JP3880413B2 - 着底式浮体構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着底式浮体構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海上に且つ海底が軟弱地盤上に埋め立てられた埋立地に空港施設を建設する場合、どうしても地盤沈下を避けることができない。
【0003】
ところで、このような空港施設を拡張する際に、既存の空港施設と同様の埋め立て方式により新たな空港施設を建設することは、両者における地盤沈下の状態が異なるため無理があり、したがって浮体方式を採用するのが望ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
浮体方式を採用する場合、地盤沈下の心配はないが、埋立地に建設された既存の空港施設との兼ね合い、すなわち浮体に対して既存の空港施設が沈下した場合に、両者の接続部分の構造が大きな問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、例えば埋立地に設けられた空港施設などの建築施設を拡張する際に、埋立地側の地盤沈下に追従し得る着底式浮体構造物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の着底式浮体構造物は、海底に立設される複数個の支柱体と、これら各支柱体の上部に昇降量調節装置を介して昇降自在に設けられた昇降体と、これら各昇降体に載置されて海面上に浮かべられる浮体とから構成し、且つ上記昇降量調節装置を、支柱体内に配置されて昇降体を昇降可能な昇降用シリンダ装置と、上記昇降体と支柱体との間に設けられて、当該昇降体に作用する荷重を支持する荷重支持部材とから構成したものである。
【0007】
上記の構成によると、海面上に浮かべられる浮体を、昇降体を介して海底から立設された支柱体により支持するようにしたので、例えば昇降体を昇降用シリンダ装置にて昇降させることにより、浮体の海面上からの高さを調節することができる。
【0008】
さらに、本発明の他の着底式浮体構造物は、海底に立設される複数個の支柱体と、海面下に位置する下浮体部およびこの下浮体部に支柱材を介して海面上方位置にて支持された上浮体部とからなる浮体と、この浮体を浮力に抗して支柱体側に押し付けるとともに海面に対して昇降させる昇降量調節装置とから構成したものであり、
また上記昇降量調節装置を、上浮体部から支柱体内に垂下された吊り部材に保持された昇降体と、この昇降体に作用する浮力に抗する押え力を付与する押え力付与部材と、上記昇降体と支柱体との間に配置されて当該昇降体を昇降可能な昇降用シリンダ装置とから構成したものである。
【0009】
上記の構成によると、海面上に浮かべられる浮体を、海面下に位置する下浮体部と海面上に位置する上浮体部とにより構成するとともに、この浮体を、支柱体内に吊持された昇降体を介して海底から立設された支柱体により支持するようにしたので、例えば昇降体を昇降用シリンダ装置にて昇降させることにより、浮体の海面上からの高さを調節することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る着底式浮体構造物を、図1および図2に基づき説明する。
【0011】
本第1の実施の形態に係る着底式浮体構造物は、例えば海面上に設けられた埋立方式の空港施設の拡張に際して適用されるものである。
この着底式浮体構造物は、図1および図2に示すように、海底の複数箇所にて立設される支柱体1と、これら各支柱体1の上部に被せられて且つ昇降自在に設けられた昇降体2と、上記各支柱体1の内側に配置されて各昇降体2をそれぞれ昇降させる昇降量調節装置3と、上記各昇降体2に外嵌(載置)されて海面上に浮かべられるとともに平面的に矩形状に形成された浮体4とから構成されている。勿論、この浮体4上に、滑走路、その他必要な建物が設けられる。
【0012】
上記支柱体1は、海底に載置される例えば円形の支持部11と、この支持部11の上方に立設されるとともに内部に空間室12が形成された円筒部13とから構成されている。
