JP3892718B2 - レーザ送信器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サバイバルゲームなどの射撃シミュレーションに使用される標的板にレーザ光線を送信するレーザ送信器に関するものであり、より詳細には、標的板が近距離にあるか遠距離にあるかに関わらず、常に最適なレーザ光線を送信するレーザ送信器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
射撃シミュレーションなどにおいて、標的板に対して実弾や模擬弾を射撃する場合は、命中したか否かを確認するために標的板の近くまで行かなければならないので、多少の危険性を伴うことがある。そこで、近年、レーザ送信器から標的板に向けてレーザ光線を照射し、標的板の受光信号によって命中したか否かを確認することのできる射撃シミュレーションシステムが広く利用されている。このようなレーザ光線を受光できる標的板を使用する場合、射撃手より標的板が容易に発見できるようではサバイバルゲームなどに支障を来たすおそれがあるので、必要に応じて標的板が見え隠れするように構成されている。さらに、様々な地点からの射撃訓練に適用するために、近距離用の標的板と遠距離用の標的板とが設置されている。
【0003】
一方、レーザ光線は直線性を有していて、かなり遠方まで照射することができるので、近距離の標的板から遠距離の標的板まで広範囲の距離に亘って照射することができる。また、このようなレーザ光線を受光する標的板には、その表面の各所に、レーザ光線を受光するための受光器が付設されている。しかし、レーザ送信器側から照射されるレーザ光線はビームが広がってゆくので、当然、近距離の標的板と遠距離の標的板とではビームの照射面積が異なる。つまり、近距離の標的板へのレーザ光線のビームの照射面積は狭く、遠距離の標的板へのレーザ光線のビームの照射面積は広くなる。このため、近距離の標的板と遠距離の標的板とでは、標的板の表面に点在させる受光器の配置間隔を変えなければならない。
【0004】
図4は、レーザ送信器から照射されるレーザ光線の特性を示す模式図である。図4に示すように、レーザ光線12は照射するビームに広がり特性を有している。つまり、レーザ送信器11から照射されるレーザ光線12は、近距離Laの地点においてビーム面積Saは小さく、遠距離Lbの地点においてビーム面積Sbは大きくなっている。したがって、近距離La(以下、近距離地点Laと表現する)の標的板に付設する受光器の配置間隔(レーザパターン)と、遠距離Lb(以下、遠距離地点Lbと表現する)の標的板に付設する受光器の配置間隔(レーザパターン)とを同じにしたのでは、近距離地点Laの標的板に実際に命中したことを示す実績(以下、有効性という)と遠距離地点Lbの標的板の有効性とを比較判定することができない。
【0005】
図5は、従来の標的板における受光器の配置図であり、(a)は近距離用標的板の配置を示し、(b)は遠距離用標的板の配置を示している。図5(a)に示すように、近距離用標的板13は受光器14の配置間隔が密になっており、遠距離用標的板15は受光器16の配置間隔が粗になっている。
【0006】
したがって、図4の近距離地点Laに近距離用標的板13を設置した場合は、図5(a)に示すように、レーザ光線のビーム面積Saが近距離用標的板13に照射されて、2個の受光器14が照射される。一方、図4の遠距離地点Lbに遠距離用標的15を設置した場合は、図5(b)に示すように、レーザ光線の広いビーム面積Sbが遠距離用標的15に照射されるが、受光器14の配置間隔が広いので、やはり2個の受光器14が照射される。つまり、近距離、遠距離に関わらず、レーザ光線は2個の受光器14に受光されるので、近距離、遠距離ともに同じレベルで有効性の比較判定を行うことができる。このように、近距離と遠距離とで受光器14の配置間隔を変えることにより、同じ条件で有効性の比較判定ができるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のレーザ送信器を用いた標的板装置では、近距離用と遠距離用を個別に準備しなければならず、コストが高くなり、またスペースも必要となる。また、近距離用標的板と遠距離用標的板とでは単位面積当たりの受光量が異なるので、受光したレーザ光線の命中率などを演算処理するための制御装置も近距離用標的板と遠距離用標的板とで個別のものを用意しなければならない。このため、近距離用標的板と遠距離用標的板とでは共通性がなく、個別に保守・点検をしなければならないなどメンテナンスもかなり大変である。
【0008】
