JP3921655B2 - 塗膜管理システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピユータを用いて遠隔地に立地する被塗物の塗膜を監視する塗膜管理システムに関し、特に、ビルや橋梁等の建造物における塗膜の径時劣化状態を、有線又は無線の通信手段を経由して監視するための塗膜管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビルや橋梁などの建造物には、防食性や美匠性を付与するために塗装が施されている。このような塗装物は酸性雨、水、太陽光線、湿気、熱等に曝された場合に、塗膜がひび割れ、チョーキング、脆化等することによって建造物自体の耐久性が低下するのを防止するため、建造物に塗装された塗膜があまり劣化しないうちに補修塗装を施すことが一般的に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗膜の劣化状態を事前調査するのに、定期的に現場まで行って目視によって詳細にチェックする必要があり、また、ヒューマンエラーによる見落とし等を生じ得るという問題があった。
【0004】
また、ビル外壁の高所や橋梁などの場合は、その塗膜の劣化状態を調べることが困難な場合や、危険を伴う場合があるといった間題があった。
【0005】
さらに、目視検査しただけでは塗膜外観(光沢など)は殆ど変化していないが塗膜内部では劣化(収縮、歪み、脆化など)が起こっている場合があり、目視によって塗膜外観の劣化を確認してから補修塗装を行ったとしても十分な塗膜性能を確保できないと場合があるという間題があった。
【0006】
そこで、本発明は、暴露などによる塗膜変化を遠隔地から効率よく検知し、その結果によっては補修などのアクションをいち早く行うことができるように監視する塗膜管理システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、被塗物に塗装された塗膜中に少なくとも1つの水晶振動子を埋設し、該水晶振動子の両面に設けた電極からの電気信号に基づいて前記塗膜の経時変化を管理する塗膜管理システムであって、前記水晶振動子の圧電効果により生じる電位差又は静電気量を検知する検知装置と、該検知装置によって検知されたデータ信号を遠隔地に発信する発信装置と、該発信されたデータ信号を受信する受信装置と、該受信装置からの前記データ信号を初期状態のデータ信号と比較し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との変化を比較するデータ処理装置と、該データ処理装置の処理結果を出力する出力装置と、を有することを特徴とする塗膜管理システムにより達成される。
【0008】
また、本発明の上記目的は、被塗物に塗装された塗膜中に少なくとも1つの水晶振動子を埋設し、該水晶振動子の両面に設けた電極からの電気信号に基づいて前記塗膜の経時変化を管理する塗膜管理システムであって、前記水晶振動子に外部回路を接続して水晶発振器とし、交流電場を印加して該水晶発振器から発振された共振周波数を測定する周波数計数装置と、得られた周波数のデータ信号又は該周波数データを他の電気信号に変換したデータ信号を遠隔地に発信する発信装置と、該発信されたデータ信号を受信する受信装置と、該受信装置からの前記データ信号を初期状態のデータ信号と比較し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との変化を比較するデータ処理装置と、該データ処理装置の処理結果を出力する出力装置と、を有することを特徴とする塗膜管理システムにより、達成される。
【0009】
前記交流電場の印加条件を遠隔地から制御する遠隔制御装置を更に有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態ついて、以下に図面を参照して説明する。なお、全図を通し、同様の構成部分には同符号を付した。
【0012】
先ず、本発明に係る塗膜管理システムの第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0013】
図1は、塗膜管理用センサーを組み込んだ塗膜管理システムの第1実施形態を示すブロック図である。
【0014】
塗膜管理用センサー1は、水晶振動子2を構成する水晶片の両面に電極3,3を設け、水晶振動子2に管理用塗膜を施したものである。図示の例では、被塗物5に塗装された塗膜4中に水晶振動子を埋設することによって、水晶振動子2の表裏両面に塗膜4が施されている。
