JP3894163B2 - 水素吸蔵材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代社会において、水素は合成化学工業や石油精製などに多量に利用されている重要な化学原料である。一方、将来におけるエネルギー問題や環境問題を解決するために、クリーンなエネルギーとしての水素利用技術は重要な位置を占めると考えられ、水素を貯蔵し、それを燃料として稼動する燃料電池の開発が進められている。
【0003】
かかる燃料電池はガスで作動する電池であり、その際、水素と酸素との反応から得られるエネルギーを直接電気エネルギーに変換する。このような燃料電池は従来の燃焼エンジンに比べて極めて高い効率を有し、NOx、SOx、COなどの有毒ガスの放出が全くないため、燃料電池を有する自動車はZEV(Zero Emission Vehicle)と称されている。
【0004】
一方、水素の貯蔵法としては、圧縮してボンベに貯蔵する方法、冷却して液体水素とする方法、活性炭に吸着させる方法、水素吸蔵材料を利用する方法などが提案されている。これらの方法の中でも、水素吸蔵材料を利用する方法は燃料電池自動車などの移動媒体において主要な役割を果たすと考えられている。
【0005】
このような背景の下、水素吸蔵材料としての炭素の使用が提案されている(特許文献1〜3参照)。また、水素雰囲気下で黒鉛(グラファイト)を粉砕する方法により、水素吸蔵材料の水素吸蔵性能が高められることが報告されており(非特許文献1、2参照)、さらに、この粉砕方法により結晶の層間距離が0.36nm以上、結晶子の大きさが10nm以下となるように黒鉛を粉砕した水素吸蔵材料が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】
特表平8−504394号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−103612号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2001−106516号公報
【0009】
【特許文献4】
特開2001−302224号公報
【0010】
【非特許文献1】
J. Appl. Phys., Vol.90 No.3 (2001) p1545-1549
【0011】
【非特許文献2】
Appl. Phys. Lett., Vol. 75 No.20 (1999) p3903-3905
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された水素吸蔵材料は、いずれも単位重量当たりの水素吸蔵量が十分とは言えず、実用に供し得るものとしては未だ不十分である。また、水素吸蔵材料には水素の吸蔵・放出を低温(好ましくは室温)で可逆的に行えることが望まれるが、上記従来の水素吸蔵材料から水素を放出させるためには高温(例えば500℃以上)に加熱する必要があり、かかる加熱により放出される水素中に炭化水素(HC)が混入しやすくなって水素の純度が不十分となる。さらに、非特許文献1、2及び特許文献4に記載された水素雰囲気下でグラファイトの粉砕を行う方法は、発火しやすいなど安全性の面で望ましいものとは言えず、さらにはコストが高いという欠点もある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができる水素吸蔵材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素原子及び窒素原子を含んで形成された黒鉛構造を有する結晶粒子(以下、場合により「含窒素黒鉛結晶粒子」という)であって、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(以下、場合により「La」という)、並びに、黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(以下、場合により「Lc」という)がいずれも10nm以下である結晶粒子からなる水素吸蔵材料であれば、上述の目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、黒鉛構造を有する結晶粒子からなる水素吸蔵材料であって、前記結晶粒子は、炭素原子及び窒素原子を含んで形成されているものであり、前記結晶粒子における、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、前記結晶粒子における、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下であることを特徴とする水素吸蔵材料を提供する。
【0016】
かかる水素吸蔵材料によれば、十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することが可能となる。このような効果が奏される理由は必ずしも明確ではないが、黒鉛構造の炭素骨格中に窒素原子を導入することによってbasal面の電子状態が制御され、水素吸蔵性能(水素吸蔵・放出能)が向上するものと推察される。すなわち、黒鉛(グラファイト)中の炭素原子の4個の価電子は、通常は全て他の原子との結合に使われた状態となっている。これに対して黒鉛中の一部の炭素原子が窒素原子に置換された含窒素黒鉛結晶粒子の場合、窒素原子の5個の価電子のうち3個は炭素原子の場合と同様に黒鉛構造中で原子間結合に使われるが、残りの2個の電子は原子間結合に関与しないローンペア(孤立電子対)として存在することになる。そして、含窒素黒鉛結晶粒子における炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5である場合、このローンペアの存在により含窒素黒鉛結晶粒子と水素分子との分子間力が高められ、なおかつLa及びLcの値が10nm以下である微細な結晶粒子とすることにより、本発明の水素吸蔵材料は高純度且つ十分な量の水素をより確実に低温で吸着・放出することができるものと本発明者らは推察する。なお、第一原理計算による考察の結果、ローンペアが広がっていると考えられる方向から水素分子を接近させた場合、それ以外の方向から水素原子を接近させた場合の数倍の分子間力が働くことが確認されている。
【0017】
また、本発明にかかる結晶粒子(含窒素黒鉛結晶粒子)は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることが好ましい。
【0018】
上記式(1)で表されるdとLaとの関係は、含窒素黒鉛結晶粒子の結晶性及び結晶粒子径の均一性の指標であり、dとLaとが上記の条件を満たすことによって、結晶性及び結晶粒子径の均一性が優れ、より優れた水素吸蔵性能を得ることが可能となる傾向がある。
【0019】
さらに、本発明の水素吸蔵材料は、前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理して得られるものであることが好ましい。
【0020】
