このような従来の照準器具(ターゲッティング装置)では、放射線撮像画像内において、刺入中のガイドワイヤーの像と線状マーカーの像とが重なって、かえってガイドワイヤーの像が見にくくなる問題があった。また、線状マーカーではラグスクリューの先端部位置がよくわからないため、術者がラグスクリューの挿入位置をきめるため、ネイル挿入の深さを決定するのに時間を要する問題があった。
本発明は、整合器具に取り付けて用いる場合に、ガイドワイヤー自身の視認性を低下させることなく、ラグスリューの先端部位置を精度よく指標することができる照準器具およびこれを備えた外科手術用装置を提供することを課題としている。
本発明の照準器具は、ネイルを先端側で支持すると共に、大腿骨骨頭に挿入されるラグスクリューを位置決め且つ案内する整合器具に着脱自在に装着されると共に、放射線撮像装置によりAP方向から大腿骨骨頭に重なって撮像され、ラグスクリューの挿入位置を投影により指標する照準器具において、ラグスクリューのAP視平面内の標準先端部位置を指標するAP視照準部と、AP視照準部を支持すると共に、整合器具に着脱自在に装着される器具装着部と、を備え、AP視照準部は、照準部本体と、照準部本体を整合器具から離間した位置に支持する連結支持部とを有し、照準部本体は、標準先端部位置を指標すると共に放射線不透過材料で構成された照準と、照準を保持すると共に放射線透過材料で構成された照準保持部とを有し、照準は、標準先端部位置を点状に指標する点状照準を有していることを特徴とする。
手術においては、放射線撮像装置により大腿骨近位部を観察しながら、ラグスクリューを、大腿骨の側方から、予め骨軸方向に挿入されたネイルの基端側を貫通させ、大腿骨頭(以下、骨頭と呼ぶ)に挿入することにより骨折部を固定する。その際、骨頭に向かってラグスクリューの案内となるガイドワイヤーを刺入した後、ラグスクリューの挿入を行う。ガイドワイヤーの刺入には照準器具を用い、ネイルの深さと共に骨頭に対する適切な位置を調整しながら、ガイドワイヤーを刺入し、これを案内にしてラグスクリューを適切な位置に挿入するようになっている。また、ネイルは、整合器具に装着され、整合器具を介して大腿骨に挿入される。
上記の構成によれば、AP視平面内において、AP視照準部により挿入後のラグスクリューの標準先端部位置を指標することができ、ラグスクリューの先端部を骨頭内の所望の位置(大腿骨骨頭の下側半部)に配置させることができる。また、ラグスクリューの標準先端部位置のみ指標されるため、術者はネイルの最適位置が視認し易く瞬時に判断することができ、ネイルの位置決めを簡単に行うことができる。なお、標準先端部位置としては、異なる長さを有する複数種のラグスクリューの先端位置の平均、或いは最も使用頻度の多いラグスクリューの先端位置を指標することが好ましい。
さらに、放射線撮像装置により、放射線不透過材料の照準である点状照準が黒いスポットとしてAP視平面内に映し出され、挿入後のラグスクリューの標準先端部位置の指標となるため、このスポットを目標にラグスクリューおよびガイドワイヤーを正確に挿入することができる。また、点状照準以外はラグスクリューの挿入軸線上に映し出されるものがないため、刺入中のガイドワイヤーの視認性を損なうことがない。しかも、点状照準のみ映し出すことで単純に指標できるため、術者が瞬時に判断することが可能となり、手術の迅速化を図ることができる。
これらの場合、点状照準は、AP視平面に直交する方向に延在していることが好ましい。
この構成によれば、AP方向に対し放射線撮像装置が角度ズレしてセットされている場合に、点状照準の投影像が直線状に映し出されるため、放射線撮像装置の角度ズレを容易に確認することができる。これにより、放射線撮像装置の角度ズレに基づく、ラグスクリューおよびガイドワイヤーの挿入ミスを有効に防止することができる。
この場合、照準は、ラグスクリューの太さを指標する太さ照準を、更に有していることが、好ましい。
この構成によれば、AP視平面において、挿入されるラグスクリューが骨頭および頸部の適切な位置に納まる否かを精度良く確認することができる。
この場合、太さ照準は、点状照準と同心円を為す2つのリング状照準子で構成され、2つのリング状照準子は、AP視平面に直交する方向に離間して配設されていることが、好ましい。
この構成によれば、点状照準の位置を、リング状照準子により目立つように投影することができる。すなわち、適切な像が得られている場合には各リング状照準子の像は、単一でリング形状として映し出されるが、上記角度ズレが生ずると、各リング状照準子の円形像は重なることなく、それぞれが楕円形状に変形した2つの像として映し出される。これにより、放射線撮像装置の角度ズレを、点状照準の直線像と各リング状照準子の円形像との対比において目立ち易くすることができる。
これらの場合、大腿骨骨頭には、ラグスクリューに平行にサブスクリューが挿入されるようになっており、照準は、サブスクリューのAP視平面内の挿入位置を指標する軸線照準を、更に有していることが好ましい。
この構成によれば、軸線照準により、ラグスクリューに加えサブスクリューの挿入位置を正確に指標することができる。また、挿入するラグスクリューおよびサブスクリューが骨頭および頸部の適切な位置に納まるか否かを精度良く指標することができる。
