JP3921100B2

JP3921100B2 - Thin steel sheet with excellent room temperature slow aging and bake hardenability

Info

Publication number: JP3921100B2
Application number: JP2002050900A
Authority: JP
Inventors: 淳高橋; 昌章杉山; 裕一谷口; 政昭水谷
Original assignee: Nippon Steel Corp
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 2002-02-27
Filing date: 2002-02-27
Publication date: 2007-05-30
Anticipated expiration: 2022-02-27
Also published as: JP2003253378A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板に関する。
【０００２】
【従来の技術】
自動車の車体軽量化のため、使用する鋼板板厚の減少が要望され、自動車用鋼板の高強度化が検討されてきた。しかし、鋼板の高強度化は鋼板のプレス成形性を劣化させる傾向があり、プレス成形性に優れた高張力鋼板が要望されていた。このようなプレス成形性と高強度化を両立させた鋼板として、塗装焼付硬化型自動車用鋼板が開発されている。この鋼板はプレス成形後に、通常１５０℃〜２００℃の高温保持を含む塗装焼付処理を施すことにより、降伏応力が上昇する鋼板である。鋼中に固溶Ｃまたは固溶Ｎを存在させることによって、塗装焼付け処理時の高温加熱でＣまたはＮがプレス成形時に導入された転位に固着して転位の移動を妨げ、降伏応力が上昇する。この上昇分が焼付硬化量（ＢＨ量）である。
【０００３】
ＢＨ量は一般に固溶Ｃ量または固溶Ｎ量を増やすことによって増加する。
このような硬化機構の問題点は次の点にある。ＢＨ量を上げるために、固溶Ｃ量または固溶Ｎ量を増加すると成形前に既に一部の転位が固溶Ｃまたは固溶Ｎにより固着され（常温時効）、プレス成形時に降伏点伸びによるストレッチャーストレインと呼ばれる波状の表面欠陥を生じる。これは製品特性を著しく劣化させることになる。
この常温時効の問題を解決し、耐時効性に優れた高い塗装焼付硬化性を有する薄鋼板を実現することは長年の課題であった。
【０００４】
特開平５−３３１５５３号公報、特開平７−３００６２３号公報はＮｂおよびＡｌ添加量を制御し、焼付硬化性および耐時効性を実現する方法が開示されている。この方法では固溶Ｎ量、固溶Ｃ量を適量にして耐時効性を得ようとする方法であり、ＢＨ量を上げるために固溶Ｃ量を増やすと時効劣化が生じることになり、高い焼付硬化特性を有する鋼を製造することはできない。
特開２０００−１７３８６号公報にはＭｏを適量添加することで、鋼中に室温で安定なＭｏ−Ｃダイポールを形成し、常温時効性と焼付硬化性を同時に得る方法が開示されている。しかし、これらの特性発現に寄与するＣおよびＮの挙動についてはモデルが提案されているに留まっており、十分な材料設計指針がなく、更なる高いＢＨ特性の実現や、焼付温度の低下などの課題に十分に対応できていないのが現状である。
【０００５】
また、特開平１１−２２９０８５号公報にはＮｂ／Ｃ比を最適にすることで、耐時効性に優れた冷延鋼板を製造する方法が開示されている。ＮｂＣを微細分散することで結晶粒を微細化し、粒界Ｃ量を増やすことを述べているが、この方法では焼付硬化量を上げた場合（ＢＨ量＞６０ＭＰａ）、降伏点伸びが現われ常温時効性が保たれなくなる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板を提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはＣまたはＮを超微細析出物として鋼中に固定しておくことにより、常温遅時効性と焼付硬化性のいずれにおいても優れた薄鋼板とすることができることを見出し、この超微細析出物の満たすべき要件を特定することによって、本発明を完成させたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
（１）質量％で、Ｃ：０．００３〜０．２％、Ｎ：０．０００１〜０．２％、Ｃ＋Ｎ：０．００２〜０．３％、Ｓｉ：０．００１〜０．１％、Ｍｎ：０．０１〜１％、Ｐ：０．００１〜０．１％、Ｓ：０．０５％以下、Ａｌ：０．００１〜０．１％、Ｔｉ：０．００１〜０．１％、Ｎｂ：０．００１〜０．１％、Ｍｏ：０．００５〜０．２５％を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、鋼中に直径１〜１０ｎｍのＴｉの炭化物、窒化物、および、炭窒化物のうちのいずれか１種または２種以上からなる超微細析出物を１×１０¹⁷ 個/ｃｍ³以上の密度で含み、ＢＨ量が６０ＭＰａ以上であることを特徴とする常温遅時効性と焼付硬化性に優れた薄鋼板。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明が対象とする析出物は直径１〜１０ｎｍと非常に小さいため、通常の析出物と区別して超微細析出物と記載する。なお、超微細析出物は、炭化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの集合体であると考えられ、炭化物、窒化物、炭窒化物として、結晶質であるか非晶質であるか、また、定比であるか不定比であるかは問わない。そのため、例えばＴｉの炭化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの集合体としてＴｉ（Ｎ，Ｃ）のように記載し、これはＴｉおよびＣとＮの組成比を示しているものではない。
