、実際のブレーキトルクに基づかないブレーキ制御システム50の動作を未然に防止することができる。
【0065】
一方、ステップS13で、ブレーキOFFの後、所定時間(例えば3秒間)経過したと判定されたときには、ステップS14に進み、トルク出力信号の出力をOFFしてステップS1に戻る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すディスクブレーキ装置の側面図である。
【図2】同じくディスクブレーキ装置の正面図である。
【図3】同じくブロック構成図である。
【図4】ブレーキ圧力と正規トルクおよび歪みゲージ計測トルクの関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるブレーキ制御の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ブレーキキャリパ
2 ディスクロータ
3A、3B アーム
5A、5B 制輪子
8 油圧ピストン
30 歪みゲージ
31 歪みゲージ
32 歪みゲージ
33 歪みゲージ
35 補正用歪みゲージ
40 ブレーキトルク演算手段
41 比例係数補正手段
42 検出信号修正手段
Claims (10)
- ブレーキキャリパに取り付けられてブレーキキャリパの歪みを検出するブレーキトルク検出用歪みゲージと、このブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号に所定の比例係数をかけてブレーキトルクを算出するブレーキトルク演算手段と、前記比例係数をブレーキトルクと前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号とが線形特性となるようにブレーキ圧の大きさにしたがって補正する補正手段と、を備え、この補正手段は前記比例係数を一定値Td 0 にブレーキ圧に対応する理想歪みゲージ出力と前記ブレーキトルク検出用歪みゲージの出力との比を掛け合わせて算出し、前記一定値Td 0 をブレーキ圧が所定値以上の領域における前記ブレーキトルクと前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号に応じて求めることを特徴とするブレーキトルク検出装置。
- 前記補正手段は、ブレーキ圧が所定値以下であるときにおいてのみ前記比例係数の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載のブレーキトルク検出装置。
- 前記ブレーキキャリパは、ディスクロータの両側に回り込んで前記一対の制輪子をそれぞれ支持する一対のアームを備え、前記演算手段に、前記一対のアームの少なくとも一方の基端の湾曲部の内周側に取り付けた補正用歪みゲージからの検出信号に基づいて前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号を修正する検出信号修正手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキトルク検出装置。
- 車両の進行方向を判定する手段を備えるとともに、前記比例係数を車両の進行方向のそれぞれに対応して選択するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
- 前記車両の進行方向を判定する手段は、前記ディスクロータの正転時に制動がなされると引っ張り応力がかかりかつ前記ディスクロータの反転時に制動がなされると圧縮応力がかかる第1の歪みゲージと、前記ディスクロータの正転時に制動がなされると圧縮応力がかかりかつ前記ディスクロータの反転時に制動がなされると引っ張り応力がかかる第2の歪みゲージとを備え、第1または第2いずれの歪みゲージに引っ張り応力がかかったかに応じて、車両の進行方向を判定することを特徴とする請求項4に記載のブレーキトルク検出装置。
- 車両の速度を検出する車速検出手段を備え、車速が所定値以下となった場合には、トルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
- ブレーキのONまたはOFFを検出するブレーキON/OFF検出手段を備え、ブレーキOFF直後には所定時間にわたってトルク出力信号を外部に出力するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
- 車両の速度を検出する速度検出手段を備え、車両の完全停止直後には所定時間にわたって、トルク出力信号として、車速が所定値以下となる直前に前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値である固定値を出力するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
- 非制動時には、前記演算手段により演算されたブレーキトルクの算出値を外部に出力しないようにしたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載のブレーキトルク検出装置。
- 前記ブレーキトルク検出用歪みゲージからの検出信号のゼロ点の校正を所定時間毎に実行するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項9に記載のブレーキトルク検出装置。
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