【0013】
上記昇降体2は、支柱体1の円筒部13の上部に外嵌するように有蓋且つ円筒状に形成されており、すなわち筒状部2aと円形の蓋部2bとにより形成されている。
【0014】
上記昇降量調節装置3は、昇降体2の蓋部2bの内面中央から垂下して設けられた柱状部2cに取り付けられるとともに支柱体1の空間室12の底部である支持部11を押すことより当該昇降体2を上昇させ得る昇降用油圧シリンダ装置(油圧ジャッキともいう)21と、柱状部2cの下端部から四方に突設された突出部(環状に突設されたフランジ部であってもよい)2dと支柱体1側の支持部11との間に設けられて当該突出部2dを介して昇降体2を固定支持するための荷重支持部材22とから構成されている。この荷重支持部材22は、支持部11から立設(載置される場合でもよい)されるとともに上端部が上記突出部2dに形成れさた貫通穴を挿通されたボルト材(棒状材)23と、この突出部2dを挿通されたボルト材23の上下に螺合されて突出部2dとボルト材23とを一体化させる一対のナット材24とから構成されている。
【0015】
また、上記支柱体1側と昇降体2側との間には、昇降体2の昇降を案内するための上部ガイド部材25と、突出部2dの昇降を案内するための下部ガイド部材26とが設けられている。
【0016】
上部ガイド部材25は、支柱体1の内周面の上下に且つ突出部2dに対応する位置に設けられた支持ブラケット27と、この支持ブラケット27と柱状部2cとの間に介装された球面軸受28とから構成されており、また下部ガイド部材26は、支柱体1の内周面の下半部に且つ突出部2dに対応する位置で上下方向に設けられた支持板材29により構成されている。また、この支持板材29に対応する昇降体2の突出部2d側には、ゴム板などの摺動材30が設けられている。なお、上記昇降体2の柱状部2cと球面軸受28との間についても、摺動し得るように構成されている。
【0017】
そして、上記浮体4には、ポンプ(図示せず)により海水の注排水を行い得る浮力室31が設けられるとともに、昇降体2に対応する下面位置には、昇降体2を挿入案内し得るガイド穴32が形成されており、このガイド穴32の上壁部32aを介して、浮体4が支柱体1側に支持される。なお、この上壁部32aの部分については、その製作時に、浮体4の上面まで貫通した状態にされており、浮体4の設置海域への曳航後に、浮体4に固定されるものである。また、昇降体2と浮体4側、すなわち上壁部32aとの間には弾性支持部材(ゴム材)33が配置される。
【0018】
また、昇降体2の柱状部2cに対向する浮体4のガイド穴32の内壁面には、水平方向での移動を規制する水平移動用ストッパ(例えば、油圧シリンダが用いられる)34が、柱状部2cの周囲の複数箇所(例えば4箇所)に設けられている。したがって、地震などにより、浮体4に大きい水平力が作用した場合、各水平移動用ストッパ34により揺れなどが阻止される。
【0019】
さらに、上記浮体4側(または支柱体側)には、圧縮空気供給装置(図示せず)が設けられて、ガイド穴32および支柱体1の内部に圧縮空気を供給してガイド穴32での海面位置W.Lが浮体4の底面近傍まで下げられている。
【0020】
また、図示しないが、昇降体2の筒状部2aと支柱体1の円筒部13との摺動部には、空気圧などにより膨らむシール材としての水密ゴムが設けられており、圧縮空気供給装置が故障した場合に、海水が浸入するのが防止されている。
【0021】
上記浮体4を、埋立方式にて設置された既存の空港施設Kに隣接する海域に設置する場合について説明する。
まず、工場、例えばドック内で、浮体4および支柱体1を製作するとともに、各支柱体1を、その上部が浮体4のガイド穴32を挿通されて上面から突出するように、ワイヤーロープなどにより浮体4側に吊持させる。この場合、支柱体1の底部の支持部11は浮体4の底面付近まで上昇されている。
【0022】
次に、ドック内に注水して、浮体4を浮上させた後、設置海域まで曳航する。
設置海域に到着すると、ワイヤーロープを緩めて支柱体1を所定の海底に着地させ、そしてガイド穴32の上方を上壁部32aにより塞いだ後、支柱体1により浮体4を支持させて固定する。
