JP3910991B2 - ロベリア属の種間雑種およびその作出方法 - Google Patents

ロベリア属の種間雑種およびその作出方法 Download PDF

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Description

本発明は、遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)でありながら、当該F1がその雑種第一代の特性において均一性の高い集団とならず、種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離することを特徴とする、新規なロベリア(Lobelia)属の種間雑種とその作出方法に関する。また本発明は、当該雑種の花粉、胚珠、種子、穂木等の各種の細胞、組織、若しくは器官とその後代に関する。
一般的に遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)は、遺伝的、形態的に均一性の高い集団となる。なお、同じ属内であっても種間雑種が得られない組合せも多く存在するが、交雑親和性の有無については実際に交配して確認するしか判別方法はない。交雑不親和性を回避する方法としては、胚珠培養や胚培養が実用化されているが、この技術によっても雑種ができる組合せは一部であり、また雑種が作出できるかどうかは実際に培養してみなければわからないのが現状である。
特に、野生種同士のF1は遺伝的、形態的に均一性の高い集団となるために、F1当代で育成者の望む形態(両親の長所を併せ持ち、両親の形質を遥かに凌駕する)を示す個体が得られる可能性は低い。
ロベリア属には約375もの種があり、一年性、多年性、潅木性、木本性といった多様な性質を有し、その殆どが熱帯や暖かい気候の地域に生息している。
ロベリア属内では種間雑種が作出された組合せが幾つか存在する(特許文献1〜3参照)が、ロベリア・リチャードソニー(Lobelia richardsonii)とロベリア・バリダ(Lobeliavalida)の正逆交配で雑種が作出された報告はまだない。また、これまで作出されたロベリアの種間雑種はすべて通常の交雑のみによって得られており、交雑と胚珠培養との組合せによって雑種が作出された報告もない。
米国植物特許10758号 米国特許公開公報20020092044号 米国植物特許12536号
ロベリア・バリダ(野生種)は高温に強いが草姿のバランスが悪く立性であり、大株(横に這うと同時にコンモリと立つ)になり難いという欠点を持っていることから、大株になる品種の育成が待ち望まれている。
一方、ロベリア・リチャードソニー(野生種)は高温に強いが完全ホフク型であり、極めて長日開花性が強いため、開花する時期が非常に短いという欠点と、花着きが少ないという欠点を持っていることから、連続的に開花し、花着きの多い品種の育成が待ち望まれている。
従って、本発明の課題は、花粉親に似たものから種子親に似たものまで連続的に分離し、耐暑性があるF1個体が得られるような両親の組合せを見出し、その中から所望のF1個体を育種することにある。
前記課題を解決するために発明者は研究を重ね、種々の種間交雑組合せの中で、ロベリア・リチャードソニーを種子親にロベリア・バリダを花粉親とすると、遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)でありながら、当該F1が種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離し、耐暑性があることを見出した。また、得られたF1個体のうち以下の受託番号で代表される四系統はいずれも花粉親より大株であり、種子親よりも早生で開花期が長く、春から秋まで連続開花した。そして、この四系統から、花が大輪で、花着きがよく(多数の花を咲かせ)、大株になる二系統:受託番号FERM BP−10287とFERM BP−10288を得ることができた。
また、発明者は、交配後に胚珠培養を行うことで、雑種胚の枯死を防止して、より効率的に雑種を獲得できることを見出した。
すなわち本発明は、ロベリア・リチャードソニー(種子親)とロベリア・バリダ(花粉親)を交配して得られる、遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)でありながら、当該F1が種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離することを特徴とするロベリア属に属する新規な植物を提供する。
前記植物の好適な一例としては、例えば、受託番号FERM BP−10301、FERM BP−10287、FERM BP−10288、またはFERM BP−10302で特定されるロベリア属植物を挙げることができる。
本発明は、本発明にかかるロベリア属植物の一部、すなわち花粉、胚珠、種子、穂木等の植物の細胞、組織、または器官、およびそれらの培養物も提供する。
本発明はまた、本発明にかかるロベリア属植物の後代も提供する。
