JP3903171B2 - 光パラメトリック発振器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1〜3μmの範囲で波長可変かつ10GHz以上の高繰返し発振が可能な光パラメトリック発振器に関するものであり、1.3〜1.6μm帯の光通信帯域に使用される高繰返し光デバイスや新しい光材料・光素子の特性評価に使用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の装置としては、第1図に示すものが知られており、光パラメトリック発振器と称され、1つの非線形結晶(例えばKTP結晶)と数枚の鏡から構成されている。
【0003】
光パラメトリック発振器とは、光パラメトリック共振器の中に置かれた非線形結晶にパルスレーザー光を集光することにより、非線形結晶中に2つの新しい光を発生させ、その発生させた光を共振器内で増幅することにより、共振器内での光強度を高め、ついには出力鏡からコヒーレント光として外部に取り出す装置である。
【0004】
光パラメトリック発振で発生する2つの光の周波数をf1、 f2とし、これらの光を生み出すレーザー光の周波数をf0とすると、3つの光の周波数には、f0=f1+f2の関係がある。波長の関係で言い換えると、それぞれの周波数の光の波長をλ0、 λ1、 λ2としたとき、1/λ0=1/λ1+1/λ2である。このような2つの光を効率よく発生させるためには、3つの光の波の位相がある一定の関係を満たさなければならない。この関係は、波長依存するため、非線形結晶にこの位相関係が変化するような原因を与えることにより、新たに発生する2つの光の波長を変えることができる。非線形結晶への外的変化は、結晶をわずかに回転させたり、結晶の温度を変化させることにより可能であり、結晶のもつ特性を考慮してその方法が選択される。
【0005】
光パラメトリック効果は、結晶中で発生する非線形効果に基づくものであるため、通常のレーザー発振とは異なり、結晶中に励起用レーザーが照射されている間だけ2つの新しい光(以下「パラメトリック光」と呼ぶ。)が発生する。この光が光パラメトリック共振器の中を進行し、再び結晶に戻ってきたちょうどそのときに励起用レーザーパルスが結晶中に照射されたときのみ、パラメトリック光は増幅される。このため、励起用レーザーのパルス間隔と光パラメトリック発振器を1往復する時間は厳密に同じでなくてはならない。この調整は、光パラメトリック共振器の共振器長の長さを厳密に調整することにより行われる。このような調整の場合、光パラメトリック発振器からのパルス列の繰返し周波数は、励起用レーザーの繰返し周波数と正確に同じである。
【0006】
光パラメトリック発振器の繰返し周波数の高繰返し化は、パラメトリック光が光パラメトリック共振器内をn回往復したときに、励起用レーザーパルスが非線形結晶に到着するように、光パラメトリック共振器の共振器長を1/n倍にすることによって実現できる。これは、パラメトリック光が光パラメトリック共振器の出力鏡に到達するたびに共振器の外部に出力されることによる。
【0007】
イギリスのReidらは、この原理を図1に示した光パラメトリック発振器に応用し、 86MHzで発振するフェムト秒チタンサファイアレーザーを励起用レーザーとして、励起用レーザーの4倍の繰返し周波数である344MHzのパラメトリック光を得ている(Compact、 efficient 344-MHz repetition-rate femtosecond optical parametric oscillator: D.T Reid、 C. McGowan、 W. Sleat、 M. Ebrahimzadeh、 and W。 Sibbett、 Optics Letters、 Vol.22、 No.22、 pp. 525-527、1997)。励起用レーザーと光パラメトリック発振のパルス列の関係を図2に示す。
【0008】
図1においては、共振器長をコンパクトにするため、非線形結晶に誘電体多層膜コートを施し、励起用レーザー波長に対しては透過鏡として、パラメトリック光に対しては高反射率鏡としての機能を持たせている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の光パラメトリック発振器において、100MHzで発振する共振器長1500mmの励起用レーザーを用いて10GHzの高繰返し光パラメトリック発振を得るためには、光パラメトリック発振器の共振器長を励起用レーザーの共振器長の100分の1に相当する15mmにする必要があり、これ以上共振器長を短尺にすることは製作上困難であることから、10GHz以上の高繰返し発振は困難であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、光パラメトリック発振器と励起用レーザーの共振器長の差が、励起用レーザーの共振器長の整数分の1となるような光パラメトリック共振器を発明した。励起用レーザーと光パラメトリック共振器の共振器長をL1、L2とし、励起用レーザーの繰返し周波数F1とすると、光パラメトリック発振器の周波数F2は、F2=F1xL1/|L1-L2|(||は絶対値記号)となる。光パラメトリック共振器がリング共振器である場合、L1は共振器長の1/2である。
【0011】
