以下、図面をもとに、本発明の実施例について説明する。
図1は本実施例のインジェクタ10の側断面図とインジェクタ10のコネクタ部6を図面の左方向(コネクタの接続端面側)から見た図とを示している。図2は(a)にインジェクタ10内に設けられるボビンに巻装されたコイルを側方から見た外観図を示し、(b)に(a)のボビンを図面上方(弁軸心に沿う方向において燃料噴射孔の反対側(上流側))から見た図を示している。図3はインジェクタ10の等価回路モデルを示す図である。
まず、図1を用いて本実施例のインジェクタ10の構造を説明する。本実施例のインジェクタ10は、燃料ポンプで加圧された燃料が供給されており、弁体を成すボール弁16とノズル側に形成されたシート面(弁座面)4との間で燃料通路の開閉を行い、シート面4の下流側に形成された燃料噴射孔5からの燃料の噴射量を制御している。ボール弁16はプランジャ15の先端に取り付けられており、シート面4の上流側には燃料に旋回力を付与する燃料通路17aが形成されたスワーラ(燃料旋回素子)17が配設されている。このスワーラ17により燃料噴射孔5から噴射される燃料の微粒化が促進される。
ボール弁(弁体)16を駆動するために、インジェクタ10には第一のコイルであるコントロールコイル11と第二のコイルであるホールドコイル12が設けられている。これらのコイル11,12が通電されると磁束が発生し、コア13、ヨーク14とプランジャ15を磁路として通り、コア13、ヨーク14とプランジャ15との間に吸引力が発生する。これによりプランジャ15及びボール弁16が図では上側(シート面4から離れる向き)に変位し、燃料はシート面4とボール弁16との間に開かれた燃料通路を通って燃料噴射孔5から噴射される。またインジェクタ10には、コントロールコイル11とホールドコイル12による吸引力が無いときは、プランジャ15及びボール弁16をシート面4に押し付けて閉弁するように、付勢手段が設けられている。本実施例では付勢手段としてばね部材であるリターンスプリング18を設けている。
図1及び図2に示すように、コントロールコイル11とホールドコイル12はボビン7に巻かれている。コントロールコイル11の両端はボビン7を貫通し、ロングターミナル33,34を経由してコネクタ上側に導かれC+端子、C-端子となり、ホールドコイル12のの両端はボビン7を貫通し、ショートターミナル31,32を経由してコネクタ下側に導かれH+端子、H-端子となっている。H+、C+端子に正の電圧を加え、H+、C-、をバッテリのマイナス端子につなぐとコントロールコイル11とホールドコイル12に等しい向きの磁束が発生するように、2つのコイルの巻き方、配線が決定されている。
図3に示すように、本実施例のインジェクタ10のボール弁16を駆動する駆動手段は、コア13にコントロールコイル11とホールドコイル12が巻き付けられた等価回路で示すことができる。以下、配線、電流の向き等を説明するときには、図3の等価回路モデルで示すことにする。
本実施例においては、上述したように、2つのコイルを備えている。第一のコイルであるコントロールコイル11は、起磁力の立ち上がり特性を最大限考慮する必要があり、開弁状態を維持するために必要な起磁力を発生し続けることについては、第二のコイルの補助的な役割を担う。一方、第二のコイルであるホールドコイル12は、コントロールコイル11によって開弁状態がある程度確保された時点で、単独で或いはコントロールコイル11と共に、開弁状態を維持するのに必要な起磁力を発生できれば良いので、高速な立ち上がり特性については配慮する必要が無い。
そこで本実施例では、コントロールコイル11とホールドコイル12とは、それぞれ異なった電気特性を持つように構成されている。コントロールコイル11は巻き数(インダクタンス)が少なく、電気抵抗が小さい。これに対してホールドコイル12は巻き数が多く、電気抵抗が大きい。さらに詳細には、コントロールコイル11はホールドコイル12に対して線材の長さを短くかつ断面積を大きくしており、電気抵抗が小さくなっている。
コントロールコイル11とホールドコイル12が、それぞれ閉弁・開弁・開弁保持・閉弁の各段階においての役割が違う。コントロールコイル11は、本実施例においては、主として開弁初期状態で使い、開弁保持状態ではホールドコイルの補助として使うコイルであり、ホールドコイル12は主として開弁保持状態での使用を意図したコイルである。以下、それぞれの電流特性の違いを述べる。
