JP3882919B2 - 薄膜熱電対およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は薄膜熱電対およびその製造方法、詳しくは電子部品の微小領域での温度測定に用いられる三次元構造の薄膜熱電対に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の微細加工技術の進歩はめざましく、CPUをはじめとする電子部品は、微細化の一途をたどっている。電子部品の発熱問題が深刻化して久しく、特にサブミクロンオーダーにおける温度測定は、重要な課題の一つとされてきた。電子機器の内部での局所的な発熱を計測することは、素子の安定動作を実現するためにも必要不可欠である。
微小領域の温度分布計測にあたり、測定対象が熱輻射により発せられる赤外線を計測する遠視野的な手法が一般的である。しかしながら、赤外線顕微鏡の分解能は、測定対象となる赤外線の波長から決まる。このため、サブミクロン領域の温度分布を測定することは原理上不可能である。
一方、原子間力顕微鏡(AFM)の探針先端に、薄膜型温度センサを取り付けた走査型熱顕微鏡(SThM)が提案され、サブミクロンオーダーでの温度分布像が得られている。
しかし、このSThMと測定対象物の間には、薄い水の吸着層が熱抵抗層となる。このために、実際の温度よりも測定結果は小さくなる傾向があり、その差は無視できない。
【0003】
一方、従来の線状導電体からなる熱電対に代わり、薄膜で形成された薄膜熱電対の提案がなされている。従来の線状体導線からなる熱電対には、接合部の強度が低下したり、接合部が測定部から剥がれたりするという問題が存在していた。これに対して、薄膜熱電対には上記問題は存在しない。また、薄膜熱電対は、自身の熱容量が小さい。このため測定対象場の温度分布を大きく乱すことなく測定できること、また、時間応答性に優れていることが挙げられる。さらに、薄膜熱電対の形成は、微細加工技術を基礎として行われる。このため、従来の加工技術をそのまま応用して、薄膜熱電対を作製することが比較的容易である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
微小領域の温度分布を測定するにあたり、複数の測定対象の温度が同時に測定できれば便利である。
また、薄膜熱電対による温度測定に先立って、薄膜熱電対が実用できるか否かの確認を行う必要がある。薄膜熱電対の熱起電力は、小さい値を示す。この小さい熱起電力から温度測定に実用できるか否かを確認する方法が、これまで確立されていなかった。
【0005】
【発明の目的】
この発明は、上記問題点を改善するためになされたもので、微細領域の実温度の測定ができ、また、微小領域の温度分布が同時に測定できる薄膜熱電対およびその製造方法を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、異種素材製の一対の薄膜が、所定間隔離間した2つの位置同士でそれぞれ電気的に接続され、各接続位置間の電位差に基づいて接続位置間の温度差を測定する薄膜熱電対であって、絶縁性の基板の全表面上に被覆された所定厚さを有する第1の金属薄膜と、上記第1の金属薄膜上に被着され、複数個の孔が任意の位置に形成された絶縁膜と、上記孔から所定間隔離間した位置で上記第1の金属薄膜と電気的に接続され、上記絶縁膜上であって、上記孔に対応して複数個の帯状部分にパターニングされた第2の金属薄膜とを備えた薄膜熱電対である。
一般的に、熱電対は、一対の異なる金属などの両端を電気的に接続して、閉回路を作る。この両端に温度差を与えると、回路中に電流が流れる。この回路に電流を発生させる電力を熱起電力という。この熱起電力の極性と大きさは、金属などの材質と、両端の接合点の温度差とにより決定される。
異種素材としては、金属、合金、半導体が挙げられる。金属は、例えば、タングステン、ニッケル、銅、白金、金のいずれかである。
