以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図6を参照して説明する。図1は大腸内視鏡検査練習装置のセット1全体の概略構成を示すものである。この大腸内視鏡検査練習装置セット1にはキャリングケース2が設けられている。このキャリングケース2には本実施の形態の大腸内視鏡検査練習装置の練習器具3がその周辺器具と一緒に収容されている。
また、キャリングケース2にはケース本体2aと、このケース本体2aの蓋部2bとが設けられている。そして、ケース本体2aの一端部にヒンジ部2cを介して蓋部2bが開閉可能に連結されている。
さらに、キャリングケース2のケース本体2aには大腸内視鏡検査練習装置の練習器具3と、練習用大腸内視鏡4と、取り扱い説明書5と、解説ビデオ6と、潤滑剤ボトル7と、専用ビーカー8と、交換用の肛門シール部材9とがそれぞれ収容される複数の凹陥状の収容凹部10が形成されている。そして、このケース本体2aの各収容凹部10には大腸内視鏡検査練習装置の練習器具3と、練習用大腸内視鏡4と、取り扱い説明書5と、解説ビデオ6と、潤滑剤ボトル7と、専用ビーカー8と、交換用の肛門シール部材9とがそれぞれ位置決めされた状態で収容されている。なお、解説ビデオ6は医学的な処置の指導、解説などを行うもので、CD−ROM、DVD−ROMなど他の記憶メディアであってもよい。
また、図2は本実施の形態の大腸内視鏡検査練習装置の練習器具3の概略構成を示すものである。この練習器具3には上面が開口された略箱型のケーシング13が設けられている。このケーシング13には上面開口部を開閉する2枚重ねのシート状の蓋14,15が上面開口部の一側部に取付けられている。ここで、外蓋14は不透明なシート、内蓋15は透明シートによってそれぞれ形成されている。
さらに、ケーシング13の上面開口部の周縁部位には各蓋14,15の取付け部とは反対側の側部に面ファスナであるマジックテープ(登録商標)16が複数取付けられている。ここで、内蓋15の自由端側の内面にはケーシング13のマジックテープ(登録商標)16と対応する位置にマジックテープ(登録商標)17がそれぞれ取付けられている。同様に、外蓋14の自由端側の内面にはケーシング13のマジックテープ(登録商標)16と対応する位置にマジックテープ(登録商標)18がそれぞれ取付けられている。そして、ケーシング13のマジックテープ(登録商標)16には内蓋15のマジックテープ(登録商標)17、或いは外蓋14のマジックテープ(登録商標)18のいずれか一方が選択的に係脱可能に係合されるようになっている。なお、内蓋15の自由端側の外面にケーシング13のマジックテープ(登録商標)16と同様のマジックテープ(登録商標)16を装着し、外蓋14のマジックテープ(登録商標)18が内蓋15の自由端側の外面のマジックテープ(登録商標)16に係脱可能に係合される構成にしてもよい。
また、ケーシング13の内部には大腸モデル19と、クッション22とが装着されている。この大腸モデル19は例えばゴムや樹脂材料などの伸縮自在で気密な弾性膜によって実物と同じように形成されている。
すなわち、この大腸モデル19には図3に示すように直腸部25、S字結腸部26、S/D屈曲部27、下行結腸部28、脾湾曲部29、横行結腸部30、肝湾曲部31、上行結腸部32、盲腸部33が順次形成されている。また、盲腸部33には回腸部34が突設されている。そして、この回腸部34の端末部には完全気密ではなく、気体の流動を抑制する流体規制部35が形成されている。この流体規制部35は例えばエアーを徐々に逃がす程度の多孔質シートによって形成されている。
また、大腸モデル19には複数の取付け用の凸片36が突設されている。ここで、ケーシング13の底板13aには大腸モデル19の固定用の複数のねじ穴38が形成されている。そして、大腸モデル19の各凸片36は固定ねじ37によって任意の位置のねじ穴38にねじ止め固定されている。ここで、大腸モデル19の各凸片36のねじ止め位置を変化させることにより、体格が異なる複数種類の患者の大腸の状態を再現することができるようになっている。