図4(a)は、同一電圧Vが印加されたときの、コントロールコイル11とホールドコイル12に流れる電流特性を時間経過と共に示した図である。前述のようにコントロールコイル11は巻き数が少なく抵抗が小さいため、短い時間で大きな電流値に到達することができる。一方ホールドコイル12は巻き数が大きく抵抗が大きいため電流値が収束するまで時間がかかり、さらにその収束値もコントロールコイル11に比べて小さい。一方、図4(b)は、それぞれのコイル11,12がインジェクタ10の磁気回路に及ぼす起磁力応答を示した図である。起磁力はコイル巻き数と電流値の積で表され、磁気吸引力に直結した物理量と考えられる。図4(a)に示したようにコントロールコイル11に流れる電流は急激に立ちあがるが、巻き数が少ないため起磁力の収束値はホールドコイル12に比べて電流値の差ほど大きくない。逆にホールドコイル12の起磁力応答はコントロールコイル11に比べて鈍い。
開弁動作時には、前述のリターンスプリング18によるセット荷重と、加圧された燃料による燃圧がボール弁に働くため、開弁保持時に比べ大きな電磁吸引力が要求される。電磁吸引力が、これらの力に打ち勝つ大きさに到達した時点で、初めてプランジャ15が変位を始める。従って、電磁吸引力を発生するのに必要な時間は、開弁遅れに影響を及ぼすため、出来るだけ短くする必要がある。
例えば、開弁動作に用いられるコイルでは巻数で起磁力を稼ぐよりも電流で起磁力を稼ぐほうが効果的である。通電時間も開弁までの短時間に限られ、発熱の影響が出難い。コイルの巻数が少ないほうが、インダクタンス及び内部抵抗が少なくなり電流が流れ易くなる。すなわち、ピークホールド方式に用いられるようなコイルの特性が望ましい。また、電流の流れ易さは、インジェクタ内のコイルのみならず、駆動回路側の内部抵抗、スイッチングデバイスの抵抗、電圧降下にも影響される。このため、駆動回路側の内部抵抗、スイッチングデバイスの抵抗、電圧降下は極力小さくする必要がある。
一方、開弁保持動作では、開弁時よりは、小さな起磁力で弁体を開状態に保持できる。これは、開弁により燃料が噴射されボール弁16の前後で圧力がバランスし、燃圧による力が小さくなると同時に、コア13、ヨーク14とプランジャ15のエアギャップが小さくなるため、空間ギャップの磁束密度が上昇し起磁力を有効に使えるためである。しかしながら、高噴射率、微粒化の促進のため高い燃圧が要求される際は、開弁保持のためにも比較的大きな起磁力が連続して必要となる。
保持状態が連続すると、消費電力(発熱量)は印加電圧と電流値の積となるため、インジェクタの温度が上昇するため、インジェクタの耐熱容量を大きくする必要も生じてくる。例えば開弁用に望ましいコイルに連続で電圧を印加することは過大な電力が投入されることになる。開弁状態を保持するための電流の上限は耐熱範囲内に限られることになる。このため開弁状態を保持するためのコイルには、必要な起磁力をこの上限電流で割った値の巻き数が必要となる。しかしながら、コイルのインダクタンスは、巻き数の二乗で増加する。従って、閉弁時の応答遅れを短縮するためには、巻き数はある程度の増加に留め、開弁時に用いたコイルに、開弁時より少ない電流を通電し、保持のための起磁力を補ってやれば良い。
図5は上述のような駆動を可能とする本実施例の燃料噴射装置の回路配線構成を示す図である。
上述したように、開弁時には、主としてコントロールコイル11に短時間、大きな電流を流し、保持時には、ホールドコイル12に電流を流すとともに、コントロールコイル11にもホールドコイル12と同じ電流を流すような構成となっている。
コントロールコイル11、ホールドコイル12による機能分担により、コイル巻き数やコイル抵抗、線径などをそれぞれの機能に最適化することが可能になる。
本実施例の燃料噴射装置はインジェクタ10とその駆動回路100とを備えて構成される。場合によっては、噴射タイミングを制御する制御回路を含めてもよい。また、通常、制御回路はエンジンコントローラ(エンジンコントロールユニット:ECU)1内に設けられる。
インジェクタ駆動回路100には、バッテリ電圧Vbが供給されており、エンジンコントローラ(エンジンコントロールユニット:ECU)1からの噴射指令信号に基づき、コントロールコイル11、ホールドコイル12への通電制御を行う。インジェクタ駆動回路100には、コントロールコイル11への通電制御を行うコントロールコイルトランジスタモジュール110と、ホールドコイル12への通電制御を行うホールドコイルトランジスタモジュール120とがある。それぞれのトランジスタモジュール110,120は、パワートランジスタ111、121とサージアブソーブドダイオード112、122で構成されている。
