JP3889719B2 - 対流圏特性算出システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばGPS(Global Positioning System)などのシステムを利用して精密な位置測定や気象予測などに資するシステムに関する。特に本発明は、シュードライト(PL:PseudoLite)と称される装置を用いる対流圏特性算出システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年になり、測位衛星から電波で提供される情報を利用して位置を計測する測位システムが様々な分野に普及しつつある。この種の測位システムは幅広く応用されており、位置情報を得るためだけでなく、気象観測や情報通信分野などにも適用され始めている。
【0003】
測位システムの一つにGPSがある。GPSは、軌道上を移動するGPS測位衛星から放射される測位用電波を捕捉し、その伝搬時間などの観測量に基づいて受信機の位置を算出するシステムである。測位用電波としてはL1波帯(1575.42MHz)の電波(以下、L1信号と称する)が一般に使用される。
【0004】
ところで、測位衛星は約20,000km上空に位置するため、放射されたL1信号は地上の受信機に到達するまでに電離圏と対流圏とを通過する。電離圏および対流圏はいずれもL1信号を遅延させるため測位データに誤差を生じさせ、また各圏による遅延量はそれぞれ異なる。この誤差を補正するためには両圏による遅延量をそれぞれ分離して観測できると都合が良いが、効果的な観測手法は未だ提供されていない。例えば既知の手法として、2周波受信機を用いて対流圏遅延量を推定する方法が有る。しかしながらこの手法では、衛星位置誤差、地上クロック誤差、およびマルチパスによる誤差などの相乗効果により正確な補正用データを得ることが難しい。
【0005】
また、対流圏遅延量と大気の屈折率との間には密接な関係が有ることが知られている。大気の屈折率は雲の状態を反映する量であるので、対流圏遅延量に関する知見を得られることは、正確な測位データを得るためだけでなく、気象状態の観測や気象予測にも大きく役立つ。現状では大気の屈折率を3次元的に観測するためには、気圧、温度、および相対湿度の各高度ごとの測定データが必要であり、そのための手間が大きいという不具合がある。
【0006】
なお本発明に関連する情報を開示する文献として、下記の非特許文献1がある。この文献には、電離層を通過するL1波帯信号の遅延量の補正値などに関する情報が記載されている。
【0007】
【非特許文献1】
「Appendix A,pp A37-A40,RTCA/DO229B Octover 6,1999」
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、既存の手法では測位用電波の対流圏遅延量を正確に測定することが難しく、対流圏遅延量を精度良く測定できる新たな手法の提供が待たれている。また、特に対流圏遅延量の3次元的な状態を精度良く測定することができれば気象現象の解析に資するところが大きく、天気予報などに役立てることができる。よって対流圏遅延量を簡易に測定できる手法の提供が要望されている。
【0009】
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、測位用電波の対流圏による影響を簡易かつ高精度に測定できるようにし、これにより気象現象の解析に資する対流圏特性算出システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にかかる対流圏特性算出システムは、複数の測位衛星から電離層および対流圏を介して放射される測位用電波(例えばL1信号)に含まれる測位情報を利用して受信装置の測位データ(例えば擬似距離やキャリアレンジなど)を得る測位システムを利用する対流圏特性算出システムであって、前記対流圏内を移動する移動体に搭載され前記測位情報を含む測位用電波を放射する電波源(例えばシュードライト)と、前記対流圏内の互いに異なる位置に精密測位されて配置され、前記測位衛星および電波源から放射される測位用電波を受信して自己の測位データを得る複数の第1受信装置と、前記移動体に搭載され、前記電波源から放射される測位用電波を受信して自己の測位データを得る第2受信装置(例えば移動体に搭載されるGPS受信機)と、前記測位衛星から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置の測位データと、前記電波源から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置および第2受信装置の測位データとに基づいて、前記測位用電波の前記対流圏における屈折率を算出する演算手段(例えば上記GPS受信機の処理機能)とを具備することを特徴とする。
【0011】