また、ケーシング13の内部のクッション22は例えばケーシング13の底板13aと、大腸モデル19の横行結腸部30との間に介設されている。このクッション22には流体注入口24が突設されている。さらに、図2に示すように内蓋15にもクッション23が装着されている。このクッション23も同様に流体注入口24が突設されている。そして、流体注入口24から各クッション22、23にそれぞれ流体を注入することにより、各クッション22、23の膨張量を任意に調整可能になっている。このとき、各クッション22、23の膨張量を変化させることにより、腹壁の厚さが異なるなど体格が異なる複数種類の患者の大腸の状態を再現することができるようになっている。
また、練習器具3のケーシング13の周壁部には図3に示すように上部壁部13bに取っ手3a、下部壁部13cに大腸内視鏡4を挿入する内視鏡挿通孔(挿入口部)21がそれぞれ設けられている。この内視鏡挿通孔21は下部壁部13cの略中央位置に配置されている。
さらに、ケーシング13の下部壁部13cには図4に示すように内視鏡挿通孔21の位置に肛門シール部材20の取付け用の開口部13dが形成されている。この開口部13dには肛門シール部材20が取付けられている。
この肛門シール部材20には開口部13d内に挿入される円筒体20aが設けられている。そして、この円筒体20aの内腔によって人体の肛門部に対応する内視鏡挿通孔(挿入口部)21が形成されている。
また、肛門シール部材20の円筒体20aの基端部にはケーシング13の開口部13dよりも大径なフランジ部20bが形成されている。このフランジ部20bにはねじ挿通孔20cが形成されている。
さらに、ケーシング13の開口部13dの周縁部位には肛門シール部材20の取付け用のねじ穴13eが形成されている。そして、フランジ部20bのねじ挿通孔20cに挿入された固定ねじ59がケーシング13のねじ穴13eに螺着されることにより、肛門シール部材20がケーシング13の開口部13dの周縁部位に着脱可能に取付けられている。
さらに、肛門シール部材20の円筒体20aの先端部はケーシング13の開口部13dの外側(ケーシング13の内部側)に延出されている。この円筒体20aの延出部の外周面には大腸モデル接続用の雄ねじ部20dが形成されている。
また、大腸モデル19における直腸部25の下端部には大腸内視鏡4の挿入用の開口部25aが形成されている。この内視鏡挿入用の開口部25aには練習器具3の肛門シール部材20に接続される接続部40が設けられている。
また、図4はケーシング13の肛門シール部材20と、大腸モデル19の内視鏡挿入用開口部25aとの接続部40の内部構成を示すものである。ここで、大腸モデル19における内視鏡挿入用開口部25aの周縁部位には内周面側に内リング51、外周面側に外リング52がそれぞれ嵌着されている。そして、内リング51と、外リング52との間に大腸モデル19における内視鏡挿入用開口部25aの周縁部位が挟持されている。ここで、外リング52の外径寸法は肛門シール部材20の円筒体20aの内径寸法と略同径に設定されている。さらに、この外リング52の基端部には肛門シール部材20の円筒体20aよりも大径なフランジ部52aが突設されている。
また、外リング52の外側にはケーシング13側の肛門シール部材20との接続用の固定リング53が配設されている。この固定リング53の内周面には肛門シール部材20の雄ねじ部20dと螺合する雌ねじ部53aが形成されている。さらに、この固定リング53の基端部には内部側に屈曲されたリング状等の係合凸部53bが突設されている。この係合凸部53bの内径寸法は外リング52のフランジ部52aよりも小径に設定されている。これにより、固定リング53は外リング52の外側で回転自在に支持されるとともに、固定リング53の係合凸部53bと外リング52のフランジ部52aとの係合部によって固定リング53が外リング52から抜け落ちることが防止されている。
そして、大腸モデル19の外リング52が肛門シール部材20の円筒体20aの内部に挿入された状態で、外リング52の外側の固定リング53がケーシング13側の肛門シール部材20の雄ねじ部20dにねじ込まれることにより、大腸モデル19における内視鏡挿入用開口部25aの周縁部位がケーシング13側の肛門シール部材20に着脱可能に連結されるようになっている。
また、練習用の大腸内視鏡4には細長い挿入部41と、この挿入部41の基端部に連結された手元側の操作部42とが設けられている。さらに、挿入部41には細長い軟性部45と、この挿入部41の最先端に配置された先端部43と、この先端部43と軟性部45との間に介設された湾曲部44とがそれぞれ設けられている。
