JP3899053B2 - 溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法 - Google Patents

溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼帯表面にメッキを施す溶融金属メッキ浴に冷却管を浸漬させて該溶融金属メッキ浴を冷却する装置および方法に関する。
具体的には、冷却に必要とする面積を省スペース化でき、また、冷却の際の蒸気爆発を防止し安全に操業が行える溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯表面に施されるメッキの密着性を確保するためには、メッキを施す溶融金属メッキ浴の温度を適正範囲内に制御する必要がある。
しかし、メッキ浴に浸漬される鋼帯温度はラインスピードなどによって変動し、鋼帯が有する顕熱によってメッキ浴の温度が高くなり過ぎる場合がある。
鋼帯の顕熱を減少させるには、ラインスピードを低速化することにより、鋼帯温度を低下させて操業する方法が考えられるが、その分、生産量が低下し生産効率が低下するという問題点があった。
【0003】
そこで、溶融金属メッキ浴を冷却する方法について、従来から、種々の提案がなされている。
例えば、特開昭61−87858号公報および実開平2−361号公報には、溶融金属メッキ浴の浴面に、浮舟を設置しその中に冷却水を保持することにより溶融金属を冷却する方法が開示されている。
しかし、この浮舟を設置するためには、溶融金属メッキ浴の浴面に大きな設置スペースが必要であり、また、浮舟の下面だけで冷却するため多大な冷却面積を必要としていた。
また、実開平02−136055号公報および特開2000−256815号公報には、溶融金属メッキ浴に冷却管を浸漬させる方法が開示されている。
しかし、これらの従来技術に用いられている冷却管は、いずれもU字管を用いる方法であって、このU字管の中を冷却水が通過する過程で冷媒が蒸発してしまうため冷却効率が低下してしまうという問題点があった。
また、U字管の中で溶融金属が固着した場合や、U字管が破断した場合には冷却水が500℃程度の高温の溶融金属中に侵入して蒸気爆発を起こす危険性があった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−87858号公報
【特許文献2】
実開平2−361号公報
【特許文献3】
実開平02−136055号公報
【特許文献4】
特開2000−256815号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、鋼帯表面にメッキを施す溶融金属メッキ浴に冷却管を浸漬させて該溶融金属メッキ浴を冷却する装置において、冷却に必要とする面積を省スペース化でき、また、冷却の際の蒸気爆発を防止し安全に操業が行える溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、溶融金属に浸漬させる冷却管を二重管とすることで、従来の冷却装置には見られない省スペースにより冷却を行えるとともに、管の亀裂などによって冷却水と溶融金属が接触し起こる蒸気爆発を防止することができる溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法を提供する冷却装置及び冷却方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)鋼帯表面にメッキを施す溶融金属メッキ浴に冷却管を浸漬させて該溶融金属メッキ浴を冷却する装置であって、前記溶融金属メッキ浴に浸漬させる冷却管を有し、該冷却管は、内側に冷却水を供給する内側冷却管と冷却水を排水する外側冷却管とによって二重管構造となっており、該内側冷却管 は冷却管の下部まで挿入されており、供給管から供給された冷却水は、内側冷却管の先端から噴出し、外側冷却管 を上昇し、排水管から系外へと排出されることを特徴とする溶融金属メッキ浴の冷却装置。
(2)前記冷却管に一定のヘッド圧で冷却水を供給する供給タンクを設けることを特徴とする(1)に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
(3)前記外側冷却管の外周であって、前記溶融金属メッキ浴の浴面近傍に、冷却水が該溶融金属メッキ浴に侵入することを防止する防護管を設けることを特徴とする(1)または(2)に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