すなわち本発明では、対流圏内に設置されるシュードライトから放射される測位用電波が電離層を通過しないことに着目し、この事実に基づいて、測位用電波の電離層による遅延量と対流圏による遅延量とを分離して、これにより測位用電波の対流圏遅延量を算出するようにしている。従って、シュードライトと受信装置間の大気により生じるL1信号の対流圏遅延量を、シュードライトからの距離に応じて測定することが可能となり、このことを利用してGPS測位により得られる受信装置の位置情報を補正することができ、正確な測位処理に資することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係わる測位システムの第1の実施の形態を示すシステム構成図である。このシステムは、それぞれL1信号を送出するGPS衛星100およびシュードライト送信機(PL送信機)200と、L1信号を受信する受信機300とを備える。本実施形態においては、地上を含む対流圏内にPL送信機200を位置固定し、その送信アンテナ201の設置位置を予め正確に測量するようにする。
【0013】
受信機300は、GPS衛星100から送出されるL1 C/Aコードだけでなく、PL送信機200から送出される連続波、およびパルス化された信号を受信することができる。すなわち受信機300により受信される信号には、GPS衛星100から送信されるL1 C/Aコード、PL送信機200から送信されるL1 C/Aコード、および、PL送信機200から送信されるL1 Pコードなどがある。
【0014】
図2は、図1のシステムを模式的に示す図である。システムの運用にあたっては、少なくとも2つの受信機が必要となり、図2においてはそれぞれ参照符号3F、3Mで示す。受信機3Fは予め精密に測量された位置に設置され、地上基準局として運用される。受信機3Mは例えば航空機などの移動体に搭載され、時間とともに移動する。
【0015】
GPS衛星100から送出されるL1信号と、PL送信機200から送出されるL1信号とは、受信機3F、3Mにおいてそれぞれ受信される。このうちGPS衛星100から送出されるL1信号が電離層を通過し、電離層による遅延を受ける。またGPS衛星100から送出されるL1信号と、PL送信機200から送出されるL1信号とのいずれも、対流圏による遅延を受ける。
【0016】
図2の各受信機3F,3MにおいてL1信号に基づき算出される擬似距離は、一般的に次式(1)により表される。
【0017】
【数1】
【0018】
式(1)において、左辺Rが擬似距離を示す。右辺のρは、衛星位置と受信機の位置とから算出される両者間の距離を示す。dtrは、受信機のクロックオフセットを示す。dtsは、衛星のクロックオフセットを示す。depは、エフェメリス誤差を示す。dionは、電離層遅延量を示す。dtrpは、対流圏遅延量を示す。dMは、マルチパス誤差を示す。εは、雑音などによる誤差を示す。
【0019】
図2において、GPS衛星100、PL送信機200、および受信機3F,3Mの関係において、R11,R21,R12、R22の4つの擬似距離を考えることができる。左側添字はL1信号の送出源に対応するもので、1はPL送信機200を、2はGPS衛星100を示す。右側添字は受信機に対応するもので、1は受信機3Fを、2は受信機3Mを示す。式(1)に基づきR11,R21,R12、R22を表し、さらに左辺から右辺のρを減算すると、次式(2)〜(5)が得られる。
【0020】
【数2】
【0021】
式(2)〜(5)において、dep1はGPS衛星100のエフェメリス誤差に相当し、dep2はPL送信機200の測量位置の誤差に相当する。より詳しくは、dep2はPL送信機200のアンテナ201の位置の測量位置に相当する。dtr1は、受信機3Fのクロックオフセットに相当する。dtr2は、受信機3Mのクロックオフセットに相当する。dts1は、GPS衛星100のクロックオフセットに相当する。オフセットに相当する。dts2は、PL送信機200のクロックオフセットに相当する。εr1は、受信機3Fにおける雑音などの誤差に相当する。εr2は、受信機3Mにおける雑音などの誤差に相当する。
【0022】
式(2)〜(5)に示されるように、R11,R12には電離層遅延量dionは含まれない。これは、PL送信機200が対流圏内に設置されることによる。
【0023】
式(4)−式(2)、および式(3)−式(5)を演算することにより、次式(6)および(7)が得られる。
【0024】
【数3】
【0025】
式(6)は、受信機3Fにおいて算出される補正情報を基に、PL送信機200からのL1信号に基づき受信機3Mで算出される擬似距離の補正項を示す。(7)式はGPS衛星100からのL1信号に基づき生成される擬似距離の補正項を示す。
【0026】
式(7)をGPS擬似距離に対する対流圏遅延量誤差補正モデル式で置き換えると、次式(7′)が得られる。
【0027】
【数4】
【0028】