また、練習用の大腸内視鏡4の操作部42には湾曲部44を湾曲操作する図示しない操作機構が装着されているとともに、ユニバーサルコード46の基端部が連結されている。このユニバーサルコード46の先端部にはコネクタ47が連結されている。このコネクタ47は光源装置48に連結されている。そして、光源装置48から出射される照明光がユニバーサルコード46から大腸内視鏡4の操作部42内および挿入部41内に延設されたライトガイドファイバを介して先端部43に伝送され、先端部43の照明光学系から外部に出射されるようになっている。
また、コネクタ47には電気信号を伝送する接続コードの一端部が連結されている。この接続コードの他端部はビデオプロセッサ49に接続されている。さらに、ビデオプロセッサ49にはモニタ50が接続されている。そして、先端部43の観察光学系で撮影された内視鏡像がCCDなどの撮像素子によって電気信号に変換されたのち、CCDなどの撮像素子からの出力信号がコネクタ47から接続コードを介してビデオプロセッサ49に入力されるようになっている。さらに、このビデオプロセッサ49からの出力信号はモニタ50に入力され、大腸内視鏡4によって撮影された内視鏡像がモニタ50の画面に表示されるようになっている。
また、コネクタ47には吸引チューブ62の一端が接続されている。この吸引チューブ62の他端は吸引ポンプ63に接続されている。なお、大腸内視鏡4の挿入部41には図7に示すように吸引管路61と、送気管路64とが形成されている。そして、吸引管路61には吸引チューブ62が接続されるようになっている。
また、肛門シール部材20の円筒体20aの内部には内視鏡挿通孔21から大腸モデル19に挿入される大腸内視鏡4の挿入時に大腸内視鏡4の挿入部41を所定の気密状態を保ちながら挿通させる例えばゴムなどの軟性のシール部55が設けられている。このシール部55には図5に示すように円筒状の支持リング55aと、この支持リング55aの内周面における軸方向の略中央位置に内方に向けて突設された薄板状のシール膜55bとが設けられている。さらに、シール膜55bには、中央部位に大腸内視鏡4の挿入部41の外径寸法よりも小径な挿入口55cが形成されている。そして、この挿入口55cの周縁部位には厚肉部57、その外側には薄肉部58がそれぞれ形成されている。
また、本実施の形態の肛門シール部材20にはフランジ部20bの内方向側に円筒体20aの内部側に向けて外側可動範囲規制部54が突設されている。さらに、肛門シール部材20の円筒体20aの内部には内側可動範囲規制部56がシール部55と並設されている。そして、シール部55は外側可動範囲規制部54と内側可動範囲規制部56との間に介設されている。なお、外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56はそれぞれゴムなどの弾性材料で形成されている。
また、外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56の内径は大腸内視鏡4の挿入部41の外径寸法と略同径で、挿入部41の外径寸法よりも若干大径に設定されている。そして、シール部55の前後の外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56によって内視鏡4の挿入部41の軸方向以外の方向への内視鏡4の動きを規制するようになっている。
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の大腸内視鏡検査練習装置の練習器具3の使用時には予め2枚重ねのシート状の外蓋14および内蓋15を開き、ケーシング13の上面開口部を開口させる。この状態で、ケーシング13の内部のねじ穴38にねじ止めされる大腸モデル19の各凸片36のねじ止め位置を好適な位置に設定する。このとき、大腸モデル19の各凸片36のねじ止め位置を適宜、変化させることにより、任意の体格の患者の大腸を再現した状態にセットさせることができる。
続いて、ケーシング13の内部のクッション22や、内蓋15のクッション23の流体注入口24から各クッション22、23にそれぞれ流体を注入する。このとき、各クッション22、23の膨張量を変化させることにより、任意の腹壁の厚さの患者の大腸の状態を再現した状態にセットさせることができる。
