JP3892536B2 - 密閉型間隙水圧測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤中に発生する間隙水圧の変化を測定するための装置に関し、更に詳しく述べると、ボーリング孔内に挿入したスタンドパイプ内において、その下方に設けた圧力センサと地下水位との間の連通を、楔型パッカーで遮断することにより密閉構造とし、非測定時には圧力センサを引き抜き可能とした密閉型間隙水圧測定装置に関するものである。この装置は、特に地震時の動的間隙水圧の測定に有用である。
【0002】
【従来の技術】
地震時に地盤中に発生する異常な間隙水圧は、地盤の流動化や斜面の崩壊などを惹起する要因となるものであり、その測定は地震災害の防止や災害後の処置のために極めて重要である。現在、一般的に用いられている方法は、間隙水圧計を地盤中に封入して間隙水圧を測定する方法である。
【0003】
地震が起きると地下水の水圧変化が生じ、これを測定することで地盤の流動化の測定が可能である。地盤の流動化とは、地盤の砂状物質が動き、砂粒子同士が緩く結合していた状態から密な状態になることであり、これによって圧力が上昇するからである。小さな地震が発生した時に、どのような間隙水圧が観測されるかを調査することによって、流動化が起きる地盤であるか否か、どの程度の規模の地震で噴砂・流動化が生じるかなどを予測する手掛かりが得られる。そこで、測定の結果、緩い砂で流動化し易い地盤であることが判明した場合には、グラウトを施すなどの予防対策を行うことで、地震による被害を最小限に止めることが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
地震時の間隙水圧は、振動と共に変化するものであり、動的な変化である。従って、その測定は開放されたボーリング孔では行えず、所定の砂層の深度に間隙水圧計(圧力センサ)を埋設する方式が採用されていた。地震は何時発生するかは分からないから、圧力センサは長期間にわたって埋設したままにしておく必要がある。そのため圧力センサは故障する恐れがあり、もし故障した場合にはメンテナンスは不可能である。故障発生時には新たにボーリング孔を掘削して、圧力センサを埋設しなければならず、不便であり、且つ不経済であった。
【0005】
本発明の目的は、密閉式でありながら、地中に挿入した圧力センサなどのメンテナンスを容易に行える間隙水圧測定装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤中に掘削したボーリング孔内の底部に筒状のフィルタを設置すると共に、該フィルタから地上まで達する水密性のスタンドパイプを立設し、前記スタンドパイプの下方に該スタンドパイプ内の水頭を測定するための圧力センサを組み込み、該圧力センサから地上まで達する信号ケーブルを挿通し、前記フィルタとボーリング孔壁との間に透水性物質を充填すると共に、該透水性物質の上部を遮水性物質で覆って埋設した間隙水圧測定装置である。ここで、前記圧力センサが挿通可能な逆円錐台状の開口部を有し前記スタンドパイプ内に固定された受け部材と、弾性体からなり該受け部材の開口部に嵌合可能な逆円錐台形状をなし中心に貫通穴を有する楔型パッカーと、下端が該楔型パッカーに固定され上端が地上まで達する保持パイプと、該保持パイプの上端部を押さえることが可能な押し込み治具と、前記楔型パッカーの貫通穴に挿入されて密接し且つ前記信号ケーブルが内部を挿通た状態で両端を封止可能な遮水筒とを具備しており、その点に本発明の特徴がある。この構成によって、測定時には楔型パッカーによって前記フィルタの上部を封止可能とすると共に、メンテナンス必要時には圧力センサを引き抜けるようになっている。
【0007】
【発明の実施の形態】
信号ケーブルは、保持パイプの内部を挿通させるのが好ましいが、保持パイプに沿って地上まで引き出してもよい。受け部材は、必ずしも弾性体である必要はなく金属製あるいはプラスチックス製としてもよいが、受け部材及び楔型パッカーともに弾性体としてもよい。例えば、耐食性のあるゴムなどの成形体が好適である。押し込み治具は、保持パイプの上端部を押さえると共に、例えばスタンドパイプの上端にねじ込み可能な構造とする。それによって保持パイプ下端の楔型パッカーを受け部材に押し付けると共に、該楔型パッカーの弾性変形で遮水筒を挾圧することで楔型パッカー貫通孔内面と遮水筒外周面との隙間を無くすことができる。