【0023】
次に、昇降用油圧シリンダ装置21を作動させて海面に対する浮体4の高さを調節する。なお、この調節は、浮体4に生じる浮力と浮体4全体の重さとがほぼ釣り合うような高さにされるか、または浮体4自身の重さの方が浮力よりも少し重くなるような高さにされる。
【0024】
そして、浮体4の高さの調節が終了すると、昇降体2側の突出部2dとこの突出部2dに挿通されているボルト材23とを、ナット材24により互いに固定する。すなわち、浮体4を、荷重支持部材22を介して支柱体1側に固定支持することにより、設置が完了する。
【0025】
ところで、埋立地の地盤沈下により、埋立地に設置されている既存の空港施設側の基準面(設置高さ)が低くなった場合、まず昇降用油圧シリンダ装置21を作動させて、当該昇降用油圧シリンダ装置21にて浮体4の重さを支持した状態で、荷重支持部材22のナット材24を弛めてその固定支持を解除する。すなわち、この時点で、浮体4は昇降用油圧シリンダ装置21にて支持されていることになる。
【0026】
次に、ポンプにより浮力室31内の海水を少し抜くとともに、昇降用油圧シリンダ装置21のロッド部21aを退入させて昇降体2を下げ、既存の空港施設K側と浮体4側との基準面同士を一致させる。
【0027】
浮体4を下げた後は、荷重支持部材22および水平移動用ストッパ34により、浮体4を支柱体1側に固定支持しておけばよい。
なお、浮体4の海面高さからの位置は、例えばGPSなどを用いた変位計測装置にて計測されている。
【0028】
上述したように、海面上に新規な空港施設が設けられる浮体を、埋立方式により建設された既存の空港施設の直ぐ隣の海域に、支柱体に昇降可能な昇降体を介して支持するとともに海面上に浮かべるように構成したので、既存の空港施設に、地盤沈下が生じた場合でも、昇降用油圧シリンダ装置を作動させて浮体を下降させるだけで、既存の空港施設側の基準面の低下に容易に追従することができ、したがって既存の空港施設に新たに浮体方式の空港施設を設ける際に、互いの接続部分に問題が生じることはない。
【0029】
ところで、上記実施の形態においては、既存の空港施設側の地盤沈下に対応して、浮体を下げる際に、浮体の浮力室に海水を注入するように説明したが、例えば図3(a)に示すように、浮体4を上下で複数に分割するとともにこれら各分割浮体部41内に浮力室42をそれぞれ形成しておき、図3(b)および(c)に示すように、浮体4の下降量に応じて、海水が充満された分割浮体41を、順次、切り離すような構成にしてもよい。このように、海水が充満されて浮力を発生しなくなった分割浮体41を切り離すことにより、浮体4自身の重さを軽くし、例えば地震等の発生により、浮体4に作用する水平方向の力を軽減させることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る着底式浮体構造物を、図4〜図6に基づき説明する。
本第2の実施の形態に係る着底式浮体構造物も、第1の実施の形態と同様に、海面上に設けられた埋立方式の空港施設の拡張に際して適用されるものであり、第1の実施の形態では、昇降体を支柱体の上部に被せるように設けたのに対し、この第2の実施の形態では、昇降体を支柱体の内側に昇降可能に設けたものである。
【0031】
以下、本第2の実施の形態に係る着底式浮体構造物を、第1の実施の形態と同様に説明する。
すなわち、この着底式浮体構造物は、図4〜図6に示すように、海底の複数箇所にて立設される支柱体51と、これら各支柱体51の内側の上部に昇降自在に配置された昇降体52と、これら各支柱体51の内部にそれぞれ配置されて昇降体52を昇降させる昇降量調節装置53と、上記各昇降体52にそれぞれ緩衝支持装置54を介して載置されて海面上に浮かべられるとともに平面的に矩形状に形成された浮体55とから構成されており、この浮体55上に、滑走路、その他必要な建物が設けられる。
【0032】
上記支柱体51は、海底に載置される例えば円形の支持部61と、この支持部61の上方に立設されるとともに内部に空間室62が形成された円筒部63とから構成されている。