【００１０】
本発明の特徴は、高密度に分散したこのような超微細析出物に格子間原子であるＣまたはＮを固定（トラップ）させることで、室温での常温時効を防いで、焼付硬化型鋼板における常温遅時効性を向上させる一方、１５０〜２００℃の塗装焼付温度においてトラップから脱離し拡散によって転位位置に移動し転位を固着させることで、高い焼付硬化性をも同時に実現させたことである。
フェライト鉄中のＣおよびＮは室温での固溶度が小さく、エネルギー的に安定な位置に偏析濃化する傾向がある。この偏析サイトとして、粒界部、転位部などの結晶欠陥部が挙げられる。本発明者は、アトムプローブ電界イオン顕微鏡（ＡｔｏｍＰｒｏｂｅＦｉｅｌｄＩｏｎＭｉｃｒｏｓｃｏｐｅ、以下ＡＰ−ＦＩＭと表記する）を使用し、この偏析サイトの詳細な研究を行った。その結果、超微細析出物にＣ、Ｎが偏析濃化することを突き止めた。超微細析出物のどの部分に偏析濃化するかは明らかではないが、一つにはマトリックス鉄との界面近傍と考えられる。
【００１１】
超微細析出物に偏析濃化するＣ量またはＮ量は、析出物サイズに依存する。この偏析ＣまたはＮを転位固着に利用するためには、室温ではＣまたはＮが析出物にトラップされ、焼付硬化温度でトラップサイトからＣまたはＮを脱離させなければならない。そのために析出物サイズは最適なトラップエネルギーを有する超微細析出物が有効となる。さらに焼付中にプレス成形によって導入された多量の転位にトラップサイトからＣまたはＮを拡散供給するためには、これらのトラップサイトが鋼中に高密度に存在し、かつ、分散していることが必要となる。従ってトラップサイトとなる鋼中の超微細析出物の数密度としては、少なくとも１×１０¹⁷個/ｃｍ³が必要であり、５×１０¹⁷個/ｃｍ³以上の数密度が好ましく、さらに、１×１０¹⁸個/ｃｍ³以上の数密度がより好ましい。１×１０¹⁷個/ｃｍ³未満であると、焼付温度において偏析したＣまたはＮがプレス成形により導入された多量の転位にむらなく固着することができなくなるため、耐時効性または焼付硬化性は低下する。ここでは数密度の上限を定めていないが、一般に１×１０²⁰個/ｃｍ³を超える高密度の析出物の分散化は鋼強度を高めることになるため、成形性が問題となる場合がある。
【００１２】
このような超微細析出物のサイズとしては直径１〜１０ｎｍが好ましい。ここで１ｎｍより小さいと、ＣまたはＮの有効なトラップサイトとはならない。一方で１０ｎｍより大きいと、ＣまたはＮのトラップサイトとはなるが、１×１０¹⁷個/ｃｍ³以上の数密度を実現するためにはそれだけ多くの成分を鋼に添加しなければならず、固溶強化、分散強化によって鋼の成形性を著しく低下させる要因となってしまう。
本発明では超微細析出物の種類を限定するものではないが、ＣまたはＮのトラップサイトとして利用する超微細析出物としては炭化物、窒化物、炭窒化物またはこれらの混合物が好ましい。これはＣとＮは拡散係数が大きいためその炭化物、窒化物、炭窒化物は微細分散させやすく、ＣまたはＮのトラップサイトとして有効に利用しやすいためである。
【００１３】
また、炭化物、窒化物、炭窒化物は、Ｔｉの炭化物、窒化物、炭窒化物が最も好ましい。その理由は、Ｔｉは適当なトラップエネルギーを有する１〜１０ｎｍの超微細析出物を形成しやすくするためである。
本発明における成分限定理由は以下の通りである。なお、％は質量％を表す。ＣおよびＮは焼付硬化性を発現させる上で重要な元素であり、Ｃ＋Ｎ量０．００２％以上含有することが必須である。しかしＣ＋Ｎ量が多すぎると固溶量が増し、常温時効性を確保することが困難になるため上限を０．３％とした。
【００１４】
Ｃ：０．００１％以上、Ｎ：０．０００１％以上としたのは、これ未満への低減は製鋼での多大なコストアップになるばかりでなく、高い焼付硬化性を得られないからである。さらに炭素物、窒化物からなる超微細析出物を高密度で作ることができなくなるためである。一方、Ｃ：０．２％以下、Ｎ：０．２％以下としたのは、これらの値を超えると強度が高くなり過ぎ加工性を損なうためである。Ｍｎ、Ｓｉ、Ｐは薄鋼板として必要とされる強度を得るためにかかせない基本成分である。Ｍｎ：０．０１％、Ｓｉ：０．００１％、Ｐ：０．００１％を下回ると強度が不足する。Ｍｎ：１％、Ｓｉ：０．１％、Ｐ：０．１％を超えると強度が高くなりすぎ加工性を損なうため、これらを上限値とする。
【００１５】
Ｓは、０．０５％を超えると熱間圧延時に赤熱脆化を起こし表面で割れる、いわゆる熱間脆化をおこすことがあるため、０．０５％以下とする必要がある。
Ａｌは脱酸剤として必要な元素であり０．００１％以上必要であり、０．１％以下としたのはそれを超えて添加すると強度が高くなり加工性を損なうためである。
Ｔｉは本発明の超微細析出物の形成に用いることのできる元素の一つであり、過剰なＣ、ＮやＳを固定して時効性を確保するために０．００１％以上必要である。上限を０．１％としたのは、それを超えて添加すると再結晶温度が上昇しまた加工性の劣化を招くためである。
【００１６】
ＮｂもＴｉ同様、本発明の超微細析出物の形成に用いることのできる元素の一つである。その下限を０．００１％としたのはそれ未満では時効性を確保することが困難になるためであり、上限を０．１％としたのはそれを超えて添加すると再結晶温度が上昇しまた加工性の劣化を招くためである。
Ｍｏ、Ｃｒ、Ｗは、そのメカニズムの詳細は明らかでないが、鋼中の析出物を微細分散させる効果がある。すなわち、これらの１種または２種以上を添加することによって本発明の超微細析出物を形成するための条件を緩和できる。各元素の添加量の下限を０．００５％としたのはそれ未満ではこの効果が得られないからであり、上限をＭｏについては０．２５％、ＣｒとＷについては１．０％としたのはそれを超えると強度が高くなって加工性を損なうばかりでなく、高価なため合金コストが上がるためである。
【００１７】