尚、特開平08−152297号公報に、遠距離、近距離どちらでも標的板を変えずに射撃を行うことができる射撃訓練システムの技術が開示されている。この技術によれば、自機器から目標機器に向けてレーザ光線を発射したとき、目標機器から反射されて戻ってきたレーザ光線より信号を取り出し、発射時の信号との時間差から自機器と目標機器との間の距離を算出する。そして、算出された距離に対応した値の直流電圧を生成してレーザ光線の到達距離を制御する。これによって、遠距離近距離どちらでも同じ標的板で有効性を判定することができる。しかし、この技術は、送信信号と受信信号の時間差を演算しなければならないなど、制御装置の演算回路などが複雑となり、しかも、雨天の屋外などでは使用することができないなどの不便さがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、近距離、遠距離兼用の標的板に対応することができて、且つ屋外屋内に関わらず使用できると共に構造が簡単な標的板に対応することができ、近距離、遠距離において有効性に差異が生じないようなレーザ光線を照射することのできるレーザ送信器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のレーザ送信器は、標的板に対してレーザ光線を照射して射撃シミュレーションを行うためのレーザ送信器において、前記レーザ光線を発光するレーザ光源と、前記レーザ光源の前方に配置された遠近両用レンズと、を備えると共に、前記遠近両用レンズは、遠距離レンズと、前記遠距離レンズの中心部に設けられた近距離レンズと、から構成されることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、標的板に対して近距離又は遠距離からレーザ光線を照射する場合、標的板の種類を変えることなく射撃訓練を行うことができる。つまり、レーザ光線のビームが遠距離で広がる特性を有していても、近距離に設置された標的板に対しても遠距離に設置された標的板に対しても同じビーム面積で照射されるように、レーザ光線のビーム照射角を調整している。これによって、射撃シミュレーションを実行する場合、予め、同じレーザパターンの標的板を所望の近距離と遠距離に設置しておけば、近距離、遠距離の何れの場所から射撃訓練を行っても、同じ条件で有効性を判定することができる。
【0012】
また、このようなレーザ送信器によれば、複数種類の標的板を用意しなくてもよいので、射撃シミュレーションを経済的に行うことができると共に、メンテナンスの手間が軽減されて操作性のよい射撃シミュレーションシステムを構築することができる。さらに、標的板を一種類にすることができるので、システム全体としての構成が簡単になり、標的板の移動・設置に費やす労力を削減することができるので、効率的且つ効果的に射撃シミュレーションを行うことができる。つまり、本発明のレーザ送信器によれば、一種類のレーザ送信器と一種類の標的板装置との組み合わせれば、近距離、遠距離両方をカバーできる射撃シミュレーションを実現することができる。
【0013】
なお、本発明のレーザ送信器は、照射するレーザ光線に、レーザ光線を照射した者を特定するID情報が付加するようにすることができ、したがって、射撃手は、標的板側から送信されてきた命中結果の情報を受信することにより、自己が照射したレーザ光線の有効性の情報を正確に取得することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明におけるレーザ送信器を射撃シミュレーションに適用する場合の実施の形態を詳細に説明する。レーザ光線は干渉性の著しいコヒーレント光であり、指向性の鋭い細いビームを照射するので、射撃シミュレーションの照射手段として好んで用いられている。つまり、レーザ光線は広がりの少ない可干渉光を照射するのでビームが鋭いため、標的板への命中率を高い精度で確認することができる。したがって、距離が一定である標的板に対しては、相当遠方にある標的板であっても鋭いビームで照射することができるので、有効性を正確に判定することができる。
【0015】
しかし、レーザ光線を照射するレーザ送信器と標的板までの距離が数十メートルから数百メートルまで変化するような場合は、僅かといえども、ビームの広がりによって標的板の照射面積に若干の変化を生じる。したがって、近距離も遠距離も同じレーザパターンの標的板を用いた場合、高い精度の命中率を要求するような射撃訓練においては、命中率を正確に判定することができない場合もある。つまり、近距離にある標的板に対しては命中率を正確に判定できても、遠距離にある標的板の場合には、ビームの広がりによって標的板の広い面積に亘ってビームが照射してしまうことがあり、本当に命中したのかどうかを正確に判定することができない。
【0016】
そこで、本発明のレーザ送信器においては、近距離用レンズと遠距離用レンズとを用いてビームの広がりを可変している。つまり、近距離にある標的板に対しては、近距離用レンズを用いてレーザ光線の広がりを最適に補正し、遠距離にある標的板に対しては、遠距離用レンズを用いてレーザ光線の広がりを少なくするように補正している。これによって、近距離にある標的板へ照射されるビーム面積と遠距離にある標的板へ照射されるビーム面積とを同じにすることができる。したがって、近距離にある標的板と遠距離にある標的板が同じレーザパターンで配置されていても、何れの場所の標的板も同等に命中の有効性を判定することができる。
