JP3908511B2 - カーボンブラックの製造方法と装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンブラックの製造方法および製造装置に関し、より詳しくはカーボンブラック製造プロセスにおいて炉内に導入される酸素含有ガスを加熱するプロセスでの加熱効率を維持するための改良およびこれを満たすための手段を備えた製造装置に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラックは、工業用原材料例えばゴム補強剤としてタイヤ製造工業や自動車用ゴム製品製造工業、黒色という特性を生かしての各種塗料、インキ等製造工業、静電トナー製造工業などに広範囲に使用されている重要な工業製品の1つである。
【0003】
カーボンブラックは炭化水素原料を熱分解または不完全燃焼させることにより得られるが、そのほとんどが高温に保持された反応炉(ファーネス)内での熱分解によるファーネス法により生産されている。このファーネス法によるカーボンブラック製造プロセスは次のようなフローで行われる。
【0004】
図1で示すように、全体が耐火物で覆われたカーボンブラック反応炉21の前頭部の導入部22からの炭化水素燃料および導入部23からの酸素含有ガス(通常は空気)よりなる混合物の燃焼による高温の燃焼ガス生成帯域24、中間での高温燃焼ガス流中に原料油25を導入してカーボンブラックを生成せしめる反応帯域26、この下流側で冷却媒(通常は水)導入部27を介して導入された冷却媒により反応を急速に停止させる停止帯域28から構成される反応炉21においてカーボンブラックを含む高温流が生成される。
【0005】
カーボンブラックの生成反応は1500〜1800℃という非常に高温雰囲気下で行われ、炉内に導入される成分(冷却媒を除く)の温度が低い場合は雰囲気温度の低下をもたらすことから、炉内に導入される前に予め加熱しておくことが生成反応において有利に作用するので通常はいずれも予熱して導入される。
【0006】
反応炉内から排出された高温流(通常は800〜850℃の温度をもつ)は内部に多数の管状物が設置された熱交換器の空間内を通過し、一方、炭化水素燃料の燃焼を保持するための酸素含有ガス(空気)は、熱交換器29の上部の導入部30からブロアーにより送風導入され、前記高温流の流れる管外表面との接触により加熱された空気は交換器29の下部から取り出されて前記の加熱空気導入部23より反応炉内に導入される。
【0007】
熱交換器29の管内を通過して間接的に冷却されたカーボンブラック含有ガス流は次々に固体(カーボンブラック)とガス体に分離するための分離装置31に導入され、カーボンブラックが分離される。
分離後のカーボンブラックは用途に応じて、粉末状のまま、あるいは造粒工程を経てユーザーに提供される。
【0008】
熱交換器29を通過した後に導入部23から炉内に導入される空気は前述のように温度が高いほどカーボンブラック生成反応にとっては有利に作用するので、総体的には反応終了後のカーボンブラック含有ガス流の交換器29への供給時の温度はさらに高いものが要求される傾向にある。
【0009】
しかしながら、ガス流の温度が高くなるほど、例えば交換器29への入口温度を900℃くらいに上昇させて炉内導入空気の温度を上げようとすると、カーボンブラック含有ガス流が複数管の内部を通過するときに内部壁面に付着したカーボンブラック内に少量存在する未分解炭化水素の炭化反応あるいはガス流中に含まれる炭素酸化物(CO、CO2)からの分解反応による炭素堆積反応により管内で炭化カーボン層が生成する。この炭化カーボン層は堆積が進むにつれて断熱材として作用するようになり、熱交換の効率を低下させるとともに、極端な場合には管の閉塞をも招来することになる。特に、カーボンブラック中に未分解のタール分を多く含有する場合にはこの傾向はより顕著となる。さらにこのカーボン堆積層が管内壁面から脱離して製品に混在した場合、前述のようなカーボンブラックとしての特性を示さない異物(コークス)として作用し、品質低下の原因ともなる。
【0010】
カーボンブラックの生成反応および熱交換器29の管表面での炭素堆積層の発生は、主に下記の化学反応が関与していると思われる。
CmHn→mC+1/2nH2(カーボンブラック生成反応)
CH4+H2O⇔CO+3H2(水添分解)
2CO⇔CO2+C(炭素析出反応)
CO+H2⇔H2O+C(炭素析出反応)
上記の化学反応式において、後段の2つの式が炭素堆積層の発生、成長に係わるものであっていずれも可逆反応であるが、炭素堆積層の発生する右辺への反応速度はその雰囲気温度が高い場合ほど大きくなる。すなわち炭素が管内に析出・堆積する可能性が大きくなることを意味する。
【0011】
上記の課題を解決する手段に対する従来技術としては、大別して次の3つが開示されている。
(1)熱交換器29へのガス流供給温度を低く抑えて管内への炭化カーボン層の発生を制御し、この熱交換器通過後の予熱空気を別々の熱発生源を通過させることにより所定の温度に加熱する(特公平2−385号公報、特開平11−293141号公報など)。
(2)熱交換器29に導入する前にカーボンブラック含有ガス流中に内壁表面上への炭素層生成を減少させる防汚剤を添加する(特開平5−222378号公報、特許第2944882号公報など)。
(3)熱交換器の管内壁をアニーリング処理することにより炭素付着物を減少させる(特表平11−514681号公報など)。
【0012】
前述の炭素付着物を減少させるための方法ではつぎのような欠点がある。
