JP3925651B2 - 選別機能付き曳き網 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、底曳き網漁または船曳き網漁等の曳き網漁に用いられる選別機能付き曳き網に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、魚を捕獲する漁法の一種として、船によって曳き網を海底において曳いて海底の魚を捕獲する底曳き網漁、または前記曳き網を海の中層または表層において曳いて中層等の魚を捕獲する船曳き網漁等の曳き網漁法が知られている。
【0003】
この曳き網漁法において使用される曳き網は、一般に開口部を有する袋状の身網を有し、前記開口部の両側縁部には、一対の曳き綱が接続されている。
【0004】
この曳き網を底曳き網漁に用いる場合、前記開口部における海面側の縁部には複数の浮子が配設され、また前記開口部における海底側の縁部にチェーン等からなる重りが配設される。この曳き網における前記各曳き綱の一端部を船によって曳くと、前記身網の開口部における海底側の縁部を海底において這わせるとともに前記開口部における海面側の縁部を各浮子によって海面側に浮き上がらせて前記開口部を大きく開口させながら前記身網を海底において移動させることができる。そして、前記開口部から海底の魚を前記身網の内部に入網させることにより、前記曳き網を用いて海底の魚を捕獲していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記曳き網漁において曳き網を用いて魚を捕獲する場合、身網を海中において移動させると、捕獲対象とすべき大きさまたは種類の魚のみならず前記身網の開口部付近の魚を全て捕獲してしまうこととなり、漁業資源の保護上好ましくなかった。
【0006】
このため、前記漁業資源の保護の観点より、前記捕獲した魚の中から捕獲対象とすべきの大きさまたは種類の魚とは異なる例えば小型の魚を選別して海に戻すということも行われている。しかし、前記捕獲した魚の中から捕獲対象ではない魚を選別する作業は手間がかかり、また選別できたとしても一度水揚げしてしまった魚は弱ってしまうので海に戻すのは困難であった。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、水揚げ前に海中において捕獲対象の魚と同種類または異なる種類の魚であって前記捕獲対象の魚の大きさよりも小型の魚を前記捕獲対象の魚から選別し、海に戻すことができる選別機能付き曳き網を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る選別機能付き曳き網は、開口部を有する袋状に形成された身網と、前記身網に形成され同じ遊泳水深の魚について捕獲対象魚と捕獲対象魚よりも小さい魚とを選別して、前記捕獲対象魚よりも小さい魚を前記身網から逃す少なくとも1つの選別用開口部と、前記身網の外側において前記選別用開口部における前記開口部側の縁部に沿いながら前記身網の外面に対向するように配設された外網と、前記身網と前記外網との間に配設され、前記身網と前記外網との間に前記選別用開口部の周縁部から前記外網における前記開口部側の縁部に対向する他縁部に通じる通路を構成するポケット網とを有することを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、魚が開口部から身網の内部に入網して選別用開口部に到達したとき、捕獲対象の魚は、前記選別用開口部および前記選別用開口部の周縁部に接続されたポケット網を認識して前記ポケット網から逃げるために前記身網の内部方向に移動する。これにより、捕獲対象の魚は前記身網の内部の奥側に誘導される。一方、前記捕獲対象の魚よりも小さい魚は、前記選別用開口部および前記ポケット網を認識しないため、前記選別用開口部から前記身網の外部に抜け出すことができる。これにより、前記選別機能付き曳き網は、海中において捕獲対象の魚を、それよりも小さい魚と選別し、これら小さい魚を海中に戻すことができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明に係る選別機能付き曳き網は、前記選別用開口部を、前記身網における海底側の面に形成したことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明に係る選別機能付き曳き網は、前記選別用開口部を、前記開口部における縁部の一部分に形成したことを特徴とする。
【0012】
この請求項2および請求項3に記載の発明によれば、カレイ等の海底に生息する魚が開口部から身網の内部に入網しようとして選別用開口部に到達したとき、捕獲対象の魚は、前記選別用開口部および前記選別用開口部の周縁部に接続されたポケット網を認識して前記ポケット網から逃げるために浮上し、この結果前記身網の内部奥側に移動する。一方、前記捕獲対象の魚よりも小さい魚は、前記選別用開口部および前記ポケット網を認識しないため、前記選別用開口部から前記身網の外部に抜け出すことができる。これにより、前記選別機能付き曳き網は、海中において捕獲対象の魚をそれよりも小さい魚と選別し、これら小さい魚を海中に戻すことができる。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明に係る選別機能付き曳き網は、前記身網の内部であって前記選別用開口部の縁部における前記身網の奥側の部分に浮子を配設し、前記選別用開口部における前記開口部側の縁部に重りを配設したことを特徴とする。