本発明は、本発明にかかるロベリア属に属する新規な植物集団の作出方法も提供する。前記方法は、1)ロベリア・リチャードソニー(種子親)とロベリア・バリダ(花粉親)を交配し、2)交配後の肥大子房から摘出した肥大胚珠を培養し、植物集団を得る、工程を含む。
前記方法で得られたロベリア属に属する新規な植物は、後代を得るためにさらに別な公知のロベリア属に属する植物と交配してもよい。例えば、当該F1同士を、自家受粉または他家受粉により交配し、ロベリア属に属する新規な植物を育種することができる。
本発明により、野生種同士のF1であっても幅広い多様性を示す事例が示された。これにより、ロベリア属内においてF1での多様性を期待した野生種同士の雑種作出がより積極的に取り組まれるようになる。
本発明で得られたロベリア属に属する新規な植物は、種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離し、耐暑性があるため、従来品種では植栽不可能であった時期や場面での植栽が可能となり、結果としてロベリアの市場拡大が期待できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.ロベリア属に属する新規な植物
本発明にかかる「ロベリア属に属する新規な植物」は、ロベリア・リチャードソニーを種子親、ロベリア・バリダを花粉親として、交配して得られるロベリア属に属する新規な植物である。本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」は、遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)でありながら、当該F1が種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離し、耐暑性があるため、高温期(日本の真夏の昼間の温室内の気温、すなわち約30〜40℃)においても成長を停止したり、枯死したりすることがない。
好ましくは、本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」は、花粉親より大株であり、種子親よりも早生で開花期が長く、春から秋まで連続開花するという特性を有する。
より好ましくは、本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」は、花が大輪で、花着きがよく(多数の花を咲かせ)、大株になるという特性を有する。ここで、「大株」とは、株張り(円に見立てたときの株の直径)が60cm以上、好ましくは80cm以上、さらに好ましくは1m以上を意味し、「大輪」とは、花の直径が約20mm〜40mm程度を意味し、「花着きがよい」とは、1株あたりの花数が、100〜500個、好ましくは200〜500個、さらに好ましくは300〜500個になることを意味する。
本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」の代表例として、系統:No.22、No.26、No.63、No.77を例示できる。No.26は種子親に近い草姿の系統、No.63は種子親に近い中間型の草姿の系統、No.77は花粉親に近い中間型の草姿の系統、No.22は花粉親に近い草姿の系統である。これらの系統の諸特性は、表1に記載のとおりである。
上記No.22、No.26、No.63、No.77については、そのカルスが、それぞれ受託番号:FERM BP−10301、FERM BP−10287、FERM BP−10288、FERM BP−10302として、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、FERM BP−10287とFERM BP−10288については2005年3月4日付、FERM BP−10301とFERM BP−10302については2005年3月23日付でそれぞれ国際寄託されている。
本発明の範囲には、本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」の一部、すなわち、その細胞、組織、器官も含まれる。前記細胞、組織、器官は、植物のあらゆる分化過程における全ての細胞、組織、器官を含む。すなわち、前記細胞は単一であっても集合体(細胞塊)であってもよく、プロトプラスト、スフェロプラストも含まれる。前記組織も単一であっても集合体であってもよく、表皮組織、柔組織、師管・師部繊維等の師部組織、道管・仮道管・木部繊維等の木部組織など、あらゆる組織が含まれる。また前記器官には、茎、塊茎、葉、根、塊根、穂木、蕾、花、花弁、雌ずい、雄ずい、葯、花粉、子房、果実、さや、さく果、種子、繊維、胚珠、胚などあらゆる器官が含まれる。
好ましい態様において、前記細胞、組織、器官は再生可能な状態であって、細胞培養、組織培養、器官培養等の培養物として提供される。このような培養物としては、例えば、茎頂培養物、腋芽を含む節培養物、茎や茎片の培養物、葉や葉片の培養物、根や根片の培養物、花弁の培養物を挙げることができ、常法に従い、当該培養物から本発明の植物個体を再生しうる。