【0033】
そして、上記昇降体52は、支柱体51の円筒部63の上部内にて昇降可能にされた円形状の載置部64と、この載置部64の下面から垂設された筒状部65と、この筒状部65の下端において四方に突設された突出部(環状に突設されたフランジ部であってもよい)66とから構成されている。
【0034】
上記昇降量調節装置53は、支柱体51の円筒部63の中間部位置の内周面の複数箇所(例えば、90度間隔で4箇所)に突設された受梁材71と昇降体52の筒状部65の外周面上部位置に取り付けられた環状支持材72との間に配置されて、上記環状支持材72を下方から支持することより当該昇降体52を昇降させ得る昇降用油圧シリンダ装置(油圧ジャッキともいう)73と、筒状部65下端の突出部66と支柱体51側の支持部61とに亘って設けられて、当該突出部66を介して昇降体52を固定支持するための荷重支持部材74とから構成されている。
【0035】
この荷重支持部材74は、支持部61から立設(載置される場合でもよい)されるとともに上端部が上記突出部66に形成れさた貫通穴を挿通されたボルト材(棒状材)75と、この突出部66を挿通されたボルト材75の上下に螺合されて当該突出部66とボルト材75とを一体化させる一対のナット材76とから構成されており、また突出部66には各ナット材76を自動的に弛めるとともに締め付けるための回転締付具77が設けられている。
【0036】
なお、上記昇降体52の筒状部65の外周面に設けられる環状支持材72は、当該筒状部65の外周の所定の複数箇所に設けられた取付位置調整部材78を介して、高さ方向での取り付け位置が調整可能にされている。具体的に言えば、取付位置調整部材78には、上下方向において所定間隔おきに取付穴78aが複数個形成されるとともに、環状支持材72の取付位置調整部材78に対応する上下位置には、当該取付位置調整部材78に形成された取付穴78aに係合し得る突部(せん断キー、コッタピンなどでもよい)72aが、それぞれ対応する位置で、挿脱可能に設けられている。したがって、取付穴78aを適宜選択することにより、昇降体52の筒状部65に対する環状支持材72の取付高さを所定の範囲内で変更することができる。
【0037】
また、上記昇降体52側には、当該昇降体52に作用した水平方向の力を支柱体51側に垂直方向(法線方向)に伝達するための上部および下部力伝達部材(例えば、球面軸受が用いられる)79,80がそれぞれ設けられている。具体的には、上部力伝達部材79は昇降体52の載置部64の下面に四方に突設された水平梁部64aに、また下部力伝達部材80は昇降体52の各突出部66の外周面にそれぞれ設けられている。なお、各下部力伝達部材80に対応する支柱体51の円筒部63側には、水平力を受ける受け材63aが所定高さでもってそれぞれ設けられている。また、各力伝達部材79,80の外周面は、支柱体51に対して上下方向で移動し得るような構成または材質により形成されている。
【0038】
そして、上記浮体55には、ポンプ(図示せず)により海水の注排水を行い得る浮力室81が設けられるとともに、昇降体52に対応する下面位置には、支柱体51の円筒部63および昇降体52の載置部64を挿入案内し得るガイド穴82が形成されており、このガイド穴82の上壁部82aに、緩衝支持装置54を介して、浮体55が支柱体51側に支持される。なお、この上壁部82aの部分については、その製作時に、浮体55の上面まで貫通した状態にされており、浮体55の設置海域への曳航後に、浮体55に固定されるものである。
【0039】
上記緩衝支持装置54は、昇降体52の載置部64の上面に複数個(例えば、120度おきに3個)配置接合された弾性支持材であるゴム板(所定厚さのゴム材が複数枚積層されたもの)83と、これらゴム板83の上面に接合されて当該ゴム板83を上壁部82a側に連結するための連結部材84と、この連結部材84の周囲の複数箇所(例えば、90度おきに4箇所)に配置されて当該連結部材84の水平移動を阻止するストッパ部材であるストッパ用油圧シリンダ装置85とから構成されている。したがって、地震などにより、浮体55に大きい水平力が作用した場合、ストッパ用油圧シリンダ装置85により揺れなどが阻止される。勿論、浮体55が傾斜した場合または揺れた場合には、上記ゴム板83自身のせん断変形などにより、昇降体52側に伝達される力が吸収される。