これらの金属を用いて3次元構造の薄膜熱電対を形成するために、絶縁層を用いる。絶縁層は、例えば、SiO層が用いられる。SiO層は、シリコンウェーハを用いてその表面に形成する。
SiO層の一面には、例えば、ニッケル薄膜が配設される。SiO層の他面には、例えば、タングステン薄膜が配設される。
【0007】
薄膜熱電対の一対の薄膜のうち、一方の薄膜を用いて、一つの共通電極を構成する。例えば、ニッケル薄膜で共通電極を形成する。測定接点が多点構造の薄膜熱電対を得るために、他方の薄膜は帯状部分を複数設ける。例えば、帯状のタングステン薄膜を複数設ける。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記一対の薄膜が、タングステン、ニッケル、銅、白金、金のいずれかである請求項1に記載の薄膜熱電対である。
薄膜熱電対を構成する上記一対の薄膜は、タングステン、ニッケル、銅、白金、金のいずれかである。薄膜熱電対に発生する熱起電力の大きさは、これらの薄膜の組み合わせにより異なる。
【0009】
上記薄膜熱電対は、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリエーテルエーテルケトンのいずれかからなる樹脂製フィルムに設けられた薄膜熱電対である。
薄膜熱電対を測定対象に配設するために、樹脂製フィルムに薄膜熱電対を設ける。樹脂製フィルムは、貼り付け可能とする。樹脂製フィルムには、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチックを用いる。これらの樹脂フィルムは、機械的強度が高く、耐熱性にもすぐれている。樹脂製フィルムの厚さは100〜200μmである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、絶縁性の基板の全表面上に第1の金属薄膜を被覆する工程と、この第1の金属薄膜の上に所定厚さの絶縁膜を被着する工程と、上記絶縁膜の任意の位置に複数個の孔を形成し、各孔において上記第1の金属薄膜を露出する工程と、上記絶縁膜の上に上記第1の金属薄膜とは異なる第2の金属薄膜を被覆するとともに、この第2の金属薄膜を上記複数個の孔を介して上記第1の金属薄膜に電気的に接続する工程と、上記第2の金属薄膜を上記複数個の各孔に対応して複数個の帯状部分にパターニングする工程と、上記第1の金属薄膜と上記第2の金属薄膜との接続部である上記複数個の孔とは所定間隔離間した位置において第1の金属薄膜と第2の金属薄膜とを電気的に接続する工程と含む薄膜熱電対の製造方法である。
第1の金属薄膜および第2の金属薄膜の形成方法は、蒸着以外にもスパッタ、CVDなど各種方法を採用してもよい。また、孔明きの絶縁膜は、絶縁膜にイオン集束ビーム装置を用いてスルーホールを形成してもよいし、写真製版工程とエッチング工程によりスルーホールを形成してもよい。
【0011】
【作用】
請求項1に記載の薄膜熱電対にあっては、一対の薄膜のうちの一方の薄膜は、絶縁層の一面に配設する。残りの他方の薄膜は、絶縁層の他面にそれぞれ配設する。例えば、絶縁層をSiO層とし、このSiO層の一面には、ニッケル薄膜を配設する。SiO層の他面には、タングステン薄膜を配設する。これにより、3次元の構造を有する薄膜熱電対が形成される。また、一方の薄膜を共通電極とし、他方の薄膜を帯状に形成し、多点構造とする薄膜熱電対が構成される。これにより、微小領域の温度および温度分布を測定することができる。薄膜熱電対は、多点温度センサーとして、レーザ出力の温度分布の測定・微少流量センサーに応用することができる。
【0012】
また、薄膜熱電対の一対の薄膜うち、一方の薄膜で一つの共通電極を構成する。例えば、ニッケル薄膜で共通電極を形成する。他方の薄膜は、帯状部分を複数設ける。例えば、帯状のタングステン薄膜を複数設ける。これにより、3次元構造を有するとともに、一つの薄膜熱電対で測定接点を複数有する薄膜熱電対を作製することができる。
【0013】