(1)ではカーボンブラック製造ラインとは全くの別の熱源発生装置、またはこれらに付随するバーナー部などが必要となるので設備面でのコストアップは避けられない。
(2)では原料炭化水素に対して付着防止用の第3成分を添加する必要があり、これに伴って第3成分導入ラインの設置、添加成分の導入によるコストアップがある。
(3)では管内壁をアニーリング処理するためのコストアップを避けることは不可能である。
【0013】
さらに加えて、管内に炭素層が付着・堆積して熱交換効率が低下する、あるいは内部閉塞による圧力損失が発生した場合には一端生産活動を停止し、付着・堆積した炭素層を高圧水を内壁面に噴霧してはぎ落とす、あるいはスチームおよび/または空気を導入することにより分解・燃焼除去するのが一般的である。
しかしながら、内部に設置された管の数が多く、この作業には多大の時間を要することから、中断を含めてこの炭素層の排除による製造時間の損失は極めて大きいものがある(管冷却時間も含めて通常数日を要する)。また、この除去作業はカーボンブラックの製造条件、すなわち内部での付着状況にも依存するが、2週間〜数ヶ月に1回必要である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カーボンブラック製造工程において生成した熱量を効果的に回収して空気を加熱するための熱交換装置において、カーボンブラックを含む高温ガスが通過する熱交換器内の複数の管空間内壁に析出・堆積する炭素層を減少させることのできる製造方法と製造装置を提供するものである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、本発明請求項1〜3の発明により所定の厚さまで、すなわち、熱交換効率が低下するほどの厚さまで成長する炭素層の発生を遅延させることはできるが、皆無とはできないことから、長期間の熱交換器29の連続使用により少しずつ生成した炭素層を、製造プロセスを完全に中止することなく、短時間の条件変更で熱交換器29の性能回復をさせることのできる炭素層除去方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程を設けると共に、熱交換工程の直前においてカーボンブラック含有ガス流に水を導入する工程を設けることにより、熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法に関する。
本発明の第2は、(A)燃料炭化水素導入管および酸素含有ガス導入管を備えた燃焼ガス発生部、原料炭化水素導入管を備えたカーボンブラック反応生成部および冷却水導入管を備えた反応停止部からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉、(B)反応停止部の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段および(C)前記熱交換手段の下板の下方に設けられた水導入手段、よりなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置に関する。
本発明の第3は、前記熱交換手段の下板と水導入手段における水導入部位までの距離(L)に対する前記熱交換手段内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0である請求項2記載のカーボンブラック製造装置に関する。
本発明の第4は、反応炉への炭素質原料油の導入を停止し、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成した燃焼ガス流をそのまま熱交換工程の配管内に導入し、配管内の炭素質付着物を燃焼除去することを特徴とする熱交換系配管内に付着した炭素質付着物を除去する方法に関する。
【0017】
すなわち、カーボンブラック生成反応後のプロセスガスでは高温になるほど炭素が析出・堆積する反応速度が大きくなり、熱交換器29の複数の管内に炭素質物質が付着・成長することが予測されるが、これを回避するために熱交換器29の下板よりも上流側(反応炉側)から冷却媒、たとえば水を導入し、この水が高温の雰囲気内で瞬間的に爆発的に水蒸気に膨張するときの圧力変化により管内の表面上に析出・堆積して形成された炭素層を排除させ、層への成長を妨げることのできるカーボンブラック製造プロセスおよび製造装置であり、加えて炭素層が形成された際に生産活動の停止期間を極力短縮することができるプロセスに関するものである。
【0018】
熱交換用の複数管空間に反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流を導入する以前の空間内において水導入手段を備えることが本発明の要件の1つであるが、水の導入形態はなるべく噴霧させないままで導入するのがより好ましい。これはあまり水粒子が小さすぎると爆発的に蒸発するときの圧力が弱くなるためである。また水の導入手段としては複数管状物の導入口面である底面よりも上流側とするがこの距離が長すぎると導入された水蒸発時の圧力が所期の圧力に到達せず、効果が発現されず、逆に近すぎると系の全体にその影響を及ぼすことができなくなることから、底面と水導入部までの距離(L)と熱交換器29内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0となる位置に水導入部位を設置するのが好ましい。また、水導入口の向きとしては高温プロセスガス流の流れ方向に対抗する向きの方が望ましい。
【0019】