上述した本発明にかかる結晶粒子を、更にハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理することによって、水素の吸蔵・放出において不可逆反応の原因となる活性点がハロゲン及び/又は硫黄酸化物により終端されて不活性化されるとともに、ハロゲンなどの電子吸引作用によりbasal面の電子状態が制御されて水素の解離吸着が起こりやすくなる。従って、上記含窒素黒鉛結晶粒子が本来的に有する水素吸蔵・放出能と、ハロゲン及び/硫黄酸化物の処理による可逆反応(水素の吸着・脱離)の促進効果とにより、高純度且つ十分な量の水素をより確実に低温で吸蔵・放出することが可能となる傾向がある。
【0021】
本発明はまた、窒素ガス雰囲気中において、黒鉛を2G以上の粉砕加速度で機械的に粉砕することにより、炭素原子及び窒素原子を含んで形成された黒鉛構造を有する結晶粒子であって、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下である結晶粒子を得る粉砕工程を含むことを特徴とする、前記結晶粒子からなる水素吸蔵材料の製造方法を提供する。ここで、前記結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることが好ましい。
【0022】
かかる製造方法によれば、優れた水素吸蔵性能を有する本発明の水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に製造することが可能となる。また、従来技術の有する安全性や製造コストなどの問題を改善することができる。
【0023】
さらに、本発明の製造方法は、前記粉砕工程後に、前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理する処理工程を更に含む方法であることが好ましい。かかる方法により、結晶粒子がハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理された水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子(含窒素黒鉛結晶粒子)の一般的なモデルを示す模式図である。図1中、1は基本的に六炭素環が連なってなる炭素層であり、黒鉛構造を有する結晶粒子2は、このような炭素層1が積層して構成されている。そして、本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子2においては、炭素層1中及び/又は炭素層1間に窒素原子が含有されており、炭素層1を構成する炭素原子の一部が窒素原子に置換していることが好ましい。また、La[nm]は黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(炭素層1の面に水平な方向における結晶粒子径)、Lc[nm]は黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(炭素層1の積み重なりの厚さ)を表す。
【0026】
本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子は、炭素原子及び窒素原子を含んで形成されている含窒素黒鉛結晶粒子であり、当該含窒素黒鉛結晶粒子における、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であることが必要であり、且つ、含窒素黒鉛結晶粒子における黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(La)及び黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(Lc)がいずれも10nm以下であることが必要である。かかる含窒素黒鉛結晶粒子からなる本発明の水素吸蔵材料によれば、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができる。
【0027】
ここで、原子比(N/C)が前記下限値未満では、十分な水素吸着能が得られず、前記上限値を超えると、黒鉛結晶構造の結晶性が著しく低下してしまう。また、La及びLcのうちの少なくとも一方の値が10nmを超えると、結晶粒子間に生じる空孔が減少してしまい、水素吸着・放出能が低下してしまう。
【0028】
また、上記本発明の効果をより十分に得る観点から、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)は0.06〜0.3であることがより好ましく、また、La及びLcの値はいずれも9nm以下であることがより好ましく、0.3〜8nmであることがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅dと結晶粒子サイズLaとが下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
で表される条件を満たすことが好ましい。上記式(1)で表されるdとLaとの関係は、先に述べたように、炭素の結晶性及び結晶粒子径の均一性の指標であり、dとLaとが上記の条件を満たさない場合には、結晶性及び結晶粒子径の均一性が低く水素吸蔵・放出能が不十分となる傾向にある。
【0030】
また、上記と同様の理由により、半値幅dと結晶粒子サイズLaとが下記式(2):
d≦(341/La)+10.5 (2)
で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を用いることがより好ましい。
【0031】
以上説明したような本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子は、黒鉛を窒素ガス雰囲気中で所定の条件下で粉砕する粉砕工程を行うことにより得ることができる。
【0032】
上記黒鉛の原料としては、純度の高い天然黒鉛や、高配向性熱分解黒鉛(HOPG)のような黒鉛化度の高い人造黒鉛などの黒鉛(グラファイト)を用いることが好ましい。
【0033】
上記粉砕工程は、窒素ガス雰囲気中、2G以上の粉砕加速度で黒鉛を機械的に粉砕する工程であり、粉砕加速度は10G以上であることが好ましい。これにより、上述した本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子をより確実に製造することができる。そして、この粉砕工程においては、粉砕加速度を2G以上に設定可能な粉砕装置(ボールミルなど)が好適に使用される。特に、遊星ボールミルを用いると、10G以上の高い粉砕加速度に設定することができるため粉砕効果が向上し、上述した本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子を容易に且つ確実に得ることができるので好ましい。
【0034】
ここで、上記粉砕工程において、窒素ガス雰囲気中の窒素濃度は90容量%以上であることが好ましく、また、圧力は0.1〜10MPaであることが好ましい。更に、上記粉砕工程は、0〜100℃の温度条件で0.1〜100時間行うことが好ましい。このような条件で粉砕工程を行うことによって、本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子をより確実に得ることができる傾向がある。
【0035】
本発明の水素吸蔵材料は、このようにして得られる含窒素黒鉛結晶粒子をそのまま用いたものであってもよいが、含窒素黒鉛結晶粒子をさらにハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理して得られるものであることがより好ましい。