その後、2枚重ねのシート状の外蓋14および内蓋15をケーシング13の上面開口部を覆う状態に取付ける。ここで、内蓋15のみをケーシング13の上面開口部を覆う状態に取付けることにより、透明な内蓋15を透過してケーシング13の内部の大腸モデル19の状態を目視することができる。さらに、内蓋15の外に不透明な外蓋14を取付けることにより、ケーシング13の内部の大腸モデル19を目視不能な状態に隠すことができ、実際の人体の状態に近づけることができる。これにより、練習器具3の事前の準備が完了する。
また、上記練習器具3の事前準備が完了したのち、練習器具3による大腸内視鏡4の検査練習が行われる。この大腸内視鏡4の検査練習時には大腸内視鏡4の挿入部41が練習器具3の内視鏡挿通孔21から大腸モデル19の内腔に挿入される操作が行われる。このとき、大腸内視鏡4の挿入部41は練習器具3の内視鏡挿通孔21に真っ直ぐに挿入され、肛門シール部材20の外側可動範囲規制部54、シール部55の挿入口55c、内側可動範囲規制部56に順に挿入される。
そして、大腸内視鏡4の挿入部41がシール部55の挿入口55cを通る際に、シール部55の挿入口55cが大腸内視鏡4の挿入部41によって拡開される状態に弾性変形される。このとき、シール部55の挿入口55cの周縁の厚肉部57は大腸内視鏡4の挿入部41の外径寸法と同径に拡開される。そのため、シール部55の挿入口55cに挿入された大腸内視鏡4の挿入部41には弾性変形した挿入口55cの周縁の厚肉部57が圧接され、大腸内視鏡4の挿入部41とシール部55の挿入口55cとの間が気密にシールされる。
さらに、シール部55の挿入口55c内を通り気密にシールされた大腸内視鏡4の挿入部41は続いて肛門シール部材20の内側可動範囲規制部56内を通り、大腸モデル19の内腔に挿入される。そして、大腸内視鏡4の挿入部41を複雑な形状の大腸モデル19の内腔に挿入させる操作時には大腸内視鏡4の挿入部41の挿入操作と、手元側の操作部42による湾曲部44の湾曲操作との組み合わせによって大腸モデル19の屈曲形状に合わせて大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19の内腔に挿入する操作が行われる。
また、本実施の形態では練習器具3の内視鏡挿通孔21に大腸内視鏡4の挿入部41を挿入させる大腸内視鏡4の挿入部41の挿入作業中、図5に示すように大腸内視鏡4の挿入部41の先端側が下向き方向に移動すると肛門シール部材20の内側可動範囲規制部56の下部と、外側可動範囲規制部54の上部とにそれぞれ当接する。そのため、この当接位置からさらに大腸内視鏡4の挿入部41の先端側が下向き方向に移動する動作が規制される。これにより、大腸内視鏡4の挿入部41が軸方向以外の方向へ移動する動きは肛門シール部材20の外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56によって規制される。
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態では練習器具3のケーシング13の内視鏡挿通孔21に、軟性のシール部55と、内視鏡4の挿入部41の軸方向以外の方向への内視鏡4の動きを規制する外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56を設けている。そのため、練習器具3における大腸内視鏡4の内視鏡挿通孔21から大腸モデル19に挿入される内視鏡4の挿入時に軟性のシール部55によって内視鏡4の挿入部41を所定の気密状態を保ちながら挿通させるとともに、大腸内視鏡4の挿入トレーニング中に、内視鏡挿通孔21に挿入される内視鏡4の挿入部41の軸方向以外の方向への内視鏡4の動きを内視鏡挿通孔21の規制部54、56によって規制することができる。その結果、本実施の形態では練習器具3の内視鏡挿通孔21に大腸内視鏡4の挿入部41を挿入させる挿入作業中に大腸内視鏡4の挿入部41の動きによってシール部55が極端に大きく変形して大腸内視鏡4の挿入部41の外周面との間に隙間ができ、大腸モデル19内の気密状態が保てなくなることを防止することができる。したがって、従来のように大腸内視鏡4のトレーニングの操作で、大腸内視鏡4の挿入部41を動かしていると、すぐにシールが変形して気密状態が保てなくなり、送気・吸引機能が使えなくなることを防止することができる。