請求項2に記載の薄膜熱電対にあっては、上記一対の薄膜が、タングステン、ニッケル、銅、白金、金のいずれかである。薄膜熱電対に発生する熱起電力の大きさは、これらの薄膜の材質によって決定される。
【0014】
薄膜熱電対にあっては、従来の線状導電体からなる熱電対は、接合部の強度の低下または接合部が測定部から剥がれやすいという問題がある。そこで、ポリイミドなどの樹脂製フィルムに薄膜熱電対を設ける。この樹脂製フィルムは貼り付け可能とする。樹脂製フィルムは、機械的強度が高く、耐熱性にもすぐれている。これにより、測定対象に薄膜熱電対を貼り付けて固定し測温できる。
【0015】
また、この種の薄膜熱電対にあっては、基準接点と測定接点とを有する薄膜熱電対を用いて温度測定を行う。基準接点は、定温、例えば0℃に保持する。また、薄膜熱電対の下方にマイクロヒータを位置させる。測定接点の温度をマイクロヒータにより変化させる。これにより、この薄膜熱電対による測定温度とその電位差との関係を示す標準資料、すなわち、測定温度と電位差との関係を示す標準直線が求められる。
その後、この標準資料に基づいて、測温対象物に薄膜熱電対を配設し、熱起電力を測定するとともに温度を決定する。この測定方法により、例えば、薄膜型という特殊な構造または不純物の混入によって、これまで報告されている物性値が利用できない場合においても、熱電対として実用できるか否かの確認が行える。
【0016】
また、上記標準資料は測定温度と電位差との関係を示す標準直線、すなわち、薄膜熱電対に生じる熱起電力と温度の変化の差との関係が比例関係であることが求められる。
【0017】
請求項3に記載の薄膜熱電対の製造方法にあっては、例えば、SiO層を形成したシリコンウェーハ上にニッケル薄膜を積層する。次いで、スルーホールを形成したSiO層を被覆する。さらにこの上に、帯状のタングステン薄膜を積層する。これにより、ナノサイズの3次元の構造を持つ薄膜熱電対を作製することができる。
【0018】
また、例えばタングステンの薄膜をくし歯状に形成する。これにより、一つの薄膜熱電対で測定接点を複数有する薄膜熱電対を作製することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の第1の実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。
本実施形態に係る薄膜熱電対10は、図1に示すように、絶縁層である一層目のSiO層14aと、このSiO層14aの上に積層されたニッケル薄膜12と、さらにこのニッケル薄膜12の上に積層された二層目のSiO層14bと、SiO層14bの上に積層された帯状のタングステン薄膜11とを備えている。帯状のタングステン薄膜は、くし歯状に形成されている。二層目のSiO層14bには、スルーホール16が複数形成されている。タングステン薄膜11は、このスルーホール16および酸化膜の上から蒸着される。これにより、図2に示すように、ニッケル薄膜12とタングステン薄膜11との接合部を多点とし、3次元の構造を有する薄膜熱電対10が形成される。ニッケル薄膜とタングステン薄膜の接合部の面積は、300nm×300nmである。
【0020】
次に、この3次元の構造を有する薄膜熱電対10の製造方法を説明する。
まず、図示しないシリコンウェーハを準備する。図3(a)に示すように、シリコンウェーハを用いて、厚さ200nmのSiO層14aの絶縁層を酸化炉で形成する。次いで、図3(b)に示すように、このSiO層14aの上に、共通電極である厚さ50nmのニッケル薄膜12を蒸着する。さらに、図3(c)に示すように、この上に厚さ300nmの二層目のSiO層14bを積層する。その後、図示しないナノ微細加工可能なイオン集束ビーム装置(SII製 JFIB−2300)を利用して、図3(d)に示すように、二層目のSiO層14bに複数のスルーホール16を形成する。続いて、図3(e)に示すように、ニッケル薄膜12とは異種の金属で厚さ200nmのタングステン薄膜11を二層目のSiO層14bの上に形成する。
【0021】
この薄膜熱電対10の測温方法について、図1を参照して説明する。