【0036】
ここで、上記ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。また、硫黄酸化物としては、発煙硫酸から発生する三酸化硫黄などが挙げられる。
【0037】
このような処理工程を行う際のハロゲン又は硫黄酸化物の圧力は、好ましくは0.1〜10MPaであり、処理温度は好ましくは0〜300℃である。なお、処理温度が300℃を超えると、得られる水素吸蔵材料の水素吸蔵・放出能が低下する傾向にあり、また、水素吸蔵材料から水素を放出させる際に、当該水素中に炭化水素(HC)などの不純物が混入しやすくなるので好ましくない。
【0038】
上記処理工程は1回のみ行ってもよいが、これを複数回行うことによって水素吸蔵材料の水素吸蔵・放出能をより高めることができる。また、ハロゲン及び硫黄酸化物のうちの2種以上を組み合わせて処理を行ってもよく、例えばフッ素で処理した後さらに発煙硫酸からの三酸化硫黄で処理してもよい。
【0039】
なお、本発明においては、窒素ガス雰囲気中での上記粉砕工程を行った後、窒素ガスをハロゲン及び/又は硫黄酸化物を含むガスと入れ替え、当該ガス雰囲気中でさらに機械的粉砕を行ったり、上記粉砕工程を行った後、窒素ガス雰囲気中にハロゲン及び/又は硫黄酸化物を含むガスを導入し、これらの混合ガス雰囲気中でさらに機械的粉砕を行ったりしてもよい。
【0040】
このような処理工程を行って得られる本発明の水素吸蔵材料においては、C−F、C−Cl、C−Br、C−I、C−SO3Hなどの形成により、水素の吸着・脱離における不可逆反応の活性点が終端されると共に、−F、−Cl、−Br、−I、−SO3Hなどの官能基の電子吸引作用によりbasal面の電子状態が制御されて水素の解離吸着が起こりやすくなる。従って、一旦吸蔵された水素が放出されにくくなる現象が起こりにくくなり、高純度且つ十分な量の水素を低温で放出することが可能となる傾向にある。
【0041】
本発明の水素吸蔵材料は、必要に応じてハロゲン及び/又は硫黄酸化物により処理された含窒素黒鉛結晶粒子に加え、さらに所定の触媒を含んでいてもよい。これにより、含窒素黒鉛結晶粒子の水素吸蔵・放出能と触媒による水素の脱離促進作用との相乗効果が得られ、より高い水素吸蔵・放出能を有する水素吸蔵材料を実現することができる。
【0042】
上記触媒としては、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、オスミウム(Os)などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の水素吸蔵材料に上記の触媒を含有させる場合、ハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理された含窒素黒鉛結晶粒子を触媒と混合してもよく、あるいは粉砕工程で得られる含窒素黒鉛結晶粒子と触媒とを混合した後、必要に応じてハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理してもよい。
【0044】
また、かかる混合の際には、触媒をそのまま含窒素黒鉛結晶粒子と混合してもよく、あるいは触媒の前駆体である所定の化合物を含窒素黒鉛結晶粒子と混合して、触媒を含窒素黒鉛結晶粒子に担持してもよい。例えば、含窒素黒鉛結晶粒子に白金が担持された水素吸蔵材料を得る場合には、触媒の前駆体として白金錯体を用いることができる。
【0045】
さらに、かかる混合の際には、溶媒として二酸化炭素(CO2)などの超臨界流体を用いることが好ましい。超臨界流体中で含窒素黒鉛結晶粒子と触媒とを混合すると、両者の分散均一性が向上して水素吸蔵・放出能がより高められる傾向にある。処理条件は超臨界流体の種類により異なるが、例えば二酸化炭素を用いる場合の処理温度は40〜200℃、圧力は5〜50MPa、処理時間は0.1〜10時間がそれぞれ好ましい。
【0046】
上記の構成を有する本発明の水素吸蔵材料は、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができるものである。ここで、水素を吸蔵させるときの水素圧は0.1〜70MPa、処理温度は20〜300℃であることが好ましい。また、このようにして水素が吸蔵された水素吸蔵材料を密閉容器内に入れ、所定の温度下(好ましくは20〜300℃)で容器内を減圧することによって、十分な量の水素を容易に放出させることができるが、このときの圧力は0.1MPa以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の水素吸蔵材料においては、1回の水素吸蔵処理により十分な量の水素を吸蔵することが可能であるが、水素吸蔵処理と水素放出処理とを交互に複数回繰り返すと、その水素吸蔵・放出能が高められる傾向にあるので好ましい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(黒鉛の粉砕工程)
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが4nm、Lcが3nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.11、ラマン半値幅dが87cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が113であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。ここで、Laはラマン分光分析により1350cm-1付近と1580cm-1付近のピーク比からTuinstraの式を用いて算出し、LcはX線回折パターンの002ピークの半値幅からScherrerの式を用いて算出し、原子比(N/C)は有機元素分析(燃焼・酸化・還元によりガス化し、熱伝導度検出器によりC、N成分を定量)により求めた。
【0050】
(フッ素処理工程)
次に、得られた含窒素黒鉛結晶粒子を、真空且つ高圧に耐え得るステンレス製反応容器(内容積20ml)に入れ、この反応容器を排気装置に接続してロータリーポンプにより反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した。更に、反応容器内の脱気処理を完全に行うために、減圧下で200℃に加熱して1時間保持した。次いで、フッ素ガス(純度99.99%)を反応容器内に導入し、室温(25℃、以下同様である)、フッ素圧5MPaの条件下で保持した。フッ素の吸収(フッ素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧してフッ素を放出させて目的の水素吸蔵材料を得た。
【0051】
(水素の吸蔵・放出)
この水素吸蔵材料を入れた反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した後、水素(純度99.9999%)を導入し、室温、水素圧5MPaの条件下で保持したところ、直ちに水素の吸収が認められた。この水素の吸収(水素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧して水素を放出させた。
【0052】