本発明においては、前述のように熱交換器29に反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流が導入される前の特定位置から水を導入することにより熱交換器29の複数管の内側に付着・堆積する炭素層の生成を排除するプロセスを含むカーボンブラック生産プロセスおよびこれを実行するための水導入装置を含むカーボンブラック製造装置を提供するものであるが、このような水の導入での瞬間的・爆発的蒸発による急激な圧力変化により熱交換器29の管内への炭素層の付着・堆積を従来よりも大幅に遅延させることはできるが、全く皆無とすることは困難である。ここに本請求項4の発明の存在意義がある。
【0020】
熱交換器29の複数管内に炭素層の付着・堆積が進行した場合その熱交換効率は低下するが、その程度は熱交換器29の入口と出口温度の差が小さくなる(あるいは空気予熱温度が低下する)ことから容易に判断することができる。
【0021】
従来では熱交換器29の複数管の内側に炭素層が付着・堆積し、この炭素層が断熱物質となって熱交換効率が低下した場合、次のような方法により管内壁面の洗浄化が行われていた。
1.反応炉への燃料および原料油の導入を中止する。
2.熱交換器29内の温度が低下するまで放置する。
3.熱交換器29内に設置された複数の管に高圧(通常5〜6MPa)の水噴霧装置を挿入して内側の付着・堆積層を洗浄する。
4.反応炉を少しずつ加熱し、所定の温度(通常1200〜1500℃)まで達した時点で原料油を導入してカーボンブラック製造プロセスに移行する。
このような手段により熱交換器29の熱交換効率を回復させた場合、中止から冷却、洗浄および加熱、復帰(原料油導入開始)までの時間は4〜5日を必要とし、この期間は完全に生産活動は停止するのでその期間損失は非常に大きいものがある。
【0022】
これを解消する、すなわちカーボンブラック生産を中断する時間を極力少なくする本発明のプロセス、すなわち管内の付着・堆積した炭素層の除去方法は次のようにして行われる。
(イ)反応炉への原料油の導入を中止する。
(ロ)燃料炭化水素と酸素含有ガス(空気)により生成した燃焼ガスを熱交換器29内に導入する。このとき、燃焼ガス中に少量残存する酸素により熱交換器29のチューブ内部の炭素質付着物は燃焼し、付着・堆積した炭素層が除去される。その後、通常は念のため反応室への燃料と空気の導入を中止し、
しばらく放置した後、カーボンブラックの生産を再開する。
なお、前記(イ)と(ロ)の操作は、熱交換器29の管内入口温度および加熱空気温度は装置内の損傷、特に温度の過熱による底面および複数の管内部の燃損を防止するために慎重に制御する必要がある。
【0023】
また、このようなプロセスによる除去方法は予め定められた熱交換器29の入口ガス温度において、熱交換器29内を通過した後の空気温度が熱交換効率の低下のために所定の温度を下回ったときを目安に実施することが好ましい。
【0024】
【実施例】
次に、実施例、比較例を示しながらさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0025】
例1〔熱交換手段での水導入の有無の比較〕
図4、図5、図6および図7に示した製造11−12装置(詳細は特許第2931117号明細書および図面参照)を用いて、ISAFカーボンブラックを製造した。この製造装置の各構成部の寸法は次の通りとした。
可燃性流体導入室2
内径 450mmφ
長さ 400mm
酸素含有ガス導入管3
長辺 400mm
短辺 100mm
酸素含有ガス導入用円筒4
内径 250mmφ
長さ 300mm
収れん室8
上流端内径 370mmφ
下流端内径 80mmφ
長さ 1600mm
角度 5.3°
燃料油導入装置
燃料油導入管72の内径 7mmφ
高圧空気導入導管73の内径 13mmφ
空気圧力 0.3MPa
低圧・低温空気導入導管74の内径 22mmφ
空気圧力 0.05MPa
反応室12
内径 140mmφ
【0026】
また、反応継続兼急速冷却室13内でのa〜hの冷却水噴霧装置は、実開昭58−140147号公報(出願人:旭カーボン株式会社)に開示されていると同様構造のものを取り付けた。
原料油および燃料油としては、表1に示した通りの性状および組成を有するものを使用した。
【0027】
【表1】
【0028】
カーボンブラック製造条件は表2に示したように操作し、ISAF級カーボンブラックを製造した。これと同時に、このときのカーボンブラックの物理化学特性についても示した。
【0029】
【表2】
【0030】
熱交換器29における運転条件は次の通りである。
熱交換器導入総湿りガス量 8350Nm3/hr
熱交換器入口ガス温度 880℃
熱交換器出口ガス温度 560℃
熱交換器入口空気温度 70℃
熱交換器出口空気温度 750℃
チューブ(配管)本数 84本
チューブ長さ 14m
熱交換器内チューブ直径 8cm
水導入手段:熱交換器の外枠を下端部分から下方に延長して作った筒状体の中心部に、図2に示すように、水導入手段を設けた。水導入手段の位置は、前記熱交換器下端部分を構成している下板から計って、熱交換器筒体直径の0.6倍(図2のLで示す)の個所とした。水導入量は400l/hr、水導入圧力は0.3MPaとした。
【0031】
