JP3899791B2 - 樹脂組成物及びそれが成形されてなる照度センサ補正用フィルター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物及びそれが成形されてなり明るさ調整機能付照明器具に使用される照度センサ補正用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、明るさ調整機能付照明器具は、図4及び図5に示すように、窓等の開口部Aを通して照射される太陽光L1の光量に相当する照明光を減光させることにより、太陽光L1が照射される被照射面Bにおける照度を一定に保持しつつ、省エネルギー効果を得ることができる照明器具である。この明るさ調整機能付照明器具は、被照射面Bを照射可能な蛍光灯C1を有したランプユニットC、被照射面Bの照度を測定する照度センサD1及びその照度センサD1により検知される光を制御する照度センサ補正用フィルターD2を有したセンサユニットD、センサユニットDによる被照射面Bの照度測定結果に応じてランプユニットCによる被照射面Bへの照射強度を制御する制御ブロックEを備えている。
【0003】
次に、このものの照度センサ補正用フィルターD2の役割について説明する。蛍光灯C1の照射光L2が、図2に破線で示す分光感度特性(波長−相対分光エネルギー)を有するのに対し、太陽光L1が、同図に実線で示す分光感度特性を有しており、それぞれの光L1,L2の間では、分光感度特性が異なる。
【0004】
従って、太陽光L1及び蛍光灯の光L2という互いに分光感度特性の異なる2種類の光を、人間の目に対して同じ明るさの光として扱うために、それぞれの光に対する照度センサD1の相対感度を、図2及び図3に一点鎖線で示した標準視感効率に適合させる必要があり、そのために、照度センサ補正用フィルターD2を通して、標準視感効率V(λ)に適合させているのである。なお、図3に破線で、照度センサ補正用フィルターD2を通さない場合の照度センサD1の相対感度を示している。
【0005】
この照度センサ補正用フィルターD2を製造する製造方法として、本願出願人は、特願平11−210164号で、3種類の製造方法を提案している。これらの第1提案例乃至第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法は、いずれも、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラス上に、黄色のコーティングを施す製造方法である。
【0006】
詳しくは、第1提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法は、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラス上に、黄色染料及び透明塗料を混合してなる黄色塗料を塗装するようにしている。また、第2提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法は、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラス上に、黄色有機顔料を物理蒸着するようにしている。また、第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法は、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラス上に、複数の無機物を物理的又は化学的に積層するようにしている。
【0007】
また、特開平6−345820号に開示された視感度補正用近赤外カットフィルターが、公知のものとして存在する。この視感度補正用近赤外カットフィルターは、リン酸基含有単量体と共重合可能な単量体をラジカル重合して得られる合成樹脂中に、銅塩を主成分とする金属塩を添加したものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した第1提案例乃至第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターにあっては、いずれも、黄色のコーティングを施すリン酸塩系の近赤外線吸収ガラスの耐湿性が低いために、黄色コーティングを施す前に、近赤外線吸収ガラスを長期間保管をする場合、近赤外線吸収ガラスを低湿度で保存する必要があり、また、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラスは、若干の潮解性を有しているため、黄色のコーティング膜の密着性を向上させる目的で、前処理として、アルカリ系洗浄剤等により、表面を再活性化させる必要がある。
【0009】
このように、黄色コーティングを施す前に近赤外線吸収ガラスを長期間保管をする場合に、近赤外線吸収ガラスを低湿度で保存する必要があったり、前処理として、アルカリ系洗浄剤等により、近赤外線吸収ガラスの表面を再活性化させる必要があるため、製造に要する労力が多いという問題点があった。
【0010】
さらに、第1提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターにあっては、黄色塗料中の黄色染料濃度や黄色塗料の塗膜厚のわずかな違いによって、透過特性が大きく変化するため、安定した製造を行うためには、黄色染料の添加量や塗膜厚の厳重な管理を行う必要があり、これもまた、製造に要する労力を多くする一因となっていた。