また、本実施の形態では外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56をそれぞれゴムなどの弾性材料で形成したので、練習器具3の内視鏡挿通孔21に大腸内視鏡4の挿入部41を挿入させる際に軟性部45よりも湾曲部44における外装部の湾曲ゴムとその固定用の糸巻き部とが太くなる場合であってもこれらの太い部分を外側可動範囲規制部54および内側可動範囲規制部56の弾性変形によって確実に通過させることができる。さらに、これらの規制部54、56でも大腸内視鏡4の挿入部41のシール機能を持たせることができる。そのため、練習器具3の内視鏡挿通孔21に大腸内視鏡4の挿入部41を挿入させる挿入作業中に大腸モデル19内の気密性をさらに高めることができる。
また、本実施の形態ではシール部55の薄板状のシール膜55bに挿入口55cの周縁部位の厚肉部57と、その外側の薄肉部58とをそれぞれ形成したので、大腸内視鏡4の挿入部41のシール時に薄肉部58で大腸内視鏡4の挿入部41の動きを吸収することができる。そのため、厚肉部58が変形せず、大腸モデル19内の気密が保たれる効果がある。
また、本実施の形態では肛門シール部材20を固定ねじ59によってケーシング13の開口部13dの周縁部位に着脱可能に取付けている。そのため、予め大腸内視鏡4の挿入部41の太さが異なる複数種類の大腸内視鏡4にそれぞれ対応する交換用の肛門シール部材9をキャリングケース2の収容凹部10に準備しておくことにより、挿入部41の太さが異なる大腸内視鏡4の機種を選択した場合でもその大腸内視鏡4の機種の挿入部41の径に対応した肛門シール部材9を選んで練習器具3に取付けることで、気密を保持してトレーニングできる。例えば、図3に示すように挿入部41の太さが標準径の大腸内視鏡4よりも挿入部41aの太さが細い小径な大腸内視鏡4Aを使用する場合にはこの大腸内視鏡4Aの挿入部41aの太さに合わせた専用の交換用の肛門シール部材9を固定ねじ59によってケーシング13の開口部13dの周縁部位に着脱可能に取付ければよい。なお、大腸内視鏡4の機種毎に使用可能な肛門シール部材9を色分けした識別表示部を設ける構成にしてもよい。
さらに、予め図3に示すようにS状結腸検査用大腸モデル39を準備しておくことにより、練習器具3のケーシング13に装着されている大腸モデル19を取外してS状結腸検査用大腸モデル39を練習器具3のケーシング13に付け替えることもできる。
また、キャリングケース2に収容されている潤滑剤ボトル7と、専用ビーカー8とを使用して図6に示すように専用ビーカー8内で潤滑剤ボトル7内の潤滑剤と水とを混合して潤滑溶液60を作り、この潤滑溶液60を練習器具3の使用前に予め練習器具3の内視鏡挿通孔21から大腸モデル19内全体に注入してもよい。そして、大腸モデル19内に注入された潤滑溶液60を内視鏡挿通孔21から排出することにより、大腸モデル19内の内周面全体を簡単に実際の人体の大腸の潤滑状態に近づけることができる。これにより、練習器具3の大腸モデル19内に大腸内視鏡4の挿入部41を挿入させる挿入作業中の操作感覚を実際の人体の大腸への操作感覚に近づけることができる。
さらに、本実施の形態の肛門シール部材20ではシール部55の前後に内側可動範囲規制部56と外側可動範囲規制部54とをそれぞれ配設する構成を示したが、内側可動範囲規制部56と外側可動範囲規制部54とのうちいずれか一方のみを設ける構成にしても良い。
また、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図6参照)の大腸モデル19の構成を次の通り変更したものである。
すなわち、本実施の形態では大腸モデル19の全体に亙り図7に示すように大径部81と小径部82とが交互に並設された略ベローズ状の腸壁部19aが形成されている。この腸壁部19aの大径部81には腸壁の肉厚が大きい外側厚肉部65、小径部82にも同様に腸壁の肉厚が大きい内側厚肉部66がそれぞれ形成されている。さらに、この腸壁部19aの外側厚肉部65と内側厚肉部66との間には腸壁の肉厚が小さい薄肉部67が配設されている。
そこで、本実施の形態では大腸モデル19の腸壁部19aの外側厚肉部65および内側厚肉部66の部分では薄肉部67の部分に比べて強度を高め、変形し難くすることができる。そのため、大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19内に挿入する作業中に、大腸内視鏡4の送気管路64から大腸モデル19内に送気して大腸モデル19を膨らませたり、吸引管路61から大腸モデル19内を吸引して大腸モデル19全体を収縮させるような大腸モデル19全体を変形させる操作を行う際に、大腸モデル19の腸壁部19aの外側厚肉部65と内側厚肉部66との間の薄肉部67の部分を主に変形させ、外側厚肉部65と内側厚肉部66の部分では元の形状のままで保持させることができる。これにより、大腸モデル19全体を軸方向に伸縮動作させることができる。