以上の条件でカーボンブラックの製造を行い、熱交換器29導入口下流側からの水導入の有無による差異について、熱交換器29での出口空気温度が720℃になるまでの期間を測定した。なお、熱交換器の入口温度と出口温度の差が小さくなくということは、熱交換器内の配管(チューブ)にかなりの厚みで炭素層が形成され、熱交換効率が低下したことを示すものであり、このテストでは、出口空気温度が720℃になったときを、熱交換器の使用限界と判断した。その結果はつぎのとおりであった(図3参照)。
【0032】
比較例1:水導入なし 30日間(図3の破線で示す)
実施例1:水導入あり 65日間(図3の実線で示す)
このように、熱交換器29へのカーボンブラック含有反応ガス導入に先立ち水を導入することにより付着・堆積する炭素層が水の爆発的蒸発でチューブ表面内に形成されにくくなり、高い熱交換効率が従来よりも2倍以上の長期間維持できることは明らかである。
【0033】
〔熱交換器内壁の体積層の除去〕
前述の製造操作において65日で熱交換器29での出口空気温度が720℃にまで低下して熱交換効率が低下した装置に対してつぎのような炭素層除去操作を行った。
まず、反応炉への原料油導入を中断した。一方、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成している燃焼ガスは、反応炉の反応帯域26と停止帯域28(冷却媒は導入する)をそのまま素通りして図2に示す「熱交換領域と水導入装置を含む熱交換器延長領域」とからなる熱交換器内に導入される。この燃焼ガス中には、酸素が残存しているので、熱交換器内のチューブ内面に付着・堆積している炭素層は燃焼し、除去される。
この処理操作はわずか3時間で終了した。ついで、炭化水素燃料と酸素含有ガスの導入を中止し、2時間経過後、カーボンブラックの製造を再開した。
したがって、カーボンブラックの製造を停止していた時間は、わずか5時間であった。
これに対して、従来のように製造をやめ、反応炉を冷却させた後に熱交換器29内の管を高圧水の噴霧により洗浄した場合は、中止から製造開始(冷却した反応炉を加熱して原料油を導入できる条件に反応炉内の温度が上昇するまで)までに5日間を要した。
【0034】
本発明による熱交換器延長領域内への水導入での圧力変化の発生による炭素堆積層蓄積の遅延および炭素層除去操作を組み合わせた場合と従来のように製造をやめ、反応炉を冷却させた後に熱交換器29内の管を高圧水の噴霧により洗浄した場合とを比較すると、カーボンブラック製造装置の稼動時間の差異は大略次のようになる。
したがって、従来では1/7(14.3%)〔5/(30+5)×100%〕の時間が管内の炭素層除去のために製造活動不可能であったのに対して、本発明ではわずか0.3%〔5/(65×24+5)×100%〕しか停止時間がなくなり、これによる稼動割合の向上メリットは非常に大きい。
【0035】
【発明の効果】
(1)本発明のカーボンブラックの製造方法と製造装置により、熱交換器内のチューブ(配管)内に付着・堆積する炭素層の形成を大幅に遅らせることができたので、全体としての製造効率を著しく向上させることができた。
(2)本発明の炭素層除去方法によれば、カーボンブラックの製造を停止しなければならない時間が従来の除去方法に較べて著しく短縮された。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンブラックの概略的製造工程フローシートを示す。
【図2】本発明の要点である熱交換系の1例を示す断面図である。
【図3】熱交換器延長領域内への水導入の有無による経過日数に対する熱交換器出口の温度変化を示すグラフである。
【図4】本発明でのカーボンブラック製造に用いた反応炉の縦断正面説明図である。
【図5】図4のA−A矢視における断面図である。
【図6】図4の前頭部および燃料導入手段を示す部分拡大図である。
【図7】図6のB−B矢視における断面図である。
【符号の説明】
1 カーボンブラック反応炉
2 可燃性流体導入室
3 酸素含有ガス導入管
4 酸素含有ガス導入用円筒
5 整流板
6 空間
7 燃料油噴霧手段
8 収れん室
9 バーナータイル
10 原料油噴霧装置
11 原料油導入室
12 反応室(反応帯域)
13 反応継続兼急室冷室(停止帯域)
21 反応炉
22 炭化水素燃料導入部
23 加熱空気導入部
24 燃焼ガス生成帯域
25 原料油
26 反応帯域
27 冷却媒導入部
28 (反応)停止帯域
29 熱交換器
30 空気導入部
31 分離装置
51 リング
71 燃料油噴霧チップ
72 燃料油導入管
73 酸素含有ガス導入管
74 酸素含有ガス導入管
75 酸素含有ガスの導管
76 ガス体の導管
a 急冷水圧入噴霧手段
b 急冷水圧入噴霧手段
c 急冷水圧入噴霧手段
d 急冷水圧入噴霧手段
e 急冷水圧入噴霧手段
f 急冷水圧入噴霧手段
g 急冷水圧入噴霧手段
h 急冷水圧入噴霧手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンブラックの製造方法および製造装置に関し、より詳しくはカーボンブラック製造プロセスにおいて炉内に導入される酸素含有ガスを加熱するプロセスでの加熱効率を維持するための改良およびこれを満たすための手段を備えた製造装置に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラックは、工業用原材料例えばゴム補強剤としてタイヤ製造工業や自動車用ゴム製品製造工業、黒色という特性を生かしての各種塗料、インキ等製造工業、静電トナー製造工業などに広範囲に使用されている重要な工業製品の1つである。
【0003】