更に、室温、水素圧5MPaでの水素吸収と室温、減圧下での水素放出とを繰り返し、水素放出の際にはその放出量(吸蔵量)を容器内の水素圧に基づいて求めた。この水素の吸収・放出を水素放出量が一定値に達するまで繰り返した。その結果、本実施例の水素吸蔵材料の水素放出量は、最大値5.6重量%を示した。
【0053】
[実施例2]
(含窒素黒鉛結晶粒子の作製)
N−ビニル−2−ピロリドン10gをアルミナボートに載置し、石英管状炉にて、窒素ガス雰囲気中、950℃で6時間焼成した。これにより、Laが8.2nm、Lcが5.4nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.06、ラマン半値幅dが97cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が64.9であり、上記式(1)で表される条件を満たさない含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0054】
(水素の吸蔵・放出)
得られた含窒素黒鉛結晶粒子を水素吸蔵材料として、この水素吸蔵材料を真空且つ高圧に耐え得るステンレス製反応容器(内容積20ml)に入れ、この反応容器を排気装置に接続してロータリーポンプにより反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した。更に、反応容器内の脱気処理を完全に行うために、減圧下で200℃に加熱して1時間保持した。
【0055】
次いで、反応容器内に水素を導入し、室温、水素圧5MPaの条件下で保持した。水素の吸収(水素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧して水素を放出させた。
【0056】
更に、室温、水素圧5MPaでの水素吸収と室温、減圧下での水素放出とを繰り返し、水素放出の際にはその放出量(吸蔵量)を容器内の水素圧に基づいて求めた。この水素の吸収・放出を水素放出量が一定値に達するまで繰り返しところ、水素放出量は最大値3.1重量%を示した。
【0057】
[比較例1]
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、アルゴンガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが9.2nm、Lcが7.5nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.00、ラマン半値幅dが38.6cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が47.6であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0058】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子を水素吸蔵材料として、この水素吸蔵材料について、実施例2と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.12重量%を示した。
【0059】
[比較例2]
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、横回転式ボールミルにて60rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は1.2Gであった。これにより、Laが100nm以上、Lcが100nm以上、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.00、ラマン半値幅dが14.2cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が19以上であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0060】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子に対して、実施例1と同様にしてフッ素処理を行い、それにより得られた水素吸蔵材料について、実施例1と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.07重量%を示した。
【0061】
[比較例3]
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで0.5時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが38nm、Lcが23nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.07、ラマン半値幅dが22.4cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が28.9であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0062】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子に対して、実施例1と同様にしてフッ素処理を行い、それにより得られた水素吸蔵材料について、実施例1と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.8重量%を示した。
【0063】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の水素吸蔵材料によれば、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することが可能となる。
【0064】
また、本発明の水素吸蔵材料の製造方法によれば、上述のように優れた水素吸蔵・放出能を有する本発明の水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子の一般的なモデルを示す模式図である。
【符号の説明】
1…炭素層、2・・・黒鉛構造を有する結晶粒子、La…黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、Lc…黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代社会において、水素は合成化学工業や石油精製などに多量に利用されている重要な化学原料である。一方、将来におけるエネルギー問題や環境問題を解決するために、クリーンなエネルギーとしての水素利用技術は重要な位置を占めると考えられ、水素を貯蔵し、それを燃料として稼動する燃料電池の開発が進められている。
【0003】
かかる燃料電池はガスで作動する電池であり、その際、水素と酸素との反応から得られるエネルギーを直接電気エネルギーに変換する。このような燃料電池は従来の燃焼エンジンに比べて極めて高い効率を有し、NOx、SOx、COなどの有毒ガスの放出が全くないため、燃料電池を有する自動車はZEV(Zero Emission Vehicle)と称されている。
【0004】
一方、水素の貯蔵法としては、圧縮してボンベに貯蔵する方法、冷却して液体水素とする方法、活性炭に吸着させる方法、水素吸蔵材料を利用する方法などが提案されている。これらの方法の中でも、水素吸蔵材料を利用する方法は燃料電池自動車などの移動媒体において主要な役割を果たすと考えられている。