(4)前記外側冷却管と内側冷却管との中間であって、前記溶融金属メッキ浴の浴面近傍に、冷却後の排水を通水する閉塞防止管を設けることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
(5)(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置を用いることを特徴とする溶融金属メッキ浴の冷却方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明における溶融金属メッキ浴の冷却装置の実施形態を例示する図である。
図2乃至図4は、本発明の好ましい実施形態に用いる防護管および閉塞防止管の詳細図である。
図1乃至図4において、1はポンプ、2は供給タンク、3は供給管、4は内側冷却管、5は外側冷却管、6は排水管、7は溶融金属、8は防護管、9は閉塞防止管、10は凝固金属を示す。
図1において、本実施形態においては、複数(4本)の冷却管が溶融金属のポットに浸漬されており、この冷却管は、内側に冷却水を供給する内側冷却管4と冷却水を排水する外側冷却管とによって二重管構造となっており、この内側冷却管4は冷却管の下部まで挿入されている。
供給管3から供給された冷却水は、内側冷却管4の先端から噴出し、外側冷却管5を上昇し、排水管6からオーバーフローすることで系外へと排出される。
【0008】
本発明においては、このように冷却管を二重管構造とすることで、冷却管と溶融金属との接触面積を増大させることができるので、従来のU字管に比べ占有面積当たりの冷却能力を著しく高めることができるうえ、内側冷却管4によって冷却水を供給するので、従来のU字管のように供給過程で冷媒が蒸発してしまうことがない。
また、本実施形態においては、冷却水は、ポンプ1から供給タンク2に供給され貯められる。
従来の溶融金属メッキ浴の冷却装置においては、ポンプ1からU字管に直接供給されていたため、溶融金属が管内面に固着して管が閉塞した場合には、ポンプの吐出圧が全てU字管にかかり、内圧が著しく上昇して、冷却水が溶融金属中に侵入して蒸気爆発が発生する危険性があった。
ここに、蒸気爆発とは、冷却水が、溶融金属中に排出され、溶融金属内部で急激に膨張し、爆発が発生するものである。そのため、爆発防止のためには冷却水が外部の溶融金属へ流出することを防ぐ必要がある。
【0009】
本実施形態においては、冷却水をポンプ1から一旦供給タンク2に貯めることにより、供給タンク2の揚程により定まる一定のヘッド圧によって、冷却水を冷却管に供給するので、冷却管が閉塞した場合でも、冷却管の内圧が著しく上昇することがなく、冷却水が溶融金属中に侵入して蒸気爆発を起こす危険性を低減することができる。
このように、冷却管への冷却水の供給を通常のポンプなどによる圧送式とせず、供給タンク2のヘッド圧のみで供給することにより管閉塞時においても管内部に加わる圧力は供給タンク2のヘッド圧のみとなり、圧力のコントロール性を高くすることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態である、配管の亀裂に伴なう冷却水の流出防止方法について以下に述べる。
図1の右側のグラフは、冷却水および溶融金属の圧力分布を示している。
グラフの横軸は圧力P(kg/cm2)、縦軸は高さH(mm)および深さD(mm)を示しており、グラフ中のaは通常運転時における水圧、bは全配管閉塞時における水圧、cは溶融金属(本実施形態の場合はZn)の圧力分布を示す。
まず、通常運転時に冷却管に亀裂が発生した場合、周囲の溶融金属の比重が冷却水より遥かに大きいために冷却管内部の圧力が低くなり、冷媒が外部へ流出することはない。
即ち、cの直線がaの直線より上側にある場合には、溶融金属の圧力が水圧より高いので、冷却水が溶融金属中に侵入して蒸気爆発を起こす心配はない。
【0011】
しかし、冷却水が排出される、オーバーフローのヘッド圧分があるため、溶融金属液面からある深さまでは冷却管の内圧が高くなる領域が存在し、この領域を「危険領域▲1▼」という。
即ち、cの直線がaの直線より下側にある「危険領域▲1▼」と表示した部分は、冷却水の圧力が溶融金属の圧力より高いので、冷却水が外部へ流出する可能性があり、冷却水が溶融金属中に侵入して蒸気爆発を起こす危険性がある。
そこで、本実施形態では、図2に示すように、外側冷却管5の外周であって、前記溶融金属メッキ浴7の浴面近傍に、冷却水が該溶融金属メッキ浴に侵入することを防止する防護管8を設けており、この防護管8は、前述の危険領域▲1▼より深い位置まで設置する必要がある。