鋼中に直径１〜１０ｎｍの超微細析出物を１×１０¹⁷個/ｃｍ³以上の数密度に分散させるためには、例えば焼鈍を特定の条件で行うことにより実現できる。一般に焼鈍の冷却速度を遅くすると析出する炭化物または窒化物のサイズが大きくなり数密度は小さくなる。反対に冷却速度を大きくすると析出する炭化物または窒化物のサイズが小さくなり数密度は大きくなる。しかしこの場合ＣまたはＮの固溶量が増加するため、適当な過時効処理（ＯＡ）が有効となる。超微細析出物を高密度に分散させるためには、鋼中の成分とその濃度によって焼鈍条件を選び出す必要がある。
【００１８】
例えば、好ましい製造方法としては、鋳造圧延後、焼鈍条件を限定することによって可能である。焼鈍は８００℃以上Ａｃ3 温度以下で保持した後、１０〜１００℃／ｓの冷却速度で冷却する。８００℃以上の温度に保持するのは、一旦Ｃ、Ｎを固溶させるためであり、この温度未満では、通常の析出物の形で残存してしまう。また、変態を避けるためＡｃ3 温度以下とする。保持時間は、十分な効果を得るため１分以上が好ましい。冷却速度は１０℃／ｓを下回ると析出物の大きさが１０ｎｍを上回り易くなり、一方１００℃／ｓを超えると固溶したままとなり、析出物を生じにくくなる。
【００１９】
以上、一般的な好ましい製造方法ついて説明したが、上記の通りＭｏにはこの条件を緩和する効果があるなど、鋼成分によって、本発明の鋼板を製造する条件は異なるため、ＡＰ−ＦＩＭで解析した結果に基づいて、製造方法を確定することが望ましい。ＡＰ−ＦＩＭを用いた原子存在状態の解析は以下のように行う。この装置は透過電子顕微鏡（ＴＥＭ）では観察不可能な原子存在形態を結晶格子レベルの分解能で調べることができる。針状研磨加工した試料に高電圧を印加し電界蒸発したイオンの飛行時間を測定することにより質量電荷比を求め、構成原子を決定する。これにより鋼中の析出物の組成、偏析原子などを正確に調べることができる。さらに測定データの取り込み順から鋼中の存在位置も同時に決定することができる。
【００２０】
図１に本発明によって製造した冷延鋼板における粒内マトリックス測定の結果の一例をラダーチャートによって示した。ラダーチャートでは、横軸は検出原子総数、縦軸は目的の原子の積算数を表わしている。従ってグラフの傾きは目的の原子の濃度に相当し、偏析濃化した部分では傾きが大きくなる（図中矢印）。
横軸は検出イオン取り込み順に相当するため、試料の深さ位置（空間座標）を表わすことになる。Ｃ原子はＴｉＮおよびＴｉと共に超微細析出物を形成していることがわかる。優れた耐時効性が発現した鋼板において、粒内に１×１０¹⁷個/ｃｍ³以上の分散した超微細析出物が観察された。
【００２１】
超微細析出物の平均数密度は、任意方向のマトリックス測定を多数回行いその中に観察された超微細析出物数から求めた。ＡＰ−ＦＩＭでは一度の測定における測定領域が小さく、超微細析出物が観察されない場合はその数密度が小さいことを意味する。１回の測定で測定できる原子数は１×１０⁵個とすると、超微細析出物密度が１×１０¹⁷個/ｃｍ³未満の場合、ＡＰ−ＦＩＭ数回の測定では自然確率的に超微細析出物を観察することは困難になる。従って、ＡＰ−ＦＩＭによる任意方向のマトリックス測定によって超微細析出物が観察されない場合は、平均密度は１×１０¹⁷個/ｃｍ³未満と判断する。またＴＥＭでは観察領域が大きいため、もっと低密度の析出物を調べることはできるが、１０ｎｍ以下の超微細析出物は分解能の点から観察困難になる場合が多い。
【００２２】
析出部サイズは析出物を構成している原子数から見積もることができる。電界蒸発によって原子は原子層ごとに蒸発し、測定される１原子層はプローブホールサイズ、結晶面方位、針試料先端曲率半径等に依存するが、一般に５０〜２００原子に相当する（軽金属(1992)P236-247）。析出物が何原子層に及んでいるかを調べることによって、析出物サイズを見積もることができる。例えば図１においては、約１０原子層に及んでおり、２ｎｍ程度の析出物とみなせる。
【００２３】
時効性と焼付硬化性の評価は次のように行う。常温時効性は４０℃の雰囲気に７０日保持し引張試験を行い、この時の降伏点伸び（ＹＰ−Ｅｌ）を測定することによって調べることができるが、ここでは代わりに１００℃×１時間の人工加速試験によって耐時効性を評価した。このＹＰ−Ｅｌ値が０．４％以下を良好とした。また、焼付硬化性の測定は、薄鋼板を２％引張り１７０℃にて２０分保持した後の降伏応力（ＹＰ）を測定し、先に２％引張試験を行った時の強度の差すなわちＢＨ量として評価した。
本発明の薄鋼板は熱延鋼板、冷延鋼板のどちらでもかまわない。さらに熱間圧延工程、冷間圧延工程は特に限定されるものではない。次に実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明するが、それらは単に例示のためであって、それによって本発明は不当に制限されることはない。
【００２４】
【実施例】
表１に記載した化学組成を有する供試材を溶製した。なお、化学成分の％は質量％を表す。
【００２５】
【表１】

【００２６】
表２に記載した条件で、熱間圧延、冷間圧延を行い、その後焼鈍を行い冷延鋼板とした。
【００２７】
【表２】

【００２８】
表３に機械的試験の結果を示す。ここでｅｘ．Ｃとは添加Ｃ量からＴｉとＮｂによって析出させた量を差し引いた値で、表に示した式によって見積もった。
【００２９】
【表３】

【００３０】
（実施例１）表１の鋼種ｃ、ｅを使用し、表２に記載した各製造条件で冷延鋼板を製造した。熱間圧延の仕上温度は９００℃、巻き取り温度は６００〜７００℃とした。また冷間圧延率は７０〜８０％とし、０．８ｍｍ厚に冷間圧延した。冷間圧延後、８００〜８２０℃で３分の焼鈍処理を行い、種々の冷却速度で冷却させた。さらにいくつかのものについては過時効処理（ＯＡ）を施した。焼鈍済みの鋼板に１％の調質圧延を行い冷延鋼板とした。表３に製造した鋼板（鋼板１〜８）の機械的特性の結果と、ＡＰ−ＦＩＭによって調べた超微細析出物の平均数密度を示す。鋼種ｅにおいて、Ｅの製造条件において、超微細析出物が観察され良好な耐時効性を示した。それ以外の条件では、析出物密度が小さくまたはサイズが１０ｎｍ超と大きくなっており、ＢＨ量は良好であったが耐時効性は良くなかった。（以下削除）