これらの場合、AP視平面内におけるラグスクリューの挿入頸体角には2種類のものが存在しており、連結支持部に対し照準部本体は、着脱自在に且つAP視平面内で表裏反転して付替え自在に構成され、照準部本体の着脱方向の軸線とラグスクリューの挿入軸線との為す角度が、2種類の挿入頸体角の差の1/2傾いていることが、好ましい。
患者の個人差により、ラグスクリューの挿入頸体角を2種類の角度から選択して手術を行うようになっており、上記の構成によれば、連結支持部に対し照準部本体を付け替えることで、2種類の挿入頸体角を選択的に角度設定することができる。すなわち、挿入頸体角別の角度設定を簡単に行うことができると共に、挿入頸体角別に照準器具を用意する必要がなくなる。なお、照準部本体の表裏にそれぞれ挿入頸体角を明記し、連結支持部に明記したマーク等により、いずれが選択されているかを指し示す構成とすることが、好ましい。
これらの場合、整合器具は、ネイルを支持するネイル装着部と、ネイルに対し略平行に延在すると共にラグスクリューを位置決め且つ案内するグリップ部と、ネイル装着部とグリップ部とを連結するアーム部と、を備えており、器具装着部は、アーム部のネイル装着部側に着脱自在に装着されていることが、好ましい。
この構成によれば、照準器具はその器具装着部により、整合器具のアーム部のネイル装着部に装着され、整合器具のグリップ部から十分に離れた位置に配設されるため、これがグリップ部の操作やラグスクリューの挿入作業の邪魔になることがない。また、照準器具は、整合器具のアーム部に取り付けられるため、安定に取り付けることができると共に簡単に着脱することができる。しかも、器具装着部に対し、AP視照準部を比較的近い位置に設けることができ、ふらつきが起こり難く、且つラグスクリューの挿入位置を精度良く指標することができる。
これらの場合、器具装着部に対しAP視照準部は、ML方向から見て左右対称形に付替え自在に構成されていることが、好ましい。
この構成によれば、手術対象となる右脚部および左脚部に対し、AP視照準部を付け替えることにより、AP視照準部を左右兼用させることができる。
この場合、器具装着部に支持されると共に、放射線撮像装置によりML方向から大腿骨骨頭に重なって撮像され、ラグスクリューのML視平面内の挿入位置を投影により指標するML視照準部を更に備えたことが、好ましい。
この構成によれば、ML方向からもラグスクリューの挿入位置を指標することができ、より精度の高い手術をすることが可能となる。
この場合、ML視照準部と器具装着部とは、一体に成形されていることが、好ましい。
この構成によれば、ML視照準部の構造を単純化し、装着不良等による位置ずれを防止することができる。また、ML視照準部廻りを省スペース化することができる。
この場合、ML視照準部は、放射線不透過部と、放射線不透過部に組み込まれラグスクリューの挿入位置を指標する放射線透過部とを有し、放射線透過部は、放射線不透過部に形成したスリット開口であることが、好ましい。
この構成によれば、ML視平面において、放射線透過部で直接指標することによって照準部軸線の位置を正確に示すことができる。また、放射線透過部を、放射線不透過部に形成したスリット開口で構成することにより、ML視照準部の構造を単純化することができると共に、放射線の照射方向がAP視平面内において若干角度ズレしていても、ML視平面内の骨頭の像に照準(スリット開口)をスポット的に映し込むことができる。
本発明の外科手術用装置は、上記の照準器具と、照準器具が装着される装着受け部を形成した整合器具と、を備えたことが好ましい。
この構成によれば、整合器具にネイルを装着して大腿骨にネイルを挿入した後、整合器具に照準器具を装着して、ネイルの挿入深度調節と、ラグスクリュー(ガイドワイヤー)の骨頭への挿入を行う。この場合、照準器具は、一体として整合器具に取り付けられるため、安定に取り付けることができると共に簡単に着脱することができる。しかも、器具装着部に対し、AP視照準部およびML視照準部を比較的近い位置に設けることができ、ラグスクリューの挿入位置を精度良く指標することができる。
以上に述べたように、本発明の照準器具およびこれを備えた外科手術用装置によれば、ラグスクリューの先端部位置を精度良く且つ見易く指標することができ、術者はラグスクリューの挿入位置の適否を瞬時に判断することができる。したがって、手術を効率よく迅速に行うことができ、患者および術者等が被爆する放射線量も軽減することができる。
以下、添付の図面を参照して、本発明の照準器具およびこれを備えた外科手術用装置について説明する。この外科手術用装置は、放射線撮像装置で患肢を観察しながら、大腿骨近位部の骨折部を整復固定する手術において、ネイルを大腿骨の骨軸方向に挿入すると共に、このネイルを貫通するように側方からラグスクリューおよびヒップピン(サブスクリュー)を挿入するものである。