【0015】
被塗物5に塗布される塗膜4と同等の塗膜を水晶片に予め塗布することによって、水晶振動子2に管理用塗膜を施しておき、これを塗膜監視対象物の表面又は近傍に設置することもできる。水晶振動子2に施される塗膜は、表裏の何れか片面に施すこともできる。水晶振動子は1建造物(被塗物)に1個であっても複数個であってもどちらでも構わない。
【0016】
水晶振動子2としては、例えば、9MHz、27MHzのATカツトの金電極水晶振動子等を挙げることができるが、圧電性を有する水晶片であれば特にこれ限定されるものではなく、また、その電極材料も、銀、アルミニウム等の金属を蒸着したものでも良い。
【0017】
水晶振動子2上に形成した管理用塗膜が光、太陽光線、風雨等に晒されることによって、重量の増減や塗膜歪み、内部応力変化、伸縮などの物理的変化が生じると、水晶振動子2の上下に圧電効果による分極を生じる。塗膜管理用センサー1は、この分極化された信号(電荷)を塗膜の劣化の診断として利用するものである。
【0018】
水晶振動子2の圧電効果により生じた分極電荷は、電極3,3に接続されたリード線を介して、電位差又は静電気量として検知装置6により検知され測定される。検知されたデータ信号は、図外の記憶装置に記憶することができる。
【0019】
検知されたデータ信号は、必要に応じてデジタル信号等の電気データ信号に変換され、発信装置7によって遠隔地に発信される。
【0020】
該発信されたデータ信号は、遠隔地に設置された受信装置8によって受信される。受信装置8が設置される場所は、通常、監視を行う場所であるが、1箇所又は複数箇所に設置することができる。
【0021】
発信装置7から受信装置8へのデータ信号の送受信は、有線又は無線により行うことができ、有線回線の場合は公衆回線或いは専用回線を使用することができる。
【0022】
受信装置8に受信されたデータ信号は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置9によって、受信装置8からのデータ信号と初期状態のデータ信号とを比較分析し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との状態変化を求める。
【0023】
データ処理装置9は、データベースを備えることができ、例えば、屋内実験等によって予め塗膜管理用センサーの試験品から得られるデータ信号と水晶振動子2の表面に塗装された膜厚との関係を調べてデータベース化し、或いは必要に応じてその関係について検量線を求めてデータベース化しておいて、初期の塗装膜厚と時間経過後の膜厚とを比較することにより、時間経過後に塗装膜厚がどの程度減少したかを検出することができ、これにより塗膜の劣化程度を推察することができる。
【0024】
また、同様に屋内実験等によって予め塗膜管理用センサーの試験品から得られるデータ信号と水晶振動子の表面に塗装された塗膜の歪み、内部応力、脆化などの塗膜の劣化要因との関係を調べてデータベース化し、或いは必要に応じてその関係について検量線を求めてデータベース化しておいて、これにより初期の該塗膜劣化要因と時間経過後の劣化要因とを比較することにより、時間経過後に塗膜劣化がどの程度進行したかを検出することができる。
【0025】
こうして、データ処理装置によって処理された結果、即ち、補修が必要か不要かの判断をモニター等の出力装置10に出力する。
【0026】
図2は、上記第1実施例の塗膜管理システムに関する処理を示しているフローチャートである。
【0027】
まず、ステップS1において、水晶振動子(センサー)から発信された信号がない場合は検知機器で検出されない。一方、信号(塗膜に変化が認められた場合)がある場合には検知機器により検出されそのデータはステップS2でデータ収集される。またそのデータが十分でない場合にはフィードバックして再度データを収集することができる。
【0028】
ステップS3で測定が完了したデータは、測定データを周波数もしくは周波数をデジタル信号等の電気信号に変換させ、その信号をステップS5で測定データの発信が行われる。
【0029】
ステップS6において、ステップS5で発信されたデータを受信する。次いで、ステップS7でデータの変換を行い、変換されたデータ(モニタされたデータ)と予め作成されたデータベース(初期データ、ステップS7)のデータとをパーソナルコンピユターによりデータを分析し(ステップS8)、ステップS9によりデスプレーで表示させ、警告を自動的に発信する(S10)。
【0030】
