JP3928150B2 - 有機物の分解処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中に含まれるフェノール類、アミン類、アルデヒド類等の有害な有機物を分解処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、水中に含まれるある種の有機物、例えばp−ターシャリーブチルフェノールまたはビスフェノールA等の有機物が環境ホルモンとして作用するとの報告がなされている。前記環境ホルモンは、生物種の存続に関し、環境に特殊な影響を及ぼす虞があることが懸念されている。
【0003】
従来、水中に含まれる有害な有機物を分解または除去する方法として、例えば活性炭等による吸着法、限外濾過法、蒸留法等があり、また最近では酸化チタン光触媒を用いる方法が注目されている。
【0004】
しかしながら、前記吸着法では除去できる有機物の種類が限定される。また前記限外濾過法では高分子量の化合物は除去できるが低分子量の化合物は水と一緒に限外濾過膜を通過してしまうため分離することが難しい。また、前記蒸留法によれば、沸点の差を利用するので前記有機物をある程度除去できるが完全ではなく、また有機物を含む水を加熱するために莫大なエネルギーを必要とする。また、酸化チタン光触媒を用いる方法では、該触媒の強い酸化力により殆どの有機物を分解することができるが、紫外光の照射を必要とするので、大量処理には難がある。
【0005】
そこで、前記環境ホルモン等の有害な有機物を容易に分解できる技術の開発が望まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、かかる不都合を解消して、水中の有害な有機物を容易に分解処理できる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
一般に、ハイドロキシルラジカル(・OH)は強い酸化力及び殺菌力を有することが知られており、例えば酸化チタン光触媒では、光照射によって触媒表面に生成されたハイドロキシルラジカルによる多くの有機物の酸化反応が報告されている。しかし、前記ハイドロキシルラジカルは寿命が極めて短く、一般にマイクロ秒台と言われている。
【0008】
ところで、本発明者は、先にイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第1の電解槽に塩化物よりなる電解質を含む原水を供給して電解し、該第1の電解槽の陰極側から得られた電解水のみを、さらにイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第2の電解槽の陽極側で電解することにより過酸化水素を含む電解水を製造する方法を提案している(特願平9−271245号明細書参照)。本発明者は、前記製造方法により得られる電解水について検討を重ね、該電解水では前記ハイドロキシルラジカルが連続的に生成し、見掛け上、長時間の寿命を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
そこで、本発明は、イオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第1の電解槽に塩化物よりなる電解質を含む原水を供給して電解し、該第1の電解槽の陰極側から得られた電解水のみを、さらにイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第2の電解槽の陽極側で電解することによりハイドロキシルラジカルを生成せしめ、該ハイドロキシルラジカルを含む電解水を有機物を含む水に添加して該ハイドロキシルラジカルを該有機物に作用させることにより該有機物を分解することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記第1の電解槽に前記電解質を含む原水を供給して電解し、該第1の電解槽の陰極側から得られた電解水のみを、さらに該第1の電解槽と同一の構成を備える第2の電解槽の陽極側で電解することによりハイドロキシルラジカルを含む電解水が得られる。前述のように、ハイドロキシルラジカルの寿命は、通常はマイクロ秒台に過ぎないが、本発明によれば、前記ハイドロキシルラジカルが連続的に生成し、前記電解水の生成後、見掛け上、数時間以上の寿命を有するものと推測される。
【0011】
本発明では、次に、前記ハイドロキシルラジカルを含む電解水を有機物を含む水に添加する。すると、前記ハイドロキシルラジカルが前記有機物に作用し、該ハイドロキシルラジカルの有する強力な酸化力により該有機物を分解することができる。