図1および図2を参照しながら、本実施形態の外科手術用装置について説明する。外科手術用装置1は、この大腿骨Bの骨軸方向にネイル21を挿入するとともに、ラグスクリュー31およびヒップピン41の挿入を案内する整合器具2と、整合器具2に装着して用いられ、ラグスクリュー31(ヒップピン41)の挿入する位置を投影により指標する照準器具3と、を有している。整合器具2は、ネイル21を装着するネイル装着部4と、ネイル21に対し略平行に延在すると共に骨頭Baに挿入されるラグスクリュー31を位置決めし且つ案内するグリップ部5と、ネイル装着部4とグリップ部5とを連結するアーム部6と、を備えている(図3参照)。照準器具3は、アーム部6に着脱自在に装着され、放射線撮像装置7により患肢と共に撮像され、AP視平面およびML視平面におけるラグスクリュー31(ヒップピン41)の挿入位置を指標する。また、アーム部6には、照準器具3に代えて、ネイル21を挿入するときに用いる挿入用ハンドル8が着脱自在に装着される。
術者は、手術前の準備として、患者の健肢側をX線写真で撮影を行い、骨頭Baおよび頚部Bbを通る軸線と大腿骨Bの骨軸とがなす角度である頸体角を測定する。また、整合器具2にその頸体角に適したネイル21を装着しておく。患者を仰臥位にして、患肢側を牽引した状態で患者を固定する。そして、術者は、放射線撮像装置7により患肢を撮像しながら患者の大腿骨Bの骨折部の整復を行い、手術を開始する。ネイル21の挿入は、大腿骨B近傍の中殿筋(図示省略)付近の皮膚(図示省略)を切開して行われ、後述するガイドワイヤー45を大腿骨Bに予め刺入し、整合器具2を使ってネイル21を大腿骨B内腔に挿入する(図2参照)。このとき、整合器具2には上記の挿入用ハンドル8を装着しておき、ネイル21の打込み後にこれに代えて照準器具3を装着する。ガイドワイヤー45について詳細は後述するが、ガイドワイヤー45は長い針形状でその先端で骨を穿孔できるようになっている。
術者は、上記の整合器具2を直接保持し、打込用器具(ハンドル)8を使用しながらネイル21を大腿骨Bに挿入する(打込む)が、ネイル21が所定の位置まで挿入されたら、放射線撮像装置7で撮像されるAP(前後)像(AP視平面)およびML(側面)像(ML視平面)で観察しながらネイル21の適切な位置を調整する。術者はその状態で整合器具2を保持してネイル21が動かないようにする。
ネイル21の位置が決定したら、上記のグリップ部5を案内にしてラグスクリュー31用のガイドワイヤー45とヒップピン41用のガイドワイヤー45とを順に刺入する。次に、ヒップピン41をガイドワイヤー45で案内しながら骨頭Baに挿入し、ネイル21に固定するとともにヒップピン41と同じ手順でラグスクリュー31も骨頭Baに挿入する。最後に、ネイル21と大腿骨Bとを骨幹部側で固定するロッキングボルト25により固定すると共に、ネイル21の基端部小口に骨組織の進入を防ぐエンドキャップ22を螺合して、切開部分を縫合し手術を終了する(図2参照)。なお、骨頭Baは下側半部に密な骨組織を有しており、ラグスクリュー31の後述するタッピングネジ部33を骨頭Baの下側半部に固定することが好ましい。
次に、図3および図4を参照しながら、本実施形態の照準器具3が装着される整合器具2について説明する。なお、以降の説明では、整合器具2について、図1の紙面の上側を「上」、下側を「下」、左前方を「前」および右後方を「後」として、説明を進める。この整合器具2は、ステンレスによって略逆「J」字状に形成したアーム部6と、アーム部6を上部で支持するグリップ部5と、アーム部6の前端に一体に形成したネイル装着部4、とを備えている。アーム部6は、グリップ部5の上半部前面に固定したグリップ取付部51と、グリップ取付部51の上端から斜め前方に延びる上り傾斜部52と、上り傾斜部52の前端から水平に延びる水平部53と、水平部53の前端から斜め前方に延びる下り傾斜の装着受け部54とから成り、この装着受け部54に照準器具3および打込用器具(ハンドル)8を装着されるようになっている。
グリップ取付部51は、グリップ部5の上半部前面にねじ止め固定されている。また、上り傾斜部52から水平部53にかけての両側面は窪入形成されており、アーム部6の軽量化が図られている。さらにグリップ取付部51の中心には軽量化用の長孔59も形成されている。装置受け部54には、照準器具3および打込用器具(ハンドル)8が同一の係合形態で着脱され、いずれも水平部53からネイル装着部4に向かってスライドさせるようにして装着される。このため、装置受け部54には、その両側面に長手方向に延在する一対の装着溝56,56と各装着溝56の上側に平行に延在する一対の装着突起57,57とが形成され、且つ上面に半円形断面のガイド溝58が形成されている(図4参照)。この場合、装着溝56の前端は、装着した照準器具3の装着位置を位置規制するストッパとして機能し、ガイド溝58の前端は、打込用器具(ハンドル)8のストッパとして機能する(詳細は後述する)。
図5に示すように、ネイル装着部4は、アーム部6と一体に形成されおり、装置受け部54から一体に延設され先端(前端)を半円形に形成した装着部本体61と、装着部本体61から下方に突出形成した円筒状のネイル固定部62とで一体に形成されている。装着部本体61には、ネイル21を固定するための固定ねじ(図示省略)用のざぐり穴64が形成されている。ネイル固定部62は、内側に固定ねじの軸部が挿通する挿通孔65が形成されると共に、下端部の一部(周方向の後部)には装着したネイル21の回止め(位置決め)となる小突起66が形成されている。詳細は後述するが、ネイル21は、その基部側小口をネイル固定部62の下端に突き当てられ、この状態でざぐり穴64を介してねじ込んだ固定ねじにより、ネイル装着部4に固定される。