式(7′)において、GPS衛星100とユーザ(すなわち受信機3Mを搭載する移動体)、およびGPS衛星100と地上基準局受信機3Fとのなす角が小さい場合、すなわち、ユーザおよび地上基準局から見たGPS衛星100の方向がほぼ同じであれば、電離層により生じる遅延量誤差は両者ともほぼ同じと考えられる。従って式(7)から電離層による遅延項を除くことができる。
【0029】
式(6)において、PL送信機200と、地上基準局受信機3Fの位置は一定であるので、dM1r1は一定となる。式(6)、(7)、(7′)には、時間とともに変化する地上受信機3F,3Mのクロックバイアスの差分も含まれる。
【0030】
さて、式(6)から式(7)を減算すると、次式(10)が得られる。
【0031】
【数5】
【0032】
式(10)は、ダブルディファレンスと称される量であり、対流圏による遅延項に相当する量である。式(10)において、受信機3Fと受信機3Mとで同じGPS衛星100を使用することにより、GPS衛星100からのL1信号に生じる電離層遅延による擬似距離誤差はほぼ同じとみなせる。このことを考慮すると、式(10)は次式(11)のように表される。
【0033】
【数6】
【0034】
このようにダブルディファレンスを算出することで、PL送信機200から送出されるL1信号に関する受信機クロック項が無くなる。また式(11)には、対流圏による誤差項が括弧にくくられて2つある。最初の括弧でくくられている対流圏誤差項はPL送信機200から送出されるL1信号に関するもので、2番目に括弧でくくられている項はGPS衛星100からのL1信号に生じる対流圏誤差項である。
【0035】
dtrp11は、数分程度であれば気象条件の変化はほとんどなく、また固定地点間で生じているものであるので一定値とみなせる。dtrp22およびdtrp21項に関しては、特に高仰角のGPS衛星100を選択することにより、数分間の程度であればほぼ一定となる。これは、GPS衛星が2000km上空の軌道上にあるため、観測地点から見た移動速度が非常に遅いためである。
【0036】
さて、式(11)は擬似距離を用いて算出される式であるが、キャリアレンジ用いると精度をさらに向上させることができる。式(11)において擬似距離RをキャリアレンジCに置き換えると次式(12)が得られる。なおキャリアレンジには波長の整数倍の不確定性(アンビギュイティ)が残るが、同じGPS衛星100を継続的に追尾する場合にはアンビギュイティは一定となる。
【0037】
【数7】
【0038】
式(12)においてCambはアンビギュイティを示す。Cは変化の少ない対流圏遅延量項などを示す。
【0039】
ところで、対流圏遅延量誤差は、L1信号の通過経路における大気の屈折率を積分することにより得られることが知られている。これにより次式(13)が得られる。
【0040】
【数8】
【0041】
式(13)においてsは距離の次元を持つ。
【0042】
図3は、受信機3Mの移動に伴うダブルディファレンスの変化を模式的に示す図である。図3において、受信機3Mがs1からs2に移動したとすると、ダブルディファレンスは次式(14)のように変化する。
【0043】
【数9】
【0044】
式(14)において、dM′およびεは、それぞれ、s2およびs1におけるマルチパスの差分とノイズを示す項である。図3および式(14)において、H1をs1における高度とし、H2をs2における高度とすると、ユーザの移動に伴って、各高度差による大気の屈折率を知ることができる。大気の屈折率が算出されると、これをL1信号の通過経路に対して積分することにより対流圏における遅延量を算出することができる。移動体に搭載される受信機3Mは、この遅延量をもとに自装置で算出した測位データを補正する。なお上記の各演算処理は、図2の受信機3Fまたは3Mにおけるソフトウェア処理などにより実施される。
【0045】
このように本実施形態では、L1信号を送出するシュードライト送信機200を対流圏内の精密測位された位置に設置する。そして、地上側の受信機3F,3Mにおいて、シュードライト送信機200からのL1信号と、GPS衛星100からのL1信号とをそれぞれ受信し、擬似距離Rを算出する。また、GPS衛星100、シュードライト送信機200、受信機3F,3Mの互いの位置に基づく幾何学的距離ρを算出する。そして、シュードライト送信機200からのL1信号が電離層を通過しないという事実をもとにこれらの量に関するダブルディファレンスを演算することにより、対流圏による項のみを分離抽出し、対流圏における大気の屈折率を算出するようにしている。
【0046】
すなわち本実施形態によれば、大気によりL1信号に生じる対流圏遅延量誤差を利用して、大気の高度方向の屈折率を知ることができる。通常であれば、大気の屈折率は各高度における気圧・相対湿度・温度などのデータがないと算出することができない。これに対し本実施形態によれば、PL送信機200から送出されるL1信号のキャリアC(あるいは擬似距離R)と、GPS衛星100から送出されるL1信号のキャリアC(あるいは擬似距離R)とを利用することのみによって、大気の屈折率を算出することができる。この場合、GPS衛星100はより高仰角に位置することが望ましい。
