JP3880735B2 - 貫通孔内面の精度測定方法及びそれを用いた口金の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒体等の貫通孔を有する構造体の孔内面の精度測定方法に係り、特に、ハニカム体を押出成形するに際して用いる成形用口金の貫通孔内面の粗さ等の評価、測定に好ましく適用することができる貫通孔内面の精度測定方法及びそれを用いた口金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハニカム体の製造工程のうち、成形工程においては、欠陥なくハニカム体を成形するために、押し出し口金の各種寸法を測定、管理している。その中でも、成形時にハニカム体の原料たる粘土が通過する部分の寸法管理は極めて重要である。
図9(a)(b)(c)は押し出し口金の一例を示すもので、口金10は、口金後面11aから口金前面11bに向かって互いに独立して形成される複数の開孔、例えば円孔12を有し、各円孔12は所定の深さに穿孔されている。一方、口金10は、口金前面11bから口金後面11aに向かって所定の深さを有する成形スリット13を有し、この成形スリット13は押し出されるハニカム体の断面形状に対応した断面形状に形成されている。そして上記円孔12と成形スリット13は一体に連結成形されて、当該口金10を形成している。
【0003】
このような構成を有するハニカム体の押し出し口金については、実際に成形加工を実施するに先だって、粘土の流動性・成形性を評価する必要があるため、直接的に口金に粘土を通して不具合の有無を確認している。
すなわち、押し出し口金は、口金を加工後、焼き入れを行い、次いで一旦押出確認を行った後、口金の円孔及びスリットの内面を修正加工することを実施している。
ここで、押出確認を行い、コーティングなどの修正加工を施した後の再調整は、口金の円孔及びスリットの内面に施したコーティングを剥がさなければならず、更に、再びコーティングすることが必要であり、作業が繁雑で、手間がかかり、その結果、コストの上昇を招いていた。
【0004】
一方、近年になり、ハニカム体はますます薄壁化しており、それに伴って、口金はより高精度な寸法管理が求められるようになってきた。
そこで、本発明者は鋭意検討を行った結果、粘土の流動性に対して口金の円孔及びスリットの内面の表面粗さが大きな相関性を有することを見出すとともに、表面粗さの測定にテレセントリック光学系を用い、得られた画像を画像処理技術を利用して、流動性の指標として定量化し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、押し出し口金の如き貫通孔を有する構造体の該貫通孔内面の精度を、より高精度かつ定量的に評価することができる貫通孔内面の精度測定方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、口金の製造に際し、口金における粘土の流動性・成形性をより高精度かつ定量的に評価することにより、押出確認工程を省略することができる口金の製造方法を提供することにある。換言すれば、口金の加工精度を粘土を押出すことなく短時間に的確に確認することができる口金の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、貫通孔を有する構造体に対して散乱光を照射し、該構造体の貫通孔内部を反射しながら通過した通過光をテレセントリック光学系を用いて画像を得、その画像を画像処理技術によって画像解析することにより、貫通孔内面の精度を測定することを特徴とする貫通孔内面の精度測定方法が提供される。
本発明の測定方法は、貫通孔を有する構造体がハニカム体を押出成形するに際して用いる成形用口金であり、貫通孔内面の精度が当該孔内面の表面粗さであるものに、好ましく適用することができる。
また、本発明によれば、口金用素材に穴加工及びスリット加工を施した後、適宜焼き入れ処理をし、次いで当該穴及びスリットに対して、請求項2記載の測定方法を適用して、当該穴及びスリットの内面の表面粗さを測定することにより、押出確認工程及び修正加工工程なしに、コーティング処理するか、あるいは修正加工した後コーティング処理することを特徴とする口金の製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係る貫通孔内面の精度測定方法について、その測定原理から説明する。