細胞培養や組織培養は、細胞分裂活性が高い部位、例えば、新芽の茎頂、側芽、休眠芽等の細胞や組織を用い、適当な環境条件を設定することにより、植物の大量増殖を可能にするため、種子繁殖や栄養繁殖に代わる植物の増殖法として有用である。
例えばこのような増殖法として、以下のような方法がある。圃場または温室で維持されている株から一腋芽を含む節の部分に切断して育苗用の市販用土に挿すことで増殖することができる。
また、切断した一腋芽を含む節の部分を以下の実施例1の肥大子房の減菌方法に従って減菌してから、例えば以下の2で記載されているような植物組織培養用の培地(MS培地、White培地、Nitsch培地等であれば特に限定されない)に置床し、節が伸びて新たな腋芽を形成した時点(通常置床から4週間程度)で、一腋芽を含む節部分に切断して同一組成の培地に置床する作業を繰り返すことによって増殖することができる。当該培地は公知の方法に従って調製することができる。通常、上記の植物組織培養用の培地に糖源としてシュークロース、グルコース、フラクトース等を単独または適宜組合わせて0.1〜6%(重量比)、好ましくは1〜4%加え、培地のpHを5〜6、好ましくは5.6〜5.8に調整後に固化剤として寒天(0.4〜1.2%:重量比、好ましくは0.6〜1.0%)またはゲランガム(0.1〜0.4%:重量比、好ましくは0.15〜0.25%)等を加えてからオートクレーブによる培地減菌を行なうこと(例えば121℃、15分)で調製することができる。この場合、固化剤を加える前にオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質の添加は特に必要ないが、例えば各種のサイトカイニン(ゼアチン、6−ベンジルアデニン、カイネチン等)やGA等のジベレリン酸類等を単独または適宜組み合わせて用いれば増殖(節伸長)が更に促進されることがある。なお、本増殖培地は固体培地のみならず液体培地でも使用可能である。培養条件も特に限定されないが、通常、照度400〜6500lux、12〜20時間日長、温度20〜30℃程度が好ましく、例えば、より好ましくは照度600〜2000lux、16時間日長、温度25±2℃の条件を設定することができる。
2.ロベリア属に属する新規な植物の作出方法
本発明の「ロベリア属に属する新規な植物」は、ロベリア・リチャードソニーを種子親、ロベリア・バリダを花粉親として交配することにより作出できる。交配後に雑種胚が枯死することを防止し、より効率的に雑種を獲得するために、交配後に胚珠培養(Wakizuka, T. and Nakajima, T., 1974. Jpn. J. Breed., 24:182-187)を行うことが好ましい。
例えば、交配から約7〜10日後に肥大子房の中から肥大胚珠を摘出し、常法に従って滅菌後、培地上で無菌的に胚珠を培養する。胚珠培養に用いられる培地は、MS培地、White培地、Nitsch培地等、植物の組織培養に通常用いられる培地であれば特に限定されない。また培養条件も特に限定されないが、通常、照度400〜6500lux、12〜20時間日長、温度20〜30℃程度が好ましく、例えば、照度600〜2000lux、16時間日長、温度25±2℃の条件を設定することができる。
胚珠培養から約1.5〜2ヶ月程度で幼植物体を得ることができる。幼植物体は、温室内で育苗用の市販用土(例えば、サンシャインミックス(サン グロ ホルティカルチャー社製)等)に順化後、鉢植え栽培することにより、開花させることができる。得られたF1植物は種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離するため、その中から所望の形質を有する種間雑種を選抜することができる。
また得られたF1植物は、さらに別のロベリア属に属する植物と交配してもよい。例えば、得られたF1同士を自家受粉により交配することで、その形質を固定することができる。あるいは、得られたF1植物を別な形質を有するF1植物と他家受粉により交配することによって、新たなロベリア属に属する植物を得ることもできる。
一旦、本発明にかかる「ロベリア属に属する新規な植物」が得られれば、後はその種子、茎、葉、根等の植物体の一部(挿し木、株分け等の栄養繁殖)、あるいは培養物を用いて、常法により当該植物の後代(子孫)を得ることができる。そのような後代も本発明の範囲に含まれる。後代を得る方法としては、他に自然または人為での突然変異、細胞融合、遺伝子組換え等の公知の方法を単独若しくは適宜組み合わせて使用することができる。
以下、参考例および実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例
以下の実施例では、ロベリア・リチャードソニーとして市販品種:モネを使用した。本品種の遺伝的な安定性は、上述したような圃場または温室で維持されている株から一腋芽を含む節の部分に切断して育苗用の市販用土(サンシャインミックス:サン グロ ホルティカルチャー社製)に挿すことで生育させ、更にそこから複数の腋芽を含む複数の節を一腋芽を含む節の部分に切断して増殖させ、更に生育させて得た100個体、および本品種の自殖後代の50個体が、いずれも本品種の特性とほぼ同じであり、均一性に優れたものであることを確認することで、確かめた。
実施例1.