なお、ネイル固定部62の外周面には、その下端から5ミリの位置および10ミリの位置に上下2つの横溝67,67が形成されている。これにより、大腿骨Bに打ち込んだネイル21と共にネイル固定部62がどれだけ大腿骨Bに埋没しているかが簡単に視認できるようになっている。
グリップ部5は、図3に示すように、上記のアーム部6のグリップ取付部51がオーバーラップするようにして固定される先端側半部のアーム固定部71と、基端側半部の把持部72とを有しており、加熱処理したカーボン樹脂成形品で構成されている。アーム固定部71は、前側半部を切り欠くようにして把持部72に対し略半分の厚みに形成され、この部分にグリップ取付部51が収まるように取り付けられている。また、アーム固定部71の上端面は、アーム部6の上り傾斜部52の上面と面一になるように傾斜している。さらに、この傾斜部分とこれに接するグリップ取付部51の上端部には、これらを前後方向(水平)に貫通するようにワイヤー貫通孔74が形成されている。そして、このワイヤー貫通孔74にガイドワイヤー45を挿入することにより、髄内に埋め込んだネイル21の基端部の位置を確認できるようになっている。
把持部72の長手方向(上下方向)中間部には、ラグスクリュー31やヒップピン41等を案内する案内部75が形成されている。図3に示すように、案内部75は、大腿骨Bの骨頭Baに対しラグスクリュー31を斜め上向きに案内するラグスクリュー案内孔76と、ラグスクリュー案内孔76の上側に隣接してヒップピン41を斜め上向きに案内するヒップピン案内孔77と、ラグスクリュー案内孔76およびヒップピン案内孔77に交差するように形成され、ロッキングボルト25を水平に案内する一対のロッキングボルト案内孔78,78とを有している。
ラグスクリュー案内孔76およびヒップピン案内孔77は斜めに貫通形成されており、ラグスクリュー案内孔76によって、ラグスクリュー31およびラグスクリュー31用のガイドワイヤー45が、骨頭Baの下側半分の位置に案内される。同様に、ヒップピン案内孔77によって、ヒップピン41およびヒップピン41用のガイドワイヤー45は、骨頭Ba上側半分の位置に案内される。また、一対のロッキングボルト案内孔78,78は上下に隣接し且つ、ネイル21の先端側に向かって相互に平行に貫通形成されている。この場合、手術の目的に応じ、2つのロッキングボルト案内孔78,78のいずれかを選択するようになっており、このロッキングボルト案内孔78を案内にしてロッキングボルト25がネイル21を貫通し大腿骨Bに固定される。
一方、図6に示すように、打込用器具(ハンドル)8は、表面を滑止め加工した握り部82を有するハンドル本体81と、整合器具2の装着受け部54に装着される装着ブロック83とで構成されている。ハンドル本体81は、装着ブロック83の急斜面部85にねじ止めされており、その先端部86が装着ブロック83のC字溝87内に突出している。そして、このハンドル本体81のC字溝87およびC字溝87を構成する左右一対のボトム部88,88が、上記装着受け部54の装着溝56および装着突起57にスライド自在に係合し、またハンドル本体81の先端部86が、上記装着受け部54のガイド溝58に臨み、且つガイド溝58の前端に当接する(ストッパ機能)。術者は、この打込用器具(ハンドル)8とグリップ部5とで整合器具2を保持し、これに装着されたネイル21を大腿骨Bに打ち込む。
次に、ネイル21、ガイドワイヤー45、ラグスクリュー31およびヒップピン41について、簡単に説明する。図7(a)に示すように、ネイル21はチタン合金製であり、先端側をテーパー形状に形成され、大腿骨Bに添って湾曲した円柱状を有している。ネイル21の基端側小口には、手術後にエンドキャップ22が固定(螺合)されるようになっている。ネイル21の基端側には、ラグスクリュー31を貫通固定するラグスクリュー固定孔21aと、ヒップピン41を貫通固定するヒップピン固定孔21bと、が形成されている。また、ネイル21の先端側にはロッキングボルト25を貫通固定する大小2つのボルト孔21c,21cが形成されており、いずれか一方が手術で選択される。一方、基端側小口には、エンドキャップ22と共に上記の固定ねじが螺合する雌ねじ23が形成されると共に、上記の小突起66に係合する係合凹部24が形成されている。
図7(b)に示すように、ガイドワイヤー45は、先端に大腿骨Bを穿孔する穿孔刃46を有する長い針状に形成されている。ガイドワイヤー45はドリルビットとして図示しない手術用ドリルに装着して用いられ、ネイル21、ラグスクリュー31およびヒップピン41の打込み経路を穿孔する。また、ガイドワイヤー45は、ラグスクリュー31およびヒップピン41を挿入するときに、これらの軸心に係合してその挿入を案内する。