図1に示すように、口金のような貫通孔を有する構造体1に対し、面光源として散乱板2を配置して、該散乱板2から散乱光を照射する。散乱板2は、散乱光が構造体1の貫通孔内部に入射できるような角度で配置される。構造体1の貫通孔内部に入射した光は、貫通孔の内面を反射しながら構造体1の貫通孔を通過する。このようにして、貫通孔内部を反射しながら通過した通過光をテレセントリック光学系3で受け、貫通孔内面の反射率の違いをCCD等で濃淡画像として取り込み、この濃淡画像を画像処理技術によって画像解析するのである。
【0008】
本発明において、貫通孔内部を反射しながら通過した光を受けるテレセントリック光学系は、図2に示すように、主光線(光軸外の物点から出てレンズ系の開口絞りの中心を通る光線)Aが焦点Bを通るように配置された光学系、すなわち瞳位置と焦点位置が一致している光学系である。
このテレセントリック光学系を用いると、結像に寄与する照明光線は物体(構造体)に対して鉛直のため、鏡面状の構造体であっても、安定して画像を取り込むことができる。また、本発明の対象のような、構造体の貫通孔内面の反射率の違い(光強度の相違)を濃淡画像として取り込むことができる。このテレセントリック光学系を用いる場合、構造体の像をCCD等のリニアダイオードアレイにて検出し、濃淡画像を得る。得られた濃淡画像は、構造体の貫通孔内面の表面粗さに対応しており、例えば、ハニカム体の場合には、多数の貫通孔内面の表面粗さの程度及び各貫通孔内面の粗さのバラツキを明確に判別することができるのである。そして、多数の貫通孔内面の表面粗さの程度及び各貫通孔内面の粗さのバラツキは、押し出し口金における粘土の流動性・成形性に関係していることから、上記のように得られた濃淡画像を解析することにより、コーティング後の再調整の工程を省略することが可能となるのである。
【0009】
次に、押し出し口金の製造方法の一例を概略説明する。
まず、超硬材料等の金属材料から口金用素材を切り出し、ドリル等により円孔の加工(穴加工)を行う。次いで、スリットの加工を放電加工又は研削加工により行う。次に、得られた口金に対して焼き入れ処理を施した後、従来においてはこの口金に粘土を通して修正加工を行っている。そして、当該修正加工の結果を踏まえて、口金の円孔及びスリットの内面をコーティング処理し、再調整を実施している。
【0010】
これに対して、本発明の測定方法を用いれば、口金に対する焼き入れ処理を施した後、口金の貫通孔内面の表面粗さの程度及び各貫通孔内面の粗さのバラツキを濃淡画像で得ることができるため、口金の円孔及びスリットの加工手段、例えば、ドリル加工、放電加工、又は研削加工等の各種加工手段のうち、いずれの加工手段が優れているかの判別を行うことができるとともに、多数の貫通孔のうちいずれの貫通孔についてコーティング処理、あるいは適宜の修正加工を行った後コーティング処理すべきかが判断可能となる。
従って、従来行っていた口金に対する押出確認及び/又はその修正加工などの工程を省略することができる。
【0011】
以下、本発明の測定方法を図3を用いて更に具体的に説明する。図3に示すように、口金のごとき貫通孔を有する構造体30を透明支持板31上に配置し、平面照明32から散乱板33を介して、該構造体30に散乱光を照射する。ここで、散乱板33からの散乱光は、構造体30の貫通孔内部に入射できるような角度、より具体的には、貫通孔内面に一度当たって貫通孔を通過するような角度で入射することが好ましい。構造体30の貫通孔内部に入射した光は、貫通孔の内面を反射しながら構造体30の貫通孔を通過する。
【0012】
こうして、構造体30の貫通孔内部を反射しながら通過した通過光を、テレセントリックレンズ34で受光し、CCDカメラ35を用いて濃淡画像として結像する。テレセントリックレンズ34によれば、構造体30の貫通孔内面の反射率の違いを濃淡画像として取り込むことができ、この濃淡画像をCCDカメラ35で検出・結像する。
上記のようにして得られた濃淡画像を、画像処理装置36を用いて画像処理する。
画像処理は、構造体30に存在する多数の貫通孔のそれぞれについて、重心位置を算出し、次いで、各貫通孔の輝度の平均値を算出し、これらの各貫通孔をランク分け(色分け)することにより行う。そして、その画像解析結果をパソコン37により、検査、評価する。
【0013】
図4は第1のドリル加工品の画像解析結果写真、図5は第2のドリル加工品の画像解析結果写真、図6は第3のドリル加工品の画像解析結果写真をそれぞれ示している。なお、これら第1〜第3のドリル加工品は、それぞれドリルの種類等を変えることにより加工の精度を変えたものである。