【0014】
この請求項4に記載の発明によれば、前記浮子によって前記選別用開口部の縁部における前記身網の奥側の部分を海中において浮上させるとともに、前記重りによって前記選別開口部における前記開口部側の縁部を海底に接触させることができ、これにより、海中において前記選別用開口部を確実に開口させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る選別機能付き曳き網の実施形態を図1から図3を参照して説明する。ここで、本実施形態においては、曳き網漁としてのカレイ漁に用いられる底曳き網について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る選別機能付き曳き網の一実施形態を示す斜視図であり、図1に示すように、本選別機能付き曳き網1は、略円錐形状であってその円形面が開口された袋部2と、前記袋部2の開口縁における両側部分に前記略円錐形状の傾斜に沿って延設された一対の袖部3とを有する身網4を備えている。そして、前記袋部2の開口縁から前記各袖部3の縁部に沿った周縁部は、前記身網4の開口部5とされている。
【0017】
また、前記開口部5における海面側の周縁部には、複数の浮子7が配設されており、一方、前記開口部5における海底側の周縁部であって前記袋部2の開口縁に相当する入網部8には、チェーン等からなる重り9が配設されている。そして、前記開口部5における海面側の周縁部が前記各浮子7の浮力によって海面側に浮き上がるとともに、前記開口部5における入網部8が重りによって海底に接触することにより、前記身網4の開口部5は海中において開口するようになっている。
【0018】
さらに、前記袋部2には、前記入網部8に沿って前記袋部2の奥側の方向に向かって尖形状の複数(本実施形態においては3つ)の選別用開口部11が形成されており、これら各選別用開口部11における先端縁の開口幅は、捕獲対象の大型の魚が認識可能であって捕獲対象ではない小型の魚が認識不可能な開口幅寸法によって形成されている。なお、前記選別用開口部11の形状および数量は、本実施形態のものに限定されるものではない。
【0019】
また、図2および図3に示すように、前記身網4の海底側の面には、前記身網4の海底側の面の一部に対向するように四角形状の外網12が配設されており、この外網12は、先端縁が前記身網4の開口部5における入網部8に接続されている。この外網12は、前記先端縁に対向する後端縁の両端部と前記身網4の海底側の面の間隙に配置された張りロープ13によって、前記外網12における後端縁が前記身網4の海底側の面と所定の間隙寸法をもって位置するようになっている。また、前記外網12の周縁部にはチェーン等からなる重り14が配設されており、これにより、前記外網12は、その海底側の面が海底に接触するようになっている。
【0020】
さらに、前記身網4と前記外網12との間には、一角が鋭角の四角形状からなる複数のポケット網16が配設されており、それぞれ一対の各ポケット網16によって前記各選別用開口部11の周縁部から前記身網4と前記外網12との後端部分に通じる複数の通路が形成されている。詳しくは、前記一対のポケット網16のうち一方のポケット網16aは、前記鋭角部分が前記身網4の開口部5における入網部8に接し、前記各ポケット網16aにおける一辺が前記各選別用開口部11のうち前記先端縁に隣接する一辺に接続され、前記各ポケット網16aの一辺に隣接する辺が前記身網4における海底側の面に接続されるとともに、前記各ポケット網16aの一辺に隣接する他辺が前記外網12の海面側の面に接続されている。また、前記一対のポケット網16のうち他方のポケット網16bは、前記鋭角部分が前記身網4の開口部5における入網部8に接し、前記各ポケット網16bにおける一辺が前記各選別用開口部11のうち前記先端縁に隣接する他辺に接続され、前記各ポケット網16bの一辺に隣接する辺が前記身網4における海底側の面に接続されるとともに、前記各ポケット網16bの一辺に隣接する他辺が前記外網12の海面側の面に接続されている。そして、前記各ポケット網16a,16bの後端部は開口されている。
【0021】
具体的に本実施形態においては、前記外網12は、先端縁および後端縁の幅寸法がそれぞれ4.0mであって、長さ寸法が3.5mに形成されている。また、前記各選別用開口部11は、それぞれ先端縁の開口幅寸法が1.2mであって、前記先端縁に隣接する各辺の寸法が1.33mに形成されている。
【0022】
さらにまた、前記身網4の内部であって前記各選別用開口部11の縁部における前記身網4の奥側の部分および前記各ポケット網16の後端部に相当する位置には、それぞれ浮子19,20が配設されている。これにより、前記各浮子19によって前記各選別用開口部11の縁部における前記身網4の奥側の部分は海中において浮上するとともに、前記重り9によって前記身網4の開口部5における入網部8は海底に接触するので、前記各選別用開口部11は海中において開口するようになっている。さらに、前記各浮子20によって前記身網4における前記各ポケット網16の後端部に相当する部分は海中において浮上するとともに、前記重り14によって前記外網12は海底に接触するので、前記各通路17は海中において開口するようになっている。これにより、前記身網4の内部から前記各選別用開口部11を介して前記各通路17を通過して前記身網4の外に通じるようになっている。
【0023】
また、前記身網4における各袖部3の先端部には、それぞれ2本の綱21を介してそれぞれ1本の曳き綱23が接続されており、前記各曳き綱23の他端部は、図示しない漁船に接続されている。