カーボンブラックは炭化水素原料を熱分解または不完全燃焼させることにより得られるが、そのほとんどが高温に保持された反応炉(ファーネス)内での熱分解によるファーネス法により生産されている。このファーネス法によるカーボンブラック製造プロセスは次のようなフローで行われる。
【0004】
図1で示すように、全体が耐火物で覆われたカーボンブラック反応炉21の前頭部の導入部22からの炭化水素燃料および導入部23からの酸素含有ガス(通常は空気)よりなる混合物の燃焼による高温の燃焼ガス生成帯域24、中間での高温燃焼ガス流中に原料油25を導入してカーボンブラックを生成せしめる反応帯域26、この下流側で冷却媒(通常は水)導入部27を介して導入された冷却媒により反応を急速に停止させる停止帯域28から構成される反応炉21においてカーボンブラックを含む高温流が生成される。
【0005】
カーボンブラックの生成反応は1500〜1800℃という非常に高温雰囲気下で行われ、炉内に導入される成分(冷却媒を除く)の温度が低い場合は雰囲気温度の低下をもたらすことから、炉内に導入される前に予め加熱しておくことが生成反応において有利に作用するので通常はいずれも予熱して導入される。
【0006】
反応炉内から排出された高温流(通常は800〜850℃の温度をもつ)は内部に多数の管状物が設置された熱交換器の空間内を通過し、一方、炭化水素燃料の燃焼を保持するための酸素含有ガス(空気)は、熱交換器29の上部の導入部30からブロアーにより送風導入され、前記高温流の流れる管外表面との接触により加熱された空気は交換器29の下部から取り出されて前記の加熱空気導入部23より反応炉内に導入される。
【0007】
熱交換器29の管内を通過して間接的に冷却されたカーボンブラック含有ガス流は次々に固体(カーボンブラック)とガス体に分離するための分離装置31に導入され、カーボンブラックが分離される。
分離後のカーボンブラックは用途に応じて、粉末状のまま、あるいは造粒工程を経てユーザーに提供される。
【0008】
熱交換器29を通過した後に導入部23から炉内に導入される空気は前述のように温度が高いほどカーボンブラック生成反応にとっては有利に作用するので、総体的には反応終了後のカーボンブラック含有ガス流の交換器29への供給時の温度はさらに高いものが要求される傾向にある。
【0009】
しかしながら、ガス流の温度が高くなるほど、例えば交換器29への入口温度を900℃くらいに上昇させて炉内導入空気の温度を上げようとすると、カーボンブラック含有ガス流が複数管の内部を通過するときに内部壁面に付着したカーボンブラック内に少量存在する未分解炭化水素の炭化反応あるいはガス流中に含まれる炭素酸化物(CO、CO2)からの分解反応による炭素堆積反応により管内で炭化カーボン層が生成する。この炭化カーボン層は堆積が進むにつれて断熱材として作用するようになり、熱交換の効率を低下させるとともに、極端な場合には管の閉塞をも招来することになる。特に、カーボンブラック中に未分解のタール分を多く含有する場合にはこの傾向はより顕著となる。さらにこのカーボン堆積層が管内壁面から脱離して製品に混在した場合、前述のようなカーボンブラックとしての特性を示さない異物(コークス)として作用し、品質低下の原因ともなる。
【0010】
カーボンブラックの生成反応および熱交換器29の管表面での炭素堆積層の発生は、主に下記の化学反応が関与していると思われる。
CmHn→mC+1/2nH2(カーボンブラック生成反応)
CH4+H2O⇔CO+3H2(水添分解)
2CO⇔CO2+C(炭素析出反応)
CO+H2⇔H2O+C(炭素析出反応)
上記の化学反応式において、後段の2つの式が炭素堆積層の発生、成長に係わるものであっていずれも可逆反応であるが、炭素堆積層の発生する右辺への反応速度はその雰囲気温度が高い場合ほど大きくなる。すなわち炭素が管内に析出・堆積する可能性が大きくなることを意味する。
【0011】
上記の課題を解決する手段に対する従来技術としては、大別して次の3つが開示されている。
(1)熱交換器29へのガス流供給温度を低く抑えて管内への炭化カーボン層の発生を制御し、この熱交換器通過後の予熱空気を別々の熱発生源を通過させることにより所定の温度に加熱する(特公平2−385号公報、特開平11−293141号公報など)。
(2)熱交換器29に導入する前にカーボンブラック含有ガス流中に内壁表面上への炭素層生成を減少させる防汚剤を添加する(特開平5−222378号公報、特許第2944882号公報など)。
(3)熱交換器の管内壁をアニーリング処理することにより炭素付着物を減少させる(特表平11−514681号公報など)。
【0012】
前述の炭素付着物を減少させるための方法ではつぎのような欠点がある。
(1)ではカーボンブラック製造ラインとは全くの別の熱源発生装置、またはこれらに付随するバーナー部などが必要となるので設備面でのコストアップは避けられない。
(2)では原料炭化水素に対して付着防止用の第3成分を添加する必要があり、これに伴って第3成分導入ラインの設置、添加成分の導入によるコストアップがある。
(3)では管内壁をアニーリング処理するためのコストアップを避けることは不可能である。
【0013】
さらに加えて、管内に炭素層が付着・堆積して熱交換効率が低下する、あるいは内部閉塞による圧力損失が発生した場合には一端生産活動を停止し、付着・堆積した炭素層を高圧水を内壁面に噴霧してはぎ落とす、あるいはスチームおよび/または空気を導入することにより分解・燃焼除去するのが一般的である。