【0040】
なお、連結部材84と浮体55側とは、連結部材84側に設けられた凹状部84aに、浮体55の上壁部82a側に突設された円形状突起86が係合することにより、互いの連結が行われる。
【0041】
さらに、上記浮体55側(または支柱体51側)には、圧縮空気供給装置(図示せず)が設けられて、ガイド穴82および支柱体51の内部に圧縮空気を供給してガイド穴82での海面位置W.Lが浮体55の底面近傍まで下げられている。
【0042】
そして、ここで、上記浮体55を、埋立方式にて設置された既存の空港施設Kに隣接する海域に設置する場合について説明するが、基本的には、上述した第1の実施の形態に係る浮体の設置作業と同一であるが、一応、説明しておく。
【0043】
まず、工場、例えばドック内で、浮体55および支柱体51を製作するとともに、各支柱体51を、その上部が浮体55のガイド穴82を挿通されて上面から突出するように、ワイヤーロープなどにより浮体55側に吊持させる。この場合、支柱体51の底部の支持部61は浮体55の底面付近まで上昇されている。
【0044】
次に、ドック内に注水して、浮体55を浮上させた後、設置海域まで曳航する。
設置海域に到着すると、ワイヤーロープを緩めて支柱体51を所定の海底に着地させ、そしてガイド穴82の上方を上壁部82aにより塞いだ後、支柱体51により浮体55を支持させて固定する。
【0045】
次に、昇降用油圧シリンダ装置73を作動させて海面に対する浮体55の高さを調節する。なお、この調節は、浮体55に生じる浮力と浮体55全体の重さとがほぼ釣り合うような高さにされるか、または浮体55自身の重さの方が浮力よりも少し重くなるような高さにされる。
【0046】
そして、浮体55の高さの調節が終了すると、昇降体52側の突出部66とこの突出部66に挿通されているボルト材75とを、回転締付具77によりナット材76を回転させて、互いに固定する。すなわち、浮体55を、荷重支持部材74を介して支柱体51側に固定支持することにより、設置が完了する。
【0047】
ところで、埋立地の地盤沈下により、埋立地に設置されている既存の空港施設側の基準面(設置高さ)が低くなった場合、まず昇降用油圧シリンダ装置73を作動させて、当該昇降用油圧シリンダ装置73にて浮体55の重さを支持した状態で、荷重支持部材74のナット材76を弛めてその固定支持を解除する。すなわち、この時点で、浮体55は昇降用油圧シリンダ装置73にて支持されていることになる。
【0048】
次に、ポンプにより浮力室81内の海水を少し抜くとともに、昇降用油圧シリンダ装置73のロッド部を退入させて昇降体52を下げ、既存の空港施設K側と浮体55側との基準面同士を一致させる。
【0049】
浮体55を下げた後は、荷重支持部材74により、浮体55を支柱体51側に固定支持しておけばよい。なお、浮体55の海面高さからの位置は、例えばGPSなどを用いた変位計測装置にて計測されている。
【0050】
ところで、浮体55の昇降調節範囲が大きくなった場合には、昇降体52を昇降させる際に使用される環状支持材72の当該昇降体52に対する取付位置、すなわち取付位置調整部材78に対する取り付け位置を調整すればよい。
【0051】
この構成の場合も、第1の実施の形態と同様に、海面上に新規な空港施設が設けられる浮体を、埋立方式により建設された既存の空港施設の直ぐ隣の海域に、支柱体に昇降可能な昇降体を介して支持するとともに海面上に浮かべるように構成したので、既存の空港施設に、地盤沈下が生じた場合でも、昇降用油圧シリンダ装置を作動させて浮体を下降させるだけで、既存の空港施設側の基準面の低下に容易に追従することができ、したがって既存の空港施設に新たに浮体方式の空港施設を設ける際に、互いの接続部分に問題が生じることはない。
【0052】