コントロールコイル11の一端(C+)端子は、バッテリ2のプラス端子に接続されている。コントロールコイル11のもう一端(C−端子)とホールドコイル12の一端(H+端子)は、接続されるとともに、コントロールコイルトランジスタモジュール110を介して電源のグランド側に接続されている。ホールドコイル12のもう一端(H−端子)は、ホールドコイルトランジスタモジュール120を介して電源のグランド側に接続されている。以下、コントロールコイル11に流れる電流をIc、ホールドコイル12に流れる電流をIhとする。
図6に各トランジスタモジュールがオン・オフしたときの各モードでの回路構成、各コイルに流れる電流を模式的に示す。
まず(a)の場合は110、120ともにオフの状態である。コントロールコイル11、ホールドコイル12とも電源側のグランド(マイナス側)に接続されず、回路はオープン状態である。従ってコントロールコイル11、ホールドコイル12ともに電流は流れない(Ic=Ih=0)。
つぎに(b)の場合は110のみオンで120がオフの状態である。図のようにコントロールコイル11のみが電源側のグランドに接続され、クローズ状態となる。コントロールコイル11は上で述べたとおり低抵抗でかつ巻き数も少ないため、短時間に大きな電流が流れ、起磁力が急速に投入可能である。
また(c)の場合は、110、120ともにオンである。この場合、コントロールコイル11とホールドコイル12が直列接続されクローズ状態となると同時に、コントロールコイル11とホールドコイル12の接続点がグランドに接続されることになる。すなわちホールドコイル12と、極めて線路抵抗の小さいラインが並列に繋がることになる。上述のようにホールドコイル12の抵抗は比較的大きいため、コントロールコイル11を流れた電流のうちほとんどが、コントロールコイルトランジスタモジュール110を流れることになる。従って回路構成は(b)と異なるが起磁力投入効果としては(b)とほぼ等しいと考えられる。
開弁初期時には、起磁力が急速に投入可能なモード(b)あるいは(c)が適している。ここで留意しなければならないのは連続時間である。(b)(c)ともにコントロールコイル11に大電流が流れるため、これらのモードは短時間に留めておく必要がある。
次に(d)の場合は、コントロールコイル11とホールドコイル12が直列接続でクローズ状態になる。このためコントロールコイル11とホールドコイル12には等しい電流が流れる(Ic=Ih)。電流値は、バッテリ電圧をコントロールコイル11とホールドコイル12の抵抗値の和で除した値となる。ホールドコイル12の巻き数と抵抗は、コントロールコイル11よりも大きいため、電流はほぼホールドコイル12の抵抗で決定される。
開弁保持状態にはモード(d)が適している。比較的巻き数の多いホールドコイル12に電流が流れて起磁力を稼ぐと同時に、巻き数の少ないコントロールコイル11にも電流が流れる。ホールドコイル12にのみ通電している場合に比べても、合計では大きな起磁力を投入することができる。
本実施例のように、コントロールコイル11とホールドコイル12とを直列に接続しておき、開弁初期時には電源電圧がコントロールコイル11にかかり、開弁保持状態では電源電圧が直列接続されたコントロールコイル11とホールドコイル12との両端にかかるように駆動回路を構成することにより、駆動回路の構成を簡単にして、開弁動作と開弁保持動作とをより確実に行うことが可能になる。
図7に本実施例の燃料噴射装置のインジェクタ駆動方法を示す。
長さTiの噴射指令信号に対し、ホールドコイル側には噴射指令信号(Ti)の間、ホールドコイルトランジスタモジュール120をオンしつづけ、噴射指令信号が立ち下がると同時にホールドコイルトランジスタモジュール120をオフする。一方、開弁初期Tc(<Ti)の間のみ、コントロールコイルトランジスタ110をオンにする。従って、開弁初期Tc(<Ti)は図6のモード(c)となる。このためコントロールコイル11に大電流が流れることになり短時間に大きな起磁力を投入し開弁を促進する。一方、Tc以降ではコントロールコイルトランジスタモジュール110のみオフとなり、すなわち図6のモード(d)となり、コントロールコイル11とホールドコイル12の両方に電流が流れ、ホールドコイルのみに通電している状態に比べ、大きな起磁力が投入でき、高燃圧に対しても安定した保持が可能となる。