しかしながら、内部に設置された管の数が多く、この作業には多大の時間を要することから、中断を含めてこの炭素層の排除による製造時間の損失は極めて大きいものがある(管冷却時間も含めて通常数日を要する)。また、この除去作業はカーボンブラックの製造条件、すなわち内部での付着状況にも依存するが、2週間〜数ヶ月に1回必要である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カーボンブラック製造工程において生成した熱量を効果的に回収して空気を加熱するための熱交換装置において、カーボンブラックを含む高温ガスが通過する熱交換器内の複数の管空間内壁に析出・堆積する炭素層を減少させることのできる製造方法と製造装置を提供するものである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、本発明請求項1〜3の発明により所定の厚さまで、すなわち、熱交換効率が低下するほどの厚さまで成長する炭素層の発生を遅延させることはできるが、皆無とはできないことから、長期間の熱交換器29の連続使用により少しずつ生成した炭素層を、製造プロセスを完全に中止することなく、短時間の条件変更で熱交換器29の性能回復をさせることのできる炭素層除去方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程を設けると共に、熱交換工程の直前においてカーボンブラック含有ガス流に水を導入する工程を設けることにより、熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法に関する。
本発明の第2は、(A)燃料炭化水素導入管および酸素含有ガス導入管を備えた燃焼ガス発生部、原料炭化水素導入管を備えたカーボンブラック反応生成部および冷却水導入管を備えた反応停止部からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉、(B)反応停止部の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段および(C)前記熱交換手段の下板の下方に設けられた水導入手段、よりなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置に関する。
本発明の第3は、前記熱交換手段の下板と水導入手段における水導入部位までの距離(L)に対する前記熱交換手段内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0である請求項2記載のカーボンブラック製造装置に関する。
本発明の第4は、反応炉への炭素質原料油の導入を停止し、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成した燃焼ガス流をそのまま熱交換工程の配管内に導入し、配管内の炭素質付着物を燃焼除去することを特徴とする熱交換系配管内に付着した炭素質付着物を除去する方法に関する。
【0017】
すなわち、カーボンブラック生成反応後のプロセスガスでは高温になるほど炭素が析出・堆積する反応速度が大きくなり、熱交換器29の複数の管内に炭素質物質が付着・成長することが予測されるが、これを回避するために熱交換器29の下板よりも上流側(反応炉側)から冷却媒、たとえば水を導入し、この水が高温の雰囲気内で瞬間的に爆発的に水蒸気に膨張するときの圧力変化により管内の表面上に析出・堆積して形成された炭素層を排除させ、層への成長を妨げることのできるカーボンブラック製造プロセスおよび製造装置であり、加えて炭素層が形成された際に生産活動の停止期間を極力短縮することができるプロセスに関するものである。
【0018】
熱交換用の複数管空間に反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流を導入する以前の空間内において水導入手段を備えることが本発明の要件の1つであるが、水の導入形態はなるべく噴霧させないままで導入するのがより好ましい。これはあまり水粒子が小さすぎると爆発的に蒸発するときの圧力が弱くなるためである。また水の導入手段としては複数管状物の導入口面である底面よりも上流側とするがこの距離が長すぎると導入された水蒸発時の圧力が所期の圧力に到達せず、効果が発現されず、逆に近すぎると系の全体にその影響を及ぼすことができなくなることから、底面と水導入部までの距離(L)と熱交換器29内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0となる位置に水導入部位を設置するのが好ましい。また、水導入口の向きとしては高温プロセスガス流の流れ方向に対抗する向きの方が望ましい。
【0019】
本発明においては、前述のように熱交換器29に反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流が導入される前の特定位置から水を導入することにより熱交換器29の複数管の内側に付着・堆積する炭素層の生成を排除するプロセスを含むカーボンブラック生産プロセスおよびこれを実行するための水導入装置を含むカーボンブラック製造装置を提供するものであるが、このような水の導入での瞬間的・爆発的蒸発による急激な圧力変化により熱交換器29の管内への炭素層の付着・堆積を従来よりも大幅に遅延させることはできるが、全く皆無とすることは困難である。ここに本請求項4の発明の存在意義がある。
【0020】
熱交換器29の複数管内に炭素層の付着・堆積が進行した場合その熱交換効率は低下するが、その程度は熱交換器29の入口と出口温度の差が小さくなる(あるいは空気予熱温度が低下する)ことから容易に判断することができる。