【0008】
【実施例】
図1は本発明に係る密閉型間隙水圧測定装置の一実施例の測定時の説明図であり、図2はそのメンテナンス必要時における圧力センサ等を引き抜いた状態を示す説明図である。
【0009】
長尺で水密性のスタンドパイプ10の下端に有底円筒状のフィルタ12を装着し、地盤中に掘削したボーリング孔14内に挿入する。ボーリング孔14には予め途中までケーシングパイプ16を挿入しておき、それによって孔壁の崩壊を防ぐ。フィルタ12は、地下水の自由な出入は許容されているが、砂など固体粒子の流入は阻止できる構造である。このフィルタ12は、前記ボーリング孔14の底部に設置され、前記スタンドパイプ10は、フィルタ12上端から地上まで達する長さとする。そして、前記フィルタ12とボーリング孔14の壁面との間隙に砂などの透水性物質18を充填し、該透水性物質18の上部をベントナイトなどの遮水性物質20で覆って埋設する。なお遮水性物質20は、ケーシングパイプ16の下端部まで埋まるように設ける。
【0010】
前記スタンドパイプ10内の下方(フィルタ12の内部)に該スタンドパイプ10内の水頭を測定する圧力センサ22を設けておく。該圧力センサ22からの検出信号は、信号ケーブル24によって地上の圧力測定器26に導き、常時圧力を測定できるようにする。圧力測定器26は、測定値を測定時刻とともに記録し続け、必要に応じてチャートに出力したり、遠隔の基地に情報伝送できるように構成する。
【0011】
さて本発明では、スタンドパイプ10内の下端部(フィルタ12の上方)に、前記圧力センサ22が挿通可能な逆円錐台状の開口部を有する受け部材30を、ねじ筒34とナット36により緊締固定する。そして受け部材30の開口部の小径部側(下端側)の内径、厳密にはねじ筒34を用いて固定しているので、ねじ筒34の内径を圧力センサ22の外径よりも大きくしておく。受け部材30は金属製などでもよいが、ここでは耐食性を有する弾性体、例えばゴム成形体からなる。
【0012】
この受け部材30と、その開口部に丁度嵌合するような逆円錐台形状をなす楔型パッカー40を組み合わせる。楔型パッカー40は、耐食性を有する弾性体、例えば受け部材と同材質のゴム成形体からなり、中心に貫通穴42を有する構造である。なお、この実施例では、貫通孔42の口径は前記圧力センサ22の外径より若干大きめに設定している。この楔型パッカー40は、保持パイプ44の下端にナット46で固定されており、該保持パイプ44は、上端が地上まで達するような長さとする。保持パイプ44の上端部には、係止用突起48を固着しておく。
【0013】
楔型パッカー40の貫通孔42に遮水筒50を挿入する。該遮水筒50は、図3に詳細に示すように、円筒体の上下両端部が半球状に括れた形状で、その細径端部にそれぞれゴムスリーブ52を装着し、下方に位置する圧力センサ22からの信号ケーブル24がゴムスリーブ52及び遮水筒50を貫通し、保持パイプ44の内部を通って地上の圧力測定器26に接続されるように構成する。
【0014】
更に、保持パイプ44を下方に押さえる押し込み治具60を設ける。押し込み治具60は、中央に貫通穴を有し、外周内面にねじ部を形成したキャップ状部材であり、前記貫通穴の周囲が保持パイプ44の係止用突起48の上面に当接し、ねじ部がスタンドパイプ10の上端部のねじ部に螺合する構造である。
【0015】
本装置の設置方法及び使用方法は次の如くである。図2に示すように、下端にフィルタ12を装着し、下端内側に受け部材30を固定したスタンドパイプ10をボーリング孔14内に挿入し、前記フィルタ12の周囲に透水性物質18を充填し、その上に遮水性物質20を設けて埋設固定する。
【0016】