ロベリア・リチャードソニー(市販品を利用、品種名:モネ)とロベリア・バリダ(市販品を利用)との正逆交雑を行った。その結果、ロベリア・バリダを種子親、ロベリア・リチャードソニーを花粉親とする交雑では全く子房の肥大がみられないが、ロベリア・リチャードソニーを種子親、ロベリア・バリダを花粉親とする交雑では稀に子房が肥大することを確認した。
肥大子房を切開して内部を調べたところ、肥大子房の中には子房あたり1〜2個の肥大胚珠が存在した。肥大子房はある程度時間が経つと種子が完熟するまでに萎れてしまうことが多く観察されたため、交雑後7〜10日を経過した肥大子房から摘出した肥大胚珠を胚珠培養法により培養した。すなわち交雑後7〜10日を経過した肥大子房をクリーンベンチに持ち込んでビーカーに70%エタノール液を入れて約10秒間浸漬し、引き続き0.5%有効塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウム液に入れ替えて約7分間浸透しながら滅菌したのち、滅菌水で十分に洗浄し、更に滅菌したろ紙で水分を拭き取った。滅菌された肥大子房から光学顕微鏡下でメスを用いて胚珠(約200個)を切り出し、MS(ムラシゲ&スクーグ Plant Physiol 15:473-497, 1962)の無機塩組成に糖源としてショ糖3重量%を加え、さらにジベレリン(GA)が1000ppmになるように調整し、寒天(和光社製)0.8%で固化した滅菌(121℃、1atm)培地(pH5.8に調製)に置床し、培養庫(照度700lux、16時間日長、温度25±2℃)で培養することにより、約1.5〜2ヶ月で約2cmの幼植物体(86個体)を獲得した。
得られた幼植物体は順次、温室(20〜25℃、自然日長)でセル苗育苗用の用土に順化し、その後鉢植えで栽培することにより開花したので、計86個体の諸特性につき調査した。
その結果、得られたF1はその形態が通常のF1当代で考えられる程度を越え、非常に多様性に富んでいた。すなわち、草姿が種子親であるロベリア・リチャードソニー(品種名:モネ)に近い個体から花粉親であるロベリア・バリダに近い個体まで連続的な形態を示した(図1)。その出現の内訳(比率)は、No.26を含む種子親に近いもの25個体(29.1%)、No.63を含む種子親に近い中間型39個体(45.3%)、No.77を含む花粉親に近い中間型が14個体(16.3%)、No.22を含む花粉親に近いものが8個体(9.3%)であった。
これらの植物が種間交雑植物であることを、生育状況や開花時の形態観察により確認した。
なお、上記No.22、No.26、No.63、No.77は、そのカルスが、それぞれ受託番号:FERM BP−10301、FERM BP−10287、FERM BP−10288、FERM BP−10302として、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、FERM BP−10287とFERM BP−10288については2005年3月4日付、FERM BP−10301とFERM BP−10302については2005年3月23日付でそれぞれ国際寄託されている。
結果的にF1当代でありながら、育成者の期待する形質を有する個体が1タイプだけでなく、種子親に近いもの(完全ホフク型で大株になる)、種子親に近い中間型(半ホフク型:1次分枝が完全にホフクし大株になるが2次分枝は斜上する)、花粉親に近い中間型(半ホフク型でブッシュ状になる)と花粉親に近いもの(立性で株が大きくならない)といったように明らかに異なる形態の個体を複数選抜することができた。得られた雑種には育成者の目標とする形質を有するもの(花数が多く大株になる個体)と有さないもの(大きくならならずに花数も少ない個体や大株にはなるものの開花直前に蕾が萎れて花が全く咲かない個体)が存在したが、基本的にすべてが優れた耐暑性を示した。
雑種の多くは花粉稔性を有していなかったが、約2割の個体(17個体)は花粉を産した。その内訳は、種子親に近いものが2個体(No.31、No.55)、種子親に近い中間型が4個体(No.12、No.37、No.40、No.51)、花粉親に近い中間型が7個体(No.11、No.17、No.21、No.45、No.59、No.77、No.78)、花粉親に近いものが4個体(No.2、No.22、No.72、No.79)であった。これらの個体の自家受粉を実施したところ、一部では正常に種子を産するものも確認された。その内訳は、種子親に近いものが1個体(No.55)、種子親に近い中間型が3個体(No.37、No.40、No.51)、花粉親に近い中間型が4個体(No.21、No.45、No.59、No.77)、花粉親に近いものが3個体(No.22、No.72、No.79)であった。
実施例2.