【0021】
従来では熱交換器29の複数管の内側に炭素層が付着・堆積し、この炭素層が断熱物質となって熱交換効率が低下した場合、次のような方法により管内壁面の洗浄化が行われていた。
1.反応炉への燃料および原料油の導入を中止する。
2.熱交換器29内の温度が低下するまで放置する。
3.熱交換器29内に設置された複数の管に高圧(通常5〜6MPa)の水噴霧装置を挿入して内側の付着・堆積層を洗浄する。
4.反応炉を少しずつ加熱し、所定の温度(通常1200〜1500℃)まで達した時点で原料油を導入してカーボンブラック製造プロセスに移行する。
このような手段により熱交換器29の熱交換効率を回復させた場合、中止から冷却、洗浄および加熱、復帰(原料油導入開始)までの時間は4〜5日を必要とし、この期間は完全に生産活動は停止するのでその期間損失は非常に大きいものがある。
【0022】
これを解消する、すなわちカーボンブラック生産を中断する時間を極力少なくする本発明のプロセス、すなわち管内の付着・堆積した炭素層の除去方法は次のようにして行われる。
(イ)反応炉への原料油の導入を中止する。
(ロ)燃料炭化水素と酸素含有ガス(空気)により生成した燃焼ガスを熱交換器29内に導入する。このとき、燃焼ガス中に少量残存する酸素により熱交換器29のチューブ内部の炭素質付着物は燃焼し、付着・堆積した炭素層が除去される。その後、通常は念のため反応室への燃料と空気の導入を中止し、
しばらく放置した後、カーボンブラックの生産を再開する。
なお、前記(イ)と(ロ)の操作は、熱交換器29の管内入口温度および加熱空気温度は装置内の損傷、特に温度の過熱による底面および複数の管内部の燃損を防止するために慎重に制御する必要がある。
【0023】
また、このようなプロセスによる除去方法は予め定められた熱交換器29の入口ガス温度において、熱交換器29内を通過した後の空気温度が熱交換効率の低下のために所定の温度を下回ったときを目安に実施することが好ましい。
【0024】
【実施例】
次に、実施例、比較例を示しながらさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0025】
例1〔熱交換手段での水導入の有無の比較〕
図4、図5、図6および図7に示した製造11−12装置(詳細は特許第2931117号明細書および図面参照)を用いて、ISAFカーボンブラックを製造した。この製造装置の各構成部の寸法は次の通りとした。
可燃性流体導入室2
内径 450mmφ
長さ 400mm
酸素含有ガス導入管3
長辺 400mm
短辺 100mm
酸素含有ガス導入用円筒4
内径 250mmφ
長さ 300mm
収れん室8
上流端内径 370mmφ
下流端内径 80mmφ
長さ 1600mm
角度 5.3°
燃料油導入装置
燃料油導入管72の内径 7mmφ
高圧空気導入導管73の内径 13mmφ
空気圧力 0.3MPa
低圧・低温空気導入導管74の内径 22mmφ
空気圧力 0.05MPa
反応室12
内径 140mmφ
【0026】
また、反応継続兼急速冷却室13内でのa〜hの冷却水噴霧装置は、実開昭58−140147号公報(出願人:旭カーボン株式会社)に開示されていると同様構造のものを取り付けた。
原料油および燃料油としては、表1に示した通りの性状および組成を有するものを使用した。
【0027】
【表1】
【0028】
カーボンブラック製造条件は表2に示したように操作し、ISAF級カーボンブラックを製造した。これと同時に、このときのカーボンブラックの物理化学特性についても示した。
【0029】
【表2】
【0030】
熱交換器29における運転条件は次の通りである。
熱交換器導入総湿りガス量 8350Nm3/hr
熱交換器入口ガス温度 880℃
熱交換器出口ガス温度 560℃
熱交換器入口空気温度 70℃
熱交換器出口空気温度 750℃
チューブ(配管)本数 84本
チューブ長さ 14m
熱交換器内チューブ直径 8cm
水導入手段:熱交換器の外枠を下端部分から下方に延長して作った筒状体の中心部に、図2に示すように、水導入手段を設けた。水導入手段の位置は、前記熱交換器下端部分を構成している下板から計って、熱交換器筒体直径の0.6倍(図2のLで示す)の個所とした。水導入量は400l/hr、水導入圧力は0.3MPaとした。
【0031】
以上の条件でカーボンブラックの製造を行い、熱交換器29導入口下流側からの水導入の有無による差異について、熱交換器29での出口空気温度が720℃になるまでの期間を測定した。なお、熱交換器の入口温度と出口温度の差が小さくなくということは、熱交換器内の配管(チューブ)にかなりの厚みで炭素層が形成され、熱交換効率が低下したことを示すものであり、このテストでは、出口空気温度が720℃になったときを、熱交換器の使用限界と判断した。その結果はつぎのとおりであった(図3参照)。
【0032】
比較例1:水導入なし 30日間(図3の破線で示す)
実施例1:水導入あり 65日間(図3の実線で示す)
このように、熱交換器29へのカーボンブラック含有反応ガス導入に先立ち水を導入することにより付着・堆積する炭素層が水の爆発的蒸発でチューブ表面内に形成されにくくなり、高い熱交換効率が従来よりも2倍以上の長期間維持できることは明らかである。
【0033】
〔熱交換器内壁の体積層の除去〕
前述の製造操作において65日で熱交換器29での出口空気温度が720℃にまで低下して熱交換効率が低下した装置に対してつぎのような炭素層除去操作を行った。