【００３１】
これにより、高い数密度の超微細析出物を分散させた鋼を製造することによって、高いＢＨ特性と優れた耐時効性を同時に実現できている。
（実施例２）表１のように成分調整された鋼（鋼種ａ〜ｇ）を表２の製造条件Ｂによって冷延鋼板とする（鋼板９〜１５）。熱間圧延の仕上温度は９００℃、巻き取り温度は６５０℃とした。また冷間圧延率は７０％とし、０．８ｍｍ厚に冷間圧延した。冷間圧延後、８００℃で１分の焼鈍処理を行った。焼鈍済みの鋼板に１％の調質圧延を行い冷延鋼板とした。
【００３２】
表３において耐時効性評価のためのＹＰＥｌ値は１００℃×１時間の促進時効によって調べた。
ｅｘ．Ｃ量が多い鋼ほど、ＢＨ値が高く現われており、ｅｘ．Ｃが０．００３％以上の鋼では６０ＭＰａ以上の高いＢＨ値が得られている。これらの鋼の耐時効性を降伏点伸びにより評価すると、Ｍｏを十分な量添加した鋼板９、１４については優れた耐時効性を示している。また、Ｍｏを微量添加した鋼板１０、１２においても、耐時効性を示している。一方、Ｍｏを無添加とした鋼板１１、１３、１５では大きな降伏点伸びが現われており耐時効性が得られていない。遅時効性を示した鋼板には鋼中に超微細析出物がＡＰ−ＦＩＭによって観察できたことから、これが遅時効性に影響したものと考えられる。
【００３３】
またさらに、Ｍｏを０．１３４％、Ｃを０．００３７％添加し、製造条件Ｂで製造した鋼板９と、同じＣ量を有しＭｏ無添加の鋼板１１について、詳細な比較を行った。鋼板９の場合、超微細析出物数密度は１×１０¹⁸ 個／ｃｍ³ で、ＢＨ量は６０ＭＰａを超えているが、降伏点伸びは０．１％以下と極めて良好な常温遅時効性を示した。一方、鋼板１１では、超微細析出物数密度は観察されず（１×１０¹⁷ 個／ｃｍ³ 未満と判断される）、ＢＨ量は６０ＭＰａを超えているが、ＹＰ−Ｅｌ値は１．０％以上で、常温遅時効性はみられなかった。またこの鋼ではプレス加工時にストレッチャーストレインが現われた。
【００３４】
表４には、良好な焼付硬化性および常温遅時効性を示した鋼板９においてＡＰ−ＦＩＭにより観察された超微細析出物の原子組成の例を示す。
【００３５】
【表４】

【００３６】
超微細析出物は数原子から数十原子のＣおよびＴｉ、Ｎの複合体からなりそのサイズは数ｎｍ以下であった。その組成を調べると、Ｃ原子数が｛（Ｔｉ原子数）−（Ｎ原子数）｝より多くなり、余剰Ｃの存在を示した。すなわちこの超微細析出物はＴｉＮまたはＴｉＣの超微細析出物にＣが偏析濃化したものである。偏析したＣ量はＴｉ（Ｎ，Ｃ）のサイズに依存し、十数原子以上からなる超微細析出物においては余剰Ｃが数十原子以上余分に存在していることがわかった。ＡＰ−ＦＩＭではイオンの検出率が６０％程度であるため、実際の原子数はこれよりも多くなる。さらにＴｉＣ析出物は一般にＴｉＣ_x（ｘ≦１）の組成をもつため、ここでは余剰Ｃ量を過小評価していることになる。
【００３７】
一方、ＡＰ−ＦＩＭ測定により固溶Ｃ量を調べたところ、平均濃度で０．０００５質量％以下となり、鋼中に含まれるＣの多くは超微細析出物に偏析濃化していることがわかった。次に、この鋼板９に２％引張予歪を印加して１７０℃×２０分焼付硬化させた試料について同じ観察を行った。しかし、超微細析出物に化学量論的に余分なＣは測定されなかった。すなわち超微細析出物に偏析濃化したＣは焼付硬化過程で、転位に拡散し、転位固着（コットレル雰囲気形成）の供給元となったと考えられる。
【００３８】
一方で、Ｍｏを添加しない供試材（鋼板１１）についても同様の観察を試みたが、ＡＰ−ＦＩＭによるマトリックス測定によって鋼中に超微細析出物が観察されなかった。これは析出物の数密度が１×１０¹⁷ 個/ｃｍ³ 未満であることを意味する。ＴＥＭ観察を行ったところ５０ｎｍ以上の比較的大型のＴｉ（Ｎ，Ｃ）析出物が観察されたが、平均数密度では１×１０¹² 個/ｃｍ³以下であった。次に、Ｍｏを十分添加した鋼種ａについて、製造条件Ｄで製造した鋼板１６と、製造条件Ｇで製造した鋼板１７について、詳細な比較を行った。条件Ｄにより製造した鋼板１６においては、優れたＢＨ特性を示したものの耐時効性は劣っており、超微細析出物は観察されなかった。一方で同じ鋼種の条件Ｇにより製造した鋼板１７においてはＢＨ特性、耐時効性共に良好であり、超微細析出物数密度は２×１０¹⁷ 個／ｃｍ³ であった。これらの結果は、Ｍｏ添加は優れたＢＨ特性、優れた耐時効性を有する鋼板の製造条件の範囲を広げることを示すものである。
【００３９】
以上の実験から、超微細析出物を鋼中に高密度に分散させ、それらにＣまたはＮを偏析濃化させることで、常温時効を防ぎ、焼付硬化温度でトラップから離脱したＣまたはＮにより転位を固着し鋼を強化したことが示された。
これにより、高い数密度の超微細析出物を分散させた鋼を製造することによって、高いＢＨ特性と優れた耐時効性を同時に実現できている。
【００４０】
【発明の効果】
本発明により常温遅時効と焼付硬化性に優れた薄鋼板が提供され、その産業上の価値は極めて高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明によって製造した冷延鋼板における粒内マトリックスのＡＰ−ＦＩＭ測定のラダーチャートを示す図である。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a thin steel plate excellent in normal temperature slow aging and bake hardenability.
