JP3925047B2 - 計算機ホログラム及びその作成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録カード等の光記録媒体の真贋判定や偽造防止等に好適なデータ記録形態である計算機ホログラムの作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
計算機ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)とは、計算機を使用して設計された回折格子であり、例えば(O plus E, 96, 11月号,p83)にその最適化手法の一例が記載されている。そして、計算機ホログラムは、所望の回折格子の回折角に対応する回折光配置情報を計算機を使用してフーリエ逆変換することで、回折格子の干渉縞に対応する位相分布を算出し、位相分布に対応する階段状段差を半導体製造技術を応用して基板上に作成して、この階段状段差を光記録媒体に転写することにより作成される。
【0003】
また、この計算機ホログラムを有する光記録媒体及びその製造方法に関しては、特開平10−143929号にて本出願人が開示している。また、この光記録媒体のホログラム動画作成、再生装置としては、本出願人が特願平10−332018号にて出願している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来から知られている計算機ホログラム設計方法を使用してホログラムを形成した場合、本来は図11に示すようなはっきりとした回折像が再生されるべきであるが、実際には、ホログラム再生像の周囲に、図12及び図13に示すような再生像相似形状の繰り返しノイズが再生され、再生像の明瞭性を欠くという課題があった。
【0005】
そこで本発明では、ホログラム再生像からこの再生像相似形状の繰り返しノイズを除去することができる計算機ホログラム設計方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、以下に示す計算機ホログラム及びその作成方法を提供しようとするものである。
【0007】
1.位相変調板への単色光の照射により形成される2次元回折スポットの回折角(XM,YN)を下記の式(3)及び式(4)により算出することにより計算機ホログラムを作成する計算機ホログラムの作成方法において
下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解が虚数解となるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)を設定することを特徴とする計算機ホログラムの作成方法。
【0008】
2.単色光を位相変調板に照射して表示面にホログラム像を再生させるための計算機ホログラムについて、前記位相変調板に形成される2次元回折スポットの回折角(XM,YN)を下記の式(3)及び式(4)により算出することにより前記計算機ホログラムを作成する計算機ホログラムの作成方法において
前記表示面上の再生像投影領域を0次光を中心にして±Xa度及び±Yb度以内に設定し、
下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解がXa及びYbよりも大きくなるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)とを設定することを特徴とする計算機ホログラムの作成方法。
【0009】
3.単色光の照射により、下記の式(3)及び式(4)により算出される回折角(XM,YN)の2次元回折スポットを形成する位相変調板を有した計算機ホログラムにおいて、
下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解が虚数解となるような、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)とを設定したことを特徴とする計算機ホログラム。
【0010】
4.単色光を下記の式(3)及び式(4)により算出される回折角(XM,YN)の2次元回折スポットを形成する位相変調板に照射して表示面にホログラム像再生するための計算機ホログラムにおいて、
前記表示面上の再生像投影領域を0次光を中心にして±Xa度及び±Yb度以内に設定すると共に
下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解がXa及びYbよりも大きくなるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)と設定したことを特徴とする計算機ホログラム。
【0011】
【数5】