図7(c)に示すように、ラグスクリュー31は、チタン合金製であり、ラグスクリュー本体32と、ラグスクリュー本体32の先端部のタッピングネジ部33と、ラグスクリュー本体32の基端に形成した工具係合部34とで一体に形成されている。また、ラグスクリュー31の軸心には、ガイドワイヤー45が挿通するワイヤー孔31aが形成されている。ラグスクリュー31は、工具係合部34に係合させた専用ドライバー(図示省略)によって大腿骨Bに挿入され、タッピングネジ部33が髄内に雌ねじを切りながらねじ込まれて骨頭Baまで至り、大腿骨Bの近位部骨折片と骨幹部を固定するようになっている。なお、ラグスクリュー31挿入時には、先行してガイドワイヤー45が刺入されており、ラグスクリュー31は、ワイヤー孔31aを挿通したガイドワイヤー45によって案内される。
図7(d)ヒップピン41は、チタン合金で構成され、ラグスクリュー31より短くかつ細径に形成されている。ヒップピン41は、ラグスクリュー31と同様の形態を有しており、ヒップピン本体42と、先端側のタッピングネジ部43と、ヒップピン本体42の基端に形成した工具係合部44とで一体に形成されている。また、ヒップピン41の軸心には、ガイドワイヤー45を通すガイド孔41aが形成されている。この場合、ヒップピン41もラグスクリュー31と同様に、専用ドライバー(図示省略)により、ガイドワイヤー45に案内されながら雌ねじを切りつつ骨内に挿入される構成になっている。
一方、図1に示すように、放射線撮像装置7は、X線テレビカメラ91に接続されたテレビモニター92に映し出すことにより、正面像であるAP像(AP視平面)および側面像であるML像(ML視平面)を動画で視認できるようになっている。術者は、手術中にこの放射線撮像装置7で、大腿骨Bは元よりネイル21やガイドワイヤー45等の位置を確認する。放射線撮像装置7はX線照射部93およびX線テレビカメラ91を両端で支持するCアーム(図示省略)を90°回転させることによりAP像およびML像を切り替えて撮像できるようになっている。
次に、本実施形態の照準器具3について詳細に説明する。図8は、整合器具2に装着した状態の照準器具3を示しており、同図に示すように、照準器具3は、AP像においてラグスクリュー31およびガイドワイヤー45の挿入位置を指標するAP視照準部101と、ML像においてラグスクリュー31およびガイドワイヤー45の挿入位置を指標するML視照準部102と、AP視照準部101およびML視照準部102を支持すると共にML視照準部102と一体に形成された器具装着部103と、を備えている。そして、照準器具3は、器具装着部103により一体として上記アーム部6の装着受け部54に着脱自在に装着される。
図9に示すように、器具装着部103は、ステンレス等で略方形のブロック状に形成され、上記装着受け部54の上部を抱き込むように下向きの略「C」字状断面を有している。器具装着部103の内側に形成したC字溝条111は、その左右一対のサイド溝部111a,111aで装着受け部54の一対の装着突起57,57にスライド自在に係合し、且つC字溝条111の下部を画成する一対のボトム部112,112で装着受け部54の一対の装着溝56,56にスライド自在に係合する。また、C字溝条111は、その天面で装着受け部54のガイド溝58を除く上面にスライド自在に係合すると共に、後述するクリックボールが装着受け部54のガイド溝58にスライド自在に係合する。これにより、器具装着部(照準器具3)103は、装着受け部(アーム部6)54にがたつくことなくスライド装着される。C字溝条111の前部天面には、雌ねじを形成した段付きの円形溝113が形成されており、この円形溝113には、図示しないがコイルばねに付勢されたクリックボールが埋め込まれている。ただし、このクリックボールは対応するボール溝が無いため、クリックせず単にがたつき防止として機能する。
一方、器具装着部103の両側面には、それぞれ前後一対のボス部114,114が突出形成されており、各一対のボス部114,114にはAP視照準部101を取り付けるための嵌合孔115がそれぞれ形成されている。患者の左足を手術する場合には、左側の一対の嵌合孔115,115にAP視照準部101を取り付け(図8参照)、逆に右足を手術する場合には、右側の一対の嵌合孔115,115にAP視照準部101を取り付けるようにし、AP視照準部101が左右兼用できるようになっている。器具装着部103の前端部には、上記の各ボトム部112を延長するようにして左右一対のストッパ部116,116が突出形成されており、この各ストッパ部116が装着受け部54の各装着溝56の前端に当接することにより、照準器具3のアーム部6への装着位置が位置規制される。
ML視照準部102は、器具装着部103の前部上面に一体に立設され、放射線撮像装置7により大腿骨Bに重なって撮像される照準構成体(放射線不透過部)121を有している。縦長に形成された照準構成体121は、その軸線上に上下方向(長手方向に)延在するスリット開口(放射線透過部)122を備え、このスリット開口122によりラグスクリュー31を案内するガイドワイヤー45の刺入位置を指標する。また、照準構成体121の頂部には、板状に形成した板状副照準部123が一体に延設されており、板状副照準部123はその端面の投影像によりラグスクリュー31の打込み位置を指標する。この場合、ML視照準部(スリット開口122)102は、前後方向(ML方向)に10mm程度の奥行きを有しており、放射線撮像装置7の角度ずれに対し、そのスリット開口122の開口像は幅狭となり、また板状副照準部123の端面像は幅広となって、その確認を容易にしている。