【0047】
乾燥大気による屈折率の高度ごとの値は、既知のモデルを使用して推定することができる。そのモデルと、本実施形態の手法により求めた屈折率との差を求めることにより、その空間地点の水蒸気により生じた屈折率を推定することができる。この水蒸気により生じた屈折率の効果を利用することにより、天気予報などの推定精度を向上させることが期待される。
【0048】
このように、対流圏内に設置されるPL送信機200からのL1信号と、GPS衛星100からのL1信号とを併せて利用することにより、大気の屈折率を3次元的に測定することが可能となる。この屈折率を知ることにより大気中の水蒸気量を推定することができ、気圧・温度・相対湿度を直接的に測定する必要なく、天気予報の精度向上に資することが可能となる。すなわち本実施形態によれば、ラジオゾンデなどを利用する必要無く、L1信号を受信して演算処理のみによって大気中の水蒸気量を知ることができるので、気象現象の解析、予測などをより簡易に実施することが可能になる。
【0049】
さらに、GPS衛星100からのL1信号と、PL送信機200からのL1信号とは、互いに同一の周波数帯および信号方式を採用している。よってPL送信機200からのL1信号に生じる対流圏遅延量誤差を、GPS衛星100から送出されるL1信号にそのまま当てはめることにより、GPSを利用した位置計測の精度をさらに向上させることが可能になる。すなわち、PL送信機200からのL1信号に生じる対流圏遅延量を、GPSにより精密測位を行う際の対流圏遅延量補正量として採用することで、精密測量の精度を向上させることができる。
【0050】
これらのことから本実施形態によれば、L1信号の大気による屈折率を簡易かつ高精度に測定できるようになり、これにより気象現象の解析に資することが可能になる。また本実施形態によれば、L1信号への対流圏による遅延量を簡易かつ高精度に測定できるようになり、これによりGPSによる位置情報を補正してより正確な位置情報を得ることが可能になる。
【0051】
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係わる測位システムの第2の実施の形態を示すシステム構成図である。このシステムは、GPS衛星100と、対流圏内を飛行する航空機などに搭載される機上装置400と、地上システム500とを備える。
【0052】
GPS衛星100からのL1信号は、機上装置400のGPS受信アンテナ5により受信され、分配器6により2分配されてPL送信機1と混合器7とに入力される。PL送信機1は基準クロック源2からの基準クロックに基づいて動作し、GPS衛星100からのL1信号を利用して新たなL1信号を生成する。PL送信機1からのL1信号は分配器3およびPL送信アンテナ4を介して放射される。混合器7は、GPS衛星100からのL1信号とPL送信機1からのL1信号とを混合して、GPS・PL受信機8に入力する。GPS・PL受信機8は受信したL1信号をもとに種々の解析処理を実施する。これにより得られたGPS衛星コード・位相情報、PLコード位相情報などのデータは、データリンク用送信機9によりデータリンクアンテナ10を介して地上システム500に伝達される。
【0053】
地上システム500は、GPS・PL用受信機14,16,18,20を備える。GPS・PL用受信機14,16,18,20のアンテナ15,17,19,21の位置は、予め正確に測量される。
【0054】
GPS・PL用受信機14,16,18,20は、いずれも基準クロック源22から供給される基準クロックに基づき動作し、GPS衛星100からのL1信号とPL送信機1からのL1信号とを個別に受信する。GPS・PL用受信機14,16,18,20において取得されたデータは処理装置13に与えられる。また、機上装置400から送出されたデータはデータリンクアンテナ11を備えるデータリンク用受信機12で受信され、処理装置13に与えられる。処理装置13は与えられた種々のデータをもとに解析処理を行う。
【0055】
図5は、図4に示される測位システムを模式的に示す図である。GPS衛星100から送出されるL1信号は、電離層を介して機上装置400の受信機8、および地上システム500のGPS・PL用受信機14,16,18,20により受信される。一方、機上装置400のPL送信機1から送出されるL1信号は、機上装置400自身の受信機8と、地上システム500のGPS・PL用受信機14,16,18,20とにおいて、いずれも電離層を経由することなく受信される。
【0056】
さて、図5において、GPS衛星100からのL1信号に基づくGPS・PL用受信機14,16,18,20における擬似距離Rgpsは、次式(15)で表される。またPL送信機1からのL1信号に基づくGPS・PL用受信機14,16,18,20における擬似距離Rplは、次式(16)で表される。
【0057】