【0014】
前記本発明では、前記電解質として前記塩化物を用いることにより、該電解質を含む原水を電解すると前記第2の電解槽の陽極側で酸素、過酸化水素、ハイドロキシルラジカル、塩素及び次亜塩素酸が生成する。このうち、過酸化水素と塩素、もしくは次亜塩素酸が、前記ハイドロキシルラジカルの連続的な生成に関与していることが推測される。
【0015】
前記塩化物として、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カリウム(KCl)等を挙げることができる。
【0016】
前記本発明は、ベンゼン環を有し一般に難分解性とされる芳香族化合物に有効であり、例えば下記式(1)の構成を備えるフェノール類等を分解することができる。
【0017】
【化1】
Figure 0003928150
【0018】
(式(1)中、Rは無機有機を問わず水素と置換し得る基であればよい。)
前記式(1)の構成を備えるフェノール類として例えば、下記式(2)で示されるp−ターシャリーブチルフェノール、下記式(3)で示されるビスフェノールAまたはこれらの分解生成物等を挙げることができる。p−ターシャリーブチルフェノール及びビスフェノールAは、環境ホルモンであるとの疑いが提起されている。
【0019】
【化2】
Figure 0003928150
【0020】
前記化合物は、式(2)の場合には、−C(CH 、式(3)の場合には、>C(CH というように、いずれも分子中に脂肪族部分を有しているが、本発明では前記脂肪族部分を含めて分解、除去する。従って、本発明は、下記式(4)〜(6)で示されるアミン類、下記式(7)で示されるアルデヒド類等の脂肪族化合物にも有効である。
【0021】
【化3】
Figure 0003928150
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本発明の方法に用いる装置の一構成例を示す説明的断面図であり、図2(a)は図1示の装置で得られたハイドロキシルラジカルを含む電解水の電子スピン共鳴(ESR分光)であるスピントラップ法によるESRスペクトル、図2(b)は比較対象としてのハイドロキシルラジカルを含む水のESRスペクトルである。図3は比較対象の芳香族化合物としてビスフェノールA及びp−ターシャリーブチルフェノールを含む水の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラムであり、図4はビスフェノールAを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム、図5はビスフェノールAの分解生成物を含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラムである。また、図6はp−ターシャリーブチルフェノールを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム、図7はp−ターシャリーブチルフェノールの分解生成物を含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラムである。
【0023】
さらに、図8は比較対象の脂肪族化合物としてn−ブチルアルデヒドを含む水のHPLCクロマトグラム、図9はn−ブチルアルデヒドを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラムであり、図10及び図11はそれぞれ図8及び図9示のHPLCクロマトグラムの主要ピークの分光スペクトラムである。
【0024】
図1は、本実施形態に用いる装置の一構成例であり、イオン透過性の隔膜1により隔てられた2つの槽2,3を備える電解槽4からなる。各槽2,3には、それぞれチタンメッシュ基材に白金を担持させた電極板5,6が設けられ、電極板5,6は外部回路7を介して外部電源8に接続されている。そして、電極板5,6は、外部回路7に設けられたスイッチ9,10により極性の切換えが可能にされている。
【0025】
前記イオン透過性の隔膜1は、織布、不織布、プラスチックフィルム(ポリマーフィルム)等どのような形状のものであってもよく、例えば、デュポン社製カチオン交換膜「ナフィオン117(商品名)」、宇部興産株式会社製ポリオレフィン多孔フィルム「ユーポア(商標)」)等を挙げることができる。
【0026】