次に、本発明第2実施態様の塗膜管理システムについて以下に図3及び図4を参照して説明する。
【0031】
図3は、本発明第2実施形態の塗膜管理システムの構成を示すブロック図である。第2実施形態は、水晶振動子に帰還回路、増幅回路、交流電源等で構成される発信回路11を接続して水晶発振器12とし、水晶振動子2に発信回路11から交流電圧を印加することにより交流電場を加えて励振させることにより、水晶発振器12からの固有振動数の発振周波数を周波数計数装置6’によって計数する点が上記第1実施形態と主として異なる。
【0032】
一般に、水晶振動子2の上下に電極3,3を取り付けたものに電圧をかけることにより固有振動数が得られる。この電極3,3を取り付けた水晶振動子2の表面に塗膜を施したものに電圧をかけて励振させ、固有振動数の発振を得る。塗装膜厚に応じて固有振動数が減少することを利用して、時間経過後の塗装膜厚の減少等を検知し塗膜劣化を検出することができる。即ち、本実施形態は、いわゆる水晶振動子法による微量測定の原理を応用したものであり、水晶振動子の有する逆圧電効果を利用して塗膜を診断するものである。
【0033】
例えば、上記9MHzの水晶振動子は、通常、1cm2あたり1ngの質量変化に対して、約1Hzの発振振動数変化が生じるので、水晶振動子の露出した電極面に塗布された塗膜の極めて微量の質量変化を高感度かつ高精度に測定することができる。
【0034】
水晶振動子2に印加する交流電源は水晶振動子で使用する従来から公知の交流電源を使用することができる。また、印加する電圧、電流などの印加条件は必要に応じて適宜条件を選択して決めることができる。
【0035】
水晶振動子に加える、適性電圧、適性電流、印加時間などの電場条件は、遠隔制御装置13によって遠隔制御することができる。水晶振動子に電圧を印加させて水晶振動子に歪みを生じさせた後、印加電圧を解除すると水晶振動子は元に戻る現象を示し、発生させこのときの印加電圧を交流電場としてずり方向の共振周波数に同期させると水晶振動子はその水晶板の固有振動数で共振振動させることができ、この振動数は、水晶振動子に塗装された塗膜の物理的変化により一定に変化する。また、遠隔制御装置13によって、印加電源装置にON・OFF指令を発するようにしても良い。
【0036】
交流電圧の印加により水晶振動子に生じた周波数を測定する機器は従来から公知の周波数計数装置6’を使用することができる。また、得られた周波数のデータ信号を必要に応じて電気データ信号に変換し、これらのデータ信号を遠隔地に発信する発信装置7は上記第1実施形態と同様のものが使用できる。
【0037】
水晶発振器12により生じた周波数データ信号は、検知装置6により検知される。次いで、これらの周波数データ信号は、必要に応じて電気データ信号に変換し、そしてこれらのデータ信号はデジタルデータに変換することも可能である。次いで、これらのデータ信号を発信装置7により目的とする遠隔地に送信される。
【0038】
発信されたデータ信号は、遠隔地に設置された受信装置8によって受信される。受信装置8が設置される場所は、通常、監視を行う場所であるが、1箇所又は複数箇所に設置することができる。
【0039】
発信装置7から受信装置8へのデータ信号の送受信は、有線又は無線により行うことができ、有線回線の場合は公衆回線或いは専用回線を使用することができる。
【0040】
受信装置8に受信されたデータ信号は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置9によって、受信装置8からのデータ信号と初期状態のデータ信号とを比較分析し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との状態変化を求める。
【0041】
データ処理装置9は、データベースを備えることができ、例えば、屋内実験等によって予め周波数(固有振動数)と水晶振動子の表面に塗装された膜厚との関係を調べてデータベース化しておき、或いは必要に応じてその関係について検量線を求めてデータベース化しておいて、初期の塗装膜厚と時間経過後の膜厚とを比較することにより、時間経過後に塗装膜厚がどの程度減少したかを検出することができ、これにより塗膜の劣化程度を推察することができる。
【0042】
また、同様に屋内実験等によって予め周波数(固有振動数)と水晶振動子の表面に塗装された塗膜の歪み、内部応カ、脆化などの塗膜の劣化要因との関係を調べてデータベース化しておき、或いは必要に応じてその関係について検量線を求めてデータベース化しておいて、これにより初期の該塗膜劣化要因と時間経過後の劣化要因とを比較することにより、時間経過後に塗膜劣化がどの程度進行したかを検出することができる。