【0005】
このような背景の下、水素吸蔵材料としての炭素の使用が提案されている(特許文献1〜3参照)。また、水素雰囲気下で黒鉛(グラファイト)を粉砕する方法により、水素吸蔵材料の水素吸蔵性能が高められることが報告されており(非特許文献1、2参照)、さらに、この粉砕方法により結晶の層間距離が0.36nm以上、結晶子の大きさが10nm以下となるように黒鉛を粉砕した水素吸蔵材料が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】
特表平8−504394号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−103612号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2001−106516号公報
【0009】
【特許文献4】
特開2001−302224号公報
【0010】
【非特許文献1】
J. Appl. Phys., Vol.90 No.3 (2001) p1545-1549
【0011】
【非特許文献2】
Appl. Phys. Lett., Vol. 75 No.20 (1999) p3903-3905
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された水素吸蔵材料は、いずれも単位重量当たりの水素吸蔵量が十分とは言えず、実用に供し得るものとしては未だ不十分である。また、水素吸蔵材料には水素の吸蔵・放出を低温(好ましくは室温)で可逆的に行えることが望まれるが、上記従来の水素吸蔵材料から水素を放出させるためには高温(例えば500℃以上)に加熱する必要があり、かかる加熱により放出される水素中に炭化水素(HC)が混入しやすくなって水素の純度が不十分となる。さらに、非特許文献1、2及び特許文献4に記載された水素雰囲気下でグラファイトの粉砕を行う方法は、発火しやすいなど安全性の面で望ましいものとは言えず、さらにはコストが高いという欠点もある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができる水素吸蔵材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素原子及び窒素原子を含んで形成された黒鉛構造を有する結晶粒子(以下、場合により「含窒素黒鉛結晶粒子」という)であって、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(以下、場合により「La」という)、並びに、黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(以下、場合により「Lc」という)がいずれも10nm以下である結晶粒子からなる水素吸蔵材料であれば、上述の目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、黒鉛構造を有する結晶粒子からなる水素吸蔵材料であって、前記結晶粒子は、炭素原子及び窒素原子を含んで形成されているものであり、前記結晶粒子における、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、前記結晶粒子における、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下であることを特徴とする水素吸蔵材料を提供する。
【0016】
かかる水素吸蔵材料によれば、十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することが可能となる。このような効果が奏される理由は必ずしも明確ではないが、黒鉛構造の炭素骨格中に窒素原子を導入することによってbasal面の電子状態が制御され、水素吸蔵性能(水素吸蔵・放出能)が向上するものと推察される。すなわち、黒鉛(グラファイト)中の炭素原子の4個の価電子は、通常は全て他の原子との結合に使われた状態となっている。これに対して黒鉛中の一部の炭素原子が窒素原子に置換された含窒素黒鉛結晶粒子の場合、窒素原子の5個の価電子のうち3個は炭素原子の場合と同様に黒鉛構造中で原子間結合に使われるが、残りの2個の電子は原子間結合に関与しないローンペア(孤立電子対)として存在することになる。そして、含窒素黒鉛結晶粒子における炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5である場合、このローンペアの存在により含窒素黒鉛結晶粒子と水素分子との分子間力が高められ、なおかつLa及びLcの値が10nm以下である微細な結晶粒子とすることにより、本発明の水素吸蔵材料は高純度且つ十分な量の水素をより確実に低温で吸着・放出することができるものと本発明者らは推察する。なお、第一原理計算による考察の結果、ローンペアが広がっていると考えられる方向から水素分子を接近させた場合、それ以外の方向から水素原子を接近させた場合の数倍の分子間力が働くことが確認されている。
【0017】
また、本発明にかかる結晶粒子(含窒素黒鉛結晶粒子)は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることが好ましい。
【0018】
上記式(1)で表されるdとLaとの関係は、含窒素黒鉛結晶粒子の結晶性及び結晶粒子径の均一性の指標であり、dとLaとが上記の条件を満たすことによって、結晶性及び結晶粒子径の均一性が優れ、より優れた水素吸蔵性能を得ることが可能となる傾向がある。
【0019】
さらに、本発明の水素吸蔵材料は、前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理して得られるものであることが好ましい。
【0020】
上述した本発明にかかる結晶粒子を、更にハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理することによって、水素の吸蔵・放出において不可逆反応の原因となる活性点がハロゲン及び/又は硫黄酸化物により終端されて不活性化されるとともに、ハロゲンなどの電子吸引作用によりbasal面の電子状態が制御されて水素の解離吸着が起こりやすくなる。従って、上記含窒素黒鉛結晶粒子が本来的に有する水素吸蔵・放出能と、ハロゲン及び/硫黄酸化物の処理による可逆反応(水素の吸着・脱離)の促進効果とにより、高純度且つ十分な量の水素をより確実に低温で吸蔵・放出することが可能となる傾向がある。
【0021】
本発明はまた、窒素ガス雰囲気中において、黒鉛を2G以上の粉砕加速度で機械的に粉砕することにより、炭素原子及び窒素原子を含んで形成された黒鉛構造を有する結晶粒子であって、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下である結晶粒子を得る粉砕工程を含むことを特徴とする、前記結晶粒子からなる水素吸蔵材料の製造方法を提供する。ここで、前記結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることが好ましい。
【0022】