図1示の装置では、まず、スイッチ9,10により電極板5,6を外部電源8に接続して電極板5を陽極、電極板6を陰極とし、各槽2,3に電解質として塩化ナトリウムまたは塩化カリウム等の塩化物を含む原水Wを供給して、電極板5,6間に電圧を印加することにより第1の電解を行う。そして、次にスイッチ9,10を切り換えることにより電極板5,6に供給される電流の極性を逆転させ、電極板5を陰極、電極板6を陽極として第2の電解を行う。この結果、第1の電解の陰極側で得られた電解水のみが、第2の電解の陽極側で電解される。
【0027】
前記第1の電解において、陰極側となる槽3では、主として水の電解により水素が発生すると共に、水酸イオン(OH- )が生成する。前記槽3での反応を下式(8)に示す。
【0028】
【化4】
Figure 0003928150
【0029】
前記陰極側の一次電解水は式(8)の反応の結果として水酸イオンを含んでおり、電極板5,6に供給される電流の極性を逆転させ、電極板5を陰極、電極板6を陽極として第2の電解を行うと、第2の電解の陽極側となる槽3では、水の電解により酸素が発生すると共に、前記水酸イオンから過酸化水素(H)及び酸素が生成する。前記槽3での反応を下式(9)〜(12)に示す。
【0030】
【化5】
Figure 0003928150
【0031】
この結果、第2の電解で陽極側となる槽3から、過酸化水素を含む本発明に用いる電解水が得られる。また、この電解水は、前記過酸化水素と共にハイドロキシルラジカル(・OH)を含んでいる。
【0032】
第2の電解で陽極側となる槽3から得られた電解水において、前記ハイドロキシルラジカルは、水酸イオン、水及び過酸化水素から生成されるものと考えられる。推定される反応式を下式(13)〜(15)に示す。
【0033】
【化6】
Figure 0003928150
【0034】
ハイドロキシルラジカル等のラジカルは、一般に寿命が短くその存在を確認することが難しいが、スピントラップ法によるESR測定を用いると不安定なラジカルを捕捉して測定することができる。この結果、得られたスペクトルの波形パターンを、ハイドロキシルラジカル(・OH)を含む水の既知のESRスペクトルの波形パターンと比較することにより、容易にハイドロキシルラジカルの存在を確認することができる。前記既知のESRスペクトルは、各種文献に記載がある(例えば、ウォーター研究会編「わかりやすい強酸性電解水の基礎知識」オーム社、p46(1997))。
【0035】
本実施形態では、塩化ナトリウムを0.8g/リットルの濃度となるように添加した原水Wを図1示の電解槽4の各槽2,3にそれぞれ2.3リットルずつ供給し、まず第1の電解として電極板5,6の間に電圧を印加して0.8Aの定電流電解を25分間行った。次に、第2の電解として、電極板5,6に供給される電流の極性を逆転させて、0.8Aの定電流電解を25分間行った。この結果、第2の電解で陽極側となる槽3から、酸化還元電位252mV、pH5.26、残留塩素濃度5.0ppmの電解水が得られた。
【0036】
次に、第2の電解で陽極側となる槽3から得られた前記電解水のESRスペクトルを図2(a)に示す。図2(a)示のスペクトルは、図1示の槽3で得られた電解水について、生成後約3時間経過してから、走査を繰り返したときのESRスペクトルを示している。前記走査は1回に3分を要し、1回の走査が終了したならば、続いて次の走査を開始するというようにして行った。図2(a)示のスペクトルは、走査を繰り返す毎に、振幅がW1 からW2 、W2 からW3 と、増大することが観察された。また、前記文献記載のハイドロキシルラジカルを含む水の既知のESRスペクトルを図2(b)に示す。
【0037】
図2(a)示のスペクトルを図2(b)示の既知のESRスペクトルの波形パターンと比較すると、両者はよく一致しており、前記電解水中にハイドロキシルラジカルの存在を確認することができる。また、前記ハイドロキシルラジカルの寿命は、通常はマイクロ秒台と言われており極めて短いが、図2(a)から明らかなように、図1示の槽3から得られた電解水では、W1 からW2 ,W3 と時間を追う程、強度が増大することからハイドロキシルラジカルの増加が推測される。
【0038】
次に、本実施形態では、図1示の槽3で得られた電解水を有機物を含む水に添加して、前記ハイドロキシルラジカルを該有機物に作用させることにより該有機物を分解する。
【0039】
本実施形態では、まず有機物が芳香族化合物である場合に、芳香族化合物を含む水に、図1示の槽3で得られた電解水を添加して該芳香族化合物を分解する場合について説明する。本実施形態で、前記芳香族化合物は、前記式(2)で示されるp−ターシャリーブチルフェノールまたは式(3)で示されるビスフェノールAである。