【数10】
【0058】
式(15)および式(16)において、ρgpsは、GPS衛星100の位置と各受信機14,16,18,20の位置とから算出される両者間の距離を示す。ρplは、PL送信機1の位置と各受信機14,16,18,20の位置とから算出される両者間の距離を示す。なおPL送信機1の正確な位置は、PL送信機1からのL1信号に基づく各受信機14,16,18,20における測位データと、各受信機14,16,18,20の位置とから逆算される。dtrは、各受信機14,16,18,20のクロックオフセットを示す。dtgpsは、GPS衛星100のクロックオフセットを示す。dtplは、PL送信機1のクロックオフセットを示す。depは、エフェメリス誤差を示す。dionは、電離層遅延量を示す。dtrpは、対流圏遅延量を示す。dMは、マルチパス誤差を示す。εは、雑音などによる誤差を示す。
式(16)に示されるdtrpが、PL送信機1から送出されるL1信号に生じる対流圏遅延量誤差である。またdepは、ρplに含まれる誤差項を示す。
【0059】
一方、機上装置400におけるGPS・PL受信機8で受信されるPL送信機1のコードレンジは次式(17)で表される。
【0060】
【数11】
【0061】
式(17)において、ρ′avi_plは、PL送信機1の出力端からGPS・PL受信機8の入力端までのケーブル長に相当する。そこで、このケーブル長を予め測定しておくことにより、機上のGPS・PL受信機8で受信されたPL送信機1のコードレンジ(以下機上コードレンジと称する)を補正をすることができる。ケーブル長をLとすると、補正後の機上コードレンジR′avi_plは次式(18)のように表される。
【0062】
【数12】
【0063】
式(18)のR′avi_plは、PL送信機1のクロックオフセットに相当する。機上コードレンジは、データリンク用送信機9により地上システム500のデータリンク用受信機12に伝送される。その値と、予め計測されたケーブル長Lとに基づいて、処理装置13により式(18)が演算される。
【0064】
一方、式(16)に示されるdtrはGPS・PL用受信機14,16,18,20のクロックオフセットを示すが、各受信機に同じ基準クロック源22からの基準クロックを与えているため、各受信機14,16,18,20において同じ値を示す。処理装置13により各受信機14,16,18,20を測位することで各受信機14,16,18,20のクロックオフセットを得ることができ、その平均値を式(16)式のクロックオフセット推定値dtrとする。
【0065】
以上のようにして算出されたPL送信機1のクロックオフセットR′avi_plと、地上受信機のクロックオフセットdtrと、PL送信機1の位置と、地上アンテナ15,17,19,21の位置との差から求めた距離(ρ′pl)とにより式(16)を補正すると、次式(19)が得られる。
【0066】
【数13】
【0067】
式(19)は、ある時刻における大気の状態に係わる量である。機上装置400が対流圏内を移動し、かつ測位データの測定間隔が十分に短いとすると、depおよびdMはほぼ一定値とみなせる。このことから、時刻をtとし、計測インデックスをkで示して式(19)の差分をとると、次式(20)が得られる。
【0068】
【数14】
【0069】
式(20)において、tk+1はtkの次の計測時刻を示す。
【0070】
さて、第1の実施形態で述べたように、L1信号が大気により被る遅延量dtrpは、大気の屈折率NRを距離に対して積分し、次式(21)のように示される。
【0071】
【数15】
【0072】
式(21)において、sはPL送信アンテナ4から地上のアンテナ15,17,19,21までのL1信号の通過経路に相当し、機上装置400の移動につれて変化する。式(20)および式(21)から、次式(22)が導かれる。
【0073】
【数16】
【0074】
図6は、図4の機上装置400の移動に伴う観測量の変化を示す模式図である。図6において、機上装置400のPL送信機1の位置は、地上システム500の処理装置13で算出される。よって各時刻におけるPL送信機1の高度Htを求めることができる。データ収集を短い時間間隔で実施し、地上受信機14,16,18,20ごとに式(22)の値を求めて平均することにより、機上装置400の移動に伴う大気の屈折率NRを求めることが可能となる。このようにして算出される屈折率NRは、機上装置400の通過経路に沿うものとなり、従って本実施形態によれば、大気の屈折率の3次元的な分布を知ることが可能となる。
【0075】
このように本実施形態では、移動体側にPL送信機1を設置し、地上側に設置される複数のGPS・PL用受信機14,16,18,20により、このPL送信機1からのL1信号と、GPS衛星100からのL1信号とを受信する。そして、各受信機14,16,18,20における測位データとその精密測量位置とからPL送信機1の位置を逆測位し、そのデータと各受信機14,16,18,20における擬似距離データとから、PL送信機の移動経路に沿った大気の屈折率を算出するようにしている。