【0011】
また、第2提案例及び第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターにあっては、第1提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターに比較して、安定な透過特性を有することが可能ではあるが、その反面、生産性が劣る程、黄色コーティングに時間がかかり、製造に要する労力が多いことでは、第1提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターとかわりはない。
【0012】
一方、上記した視感度補正用近赤外カットフィルターにあっては、図1に破線で示すように、500nm以下の波長領域においても、比較的高い透過率を有しているため、この視感度補正用近赤外カットフィルターを、明るさ調整機能付照明器具の照度センサ補正用フィルターD2として使用した場合、500nm以下の波長領域では、センサユニットDの照度センサD1により検知される照度が高くなり、その結果、制御ブロックEにより、ランプユニットCの蛍光灯C1の照射強度が弱くなるよう制御されて、人間の視覚では暗く感じるようになる。
【0013】
特に、蛍光灯C1の照射光L2よりも500nm以下の波長領域の相対分光エネルギーが高い太陽光L1を多く含む光は、高い透過率でもって、視感度補正用近赤外カットフィルターを透過するから、センサユニットDの照度センサD1により検知される照度が高くなり、その結果、前述したように、ランプユニットCの蛍光灯C1の照射強度が弱くなるよう制御されて、人間の視覚では暗く感じるようになる。
【0014】
このような照度センサD1により検知された照度と人間の視覚とのギャップを埋めるためには、視感度補正用近赤外カットフィルターに、第1提案例乃至第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターと同様に、黄色コーティングを施す必要があり、結果として、第1提案例乃至第3提案例の照度センサ補正用フィルターの製造方法により製造された照度センサ補正用フィルターと同様に、製造に要する労力が多くなるという問題点が生じることになる。
【0015】
本発明は、上記の点に着目してなされたもので、その目的とするところは、照度センサ補正用フィルターの製造に要する労力を少なくできる樹脂組成物及びそれが成形されてなる照度センサ補正用フィルターを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、請求項1記載の樹脂組成物は、透明樹脂材料に、銅化合物を含む近赤外線吸収剤を5〜50重量部、クロム錯体を含む黄色染料を0.00005〜1重量部直接添加してなる構成にしている。
【0017】
請求項2記載の樹脂組成物は、請求項1記載の樹脂組成物において、前記透明樹脂材料は、リン酸基を含有した単量体組成物を有してなる合成樹脂材料である構成にしている。
【0018】
請求項3記載の照度センサ補正用フィルターは、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の樹脂組成物が成形されてなる構成にしている。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態の樹脂組成物を図1乃至図4に基づいて以下に説明する。
【0020】
この樹脂組成物は、透明樹脂材料に、銅化合物を含む近赤外線吸収剤を5〜50重量部、黄色染料を0.00005〜1重量部直接添加して、標準視感効率に適合させるようにしたものである。また、透明樹脂材料は、化学式(1)に示すようにリン酸基を含有した単量体組成物を有してなる合成樹脂材料である。リン酸基を含有した単量体組成物は、重合反応性制御のために共重合させるべく、単官能基単量体又は二官能基単量体の単独又は併用による混合物でもよい。
【0021】
【化1】
Figure 0003899791
【0022】
この樹脂組成物が重合してなる重合体成形品は、従来例の欄で説明した明るさ調整機能付照明器具のセンサユニットDの照度センサ補正用フィルターD2として使用可能である。
【0023】
かかる樹脂組成物にあっては、標準視感効率に適合されているから、成形されることによって、照度を検出する照度センサD1の相対感度を補正するための照度センサ補正用フィルターD2に使用された場合、分光感度特性の異なる光である太陽光L1及び蛍光灯の照射光L2に対する照度センサD1の相対感度が、標準視感効率に適合するものとなるので、太陽光L1及び蛍光灯の照射光L2を、人間の目に対して同じ明るさの光として扱うことができる。
【0024】
しかも、この樹脂組成物は、透明樹脂材料に、銅化合物を含む近赤外線吸収剤及び黄色染料を直接添加してなるのであるから、塗装工程が不要となり、製造のための労力を少なくすることができる。
【0025】
また、透明樹脂材料が銅化合物と結合可能なリン酸基を含有しているから、銅化合物の凝集を防止することができる。
【0026】
また、樹脂組成物をその硬化前に、分光光度計等の光学特性評価装置を使用して、透過率や色等の物性を確認することができるので、安定した透過特性を有した照度センサ補正用フィルターを製造することができる。
【0027】