【0040】
尚、本実施形態の方法は実際にはp−ターシャリーブチルフェノールまたはビスフェノールA等の有機物を含む水に前記電解水を添加するものである。しかし、以下の例では実験の便宜上、前記電解水に所定量のp−ターシャリーブチルフェノールまたはビスフェノールAを添加する。
【0041】
まず、比較対象として、p−ターシャリーブチルフェノール及びビスフェノールAをそれぞれ10ppmの濃度になるように添加した水道水のHPLCクロマトグラムを図3に示す。図3示のHPLCクロマトグラムは、島津製作所製高速液クロマトグラフ装置(LC−6A型)により、ジーエルサイエンス株式会社製カラム(Intersil ODS−3(250×4.6mmI.D.))を用いて測定した。測定条件は、カラム温度40℃、移動相:アセトニトリル−水混液(体積比3:1)、流速0.7ミリリットル/分、試料溶液の注入量:20マイクロリットルである。分離された物質の検出にはUV検出器(波長220nm)を用いた。ベンゼン環は紫外線領域に吸収帯を有するので、前記試料溶液に芳香族化合物が存在すれば、前記波長のUV検出器により検出することができる。
【0042】
図3示のクロマトグラムでは、保持時間4.9分の位置にビスフェノールAのピークが認められ、保持時間6.9分の位置にp−ターシャリーブチルフェノールのピークが認められる。保持時間約3分の位置に認められるピークは水道水に含まれる無機塩由来のピークである。
【0043】
次に、図1示の槽3で得られた電解水にビスフェノールAを10ppmの濃度になるように添加した水を試料溶液Iとして、図3の場合と全く同一の測定条件でHPLCの測定を行った。このとき得られたクロマトグラムを図4に示す。
【0044】
図4から、ビスフェノールAのピークは図3のクロマトグラムとほぼ同位置の保持時間4.9分の位置に認められるが、その強度は図3のクロマトグラムに比較して著しく低減されていることが明らかである。これは、試料溶液I中のビスフェノールAが槽3で得られた電解水に含まれるハイドルキシルラジカル等により分解された結果と考えられる。また、図4のクロマトグラムにおいて、保持時間約3分の位置に認められるピークは、次亜塩素酸等の塩素化合物を主とする無機化合物のピークであり、保持時間6.7、7.9、10.0、10.6分の位置に認められる各ピーク(A)、(B)、(C)、(D)はいずれもビスフェノールAの反応生成物または分解生成物と考えられる。
【0045】
そこで、次に、図1示の槽3で得られた電解水で前記試料溶液Iをさらに2倍に希釈したものを試料溶液IIとして、図3の場合と全く同一の測定条件でHPLCの測定を行った。このとき得られたクロマトグラムを図5に示す。図5から、ビスフェノールAのピークは図3のクロマトグラムとほぼ同位置の保持時間4.384分の位置に僅かに認められるに過ぎず、また図4のクロマトグラムで認められた(A)〜(D)の各ピークも全く認められないことが明らかである。尚、保持時間約3分の位置に認められるピークは、前記のように次亜塩素酸等の塩素化合物を主とする無機化合物のピークである。
【0046】
図4及び図5から、ビスフェノールAは、図1示の槽3で得られた電解水に含まれるハイドルキシルラジカルにより、分解生成物(A)〜(D)を経て紫外線領域に吸収帯を持たない化合物に変化したことが明らかであり、ビスフェノールAとしては液中に存在しないことが明らかである。
【0047】
次に、槽3で得られた電解水にp−ターシャリーブチルフェノールを10ppmの濃度になるように添加した水を試料溶液IIIとして、図3の場合と全く同一の測定条件でHPLCの測定を行った。このとき得られたクロマトグラムを図6に示す。
【0048】
図6から、p−ターシャリーブチルフェノールのピークは図3のクロマトグラムとほぼ同位置の保持時間6.7分の位置に認められるが、その強度は図3のクロマトグラムに比較して著しく低減されていることが明らかである。これは、試料溶液III中のp−ターシャリーブチルフェノールが図1示の槽3で得られた電解水に含まれるハイドロキシルラジカルにより分解された結果と考えられる。また、図6のクロマトグラムにおいて、保持時間約3分の位置に認められるピークは、次亜塩素酸等の塩素化合物を主とする無機化合物のピークであり、保持時間3.9、4.3、8.5分の位置に認められるピーク(E)、(F)、(G)はいずれもp−ターシャリーブチルフェノールの反応生成物と考えられる。
【0049】