【0076】
すなわち本実施形態においても上記第1の実施形態と同様に、温度、湿度、気圧などのデータを直接計測する必要無く、大気の屈折率や、ひいては大気中の水蒸気量を見積もることが可能になる。これにより気象現象の解析に資することが可能となる。またL1信号の対流圏における遅延量を見積もることができるので、これをもとにGPS測位の精度を向上させることが可能となる。
【0077】
さらに本実施形態においては、地上側に複数の受信機14,16,18,20を設置しているため、各受信機14,16,18,20ごとに機上装置400を見通す経路に係わる大気の状態を知ることができる。すなわち、受信機14と機上装置400とを結ぶ経路の屈折率と、受信機16と機上装置400とを結ぶ経路の屈折率と、受信機18と機上装置400とを結ぶ経路の屈折率と、受信機20と機上装置400とを結ぶ経路の屈折率とを、時間の経過とともにそれぞれ個別縫い算出することが可能となる。従って地上側受信機の数に応じた観測データを取得でき、より広いエリアにおける大気の状態を観測することが可能になる。
【0078】
【発明の効果】
以上詳しく述べたように本発明によれば、測位用電波の対流圏遅延量を精度良く測定できるようになり、これにより正確な測位データを得られる測位システムを提供できる。また本発明によれば、対流圏遅延量を簡易かつ高精度に測定できるようになり、これにより気象現象の解析に資する対流圏特性算出システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる測位システムの第1の実施の形態を示すシステム構成図。
【図2】 図1に示される測位システムを模式的に示す図。
【図3】 図2の移動体に搭載される受信機3Mの移動に伴うダブルディファレンスの変化を模式的に示す図。
【図4】 本発明に係わる測位システムの第2の実施の形態を示すシステム構成図。
【図5】 図4に示される測位システムを模式的に示す図。
【図6】 図4の機上装置400の移動に伴う観測量の変化を示す模式図。
【符号の説明】
1…シュードライト(PL)送信機、2…基準クロック源、3F…地上基準局受信機、3M…地上受信機、3…分配器、4…PL送信アンテナ、5…GPS受信アンテナ、6…分配器、7…混合器、8…受信機、9…データリンク用送信機、10,11…データリンクアンテナ、12…データリンク用受信機、13…処理装置、14,16,18,20…GPS・PL用受信機、15,17…アンテナ、22…基準クロック源、100…GPS衛星、200…シュードライト(PL)送信機、201…送信アンテナ、300…受信機、400…機上装置、500…地上システム
Claims (2)
- 複数の測位衛星から電離層および対流圏を介して放射される測位用電波に含まれる測位情報を利用して受信装置の測位データを得る測位システムを利用する対流圏特性算出システムであって、
前記対流圏内を移動する移動体に搭載され前記測位情報を含む測位用電波を放射する電波源と、
前記対流圏内の互いに異なる位置に精密測位されて配置され、前記測位衛星および電波源から放射される測位用電波を受信して自己の測位データを得る複数の第1受信装置と、
前記移動体に搭載され、前記電波源から放射される測位用電波を受信して自己の測位データを得る第2受信装置と、
前記測位衛星から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置の測位データと、前記電波源から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置および第2受信装置の測位データとに基づいて、前記測位用電波の前記対流圏における屈折率を算出する演算手段とを具備することを特徴とする対流圏特性算出システム。 - 前記演算手段は、
前記電波源と特定の第1受信装置との間の擬似距離をR plとし、
前記電波源から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置の測位データから逆算される前記電波源の位置と、前記特定の第1受信装置の位置とから算出される両者間の距離をρ′ plとし、
前記測位衛星から受信される測位用電波に基づく前記複数の第1受信装置の測位データに含まれる当該複数の第1受信装置のクロックオフセットの平均値を dtr とし、
前記電波源から受信される測位用電波に基づく前記第2受信装置の測位データを、当該電波源と第2受信装置との間の距離の計測値をもとに補正した補正値をR′としたとき、
dTrppl =R pl −ρ′ pl − dtr −R′
なる式に基づき算出される dTrppl の時間的変化から前記測位用電波の前記対流圏における屈折率を算出することを特徴とする請求項1に記載の対流圏特性算出システム。
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