例えば、大腸モデル19が図7に示すように変形していない初期形状の状態で、大腸内視鏡4の吸引管路61から大腸モデル19内を吸引した際に、図8に示すように大腸モデル19全体が軸方向に縮む状態で大腸モデル19全体を収縮させることができる。したがって、大腸モデル19内を吸引した際に、大腸モデル19全体が平らに潰れる状態に変形することを防止することができるので、大腸内視鏡4の吸引管路61から大腸モデル19内を吸引する際の大腸モデル19の変形動作を実際の人体の大腸の挙動に近づけることができ、大腸内視鏡4の操作のトレーニングを効果的に行うことができる。
また、図9は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図6参照)の大腸モデル19の構成を次の通り変更したものである。
すなわち、本実施の形態では大腸モデル19における回腸部34の端末部の流体規制部35に図9に示すように回腸部34の端末部の開口部の周縁部位に固定された固定リング68と、この固定リング68を閉塞する多孔質シート69とが設けられている。この多孔質シート69は例えば液体を通さず気体を通すことが可能な密に編んだ化学繊維であるゴアテックスフィルム(ゴアテックス社製商品名)や、PTFEを遠心発泡処理したシート等によって形成されている。ここで、大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19内に挿入した際に大腸内視鏡4からの送気量よりも多孔質シート69からのエアーの抜け量が少なくなるように設定されている。なお、多孔質シート69は液体は通さないので、図6に示す潤滑溶液60がこの多孔質シート69からこぼれることはない。
そこで、本実施の形態では大腸モデル19の一部である回腸部34の端末部に、完全気密ではない流体規制部35を設けたので、大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19内に挿入する作業中に、大腸モデル19内にエアーを入れると実際の腸のように、ある程度は大腸モデル19と大腸内視鏡4との間で、大腸モデル19内の気密状態が保たれるが、流体規制部35の多孔質シート69を通過して大腸モデル19内のエアーが徐々に抜けるようにすることができる。そのため、従来の大腸モデルのように、大腸内視鏡と大腸モデルとの間を肛門部のシール構造で完全に気密状態にシールしてしまうと、一旦エアーを入れると、その状態がずっと保たれ、実際の腸とは異なる場合に比べて本実施の形態の大腸モデル19では大腸内視鏡4からの送気によるエアーの流動の状態が、実際の大腸に近くなり、トレーニングに役立つ効果がある。
なお、第1の実施の形態の肛門シール部材20に微小孔を設け、この肛門シール部材20の微小孔を通過して大腸モデル19内のエアーが徐々に抜ける構成にしてもよい。さらに、大腸モデル19内の横行結腸部30を押圧する軟質な臓器モデルを設け、この臓器モデルによって大腸モデル19内のエアーの流動を抑制してエアーが徐々に流れる構成にしてもよい。
また、図10は本発明の第4の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図6参照)の大腸モデル19の構成を次の通り変更したものである。
すなわち、本実施の形態では柔軟な大腸モデル19の内壁面に図10に示すように複数のポリープモデル70が突設されている。これらのポリープモデル70の隆起部には複数の異なる識別マーカー(識別部)71が設けられている。ここで、各識別マーカー71は大腸モデル19内の場所毎にそれぞれ異なる形状、色、番号、記号、文字などが表示されている。
そこで、本実施の形態では大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19内に挿入する作業中に、大腸モデル19の内壁面のポリープモデル70を観察するトレーニングを行うことができる。さらに、各ポリープモデル70の識別マーカー71の形状、色、番号、記号などを目視して確認することにより、大腸モデル19内の各ポリープモデル70の観察場所のデータを検出することができる。そのため、大腸モデル19内の観察中に各ポリープモデル70を発見する大腸内視鏡検査の観察技術の練習を行うことができる。