【0017】
次に、図面を用いて、本発明におけるレーザ送信器を説明する。図1は、本発明のレーザ送信器を示す概念図である。レーザ送信器の内部構成は、定電圧電源とガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなどのレーザ発光源、及びレーザ光線にID情報や命中情報などの各種情報を付加するための情報付加手段とによって構成されている。
【0018】
図1において、レーザ送信器のレーザ光源にはレーザダイオード1が用いられている。このレーザダイオード1は、GaAsやInPやInAsなどで形成された半導体レーザであり、レーザ光線の波長は1μm前後である。また、レーザダイオード1の直ぐ前方には遠近両用レンズ2が配置されている。この遠近両用レンズ2は、遠距離レンズ2bの中心部に近距離レンズ2aが嵌め込まれた構成となっている。
【0019】
ここで、近距離レンズ2aは焦点距離の比較的長い片面凸レンズであり、遠距離レンズ2bは焦点距離の比較的短い片面凸レンズである。つまり、近距離レンズ2aはレーザダイオード1から入射したレーザ光線のビームを僅かに絞るように屈曲させ、遠距離レンズ2bはレーザダイオード1から入射したレーザ光線のビームを大きく絞るように屈曲させる。
【0020】
図1に示すように、レーザダイオードビームパターンCの照射角α×2と近距離レーザビームパターンAの照射角αa×2との関係が、α>αaとなるような片面凸レンズの近距離レンズ2aを内周部分に設け、レーザダイオードビームパターンCの照射角α×2と遠距離レーザビームパターンBの照射角αb×2との関係が、α≫αbとなるような片面凸レンズの遠距離レンズ2bを外周部分に設けている。
【0021】
このようにして、近距離レンズ2aを通過した近距離レーザビームパターンAの照射角を、レーザダイオード1が照射したレーザダイオードビームパターンCの照射角より僅かに狭くし、遠距離レンズ2bを通過した遠距離レーザビームパターンBの照射角を、レーザダイオード1が照射したレーザダイオードビームパターンCの照射角よりかなり狭くする。これによって、近距離地点Laでの近距離照射面積Saと遠距離地点Lbでの遠距離照射面積Sbとを同じ(つまりSa=Sb)にすることができる。
【0022】
図2は、図1における近距離レーザビームと遠距離レーザビームの広がりを三角図法で示した模式図である。ここで、図1において、レーザダイオード1から近距離及び遠距離の標的板までの距離に比べれば、レーザダイオード1から遠近両用レンズ2までの距離は無視できる。したがって、図2のP点をレーザダイオード1としたとき、近距離地点Laの照射面積Sa(つまり、高さSa)と遠距離地点Lbの照射面積Sb(つまり、高さSb)は同じであるので、図2のような三角図を作成することができる。
【0023】
図2において、Sa=Sbであるので、La・tanαa=Lb・tanαbとなり、次の式(1)が成立する。
tanαb=tanαa・La/Lb (1)
【0024】
つまり、標的板が近距離地点Laと遠距離地点Lbとに設置されているとき、近距離レンズ2aから照射するビームの照射角がαaとなるような焦点距離の凸レンズを選んだ場合、遠距離レンズ2bは式(1)で求められた照射角αbとなるような焦点距離の凸レンズを選べば、近距離Laの標的板と遠距離Lbの標的板のビーム面積を等しくすることができる。
【0025】
尚、近距離レンズ2aは、レーザダイオード1から入射したレーザ光線のビームを屈曲させないでそのまま通過させるようなガラスにすることもできる。この場合、近距離レーザビームパターンAの照射角は、レーザダイオードビームパターンCの照射角αとなるので、前述の式(1)よりtanαb=tanαa・La/Lbとなるような照射角αbが得られる焦点距離の凸レンズを選べば、近距離地点Laの標的板と遠距離地点Lbの標的板のビーム面積を等しくすることができる。
【0026】
図3は、図1に示すような光学的構成が施されたレーザ送信器3(以下、遠近両用送信器という)を用いた射撃シミュレーションシステムの模式図である。図3において、この射撃シミュレーションシステムは、遠近両用送信器3と標的板装置4とが所望の距離に配置された構成となっている。また、標的板装置4には、所定の間隔で複数の受光器6が付設されている標的板5と、命中したことを示す有効性の情報などを含むレーザ信号の送受信制御を行うと共に、標的板5を立てたり倒したりさせる上昇/下降機構(図示せず)を備える制御部7とによって構成されている。
【0027】