次に、下端に楔型パッカー40を固定した保持パイプ44を、前記スタンドパイプ10内に挿入する。その際、予め楔型パッカー40の貫通孔42の位置に遮水筒50が挿入されるように、圧力センサ22からの信号ケーブル24を挿通しておく。受け部材30の開口部は、圧力センサ22の外径よりも大きく設定してあるので、圧力センサ22は、受け部材30の開口部(厳密にはねじ筒34)を通過してフィルタ12内に収まる。そして、楔型パッカー40は受け部材30に嵌まり込む。その状態で、押し込み治具60をスタンドパイプ10に対してねじ込むと、係止用突起48に当たって保持パイプ44は更に押し下げられる。これによって楔型パッカー40の外面は受け部材30に密着し、同時に内側にも膨らむように変形して遮水筒50を挾圧し、その外周面と楔型パッカー40の貫通穴42の内面との隙間が無くなる。また遮水筒50の括れた細径端部に装着されているゴムスリーブ52は、周囲の地下水による水圧によって縮径し、信号ケーブル24に密着する。このようにして、フィルタ12の上部は、完全に遮水されることになり、圧力センサ22は地盤中に埋設されたと同様の状態となる。そのため、地震による動的間隙水圧の測定が可能となる。
【0017】
長期間にわたる使用によって圧力センサ22などに不具合が生じた場合には、押し込み治具60を外して保持パイプ44を引き抜けばよい。すると、楔型パッカー40と共に水圧センサ22を一体に引き上げることができる。また、設計によっては、保持パイプ44を少し引き上げ、楔型パッカー40を緩めた状態で信号ケーブル24を引き上げることで、遮水筒50と圧力センサ22のみを引き抜くことも可能である。いずれにしても、必要な修理あるいは交換を行った後、上記の手順で、スタンドパイプ10内に挿入すれば、再び圧力センサ22を収容しているフィルタ12の上部を遮水することができ、動的間隙水圧の測定が可能となる。
【0018】
【発明の効果】
本発明は上記のように、スタンドパイプ内側に受け部材を設け、それと嵌合可能な楔型パッカーを保持パイプ下端に設けて圧力センサをフィルタ内に吊設する構成としたことにより、圧力センサと地下水位との間の連通が、フィルタ上部にて楔型パッカーによって遮断され、動的間隙水圧の測定が可能となる。しかも、必要に応じて楔型パッカー及び圧力センサを引き抜くことができるため、長期間にわたる使用によって故障などの不具合が生じても、容易に修理や交換などのメンテナンスが可能になる。そのため、故障発生時に新たにボーリング孔を掘削する必要は無く、経済性にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る密閉型間隙水圧測定装置の一実施例の測定時における設置状況を示す説明図。
【図2】そのメンテナンス必要時における楔型パッカー及び圧力センサ等の引き抜き状況を示す説明図。
【図3】その遮水筒の一例を示す説明図。
【符号の説明】
10 スタンドパイプ
12 フィルタ
14 ボーリング孔
18 透水性物質
20 遮水性物質
22 圧力センサ
24 信号ケーブル
30 受け部材
40 楔型パッカー
42 貫通穴
44 保持パイプ
50 遮水筒
60 押し込み治具
Claims (2)
- 地盤中に掘削したボーリング孔内の底部に筒状のフィルタを設置すると共に、該フィルタから地上まで達する水密性のスタンドパイプを立設し、前記スタンドパイプの下方に該スタンドパイプ内の水頭を測定するための圧力センサを組み込み、該圧力センサから地上まで達する信号ケーブルを挿通し、前記フィルタとボーリング孔壁との間に透水性物質を充填すると共に、該透水性物質の上部を遮水性物質で覆って埋設した間隙水圧測定装置において、
前記圧力センサが挿通可能な逆円錐台状の開口部を有し前記スタンドパイプ内に固定された受け部材と、弾性体からなり該受け部材の開口部に嵌合可能な逆円錐台形状をなし中心に貫通穴を有する楔型パッカーと、下端が該楔型パッカーに固定され上端が地上まで達する保持パイプと、該保持パイプの上端部を押さえる押し込み治具と、前記楔型パッカーの貫通穴に挿入されて外周面が密接し且つ前記信号ケーブルが内部を挿通した状態で両端を封止可能な遮水筒とを具備し、測定時に楔型パッカーによって前記フィルタの上部を封止可能にすると共に、メンテナンス必要時には圧力センサを引き抜き可能としたことを特徴とする密閉型間隙水圧測定装置。 - 受け部材及び楔型パッカーは、ともにゴムの成形体であり、押し込み治具は、保持パイプの上端部を押さえると共に、スタンドパイプの上端にねじ込み可能な構造であり、遮水筒は、上下両端部が括れた形状で、その細径端部にゴムスリーブを装着して信号ケーブルとの間を周囲の水圧で封止する構造の請求項1記載の密閉型間隙水圧測定装置。
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