まず、三次元の薄膜熱電対10を準備する。この薄膜熱電対10のニッケル薄膜12から導線26を引き出す。また、複数の帯状のタングステン薄膜11からも導線27a〜27dを引き出す。ニッケル薄膜側の導線27a〜27dと、タングステン薄膜側の導線26との間に電圧計24を配設する。また、タングステン薄膜11側の導線27a〜27dと27eとの間に、スイッチ回路23を接続する。
薄膜熱電対10を測定対象に配置する。電圧計24を用いて、測定接点の熱起電力を測定する。この熱起電力の差から温度値が決定される。
薄膜熱電対10には、測定接点を複数備えており、スイッチ回路23の切り換えにより、測定接点の温度を測定することができる。これにより、一つの薄膜熱電対で微小領域の温度分布を測定することができる。例えば、レーザの出力の温度分布の測定に用いる。熱電対の大きさに比べ、レーザ径のほうが十分に大きい。これにより、レーザ出力の温度分布をより精密に測定することができる。
【0022】
次に、この発明の第2の実施形態を図4〜図6を参照して説明する。本実施形態は、薄膜熱電対10を用いた温度測定方法について説明する。
まず、一対の異種金属からなる薄膜を準備し、これらの金属薄膜を組み合わせて、薄膜熱電対10を形成する。この場合、金属には、W、Ni、Cu、Pt、Auなどを用いる。
図4(b)に示すように、例えば、ニッケル薄膜12とタングステン薄膜11とを接合させて、薄膜熱電対10を形成する。この薄膜熱電対10を構成する各素子(薄膜)は、所定厚さのガラス基板21上に、ニッケル薄膜12とタングステン薄膜11とが、十字形状にその中央が接合して形成される。薄膜熱電対10の十字の交差部は、測定接点Thotとなる。また、十字の金属薄膜の周辺電極は、基準接点Tcoldとなる。
【0023】
上記薄膜熱電対10の各素子の作製方法は、図4(a)に示すように、まず、ガラス基板21を準備する。次いで、このガラス基板21に金属パターンを形成するハードマスク20を準備する。このハードマスク20は、厚さ2mmのSUS304板にホットワイヤーでくり抜いたテンプレートである。このハードマスク20を用いて、ガラス基板21上にニッケル薄膜12を蒸着する。次に、ハードマスク20またはガラス基板21のいずれかを90°回転させる。そして、タングステン薄膜11をニッケル薄膜12パターンの上に蒸着させる。
上記の作製方法で作製した薄膜熱電対10の素子で、薄膜が交差する部分でThot、周辺の電極を基準接点Tcoldとして熱起電力を測定する。なお、薄膜形成方法は蒸着以外にもスパッタ、CVDなど各種方法を採用できる。
【0024】
次に、この薄膜熱電対10を用いた温度測定方法について説明する。
図5に示すように、測定装置は、真空チャンバー22と、データロガー25とを有する。真空チャンバー22には、薄膜熱電対10と、マイクロヒータ13とを配設している。データロガー25は、薄膜熱電対10から得られた熱電対の測温結果を表示する。上記方法により作製された薄膜熱電対10は、この薄膜熱電対10の下方に、マイクロヒータ13を配設している。マイクロヒータ13は、微小領域を熱するものである。薄膜熱電対10の素子の金属のクロス部に電圧計24を配設する。また、周辺電極にも電圧計24を配設する。これらの電圧計24を用いて、薄膜が交差する部分のThot、周辺の電極である基準接点のTcoldの熱起電力を測定する。
マイクロヒータ13により薄膜熱電対10を熱すると、ThotとTcoldとの間に熱起電力が生じる。この熱起電力と、ThotとTcoldとの電圧の差との関係が比例関係であれば、温度計測するのに実用上問題ない。二つの金属の組み合わせを、Au−Pt、Cu−Ni、W−Niについて行った。これらの組み合わせによる、マイクロヒータ13による薄膜熱電対10の温度測定結果を図6に示す。これらのグラフから温度差と熱起電力との関係が比例関係であることがわかる。
また、この結果を計算式から求める。熱起電力の発生は、物質内における電子の拡散であり、それらをボルツマン方程式で書き記すことにより、以下の熱起電力Sが求められる。