図3に100MHzで発振する共振器長1500mmの励起用レーザーによって、共振器長1125mmの光パラメトリック発振器から400MHzのパルス列が発生する場合のパルス列の関係を示す。この場合、励起用レーザーの共振器長および光パラメトリック共振器の共振器長との関係は、1500mm/(1500-1125)mm=4で整数になっている。励起用レーザーのパルス列は便宜上3つのグループに分けられている。IからIIIのグループの励起用レーザーパルスは、同じ共振器内でパルス間隔が7.5nsの133.3MHzの光パラメトリックパルス列をそれぞれ発生するため、共振器内で合成されたパルスは400MHzの繰返しパルス列となって出力される。光パラメトリック発振器の共振器長が1875mmの場合も同様の繰返しパルス列が得られる。
【0012】
この発明により、100MHzで発振する共振器長1500mmの励起用レーザーによって10GHzの光パラメトリック発振を1485mmあるいは1515mmの共振器長で得ることが可能になる。また、1GHzで発振する共振器長150mmの励起用レーザーでは、135mmあるいは165mmの共振器長の光パラメトリック共振器で10GHzの光パラメトリック発振を得ることが可能になる。
【0013】
【実施例】
図4に基づいた実施例を以下に示す。まず、2枚の凹面鏡と2枚の平面鏡により、光パラメトリック共振器を構成する。励起用レーザーとして、出力パワー1.1W、 パルス幅45fs、 中心波長810nmのフェムト秒チタンサファイアレーザーを使った。励起用レーザーの共振器長は1785.7mmであり、繰返しは84MHzであった。凹面鏡は、このフェムト秒チタンサファイアレーザーパルスが透過し、かつ2つのパラメトリック光のうち短波長側の光に対して可能な限り高い反射率をもつように誘電体多層膜コートを施した。この実施例では短波長側の光として1140nmの中心波長を採用した。このとき長波長側の光の波長は2.8μmとなるが、この実施例では長波長側の光は考慮されていない。集光レンズの焦点距離は70mmである。凹面鏡の曲率半径は100mmであり、したがって凹面鏡間の距離はほぼ100mmである。
【0014】
非線形結晶は中心波長1125nmで広帯域無反射コートが施された厚さ2mmのKTPを使用した。非線形結晶はタイプII(e→e+o)のnon-critical位相整合が取れるようにカットされた。光パラメトリック共振器を構成する平面鏡のうち1枚は、1%の透過率をもち、出力鏡として使用されている。光パラメトリック共振器と励起用レーザーの共振器長の差が446.3mmとなるように、光パラメトリック共振器の共振器長を1339.3mmとした。これにより、励起用レーザーの4倍の周波数である336MHzの繰返し周波数をもつパルス列を得ることができる。
【0015】
上記構成により、光パラメトリック発振を得るために必要な厳密な共振器構成を最初から実現することは困難であった。このため、最初に非線形結晶の位置に1064nmでの発振が可能なNd:YAGレーザー結晶を配置し、レーザー共振器として動作させた。次にレーザー発振動作が最適になるように共振器の厳密な調節を行った。本実施例で光パラメトリック発振波長を1140nmに設定した理由の1つは、Nd:YAGレーザーの利用を想定したことによる。この調整後、再び非線形結晶に置き替えることにより、光パラメトリック発振が可能になった。
【0016】
図5に、1339.3mmの共振器長に調整された光パラメトリック共振器を 84MHzで発振する共振器長1785.7mmの励起用レーザーで励起したときに得られた光パラメトリック発振パルス列のオシロスコープ写真を示す。パルス列の中にある高いパルスは、励起用レーザーパルスと光パラメトリック発振パルスが重畳された結果である。この重畳を取り除くことは可能であるが、励起用レーザーの繰返し周波数を明示するために2つのパルスが重畳された状態で測定を行った。オシロスコープの時間スケールが、2ns/divであるため、得られた光パラメトリック発振パルス列の繰返し周波数が励起用レーザーの繰返し周波数のちょうど4倍である336MHzであることが分かる。この繰返し周波数は、84MHzx1785.7/(1785.7-1339.3)= 336MHzと一致しており、本発明による手法が高繰返し光パラメトリック発振を実現できることを示している。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、空間的制約から従来不可能であった10GHzの繰返し周波数をもつ光パラメトリック発振を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 典型的な高繰り返し光パラメトリック発振器
【図2】 従来方式による86MHz励起用レーザーと344MHz光パラメトリック発振パルス列の関係
【図3】 本発明による100MHz励起用レーザーと400MHz光パラメトリック発振パルス列の関係
【図4】 本発明の実施例である高繰返し光パラメトリック発振器
【図5】 336MHz光パラメトリック発振パルス列オシロスコープ写真(時間スケールは2ns/div)

Claims (3)

  1. 鏡、レンズ及び非線形光学素子から成る光パラメトリック共振器並びに励起用レーザーから構成される光パラメトリック発振器において、光パラメトリック共振器の共振器長と励起用レーザーの共振器長の差で励起用レーザーの共振器長を除した商が整数であるように、それぞれの共振器長が定められていることを特徴とする光パラメトリック発振器。
  2. 上記鏡は、誘電体多層膜から成ることを特徴とする請求項1記載の光パラメトリック発振器。
  3. 上記非線形光学素子は、波長変換用非線形結晶であることを特徴とする請求項1記載の光パラメトリック発振器。
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