T=Tiで噴射パルスが立ち下がると同時に、ホールドコイルトランジスタモジュール120はオフとなり、図6のモード(a)となる。回路はオープンし、コントロールコイル11、ホールドコイル12への通電は停止され、弁体は速やかに閉弁動作を開始するようになる。
図8にコントロールコイル11とホールドコイル12の間に相互インダクタンスが形成されている場合に起こる相互誘導現象、また、本発明における改善方法について示す。図7と同様にトランジスタモジュールをオン・オフした場合、 Tc(<Ti)の間にコントロールコイル11の電流が大きく立ち上がる際に、ホールドコイル12に逆向きの起電力が発生する。これは相互誘導と呼ばれ変圧器などに発生する磁気現象と同等のものである。このような起電力が発生すると図5に示すホールドコイルトランジスタモジュール120のサージアブソーブドダイオード122を経由し電流が電源グランド側から流れることになる(a)。この電流はホールドコイル12を端子H−からH+の方向(電圧印加時と逆方向)に流れ、磁気回路に発生する磁束を弱める働きがある。この電流は、コントロールコイルトランジスタモジュールを経由し電源グランドに流れ込む。 Tc(<Ti)のときこの逆電流を容認すると実質上の開弁時の投入起磁力が低下し、開弁遅れ、弁体保持不良が発生する可能性がある。
これを避けるためには図8(b)に示すように順方向のみの通電を可能とするダイオードを挿入すれば良い。ホールドコイル12に流れる逆電流は無くなり、電流の順方向の立ち上がり特性も改善される。
また、逆電流を完全に遮断せず、その値を調整したいときは、ダイオ−ドと並列に抵抗を挿入し、この抵抗値により逆電流の量を調整しても良い。
図9(a)に示すように、本実施例では、巻き数が少なく短時間に大電流を流せて高速応答可能という特性をコントロールコイル11に持たせるとともに、小電流で安定した吸引力を得られる特性をホールドコイル12に持たせる。開弁初期にはコントロールコイル11に主に通電し、開弁保持時にはコントロールコイル11とホールドコイル12を直列に接続し等しい電流を流す。開弁動作及び開弁保持状態の各段階において、理想的なコイル特性に理想的な通電方法を組み合わせ、高燃圧等に対しても安定した保持を実現でき最適動作を可能としている。
これに対し、図9(b)は、従来の高電圧駆動燃料噴射装置の動作を示すものである。高電圧インジェクタにおいては、一つのコイルで開弁動作と開弁状態を保持する必要があるため、それぞれの段階において理想的なコイルの特性を得ることが難しい。例えば、開弁動作時の応答性を良くするように本実施例のコントロールコイル11と同様に巻き数を少なく、抵抗を小さくすると、保持時に大電流を継続して流す必要があり、発熱が多くなる。逆に、巻き数、抵抗を本実施例のホールドコイルと同様にすると、開弁が出来ないか、開弁遅れが非常に大きくなる。このため、両方の妥協点でコイルを設計せざるを得ない。
高電圧駆動インジェクタは非常に大きな電圧VHH(>>VH)を昇圧回路202を用いてバッテリから作り、コイルに印加して急速に電流を立上げて開弁させる。開弁後はバッテリ電圧VL'(<<VHH)を直接印加しても電流が流れすぎるため、電流制御回路203でスイッチングをし、電流値を保持限界で一定にするように電流制御が加えられる。昇圧回路202と電流制御回路203の回路規模は大きく、従来のエンジンコントロールユニット内に配置することは困難である。このため、高電圧駆動燃料噴射装置においてはインジェクタ駆動回路210はエンジンコントローラ(エンジンコントロールユニット:ECU)201と別置きされている。別置きすることにより、インジェクタ駆動回路210はケースが必要となる。また、エンジンコントローラ201からの信号のやり取りをするためにハーネス204、コネクタ205が必要となる。また、電流制御回路駆動時のスイッチングノイズでエンジンコントローラ201あるいはラジオ等に影響を与えないように高価なシールド線を使う必要が生じてくる。
ここで、図5にも示したように、本実施例の燃料噴射装置の駆動回路の規模は、基本的にはパワートランジスタ2個で構成されたON/OFF回路であるために非常に安価であるとともに、コンパクトである。さらにスイッチング動作を必要としないのでノイズも発生しない。したがってエンジンコントローラ(エンジンコントロールユニット:ECU)1内にインジェクタ駆動回路100を内臓することが可能である。