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の計算機ホログラムの作成方法は、計算機ホログラムの位相変調板(フェーズ・シフタ)を構成する画素サイズ(位相変調板に形成する干渉縞のパターン幅最小増分単位)を決定する際に後述する式(3)及び式(4)を使用して、照明光波長λ、及び画素サイズa,bの設定値を、式(1)(2)の解(1次回折角)が虚数解となるように決定することにより、繰り返し再生像ノイズの無い計算機ホログラムを設計する方法である。
【0013】
計算機ホログラムの再生像は回折スポットの集合で構成されており、回折スポットが複数個集まって再生画像となる。各々の回折スポットの2次元回折角は、計算機ホログラムの画素数及び画素サイズによって制御される回折角次数に対応している。例えば、図1に示すように計算機ホログラム面をm×n個の画素で分割して位相分布を1画素単位で形成し、1画素サイズをa×bとしたときの回折角次数について説明する。図2は回折角次数の説明をするために計算機ホログラム面から出力される0次光及び高次光(2次光)の例を示す図である。このとき得られる2次元回折スポットの回折角(XM,YN)は次式(3)(4)によって得ることができる。
【0014】
【数6】
【0015】
例えば、計算機ホログラムの大きさを500×500μmとし、露光波長0.633μmの赤色レーザ光を照射することによって、図11に示すように再生画角X:±5度、Y:±5度で再生像を得る方法を考えてみる。パラメータをm×a=n×b=500μm,λ=0.633μmと設定して式(1)(2)を計算すると、M、Nが69のとき、XM=YN=5.01度となる。この結果、±69次の回折光が±5度の回折角に対応していることが分かる。したがって、この条件で計算機ホログラムを設計する場合は、再生像を±69個(総数は0次分1個を加えて139個となる)の回折スポットに割り付けて、2次元再生像(振幅分布)データを作成する。次に、計算機ホログラムの1辺の画素数であるパラメータm、nを決定する。これは、例えば1画素の大きさを1.0μmとすると、a=b=1となるので、画素数はm=n=500となる。また、1画素の大きさを2.0μmとすると、a=b=2となるので、画素数はm=n=250となる。
【0016】
また、各々の画素に対応する位相分布は、2次元再生像データを2次元フーリエ逆変換を行って求めることができる。このとき算出される位相値は0から2πまで任意の値を取っている。そして、この位相値に対応する光学的深さの溝を位相変調板として媒体上に形成することにより計算機ホログラムを形成することになるが、この溝は半導体製造技術を応用して基板上に作成してから光記録媒体に転写しているので、現在の微細加工技術を使用しても、任意の場所に任意の深さをエッチングすることは非常に困難であり、位相を特定の値に丸め込む量子化が必要になる。
【0017】
図3は0から2πまで任意に発生する位相値を4値に量子化する例を説明するための図である。ここでは、 位相の1周期を4分割し、分割範囲に存在する位相値を分割の中心値である0、1/2π、π、3/2πに量子化している。そして、この量子化された位相値に基づいて透過位相型4値計算機ホログラムを作成すると、その構造は図4の断面図に示すようなものとなる。この図4に示す計算機ホログラムは、光透過性の樹脂1に、光学的深さ1/2π、π、3/2πに対応して位相変調を起こさせる位相変調板(フェーズ・シフタ)2が3段設けられた構造となっており、この計算機ホログラムに可干渉性の照明光(レーザ等)3を照射すると、位相変調が生じて透過回折光4による再生像(回折象)が出現する。
【0018】
このときの透過位相型計算機ホログラムにおける位相変調板の1段当たりの深さ dは次式(5)で求めることができる。
【0019】
【数7】
【0020】
ここで、例えば量子化数5で、ポリカーボネート媒体(屈折率n=1.58)を空気中(屈折率n=1.00)で使用し、波長0.65μmの赤色レーザを照明する場合を想定すると、ポリカーボネート媒体に形成する、位相変調板の1段当たりの深さdは式(5)から0.224μmとなる。なお、最も単純な計算機ホログラムは量子化数2であり、量子化数を多くするほど回折効率が向上するが、製造工程が複雑化することになる。
【0021】
図9に上記の方法で設計製作した透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像を示し、図10にその位相分布、図13にその実際の再生像をそれぞれ示す。なお、設計パラメータは、a=b=2μm、m=n=250、λ=0.633μmである。このとき、実際の再生像を示す図13には計算上得られる再生像の周囲に、再生像相似形状の繰り返しノイズも再生され、再生画像を乱していることが分かる。
【0022】