そこで、次に、図1示の槽3で得られた電解水で前記試料溶液IIIをさらに2倍に希釈したものを試料溶液IVとして、図3の場合と全く同一の測定条件でHPLCの測定を行った。このとき得られたクロマトグラムを図7に示す。図7から、図3のクロマトグラムにおけるp−ターシャリーブチルフェノールのピークと同位置付近には殆ど何のピークも認められず、p−ターシャリーブチルフェノールのピークが消えていることが明らかである。また図7では、図6のクロマトグラムで認められた(E)〜(G)の各ピークは僅かに認められるに過ぎないことが明らかである。尚、保持時間約3分の位置に認められるピークは、前記のように次亜塩素酸等の塩素化合物を主とする無機化合物のピークである。
【0050】
従って図6及び図7から、p−ターシャリーブチルフェノールは、図1示の槽3で得られた電解水に含まれるハイドロキシルラジカル等により、反応生成物(E)〜(G)を経て紫外線領域に吸収帯を持たない化合物に変化し、p−ターシャリーブチルフェノールは殆ど完全に分解されることが明らかである。
【0051】
次に、有機物が脂肪族化合物である場合に、脂肪族化合物を含む水に、図1示の槽3で得られた電解水を添加して該芳香族化合物を分解する場合について説明する。本実施形態で、前記脂肪族化合物は、前記式(7)において、R−がCH3 CH2 CH2 CH2 −であるn−ブチルアルデヒドであり、合成樹脂の原料、ゴムの加硫促進剤等に用いられている。
【0052】
尚、本実施形態の方法は実際にはn−ブチルアルデヒドを含む水に前記電解水を添加するものである。しかし、以下の例では、実験の便宜上、p−ターシャリーブチルフェノールまたはビスフェノールAの場合と同様に、前記電解水に所定量のn−ブチルアルデヒドを添加する。
【0053】
まず、比較対象として、n−ブチルアルデヒドを蒸留水で0.1体積%になるように希釈した水溶液のHPLCクロマトグラムを図8に示す。図8示のHPLCクロマトグラムは、ヒューレットパッカード社製高速液クロマトグラフ装置(HP1100)により、ヒューレットパッカード社製カラム(HyporsilODSC−3(125×4mmI.D.)を用いて測定した。測定条件は、カラム温度40℃、移動相:アセトニトリル−水混液(体積比3:7)、流速1.0ミリリットル/分、試料溶液の注入量:20マイクロリットルである。検出器にはダイオードアレイ検出器を用い、高速液クロマトグラフで分離された物質を波長200nmのUVで検出すると同時に、分離された各物質の波長200〜375nmの範囲の分光スペクトルを測定した。
【0054】
図8示のクロマトグラムでは、保持時間2.2分の位置にn−ブチルアルデヒドのピークが認められる。保持時間3.7分の位置に認められるピーク(H)は不純物またはn−ブチルアルデヒドの一部分解生成物である。n−ブチルアルデヒドの分光スペクトラムを図10(a)に、ピーク(H)に相当する物質の分光スペクトラムを図10(b)にそれぞれ示す。
【0055】
次に、図1示の槽3で得られた電解水に前記n−ブチルアルデヒドの0.1体積%水溶液を0.002体積%となるように添加した水を試料溶液Vとして、図8の場合と全く同一の測定条件でHPLCの測定を行った。このとき得られたクロマトグラムを図9に示す。
【0056】
図9から、図8のクロマトグラムにおけるn−ブチルアルデヒドのピーク及び不純物またはn−ブチルアルデヒドの一部分解生成物のピーク(E)とほぼ同位置に、2つのピーク(I)、(J)が認められる。ピーク(I)、(J)に相当する物質の分光スペクトラムを図11(a)、(b)にそれぞれ示す。
【0057】
図11(a)、(b)に示す分光スペクトラムは、図10(a)、(b)に示すn−ブチルアルデヒドのピーク及び不純物またはn−ブチルアルデヒドの一部分解生成物の分光スペクトルとは全く異なるパターンを示すことが明らかである。従って、前記ピーク(I)、(J)に相当する物質は、クロマトグラム上の位置は類似しているものの、n−ブチルアルデヒドのピーク及び不純物またはn−ブチルアルデヒドの一部分解生成物とは全く異なる物質であることがわかる。
【0058】
これは、試料溶液V中のn−ブチルアルデヒド、不純物、n−ブチルアルデヒドの一部分解生成物が槽3で得られた電解水に含まれるハイドルキシルラジカル等により化学変化を起こして分解した結果と考えられる。
【0059】