通常、大腿骨Bは放射線撮像装置7によって白色に撮像されるため、上記した適切な像が得られる位置にあれば、このスリット開口122の部分は当然放射線が透過するために、背景となる大腿骨B上に映って白く映し出される。一方、その周囲の照準構成体121および板状副照準部123の像は、大腿骨Bの上に黒く映し出される。このため、スリット開口122によるスリット像が、ラグスクリュー(ヒップピン41)31およびガイドワイヤー45の挿入軸線をその中心位置として指標する。
この場合、放射線の照射方向とスリット開口122の軸線方向とが合致していなければ、スリット像は全く見えなくなり、照準構成体121および板状副照準部123の像のみが黒く映し出される。このため、術者は、放射線撮像装置7が正しい位置にあって、適切なML像が得られていることを確認することができる。これにより、放射線撮像装置7と骨頭Baとが互いに不適切な位置にあるにもかかわらず、たまたまML視照準部102の像と骨頭Baの像とが合致して、術者が適切な位置にあると誤認すること防止している。また、患者によっては患肢の開脚が制限される場合もあるが、本実施形態のようにスリット開口122が十分な長さに形成されていれば、患肢の開脚程度に合わせて撮像方向(大腿骨Bの骨軸に対し角度45°傾いた方向)を変更することになっても、スリット開口122が見えなくなることがないため、撮像方向の変更に柔軟に対応することができる。
なお、上記のスリット開口122に代えて、この部分を放射線透過性の樹脂等で構成してもよい。もっとも、本実施形態のML視照準部102は、器具装着部103と一体の放射線不透過部材で構成されているが、例えば照準構成体121を放射線透過部材で構成し、スリット開口122の部分を板状の放射線不透過部材で構成するようにしてもよい。このようにすれば、放射線不透過部材の端面が放射線撮像装置7に線状に映し出されて、ラグスクリュー31を案内するガイドワイヤーの刺入位置を指標する。
図8および図10に示すようにAP視照準部101は、放射線撮像装置7により撮像される照準部本体131と、照準部本体131をアーム部6から離間した位置に支持する連結支持部132と、を有している。連結支持部132は、器具装着部103からAP方向(側方)に延在するロッド状連結部133と、ロッド状連結部133と照準部本体131を連結するアーム状連結部134とで構成されている。ロッド状連結部133はアーム部6に対し側方に直角に延び、またアーム状連結部134はロット状連結部133の先端からアーム部6に平行に延びていて、照準部本体131を患者の大腿部Bの近傍に位置決めしている。
図11(a)に示すように、ロッド状連結部133は、前後方向に離間し且つ平行に配設した一対の連結ロッド141,141と、両連結ロッド141,141をそれぞれ端部で保持する一対のホルダプレート142,142とで構成され、いずれもステンレスで形成されている。各連結ロッド141は、シームレスパイプで構成した胴部144と、胴部144の両端に溶着接合した一対の取付部145,145とから成り、この各取付部145の中間位置でホルダプレート142に保持されている。各一対の取付部145,145および一対のホルダプレート142,142は同一の形態を有し、且つロッド状連結部133は全体として左右対称形状を有しており、上記の器具装着部103と同様に左右兼用となるように構成されている。一方、各取付部145におけるホルダプレート142の外側に位置する部位が、上記器具装着部103の嵌合孔(ストレート孔)115に嵌合する嵌合突起146となっており、嵌合突起146は、ホルダプレート142が上記器具装着部103のボス部114に当接する位置まで、嵌合孔115に深く嵌合される。
図11(b)に示すように、嵌合突起146は、中空に形成されており、ホルダプレート142側のストレート部位146aと、ストレート部位146aから延びるテーパー部位146bと、テーパー部位146bに連なる先端嵌合部位146cとで一体に形成されている。また、嵌合突起146には、先端側から十字状に切り込んだ計4つの割りスリット147が形成されており、この割りスリット147で分断した各片(4片)に、それぞれ径方向に撓むばね性を持たせるようにしている。この場合、ストレート部位146aが嵌合孔115の浅い位置に拡開付勢しながら嵌合し、先端嵌合部位146cが嵌合孔115の深い位置に拡開付勢しながら嵌合する。これにより、器具装着部103にロッド状連結部133が、抜差しの形式で精度良く且つがたつき無く装着される。なお、嵌合突起146および嵌合孔115に代えてテーパー形状のテーパー突起(図示省略)およびテーパー突起に相補的な形状を有するテーパー受け部(図示省略)で構成してもよい。