[0002]
[Prior art]
In order to reduce the weight of automobile bodies, it is desired to reduce the thickness of the steel sheet used, and the strengthening of automobile steel sheets has been studied. However, increasing the strength of the steel sheet tends to deteriorate the press formability of the steel sheet, and there has been a demand for a high-tensile steel sheet having excellent press formability. As a steel sheet that achieves both press formability and high strength, a paint bake-hardening type automobile steel sheet has been developed. This steel plate is a steel plate in which the yield stress is increased by performing a coating baking process including holding at a high temperature of usually 150 ° C. to 200 ° C. after press forming. By making solid solution C or solid solution N exist in the steel, C or N adheres to the dislocations introduced at the time of press forming by high-temperature heating during the coating baking process, thereby preventing dislocation movement and increasing the yield stress. . This increase is the bake hardening amount (BH amount).
[0003]
The amount of BH is generally increased by increasing the amount of solute C or the amount of solute N.
The problem of such a curing mechanism is as follows. In order to increase the amount of BH, when the amount of solute C or solute N is increased, some dislocations are already fixed by solute C or solute N before forming (normal temperature aging), and due to yield point elongation during press forming. It produces wavy surface defects called stretcher strains. This significantly degrades the product characteristics.
It has been a long-standing problem to solve the problem of normal temperature aging and to realize a thin steel sheet having high bake hardenability and excellent aging resistance.
[0004]
Japanese Patent Application Laid-Open Nos. 5-331553 and 7-300623 disclose methods for controlling the addition amount of Nb and Al to achieve bake hardenability and aging resistance. In this method, the amount of solid solution N and the amount of solid solution C are set to appropriate amounts so as to obtain aging resistance. When the amount of solid solution C is increased in order to increase the amount of BH, aging deterioration occurs, which is high. Steel with bake hardening properties cannot be produced.
Japanese Patent Laid-Open No. 2000-17386 discloses a method in which an appropriate amount of Mo is added to form a Mo—C dipole that is stable at room temperature in steel, thereby simultaneously obtaining room temperature aging and bake hardenability. However, models for C and N behavior that contribute to the development of these characteristics are only proposed, and there are no sufficient material design guidelines, such as realizing higher BH characteristics and lowering the baking temperature. The current situation is not enough to meet the challenges.
[0005]
JP-A-11-229085 discloses a method for producing a cold-rolled steel sheet having excellent aging resistance by optimizing the Nb / C ratio. Although it is stated that crystal grains are refined by finely dispersing NbC and the amount of grain boundary C is increased, in this method, when the bake hardening amount is increased (BH amount> 60 MPa), yield point elongation appears and normal temperature aging occurs. Sex will not be maintained.
[0006]
[Problems to be solved by the invention]
In view of such a current situation, the present invention provides a thin steel sheet excellent in normal temperature slow aging and bake hardenability.
[0007]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors have found that by fixing C or N in the steel as ultrafine precipitates, it is possible to obtain a thin steel sheet that is excellent in both room temperature slow aging and bake hardenability. The present invention has been completed by specifying the requirements to be satisfied by the fine precipitates, and the gist thereof is as follows.
(1) in mass%, C: 0.00 3 ~0.2% , N: 0.0001~0.2%, C + N: 0.002~0.3%, Si: 0.001~0.1 %, Mn: 0.01 to 1%, P: 0.001 to 0.1%, S: 0.05% or less, Al: 0.001 to 0.1%, Ti: 0.001 to 0.1 %, Nb: 0.001 to 0.1%, Mo: 0.005 to 0.25%, the balance being iron and inevitable impurities, and Ti carbide having a diameter of 1 to 10 nm in the steel And ultrafine precipitates composed of one or more of nitrides and carbonitrides at a density of 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ or more and a BH amount of 60 MPa or more. A thin steel plate with excellent room temperature slow aging and bake hardenability.
[0009]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Since the precipitates targeted by the present invention are as small as 1 to 10 nm in diameter, they are described as ultrafine precipitates in distinction from ordinary precipitates. The ultrafine precipitates are considered to be carbides, nitrides, carbonitrides, or aggregates thereof, and may be crystalline or amorphous as carbides, nitrides, carbonitrides, It does not matter whether it is a constant ratio or an indefinite ratio. Therefore, for example, Ti (N, C) is described as Ti carbide, nitride, carbonitride, or an aggregate of these, and this does not indicate the composition ratio of Ti and C and N.
[0010]
The feature of the present invention is that the interstitial atoms C or N are fixed (trapped) to such ultrafine precipitates dispersed at a high density, thereby preventing room temperature aging at room temperature. While improving the normal aging property at room temperature, high bake hardenability was realized at the same time by desorbing from the trap at a coating baking temperature of 150 to 200 ° C., moving to the dislocation position by diffusion, and fixing the dislocation.
C and N in ferritic iron have a low solid solubility at room temperature and tend to segregate and concentrate at energetically stable positions. Examples of the segregation sites include crystal defect parts such as grain boundary parts and dislocation parts. The present inventor used an atom probe field ion microscope (hereinafter abbreviated as AP-FIM) to conduct a detailed study of this segregation site. As a result, it was found that C and N were segregated and concentrated in the ultrafine precipitate. It is not clear which part of the ultrafine precipitates is segregated and concentrated, but it is considered to be near the interface with the matrix iron.