これらの写真から、図4に示す第1のドリル加工品は、表面粗さのバラツキが大で、ランダムに形成されていることがわかる。図5に示す第2のドリル加工品は、表面粗さのバラツキは小であるが、縦スジ状に分布していること、図6に示す第3のドリル加工品は、内外周にバラツキがあり、縦スジ状に分布していることがわかる。
以上の点から、第1のドリル加工品に比べ、第2及び第3のドリル加工品が優れていることがわかる。
【0014】
図7、8は、第2のドリル加工品及び第3のドリル加工品である口金を用いて粘土を押出成形した成形品の端面写真を示す。
前記した口金の第2のドリル加工品及び第3のドリル加工品の画像解析結果写真に対応して、第2のドリル加工品による成形品は、縦スジ状の段差が発生し、第3のドリル加工品による成形品は、全体的に浅い凹形状を示す。
このことから、貫通孔内面の表面粗さの程度及び各貫通孔内面の粗さのバラツキが、押し出し口金における粘土の流動性・成形性に関係していることが確認できる。
【0015】
以上、本発明の測定方法を、ハニカム体の押し出し成形用口金に基づいて説明してきたが、本発明はこれに限られず、各種の貫通孔を有する構造体に対して適用できることはいうまでもない。
たとえば、繊維の紡糸口金などの貫通孔内面の粗さ程度の測定に適用することができる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、押し出し口金のような貫通孔を有する構造体に対して、貫通孔内面の粗さ程度を評価、測定することができるため、貫通孔内部を通る流体の流動性等の特性をより精密に評価することができる。特に、口金の場合には、口金を通る粘土の流動性・成形性をより高精度かつ定量的に評価することが可能となる。
更に、本発明によれば、口金の修正すべき点を粘土を押出すという押出確認工程を省略して、確実に把握することができる口金の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の測定原理を説明する説明図である。
【図2】 テレセントリック系光学系を示す説明図である。
【図3】 本発明の測定方法の一例を概略的に示す説明図である。
【図4】 第1のドリル加工品の画像解析結果写真(貫通孔の金属組織)である。
【図5】 第2のドリル加工品の画像解析結果写真(貫通孔の金属組織)である。
【図6】 第3のドリル加工品の画像解析結果写真(貫通孔の金属組織)である。
【図7】 第2のドリル加工品である口金を用いて粘土を押出成形した成形品の端面写真(セラミック材料の組織)を示す。
【図8】 第3のドリル加工品である口金を用いて粘土を押出成形した成形品の端面写真(セラミック材料の組織)を示す。
【図9】 押し出し口金の構造の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は裏面図をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1…貫通孔を有する構造体、2…散乱板、3…テレセントリック光学系、10…口金、11a…口金後面、11b…口金前面、12…円孔、13…成形スリット、30…貫通孔を有する構造体、31…透明支持板、32…平面照明、33…散乱板、34…テレセントリックレンズ、35…CCDカメラ、36…画像処理装置、37…パソコン。

Claims (3)

  1. 貫通孔を有する構造体に対して散乱光を照射し、該構造体の貫通孔内部を反射しながら通過した通過光をテレセントリック光学系を用いて画像を得、その画像を画像処理技術によって画像解析することにより、貫通孔内面の精度を測定することを特徴とする貫通孔内面の精度測定方法。
  2. 貫通孔を有する構造体がハニカム体を押出成形するに際して用いる成形用口金であって、貫通孔内面の精度が該内面の表面粗さである請求項1記載の測定方法。
  3. 口金用素材に穴加工及びスリット加工を施した後、適宜焼き入れ処理をし、次いで当該穴及びスリットに対して、請求項2記載の測定方法を適用して、当該穴及びスリットの内面の表面粗さを測定することにより、押出確認工程及び修正加工工程なしに、コーティング処理するか、あるいは修正加工した後コーティング処理することを特徴とする口金の製造方法。
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