また、設計パラメータをa=b=1μm、m=n=500、λ=0.633μmとしたときの上記の方法で設計製作した透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像を図7に示し、図8にその位相分布、図12にその実際の再生像をそれぞれ示す。この場合においても、実際の再生像を示す図12には計算上得られる再生像の周囲に、再生像相似形状の繰り返しノイズが再生され、再生画像を不明瞭にしていることが分かる。
【0023】
ここで、図13の繰り返しノイズを観察すると、中心に0次光の繰り返しノイズを観察することができる。この回折角を測定すると、±18.45度、±39.27度である。この回折角は式(3)において、a=2μm、m=1、M=±1または±2、λ=0.633μmと設定したときの計算値に一致する。すなわち、計算機ホログラムの各画素1個1個(画素サイズ;2.0μm)が各々ホログラムとして機能し、高次のノイズを再生していることが分かる。
【0024】
さらに、図12の繰り返しノイズを観察すると、同様に0次光の繰り返しノイズを観察することができ、この回折角を測定すると、±39.27度である。この回折角は式(3)において、a=1μm、m=1、M=±1、λ=0.633μmと設定したときの計算値に一致する。したがって、この場合も、計算機ホログラムの各画素1個1個(画素サイズ;1.0μm)が各々ホログラムとして機能し、高次のノイズを再生していることが分かる。
【0025】
以上のことから、繰り返しノイズの発生を抑えるには、画素サイズ(a,b)及び照明光波長(λ)を調整して、各々の画素からノイズとなる回折光が発生しないようにすれば良いことが分かる。すなわち、式(1)(2)において、1つの画素について計算したときに、1次回折角の解が虚数となるように、画素サイズ(a,b)、 照明光波長(λ)を設定すれば、ノイズとなる回折光が発生しないことになる。
【0026】
図14に画素サイズを0.10〜1.05μm、照明光波長を0.40〜0.58μmまで変化させたときの式(1)(2)による1次光回折角計算値を示し、図15には画素サイズを同じく0.10〜1.05μmのときに、照明光波長を0.60〜0.78μmまで変化させたときの式(1)(2)による1次光回折角計算値を示す。ここで、回折角の単位は度であり、「I」と表示されている部分は計算結果が虚数となっていることを示す。したがって、「I」で示される領域内に収まるように計算機ホログラムを作成すれば、理論的には繰り返しノイズが発生しないことになる。
【0027】
例えば、照明光波長0.52μmの場合は、図14から(または、式(1)(2)から)画素サイズが0.50μm以下であれば画素による回折光は発生せず、繰り返しノイズが発生しないことになる。この理論確認のため、画素サイズ0.50μm、照明光波長0.52μmで設計製作した透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像を図5に示し、図6にその位相分布、図11にその実際の再生像を示した。図11に示す再生像から明らかなように、本発明により設計された計算機ホログラムは繰り返しノイズが発生せず、明瞭な再生像が得られる。
【0028】
以上の実施の形態では、計算機ホログラムに単色光を照射したときに得られる再生像を投影するスクリーン又は受像装置において、再生像投影領域を制限しない場合について説明した。しかしながら、繰り返しノイズが発生しても、スクリーン又は受像装置上の再生像投影領域以外の部分に繰り返しノイズを逃がす様に計算機ホログラムを設計すれば、実質的に繰り返しノイズのない再生像を得ることができる。すなわち、スクリーン又は受像装置上の再生像投影領域を制限し、繰り返しノイズはその再生像投影領域以外の部分に表れるようにすると共に、その再生像投影領域内に再生像を投影することにより、見かけ上再生像には繰り返しノイズが見えなくなる。これは、再生像投影領域を0次光を中心にして±Xa度、±Yb度以内としたときに、1つの画素について式(1)(2)を計算したときの1次回折角の解がXa、Ybよりも大きくなるように、画素サイズ(a,b)、 照明光波長(λ)を設定すれば、ノイズとなる回折光が再生像投影領域内に発生しないことになる。
【0029】
例えば照明光波長0.40μmで再生像投影領域が0次光を中心としてX、Yともに±30度以内とした場合、図14から(または、式(1)(2)から)画素サイズが0.80μm以下であれば画素による1次回折角は30度以上となり、再生像投影領域内に繰り返しノイズが発生しないことになる。
【0030】