[0011]
The amount of C or N that segregates and concentrates in ultrafine precipitates depends on the precipitate size. In order to use the segregated C or N for dislocation fixing, C or N must be trapped by precipitates at room temperature, and C or N must be desorbed from the trap site at the bake hardening temperature. Therefore, an ultrafine precipitate having an optimum trap energy is effective for the precipitate size. Further, in order to diffusely supply C or N from trap sites to a large amount of dislocations introduced by press forming during baking, these trap sites must be present in a high density and dispersed in the steel. Necessary. Accordingly, the number density of ultrafine precipitates in the steel to be the trap site is required to be at least 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ^3, preferably a number density of 5 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ or more, and further 1 × 10 A number density of ¹⁸ / cm ³ or more is more preferable. If it is less than 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ , segregated C or N at the baking temperature cannot be fixed uniformly to a large amount of dislocations introduced by press molding, so aging resistance or bake hardenability is descend. Although the upper limit of the number density is not defined here, generally, the dispersion of high-density precipitates exceeding 1 × 10 ²⁰ pieces / cm ³ increases the steel strength, so that formability may be a problem. .
[0012]
The size of such ultrafine precipitates is preferably 1 to 10 nm in diameter. If it is smaller than 1 nm, it is not an effective trap site for C or N. On the other hand, if it is larger than 10 nm, it becomes a trap site for C or N, but in order to realize a number density of 1 × 10 ¹⁷ atoms / cm ³ or more, so much component must be added to the steel, Solid solution strengthening and dispersion strengthening cause a significant decrease in steel formability.
In the present invention, the type of ultrafine precipitates is not limited, but as the ultrafine precipitates used as C or N trap sites, carbides, nitrides, carbonitrides or mixtures thereof are preferable. This is because C and N have a large diffusion coefficient, so that their carbides, nitrides, and carbonitrides can be easily finely dispersed and effectively used as C or N trap sites.
[0013]
The carbide, nitride, and carbonitride are most preferably Ti carbide, nitride, and carbonitride. The reason is that Ti makes it easy to form a 1-10 nm ultrafine precipitate having an appropriate trap energy.
The reasons for limiting the components in the present invention are as follows. In addition,% represents mass%. C and N are important elements for developing the bake hardenability, and it is essential to contain C + N amount of 0.002% or more. However, if the amount of C + N is too large, the amount of solid solution increases and it becomes difficult to ensure normal temperature aging, so the upper limit was made 0.3%.
[0014]
The reason why C: 0.001% or more and N: 0.0001% or more is that reduction to less than this not only increases the cost of steelmaking, but also cannot provide high bake hardenability. . Furthermore, it is because it becomes impossible to make ultrafine precipitates made of carbon and nitride at high density. On the other hand, the reason why C is 0.2% or less and N is 0.2% or less is that when these values are exceeded, the strength becomes too high and the workability is impaired. Mn, Si, and P are basic components that are indispensable for obtaining the strength required for a thin steel plate. When Mn is less than 0.01%, Si is 0.001%, and P is less than 0.001%, the strength is insufficient. If Mn: 1%, Si: 0.1%, and P: 0.1% are exceeded, the strength becomes too high and the workability is impaired.
[0015]
If S exceeds 0.05%, red hot embrittlement occurs during hot rolling and cracks at the surface, so-called hot embrittlement may occur, so 0.05% or less is necessary.
Al is an element necessary as a deoxidizer and needs to be 0.001% or more. The reason why it is made 0.1% or less is that if it is added beyond that, the strength increases and the workability is impaired.
Ti is one of the elements that can be used for the formation of ultrafine precipitates of the present invention, and is required to be 0.001% or more in order to fix excess C, N, and S to ensure aging. The upper limit is set to 0.1% because addition exceeding the upper limit raises the recrystallization temperature and causes deterioration of workability.
[0016]
Nb, like Ti, is one of the elements that can be used to form the ultrafine precipitate of the present invention. The lower limit is set to 0.001% because it is difficult to ensure aging when the content is less than 0.1%, and the upper limit is set to 0.1% to increase the recrystallization temperature. This is because it causes deterioration of workability.
The details of the mechanism of Mo, Cr, and W are not clear, but have the effect of finely dispersing precipitates in the steel. That is, the conditions for forming the ultrafine precipitate of the present invention can be relaxed by adding one or more of these. The reason why the lower limit of the addition amount of each element is set to 0.005% is that this effect cannot be obtained if it is less than that, and the upper limit is set to 0.25% for Mo and 1.0% for Cr and W. This is because, if it exceeds that, the strength becomes high and the workability is impaired, and the alloy cost increases due to the high cost.
[0017]
In order to disperse ultrafine precipitates having a diameter of 1 to 10 nm in steel to a number density of 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ or more, for example, annealing can be performed under specific conditions. In general, when the cooling rate of annealing is slowed, the size of precipitated carbides or nitrides increases and the number density decreases. Conversely, when the cooling rate is increased, the size of the precipitated carbide or nitride is reduced and the number density is increased. However, in this case, since the amount of C or N dissolved increases, an appropriate overaging treatment (OA) becomes effective. In order to disperse ultrafine precipitates at high density, it is necessary to select annealing conditions depending on the components in steel and their concentrations.
[0018]
For example, a preferable production method is possible by limiting the annealing conditions after casting and rolling. The annealing is performed at a cooling rate of 10 to 100 ° C./s after being held at a temperature of 800 ° C. or more and an Ac 3 temperature or less. The reason why the temperature is kept at 800 ° C. or higher is to temporarily dissolve C and N, and below this temperature, they remain in the form of ordinary precipitates. In order to avoid transformation, the temperature is set to Ac3 temperature or lower. The holding time is preferably 1 minute or longer in order to obtain a sufficient effect. When the cooling rate is less than 10 ° C./s, the size of the precipitate easily exceeds 10 nm, while when it exceeds 100 ° C./s, the precipitate remains in a solid solution, and the precipitate is less likely to be generated.