本実施形態では、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールA、n−ブチルアルデヒドまたはこれらの分解生成物等の有機物を含む水に、第2の電解で陽極側となる槽3で得られたハイドロキシルラジカルを含む電解水を添加するようにしている。しかし、図1示の装置において、前記有機物を含む水に塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物を添加したものを原水として、前記有機物を含む原水を槽3に直接供給するようにしてもよい。このようにするときには、第2の電解で陽極側となる槽3で生成するハイドロキシルラジカルが槽3内で前記原水中の前記有機物に作用し該有機物を分解するので、槽3から有機物が分解された水を取り出すことができる。
【0060】
本実施形態の方法は、図1示の装置に限らず、電解質を含む原水をイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた電解槽の陰極側で電解したのち、さらにイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第2の電解槽の陽極側で電解することができる装置であれば、どのような装置を用いても実施することができる。図1示の装置に代えて本実施形態の方法に用いることができる他の装置として、例えば特願平9−271245号明細書に記載された各装置を挙げることができる。
【0061】
また、図1示の装置では、電解質として塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物を用いているが、前記電解質は硫酸ナトリウム(Na2 SO4 )等の硫酸塩を用いてもよい。
【0062】
本発明の有機物の分解方法は、例えば、排水処理等の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いる装置の一構成例を示す説明的断面図。
【図2】(a)は図1示の装置で得られたハイドロキシルラジカルを含む電解水の電子スピン共鳴(ESR分光)であるスピントラップ法によるESRスペクトル、(b)は比較対象としてのハイドロキシルラジカルを含む水のESRスペクトル。
【図3】比較対象の芳香族化合物としてビスフェノールA及びp−ターシャリーブチルフェノールを含む水の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラム。
【図4】ビスフェノールAを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム。
【図5】ビスフェノールAの分解生成物を含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム。
【図6】p−ターシャリーブチルフェノールを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム。
【図7】p−ターシャリーブチルフェノールの分解生成物を含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム。
【図8】比較対象の脂肪族化合物としてn−ブチルアルデヒドを含む水のHPLCクロマトグラム。
【図9】n−ブチルアルデヒドを含む水に図1示の装置で得られた電解水を作用させたときのHPLCクロマトグラム。
【図10】図8示のHPLCクロマトグラムの主要ピークの分光スペクトラム。
【図11】図9示のHPLCクロマトグラムの主要ピークの分光スペクトラム。
【符号の説明】
1…隔膜、 3…第1の電解槽(第2の電解槽)、 5(6)…陰極板、 6(5)陽極板。

Claims (5)

  1. イオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第1の電解槽に塩化物よりなる電解質を含む原水を供給して電解し、該第1の電解槽の陰極側から得られた電解水のみを、さらにイオン透過性の隔膜を介して陽極板と陰極板とを設けた第2の電解槽の陽極側で電解することによりハイドロキシルラジカルを生成せしめ、該ハイドロキシルラジカルを含む電解水を有機物を含む水に添加して該ハイドロキシルラジカルを該有機物に作用させることにより該有機物を分解することを特徴とする有機物の分解処理方法。
  2. 前記有機物は芳香族化合物であることを特徴とする請求項1記載の有機物の分解処理方法。
  3. 前記芳香族化合物はフェノール類であることを特徴とする請求項2記載の有機物の分解処理方法。
  4. 前記フェノール類は、p−ターシャリーブチルフェノールまたはビスフェノールAであることを特徴とする請求項3記載の有機物の分解処理方法。
  5. 前記有機物は脂肪族化合物であることを特徴とする請求項1記載の有機物の分解処理方法。
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