アーム状連結部134は、放射線透過材料であるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で一体に形成されており、上記の器具装着部103と同一となる一対の嵌合孔152,152を形成した連結基部151と、連結基部151から屈曲して延びる照準取付部153とで構成されている。一対の嵌合孔152,152は、ストレート孔となっており、ロッド状連結部133に対し左右いずれの方向からでも連結可能に構成されている。照準取付部153の先端部には、照準部本体131を取り付けるための一対の接合ピン154,154が埋め込まれている。両接合ピン154,154の先端部は照準部本体131側に突出しており、この突出部分に照準部本体131が差込み形式で且つ表裏反転して付け替え得るようになっている。また、詳細は後述するが、照準取付部153の先端部には、付け替えた照準部本体131の打込頸体角を示す三角形のマーク155が形成されている。
図10に示すように、照準部本体131は、厚板状の保持部本体162および円柱状保持部163から成る照準保持部161と、保持部本体162に埋め込んだ一対のサブ照準(軸線照準)165,165、円柱状保持部163に組み込んだ点状照準166およびリング状照準(太さ照準)167から成る照準164とで構成されている。保持部本体162および円柱状保持部163は、PEEKの放射線透過材料で構成され、サブ照準165、点状照準166およびリング状照準167は、ステンレス等のなどの放射線不透過材料で構成されている。
詳細は後述するが、一対のサブ照準165,165のうち、図示右上側のサブ照準165が挿入頸体角130°のヒップピン41の位置(挿入軸線)を指標し、図示左下側のサブ照準165が挿入頸体角125°のヒップピン41の挿入位置(挿入軸線)を指標する。また、点状照準166とリング状照準167とはAP平面視同心上に位置しており、点状照準166が、ラグスクリューのAP視平面内の標準先端部位置を指標する。
また、同様にリング状照準167が太さ照準として、ラグスクリュー31の太さを含む挿入位置を指標する。また、点状照準166からサブ照準165と平行に延ばした仮想線170上には、ラグスクリュー31が挿入されるようになっている。なお、標準先端部位置とは、複数の長さを有する各種のラグスクリュー31の先端部であるタッピングネジ部33の平均をとった位置である。これら各種のラグスクリュー31は、患者の体型により術者が適宜選択して使用できるようになっている。
各サブ照準(軸線照準)165は、1mm径の硬質ステンレス線で構成され、保持部本体162に一体成形されるようにして埋め込まれている。点状照準166は、3mm径の硬質ステンレス線で構成され(方向は異なるが長さはサブ照準165と同一)、円柱状保持部163の軸心部に内包されている。また、リング状照準167は一対のリング状照準子167a,167aで構成され、各リング状照準子167aは、硬質ステンレスにより外径がラグスクリューの直径と同径の11mmとなるようにリング状(座金状)に形成したものであり、円柱状保持部163の後述する雄型保持部181のリング保持部193と雌型保持部182のリング保持部189と1個ずつ装着されて、それぞれリング固定キャップ187により挟み込まれるように組み込まれている(図13参照)。
この場合、各サブ照準165はAP視平面に平行に延在し、点状照準166はAP視平面に直交する方向(AP方向)に延在し、さらにリング状照準167の一対のリング状照準子167a,167aは、AP視平面に平行であってAP視平面に直交する方向に離間して配設されている。したがって、放射線撮像装置7により、サブ照準165は1mm幅の線状に撮像され、両リング状照準子167a,167aは11mm径のリング状に撮像され、さらに点状照準166は、リング状照準167の中心に3mm径の点状に撮像される。
図12に示すように、保持部本体162は、上下の端辺を断面山形に面取りして横長略方形に形成されており、その中心線上に円柱状保持部163を組み込むための段付き貫通孔171が形成され、また基部側端面には、上記一対の接合ピン154,154が差込み形式で接合される一対の接合孔172,172が形成されている。段付き貫通孔171は、太径部171aと細径部171bとから成り、これに表裏2部材で構成した円柱状保持部163が嵌合固定される。保持部本体162の先端側の端辺162aは、上記アーム状連結部134の照準取付部153に対し角度2.5°傾いており、全体として保持部本体162は僅かに台形を為している。すなわち、照準取付部153の側面に突き当てた状態で接合される保持部本体162の基部側端辺162bに対し、両サブ照準165の軸線が、直角から角度2.5°傾いている。
これにより、装着方向と照準の軸線とが2.5°角度ズレし、保持部本体162の図示の取り付け状態では、挿入頸体角130°に対応し、これを表裏反転させて取り付けると、挿入頸体角125°に対応するようになっている。保持部本体162の基端側には、「130」および「125」の文字174a,174bが相互に反転して刻設されており、保持部本体162を挿入頸体角130°の状態で取り付けたときには、上記のアーム状連結部134のマーク155がこの「130」の文字174aを指し示し、これを表裏反転して挿入頸体角125°の状態で取り付けたときには、マーク155がこの「125」の文字174bを指し示す。これにより、単一の照準部本体131を2種類の挿入頸体角に対応させ得るようになっている。