[0019]
The general preferred production method has been described above. However, as described above, Mo has an effect of relaxing this condition, and the conditions for producing the steel sheet of the present invention differ depending on the steel components. It is desirable to determine the manufacturing method based on the result. The analysis of the atomic presence state using AP-FIM is performed as follows. This apparatus can examine the atomic form that cannot be observed with a transmission electron microscope (TEM) at a resolution of the crystal lattice level. The mass-to-charge ratio is determined by applying a high voltage to the needle-polished sample and measuring the time of flight of ions evaporated in the field to determine the constituent atoms. As a result, the composition of precipitates in the steel, segregated atoms, and the like can be accurately examined. In addition, the location in the steel can be determined simultaneously from the order in which the measurement data is taken.
[0020]
FIG. 1 is a ladder chart showing an example of the results of intragranular matrix measurement in a cold-rolled steel sheet manufactured according to the present invention. In the ladder chart, the horizontal axis represents the total number of detected atoms, and the vertical axis represents the cumulative number of target atoms. Therefore, the slope of the graph corresponds to the concentration of the target atom, and the slope becomes larger in the segregated and concentrated portion (arrow in the figure).
Since the horizontal axis corresponds to the order of detection ion incorporation, it represents the depth position (spatial coordinates) of the sample. It can be seen that C atoms form ultrafine precipitates together with TiN and Ti. In the steel sheet exhibiting excellent aging resistance, 1 × 10 ¹⁷ particles / cm ³ or more dispersed ultrafine precipitates were observed in the grains.
[0021]
The average number density of ultrafine precipitates was determined from the number of ultrafine precipitates observed in a matrix measurement in an arbitrary direction many times. In AP-FIM, when the measurement area | region in one measurement is small and an ultrafine precipitate is not observed, it means that the number density is small. Assuming that the number of atoms that can be measured in one measurement is 1 × 10 ⁵ , if the density of ultrafine precipitates is less than 1 × 10 ¹⁷ / cm ³ , the number of AP-FIM measurements is ultrafine in a natural probability. It is difficult to observe the precipitate. Therefore, when no ultrafine precipitate is observed by matrix measurement in an arbitrary direction by AP-FIM, it is determined that the average density is less than 1 × 10 ¹⁷ particles / cm ³ . In addition, since a TEM has a large observation area, it is possible to examine precipitates with a lower density, but ultrafine precipitates of 10 nm or less are often difficult to observe in terms of resolution.
[0022]
The size of the precipitate can be estimated from the number of atoms constituting the precipitate. Atoms are evaporated for each atomic layer by field evaporation, and the measured single atomic layer depends on the probe hole size, crystal plane orientation, radius of curvature of the tip of the needle sample, etc., but generally corresponds to 50 to 200 atoms (light metal (1992 ) P236-247). By examining how many atomic layers the precipitate extends, the size of the precipitate can be estimated. For example, in FIG. 1, it reaches about 10 atomic layers and can be regarded as a precipitate of about 2 nm.
[0023]
The aging and bake hardenability are evaluated as follows. Aging at normal temperature can be examined by holding a 70 ° C. atmosphere for 40 days, performing a tensile test, and measuring the elongation at yield (YP-El) at this time. Aging resistance was evaluated by an artificial acceleration test. The YP-El value of 0.4% or less was considered good. In addition, the bake hardenability is measured by measuring the yield stress (YP) after 2% tension and holding at 170 ° C. for 20 minutes, and the difference in strength when the 2% tensile test is performed first, that is, BH. Evaluated as a quantity.
The thin steel plate of the present invention may be either a hot rolled steel plate or a cold rolled steel plate. Further, the hot rolling process and the cold rolling process are not particularly limited. Next, the working effects of the present invention will be described more specifically by way of examples. However, they are merely illustrative, and the present invention is not unduly limited thereby.
[0024]
【Example】
A test material having the chemical composition described in Table 1 was melted. In addition,% of a chemical component represents the mass%.
[0025]
[Table 1]

[0026]
Under the conditions described in Table 2, hot rolling and cold rolling were performed, followed by annealing to obtain a cold rolled steel sheet.
[0027]
[Table 2]

[0028]
Table 3 shows the results of the mechanical test. Where ex. C is a value obtained by subtracting the amount precipitated by Ti and Nb from the amount of added C, and was estimated by the formula shown in the table.
[0029]
[Table 3]

[0030]
(Example 1) Steel types c and e shown in Table 1 were used, and cold-rolled steel sheets were produced under the production conditions described in Table 2. The finishing temperature of hot rolling was 900 ° C., and the winding temperature was 600 to 700 ° C. The cold rolling rate was 70 to 80%, and cold rolling was performed to a thickness of 0.8 mm. After cold rolling, an annealing treatment was performed at 800 to 820 ° C. for 3 minutes and cooled at various cooling rates. Further, some were overaged (OA). The annealed steel sheet was temper rolled at 1% to obtain a cold-rolled steel sheet. Table 3 shows the results of the mechanical properties of the steel plates (steel plates 1 to 8 ) produced and the average number density of ultrafine precipitates examined by AP-FIM . Te steels e smell, the production conditions of E, showed good aging resistance ultra-fine precipitates were observed. Under other conditions, the precipitate density was small or the size was larger than 10 nm and the BH amount was good, but the aging resistance was not good. (Deleted below)
[0031]
Thereby, high BH characteristics and excellent aging resistance can be realized at the same time by manufacturing steel in which high number density ultrafine precipitates are dispersed.
(Example 2) Steels (steel types a to g) whose components were adjusted as shown in Table 1 were made into cold-rolled steel sheets according to production conditions B shown in Table 2 (steel sheets 9 to 15 ). The finishing temperature of hot rolling was 900 ° C., and the winding temperature was 650 ° C. The cold rolling rate was 70%, and cold rolling was performed to a thickness of 0.8 mm. After cold rolling, an annealing treatment was performed at 800 ° C. for 1 minute. The annealed steel sheet was temper rolled at 1% to obtain a cold-rolled steel sheet.