上記の実施例1で得られた花粉親に近いもの2系統(各系統10〜20個体)、花粉親に近い中間型9系統(各系統10〜20個体)、種子親に近い中間型6系統(各系統10〜20個体)、種子親に近いもの6系統(各系統10〜20個体)の選抜個体から挿し木苗を養成し、両親であるロベリア・リチャードソニー1系統(品種名:モネ、10個体)とロベリア・バリダ1系統(10個体)、さらにロベリア・エリナス2品種(表1参照、各10個体)とともにキリンビール(株)植物開発研究所の圃場に定植し、特性の比較試験を実施した。その結果、胚珠培養で得られた実生を温室内で評価した場合と同様の結果が得られた。また、得られたF1は、いずれも高温期においても成長を停止したり、枯死したりすることのない耐暑性に優れたものであった。F1各系統と市販のロベリア属各系統のうち任意の1個体ずつに係る特性データを下表1に、またF1各系統の写真を図2〜図8に示す。
Figure 0003910991
Figure 0003910991
比較例1.
スペシオサ(speciosa)、エリナス(erinus)、リチャードソニー、セッシリフォリア(sessilifolia)、バリダの種を用いて、以下の12組合せにつき実施例1に従って種間雑種を得ることを試みたが、得られなかった。
1)スペシオサ(種子親)×エリナス(花粉親)、
2)エリナス(種子親)×スペシオサ(花粉親)、
3)スペシオサ(種子親)×リチャードソニー(花粉親)、
4)リチャードソニー(種子親)×スペシオサ(花粉親)、
5)セッシリフォリア(種子親)×エリナス(花粉親)、
6)エリナス(種子親)×セッシリフォリア(花粉親)、
7)セッシリフォリア(種子親)×リチャードソニー(花粉親)、
8)リチャードソニー(種子親)×セッシリフォリア(花粉親)、
9)バリダ(種子親)×スペシオサ(花粉親)、
10)スペシオサ(種子親)×バリダ(花粉親)、
11)バリダ(種子親)×セッシリフォリア(花粉親)、
12)セッシリフォリア(種子親)×バリダ(花粉親)
本発明で得られた雑種は、両親(ロベリア・リチャードソニーやロベリア・バリダ)の長所を併せ持ち、且つ両親の形質を遥かに凌駕する。すなわち、本発明で得られた雑種は、種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離し、耐暑性があるため、従来品種が利用できなかった時期や場面での植栽が可能となる。結果としてロベリアの市場が拡大することが期待できる。
図1は、ロベリア・バリダ(種子親)×ロベリア・リチャードソニー(花粉親)のF1の分離を示す写真である。 図2は、No.22(ポットでの生育開花状況)の写真である。 図3は、No.26(中央)とその両親であるバリダ(右)、リチャードソニー(左)を比較した写真である。 図4は、No.26(右)とNo.63(左)の写真である。 図5は、No.26(右)とエリナス(レガッタ スカイブルー)(左)を比較した写真である。 図6は、No.63(右)とエリナス(アズーロ(登録商標)コンパクト スカイブルー)の圃場栽培でのパフォーマンスを比較した写真である。 図7は、No.63の大きさを示す写真である。 図8は、No.77(圃場での生育開花状況)の写真である。

Claims (2)

  1. ロベリア・リチャードソニー(種子親)とロベリア・バリダ(花粉親)を交配することにより、遺伝的に安定した野生種同士の雑種第一代(F1)でありながら、当該F1が種子親に近い形態のものから花粉親に近い形態のものまで連続的に分離することを特徴とするロベリア属に属する新規な植物集団の作出方法。
  2. 下記の工程を含む請求項に記載の方法:
    1)ロベリア・リチャードソニー(種子親)とロベリア・バリダ(花粉親)を交配し、
    2)交配後の肥大子房から摘出した肥大胚珠を培養し、植物集団を得る。
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