かかる製造方法によれば、優れた水素吸蔵性能を有する本発明の水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に製造することが可能となる。また、従来技術の有する安全性や製造コストなどの問題を改善することができる。
【0023】
さらに、本発明の製造方法は、前記粉砕工程後に、前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理する処理工程を更に含む方法であることが好ましい。かかる方法により、結晶粒子がハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理された水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子(含窒素黒鉛結晶粒子)の一般的なモデルを示す模式図である。図1中、1は基本的に六炭素環が連なってなる炭素層であり、黒鉛構造を有する結晶粒子2は、このような炭素層1が積層して構成されている。そして、本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子2においては、炭素層1中及び/又は炭素層1間に窒素原子が含有されており、炭素層1を構成する炭素原子の一部が窒素原子に置換していることが好ましい。また、La[nm]は黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(炭素層1の面に水平な方向における結晶粒子径)、Lc[nm]は黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(炭素層1の積み重なりの厚さ)を表す。
【0026】
本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子は、炭素原子及び窒素原子を含んで形成されている含窒素黒鉛結晶粒子であり、当該含窒素黒鉛結晶粒子における、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であることが必要であり、且つ、含窒素黒鉛結晶粒子における黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(La)及び黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ(Lc)がいずれも10nm以下であることが必要である。かかる含窒素黒鉛結晶粒子からなる本発明の水素吸蔵材料によれば、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができる。
【0027】
ここで、原子比(N/C)が前記下限値未満では、十分な水素吸着能が得られず、前記上限値を超えると、黒鉛結晶構造の結晶性が著しく低下してしまう。また、La及びLcのうちの少なくとも一方の値が10nmを超えると、結晶粒子間に生じる空孔が減少してしまい、水素吸着・放出能が低下してしまう。
【0028】
また、上記本発明の効果をより十分に得る観点から、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)は0.06〜0.3であることがより好ましく、また、La及びLcの値はいずれも9nm以下であることがより好ましく、0.3〜8nmであることがさらに好ましい。
【0029】
また、本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅dと結晶粒子サイズLaとが下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
で表される条件を満たすことが好ましい。上記式(1)で表されるdとLaとの関係は、先に述べたように、炭素の結晶性及び結晶粒子径の均一性の指標であり、dとLaとが上記の条件を満たさない場合には、結晶性及び結晶粒子径の均一性が低く水素吸蔵・放出能が不十分となる傾向にある。
【0030】
また、上記と同様の理由により、半値幅dと結晶粒子サイズLaとが下記式(2):
d≦(341/La)+10.5 (2)
で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を用いることがより好ましい。
【0031】
以上説明したような本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子は、黒鉛を窒素ガス雰囲気中で所定の条件下で粉砕する粉砕工程を行うことにより得ることができる。
【0032】
上記黒鉛の原料としては、純度の高い天然黒鉛や、高配向性熱分解黒鉛(HOPG)のような黒鉛化度の高い人造黒鉛などの黒鉛(グラファイト)を用いることが好ましい。
【0033】
上記粉砕工程は、窒素ガス雰囲気中、2G以上の粉砕加速度で黒鉛を機械的に粉砕する工程であり、粉砕加速度は10G以上であることが好ましい。これにより、上述した本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子をより確実に製造することができる。そして、この粉砕工程においては、粉砕加速度を2G以上に設定可能な粉砕装置(ボールミルなど)が好適に使用される。特に、遊星ボールミルを用いると、10G以上の高い粉砕加速度に設定することができるため粉砕効果が向上し、上述した本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子を容易に且つ確実に得ることができるので好ましい。
【0034】
ここで、上記粉砕工程において、窒素ガス雰囲気中の窒素濃度は90容量%以上であることが好ましく、また、圧力は0.1〜10MPaであることが好ましい。更に、上記粉砕工程は、0〜100℃の温度条件で0.1〜100時間行うことが好ましい。このような条件で粉砕工程を行うことによって、本発明にかかる含窒素黒鉛結晶粒子をより確実に得ることができる傾向がある。
【0035】
本発明の水素吸蔵材料は、このようにして得られる含窒素黒鉛結晶粒子をそのまま用いたものであってもよいが、含窒素黒鉛結晶粒子をさらにハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理して得られるものであることがより好ましい。
【0036】
ここで、上記ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。また、硫黄酸化物としては、発煙硫酸から発生する三酸化硫黄などが挙げられる。
【0037】
このような処理工程を行う際のハロゲン又は硫黄酸化物の圧力は、好ましくは0.1〜10MPaであり、処理温度は好ましくは0〜300℃である。なお、処理温度が300℃を超えると、得られる水素吸蔵材料の水素吸蔵・放出能が低下する傾向にあり、また、水素吸蔵材料から水素を放出させる際に、当該水素中に炭化水素(HC)などの不純物が混入しやすくなるので好ましくない。
【0038】
上記処理工程は1回のみ行ってもよいが、これを複数回行うことによって水素吸蔵材料の水素吸蔵・放出能をより高めることができる。また、ハロゲン及び硫黄酸化物のうちの2種以上を組み合わせて処理を行ってもよく、例えばフッ素で処理した後さらに発煙硫酸からの三酸化硫黄で処理してもよい。
【0039】