[0032]
In Table 3, the YPEL value for evaluating aging resistance was examined by accelerated aging at 100 ° C. × 1 hour.
ex. The higher the C content, the higher the BH value, ex. A steel with C of 0.003% or more has a high BH value of 60 MPa or more. When the aging resistance of these steels is evaluated by the yield point elongation, the steel sheets 9 and 14 to which a sufficient amount of Mo is added show excellent aging resistance. Also, Oite the steel plate 10, 12 slightly added to Mo, shows aging resistance. On the other hand, in steel plates 11, 13 , and 15 to which Mo is not added, large yield point elongation appears and aging resistance is not obtained. In the steel sheet exhibiting slow aging, ultrafine precipitates could be observed in the steel by AP-FIM, which is considered to have influenced the slow aging.
[0033]
Furthermore, 0.134% of Mo and 0.0037% of C were added, and the steel plate 9 manufactured under the manufacturing condition B was compared in detail with respect to the steel plate 11 having the same C amount and no addition of Mo. In the case of the steel plate 9, the number density of ultrafine precipitates is 1 × 10 ¹⁸ pieces / cm ³ and the BH amount exceeds 60 MPa, but the elongation at yield point is 0.1% or less, which is very good room temperature slow aging. Indicated. On the other hand, in the steel plate 11 , the number density of ultrafine precipitates is not observed (it is judged to be less than 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ ), and the BH amount exceeds 60 MPa, but the YP-El value is 1.0. %, Room temperature slow aging was not observed. In this steel, stretcher strains appeared during press working.
[0034]
Table 4 shows an example of the atomic composition of ultrafine precipitates observed by AP-FIM in the steel sheet 9 showing good bake hardenability and room temperature slow aging.
[0035]
[Table 4]

[0036]
The ultrafine precipitate was composed of a composite of C, Ti, and N of several to tens of atoms, and the size was several nm or less. When the composition was examined, the number of C atoms was larger than {(number of Ti atoms) − (number of N atoms)}, indicating the presence of surplus C. That is, this ultrafine precipitate is a segregation-concentrated C of TiN or TiC ultrafine precipitate. The amount of segregated C depends on the size of Ti (N, C), and it was found that extra C is present in excess of several tens of atoms in ultrafine precipitates composed of more than ten atoms. In AP-FIM, since the detection rate of ions is about 60%, the actual number of atoms is larger than this. Furthermore, since TiC precipitates generally have a composition of TiC _x (x ≦ 1), the amount of surplus C is underestimated here.
[0037]
On the other hand, when the amount of dissolved C was examined by AP-FIM measurement, the average concentration was 0.0005% by mass or less, and it was found that most of C contained in the steel was segregated and concentrated in ultrafine precipitates. . Next, the same observation was performed on a sample obtained by applying a 2% tensile pre-strain to the steel sheet 9 and baking and hardening at 170 ° C. for 20 minutes. However, no stoichiometric excess C was measured in the ultrafine precipitate. That is, it is considered that C segregated and concentrated in ultrafine precipitates diffused into dislocations during the bake hardening process and became a source of dislocation fixation (formation of Cottrell atmosphere).
[0038]
On the other hand, although the same observation was tried also about the test material (steel plate 11 ) which does not add Mo, the ultrafine precipitate was not observed in steel by the matrix measurement by AP-FIM. This means that the number density of precipitates is less than 1 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ . When TEM observation was performed, relatively large Ti (N, C) precipitates of 50 nm or more were observed, but the average number density was 1 × 10 ¹² pieces / cm ³ or less. Next, with respect to the steel type a to which Mo was sufficiently added, the steel plate 16 manufactured under the manufacturing condition D and the steel plate 17 manufactured under the manufacturing condition G were compared in detail. In the steel plate 16 produced under the condition D, although excellent BH characteristics were exhibited, the aging resistance was inferior, and ultrafine precipitates were not observed. On the other hand, in the steel plate 17 manufactured on condition G of the same steel type, both BH characteristics and aging resistance were good, and the number density of ultrafine precipitates was 2 × 10 ¹⁷ pieces / cm ³ . These results indicate that the addition of Mo broadens the range of manufacturing conditions for steel sheets having excellent BH characteristics and excellent aging resistance.
[0039]
From the above experiments, ultrafine precipitates are dispersed in steel at high density, and C or N is segregated and concentrated to prevent aging at room temperature, and dislocation is caused by C or N released from the trap at the bake hardening temperature. It was shown that the steel was strengthened by fixing.
Thereby, high BH characteristics and excellent aging resistance can be realized at the same time by manufacturing steel in which high number density ultrafine precipitates are dispersed.
[0040]
【The invention's effect】
According to the present invention, a thin steel sheet excellent in slow aging at room temperature and bake hardenability is provided, and it can be said that its industrial value is extremely high.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing a ladder chart of AP-FIM measurement of an intragranular matrix in a cold rolled steel sheet manufactured according to the present invention.

Claims

% By mass
C: 0.00 3 ~0.2%,
N: 0.0001 to 0.2%,
C + N: 0.002 to 0.3%,
Si: 0.001 to 0.1%,
Mn: 0.01-1%,
P: 0.001 to 0.1%,
S: 0.05% or less,
Al: 0.001 to 0.1%,
Ti: 0.001 to 0.1%,
Nb: 0.001 to 0.1%,
Mo: 0.005 to 0.25% contained, the balance being iron and inevitable impurities, and any of Ti carbide, nitride, and carbonitride having a diameter of 1 to 10 nm in the steel It contains one or two or more ultrafine precipitates at a density of 1 × 10 ¹⁷ particles / cm ³ or more and has a BH amount of 60 MPa or more, which is excellent in normal temperature slow aging and bake hardenability. Thin steel plate.