なお、この第2の実施の形態においても、上記第1の実施の形態にて説明したように、浮体を分割構造にするとともに、浮体の下降量に応じて、分割浮体を順次切り離すようにしてもよい。
【0053】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る着底式浮体構造物を、図7に基づき説明する。
本第3の実施の形態に係る着底式浮体構造物は、第1の実施の形態と同様に、埋立地に建設された既存の空港施設の拡張に際して用いられるものであり、上記第1の実施の形態に係る浮体は、浮体全体が海面上に浮かぶようにされているのに対して、この第3の実施の形態に係る浮体は、その浮力発生部分が海面下に位置する半没水型のものである。
【0054】
すなわち、この着底式浮体構造物は、図7に示すように、海底の複数箇所にて立設される支柱体101と、海面下に位置する下浮体部102およびこの下浮体部102に多数の支柱材103を介して海面上方に支持される上浮体部104からなる浮体105と、この浮体105に作用する浮力、すなわち下浮体部102に作用する浮力に抗して当該浮体105を支柱体101側に押し付けるとともに上浮体部104の基準面を海面上の所定高さに昇降させるための昇降量調節装置106とから構成されている。
【0055】
勿論、少なくとも上浮体部104については、平面的に矩形状に形成されるとともに、この上浮体部104上には滑走路などの必要施設が設けられ、下浮体部102については、当該浮体105に所定の浮力を与えるような形状にされている。
【0056】
また、各支柱体101に対応する位置の下浮体部102および上浮体部104には、支柱体1の上部を穴し得るガイド穴107aを有するガイド筒107が設けられている。なお、ガイド穴107aに対応する上浮体部104の蓋部104aについては、その製作時に、浮体4の上面まで貫通した状態にされており、浮体105の設置海域への曳航後に、浮体105に固定されるものである。
【0057】
上記支柱体101は、フーチングである例えば円形の支持部111と、この支持部111の上方に立設されるとともに内部に空間室112が形成された円筒部113とから構成されている。なお、円筒部113内の下半部には、重量付加用のコンクリート114が充填されている。
【0058】
上記昇降量調節装置106は、上端が上浮体部104側に保持具121を介して保持されるとともに下端が支柱体101内の空間室112内に垂下されたケーブル(吊り部材で、例えば棒材なども使用することができる)122の下端に保持具123を介して保持された昇降体124と、この昇降体124を介して浮体105側に浮力に抗する下方への押え力(鉛直反力)を付与する押え力付与部材125と、上記昇降体124と支柱体101側との間に配置されて当該昇降体124を昇降させる昇降用油圧シリンダ装置(油圧ジャッキともいう)126とから構成されている。なお、上浮体部104のガイド穴107aに対応する蓋部104aと支柱体101の円筒部113の上壁部との間のケーブル122の外周にはジャバラ127が設けられて、ケーブル122が保護されるとともに支柱体101内への海水の浸入も防止されている。
【0059】
上記押え力付与部材125は、円筒部112内に設けられた支持梁材128と、この支持梁材128から垂下して設けられるとともに下端部が上記昇降体124に連結される棒状部材例えばボルト材129と、このボルト材129と支持梁材128および昇降体124との連結を行うナット材130とから構成されており、また上記昇降用油圧シリンダ装置126は支持梁材128に対して昇降体124を下方に付勢するように、例えば支持梁材128に設けられている。
【0060】
なお、上記支持梁材128は平面視が十字形状にされるとともに、一方の直線梁部の両端にボルト材129が一対設けられ、他方の直線梁部の両端に昇降用油圧シリンダ装置126が一対設けられる。なお、支持梁材128の中央には、ケーブル122を挿通させる挿通穴128aが形成されている。
【0061】