なお、本発明においては、窒素ガス雰囲気中での上記粉砕工程を行った後、窒素ガスをハロゲン及び/又は硫黄酸化物を含むガスと入れ替え、当該ガス雰囲気中でさらに機械的粉砕を行ったり、上記粉砕工程を行った後、窒素ガス雰囲気中にハロゲン及び/又は硫黄酸化物を含むガスを導入し、これらの混合ガス雰囲気中でさらに機械的粉砕を行ったりしてもよい。
【0040】
このような処理工程を行って得られる本発明の水素吸蔵材料においては、C−F、C−Cl、C−Br、C−I、C−SO3Hなどの形成により、水素の吸着・脱離における不可逆反応の活性点が終端されると共に、−F、−Cl、−Br、−I、−SO3Hなどの官能基の電子吸引作用によりbasal面の電子状態が制御されて水素の解離吸着が起こりやすくなる。従って、一旦吸蔵された水素が放出されにくくなる現象が起こりにくくなり、高純度且つ十分な量の水素を低温で放出することが可能となる傾向にある。
【0041】
本発明の水素吸蔵材料は、必要に応じてハロゲン及び/又は硫黄酸化物により処理された含窒素黒鉛結晶粒子に加え、さらに所定の触媒を含んでいてもよい。これにより、含窒素黒鉛結晶粒子の水素吸蔵・放出能と触媒による水素の脱離促進作用との相乗効果が得られ、より高い水素吸蔵・放出能を有する水素吸蔵材料を実現することができる。
【0042】
上記触媒としては、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、オスミウム(Os)などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の水素吸蔵材料に上記の触媒を含有させる場合、ハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理された含窒素黒鉛結晶粒子を触媒と混合してもよく、あるいは粉砕工程で得られる含窒素黒鉛結晶粒子と触媒とを混合した後、必要に応じてハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理してもよい。
【0044】
また、かかる混合の際には、触媒をそのまま含窒素黒鉛結晶粒子と混合してもよく、あるいは触媒の前駆体である所定の化合物を含窒素黒鉛結晶粒子と混合して、触媒を含窒素黒鉛結晶粒子に担持してもよい。例えば、含窒素黒鉛結晶粒子に白金が担持された水素吸蔵材料を得る場合には、触媒の前駆体として白金錯体を用いることができる。
【0045】
さらに、かかる混合の際には、溶媒として二酸化炭素(CO2)などの超臨界流体を用いることが好ましい。超臨界流体中で含窒素黒鉛結晶粒子と触媒とを混合すると、両者の分散均一性が向上して水素吸蔵・放出能がより高められる傾向にある。処理条件は超臨界流体の種類により異なるが、例えば二酸化炭素を用いる場合の処理温度は40〜200℃、圧力は5〜50MPa、処理時間は0.1〜10時間がそれぞれ好ましい。
【0046】
上記の構成を有する本発明の水素吸蔵材料は、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することができるものである。ここで、水素を吸蔵させるときの水素圧は0.1〜70MPa、処理温度は20〜300℃であることが好ましい。また、このようにして水素が吸蔵された水素吸蔵材料を密閉容器内に入れ、所定の温度下(好ましくは20〜300℃)で容器内を減圧することによって、十分な量の水素を容易に放出させることができるが、このときの圧力は0.1MPa以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の水素吸蔵材料においては、1回の水素吸蔵処理により十分な量の水素を吸蔵することが可能であるが、水素吸蔵処理と水素放出処理とを交互に複数回繰り返すと、その水素吸蔵・放出能が高められる傾向にあるので好ましい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(黒鉛の粉砕工程)
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが4nm、Lcが3nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.11、ラマン半値幅dが87cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が113であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。ここで、Laはラマン分光分析により1350cm-1付近と1580cm-1付近のピーク比からTuinstraの式を用いて算出し、LcはX線回折パターンの002ピークの半値幅からScherrerの式を用いて算出し、原子比(N/C)は有機元素分析(燃焼・酸化・還元によりガス化し、熱伝導度検出器によりC、N成分を定量)により求めた。
【0050】
(フッ素処理工程)
次に、得られた含窒素黒鉛結晶粒子を、真空且つ高圧に耐え得るステンレス製反応容器(内容積20ml)に入れ、この反応容器を排気装置に接続してロータリーポンプにより反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した。更に、反応容器内の脱気処理を完全に行うために、減圧下で200℃に加熱して1時間保持した。次いで、フッ素ガス(純度99.99%)を反応容器内に導入し、室温(25℃、以下同様である)、フッ素圧5MPaの条件下で保持した。フッ素の吸収(フッ素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧してフッ素を放出させて目的の水素吸蔵材料を得た。
【0051】
(水素の吸蔵・放出)
この水素吸蔵材料を入れた反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した後、水素(純度99.9999%)を導入し、室温、水素圧5MPaの条件下で保持したところ、直ちに水素の吸収が認められた。この水素の吸収(水素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧して水素を放出させた。
【0052】
更に、室温、水素圧5MPaでの水素吸収と室温、減圧下での水素放出とを繰り返し、水素放出の際にはその放出量(吸蔵量)を容器内の水素圧に基づいて求めた。この水素の吸収・放出を水素放出量が一定値に達するまで繰り返した。その結果、本実施例の水素吸蔵材料の水素放出量は、最大値5.6重量%を示した。
【0053】
[実施例2]
(含窒素黒鉛結晶粒子の作製)
N−ビニル−2−ピロリドン10gをアルミナボートに載置し、石英管状炉にて、窒素ガス雰囲気中、950℃で6時間焼成した。これにより、Laが8.2nm、Lcが5.4nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.06、ラマン半値幅dが97cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が64.9であり、上記式(1)で表される条件を満たさない含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0054】
(水素の吸蔵・放出)