また、図11に示す本発明の第5の実施の形態のように第4の実施の形態(図10参照)の大腸モデル19の内壁面のポリープモデル70を省略し、複数の異なる識別マーカー71のみを設ける構成にしてもよい。
この場合も大腸内視鏡4の挿入部41を大腸モデル19内に挿入する作業中に、大腸モデル19の内壁面の各識別マーカー71の形状、色、番号、記号などを目視して確認することにより、観察の練習を行うことができる。
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。
記
(付記項1) ケーシングと、ケーシング内に配設された軟性の大腸モデルと、ケーシングの一部に設けられた大腸モデルとの接続部と、接続部に設けられた軟性のシール部と、シール部に形成され、所定の気密状態を保ちながら内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔と、挿通孔の軸方向に形成され、内視鏡挿入部の軸方向以外の可動範囲を規制する規制部とからなる大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項2) 上記付記項1において、規制部は、シール部より手元側(装置外側)にある大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項3) 上記付記項1において、規制部は、シール部より大腸モデル側にある大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項4) 上記付記項1において、規制部においてもある程度の気密保持可能な大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項5) ケーシングと、ケーシング内に配設された軟性の大腸モデルと、ケーシングの一部に設けられた大腸モデルとの接続部と、接続部に設けられた軟性のシール部と、シール部に設けられ、所定の気密状態を保ちながら内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔とを具備し、シール部は、挿通孔は厚肉部で囲み、厚肉部の外周は厚肉部より薄く伸縮性の高い薄肉部で形成した構成からなる大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項6) ケーシングと、ケーシング内に配設された軟性の大腸モデルと、ケーシングの一部に設けられた大腸モデルとの接続部と、接続部に設けられた軟性のシール部と、シール部に設けられ、所定の気密状態を保ちながら内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔と、挿通孔の孔径が異なる複数種類のシール部が、同一の接続部に着脱自在の構成からなる大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項7) 上記付記項6において、シール部に、組合せ使用可能な内視鏡機種の識別手段を設けた大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項8) ケーシングと、ケーシング内に配設された軟性の大腸モデルと、ケーシングの一部に設けられた大腸モデルとの接続部と、接続部に設けられた軟性のシール部と、シール部に設けられ、所定の気密状態を保ちながら内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔とを具備し、装置の一部に、完全気密ではない気体流動抑制手段を設けた構成からなる大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項9) 軟性の大腸モデル内面に、複数の異なる識別部を設けた構成からなる大腸内視鏡検査装置。
(付記項10) 上記付記項9において、複数の識別部は、大腸モデルの同部位にある大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項11) 上記付記項9において、識別部は、大腸モデル内に隆起した隆起部にある大腸内視鏡検査練習装置。
(付記項1〜4の従来技術) 一般に、大腸内視鏡の挿入手技においては、送気・吸引操作は重要なポイントである。
