JP3913592B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムに係り、特に燃料電池の酸素極から排出されるオフガス中の水素を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜を燃料極と酸素極とで両側から挟み込んで形成されたセルに対し、複数のセルを積層して構成されたスタック(以下において燃料電池と呼ぶ)を備えており、燃料極に燃料として水素が供給され、酸素極に酸化剤として空気が供給されて、燃料極で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過して酸素極まで移動して、酸素極で酸素と電気化学反応を起こして発電するようになっている。
【0003】
このような固体高分子膜型燃料電池等の燃料電池において、従来、例えば特開平6−223850号公報に開示された燃料電池の保護装置のように、燃料電池の酸素極側の排出系に水素検出器を備え、この水素検出器によって、燃料極側の水素が固体高分子電解質膜を通じて酸素極側に漏洩したことを検知したときは、燃料の供給を遮断する保護装置が知られている。
また、水素検出器としては、例えば白金等の触媒からなるガス検出素子と温度補償素子とを一対備え、水素が白金等の触媒に接触した際の燃焼により発生する熱によってガス検出素子が相対的に高温の状態になったときに、例えば雰囲気温度下等の相対的に低温の状態の温度補償素子との間に生じる電気抵抗の差異に応じて、水素ガスの濃度を検出するガス接触燃焼式の水素検出器が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような固体高分子膜型燃料電池等の燃料電池においては、固体高分子電解質膜のイオン導電性を保つために、燃料電池に供給される反応ガス(例えば、水素や空気)には加湿装置等によって水(加湿水)が混合されており、さらに、燃料電池の作動時には電気化学反応による反応生成水が生成される。
このため、上記従来技術の一例に係る燃料電池の保護装置においては、燃料電池から排出される高湿潤のオフガスによって、オフガスの流路内に配置された水素検出器等に結露が発生する場合があり、この場合には、水素検出器の劣化や破損等が生じる虞がある。特に、上述した固体高分子膜型燃料電池は、通常作動温度が、水の蒸気化温度よりも低く、オフガスは多湿度で水分量が多いガスとなって排出されるため、オフガス中の水分が結露しやすいという問題がある。
また、前述のガス接触燃焼式の水素検出器を燃料電池の、特に、酸素極側の排出系に備える場合などは、ガス検出素子に加湿水、反応生成水等が付着すると、素子表面に局所的な温度分布の不均一が発生し、素子破壊や感度低下をもたらす虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、燃料電池の酸素極から排出されるオフガスに含まれる水素量を検知し、燃料電池の状態を検知する装置で、このオフガス中の水素を検出する水素検出器において結露が発生することを防止することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の燃料電池システムは、水素を燃料極へ、酸素を酸素極へ供給することによる電気化学反応によって発電する燃料電池と、前記燃料電池の酸素極から排出されるオフガス(例えば、後述する実施の形態におけるカソードオフガス)を流通させるカソードオフガス流通管(例えば、後述する実施の形態におけるカソードオフガス配管11B)と、前記カソードオフガス流通管に設けられ、前記オフガス中の水素を検出する水素検出器(例えば、後述する実施の形態における水素検出器12)と、前記燃料電池の内部に設けられた媒体流路(例えば、後述する実施の形態における燃料電池11の媒体流路)と、前記媒体流路に熱交換媒体を流通させる媒体供給手段(例えば、後述する実施の形態における冷却回路14)と、前記燃料電池の前記媒体流路から排出される前記熱交換媒体によって前記水素検出器を加熱する加熱手段(例えば、後述する実施の形態におけるライザー部材15)とを備えることを特徴としている。
【0006】
上記構成の燃料電池システムによれば、媒体供給手段は燃料電池の内部に設けられた媒体流路に熱交換媒体を供給することによって、燃料電池を冷却する。これに伴い、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を水素検出器へ供給することによって、水素検出器の温度を上昇させる。これにより、水素検出器の温度と、燃料電池の酸素極から排出されるオフガスの温度との間の温度差を小さくすることができ、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを防止することができる。
【0007】
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池システムでは、前記加熱手段は、前記燃料電池の前記媒体流路から排出される前記熱交換媒体を流通させる媒体流通路(例えば、後述する実施の形態におけるライザー流路31)と、前記媒体流通路に接続され、前記水素検出器の検知部(例えば、後述する実施の形態における検知素子、ガス検知室等)周囲を取り囲む流通路(例えば、後述する実施の形態における流路59)とを備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の燃料電池システムによれば、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を、水素検出器の検知部周囲を取り囲む流通路に供給することによって、水素検出器の温度を上昇させる。これにより、水素検出器の温度と、燃料電池の酸素極から排出されるオフガスの温度との間の温度差を小さくすることができ、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを防止することができる。