また、リン酸塩系の近赤外線吸収ガラスと比較して、格段に耐湿性に優れるため、長期保存等に厳重な管理が必要でなくなり、同一の特性を有した照度センサ補正用フィルター2を同ロットで大量に製造して、在庫として保管することが可能となる。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
初めに、下記の配合比に従って、透明樹脂材料を作成した。
・化学式(2)で示されるリン酸基含有単量体 20部
・化学式(3)で示されるリン酸基含有単量体 10部
・n−ブチルメタクリレート 20部
・メチルメタクリレート 34部
・ジエチルメタクリレート 15部
・α−メチルスチレン 1部
【0029】
【化2】
Figure 0003899791
【0030】
【化3】
Figure 0003899791
【0031】
次に、上記した透明樹脂材料に、下記の配合比に従って、無水安息香酸銅(銅化合物を含む近赤外線吸収剤)及び黄色染料を直接添加し、55℃にて攪拌し、樹脂組成物を得た。
・無水安息香酸銅 17部
・黄色染料(1:2クロム錯体) 0.0001部
このようにして得た樹脂組成物に、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)2.0部を添加混合した後、3通りの条件で、加熱して注型重合を行った。この注型重合の3通りの条件は、それぞれ、55℃で16時間、60℃で8時間、90℃で3時間というものである。
【0032】
この注型重合により得られた3種類の重合体成形品は、いずれも、表面平滑性に優れ、かつ脈理もなく、光学フィルターとして、十分な性能を有したものとなった。また、透過率は、図1に実線で示す通りであり、図2及び図3に一点鎖線で示す標準視感効率V(λ)に近似したものとなっている。
【0033】
この重合体成形品を10mm×10mmに切断して、前述した明るさ調整機能付照明器具のセンサユニットの照度センサ補正用フィルターD2に使用して、調光制御を行ったところ、明るさを略一定に保持しながら調光できることを確認した。
(比較例1)
前述した明るさ調整機能付照明器具のセンサユニットの照度センサ補正用フィルターD2として、厚み1.0mmの近赤外線カット用光学フィルター[呉羽化学工業株式会社製、品名ルミクルUCF−22]を、前述した明るさ調整機能付照明器具のセンサユニットDの照度センサ補正用フィルターD2に使用して、調光制御を行ったところ、太陽光L1の割合が増加するにつれて、蛍光灯の光L2を減光し過ぎてしまい、はっきりと暗く感じるようになり、調光制御不能となった。
【0034】
【発明の効果】
請求項1記載の樹脂組成物は、標準視感効率に適合されているから、成形されることによって、照度を検出する照度センサの相対感度を補正するための照度センサ補正用フィルターに使用された場合、分光感度特性の異なる光である蛍光灯の照射光及び太陽光に対する照度センサの相対感度が、標準視感効率に適合するものとなるので、蛍光灯の照射光及び太陽光を、人間の目に対して同じ明るさの光として扱うことができる。しかも、この樹脂組成物は、透明樹脂材料に、銅化合物を含む近赤外線吸収剤及び黄色有機染料を直接添加してなるのであるから、塗装工程が不要となり、製造のための労力を少なくすることができる
【0035】
請求項2記載の樹脂組成物は、請求項1記載の樹脂組成物の効果に加えて、透明樹脂材料が銅化合物と結合可能なリン酸基を含有しているから、銅化合物の凝集を防止することができる。
【0036】
請求項3記載の照度センサ補正用フィルターは、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の樹脂組成物が成形されてなるから、照度を検出する照度センサの相対感度を補正するための照度センサ補正用フィルターに使用された場合、分光感度特性の異なる光である蛍光灯の照射光及び太陽光に対する照度センサの相対感度が、標準視感効率に適合するものとなるので、蛍光灯の照射光及び太陽光を、人間の目に対して同じ明るさの光として扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の樹脂組成物よりなる照度センサ補正用フィルター及び従来の視感度補正用近赤外カットフィルターのそれぞれの透過率の比較のための説明図である。
【図2】明るさ調整機能付照明器具の構成図である。
【図3】明るさ調整機能付照明器具のセンサユニットの拡大図である。
【図4】太陽光及び蛍光灯の照射光の分光感度特性を示す説明図である。
【図5】明るさ調整機能付照明器具の照度センサの相対感度と標準視感効率との比較のための説明図である。
【符号の説明】
V(λ) 標準視感効率

Claims (3)

  1. 透明樹脂材料に、銅化合物を含む近赤外線吸収剤を5〜50重量部、クロム錯体を含む黄色染料を0.00005〜1重量部直接添加してなることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記透明樹脂材料は、リン酸基を含有した単量体組成物を有してなる合成樹脂材料である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の樹脂組成物が成形されてなることを特徴とする照度センサ補正用フィルター。
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