図9(c)は従来の高電圧燃料噴射装置と本実施例の燃料噴射装置とのコスト又はサイズを比較したものである。昇圧回路及び電流制御回路を廃止することができ、回路規模を小さくするとともに、ケース、ハーネス、コネクタなども不要となり大幅なコストダウン及び小型化が可能である。
本実施例の燃料噴射装置を適用した内燃機関の実施例を図10を用いて説明する。本実施例の内燃機関は、燃料を噴射する燃料噴射装置(電磁式燃料噴射弁1010,駆動回路1100)と、燃料噴射装置に燃料を供給する燃料供給手段(燃料ポンプ1030,フィードポンプ1040,高圧プレッシャレギュレータ1050)と、燃料噴射装置で噴射された燃料を内部で燃焼させるシリンダ1060と、このシリンダ内で往復運動するピストン1070と、シリンダ1060内に空気を吸入する吸気手段1080と、シリンダ1060内の混合気に点火する点火装置1090と、シリンダ1060内から排気する排気手段1110と、吸気手段(吸気管,バルブ等)1080、排気手段(排気管,バルブ等)1110、点火装置1090及び燃料噴射装置を制御するエンジンコントロールユニット1とを備えている。また、バッテリ電圧Vbが駆動回路1100に供給されている。
この内燃機関では、燃料がフィードポンプ1040により燃料ポンプ1030に導かれ、チェック弁1120を経由しインジェクタ1010に加圧された状態で供給される。エンジンコントローラ1は、各種センサ情報から噴射タイミングと噴射量を決定し、噴射信号をインジェクタ駆動回路1100に出力し、インジェクタ1010は駆動回路1100により駆動されて燃料を噴射する。本実施例は筒内噴射エンジンで説明したが、他の種類のエンジンに用いることができるのはもちろんである。
本実施例によれば、開弁動作及び開弁保持状態の各段階において、理想的なコイル特性に理想的な通電方法を組み合わせ、高燃圧等に対しても安定した保持を実現でき最適動作を可能としている。
閉弁状態から開弁し、開弁状態を保持した後、再び閉弁するまでに、それぞれの状態に対して理想的なコイル特性に理想的な通電方法を組み合わせ、高燃圧等に対しても安定した保持を実現でき弁体を最適駆動することにより、広いダイナミックレンジを安定して実現する燃料噴射装置を安価に提供することができる。
インジェクタ及びその駆動回路方式について説明しておく。インジェクタ及びその駆動回路方式としては、サチュレーティッド方式(電圧駆動)とピークホールド方式(電流駆動)が良く知られている。
一般的にサチュレーティッド方式は、コイル巻数も多く、駆動電流は、弁体がリフトを終了しても増加を続け、コイル内部抵抗及び、駆動回路内の抵抗によって制限される飽和電流値に近づく。回路インピーダンスは、ピークホールド方式に比して高く、インダクタンスの影響により、コイルに流れる電流の立上りはゆるやかである。コイル内部抵抗及び、駆動回路内の抵抗を調整することにより飽和電流値を適当に設定しておけば、電流制御回路の必要も無く、安価に構成できる。
一方、ピークホールド方式は、コイル巻数が少なく、回路インダクタンス、インピーダンスが低く、開弁時の電流立上りは、サチュレーティッド方式に比して速い。しかし、このままでは過電流が流れる可能性があるので、駆動回路内に電流制御機構を設け、全リフト後は、開弁保持に必要な値に電流を制限する。
インジェクタの性能基準となる高い噴射率、広いダイナミックレンジを達成するためには、電流の応答性が高いピークホールド方式を採用する場合が多い。また、昇圧回路により高電圧を作り、インジェクタに投入することにより短時間に電流を強制的に流し込み、開弁立上り特性を改善することが可能である。また、閉弁時には逆にこの高電圧を印加し閉弁特性を改善することが可能である。
1、201…エンジンコントローラ、2、22…バッテリ、10、200…インジェクタ、11…コントロールコイル、12…ホールドコイル、13…コア、14…ヨーク、15…プランジャ、16…ボール弁、17…スワーラ、18…スプリング、6…コネクタ、31、32…ショートターミナル、33、34…ロングターミナル、7…ボビン、100…インジェクタ駆動回路、110…コントロールコイルトランジスタモジュール、111…コントロールコイルパワートランジスタ、112…コントロールコイルサージアブソーブドダイオード、120…ホールドコイルトランジスタモジュール、121…ホールドコイルパワートランジスタ、122…ホールドコイルサージアブソーブドダイオード、202…昇圧回路、203…電流制御回路、204…ハーネス、205…コネクタ、210…高電圧駆動回路。