しかも、水素検出器の検知部、例えば検知素子やガス検知室等の周囲を取り囲むようにして流通路を設けたことにより、結露の発生防止が強く望まれる部位に効率的に高温の熱交換媒体を供給することができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池システムでは、前記加熱手段は、前記媒体流通路を分岐する分岐手段(例えば、後述する実施の形態における分岐部14a)と、前記分岐手段により分岐され、前記流通路に接続される一方の前記媒体流通路において、前記分岐手段と前記流通路との間に設けられた流量調整手段(例えば、後述する実施の形態におけるオリフィス31a)とを備えることを特徴としている。
【0010】
上記構成の燃料電池システムによれば、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を、水素検出器の周囲を取り囲む流通路に供給する際に、流量調整手段により流量を調整することによって、水素検出器の温度上昇や温度維持等を容易に制御することができる。これにより、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを、より一層、防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムについて添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る燃料電池システム10の構成図であり、図2はライザー部材15を破断して示す水素検出器12の分解斜視図である。
本実施の形態による燃料電池システム10は、例えば電気自動車等の動力源として車両に搭載されており、例えば、燃料電池11と、水素検出器12と、加湿器13と、冷却回路14と、ライザー部材15とを備えて構成されている。
【0012】
燃料電池11は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を燃料極と酸素極とで両側から挟み込んで形成されたセルに対し、複数のセルを積層して構成されたスタックからなり、燃料として水素が供給される燃料極と、酸化剤として例えば酸素を含む空気が供給される酸素極とを備えている。
燃料電池11の酸素極には、図示しない空気供給源より空気が供給される空気供給口11aと、酸素極内の空気等を外部に排出するための空気排出口11bが設けられている。一方、燃料極には、図示しない水素供給源より水素が供給される燃料供給口11cと、燃料極内の水素等を外部に排出するための燃料排出口11dが設けられている。
【0013】
燃料電池11の空気排出口11bには、燃料電池11から排出される空気(カソードオフガス)の流路となるカソードオフガス配管11Bが接続され、このカソードオフガス配管11Bには水素検出器12が備えられている。水素検出器12は、後述するように、ライザー部材15を介してカソードオフガス配管11Bの外周面上に着脱可能に装着され、水素を検知する検知部52がカソードオフガス配管11B内に露出するように配置されている。
加湿器13は、燃料電池11の酸素極に供給される空気を加湿することによって、燃料電池11の固体高分子電解質膜のイオン導電性を確保する。
【0014】
さらに、燃料電池11の内部には、外部から供給される冷却媒体が循環する媒体流路(図示略)が設けられており、この媒体流路は冷却回路14に接続されている。
冷却回路14は、冷媒循環用コンプレッサ21と、放熱器22とを備えて構成され、放熱器22から供給される冷却媒体は、冷媒循環用コンプレッサ21を介して、燃料電池11の媒体流路へ供給されている。そして、燃料電池11の媒体流路を流通する過程において熱交換反応により加熱された冷却媒体は、媒体流路から排出された後に、分岐部14aにおいて2つの流路に分岐させられ、一方の流路の冷却媒体は水素検出器12を加熱するためのライザー流路31へ供給され、このライザー流路31から排出された一方の冷却媒体は、他方の流路の冷却媒体と混合されて放熱器22へ供給され、循環させられる。
【0015】
図2に示すように、水素検出器12は、例えば、カソードオフガス配管11Bの外周面上に固定されたライザー部材15に着脱可能とされている。
水素検出器12は、内部に回路基板等を備える略直方体状の回路部51と、回路部51の表面上から突出する略筒状の検知部52とを備えて構成されている。
【0016】
検知部52は、図示しないガス検知室と検知素子と温度補償素子とを備えて構成され、略筒状の検知部52の内部がガス検知室とされ、このガス検知室内に、検知素子と温度補償素子とが所定間隔を隔てて一対設けられている。ここで、検出素子は周知の素子であり、検知部52は、被検出ガスである水素が白金等の触媒に接触した際に燃焼する熱を利用し、水素の燃焼により高温となった検出素子と雰囲気温度下の温度補償素子との間に電気抵抗の差が生ずることを利用し、水素ガス濃度を検出するガス接触燃焼式のガスセンサである。
【0017】
回路部51の側面には、信号入出力用のコネクタ51aと、ボルト挿入孔を有する継手部51b,51bとが、側面上から突出するようにして設けられている。検知部52の外周面上には周方向に伸びる円環状の凹溝が形成され、この凹溝に円環状のシール材52aが装着されており、シール材52aの外周面は、検知部52の外周面よりも僅かに外周側に向かい突出するように設定されている。
【0018】
略直方体状のライザー部材15は、水素検出器12の検知部52と同等あるいは検知部52よりも僅かに大きな径の検知部挿入孔56を備え、この検知部挿入孔56が、カソードオフガス配管11Bに設けられた貫通孔57に臨むようにしてカソードオフガス配管11Bに固定されている。なお、ここで、カソードオフガス配管11Bに設けられた貫通孔57は検知部挿入孔56と同等の径を有している。
ライザー部材15の側面には、ライザー流路31に接続される媒体供給管58aおよび媒体排出管58bと、ボルト挿入孔を有する継手部58c,58cとが、側面上から突出するようにして設けられている。
【0019】