【0043】
図4は、図3の塗膜管理システムに関する処理を示しているフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS21において、塗膜中の水晶振動子に所定周波数の交流電圧を印加し、水晶振動子(センサー)から発信された信号をステップS22の検知機器で検出しデータ収集される。また、その電圧を印加する条件、時期などは遠隔地から指示することができる。またそのデータが十分でない場合にはフィードバックして再度データを収集することができる。
【0045】
ステップS23で測定が完了したデータは、測定データを周波数もしくは周波数を電気信号に変換させ、その信号をステップS25で測定データの発信が行われる。
【0046】
ステップS26において、ステップS25で発信されたデータを受信する。次いで、ステップS26でデータの変換を行い変換されたデータ(モニターされたデータ)と予め作成されたデータベース(初期データ、ステップS27)とをパーソナルコンピユター等のデータ処理装置によりデータを分析し(ステップ28)、補修が必要な場合にはステップS29によりモニター等の出力装置で表示させるとともに、警告を自動的に発信する(ステップS30)。
【0047】
【発明の効果】
本発明に係る塗膜管理システムによれば、暴露などの塗膜変化を遠隔地により効率よく監視、検知し、その結果によっては補修などのアクションをいち早く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施態様に係る塗膜管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の塗膜管理システムに関する処理を示しているフローチャートである。
【図3】本発明の第3実施態様に係る塗膜管理システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3の塗膜管理システムに関する処理を示しているフローチャートである。
【符号の説明】
1 塗膜管理用センサー
2 水晶振動子
3 電極
4 塗膜
5 被塗物
6 検知装置
6’周波数計数装置
7 発信装置
8 受信装置
9 データ処理装置
10 出力装置
11 外部発信回路
12 水晶発振器
13 遠隔制御装置

Claims (4)

  1. 被塗物に塗装された塗膜中に少なくとも1つの水晶振動子を埋設し、該水晶振動子の両面に設けた電極からの電気信号に基づいて前記塗膜の経時変化を管理する塗膜管理システムであって、
    前記水晶振動子の圧電効果により生じる電位差又は静電気量を検知する検知装置と、
    該検知装置によって検知されたデータ信号を遠隔地に発信する発信装置と、
    該発信されたデータ信号を受信する受信装置と、
    該受信装置からの前記データ信号を初期状態のデータ信号と比較し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との変化を比較するデータ処理装置と、
    該データ処理装置の処理結果を出力する出力装置と、
    を有することを特徴とする塗膜管理システム。
  2. 被塗物に塗装された塗膜中に少なくとも1つの水晶振動子を埋設し、該水晶振動子の両面に設けた電極からの電気信号に基づいて前記塗膜の経時変化を管理する塗膜管理システムであって、
    前記水晶振動子に外部回路を接続して水晶発振器とし、交流電場を印加して該水晶発振器から発振された共振周波数を測定する周波数計数装置と、
    得られた周波数のデータ信号又は該周波数データを他の電気信号に変換したデータ信号を遠隔地に発信する発信装置と、
    該発信されたデータ信号を受信する受信装置と、
    該受信装置からの前記データ信号を初期状態のデータ信号と比較し、初期に塗装された塗膜と時間が経過した塗膜との変化を比較するデータ処理装置と、
    該データ処理装置の処理結果を出力する出力装置と、
    を有することを特徴とする塗膜管理システム。
  3. 前記交流電場の印加条件を遠隔地から制御する遠隔制御装置を更に有することを特徴とする請求項2記載の塗膜管理システム。
  4. 上記被塗物が、建造物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜管理システム。
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