また、上記支柱体101と昇降体124との間の周囲4箇所には、昇降体124の昇降移動を案内するための昇降用ガイド部材131が設けられており、また浮体105に作用する地震などによる水平方向の力を受けるために、当該浮体105に形成されたガイド穴107aの内壁面には、水平方向での移動を規制する水平移動用ストッパ(油圧ジャッキが用いられる)132が、周囲4箇所に設けられている。
【0062】
上記浮体105を、埋立方式にて設置された既存の空港施設Kに隣接する海域に設置する場合について説明する。
まず、工場、例えばドック内で、浮体105および支柱体101を製作するとともに、各支柱体101を、その上部が浮体105のガイド穴107aを挿通されて上面から突出するように、ワイヤーロープなどにより浮体105側に吊持させる。この場合、支柱体101の底部の支持部111は浮体105の底面付近まで上昇されている。
【0063】
次に、ドック内に注水して、浮体105を浮上させた後、設置海域まで曳航する。
設置海域に到着すると、ワイヤーロープを緩めて支柱体101を所定の海底に着地させ、そしてガイド穴107aの上方部分を蓋部104aにて塞いだ後、支柱体101により浮体105を支持させて固定する。
【0064】
次に、上浮体部104とボルト材129により一時的に支持された昇降体124との間に、ケーブル122を配置して両者を互いに連結した後、昇降用油圧シリンダ装置126により、昇降体124を下方に押し下げて、海面に対する浮体105の高さを調節する。勿論、昇降用油圧シリンダ装置126を作動させる際には、昇降体124とボルト材129との連結が解除される。
【0065】
そして、浮体105の高さの調節が終了すると、支持梁材128と昇降体124とに亘って配置されているボルト材129を、ナット材130により、それぞれ支持梁材128および昇降体124側に固定する。すなわち、浮体105は、その下浮体部102の浮力に抗して下方に押し下げられた状態で、支柱体101側に固定されて設置が完了する。
【0066】
ところで、埋立地の地盤沈下により、埋立地に設置されている既存の空港施設K側の基準面が低くなった場合、まず昇降用油圧シリンダ装置126を作動させて昇降体124を下方に付勢することにより、浮体105に作用する浮力を支持しておき、次にボルト材129の少なくとも下部のナット材130を弛めてその固定支持を解除する。
【0067】
そして、昇降用油圧シリンダ装置126のロッド部126aを突出させて昇降体124を押し下げて、既存の空港施設K側と浮体105側との基準面同士を一致させる。
【0068】
勿論、浮体105を押し下げた後は、ナット材130を締め付けて、ボルト材129により昇降体124を支柱体101側に固定支持しておけばよい。
なお、この場合も、浮体105の海面高さからの位置は、例えばGPSなどを用いた変位計測装置により計測されている。
【0069】
本第3の実施の形態においても、第1の実施の形態にて述べたように、海面上に新規な空港施設が設けられる浮体を、埋立方式により建設された既存の空港施設の直ぐ隣の海域に支柱体を介して支持して浮かべ、且つこの浮体をケーブル、昇降体およびボルト材を介して支柱体側に固定支持するとともに昇降体を介して昇降用油圧シリンダ装置にて昇降し得るように構成したので、既存の空港施設側に地盤沈下が生じた場合でも、昇降用油圧シリンダ装置を作動させることにより、浮体を下降させることができ、したがって既存の空港施設側の地盤沈下に容易に追従することができる。すなわち、この場合も、既存の空港施設に新たに浮体方式の空港施設を設ける際に、互いの接続部分に問題が生じることはない。
【0070】
また、浮体を、海面下に位置する下浮体部と、この下浮体部に支柱材を介して海面上方位置にて支持された上浮体部とにより構成したので、着底式の構造物でありながら、潮位の変動により海面が変化した場合でも、浮体に働く浮力を一定にすることができる。
【0071】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1および2に係る着底式浮体構造物の構成によると、海面上に浮かべられる浮体を、昇降体を介して海底から立設された支柱体により支持するようにしたので、例えば昇降体を昇降用シリンダ装置にて昇降させることにより、浮体の海面上からの高さを調節することができ、したがって埋立方式により建設された既存施設の直ぐ隣の海域に、新たな施設を建設する場合、地盤沈下により既存施設側が下がっても容易に追従させることができる。