得られた含窒素黒鉛結晶粒子を水素吸蔵材料として、この水素吸蔵材料を真空且つ高圧に耐え得るステンレス製反応容器(内容積20ml)に入れ、この反応容器を排気装置に接続してロータリーポンプにより反応容器内を0.1Torr程度まで減圧した。更に、反応容器内の脱気処理を完全に行うために、減圧下で200℃に加熱して1時間保持した。
【0055】
次いで、反応容器内に水素を導入し、室温、水素圧5MPaの条件下で保持した。水素の吸収(水素圧の低下)が停止したことを確認した後、室温で反応容器内を減圧して水素を放出させた。
【0056】
更に、室温、水素圧5MPaでの水素吸収と室温、減圧下での水素放出とを繰り返し、水素放出の際にはその放出量(吸蔵量)を容器内の水素圧に基づいて求めた。この水素の吸収・放出を水素放出量が一定値に達するまで繰り返しところ、水素放出量は最大値3.1重量%を示した。
【0057】
[比較例1]
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、アルゴンガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが9.2nm、Lcが7.5nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.00、ラマン半値幅dが38.6cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が47.6であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0058】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子を水素吸蔵材料として、この水素吸蔵材料について、実施例2と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.12重量%を示した。
【0059】
[比較例2]
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、横回転式ボールミルにて60rpmで12時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は1.2Gであった。これにより、Laが100nm以上、Lcが100nm以上、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.00、ラマン半値幅dが14.2cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が19以上であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0060】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子に対して、実施例1と同様にしてフッ素処理を行い、それにより得られた水素吸蔵材料について、実施例1と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.07重量%を示した。
【0061】
[比較例3]
窒素ガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、グラファイト(和光純薬工業社製、商品名:グラファイト粉末、La>100nm、Lc>100nm)5gをステンレス球(4mmφ)とともにステンレス製容器(内容積80ml)に入れた後、窒素ガスを1.0MPaまで導入し、遊星ボールミルにて400rpmで0.5時間、機械的粉砕処理を行った。なお、このときの粉砕加速度は10Gであった。これにより、Laが38nm、Lcが23nm、炭素原子に対する窒素原子の原子比(N/C)が0.07、ラマン半値幅dが22.4cm-1、上記Laの値を用いて計算される上記式(1)の右辺の値が28.9であり、上記式(1)で表される条件を満たす含窒素黒鉛結晶粒子を得た。
【0062】
得られた含窒素黒鉛結晶粒子に対して、実施例1と同様にしてフッ素処理を行い、それにより得られた水素吸蔵材料について、実施例1と同様の方法で水素吸蔵性能を調べたところ、水素放出量は最大値0.8重量%を示した。
【0063】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の水素吸蔵材料によれば、高純度且つ十分な量の水素を低温で吸蔵・放出することが可能となる。
【0064】
また、本発明の水素吸蔵材料の製造方法によれば、上述のように優れた水素吸蔵・放出能を有する本発明の水素吸蔵材料を効率的に且つ確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる黒鉛構造を有する結晶粒子の一般的なモデルを示す模式図である。
【符号の説明】
1…炭素層、2・・・黒鉛構造を有する結晶粒子、La…黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、Lc…黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズ。
Claims (6)
- 黒鉛構造を有する結晶粒子からなる水素吸蔵材料であって、
前記結晶粒子は、炭素原子及び窒素原子を含んで形成されているものであり、
前記結晶粒子における、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、
前記結晶粒子における、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下であることを特徴とする、水素吸蔵材料。 - 前記結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることを特徴とする、請求項1記載の水素吸蔵材料。 - 前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理して得られることを特徴とする、請求項1又は2記載の水素吸蔵材料。
- 窒素ガス雰囲気中において、黒鉛を2G以上の粉砕加速度で機械的に粉砕することにより、炭素原子及び窒素原子を含んで形成された黒鉛構造を有する結晶粒子であって、前記炭素原子に対する前記窒素原子の原子比(N/C)が0.05〜0.5であり、且つ、前記黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ、並びに、前記黒鉛構造のc軸方向の結晶粒子サイズがいずれも10nm以下である結晶粒子を得る粉砕工程を含むことを特徴とする、前記結晶粒子からなる水素吸蔵材料の製造方法。
- 前記結晶粒子は、ラマンスペクトル測定で得られる波数1350cm-1のラマンピークの半値幅が下記式(1):
d≦(376/La)+19.0 (1)
[式中、dは前記ラマンピークの半値幅(cm-1)を表し、Laは黒鉛構造のa軸及びb軸を含む面内の結晶粒子サイズ(nm)を表す]
で表される条件を満たすものであることを特徴とする、請求項4記載の水素吸蔵材料の製造方法。 - 前記粉砕工程後に、前記結晶粒子をハロゲン及び/又は硫黄酸化物で処理する処理工程を更に含むことを特徴とする、請求項4又は5記載の水素吸蔵材料の製造方法。
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