この標的板装置4は、予め決められた近距離、遠距離の何れに設置することもできる。つまり、標的板装置4が近距離にある場合は、遠近両用送信器3からのレーザ光線が近距離レーザビームパターンで送信されて、標的板5の受光器6に照射される。また、標的板装置4が遠距離にある場合は、遠近両用送信器3からのレーザ光線が遠距離レーザビームパターンで送信されて、標的板5の受光器6に照射される。したがって、標的板装置4が近距離にあるか遠距離にあるかに関わらず、レーザ光線は1個の受光器6に受光するので、近距離、遠距離何れも有効性は同一の条件で判定される。
【0028】
つまり、本発明のレーザ光線送信器によれば、遠近両用レンズを通してレーザ光線を送信することにより、近距離にある標的板に照射するビーム面積と遠距離にある標的板に照射するビーム面積とを同じにすることができるので、標的板の受光器の配置を変えることなく(つまり、標的板を変えることなく)遠距離、近距離どちらでも同一の命中率条件で射撃訓練を行うことができる。
【0029】
また、レーザ光線には命中情報や射撃手を識別するID情報が含まれている。したがって、標的板5の受光器6にレーザ光線が命中したとき、受光器6は命中情報やID情報を取得して制御部7へ送信する。すると、制御部7は、命中情報に含まれるコードを演算・解析して命中精度の有効性を確認すると共に、ID情報に含まれるコードを演算・解析して命中した射撃手を特定する。また、演算・解析された有効性の情報や射撃手の特定情報は、制御部7から射撃手側の機器、例えば遠近両用送信器3などへ送信されるので、射撃手はこれらの情報を取得することができる。
【0030】
また、制御部7は、受光器6から命中情報を受信したときには、内部に備える上昇/下降機構によって標的板5を倒すこともできる。このようにすることによって、遠方にいる射撃手や周囲の人間に対して、レーザ光線が標的板5に命中したことを知らせることもできる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のレーザ送信器によれば、近距離、遠距離に応じてレーザビームの照射角を変えるので、一種類のレーザパターンが形成されている標的板で近距離、遠距離の何れにも対応することができる。つまり、標的板が近距離にあっても遠距離にあってもレーザ光線の照射面積を同じにすることができるので、射撃手が近距離にいても遠距離にいて、同じレーザパターンの標的板に射撃すれば、同一条件で命中の有効性を判定することができる。これにより、複数種類の標的板を用意しなくてもよいので、射撃シミュレーションを経済的に行うことができると共に操作性も向上する。
【0032】
さらに、本発明のレーザ送信器によれば、標的板を一種類にすることができるので、システム全体としての構成が簡単になり、標的板の移動・設置に費やす労力を削減することができる。したがって、効率的且つ効果的に射撃シミュレーションを行うことができると共に、標的板装置などのメンテナンスを簡素化することもできる。つまり、本発明のレーザ送信器によれば、一種類のレーザ送信器と一種類の標的板装置との組み合わせれば、近距離、遠距離両方をカバーできる射撃シミュレーションを実現することができ、もって、射撃シミュレーションシステムの利用分野をさらに拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のレーザ送信器を示す概念図である。
【図2】 図1における近距離レーザビームと遠距離レーザビームの広がりを三角図法で示した模式図である。
【図3】 図1に示すような光学的構成が施された遠近両用送信器を用いた射撃シミュレーションシステムの模式図である。
【図4】 レーザ送信器から照射されるレーザ光線の特性を示す模式図である。
【図5】 従来の標的板のレーザパターン配置図であり、(a)は近距離用標的板のレーザパターンを示し、(b)は遠距離用標的板のレーザパターンを示す。
【符号の説明】
1 レーザダイオード、2 遠近両用レンズ、2a 近距離レンズ、2b 遠距離レンズ、3 レーザ送信器(遠距離両用送信器)、Sa 近距離照射面積、Sb 遠距離照射面積、La 近距離、Lb 遠距離、4 標的板装置、5 標的板、6 受光器、7 制御部、11 レーザ送信器、12 レーザ光線、13近距離用標的板、14 受光器、15 遠距離用標的板。

Claims (1)

  1. 標的板に対してレーザ光線を照射して射撃シミュレーションを行うためのレーザ送信器において、
    前記レーザ光線を発光するレーザ光源と、
    前記レーザ光源の前方に配置された遠近両用レンズと、
    を備えると共に、前記遠近両用レンズは、
    遠距離レンズと、
    前記遠距離レンズの中心部に設けられた近距離レンズと、
    から構成されることを特徴とするレーザ送信器。
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