【0072】
また、本発明の請求項3および4に係る着底式浮体構造物の構成によると、海面上に浮かべられる浮体を、海面下に位置する下浮体部と海面上に位置する上浮体部とにより構成するとともに、この浮体を、支柱体内に吊持された昇降体を介して海底から立設された支柱体により支持するようにしたので、例えば昇降体を昇降用シリンダ装置にて昇降させることにより、浮体の海面上からの高さを調節することができ、したがって埋立方式により建設された既存施設の直ぐ隣の海域に、新たな施設を建設する場合、地盤沈下により既存施設側が下がっても、容易に追従させることができる。
【0073】
すなわち、上記各着底式浮体構造物の構成によると、埋立方式による既存の建築施設に新たに浮体方式の空港施設を隣接して設ける際に、たとえ、既存の建築施設側が沈下した場合でも、互いの接続部分に問題が生じることはない。
【0074】
さらに、上記請求項3および4に係る着底式浮体構造物の構成においては、浮体を、海面下に位置する下浮体部と、この下浮体部に支柱材を介して海面上方位置にて支持された上浮体部とにより構成しているので、着底式の構造物でありながら、潮位の変動により海面が変化した場合でも、浮体に働く浮力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る着底式浮体構造物の要部を示す一部切欠断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る着底式浮体構造物の変形例を示す概略側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る着底式浮体構造物の要部を示す一部切欠断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図4のC−C断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る着底式浮体構造物の要部を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
1 支柱体
2 昇降体
3 昇降量調節装置
4 浮体
21 昇降用油圧シリンダ装置
22 荷重支持部材
51 支柱体
52 昇降体
53 昇降量調節装置
54 緩衝支持装置
55 浮体
73 昇降用油圧シリンダ装置
74 荷重支持部材
101 支柱体
102 下浮体部
103 支柱材
104 上浮体部
105 浮体
106 昇降量調節装置
122 ケーブル
124 昇降体
125 押え力付与部材
126 昇降用油圧シリンダ装置
129 ボルト材
130 ナット材
Claims (3)
- 海底に立設される複数個の支柱体と、これら各支柱体の上部に昇降量調節装置を介して昇降自在に設けられた昇降体と、これら各昇降体に載置されて海面上に浮かべられる浮体とから構成し、
且つ上記昇降量調節装置を、支柱体内に配置されて昇降体を昇降可能な昇降用シリンダ装置と、上記昇降体と支柱体との間に設けられて、当該昇降体に作用する荷重を支持する荷重支持部材とから構成したことを特徴とする着底式浮体構造物。 - 海底に立設される複数個の支柱体と、海面下に位置する下浮体部およびこの下浮体部に支柱材を介して海面上方位置にて支持された上浮体部とからなる浮体と、この浮体を浮力に抗して支柱体側に押し付けるとともに海面に対して昇降させる昇降量調節装置とから構成したことを特徴とする着底式浮体構造物。
- 昇降量調節装置を、上浮体部から支柱体内に垂下された吊り部材に保持された昇降体と、この昇降体に作用する浮力に抗する押え力を付与する押え力付与部材と、上記昇降体と支柱体との間に配置されて当該昇降体を昇降可能な昇降用シリンダ装置とから構成したことを特徴とする請求項2に記載の着底式浮体構造物。
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