(付記項1〜4が解決しようとする課題) 従来のコロンモデルでは、肛門部に簡易なシール部があったが、トレーニングの操作でスコープ挿入部を動かしていると、すぐにシールが変形して気密状態が保てなくなり、送気・吸引機能が使えなくなってしまった。
(付記項1〜4の目的) スコープ挿入部を動かしても気密状態が確実に保てるコロンモデルを提供する。
(付記項1〜4の課題を解決するための手段) 以下の構成からなるコロンモデル
・硬質のコロンモデル筐体部と、筐体部の一部に取付けられた伸縮性のある部材からなるシール部と、シール部は、内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔を有し、挿通孔の軸方向に、内視鏡挿入部の軸方向以外の動きを規制する規制部を設けたことを特徴とする。
・上記規制部は柔軟な部材からなる。
・上記規制部は、内視鏡挿入部に対し、シール部よりも気密性の低いシールを行う。
・上記規制部は、シール部の前にも後ろにもある。
(付記項1〜4の効果) ・シール部の前後に規制部があるため、スコープの動きはシール部においては軸方向のみとなり、気密が保てる。
・軟性部よりも湾曲部における外装部の湾曲ゴムとその固定用の糸巻き部は太くなるので、規制部もゴムの方がよい。
・規制部でも弱いシールをしておくと、さらに気密性は高まる。
(付記項5の従来技術) 一般に、大腸内視鏡の挿入手技においては、送気・吸引操作は重要なポイントである。
(付記項5が解決しようとする課題) 従来のコロンモデルでは、肛門部に簡易なシール部があったが、トレーニングの操作でスコープ挿入部を動かしていると、すぐにシールが変形して気密状態が保てなくなり、送気・吸引機能が使えなくなってしまった。
(付記項5の目的) スコープ挿入部を動かしても気密状態が確実に保てるコロンモデルを提供する。
(付記項5の課題を解決するための手段) 以下の構成からなるコロンモデル
・硬質のコロンモデル筐体部と、筐体部の一部に取り付けられた伸縮性のある部材からなるシール部と、シール部は、内視鏡挿入部を挿通可能な挿通孔を有し、挿通孔は厚肉部で囲み、その厚肉部から筐体部にかけては厚肉部より薄く更に伸縮性の高い薄肉部で形成したことを特徴とする。
(付記項5の効果) 薄肉部でスコープの動きを吸収するので、厚肉部が変形せず、気密が保たれる。
(付記項6,7の従来技術) 従来のコロンモデルは、スコープと腸モデルとの間で気密的にシールできるような肛門部のシール構造があった。
(付記項6,7が解決しようとする課題) 近年はスコープ径が様々になっており、シールできないことが多い。
(付記項6,7の目的) 異なる外径のスコープを用いても、スコープと腸モデル間で気密的状態を保てるようにする。
(付記項6,7の課題を解決するための手段) コロンモデルの肛門部に、スコープ挿入部が挿通可能な孔を有し、スコープに対して気密的にシール可能なシール部を設けたものにおいて、前記シール部の孔径が異なる複数のシール部を腸モデルに対して着脱自在としたことを特徴とするコロンモデル。
(付記項6,7の効果) どんな径のスコープを使っても、そのスコープの径に対応したシール部を選んでモデルに取付けることで、気密を保持してトレーニングできる。
(付記項8の従来技術) 従来のコロンモデルは、スコープと腸モデルとの間で気密的にシールできるような肛門部のシール構造があった。
(付記項8が解決しようとする課題) 完全に気密状態にしてしまうと、一旦エアーを入れると、その状態がずっと保たれ、実際の腸とは異なる。
(付記項8の目的) 腸モデルとスコープ間で、実際の腸のように、エアーを入れるとある程度は保たれるが少したつと抜けるようにする。
(付記項8の課題を解決するための手段) コロンモデルの一部に、完全気密ではない気体流動抑制部を設けた。
(付記項8の効果) スコープの送気によるエアーの流動の状態が、実際の大腸に近くなり、トレーニングに役立つ。
(付記項9〜11が解決しようとする課題) 従来、コロンモデルでは、挿入の練習が主であって、観察の練習にはあまりスキルアップに役立たなかった。
(付記項9〜11の目的) 大腸内視鏡検査の観察技術の練習ができるようにする。
(付記項9〜11の課題を解決するための手段) (1)柔軟な大腸モデル内に、複数の異なる識別部を設けた。
(2)上記(1)において、識別部は、大腸モデルの同部位に複数設けた。
(3)上記(1)において、識別部は、大腸モデル内の隆起部の一部に設けた。
(付記項9〜11の効果) 観察トレーニングができる。