【0024】
そして、前記選別機能付き曳き網1は、前記各曳き綱23を前記漁船によって曳くことにより、海底にいる魚を前記身網4の開口部5から前記身網4の内部に入網させて、魚を捕獲するようになっている。
【0025】
次に、前記選別機能付き曳き網1の作用について説明する。
【0026】
まず、漁船によって各曳き綱23を曳くと、前記各曳き綱23によって身網4の各袖部3が引っ張られて、前記身網4は、海中において開口部5における海面側の周縁部を各浮子7によって浮き上がらせるとともに前記開口部5における入網部8を重りによって海底に接触させて前記開口部5を開口しながら移動する。
【0027】
すると、海底にいたカレイ等は、前記開口部5から前記身網4の内部に入網する。このとき、捕獲対象の大型カレイは、前記開口部5における入網部8において各選別用開口部11に到達したとき、カレイの習性により前記選別用開口部11の一辺に接続された各ポケット網16を認識して前記各ポケット網16から逃げるために浮上してしまう。この結果、前記大型カレイは、前記身網4の内部の奥の方に入っていくこととなる。一方、捕獲対象の魚より小さい小型カレイまたは異なる種類の魚であって前記大型カレイの幅寸法よりも小さい幅寸法の魚は、前記各選別用開口部11に到達しても前記各ポケット網16を認識しないため、前記各通路17を通過して前記身網4の外に抜け出すことができる。
【0028】
このように本実施形態によれば、捕獲対象の大きさの大型カレイを身網4の内部の奥の方に誘導することができるとともに、小型カレイや他の前記大型カレイの最大幅寸法よりも小さい幅寸法の異なる種類の魚を前記身網4の内部から外へ抜け出させることができ、これにより海中において前記大型のカレイを前記小型カレイ等から選別することができる。
【0029】
したがって、捕獲対象の大型カレイではない他の小型カレイや他の小魚等を無差別かつ大量に捕獲してしまうことを防止することができ、この結果、漁業資源の保護を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0031】
例えば、本実施形態においては、選別用開口部11は身網4の開口部5における入網部8に沿って形成されているが、これに限定されるものではない。
【0032】
また、身網4の形状も、本実施形態における形状に限定されるものではない。
【0033】
さらに、本実施形態においては選別機能付き曳き網1として底曳き網を用いてカレイ漁をする場合について説明したが、これに限定されず、異なる魚種の底曳き網漁や船曳き網漁等の他の曳き網漁に用いることもできる。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1、請求項2および請求項3に記載の発明に係る選別機能付き曳き網によれば、捕獲対象の魚とそれよりも小型の魚とを海中において選別し、前記小型の魚をそのまま海中に戻すことができるので、無差別かつ大量に魚を捕獲してしまうことを防止することができ、この結果、漁業資源の保護を図ることができる。
【0035】
また、請求項4に記載の発明に係る選別機能付き曳き網によれば、選別用開口部を確実に開口させることができるので、捕獲対象の魚よりも小型の魚はより容易に前記選別開口部から身網の外部に抜け出すことができる。この結果、前記選別機能付き曳き網は、より確実に捕獲対象の魚よりも小型の魚を海中に戻すことにより、漁業資源の保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る選別機能付き曳き網の一実施形態を示す斜視図
【図2】 図1の選別機能付き曳き網に配設された選別用網を示す拡大図
【図3】 図1の選別機能付き曳き網を示すA−Aにおける断面図
【符号の説明】
1 選別機能付き曳き網
4 身網
5 開口部
8 入網部
11 選別用開口部
12 外網
13 張りロープ
14 重り
16 ポケット網
17 通路
23 曳き綱

Claims (4)

  1. 開口部を有する袋状に形成された身網と、
    前記身網に形成され同じ遊泳水深の魚について捕獲対象魚と捕獲対象魚よりも小さい魚とを選別して、前記捕獲対象魚よりも小さい魚を前記身網から逃す少なくとも1つの選別用開口部と、
    前記身網の外側において前記選別用開口部における前記開口部側の縁部に沿いながら前記身網の外面に対向するように配設された外網と、
    前記身網と前記外網との間に配設され、前記身網と前記外網との間に前記選別用開口部の周縁部から前記外網における前記開口部側の縁部に対向する他縁部に通じる通路を構成するポケット網とを有することを特徴とする選別機能付き曳き網。
  2. 前記選別用開口部を、前記身網における海底側の面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の選別機能付き曳き網。
  3. 前記選別用開口部を、前記開口部における縁部の一部分に形成したことを特徴とする請求項2に記載の選別機能付き曳き網。
  4. 前記身網の内部であって前記選別用開口部の縁部における前記身網の奥側の部分に浮子を配設し、前記選別用開口部における前記開口部側の縁部に重りを配設したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の選別機能付き曳き網。
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