【0025】
【数1】
Figure 0003882919
【0026】
kはボルツマン定数、Tは温度、eは電荷、Eはフェルミレベル、Eは電子のエネルギー、τは電子の衝突緩和時間、Bは比例定数、mは金属の物質や形状に影響を受けるパラメータである。これにより、熱起電力Sは、温度Tと比例の関係であることがわかる。
以上の結果、異種の薄膜熱電対10を用いて温度測定することにより、微小領域の温度の測定に実用できることがわかる。
【0027】
次に、この薄膜熱電対10の応答性について説明する。薄膜熱電対は、微小な構造であり熱容量が小さい。熱容量が小さいと、時間応答性が向上する。上記作製した熱電対、例えば、Au−Ptの薄膜熱電対の応答時間は、30nsである。
この結果、薄膜型熱電対の熱容量を考慮すると、薄膜熱電対の応答時間は、測定器の応答に制限があるため、測定器の分解能以下の極めて早い時間である結果が得られた。
【0028】
さらに、この発明の第3の実施形態を、図7および図8を参照して説明する。
本実施形態では、マイクロヒータ13を中心にした平面的な温度分布について、実験と計算式による考察を行った。
まず、計算式において、マイクロヒータ13に電力を投入する。マイクロヒータ13で加熱した熱のほとんどが固定中に逃げていくことを考慮して、熱量の釣り合いを考えると、熱流束qは温度勾配に比例し、次式となる。
【0029】
【数2】
Figure 0003882919
【0030】
マイクロヒータ13は、基板表面に作製するので、空気へ逃げる熱は少ないと仮定して、半球分の熱の流れを考慮して、マイクロヒータ13で加えた熱量Qは、次式となる。
【0031】
【数3】
Figure 0003882919
【0032】
ここで熱伝導率λとした。無限遠方(電極)の温度をT0とすると、マイクロヒータ13から位置rでの温度Tは、次式となる。
【0033】
【数4】
Figure 0003882919
【0034】
したがって、測定される熱起電力に対応する、電極と温度測定部の温度差ΔTは、次式となる。
【0035】
【数5】
Figure 0003882919
【0036】
次に、マイクロヒータ13を中心にした平面的な温度分布について、実験による考察を行った。まず、ポリイミドフィルムなどの樹脂製フィルム15上に薄膜熱電対10を設ける。従来の線状導電体の熱電対は、接合部の強度が低下したり、接合部が測定部から剥がれたりするという問題がある。これに対し、樹脂製フィルムは、機械的強度にすぐれ、耐熱性にすぐれている。この樹脂製フィルム15を貼り付け式とし、測定対象に接合させる。これにより、測定対象から薄膜熱電対が剥がれたりすることはない。
図7に示すように、マイクロヒータ13を中心に、所定間隔をおいて、樹脂製フィルム15上に設けた薄膜熱電対10を貼り付ける。これらの薄膜熱電対10を用いて、マイクロヒータ13の熱30による温度分布を測定する。
温度測定の実験結果と、上記計算により求めた計算結果をフィッテングさせる。この結果を図8のグラフに示す。なお、マイクロヒータ13の熱量を15mW、30mW、45mWに変化させて実験を行った。
また、図7において、マイクロヒータ13から最も近接した薄膜熱電対10を用いて、熱流束(ヒータからの加熱量をヒータ面積で割る)と熱起電力との関係を測定した。この結果を、図9に示す。この結果から、薄膜熱電対は、熱流束Iが測定する熱流束センサとしても使用することができる。例えば、レーザ強度の高分解能測定に用いることができる。
【0037】
【発明の効果】
この発明によれば、一対の薄膜のうちの一方の薄膜は、絶縁層の一面に配設する。残りの他方の薄膜は、絶縁層の他面にそれぞれ配設する。これにより、3次元の構造をもつ薄膜熱電対を形成することができる。また、一方の薄膜を共通電極とし、他方の薄膜を帯状パターンを複数形成することで、測定接点が多点である薄膜熱電対を構成することができる。これにより、微小領域の温度および温度分布を測定することができる。例えば、多点温度センサーとして、レーザ出力の温度分布の測定ができる。