すなわち、ライザー部材15の検知部挿入孔56に水素検出器12の検知部52が挿入された状態で、水素検出器12の継手部51b,51bの各ボルト孔が、ライザー部材15の継手部58c,58cの各ボルト孔に臨むように配置され、各ボルト孔がボルト止めされることによって、水素検出器12とライザー部材15とが接続されている。
ここで、検知部52の外周面上から突出するシール材52aが、ライザー部材15の検知部挿入孔56に連通する貫通孔57の内周面に当接することによって、カソードオフガス配管11B内のカソードオフガスが貫通孔57から外部に漏洩することを防止している。
【0020】
ライザー部材15の内部には、媒体供給管58aから供給される加熱された冷却媒体を流通させ、媒体排出管58bへと排出させる流路59が、検知部挿入孔56を取り囲むようにして設けられている。
すなわち、ライザー部材15の検知部挿入孔56に挿入された水素検出器12の検知部52は、流路59を流通する加熱された冷却媒体によって適宜の温度まで加熱される。
なお、ライザー部材15の媒体供給管58aに接続されるライザー流路31には、オリフィス31aが設けられており、ライザー部材15の流路59に供給される冷却媒体の流量が適宜の流量となるように設定されている。
【0021】
上述したように、本実施の形態による燃料電池システム10によれば、カソードオフガス配管11Bに設けられた水素検出器12は、燃料電池11を冷却する過程で加熱された冷却媒体によって加熱されるため、水素検出器12の検知部52の温度を、例えばカソードオフガスの温度と同等あるいは近傍の温度に設定することができる。これにより、水素検出器12の検知部52の温度と、カソードオフガスの温度との温度差を小さくすることによって、水素検出器12の検知部52に結露が発生することを防止することができる。
そして、水素検出器12が水素を検出した場合には、例えば固体高分子電解質膜の劣化あるいは破損等が発生した虞があると判断して、燃料電池システム10の運転停止等の対策を速やかに講ずることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の燃料電池システムによれば、媒体供給手段は燃料電池の内部に設けられた媒体流路に熱交換媒体を供給することによって、燃料電池を冷却する。これに伴い、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を水素検出器へ供給することによって、水素検出器の温度を上昇させる。これにより、水素検出器の温度と、燃料電池の酸素極から排出されるオフガスの温度との間の温度差を小さくすることができ、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを防止することができる。
【0023】
さらに、請求項2に記載の本発明の燃料電池システムによれば、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を、水素検出器の検知部周囲を取り囲む流通管に供給することによって、水素検出器の温度を上昇させる。これにより、水素検出器の温度と、燃料電池の酸素極から排出されるオフガスの温度との間の温度差を小さくすることができ、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを防止することができる。しかも、水素検出器の検知部、例えば検知素子やガス検知室等の周囲を取り囲むようにして流通路を設けたことにより、結露の発生防止が強く望まれる部位に効率的に高温の熱交換媒体を供給することができる。
【0024】
さらに、請求項3に記載の本発明の燃料電池システムによれば、加熱手段は、燃料電池の媒体流路から排出される相対的に高温の熱交換媒体を、水素検出器の周囲を取り囲む流通管に供給する際に、流量調整手段によって流量を調整することによって、水素検出器の温度上昇や温度維持等を容易に制御することができる。これにより、オフガスに含まれる水分によって水素検出器に結露が発生することを、より一層、防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】 図1に示す水素検出器のライザー部材を破断して示す水素検出器の分解斜視図である。
【符号の説明】
10 燃料電池システム
11 燃料電池
11B カソードオフガス配管
12 水素検出器
14 冷却回路(媒体供給手段)
14a 分岐部(分岐手段)
15 ライザー部材(加熱手段)
31 ライザー流路(媒体流通路)
31a オリフィス(流量調整手段)
59 流路(流通路)

Claims (3)

  1. 水素を燃料極へ、酸素を酸素極へ供給することによる電気化学反応によって発電する燃料電池と、
    前記燃料電池の酸素極から排出されるオフガスを流通させるカソードオフガス流通管と、前記カソードオフガス流通管に設けられ、前記オフガス中の水素を検出する水素検出器と、
    前記燃料電池の内部に設けられた媒体流路と、
    前記媒体流路に熱交換媒体を流通させる媒体供給手段と、
    前記燃料電池の前記媒体流路から排出される前記熱交換媒体によって前記水素検出器を加熱する加熱手段と
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記加熱手段は、前記燃料電池の前記媒体流路から排出される前記熱交換媒体を流通させる媒体流通路と、
    前記媒体流通路に接続され、前記水素検出器の検知部周囲を取り囲む流通路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記加熱手段は、前記媒体流通路を分岐する分岐手段と、
    前記分岐手段により分岐され、前記流通路に接続される一方の前記媒体流通路において、前記分岐手段と前記流通路との間に設けられた流量調整手段と
    を備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
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