まず、反応炉への原料油導入を中断した。一方、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成している燃焼ガスは、反応炉の反応帯域26と停止帯域28(冷却媒は導入する)をそのまま素通りして図2に示す「熱交換領域と水導入装置を含む熱交換器延長領域」とからなる熱交換器内に導入される。この燃焼ガス中には、酸素が残存しているので、熱交換器内のチューブ内面に付着・堆積している炭素層は燃焼し、除去される。
この処理操作はわずか3時間で終了した。ついで、炭化水素燃料と酸素含有ガスの導入を中止し、2時間経過後、カーボンブラックの製造を再開した。
したがって、カーボンブラックの製造を停止していた時間は、わずか5時間であった。
これに対して、従来のように製造をやめ、反応炉を冷却させた後に熱交換器29内の管を高圧水の噴霧により洗浄した場合は、中止から製造開始(冷却した反応炉を加熱して原料油を導入できる条件に反応炉内の温度が上昇するまで)までに5日間を要した。
【0034】
本発明による熱交換器延長領域内への水導入での圧力変化の発生による炭素堆積層蓄積の遅延および炭素層除去操作を組み合わせた場合と従来のように製造をやめ、反応炉を冷却させた後に熱交換器29内の管を高圧水の噴霧により洗浄した場合とを比較すると、カーボンブラック製造装置の稼動時間の差異は大略次のようになる。
したがって、従来では1/7(14.3%)〔5/(30+5)×100%〕の時間が管内の炭素層除去のために製造活動不可能であったのに対して、本発明ではわずか0.3%〔5/(65×24+5)×100%〕しか停止時間がなくなり、これによる稼動割合の向上メリットは非常に大きい。
【0035】
【発明の効果】
(1)本発明のカーボンブラックの製造方法と製造装置により、熱交換器内のチューブ(配管)内に付着・堆積する炭素層の形成を大幅に遅らせることができたので、全体としての製造効率を著しく向上させることができた。
(2)本発明の炭素層除去方法によれば、カーボンブラックの製造を停止しなければならない時間が従来の除去方法に較べて著しく短縮された。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンブラックの概略的製造工程フローシートを示す。
【図2】本発明の要点である熱交換系の1例を示す断面図である。
【図3】熱交換器延長領域内への水導入の有無による経過日数に対する熱交換器出口の温度変化を示すグラフである。
【図4】本発明でのカーボンブラック製造に用いた反応炉の縦断正面説明図である。
【図5】図4のA−A矢視における断面図である。
【図6】図4の前頭部および燃料導入手段を示す部分拡大図である。
【図7】図6のB−B矢視における断面図である。
【符号の説明】
1 カーボンブラック反応炉
2 可燃性流体導入室
3 酸素含有ガス導入管
4 酸素含有ガス導入用円筒
5 整流板
6 空間
7 燃料油噴霧手段
8 収れん室
9 バーナータイル
10 原料油噴霧装置
11 原料油導入室
12 反応室(反応帯域)
13 反応継続兼急室冷室(停止帯域)
21 反応炉
22 炭化水素燃料導入部
23 加熱空気導入部
24 燃焼ガス生成帯域
25 原料油
26 反応帯域
27 冷却媒導入部
28 (反応)停止帯域
29 熱交換器
30 空気導入部
31 分離装置
51 リング
71 燃料油噴霧チップ
72 燃料油導入管
73 酸素含有ガス導入管
74 酸素含有ガス導入管
75 酸素含有ガスの導管
76 ガス体の導管
a 急冷水圧入噴霧手段
b 急冷水圧入噴霧手段
c 急冷水圧入噴霧手段
d 急冷水圧入噴霧手段
e 急冷水圧入噴霧手段
f 急冷水圧入噴霧手段
g 急冷水圧入噴霧手段
h 急冷水圧入噴霧手段
Claims (4)
- 炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程を設けると共に、熱交換工程の直前においてカーボンブラック含有ガス流に水を導入する工程を設けることにより、熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
- (A)燃料炭化水素導入管および酸素含有ガス導入管を備えた燃焼ガス発生部、原料炭化水素導入管を備えたカーボンブラック反応生成部および冷却水導入管を備えた反応停止部からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉
(B)反応停止部の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段
および
(C)前記熱交換手段の下板の下方に設けられた水導入手段
よりなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置。 - 前記熱交換手段の下板と水導入手段における水導入部位までの距離(L)に対する前記熱交換手段内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0である請求項2記載のカーボンブラック製造装置。
- 反応炉への炭素質原料油の導入を停止し、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成した燃焼ガス流をそのまま熱交換工程の配管内に導入し、配管内の炭素質付着物を燃焼除去することを特徴とする熱交換系配管内に付着した炭素質付着物を除去する方法。
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