図3に示すように、この防護管8を設置することによって、外側冷却管5に亀裂が生じた場合であっても、溶融金属が凝固した凝固金属10が、防護板8と外側冷却管5との間に固着するため、冷却水が亀裂箇所から溶融金属中に流出する危険性はない。
【0012】
次に、溶融金属が冷却管の内部に侵入凝固し管内部を閉塞してしまった場合、冷却管内部の水圧は上昇し、全管閉塞時が最も高い内圧となり、給水タンク2のヘッド圧となる。
即ち、冷却管が閉塞した場合は、排水がオーバーフローすることができないので、給水タンク2の全ヘッド圧がかかるため、図1の右側のグラフにおいて、冷却水の水圧はbの直線に移行する。
その際に冷却管の内圧が外部の溶融金属の圧力より高くなる領域を「危険領域▲2▼」といい、この領域において、溶融金属侵入による冷却管の閉塞を防止する必要がある。
【0013】
そこで本実施形態では、図2に示すように、外側冷却管5と内側冷却管4との中間であって、溶融金属メッキ浴7の浴面近傍に、冷却後の排水を通水する閉塞防止管9を設けており、この閉塞防止管9は、前述の危険領域▲2▼より深い位置まで設置する必要がある。
図4に示すように、外側冷却管5の内面に溶融金属が固着した場合であっても、閉塞防止管9を設置することにより、冷却水を閉塞防止管9の中を通すことによって、オーバーフローによる排水ができるので、溶融金属が侵入した際でも冷却管の内部の閉塞を防止し、冷却水の通水箇所を確保することにより、冷却管の内圧の上昇を防ぐことができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融金属に浸漬させる冷却管を二重管とすることで、従来の冷却装置には見られない省スペースにより冷却を行えるとともに、管の亀裂などによって冷却水と溶融金属が接触し起こる蒸気爆発を防止することができる溶融金属メッキ浴の冷却装置および冷却方法を提供する冷却装置及び冷却方法を提供することができ、具体的には下記のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)冷却管を溶融金属に浸漬させ、更に二重管構造とすることで溶融金属の冷却を省スペースで行うことができる。
2)冷却水を供給する方法を供給タンクのヘッド圧を用いることで、冷却管の内圧を一定圧力以下とすることができる。
3)冷却水が溶融金属中に流出することを防止することが可能となる冷却管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における溶融金属メッキ浴の冷却装置の実施形態を例示する図である。
【図2】 本発明の好ましい実施形態に用いる防護管および閉塞防止管の詳細図である。
【図3】 本発明の好ましい実施形態に用いる防護管の詳細図である。
【図4】 本発明の好ましい実施形態に用いる閉塞防止管の詳細図である。
【符号の説明】
1・・・ポンプ、
2・・・供給タンク、
3・・・供給管、
4・・・内側冷却管、
5・・・外側冷却管、
6・・・排水管、
7・・・溶融金属、
8・・・防護管、
9・・・閉塞防止管、
10・・・凝固金属

Claims (5)

  1. 鋼帯表面にメッキを施す溶融金属メッキ浴に冷却管を浸漬させて該溶融金属メッキ浴を冷却する装置であって、前記溶融金属メッキ浴に浸漬させる冷却管を有し、該冷却管は、内側に冷却水を供給する内側冷却管と冷却水を排水する外側冷却管とによって二重管構造となっており、該内側冷却管 は冷却管の下部まで挿入されており、供給管から供給された冷却水は、内側冷却管の先端から噴出し、外側冷却管 を上昇し、排水管から系外へと排出されることを特徴とする溶融金属メッキ浴の冷却装置。
  2. 前記冷却管に一定のヘッド圧で冷却水を供給する供給タンクを設けることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
  3. 前記外側冷却管の外周であって、前記溶融金属メッキ浴の浴面近傍に、冷却水が該溶融金属メッキ浴に侵入することを防止する防護管を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
  4. 前記外側冷却管と内側冷却管との中間であって、前記溶融金属メッキ浴の浴面近傍に、冷却後の排水を通水する閉塞防止管を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の溶融金属メッキ浴の冷却装置を用いることを特徴とする溶融金属メッキ浴の冷却方法。
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