また、基準接点と測定接点とを有する薄膜熱電対を用いて、温度測定を行う。基準接点は、定温、例えば0℃に保持する。薄膜熱電対の下方には、マイクロヒータを配置する。測定接点の温度をマイクロヒータにより変化させる。これにより、この薄膜熱電対による測定温度とその電位差との関係を示す標準資料、すなわち、測定温度と電位差との関係を示す標準直線が求められる。
その後、この標準資料に基づいて、測温対象物に薄膜熱電対を配設し、熱起電力を測定するとともに温度を決定する。
さらに、ポリイミドなどの樹脂製フィルムに薄膜熱電対を装着し、このフィルムを貼り付け可能にする。樹脂製フィルムは、機械的強度が高く、耐熱性にもすぐれている。これにより、測定対象に薄膜熱電対を貼り付けて固定し、測温することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施形態に係る薄膜熱電対の構成を示す斜視図である。
【図2】 図2のX―X線に沿う断面図である。
【図3】 この発明の第1の実施形態に係る薄膜熱電対の製造方法のフロー図である。
【図4】 この発明の第2の実施形態に係る薄膜熱電対の構成および製造方法を示す斜視図である。
【図5】 この発明の第2の実施形態に係る薄膜熱電対の温度測定を行う装置の概略図である。
【図6】 この発明の第2の実施形態に係る薄膜熱電対の温度測定結果を示すグラフである。
(a)は、Au−Ptで形成した薄膜熱電対の温度測定結果のグラフである。
(b)は、Cu−Niで形成した薄膜熱電対の温度測定結果のグラフである。
(c)は、W−Niで形成した薄膜熱電対の温度測定結果のグラフである。
【図7】 この発明の第3の実施形態に係る薄膜熱電対の一実施例を示す断面図である。
【図8】 この発明の第3の実施形態に係る薄膜熱電対の温度測定結果を示すグラフである。
【図9】 この発明の第3の実施形態に係る薄膜熱電対の熱流束と熱起電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 薄膜熱電対、
11 薄膜(タングステン)、
12 薄膜(ニッケル)、
13 マイクロヒータ、
14 絶縁層(SiO)、
15 ポリイミドフィルム、
16 孔(スルーホール)。

Claims (3)

  1. 異種素材製の一対の薄膜が、所定間隔離間した2つの位置同士でそれぞれ電気的に接続され、各接続位置間の電位差に基づいて接続位置間の温度差を測定する薄膜熱電対であって、
    絶縁性の基板の全表面上に被覆された所定厚さを有する第1の金属薄膜と、
    上記第1の金属薄膜上に被着され、複数個の孔が任意の位置に形成された絶縁膜と、
    上記孔から所定間隔離間した位置で上記第1の金属薄膜と電気的に接続され、上記絶縁膜上であって、上記孔に対応して複数個の帯状部分にパターニングされた第2の金属薄膜とを備えた薄膜熱電対。
  2. 上記一対の薄膜が、タングステン、ニッケル、銅、白金、金のいずれかである請求項1に記載の薄膜熱電対。
  3. 絶縁性の基板の全表面上に第1の金属薄膜を被覆する工程と、
    この第1の金属薄膜の上に所定厚さの絶縁膜を被着する工程と、
    上記絶縁膜の任意の位置に複数個の孔を形成し、各孔において上記第1の金属薄膜を露出する工程と、
    上記絶縁膜の上に上記第1の金属薄膜とは異なる第2の金属薄膜を被覆するとともに、この第2の金属薄膜を上記複数個の孔を介して上記第1の金属薄膜に電気的に接続する工程と、
    上記第2の金属薄膜を上記複数個の各孔に対応して複数個の帯状部分にパターニングする工程と、
    上記第1の金属薄膜と上記第2の金属薄膜との接続部である上記複数個の孔とは所定間隔離間した位置において第1の金属薄膜と第2の金属薄膜とを電気的に接続する工程と含む薄膜熱電対の製造方法。
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