したがって、このような方法により計算機ホログラムを設計しても実質的に繰り返しノイズの発生しない再生像を得ることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の計算機ホログラムの作成方法は、繰り返しノイズが発生しない明瞭な再生画像を得ることができる計算機ホログラムを設計することができる。
【0032】
また、本発明の計算機ホログラムは、繰り返しノイズが発生しない明瞭な再生画像を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の計算機ホログラムの作成方法の一実施の形態を説明するための計算機ホログラム面を画素分割した状態を示す図である。
【図2】回折角次数の説明をするために計算機ホログラム面から出力される0次光及び高次光(2次光)の例を示す図である。
【図3】0から2πまで任意に発生する位相値を4値に量子化する例を説明するための図である。
【図4】透過位相型4値計算機ホログラムの例を示す断面図である。
【図5】本発明による透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像の例を示す図である。
【図6】本発明による透過位相型2値計算機ホログラムの位相分布の例を示す図である。
【図7】透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像の例を示す図である。
【図8】透過位相型2値計算機ホログラムの位相分布の例を示す図である。
【図9】透過位相型2値計算機ホログラムの設計再生像の例を示す図である。
【図10】透過位相型2値計算機ホログラムの位相分布の例を示す図である。
【図11】本発明による透過位相型2値計算機ホログラムの実際の再生像の例を示す図である。
【図12】透過位相型2値計算機ホログラムの実際の再生像の例を示す図である。
【図13】透過位相型2値計算機ホログラムの実際の再生像の例を示す図である。
【図14】画素サイズ及び照明光波長を変化させたときの1次光回折角計算値を示す図である。
【図15】画素サイズ及び照明光波長を変化させたときの1次光回折角計算値を示す図である。
【符号の説明】
1 光透過性の樹脂
2 位相変調板(フェーズ・シフタ)
3 照明光
4 透過回折光

Claims (4)

  1. 位相変調板への単色光の照射により形成される2次元回折スポットの回折角(XM,YN)を下記の式(3)及び式(4)により算出することにより計算機ホログラムを作成する計算機ホログラムの作成方法において
    下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解が虚数解となるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)を設定することを特徴とする計算機ホログラムの作成方法。
  2. 単色光を位相変調板に照射して表示面にホログラム像を再生させるための計算機ホログラムについて、前記位相変調板に形成される2次元回折スポットの回折角(XM,YN)を下記の式(3)及び式(4)により算出することにより前記計算機ホログラムを作成する計算機ホログラムの作成方法において
    前記表示面上の再生像投影領域を0次光を中心にして±Xa度及び±Yb度以内に設定し、
    下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解がXa及びYbよりも大きくなるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)とを設定することを特徴とする計算機ホログラムの作成方法。
  3. 単色光の照射により、下記の式(3)及び式(4)により算出される回折角(XM,YN)の2次元回折スポットを形成する位相変調板を有した計算機ホログラムにおいて、
    下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解が虚数解となるような、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)とを設定したことを特徴とする計算機ホログラム。
  4. 単色光を下記の式(3)及び式(4)により算出される回折角(XM,YN)の2次元回折スポットを形成する位相変調板に照射して表示面にホログラム像再生するための計算機ホログラムにおいて、
    前記表示面上の再生像投影領域を0次光を中心にして±Xa度及び±Yb度以内に設定すると共に
    下記の式(1)及び式(2)により算出される単一画素についての1次回折角(X,Y)の解がXa及びYbよりも大きくなるように、前記単色光の波長(λ)と前記位相変調板を構成する画素サイズ(a,b)と設定したことを特徴とする計算機ホログラム。
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