なお、頸体角とは、通常、頸部Bb(骨頭Ba)の長軸と大腿骨Bの長軸の成す角度をいい、患者の個人差により、ネイル(骨幹軸部)21とラグスクリュー31(ヒップピン41)との成す挿入頸体角Aを、130°と125°との間で使い分けるようにしている(図2参照)。また、これに対応して、ラグスクリュー案内孔76およびヒップピン案内孔77の角度が異なる2種類のグリップ部5が用意されている。すなわち、手術前のX線写真に基づいて、挿入頸体角を選択し照準部本体131およびグリップ部5の付け替えを行うようにしている。
図13に示すように、各円柱状保持部163は、保持部本体162を貫通するようにAP方向に延在しており、相互にねじ接合した雄型保持部181と雌型保持部182とで構成されている。雄型保持部181は、本体露出部184と、本体露出部184の外端部に螺合するリング固定キャップ187とで構成されている。本体露出部184の内端部には本体露出部184より僅かに細径の雄ねじ部185が形成され、外端部にはわずかに突出するようにリング保持部193が形成されている。また、本体露出部184の軸心には、点状照準166の半部を挿入保持する保持穴186が形成されている。なお、保持穴186の延長上にはリング固定キャップ187が螺合する雌ねじが形成されている。
同様に、雌型保持部182は、本体露出部191と、本体露出部191の外端部に螺合するリング固定キャップ187とで構成されている。本体露出部191の内端部には、本体露出部191より太径のフランジ状部192が形成され、外端部にはわずかに突出するようにリング保持部189が形成されている。また、本体露出部191の内部には、上記の雄ねじ部185が螺合する雌ねじ部194が形成されると共に、雌ねじ部194に連なるようにその軸心に点状照準166の端部を挿入保持する保持穴195が形成されている。そしてこの場合も、保持穴186の延長上にはリング固定キャップ187が螺合する雌ねじが形成されている。
円柱状保持部163は、内部に点状照準166を投入した状態で、雌型保持部182の雌ねじ部194に雄型保持部181の雄ねじ部185を螺合することにより組み立てられる。より具体的には、雄型保持部181を保持部本体162の段付き貫通孔171に嵌合し、反対側から雌型保持部182を雄型保持部181に螺合することにより、円柱状保持部163が段付き貫通孔171の段部に突き当たって保持されるようになっている。また、雄型保持部181のリング保持部193には一方のリング照準子167aが嵌め入れられ、その外側からリング固定キャップ187によりねじ止め固定される。同様に、雌型保持部182のリング保持部189にも他方のリング照準子167aが嵌め入れられ、その外側からリング固定キャップ187により固定される。なお、円柱状保持部163は、段付き貫通孔171に接着することが好ましい。
このような構成では、保持部本体162は、AP像に映ることはないが、点状照準166が映り込み、ラグスクリュー31のタッピングネジ部33の位置(標準先端部位置)を指標し、これと同心上に映り込む一対のリング状照準子167a,167aが、ラグスクリュー31の太さを指標する。また、リング状照準167は、ラグスクリュー31が骨頭Baからはみ出すか否かの目安として機能する。一方、サブ照準165は、ヒップピン41の位置(挿入軸線)を指標すると共に、リング状照準167と協働して、ラグスクリュー31およびヒップピン41が大腿骨頸部Bb内に納まるか否かの目安として機能する。
また、AP像においては、放射線撮像装置7の放射線の方向と点状照準166の延在方向が平行であれば、点状照準166の像は真円の点として映し出され、逆に平行でなければ点状照準166の像は棒状に映し出され、放射線撮像装置7の角度ズレが確認される。また、一対のリング状照準子167a,167aは上記のように平行であれば単一の真円リング状に映し出され、平行でなければ各リング状照準子167a,167aの像は重なることなくそれぞれが楕円形状に変形した2つの像として映し出されて、より角度ズレを強調する。
本実施形態によれば、点状照準166はラグスクリュー31の先端部を指標するため、ラグスクリュー31のタッピングネジ部33を大腿骨骨頭Baの下側半部に確実に位置させることができると共に、術者も短時間でネイルの最適位置を判断することができる。また、点状照準166の像は、AP視平面において刺入中のガイドワイヤーの像と重なることがなく、ガイドワイヤーの視認性が低下することがない。また、照準器具3が、整合器具2のアーム部6の前端部に装着されるため、ネイル21の位置決め作業やラグスクリュー31(ヒップピン41)の挿入作業の邪魔になることがない。
また、AP視照準部101が左右反転して付け替え得る構造であるため、右足および左足のいずれの手術にも容易に対応させることができる。さらに、照準器具3は、一体として整合器具2に取り付けられ、且つAP視照準部101およびML視照準部102を最もネイル21に近い位置で支持しているため、ラグスクリュー31の挿入位置を精度良く且つ安定に指標することができる。しかも、照準器具3全体を、樹脂材等を多用して軽量に構成しているために、外科手術用装置1のハンドリング性を損なうことがない。